【実施例】
【0033】
図1は、本発明にかかる耐力パネル、耐力ユニットおよびその鋼製部材の第1の実施形態を示すものである。耐力パネルは、鉛直方向のみならず水平方向あるは斜め方向等、どのような角度でも用いることができるが、ここでは便宜上、短辺が水平方向(X方向)、長編が鉛直方向(Y方向)、厚みが他の水平方向(Z方向)に位置付けられた状態を前提として以下に説明する。耐力パネルは、水平方向に延びる互いに平行な2つの水平部材142と、鉛直方向に延びる2つの鉛直部材141とから構成される枠部材によって定義される領域内に、複数の耐力ユニット110を有する。
【0034】
耐力パネル100の水平方向の寸法(内法)は、耐力ユニット110の平行な2つの直線部材112の間の距離のちょうど3倍であり、耐力パネルの鉛直方向の寸法(内法)は、耐力ユニットの直線部材の長さの15倍である。耐力ユニットは、平行な2つの直線部材が、耐力パネル100の鉛直部材141と平行になる位置(角度)に配置されている。耐力パネルの枠部材に囲まれた領域内において、略正六角形状の耐力ユニット110は、いわゆるハニカム構造を構成するよう配置されている。枠部材の近傍では、耐力ユニットは、鉛直に配置された直線部材の上端部と下端部、あるいは、頂部又は底部で枠部材に固定される。
【0035】
ここでは、上述のような耐力ユニット110と耐力パネル100の寸法関係を有する実施例について説明するが、その寸法関係は上記に限定されないことは自明である。耐力パネルの水平方向の寸法(内法)は、耐力ユニットの最小外寸(平行な直線部材の距離、外寸)の整数倍であることが望ましいが、それ以外の寸法であっても何ら支障はない。耐力パネルの鉛直方向の寸法についても、前記は例示であって、上記以外の関係であっても支障がないことは同様である。
【0036】
耐力ユニット110は、1つのウェブと2つのフランジからなるC型断面(U型断面といってもよい)を有する直線部材112から構成されている。すなわち、これに限定されるわけではないが、例えば、C型断面を有する長尺部材111を、等しい長さの6つの部分に分割する位置でフランジを切断し、フランジが内側になるように直線部材を前記フランジの切断箇所で折り曲げて(つまり、ウェブを折り曲げて)製造することができる。ウェブを折り曲げる際には、フランジが相互に干渉する可能性があるが、フランジの厚さが薄ければ、相互の干渉は大きな障害にならず、フランジ同士の重なりを形成することができる。
【0037】
前記フランジの重なり部分を相互に固定することで、耐力ユニット110は略正六角形を有する強固なユニットとなる。当該固定は、リベット、ボルトナット、溶接等の手段を用いることができるが、リベットによる固定は作業性と固定強度の点で優れている。一方、ボルトナットによる固定は、耐力ユニットまたは耐力パネルの製造過程、あるいは、使用を開始したのちにも固定強度を調整あるいは締めまし等が行える利点がある。溶接等は、ゆるみのない固定が特徴である。以下の説明においては、説明の簡略化のためにリベットを用いた固定について述べるが、前記の他の固定方法であってもよいことは自明である。
【0038】
耐力ユニットの直線部材は、C型断面を有し、ウェブが耐力ユニットの略正六角形の外形を画定し、フランジは、略正六角形の外形の内側に向かって伸び、対向する2つのフランジの距離が耐力パネルの厚さを画定する。
【0039】
耐力ユニットは、ウェブを相互に固定することで全体としてハニカム構造を構成するように組み立てられている。耐力ユニット相互の固定は、リベット、ボルトナット、スポット溶接等の手法を用いて、直接、あるいは補強プレートを介して行うことができる。それぞれの固定方法の利点及び効果は前記のとおりである。前記固定は、3つの耐力ユニットの頂部が付き合わせられる位置の近傍で行なうのが好ましいが、前記頂部と頂部の中間位置で固定すること、あるいは、その両方で固定することももちろん可能である。さらに、固定位置に、フランジと平行な補強プレートを当てて、プレートと共にフランジを固定することで、耐力ユニット相互の固定をより強固にすることができる。
【0040】
耐力ユニットと枠部材の固定は、耐力ユニット相互の固定と同様に行うことができるが、枠部材の耐力ユニットを固定する部分の厚さが大きい場合には、フランジと平行な補強プレートを用いることで応力集中を緩和し、固定部位の形状に起因する剛性・強度の低下を抑えることができる。
【0041】
上記のように構成された耐力ユニットは、6つの直線部材を通じてウェブが一体構造であること、フランジが相互に重なり合うとともに相互に固定されていることから、重量のわりに剛性・強度が非常に高い、強固な構造体を構成する。さらに、このような耐力ユニットによって構成された耐力パネルもまた、重量のわりに剛性・強度が非常に高い、強固な構造体である。この高剛性・強度は、面内の荷重に対してももちろんであるが、特に直線部材のフランジが耐力パネルの厚さ方向を画定している構造に起因して、面外の荷重に対する剛性と強度が非常に高い。
【0042】
図2(b)は、耐力ユニット110をより拡大して示した図である。6つの直線部材112が略正六角形の耐力ユニット110を構成している。直線部材112のフランジ114は、一部分が相互に重なり合い、リベット116によって相互に固定されている。また、隣接する耐力ユニット同士は、ウェブがたがいに接しており、ウェブ相互はリベット116により相互に固定されている。
【0043】
図2(a)は、6つの直線部材112を製造する前の長尺部材111を示すものである。1つのウェブと2つのフランジからなるC型断面(U型断面)を有する長尺部材111のウェブには、6つの直線部材を画定するように、5か所に切り込みが形成されている。
【0044】
図2(c)は、耐力ユニット110を相互に固定した状態を示す図である。直線部材112、112‘のフランジが重なる部分でリベット116によって相互に固定されると共に、隣接する直線部材112、112’のウェブ同士が、リベット118によって相互に固定される。
【0045】
図3は、前記とは異なる直線部材122と、前記とは異なる直線部材の固定方法を示したものである。
図3(c)は、直線部材122を耐力ユニットに組み上げた際に、隣接する直線部材のフランジが重ならないように、フランジの端部を切り欠いた直線部材122を示す。この際、ウェブの部分は、6つのウェブが1つの長尺部材から構成されたものであってもよいし、ウェブも含めてそれぞれの直線部材が独立したものであってもよい。直線部材122の断面は、C字型122‘またはU字型である。
【0046】
前記直線部材122は、
図3(a)(耐力ユニットの頂部に補強プレート124を当てて、これに対して各ウェブを固定することで相互に固定することもできる。さらに、
図3(b)に示すように、ウェブの部分に補強プレートを当てて、これに対してウェブを固定することで、耐力ユニットを相互に固定することもできる。
【0047】
図4は、フランジが相互に重ならないように切り欠きを入れた長尺部材211を示す図である。ウェブは、相互に連続するものであってもよいし、ウェブも相互に切れていてもよいことは既述の通りである。
【0048】
図5は、耐力ユニットと枠部材との固定を示す拡大図である。枠部材に固定される耐力ユニットは、必ずしも略正六角形ではなく、
図5(a)や
図5(b)に示すように、略正六角形の一部の形状となる場合があることは自明である。水平部材に対して固定される直線部材146は、他端においては、隣接する耐力部材の直線部材112に対して固定される。当該直線部材146とウェブ同士が固定される他の直線部材148は、枠部材との位置関係上、他の鉛直部材よりも短い。
【0049】
図5(b)は、耐力ユニットが枠部材の隅部に対して固定される際の構造の一例を示した拡大図である。
【0050】
図6は、耐力ユニット相互の固定が前記とは異なる耐力パネル200を示す図である。
図6に示す実施例においては、隣接する耐力ユニットは、図に示す形状の補強版242によって相互に固定され、補強されている。補強版は、フランジを固定するものであるが、ウェブについては、相互に直接リベットで固定するか、前記補強版を用いて相互に固定するか、更には他の方法で固定することも可能である。
【0051】
図7に示す実施例においては、耐力ユニット310のフランジ相互の固定が、1つのリベット316によっている点が前記の実施例とは異なっている。
【0052】
図8は、前記の例とは耐力ユニットと耐力パネルの寸法関係が異なる実施例を示すものである。耐力パネルの水平方向は前記同様に耐力ユニットの直線部材間距離(外側の距離)の3倍であるが、鉛直方向の長さが大きく、略正六角形の耐力ユニットを22個収容する。耐力ユニットの水平方向及び鉛直方向の寸法は、耐力パネルの水平方向及び鉛直方向の寸法の整数倍、あるいは、比較的切りの良い倍数(2.5倍等、小数を含む)であれば製造が容易であるが、そのような関係であることは必ずしも必要ではない。
【0053】
図9は、やはり前記とは異なる耐力ユニットと耐力パネルの固定方法である。
図9に示す耐力パネル360によれば、枠部材の内側に、耐力ユニットを取り付けるためのフランジを設け、耐力ユニットは当該フランジに対して固定される。このような構成とすることによって、枠部材に正方形断面の部材等、耐力ユニットをやや取り付けにくい部材を使用することも可能になる。
【0054】
図10は、耐力ユニット相互に固定が前記とは異なる実施例である。耐力ユニット362は、頂部において補強版を介して相互に固定された直線部材から構成されるが、各フランジと補強版の固定は、2つのリベットによって行われる。リベットの数、固定位置、太さ等は、フランジの厚さ、大きさ等の寸法に基づいて最適な数、位置等が決定されるべきであることは自明である。
【0055】
図11は、耐力ユニット364同士を固定する更に異なる構造の拡大図である。前記の固定方法とはリベットの位置が異なる。ウェブ同士もまたリベットによって相互に固定されている構造である。
【0056】
図12に示す耐力パネル400では、耐力ユニットは略正六角形の頂部において鉛直部材に固定されており、直線部材が水平部材と接している点が前記の実施例とは異なる。
【0057】
図13は、複数の耐力部材から構成される耐力パネルが全体として略正六角形である実施例500である。ここでも、耐力パネルの枠部材に対して固定される部位を除いて、耐力ユニット510の構造自体は前記の構造と同様である。
【0058】
図14は、枠部材に対する固定方法が前記の者とは異なる耐力パネル550を示すものである。