(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1Aは、本発明の実施形態に係るRFIDラベルの概略平面図であり、
図1Bは、
図1AのRFIDラベルのVIII−VIII線要部断面図である。図示のように、本実施形態のRFIDラベル10は、インレット基材12、インレット基材12の表面に設けられたアンテナ14、及びアンテナ14に接続されたICチップ16を備えたRFIDインレット11と、このRFIDインレット11に積層されるラベル基材18と、を有している。
【0013】
インレット基材12は、例えばポリエチレンテレフタレート又はその積層フィルムとして構成されており、その一方面(図の下方側面)には、連続台紙22に貼付するための粘着剤層20が設けられている。なお、このインレット基材12の厚さは、例えば100μmである。また、粘着剤層20の厚さは、例えば25μm程度である。さらに、連続台紙22は、後述するように複数のRFIDラベル10が貼り付けられている長尺のシート状材料であり、その厚さはたとえば70μm〜90μm程度である。本実施形態では、図面の簡略化のため、連続台紙22の長さ方向の一部のみを示している。
【0014】
アンテナ14は、例えばUHF帯(300MHz〜3GHz、特に860MHz〜960MHz)、マイクロ波(1〜300GHz、特に2.4GHz近傍)、及びHF帯(3MHz〜30MHz、特に13.56MHz近傍)等の所定周波数帯の電波を送受信する。また、アンテナ14は、所定の金属膜(例えば、銅やアルミニウム等の金属膜)から生成され、例えば異方導電性ペースト又は導電性フィルムを用いた焼付け接合によりICチップ16に接続されている。したがって、アンテナ14で送受信したデータはICチップ16において処理される。なお、アンテナ14の厚さは、例えば数μm〜数十μmである。
【0015】
ICチップ16は、図示しない接点を介してアンテナ14に接続されることで、インレット基体12の表面に設けられる。ICチップ16はインレット基材12に設けられた状態で該インレット基材12から150μm〜160μm程度の突出量となる。しかしながら、ICチップ16の厚さは、例えば所定の規格等に応じて適宜設定されるものであるので、インレット基材12からの突出量は150μm〜160μに限られるものではない。
【0016】
そして、RFIDインレット11のICチップ16側の面(インレット基材12のICチップ16が設けられた側の面)には、ICチップ16を覆うように、粘着層26を介してシート状部材である繊維シート24が積層されている。なお、本実施形態においてこの繊維シート24の面積は、インレット基材12の面積と略同一に形成されている。
【0017】
繊維シート24としては、ガラス繊維、又はナイロン繊維等が用いられる。他にも後述するように紙製シートを用いてもよい。繊維シート24は伸びや折り曲げに対して耐久性が高くなることが好ましい。
【0018】
繊維シート24の厚さは、例えば20μm〜250μm、特に20〜150μmの範囲であるが、インレット基材12に設けられるICチップ16の厚さに応じて任意に選択することができる。
【0019】
特に、繊維シート24の厚さは、ICチップ16のインレット基材12からの突出量に対して50〜150%程度であることが好ましい。ここで、繊維シート24の厚さがICチップ16の突出量の50%より小さいと、後述する繊維シート24におけるICチップ埋込部が、ICチップ16の突出分を十分にカバーできなくなるおそれがある。
【0020】
一方で、繊維シート24の厚さがICチップ16の突出量の150%より大きいと、インレット基材12に繊維シート24を被覆した状態におけるトータルの厚さが大きくなり、結果としてRFIDラベル10全体の厚さの許容範囲以上の増加につながることになりかねない。ただし、上記数値は好適例範囲であり、上記数値に限定するものではない。
【0021】
そして、本実施形態では、繊維シート24のICチップ16を覆う部分であるICチップ被覆部28に硬化材が含浸されて硬化されている。ここで、ICチップ被覆部28に含浸させる硬化材は、例えば、エポキシ系樹脂、又はシアノアクリレート系樹脂である。特に、本実施形態に係る硬化材は、硬化前の段階において低粘度性の液体であることが好ましい。これにより、硬化材をICチップ被覆部28に施すにあたり、当該ICチップ被覆部28への局所的な滴下が容易となる。
【0022】
特に好ましい硬化材は、硬化前において粘度が3〜3000mPasであり、且つ硬化後においてはショアD硬度が60〜90度であるシアノアクリレート系樹脂である。また、硬化前においてペースト状であるか又は粘度が5000〜15000mPasであり、且つショアD硬度が80〜95度であるエポキシ系樹脂を硬化材として用いても良い。
【0023】
図2は、繊維シート24のICチップ被覆部28の部分の状態の一例を説明する模式図である。特に、当図では繊維シート24が不織布である例を示している。
【0024】
図示のように、繊維シート24のICチップ被覆部28の部分は、ICチップ16により押圧された状態で、硬化材が含浸されることで硬化している。したがって、繊維シート24を構成する繊維Tの相互間の間隔は、硬化材が含浸及び硬化されたICチップ被覆部28の部分が他の部分と比較して小さくなっている。すなわち、繊維Tがより密になっている。
【0025】
したがって、本実施形態では、このようにICチップ被覆部28の部分の繊維Tがより密となっていることで、繊維シート24におけるICチップ被覆部28の厚みが他の部分と比較して小さくなる。これにより、ICチップ被覆部28がICチップ16の埋没部として機能することとなる。この点、
図2を参照すれば、相対的に肉薄のICチップ被覆部28の部分で形成されるICチップ埋没部32が、ICチップ16のインレット基材12からの突出分を収容していることが明確に理解される。
【0026】
さらに、
図1に戻ると、ラベル基材18は、リボン印字用又はサーマル印字用の紙媒体により構成され、その厚さは例えば70μm〜110μmである。また、ラベル基材18には粘着剤層30が設けられており、これにより、ラベル基材18はインレット基材12の他方面(ICチップ16が設けられている面と反対の面)に積層接着されている。なお、粘着剤層30には、その厚さが例えば15μm〜20μmに形成されたアクリル系粘着剤等の粘着剤が用いられる。
【0027】
次に、上述のRFIDラベル10の製造方法の一例について説明する。
【0028】
図3A〜
図3Dは、RFIDラベル10の製造方法を説明する図である。特に
図3Aは繊維シート24をRFIDインレット11に積層する工程を説明する図であり、
図3Bは、ICチップ被覆部28に硬化材を含浸させる工程を説明する図であり、
図3Cは、含浸させた硬化材を硬化させる工程を説明する図である。なお、
図3Dは、ラベル基材18を施す状態を説明する図である。
【0029】
図3Aに示すように、RFIDインレット11のICチップ16側の面に、繊維シート24を積層する(シート状部材積層工程)。なお、本実施形態では、上述のように繊維シート24とインレット基材12の面積が相互に略同じ大きさに形成されているので、繊維シート24がインレット基材12の略全体を覆うように積層される。
【0030】
次に、
図3Bに示すように、RFIDインレット11に積層された状態の繊維シート24のICチップ被覆部28に硬化材Pを含浸させる(硬化材含浸工程)。具体的には、液体状の硬化材Pを樹脂ピペット等により、ICチップ被覆部28に定量滴下する。硬化材Pの滴下量は、滴下対象であるICチップ被覆部28の大きさや厚さ等により適宜選択されるが、例えば5mg〜20mgの範囲内に調整される。特に、硬化材Pの目標含浸量と一度の滴下操作による滴下量が同一となるような樹脂ピペットを用いることが好ましい。これにより、含浸作業が簡素化される。なお、硬化材Pが含浸されるICチップ被覆部28の広がり径は、例えば3mm〜5mmである。
【0031】
さらに、
図3Cに示すように、ICチップ被覆部28に含浸された硬化材を硬化させる(含浸硬化材硬化工程)。具体的に、本実施形態では、硬化材がエポキシ系樹脂、又はシアノアクリレート系樹脂であるところ、硬化材をICチップ被覆部28に含浸させた後に所定時間放置する。これにより、硬化材は空気中の水分等と反応して硬化する。特に、硬化材としてシアノアクリレート系樹脂が用いられる場合には、硬化時間が比較的短いため、上述の放置時間が短縮される。一方で、硬化材としてエポキシ系樹脂を用いる場合には、硬化時間が比較的長いため、放置時間を相対的に長くする必要がある。なお、硬化材としてエポキシ系樹脂を用いる場合には、硬化時間を短縮するために、適宜、任意の硬化促進剤を添加しても良い。
【0032】
そして、
図3Dに示すように、ICチップ被覆部28に含浸された硬化材が硬化した後にラベル基材18を繊維シート24側からインレット基材12に積層させる。なお、ラベル基材18をインレット基材12に積層させる際に、必要に応じて圧接ローラ等を用いてラベル基材18を加圧することができる。
【0033】
上述した本実施形態に係るRFIDラベル10によれば、以下の効果を得ることができる。
【0034】
本実施形態に係るRFIDラベル10では、インレット基材12、該インレット基材12の表面に設けられたアンテナ14、アンテナ14に接続されたICチップ16を備えたRFIDインレット11と、RFIDインレット11に積層されるラベル基材18と、を有する。そして、RFIDインレット11のICチップ16側の面には、少なくともICチップ16を覆うように繊維シート24が積層され、繊維シート24のICチップ16を覆う部分であるICチップ被覆部28には、硬化材が含浸されて硬化される。
【0035】
これによれば、ICチップ16を覆う繊維シート24のICチップ被覆部28に硬化材が含浸されて硬化されるので、ICチップ被覆部28が高強度となり、折れ曲がり等からICチップ16及びその周辺部を保護することができる。その上で、繊維シート24におけるICチップ被覆部28と他の部分との厚さの差を小さくして厚さの均一化を図ることができる。すなわち、従来のようなICチップ被覆部28における部分的な厚さの増加を防止することができる。したがって、ICチップ16部分の補強による膨らみに起因する印字時の白抜けが抑制されるとともに、ICチップ16周辺部の強度差による応力集中が防止される。
【0036】
さらに、本実施形態では、
図1B等から理解されるように、ICチップ被覆部28はICチップ16を覆いつつも、その大きさ(平面上の広がり)が極力小さくなるように形成されている。これにより、ICチップ16の補強をピンポイントに行うことができるので、RFIDラベル10においてICチップ16周辺以外の部分の折れ曲がり性をより確実に確保することができる。また、上述のようにICチップ被覆部28の広がりを極力小さくすることで、硬化材の使用量を極力すくなくして製造コスト及び工数を削減しつつも、ICチップ16を補強する機能を確保することができる。
【0037】
特に、本実施形態のように繊維シート24が不織布により形成される場合には、
図2に示すように、ICチップ被覆部28に硬化材が含浸されて硬化されると、ICチップ被覆部28を構成する繊維Tの間の間隔は、硬化材が含浸されていない繊維シート24の部分を構成する繊維Tの間の間隔と比較して小さくなって、より密になる。
【0038】
これにより、ICチップ被覆部28の厚さを繊維シート24の他の部分より薄くすることができる。したがって、この薄くなったICチップ被覆部28の部分が、ICチップ16のインレット基材12からの突出部分を埋め込ませるICチップ埋没部32として機能することとなる。
【0039】
したがって、繊維シート24においてICチップ被覆部28と他の部分との間で厚さの均一化を図ることができる。特に、本実施形態では、繊維シート24がインレット基材12と略同じ面積を有するように形成されている。これにより、繊維シート24がインレット基材12の全域に亘って積層されるので、結果としてRFIDラベル10の全体的な厚みも均一化される。
【0040】
図4Aは、硬化材が含浸されたICチップ被覆部28の態様の変形例を説明する模式図であり、
図4Bは、
図4AにおいてICチップ16が繊維シート24に埋没する態様を概略的に示したイメージ図である。各図においては、例えば繊維シート24が織物である例を示している。本実施形態において、織物とは、繊維(束)を縦横に配列して相互に絡めてなる構造を有するシートを意味する。
【0041】
繊維シート24が織物で形成される場合には、繊維シート24を構成する繊維により網目状構造が形成されることとなる。そして、網目構造の網目によりICチップ16が埋没するICチップ埋没部32が形成される。具体的には、ICチップ16がICチップ被覆部28の網目構造部分を押圧することで、網目が伸び広がり、ICチップ埋没部32を構成する隙間が確保されている(
図4B参照)。
【0042】
これにより、ICチップ16は、繊維シート24のICチップ埋没部32に埋没された状態となるので、ICチップ16のインレット基材12からの突出分がICチップ埋没部32で吸収され、ICチップ16のラベル基材18側への突出をより効果的に防止することができる。したがって、より確実にICチップ被覆部28における部分的な厚さの増加が防止され、ラベル基材18がより平坦化され、印字の際の白抜け防止効果をより一層発揮することができる。
【0043】
特に、上記変形例では、ICチップ16を埋没させるICチップ埋没部32を、特殊な加工を行うことなく、繊維シート24の網目構造を利用して簡易に実現している。なお、上述したICチップ被覆部28の網目構造における網目の面積を、ICチップ16の面積よりも大きく形成することで、ICチップ16がICチップ被覆部28の網目を押し広げるまでも無く、当該網目に埋没させることができるようにしても良い。
【0044】
さらに、繊維シート24の他の変形例として、該繊維シート24を海綿状構造としても良い。これにより、繊維シート24がRFIDインレット11に積層された状態で、ICチップ被覆部28がICチップ16に押圧されると、当該ICチップ被覆部28が容易に凹変形して薄くなる。したがって、繊維シート24においてICチップ被覆部28と他の部分との間における厚さの均一化をより簡易に実現することができる。
【0045】
特に、繊維シート24がクッション性のある海綿状構造で構成される場合は、繊維シート24のICチップ被覆部28は上述したICチップ16による押圧によって大きく圧縮変形されるため、ICチップ被覆部28を構成する部分の繊維Tの相互間隔がより一層密集する状態となる。したがって、繊維Tの相互接触領域が増加するため、上述したICチップ被覆部28の圧縮変形状態で硬化材が含浸されて硬化されることで、当該硬化材による接着効果がより増大することとなる。これにより、ICチップ被覆部28の強度がより向上し、ICチップ16の折れ曲がり等からの保護効果をより高めることができる。
【0046】
さらなる繊維シート24の変形例として、該繊維シート24を編物により構成しても良い。ここで、編物とは、縦方向の繊維(束)又は横方向の繊維(束)を適宜ループを形成させつつ相互に絡め合わせてなる構造を有するシートを意味する。このような編物の構造によれば、織物の場合と同様の網目構造が得られて、ICチップ埋没部32の形成を容易に行うことができる。特に繊維シート24を編物により構成した場合、織物の場合よりも繊維シート24の伸縮性が高くなるので、ICチップ16の埋没部をより形成し易くなる。
【0047】
また、繊維シート24を構成する繊維の数を少なくすることで繊維密度を小さくし、繊維間に隙間を作りやすい形態としても良い。これにより、ICチップ被覆部28の繊維T間にICチップ埋没部32となり得るスペースを形成しやすくなる。さらに、繊維シート24を構成する繊維Tの太さを比較的太くすることで、繊維T間の隙間がより大きくなり、ICチップ16をICチップ埋没部32により埋没させ易くすることができる。
【0048】
さらに、本実施形態に係るRFIDラベル10は、RFIDインレット12のICチップ16側の面に、ICチップ16を覆うように繊維シート24を積層するシート状部材積層工程と、シート状部材積層工程により積層された繊維シート24のICチップ被覆部28に硬化材Pを含浸させる硬化材含浸工程と、硬化材含浸工程で含浸された硬化材を硬化させる含浸硬化材硬化工程と、を有する製造方法により製造される。
【0049】
この製造方法により、本実施形態にかかるRFIDラベル10を効率的に製造することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記硬化材含浸工程において、硬化材がICチップ被覆部28に定量滴下されることで、ICチップ被覆部28に硬化材が含浸される。すなわち、硬化材の含浸を容易に行うことができるので、結果としてRFIDラベル10の生産効率を向上させることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、ICチップ16がインレット基材12のラベル基材18側の表面に設けられている場合について説明したが、これに限られず、ICチップ16がインレット基材12の連続台紙22側の表面に設けられていても良い。この場合、ICチップ16を被覆する繊維シート24も、インレット基材12の連続台紙22側の表面に積層されることとなる。
【0052】
また、本実施形態では、インレット基材12に連続台紙22が設けられたタイプのRFIDラベル10が想定されているが、連続台紙22を有しないいわゆるライナーレスのRFIDラベルに本発明の構成を適用するようにしても良い。
【0053】
さらに、本実施形態では、繊維シート24のICチップ被覆部28は、ICチップ16を覆いつつも極力大きさが小さくなる例について説明した。しかしながら、例えばICチップ被覆部28をICチップ16の大きさに対してより大きく形成することで、硬化材を含浸・硬化させるべき領域をより広くするようにしても良い。すなわち、ICチップ16の周辺において大きな強度差が生じないようにすることが可能であるならば、硬化材を含浸させる領域の広さに制限は無い。しかしながら、製造コストやICチップ16周辺以外の部分の折れ曲がり性能を確保する観点からは、極力狭い局所的な領域にのみ硬化材を含浸させるようにすることが好ましい。
【0054】
さらに、本実施形態に係る繊維シート24に代えて、他の材料で構成されたシート状部材を用いるようにしても良い。しかしながら、他の材料は、上述の硬化材を含浸可能で且つ当該他の材料の硬化材が硬化した部分がそれ以外の部分と比較して高強度となるという条件を満たす必要がある。具体的には、硬化材を含浸させる隙間を有するゴム製シート、樹脂製シート、金属性シート、紙製シート、又は木材シートが挙げられる。
【0055】
樹脂製シートとしては、ポリプロピレン又はポリエチレン等をメッシュ状に形成したシートが想定される。また、紙製シートは、例えばセルロース繊維を絡ませて成形したものが想定される。この場合、繊維長の長いセルロース繊維を用いることで成形される紙製シートの屈曲強度を向上させることができる。さらに、紙製シートを和紙により構成しても良い。
【0056】
さらに、本実施形態では、硬化材としてエポキシ系樹脂、又はシアノアクリレート系樹脂が用いられたが、これに代えて熱硬化性樹脂や光硬化樹脂等、又は他の接着剤を硬化材として用いても良い。この場合、上述した含浸硬化材硬化工程では、加熱処理や光照射処理が行われることとなる。
【0057】
なお、上記実施形態のRFIDラベル10についてはさらなる変形例が想定される。例えば、
図8において、RFIDラベル10の変形例の一例を示す。この変形例に係るRFIDラベル10では、ラベル基材18においてICチップ16の部分に対向するICチップ対向部35が凸状にならずに、ほぼ平坦に形成されている。
【0058】
このようにラベル基材18のICチップ対向部35をほぼ平坦にする構成は、例えば、ICチップ被覆部28に硬化材Pを含浸した後(硬化材含浸工程の後に)であって、含浸された硬化材が硬化する前に(含浸硬化材硬化工程の前に)、ラベル基材15を繊維シート24に積層して圧接ローラ等を用いてラベル基材18を押圧することで得られる。これにより、印字対象であるラベル基材18の表面がより平坦化されることとなるので、印字時の白抜けがより効果的に防止されることとなる。
【0059】
さらに、ラベル基材18のICチップ対向部35に予め所定の加工を施す等の方法により、当該ICチップ対向部35が予め凹形状(陥没形状)となるようにしても良い。これにより、繊維シート24をRFIDインレット11に積層した状態で、ICチップ16によりICチップ被覆部28がその厚さ方向に若干突出した場合であっても、当該突出分をICチップ対向部35の上記凹形状で打ち消すことができる。
【0060】
さらに、ラベル基材18のICチップ対向部35をほぼ平坦にする構成、及びICチップ対向部35を予め凹形状とする構成は、上述した圧接ローラ等を用いたラベル機材18の押圧や予め加工を施すことにより実現されるものに限られない。例えば、ラベル基材18、繊維シート24、硬化材の種類、又は硬化材を施す態様(滴下量や硬化処理時間)等を適宜調整することで、ICチップ対向部35がほぼ平坦又は凹状となるようにしても良い。
【0061】
また、本実施形態に係る製造方法においては、RFIDインレット11のICチップ16側の面に繊維シート24を積層し(シート状部材積層工程)、ICチップ被覆部28に硬化材を含浸させ(硬化材含浸工程)、ICチップ被覆部28に含浸された硬化材を硬化させている(含浸硬化材硬化工程)。しかしながら、先ず、RFIDインレット11のICチップ16に硬化材を滴下し、硬化材が硬化する前にRFIDインレット11のICチップ16側の面に繊維シート24を積層して、その後、硬化材を硬化させる(所定時間放置する)ようにしても良い。
【0062】
すなわち、本明細書では、インレット基材12、該インレット基材12の表面に設けられたアンテナ14、及び該アンテナ14に接続されたICチップ16を備えたRFIDインレット11と、RFIDインレット11に積層されるラベル基材18と、を有するRFIDラベル10の製造方法であって、RFIDインレット11のICチップ16に硬化材を滴下する工程と、ICチップ16に硬化材が滴下された後であってその硬化前にRFIDインレット11のICチップ16側の面に繊維シート24を積層する工程と、硬化材を硬化する工程を含むRFIDラベル10の製造方法が想定される。
【0063】
これによれば、ICチップ16に硬化材が滴下された状態で当該硬化材が硬化する前に繊維シート24が積層されるので、積層された繊維シート24のICチップ被覆部28にはICチップ16に滴下された硬化前の硬化材が含浸され、この状態で硬化材が硬化されることとなる。したがって、この製造方法によっても本実施形態に係るRFIDラベル10を得ることができる。
【0064】
(第2実施形態)
以下では、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
図5は、上述したRFIDラベル10を印字するプリンタ(特にサーマルプリンタ)の構成を説明する図である。
【0066】
このプリンタ40は、RFIDラベル10を装填し、商品についての価格やバーコードその他の商品情報や、物品あるいはサービスに関する管理情報などの可変情報を必要に応じて印字する装置である。プリンタ40では、複数のRFIDラベル10が所定ピッチで貼付されている連続台紙22が図示しない供給部により印字部42に供給される。RFIDラベル10が配置された連続台紙22は、例えば供給部においてZ字状に折り畳まれたファンフォールド状態にして準備されている。
【0067】
印字部42は、印字ヘッド44と、この印字ヘッド44に対向配置された弾性プラテンローラ46を有している。この弾性プラテンローラ46はそのシャフト47を軸として回転駆動されることで連続台紙22が図の矢印方向に送り出される。そして、弾性プラテンローラ46により、印字ヘッド44と弾性プラテンローラ46の間に、所定印字圧力で連続台紙22のRFIDラベル10が挟まれる状態に位置調整され、RFIDラベル10に印字が行われる。
【0068】
図6は、本実施形態に係る弾性プラテンローラ46の構成を説明する図である。また、
図7は、弾性プラテンローラ46の軸方向における要部拡大断面図である。
【0069】
図示のように、弾性プラテンローラ46は、シャフト47に取り付けられた内周側弾性材48の外側に熱可塑性シリコーン製のシリコーン被覆層50を形成することで構成されている。すなわち、弾性プラテンローラ46の外表面はシリコーン被覆層50により形成されることとなる。ここで、本実施形態に係る内周側弾性材48は、例えばA硬度50度の熱硬化性シリコーンゴムである。また、シリコーン被覆層50は、例えばそのC硬度が約15度の熱可塑性シリコーン樹脂である。なお、ここでA硬度とは、JIS K6253規格に規定するデュロメータタイプAによるゴム硬度を意味する。また、C硬度とは、SRIS 0101規格に規定するスプリング式アスカーC型による硬度を意味する。
【0070】
さらに、弾性プラテンローラ46の内周側弾性材48には、その外周において、シャフト47の軸方向に所定ピッチで複数の溝部51が形成されている。そして、この内周側弾性材48の複数の溝部の位置に合わせて、シリコーン被覆層50に複数の被覆層溝52が形成されている。
【0071】
そして、上述の構成を有する弾性プラテンローラ46が用いられたプリンタ40によれば、以下の効果を得ることができる。
【0072】
すなわち、本実施形態に係るプリンタ40は、RFIDラベル10のラベル基材18に印字を行う印字ヘッド44と、印字ヘッド44に対向配置され、外表面であるシリコーン被覆層50に被覆層溝52が形成された弾性プラテンローラ46と、を有する。
【0073】
これによれば、弾性プラテンローラ46の外表面であるシリコーン被覆層50の被覆層溝52は、本実施形態に係るRFIDラベル10のICチップ被覆部28(ICチップ16)に対応する部分と他の部分の凹凸を吸収するクッション機能を発揮する。したがって、上述の弾性プラテンローラ46を備えたプリンタ40を、本実施形態に係るRFIDラベル10の印字に用いることで、印字の際の白抜け防止効果がより一層発揮されることとなる。
【0074】
なお、本実施形態の弾性プラテンローラ46は、シリコーンゴム製の内周側弾性材48にシリコーン被覆層50を被覆する構成をとっているが、この構成は変更可能である。すなわち、RFIDラベル10のラベル基材18に押し当てられる弾性プラテンローラ46の外表面の被覆層溝52が、当該RFIDラベル10のICチップ被覆部28に対応する部分と他の部分との凹凸を吸収し得る機能を発揮するのであれば、弾性プラテンローラ46の内周側部材を例えば金属等の非弾性体(剛体)で構成しても良い。さらに、弾性プラテンローラ46の外表面もシリコーン樹脂に限られず、他の種々の弾性材料を用いることができる。
【0075】
一方で、外表面をシリコーン樹脂で形成すると、粘着剤に対する剥離性が高く、印字対象のRFIDラベルが弾性プラテンローラ46の外表面に付着してしまうことが防止されるので、より好ましい。
【0076】
なお、プリンタ40は、インクジェット式であっても良い。この場合、ラベル基材18はインクジェット印刷用の用紙で構成されることとなる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体例に限定する趣旨ではない。また、上記各実施形態は任意に組み合わせが可能である。