特許第6784466号(P6784466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6784466
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ハニカム構造を使用した建築物のパネル
(51)【国際特許分類】
   E04C 2/36 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   E04C2/36 A
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-198893(P2019-198893)
(22)【出願日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519390645
【氏名又は名称】細井 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】特許業務法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】細井 聡子
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−009154(JP,A)
【文献】 特公昭57−039222(JP,B2)
【文献】 特公昭57−015252(JP,B2)
【文献】 特許第3965077(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/36
B32B 3/12 − 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の耐力ユニットから構成された耐力構造体であって、
前記耐力ユニットは略正六角形の形状を有し、
前記略正六角形の各辺は、1つのウェブと2つのフランジから構成されC型断面を有する直線部材から構成され、
前記ウェブが略正六角形の外周を画定し、前記フランジが前記外周で画定される空間の内側に位置し、
前記直線部材は、1つの長尺部材から構成されている耐力ユニットであり、
前記耐力ユニット相互が、隣接する耐力ユニットと、前記略正六角形の頂部が付き合わせられる位置の近傍で相互に固定されている耐力構造体。
【請求項2】
前記フランジは、相互に重なり合う部分を有する請求項1に記載の耐力構造体。
【請求項3】
前記フランジは、前記相互に重なり合う部分において相互に固定されている請求項2に記載の耐力構造体。
【請求項4】
前記フランジは、相互に重なり合わないように切り欠かれている請求項1に記載の耐力構造体。
【請求項5】
前記フランジは、固定板を介して相互に固定されている請求項4に記載の耐力構造体。
【請求項6】
3つの前記耐力ユニットが、前記略正六角形の頂部が付き合わせられる位置で、フランジと平行な1つの補強プレートによって、補強プレートと共にフランジ相互を固定することで相互に固定されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の耐力構造体。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれか1項に記載の耐力構造体を含み、
前記耐力構造体を囲むように設けられた水平部材と鉛直部材とを有する枠部材とを有し、
前記耐力構造体はその外周において前記枠部材に固定された耐力パネル。
【請求項8】
前記請求項1から6のいずれか1項に記載の耐力構造体を含み、
前記耐力構造体を囲むように設けられ、前記略六角形の形状を有する耐力ユニットを構成する直線部材と平行で、耐力構造体を囲む略正六角形を構成する枠部材とを有し、
前記耐力構造体はその外周において前記枠部材に固定された耐力パネル。
【請求項9】
前記固定は、リベット、ボルトナット、溶接のいずれかまたは複数によって行われている請求項7又は8に記載の耐力パネル。
【請求項10】
さらに、前記枠部材に囲まれる平板状の空間には、少なくともウェブを埋設するようにコンクリートが充填されている請求項7から9のいずれか1項に記載の耐力パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造を有する耐力ユニットと耐力パネルに関し、特に軽量で高い剛性と強度を有し、さらに製造が容易な耐力ユニット、耐力パネルにかかるものである。本耐力ユニットおよび耐力パネルは、建築構造における間仕切壁、耐力壁等に利用することができるが、これに限らず、軽量かつ高剛性、高強度が必要な状況においては広く利用可能な耐力ユニットおよび耐力パネルである。
【背景技術】
【0002】
従来の建築物においては、柱梁又はコンクリート耐力壁を耐力構造体(自重及び各種積載荷重並びに地震荷重、風荷重等の動的外力を負担する部材)とし、間仕切壁等の二次部材は、荷重を負担しない部材として扱っている。つまり、建築物の構造設計を行う際は、柱梁および耐力壁から構成される躯体に関して断面設計を行い、間仕切り等の二次部材については、その建物耐力に対する寄与を無視するのが通常である。これは、二次部材の剛性・強度が躯体構造の剛性等に比較して非常に低いことが一義的な理由である。
【0003】
しかし、二次部材であっても軽量かつ高強度であれば、設計上その強度を期待できる場面は非常に多い。工場における製造によって、安定した高品質が期待できる場合にはなおさらである。
【0004】
特開平5−311790号公報(特許文献1)は、ハニカムコアを有する建物用パネルおよびその製造方法に関するものである。当該公報には、同公報図1及び図2に示されるように、表面板と裏面板でハニカムコアを挟む構成の建物用パネルが開示するものであるが、ここでハニカムコアは、通常のハニカムコア、つまり、平板な6枚の板から構成されるハニカムコアである。
【0005】
特開2007−177528号公報(特許文献2)は、ハニカムパネル及びそれを用いた長尺パネル構造体に関するものであり、対抗する一対の平面板と、当該平面板の間に介在するコア材とを備えるハニカムパネルの一面に補強リブを立設した構造体を提供するものであるが、ここでもハニカムパネル自体は、前記特許文献1と同様に、平板な6枚の板から構成されるハニカムコアである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−311790号公報
【特許文献2】特開2007−177528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本件発明が解決しようとする課題は、優れた面内せん断剛性と強度、面内曲げ剛性と強度、面外曲げ剛性と強度を有し、軽量で、かつ製造容易な耐力パネル、及び、これを構成する略正六角形を有する耐力ユニットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術の現状にかんがみて、発明者は、軽量、製造容易で、柱梁とは別個に製造可能であるにもかかわらず、極めて高い荷重負担能力を有し、耐力構造体として十分に使用できる構造体(耐力パネル)及びこれを構成する耐力ユニットを発明した。
【0009】
前記耐力パネルは、C型断面(U型断面と言ってもよい)を有する所定長さの直線状鋼材を、6つの等しい長さに分割する位置で、フランジが内側になる方向にウェブを各60度折り曲げて作った六角形の耐力ユニットを構成要素とするパネル状の構造体である。折り曲げ部分ではフランジに、フランジ端部からウェブに至るスリットを入れることによって、ウェブを折り曲げた際に、フランジが相互に干渉しないように重ね合わせることができる。この構造は、フランジ部分の板厚が比較的小さい場合、例えば、数ミリメートル、あるいは、1mm程度未満である場合には特に有効である。
【0010】
C型断面を有する直線状鋼材を、前記6つの等しい長さに分割した位置で切断し、これを組み合わせて六角形の構造単位を作ることもできる。この場合には、3つの六角形の構造単位の角が付き合わせられる部位の近傍において、3つの構造単位をジグによって相互に緊結するか、リベットによって相互に固定するのが作業工程の短縮、剛性、強度の確保の点から有利である。
【0011】
本発明に係るパネル状の構造体は、いわゆるハニカム構造と似た構造を有するが、各部材がC型の断面を有することが、従来のハニカム構造にはない特徴の1つである。この特徴によって、極めて高い剛性と強度を確保し、さらに、必要であれば表面板、裏面板との接合も容易になる。
【0012】
前記スリットに代えてウェブの折り曲げ位置で、フランジに切り欠きを設けることによって、ウェブを折り曲げた際のフランジ相互の干渉を避けることもできる。複数の六角形の構造単位の、隣接するウェブ同士は相互に固定することで、構造体の面内、面外の剛性と強度は著しく向上する。前記固定は、リベット、ボルト、溶接等によることができる。リベットによった場合は、製造が速やかかつ容易で、工程の短縮と製造コストの低減に貢献する。
【0013】
前記したように、フランジにスリットを設けて、ウェブを折り曲げた際にスリットが重なり合うようにした場合、重なったフランジ相互をリベット等で固定すれば、パネル上の構造体の剛性と強度をさらに向上させることができる。フランジに切り欠きを設けた場合は、隣接するフランジの切り欠き縁を相互に突き合わせ溶接等で接合することも可能である。さらには、別途設けた固定版(補強プレート)を介して固定することもできる。
【0014】
前記構造体を、平行に設けた平板(例えば鋼板からなる表面板と裏面板)の間に挟持することで、(平板の)面外方向の強度を向上させると同時に、取り扱いを容易にすることができる。耐力ユニットのウェブと平板とをリベット接合すれば、作業性は著しく向上する。
【0015】
また、耐力ユニットの平行な2辺間の距離を、平板の短辺の長さの1/3、長編の長さの1/6とすることで、構造を単純化しつつ、十分な剛性と強度を確保することができる。
【0016】
さらに、2つの平板間の空間にコンクリート又は軽量コンクリート等を充填すれば、鉄筋を用いなくても、面内、面外の剛性、強度が極めて高い複合パネルを得ることができる。
【0017】
また、本発明に係るパネル上の構造体(前記複合パネルを含む)は、柱梁によって区画された面内に充填する形で用いることができるのみならず、柱梁を用いずとも、これのみで建築物の構造壁(耐力構造体)を構成することも可能である。さらには、面外剛性、強度の高さを生かして、床スラブとして用いることもできる。大型の鋼材又は鉄筋/鉄骨コンクリート加工を有する建物において、外壁、内壁、間仕切壁、床スラブとしての使用もまた可能である。
【0018】
より具体的には、本発明は下記の構造からなる耐力ユニット及び耐力パネルを開示する。しかし、下記は例示に過ぎず、本発明は、本明細書に開示された技術思想に基づく構造体を広くカバーするものであることに留意されたい。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明が提供する耐力ユニットおよび耐力パネルは、例えば、以下のものである。
【0020】
略正六角形の形状を有する耐力ユニットであって、
略正六角形の各辺は、1つのウェブと2つのフランジから構成されC型断面を有する直線部材から構成され、
前記ウェブが略正六角形の外周を画定し、前記フランジが前記外周で画定される空間の略内側に位置し、
前記直線部材は、1つの長尺部材から構成されている耐力ユニット。
【0021】
前記の耐力ユニットであって、さらに、隣接する直線部材のフランジは、相互に重なり合う部分を有する耐力ユニット。
【0022】
前記の耐力ユニットであって、さらに、前記隣接する直線部材のフランジは、前記相互に重なり合う部分において相互に固定されている耐力ユニット。
【0023】
前記の耐力ユニットであって、さらに、前記固定は、リベット、ボルトナット、溶接のいずれかまたは複数によって行われている耐力ユニット。
【0024】
前記の耐力ユニットであって、さらに、隣接する直線部材のフランジは、相互に重なり合わないように切り欠かれている耐力ユニット。
【0025】
前記の耐力ユニットであって、さらに、前記フランジは、隣接する辺部同士において相互に固定されている耐力ユニット。
【0026】
前記フランジは、固定板を介して相互に固定されている耐力ユニット。
前記耐力ユニット複数と、
前記複数の耐力ユニットを囲むように設けられた水平部材と鉛直部材とを有する枠部材とを有し、
前記複数の耐力ユニットは前記枠部材に固定された耐力パネル。
【0027】
前記の耐力パネルであって、さらに、前記複数の耐力ユニットが、ウェブにおいて相互に固定されている耐力パネル。
【0028】
前記の耐力パネルであって、さらに、前記固定は、リベット、ボルトナット、溶接のいずれかまたは複数によって行われている耐力パネル。
【0029】
前記の耐力パネルであって、さらに、前記枠部材に囲まれる平板状の空間には、少なくともウェブを埋設するようにコンクリートが充填されている耐力パネル。
【発明の効果】
【0030】
上記の構造を有する耐力ユニット及び耐力パネルによって、軽量で、かつ製造容易であり、同時に、優れた面内せん断剛性と強度、面内曲げ剛性と強度、面外曲げ剛性と強度を有する耐力パネル、及び、これを構成する耐力ユニットを得ることができる。各実施形態が固有に有する効果については、別途述べる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明第1の実施例に係る耐力パネル、耐力ユニットおよびその鋼製部材を示す図である。
図2図2は、第1の実施例に係る耐力ユニットを製造するための長尺ユニットと耐力ユニットの固定状態を示す図である。
図3図3は、本発明の他の実施例に係る耐力ユニットおよびその固定状態を示す図である。
図4図4は、本発明のさらに別の実施例に係る耐力ユニットを作るための長尺部材を示す図である。
図5図5は、耐力ユニット相互の固定状態を示す図である。
図6図6は、他の実施例に係る耐力ユニットおよびその固定状態を示す図である。
図7図7は、耐力パネル、耐力ユニットおよびその固定状態を示す図である。
図8図8は、耐力パネルの異なる実施態様を示す図である。
図9図9は、耐力パネル、耐力ユニットおよびその固定状態のさらに異なる態様を示す図である。
図10図10は、耐力パネル、耐力ユニットおよびその固定状態のさらに異なる態様を示す図である。
図11図11は、耐力ユニットおよびその固定状態のさらに異なる態様を示す図である。
図12図12は、耐力ユニットが前記の実施態様に比較して90度回転しており、したがって耐力パネルに対する固定状況が異なる図である。
図13図13は、構造体を2次元、3次元に展開していくための基本となる六角形の外形を有するパネルを示す図である。
図14図14は、耐力ユニット相互の異なる固定状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の具体的な実施態様を実施例に基づいて説明するが、実施例はあくまでも例であって、本願発明の技術思想が実施例に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0033】
図1は、本発明にかかる耐力パネル、耐力ユニットおよびその鋼製部材の第1の実施形態を示すものである。耐力パネルは、鉛直方向のみならず水平方向あるは斜め方向等、どのような角度でも用いることができるが、ここでは便宜上、短辺が水平方向(X方向)、長編が鉛直方向(Y方向)、厚みが他の水平方向(Z方向)に位置付けられた状態を前提として以下に説明する。耐力パネルは、水平方向に延びる互いに平行な2つの水平部材142と、鉛直方向に延びる2つの鉛直部材141とから構成される枠部材によって定義される領域内に、複数の耐力ユニット110を有する。
【0034】
耐力パネル100の水平方向の寸法(内法)は、耐力ユニット110の平行な2つの直線部材112の間の距離のちょうど3倍であり、耐力パネルの鉛直方向の寸法(内法)は、耐力ユニットの直線部材の長さの15倍である。耐力ユニットは、平行な2つの直線部材が、耐力パネル100の鉛直部材141と平行になる位置(角度)に配置されている。耐力パネルの枠部材に囲まれた領域内において、略正六角形状の耐力ユニット110は、いわゆるハニカム構造を構成するよう配置されている。枠部材の近傍では、耐力ユニットは、鉛直に配置された直線部材の上端部と下端部、あるいは、頂部又は底部で枠部材に固定される。
【0035】
ここでは、上述のような耐力ユニット110と耐力パネル100の寸法関係を有する実施例について説明するが、その寸法関係は上記に限定されないことは自明である。耐力パネルの水平方向の寸法(内法)は、耐力ユニットの最小外寸(平行な直線部材の距離、外寸)の整数倍であることが望ましいが、それ以外の寸法であっても何ら支障はない。耐力パネルの鉛直方向の寸法についても、前記は例示であって、上記以外の関係であっても支障がないことは同様である。
【0036】
耐力ユニット110は、1つのウェブと2つのフランジからなるC型断面(U型断面といってもよい)を有する直線部材112から構成されている。すなわち、これに限定されるわけではないが、例えば、C型断面を有する長尺部材111を、等しい長さの6つの部分に分割する位置でフランジを切断し、フランジが内側になるように直線部材を前記フランジの切断箇所で折り曲げて(つまり、ウェブを折り曲げて)製造することができる。ウェブを折り曲げる際には、フランジが相互に干渉する可能性があるが、フランジの厚さが薄ければ、相互の干渉は大きな障害にならず、フランジ同士の重なりを形成することができる。
【0037】
前記フランジの重なり部分を相互に固定することで、耐力ユニット110は略正六角形を有する強固なユニットとなる。当該固定は、リベット、ボルトナット、溶接等の手段を用いることができるが、リベットによる固定は作業性と固定強度の点で優れている。一方、ボルトナットによる固定は、耐力ユニットまたは耐力パネルの製造過程、あるいは、使用を開始したのちにも固定強度を調整あるいは締めまし等が行える利点がある。溶接等は、ゆるみのない固定が特徴である。以下の説明においては、説明の簡略化のためにリベットを用いた固定について述べるが、前記の他の固定方法であってもよいことは自明である。
【0038】
耐力ユニットの直線部材は、C型断面を有し、ウェブが耐力ユニットの略正六角形の外形を画定し、フランジは、略正六角形の外形の内側に向かって伸び、対向する2つのフランジの距離が耐力パネルの厚さを画定する。
【0039】
耐力ユニットは、ウェブを相互に固定することで全体としてハニカム構造を構成するように組み立てられている。耐力ユニット相互の固定は、リベット、ボルトナット、スポット溶接等の手法を用いて、直接、あるいは補強プレートを介して行うことができる。それぞれの固定方法の利点及び効果は前記のとおりである。前記固定は、3つの耐力ユニットの頂部が付き合わせられる位置の近傍で行なうのが好ましいが、前記頂部と頂部の中間位置で固定すること、あるいは、その両方で固定することももちろん可能である。さらに、固定位置に、フランジと平行な補強プレートを当てて、プレートと共にフランジを固定することで、耐力ユニット相互の固定をより強固にすることができる。
【0040】
耐力ユニットと枠部材の固定は、耐力ユニット相互の固定と同様に行うことができるが、枠部材の耐力ユニットを固定する部分の厚さが大きい場合には、フランジと平行な補強プレートを用いることで応力集中を緩和し、固定部位の形状に起因する剛性・強度の低下を抑えることができる。
【0041】
上記のように構成された耐力ユニットは、6つの直線部材を通じてウェブが一体構造であること、フランジが相互に重なり合うとともに相互に固定されていることから、重量のわりに剛性・強度が非常に高い、強固な構造体を構成する。さらに、このような耐力ユニットによって構成された耐力パネルもまた、重量のわりに剛性・強度が非常に高い、強固な構造体である。この高剛性・強度は、面内の荷重に対してももちろんであるが、特に直線部材のフランジが耐力パネルの厚さ方向を画定している構造に起因して、面外の荷重に対する剛性と強度が非常に高い。
【0042】
図2(b)は、耐力ユニット110をより拡大して示した図である。6つの直線部材112が略正六角形の耐力ユニット110を構成している。直線部材112のフランジ114は、一部分が相互に重なり合い、リベット116によって相互に固定されている。また、隣接する耐力ユニット同士は、ウェブがたがいに接しており、ウェブ相互はリベット116により相互に固定されている。
【0043】
図2(a)は、6つの直線部材112を製造する前の長尺部材111を示すものである。1つのウェブと2つのフランジからなるC型断面(U型断面)を有する長尺部材111のウェブには、6つの直線部材を画定するように、5か所に切り込みが形成されている。
【0044】
図2(c)は、耐力ユニット110を相互に固定した状態を示す図である。直線部材112、112‘のフランジが重なる部分でリベット116によって相互に固定されると共に、隣接する直線部材112、112’のウェブ同士が、リベット118によって相互に固定される。
【0045】
図3は、前記とは異なる直線部材122と、前記とは異なる直線部材の固定方法を示したものである。図3(c)は、直線部材122を耐力ユニットに組み上げた際に、隣接する直線部材のフランジが重ならないように、フランジの端部を切り欠いた直線部材122を示す。この際、ウェブの部分は、6つのウェブが1つの長尺部材から構成されたものであってもよいし、ウェブも含めてそれぞれの直線部材が独立したものであってもよい。直線部材122の断面は、C字型122‘またはU字型である。
【0046】
前記直線部材122は、図3(a)(耐力ユニットの頂部に補強プレート124を当てて、これに対して各ウェブを固定することで相互に固定することもできる。さらに、図3(b)に示すように、ウェブの部分に補強プレートを当てて、これに対してウェブを固定することで、耐力ユニットを相互に固定することもできる。
【0047】
図4は、フランジが相互に重ならないように切り欠きを入れた長尺部材211を示す図である。ウェブは、相互に連続するものであってもよいし、ウェブも相互に切れていてもよいことは既述の通りである。
【0048】
図5は、耐力ユニットと枠部材との固定を示す拡大図である。枠部材に固定される耐力ユニットは、必ずしも略正六角形ではなく、図5(a)や図5(b)に示すように、略正六角形の一部の形状となる場合があることは自明である。水平部材に対して固定される直線部材146は、他端においては、隣接する耐力部材の直線部材112に対して固定される。当該直線部材146とウェブ同士が固定される他の直線部材148は、枠部材との位置関係上、他の鉛直部材よりも短い。
【0049】
図5(b)は、耐力ユニットが枠部材の隅部に対して固定される際の構造の一例を示した拡大図である。
【0050】
図6は、耐力ユニット相互の固定が前記とは異なる耐力パネル200を示す図である。図6に示す実施例においては、隣接する耐力ユニットは、図に示す形状の補強版242によって相互に固定され、補強されている。補強版は、フランジを固定するものであるが、ウェブについては、相互に直接リベットで固定するか、前記補強版を用いて相互に固定するか、更には他の方法で固定することも可能である。
【0051】
図7に示す実施例においては、耐力ユニット310のフランジ相互の固定が、1つのリベット316によっている点が前記の実施例とは異なっている。
【0052】
図8は、前記の例とは耐力ユニットと耐力パネルの寸法関係が異なる実施例を示すものである。耐力パネルの水平方向は前記同様に耐力ユニットの直線部材間距離(外側の距離)の3倍であるが、鉛直方向の長さが大きく、略正六角形の耐力ユニットを22個収容する。耐力ユニットの水平方向及び鉛直方向の寸法は、耐力パネルの水平方向及び鉛直方向の寸法の整数倍、あるいは、比較的切りの良い倍数(2.5倍等、小数を含む)であれば製造が容易であるが、そのような関係であることは必ずしも必要ではない。
【0053】
図9は、やはり前記とは異なる耐力ユニットと耐力パネルの固定方法である。図9に示す耐力パネル360によれば、枠部材の内側に、耐力ユニットを取り付けるためのフランジを設け、耐力ユニットは当該フランジに対して固定される。このような構成とすることによって、枠部材に正方形断面の部材等、耐力ユニットをやや取り付けにくい部材を使用することも可能になる。
【0054】
図10は、耐力ユニット相互に固定が前記とは異なる実施例である。耐力ユニット362は、頂部において補強版を介して相互に固定された直線部材から構成されるが、各フランジと補強版の固定は、2つのリベットによって行われる。リベットの数、固定位置、太さ等は、フランジの厚さ、大きさ等の寸法に基づいて最適な数、位置等が決定されるべきであることは自明である。
【0055】
図11は、耐力ユニット364同士を固定する更に異なる構造の拡大図である。前記の固定方法とはリベットの位置が異なる。ウェブ同士もまたリベットによって相互に固定されている構造である。
【0056】
図12に示す耐力パネル400では、耐力ユニットは略正六角形の頂部において鉛直部材に固定されており、直線部材が水平部材と接している点が前記の実施例とは異なる。
【0057】
図13は、複数の耐力部材から構成される耐力パネルが全体として略正六角形である実施例500である。ここでも、耐力パネルの枠部材に対して固定される部位を除いて、耐力ユニット510の構造自体は前記の構造と同様である。
【0058】
図14は、枠部材に対する固定方法が前記の者とは異なる耐力パネル550を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる耐力パネルは、建築物において間仕切壁、耐力壁、内装材あるいは外装材として利用可能なことは言うまでもないが、同構造の面外剛性の高さを利用して床スラブとしても利用でき、さらには建築物以外にも、軽量でかつ高剛性、高耐力が要求される種々の構造物において使用することができる。船体構造、飛行体、各種筐体などがその例であるが、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
100、200、300、350、360、400、500、550 耐力パネル
110、310、362、364、510 耐力ユニット
111、211 長尺部材
112、122、146、148 直線部材
141 鉛直部材
142 水平部材
116、118、126、316 リベット
114 フランジの重なり部分
124、240、242 補強版
【要約】
【課題】 優れた面内せん断剛性と強度、面内曲げ剛性と強度、面外曲げ剛性と強度を有し、軽量で、かつ製造容易な耐力パネル、及び、これを構成する略六角形を有する耐力ユニットの提供。
【解決手段】 略正六角形の形状を有する耐力ユニットであって、略正六角形の各辺は、1つのウェブと2つのフランジから構成されC型断面を有する直線部材から構成され、前記ウェブが略正六角形の外周を画定し、前記フランジが前記外周で画定される空間の略内側に位置し、前記直線部材は、1つの長尺部材から構成されている耐力ユニット。
【選択図】 図1
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