(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のガス検査機の点検処理システムでは、ボンベなどのガス容器に密封された点検用ガスをそのままガス検査機に供給してガス警報確認処理を実行する。従って、点検用ガスの必要量に応じた大容量のガス容器が必要となる。更に、組成は同じでも濃度が異なる点検用ガスを利用する場合には、その異なる濃度毎に別のガス容器が必要となって、設置スペースの甚大化を招くことになる。
【0006】
更に、ガス容器に密封された点検用ガスは、一酸化炭素や可燃性ガスなどの特定成分を精製空気や不活性ガスなどで希釈したものであり、水分を殆ど含まない乾燥状態であった。このような乾燥状態の点検用ガスをガス検査機のガス警報確認処理で利用すると、当該ガス検査機のセンサ部が乾燥した状態となって通常使用時とは異なる条件下で作動することになり、結果、正確な点検結果を得ることができない場合があった。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ガス検査機に対して点検用ガスを供給してガス警報機能の異常の有無を確認するガス警報確認処理を実行するガス検査機の点検処理技術において、ガス容器の設置スペースの縮小を図りながら、ガス警報確認処理により正確な点検結果を得ることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発
明は、ガス導入部から導入した導入ガス中の特定成分の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有するガス検査機に対し、当該ガス検査機のガス導入部にガス供給部を介して点検用ガスを供給して、前記ガス検査機のガス警報機能の異常の有無を確認するガス警報確認処理を実行するガス検査機の点検処理方法であって、
ガス容器から取り出した原料ガスを、外部に開放される開放部から取り込んだ大気で希釈して前記点検用ガスを生成する希釈処理を実行する
と好適である。
【0009】
本構成によれば、ガス容器に点検用ガスをそのまま密封して貯留するのではなく、ガス容器には高濃度の原料ガスを密封しておき、上記希釈処理により、その原料ガスを大気で希釈して点検用ガスを生成するので、当該ガス容器を、点検用ガスの必要量よりも小容量のものとすることができる。更に、上記希釈処理では、原料ガスの希釈用ガスとして、乾燥状態の精製空気や不活性ガスなどではなく、水分を適度に含む大気を利用する。よって、この希釈処理で生成した点検用ガスを、上記ガス警報確認処理においてガス検査機に供給すると、当該ガス検査機のセンサ部は、過剰に乾燥することなく大気と同程度の状態に維持されて、通常使用時と同条件下で作動することになる。
従って、本発明により、ガス容器の設置スペースの縮小を図りながら、ガス警報確認処理により正確な点検結果を得ることができる技術を提供する。
【0012】
本発明の第
1特徴構成は、ガス導入部から導入した導入ガス中の特定成分の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有するガス検査機に対し、当該ガス検査機のガス導入部にガス供給部を介して点検用ガスを供給して、前記ガス検査機のガス警報機能の異常の有無を確認するガス警報確認処理を実行するガス検査機の点検処理方法であって、
前記ガス検査機が、前記導入ガスを前記ガス導入部から吸引する吸引式に構成され、
ガス容器から取り出した原料ガスを大気で希釈して前記点検用ガスを生成する希釈処理を実行し、
前記ガス警報確認処理において、前記ガス検査機のガス吸引流量よりも多い点検用ガスを前記ガス供給部に供給すると共に、前記ガス検査機のガス導入部に吸引されなかった点検用ガスを排気する点にある。
【0013】
本構成によれば、上記ガス警報確認処理において、吸引式のガス検査機のガス導入部にガス供給部を介して点検用ガスを供給するにあたり、ガス検査機のガス吸引流量と同量の点検用ガスを供給するのではなく、当該ガス吸引流量よりも多い点検用ガスを供給し、ガス検査機のガス導入部に吸引されなかった点検用ガスを排気する。すると、ガス検査機は、不足することなく点検用ガスを吸引し、更にはその吸引流量をシステム本体側の点検用ガスの供給流量に関係なく適正な吸引流量に維持して、通常使用時と同条件下で作動することになる。よって、このガス警報確認処理において一層正確な点検結果を得ることができる。
【0014】
本発
明は、前記希釈処理の実行開始時において一時的に、前記原料ガスの流量を、前記原料ガスの希釈割合に応じた設定流量よりも多くする
と好適である。
【0015】
本構成によれば、上記希釈処理の実行開始時において一時的に原料ガスの流量を上記設定流量よりも多くすることで、当該希釈処理にて生成される点検用ガスの濃度をできるだけ早く適切な濃度に到達させることができるので、その点検用ガスを利用するガス警報確認処理を早期に開始することができる。
本発明の第
2特徴構成は、前記ガス容器から取り込んだ原料ガスが通流する原料ガス経路と、外部に開放される開放部から取り込んだ大気が通流する大気供給経路と、前記原料ガス経路と前記大気供給経路とが合流する合流部と、前記合流部から前記ガス検査機のガス導入部が接続される前記ガス供給部までの点検用ガス経路と、を設け、
前記ガス容器から取り出した原料ガスを前記原料ガス経路から前記合流部に供給しながら前記開放部から取り込んだ大気を前記大気供給経路から前記合流部に供給して当該合流部で原料ガスを大気で希釈して前記点検用ガスを生成する希釈処理を実行しながら、前記ガス警報確認処理を実行して、前記合流部で生成された前記点検用ガスを当該合流部から前記点検用ガス経路を通じて前記ガス供給部に供給する点にある。
【0016】
本発明の第
3特徴構成は、ガス導入部から導入した導入ガス中の特定成分の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有するガス検査機に対し、当該ガス検査機のガス導入部にガス供給部を介して点検用ガスを供給して、前記ガス検査機のガス警報機能の異常の有無を確認するガス警報確認処理を実行するガス検査機の点検処理方法であって、
ガス容器から取り出した原料ガスを大気で希釈して前記点検用ガスを生成する希釈処理を実行し、
前記希釈処理において、前記原料ガスを原料ガス経路に通流させると共に、当該原料ガスよりも大流量の大気を大気供給経路に通流させて、前記原料ガス経路に通流する原料ガスを前記大気供給経路に通流する大気で希釈し、
前記希釈処理に代えて、前記ガス容器から取り出した原料ガスをそのまま希釈することなく前記点検用ガスとする非希釈処理を実行する場合には、前記大気供給経路を介して前記原料ガスを前記ガス供給部に供給する点にある。
【0017】
本構成によれば、上記希釈処理において、原料ガスをそれよりも大流量の大気にて希釈するので、その際に大気が通流する大気供給経路やその経路に設けられる流量計等は、その際に原料ガスが通流する原料ガス経路よりも、大流量に対応するものとして構成される。この場合、原料ガスを希釈することなくそのまま点検用ガスとする非希釈処理を実行する場合には、その原料ガスの流量が点検用ガスの必要流量に相当する比較的大流量になることから、その原料ガスを原料ガス経路に通流させる場合には、当該原料ガス経路やその経路に設けられる流量計等を小流量から大流量の幅広い流量に対応する煩雑且つ大型なものとして構成する必要がある。
そこで、上記非希釈処理では、比較的大流量の原料ガスを大流量に対応する大気供給経路を介してガス供給部に供給することで、原料ガス経路やその経路に設けられる流量計等を小流量のみに対応する比較的簡素且つ小型なものとして構成することができる。
本発明の第
4特徴構成は、前記ガス警報確認処理の実行前に、前記希釈処理で生成された点検用ガスを外部に排気して、前記点検用ガスの濃度を安定化させる濃度安定化処理を実行する点にある。
本構成によれば、上記ガス警報確認処理の実行前では、上記濃度安定化処理が実行されて、流量や濃度が未だ安定していない点検用ガスが外部に排気されるので、後のガス警報確認処理の実行当初から流量や濃度が安定した点検用ガスをガス検査機のガス導入部に供給して正確な点検結果を得ることができる。
【0018】
本発
明は、ガス導入部から導入した導入ガス中の特定成分の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有するガス検査機に対し、当該ガス検査機のガス導入部にガス供給部を介して点検用ガスを供給して、前記ガス検査機のガス警報機能の異常の有無を確認するガス警報確認処理を実行する点検処理手段を備えたガス検査機の点検処理システムであって、
ガス容器から取り出した原料ガスを、外部に開放される開放部から取り込んだ大気で希釈して前記点検用ガスを生成する希釈処理を実行可能な希釈処理手段を備え
ると好適である。
【0019】
本構成によれば、上記ガス警報確認処理を実行する点検処理手段を備えると共に、上記希釈処理を実行可能な希釈処理手段を備える。このことで、本発明に係るガス検査機の点検処理方法を実行する点検処理システムを構築することができ、本発明に係るガス検査機の点検処理方法と同様に、点検対象とした複数のガス検査機に対して、合理的に点検処理を実行することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示す点検処理システム100は、ガス検査機70の状態を点検するための点検処理方法を実施するシステムとして構成されており、ガス検査機70を収容するための収容部5が正面に設けられたシステム本体1と、当該収容部5に着脱自在に装着されて、ガス検査機70の収容部5への収容を可能とするアダプタ50とを備える。
【0022】
尚、本願において、システム本体1において収容部5やディスプレイ3が設けられる面(
図1の手前側の面、
図2の左側の面、
図3の左手前側の面)を「正面」と呼び、その正面が向かう方向を「手前方向」と呼ぶ。これに対し、正面の反対側の面を「背面」と呼び、その背面が向かう方向を「奥行き方向」と呼ぶ。また、正面視における左側を単に「左側方側」と呼び、正面視における右側を単に「右側方側」と呼ぶ。
【0023】
[ガス検査機]
先ず、ガス検査機70の構成について、
図1、及び
図2を参照して説明する。
ガス検査機70は、詳細については後述するが、ガス導入部72から導入した導入ガス中の特定成分としての例えば可燃性ガス(水素、メタン、プロパン等)や一酸化炭素の状態に応じて所定のガス警報を出力するガス警報機能を有すると共に、ガス導入部72の閉塞時に所定の閉塞警報を出力する閉塞警報機能を有する。
【0024】
具体的に、かかるガス検査機70は、検査機本体71と、当該検査機本体71内にガスを導入するためのガス導入部72とを備える。
ガス導入部72は、検査機本体71から突出形成された略筒状の筒状部74、及び、当該筒状部74の先端側に連接する尖状の吸引ノズル73で構成されている。一方、検査機本体71内には、ガス導入部72を介して外部のガスを吸引するための吸引ポンプ75が設けられており、このことで、ガス検査機70は、吸引ノズル73から積極的にガスを吸引する吸引式に構成されている。
更に、検査機本体71内には、吸引ポンプ75で吸引した導入ガスが供給されて当該導入ガス中の特定成分に感応するセンサ素子等で構成されたセンサ部76、及び、コンピュータからなる制御部78等が設けられている。
【0025】
ガス検査機70の前面には所定の表示や入力操作を行うための表示操作部80が設けられており、制御部78は、センサ部76の出力信号から導入ガス中の特定成分濃度を求め、検査機本体71に設けられた表示操作部80に表示すると共に、その可燃性ガス濃度が許容範囲を超えた場合には、それを作業者に通知するべく、同表示操作部80に所定のガス警報表示(ガス警報の一例)を表示し、更には、検査機本体71に設けられたスピーカ82が所定のガス警報音(ガス警報の一例)を発生するように構成されている。そして、このような機能をガス警報機能と呼ぶ。
【0026】
更に、このガス検査機70の制御部78は、吸引ポンプ75の作動時において、吸引ポンプ75の負荷(以下「ポンプ負荷」と呼ぶ。)を当該吸引ポンプ75の駆動電力の電流値等で監視し、吸引ポンプ75の作動時においてポンプ負荷が異常に高い場合には、ガス導入部72の状態がゴミ等により閉塞している閉塞状態であると判定する。そして、この閉塞状態を閉塞異常として、作業者に通知するべく、表示操作部80に所定の閉塞警報表示(閉塞警報の一例)を表示し、更には、スピーカ82が所定の閉塞警報音(閉塞警報の一例)を発生するように構成されている。そして、このような機能を閉塞警報機能と呼ぶ。
【0027】
検査機本体71の側面側には、センサ部76を通流したガスを排出する排気部77と、制御部78が外部との間で赤外線通信(無線通信の一例)を行うための通信部79とが配置されている。
【0028】
[点検処理システム]
次に、点検処理システム100の詳細構成、即ち点検処理システム100が備えるシステム本体1及びアダプタ50の詳細構成について、順に説明する。
尚、以下の説明では、点検処理システム100の点検対象を吸引式のガス検査機70とする例を説明するが、吸引式のガス検査機70以外にも、ガスが自然にセンサ部に導入される拡散式のガス検査機を点検対象としても構わない。また、この場合、必要な処理を適宜追加又は不要な処理を適宜割愛しても構わない。
【0029】
〔システム本体〕
次に、点検処理システム100が備えるシステム本体1の構成について、
図1、
図2、及び
図7〜
図13を参照して説明する。
図1に示すように、システム本体1の前面には、ガス検査機70を収容するための4つの収容部5が設けられており、このことでガス検査機70の複数を点検対象とすることが可能となる。システム本体1の前面には、このような収容部5の他に、ディスプレイ3やその他操作スイッチ及びスピーカなどの機器が配置されており、更には、点検対象となるガス検査機70のセンサ部76が感応する特定成分を含む原料ガスを貯留する2つのガス容器C1,C2が着脱自在に装着されている。尚、詳細は後述するが、このガス容器C1,C2に貯留される原料ガスは、適宜大気で希釈されて点検用ガスとして利用される。
【0030】
4つの収容部5は何れも、正面側に開口する共通の矩形断面凹部として形成されている。
図1及び
図2に示すように、この収容部5の内部奥面側には、ガス検査機70のガス導入部72に点検用ガス等のガスを供給するためのガス供給部である給気用継手5aと、ガス検査機70から排出された排気を吸引して外部に排出するための排気吸引部である排気用継手5bと、アダプタ50に設けられた基盤52のコネクタ55に接続されるコネクタ5cとが配置されている。
尚、
図1において、アダプタ50が装着されていない収容部5には、ガス検査機70の誤挿入等を防止するために、その前面にカバー5dが設けられている。
【0031】
コネクタ5cは、同じくシステム本体1に設けられたコンピュータからなる制御部2に接続されている。よって、アダプタ50側の基盤52のコネクタ55とシステム本体1側のコネクタ5cとが接続されることで、システム本体1側の制御部2はアダプタ50側の制御部54との間で有線通信が可能となる。また、詳細は後述するが、アダプタ50側の制御部54は、当該アダプタ50のガス検査機収容部60に収容されたガス検査機70の制御部78との間で無線通信が可能に構成されている。従って、システム本体1側の制御部2は、アダプタ50側の制御部54との間で通信可能となる上に、当該制御部54を介して、収容部5にアダプタ50を介在させて収容されたガス検査機70側の制御部78との間でも通信可能となる。
【0032】
このシステム本体1側の制御部2は、
図7等に示すように、所定のプログラムを実行することにより、詳細については後述するが、所定の点検処理を実行する点検処理手段2aとして機能する。
更に、制御部2は、上記点検処理手段2aに加えて、収容部5に装着されたアダプタ50の識別情報であるアダプタ識別情報を取得可能なアダプタ識別情報取得手段2b、及び、収容部5に収容されたガス検査機70の識別情報であるガス検査機識別情報を取得可能なガス検査機識別情報取得手段2cとしても機能する。
【0033】
即ち、アダプタ識別情報取得手段2bは、収容部5に装着されたアダプタ50側の制御部54との間で通信を行うことで、当該制御部54から、アダプタ50の型式等のアダプタ識別情報を当該アダプタ50が装着された収容部5に関連付けて取得する。
一方、ガス検査機識別情報取得手段2cは、収容部5にアダプタ50を介在させて収容されたガス検査機70側の制御部78との間で通信を行うことで、当該制御部78から、ガス検査機70の型式等のガス検査機識別情報を当該ガス検査機70が収容された収容部5に関連付けて取得する。
【0034】
また、制御部2は、これら取得した各種識別情報をメモリ等からなる記憶部4に記憶させ、適時記憶部4から必要な情報を取り出すことができる。
尚、アダプタ識別情報の取得タイミングについては、ガス検査機情報の取得タイミングと同様に、ガス検査機70の収容部5への収容時とすることができるが、ガス検査機70の収容時における情報処理量の削減等を目的として、収容部5へのアダプタ50の装着時とされている。
【0035】
図7〜
図13に示すように、システム本体1には、外部に開放して大気OAの取り込み又は外部への排気EAの排出を行うための開放部O1〜O4が設けられており、図示は省略するが、この開放部O1〜O4は、システム本体1の背面側に設けられている。更に、システム本体1の内部には、収容部5に設けられた給気用継手5a及び排気用継手5bと、開放部O1〜O4及びガス容器C1,C2とを接続する各種経路が設けられており、これら経路には、圧力計Mp1〜Mp5、流量計Mf1〜Mf3、弁V1〜V13、ポンプP1,P2、圧力レギュレータR1,R2、及びフィルタF1〜F3等が配置されている。尚、圧力計Mp1〜Mp3で計測された圧力値、及び流量計Mf1〜Mf3で計測された流量値は、制御部2に入力され、また、制御部2は、それら入力信号等に基づいて、弁V1〜V13、ポンプP1,P2、及び圧力レギュレータR1〜R3の作動制御を実行する。
尚、
図7〜
図13では、弁V1〜V13において、閉状態のポートを黒塗り三角で示し、開状態のポートを白抜き三角で示している。
【0036】
例えば、後述する希釈処理においてガス容器C1,C2から取り込んだ原料ガスG0が通流する原料ガス経路6bは、夫々のガス容器C1,C2から、夫々の圧力計Mp4,Mp5、夫々の圧力レギュレータR1,R2、夫々の流量調整弁V9,V10、三方弁V8、二方弁V7、及び流量計Mf2を経由して、合流部B1までの経路として設けられている。
点検用ガスG1が通流する点検用ガス経路6cは、合流部B1から、三方弁V4、三方弁V3、分岐部B2、及び三方弁V1を経由して、給気用継手5aまでの経路として設けられている。
そして、この原料ガス経路6bや点検用ガス経路6cのように、点検用ガスG1又はその原料となる原料ガスG0が通流する経路をガス経路と呼ぶ。
【0037】
また、後述する希釈処理において原料ガスG0を希釈するための大気OAが通流する大気供給経路6aは、開放部O3から、フィルタF3、ポンプP1、三方弁V13、三方弁V12、二方弁V11、及び流量計Mf3を経由して、合流部B1までの経路として設けられている。
また、給気用継手5aを大気開放可能な大気開放経路は、給気用継手5aから、三方弁V1、三方弁V3、流量計Mf1、及びフィルタF2を経由して、開放部O2までの経路として設けられている。
【0038】
上記原料ガス経路6bと上記大気供給経路6aとは、ガス容器C1,C2から取り出した原料ガスG0を大気OAで希釈して点検用ガスG1を生成する希釈処理を実行可能な希釈処理手段6として機能する。
【0039】
〔アダプタ〕
次に、アダプタ50の構成について、
図1、
図2、及び
図3に基づいて説明する。
アダプタ50は、
図1に示すように、システム本体1の正面に設けられた収容部5に対して着脱自在に装着されて、ガス検査機70の収容部5への収容を可能とするものとして構成されている。即ち、アダプタ50の外形はその収容部5の内部に正面側から挿入されて内嵌するよう共通の矩形断面を有し、アダプタ50の正面側の上下には、システム本体1に対してアダプタ50をネジにて固定するための取付用爪64が上下方向に突出形成されている。
そして、このアダプタ50は、収容部5に対して正面側から奥行き方向に挿入し、当該アダプタ50の取付用爪64を収容部5の縁部にネジにて固定する形態で、収容部5に装着される。
【0040】
尚、システム本体1へのアダプタ50の装着は、ガス検査機70の点検に先立って行えばよいが、誤装着等を防止するために、使用者側で行うのではなく、納入元(メーカー等)側で行うことが望ましい。即ち、納入元は、点検システム100の受注時において、予め使用者が使用しているガス検査機70の仕様を把握し、それに基づいて適切なアダプタ50を予めシステム本体1へ装着した点検システム100を使用者に納入する。また、納入元は、メンテナンスやオーバーホール等の時点において、使用者が使用しているアダプタ50の変更等に基づいてアダプタ50を変更することができる。
【0041】
アダプタ50には、正面側の開口からガス検査機70を挿入して収容する矩形断面凹部であるガス検査機収容部60が設けられている。このガス検査機収容部60は、その形状やそれに設けられた各種部位の配置等が、ガス検査機70の所定の型式に適合したものとして構成されており、複数の型式のガス検査機70の夫々に適合した複数種のアダプタ50が用意されている。このことで、共通の収容部5に対してアダプタ50を介在させる形態で複数種の型式のガス検査機70を収容することができ、収容部5には、使用者が所有するガス検査機70の型式に応じたアダプタ50が選定されて装着されることになる。
尚、このようなアダプタ50の選定及び装着は、使用者が自ら行っても構わないが、誤った選定や装着等を防止するために、点検処理システム100の販売者側で行うことが望ましい。
【0042】
アダプタ50は、
図3に示すように、上側ケーシング50a及び下側ケーシング50bからなる上下2分割構造で構成されており、上述したガス検査機収容部60が、上側ケーシング50aの下面側の凹部と下側ケーシング50bの上面側の凹部とを組み合わせる形態で形成されている。
このアダプタ50の上側ケーシング50aの下面側や下側ケーシング50bの上面側には、上記ガス検査機収容部60以外に、詳細については後述するが、排気用チューブ57やフィルタ58が設けられる排気案内路56、給気用チューブ62が設けられる給気案内路61、通信部53や制御部54等が設けられた基盤52が収容される基盤収容部51、及び、通信用通路63などを形成するための各種凹部が設けられている。
【0043】
排気案内路56は、収容部5へ収容されたガス検査機70からの排気を排気用継手5bに案内する通路として、ガス検査機収容部60の左側に隣接して設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この排気案内路56には、ガス検査機収容部60に対し側方から開口する開口部59を有しており、この開口部59は、ガス検査機収容部60に収容されたガス検査機70の排気部77に対し、所定の間隔をあけて対向配置されている。更に、排気用継手5bのガス吸引流量(即ちシステム本体1側のポンプP2(
図7〜
図13参照)の吸引流量)が、ガス検査機70の排気流量(即ちガス検査機70側の吸引ポンプ75の吸引流量)よりも多く設定されている。これにより、ガス検査機70の排気部77から排出された排気を確実に開口部59から排気案内路56に吸引することができる。更に、この開口部59には、ガス検査機70からの排気に加えて、ガス検査機収容部60の周辺空気が取り込まれることになる。即ち、ガス検査機70からの排気を周辺空気で希釈して開口部59から排気案内路56に吸引することができ、その希釈された排気をシステム本体1側から外部に安全な状態で外部に排出することができる。
【0044】
排気案内路56において、開口部59に面する空間にはフィルタ58が設けられており、その奥側には排気用チューブ57が内嵌されている。この排気用チューブ57の奥側端部が、収容部5の内部奥面側に設けられた排気用継手5bに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、排気用継手5bに対する排気用チューブ57の接続を簡単に行うことができる。
【0045】
給気案内路61は、給気用継手5aに供給された点検用ガスをガス検査機70のガス導入部72に案内する通路として、ガス検査機収容部60の奥側に設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この給気案内路61には、給気用チューブ62が内嵌されている。この給気用チューブ62の手前側端部が、ガス検査機収容部60に収容されるガス検査機70の吸引ノズル73に嵌合接続され、その接続方向が、ガス検査機収容部60へのガス検査機70の挿入方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、ガス検査機収容部60へのガス検査機70の挿入時において、給気用チューブ62に対する吸引ノズル73の接続を簡単に行うことができる。
【0046】
更に、この給気用チューブ62の奥側端部が、収容部5の内部奥面側に設けられた給気用継手5aに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、給気用継手5aに対する給気用チューブ62の接続を簡単に行うことができる。
【0047】
基盤収容部51は、排気案内路56の左側に隣接して設けられており、その延出方向が収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向とされている。この基盤収容部51には、板状の基盤52が板面を左右方向に対して垂直となる姿勢で収容されている。そして、この基盤52の奥側端部に設けられたコネクタ55が、収容部5の内部奥面側に設けられたコネクタ5cに嵌合接続され、その接続方向が、収容部5へのアダプタ50の装着方向(即ち奥行方向)に沿う方向に設定されている。このことで、収容部5に対するアダプタ50の装着時において、システム本体1側のコネクタ5cに対するアダプタ50側のコネクタ55の接続を簡単に行うことができる。
【0048】
更に、この基盤52には、CPU等からなる制御部54が配置されており、更にガス検査機収容部60側の面には、当該ガス検査機収容部60に収容されたガス検査機70の通信部79との間で赤外線通信を行うための通信部53が配置されている。
そして、アダプタ50には、これら通信部79,53間で送受信される通信用赤外線を通過させるための通信用通路63が左右方向に延出する姿勢でアダプタ50に形成されている。このことで、ガス検査機70をアダプタ50のガス検査機収容部60に収容する際に、完全に収容された時点でこれら通信部79,53間の赤外線通信が可能となる。そこで、このような赤外線通信が可能となった状態を検出することで、ガス検査機70の収容完了を判定することができる。
尚、アダプタ50において、通信部53を設ける基盤52については、多種のアダプタに採用可能なように、複数種の通信部53のパターンを準備しておき、製造時にどの通信部を実装するかを決定することで、当該基盤52の共通化が図られている。
【0049】
[点検処理方法]
次に、上述した点検処理システム100で実行される点検処理方法について、
図4〜
図13を参照して、説明する。
先ず、作業者は、点検対象となるガス検査機70を作動させた状態で、収容部5に装着されたアダプタ50のガス検査機収容部60に挿入する。すると、前述したように、ガス検査機70側の吸引ノズル73がアダプタ50側の給気用チューブ62に接続されると共に、ガス検査機70側の通信部79とアダプタ50側の通信部53との間の赤外線通信が可能な状態となる。そして、システム本体1側の制御部2は、その赤外線通信が可能となった状態を、ガス検査機70の収容完了として判定する。
【0050】
そして、制御部2は、ガス検査機70が収容部5に収容された状態で、ディスプレイ3に初期画面(
図6(a)参照)を表示し、その初期画面上の「バンプテスト」ボタンが使用者によって操作された際に、点検処理方法の実行を開始する。
そして、点検処理方法では、
図4に示すように、整合性確認処理(#S1)及び所定のグルーピング処理(#S2)を順に実行して、点検対象のガス検査機70を決定(#S3)した上で、当該決定したガス検査機70に対して点検処理(#S4)を実行する。また、この点検処理(#S4)の実行後には、クリーニング処理(#S6)を実行する。また、4つの収容部5に対してガス検査機70が複数収容されている場合には、そのガス検査機の複数を点検対象として、当該点検対象とした複数のガス検査機70に対して、直列的に点検処理(#S4)を順次実行する。尚、本実施形態では、点検処理方法を構成する各種処理は直列的に順次実行するものとするが、それの処理順序を変更したり、複数の処理の少なくとも一部を重複させたり、別の処理を間に介在させるなどのように、適宜可能な範囲内で実行手順を変更しても構わない。
以下、これら点検処理方法を構成する各処理の詳細について順に説明を加える。
【0051】
〔整合性確認処理〕
図4に示す整合性確認処理(#S1)では、点検処理(#S4)の実行前に、アダプタ識別情報取得手段2bで取得したアダプタ識別情報とガス検査機識別情報取得手段2cで取得したガス検査機識別情報との整合性を確認する。
即ち、この整合性確認処理(#S1)では、アダプタ50の装着時に予め記憶部4に記憶した各収容部5のアダプタ識別情報を参照し、収容部5に収容されたガス検査機70のガス検査機識別情報が、同じ収容部5に関連付けられたアダプタ識別情報に適合するか否かを比較する形態で、点検対象となるガス検査機70に対して適合したアダプタ50が使用されているか否かを確認する。そして、適合していない場合には、点検処理(#S4)を停止して使用者にその旨を通知し、逆に、適合している場合には、次のグルーピング処理(#S2)に進む。
そして、このような整合性確認処理(#S1)を実行することで、例えばアダプタ50に対しそれに適合しないガス検査機70がセットされた状態で後の点検処理(#S4)が実行されることが防止される。よって、このようなガス検査機70とアダプタ50との組み合わせが不適合であることに起因する点検用ガスの漏洩や誤った点検結果を得るという問題が回避される。
【0052】
〔グルーピング処理〕
図4に示すグルーピング処理(#S2)では、4つの収容部5に収容されたガス検査機70の複数を点検対象として、当該点検対象とした複数のガス検査機70の夫々に対して、当該ガス検査機70に供給する点検用ガスに応じてグループ分けを行う。更に、このグルーピング処理(#S2)では、点検用ガスに関する種々の情報をグループ分けの指標とすることができるが、本実施形態では、ガス検査機70に供給する点検用ガスの組成や濃度をグループ分けの指標としている。
【0053】
このようなグルーピング処理(#S2)を実行し、後の点検処理(#S4)の実行後に、同じグループに属する次の点検対象のガス検査機70が存在するか否かを確認する(#S5)。そして、同じグループに属する次の点検対象のガス検査機70が存在する場合には、そのガス検査機70に対する点検処理(#S4)を優先して実行し、一方、存在しない場合には、後述するクリーニング処理(#S6)を実行した上で、別のグループに属する点検対象のガス検査機70が存在するか否かを確認し(#S7)、その別のグループに属するガス検査機70に対する点検処理(#S4)に移行する。
そして、このようにグルーピング処理(#S2)を実行して、当該グループ毎に順次点検処理(#S4)を実行することで、点検対象の切り替えに伴う点検用ガスの組成や濃度の変更が簡素化されている。
【0054】
〔点検処理〕
図4に示す点検処理(#S4)の詳細な処理フローを
図5に示す。
図5に示すように、この点検処理では、点検対象のガス検査機70に対して、作業者確認処理(#S10)、初期確認処理(#S12)、閉塞警報確認処理(#S13)、吸引流量確認処理(#S14)、及びガス警報確認処理(#S15)を順に実行する。また、ガス警報確認処理の実行前、具体的には初期確認処理(#S12)〜吸引流量確認処理(#S14)の実行に並行して、濃度安定化処理(#S11)を実行する。
以下、これら点検処理を構成する各種処理の詳細について説明を加える。
【0055】
(作業者確認処理)
作業者確認処理(#S10)では、ディスプレイ3に作業者確認画面(
図6(b)参照)を表示する。この作業者確認画面には、作業者が目視等で確認すべき点検項目が表示されており、作業者は、この表示に沿ってガス検査機70の目視等による点検を行い、問題がない場合には、同画面に表示されている「確認完了」ボタンを操作する。その「確認完了」ボタンが操作されると、この作業者確認処理(#S10)を終了し、ディスプレイ3の作業者確認画面(
図6(b)参照)をバンプテスト画面(
図6(c)参照)に遷移させると共に、次の初期確認処理(#S12)の実行を開始する。
【0056】
(初期確認処理)
初期確認処理(#S12)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図7に示す。この初期確認処理(#S12)では、オートゼロ設定と電池残量確認を行う。
オートゼロ設定では、ガス検査機70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを、開放部O1に開放させるよう、三方弁V1の切替状態を設定する。すると、ガス検査機70は、ガス導入部72から開放部O1を介して大気OAを吸引し、当該吸引した大気OAをセンサ部76に供給する状態となる。この状態で、ガス検査機70側の制御部78に対してゼロ設定指示を送信し、それを受信したガス検査機70側の制御部78は、センサ部76の出力をゼロに設定する。一方、電池残量確認では、ガス検査機70側の電池残量を、同ガス検査機70の制御部78から受信する。
そして、オートゼロ設定と電池残量確認とが完了すると、上記ゼロ設定を行った旨と電池残量とをディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この初期確認処理(#S12)を終了する。
【0057】
(閉塞警報確認処理)
閉塞警報確認処理(#S13)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図8に示す。この閉塞警報確認処理(#S13)では、ガス検査機70においてガス導入部72の閉塞時に所定の閉塞警報を出力する閉塞警報機能の異常の有無を確認する。
即ち、閉塞警報確認処理(#S13)では、ガス検査機70のガス導入部72に給気用継手5aが接続された状態で、給気用継手5aからのガスの流出を遮断するように、給気用継手5aに通じる三方弁V1,V3,V4,V5の切替状態を設定する。すると、ガス検査機70のガス導入部72の状態は擬似的な閉塞状態となり、その際のガス検査機70の閉塞警報機能による閉塞警報の出力の有無をガス検査機70側の制御部78との通信により確認する。
【0058】
そして、給気用継手5aからのガス流出の遮断に伴って閉塞警報が出力された場合には、ガス検査機70の閉塞警報機能が正常に作動していると判断する。一方、給気用継手5aからのガス流出の遮断に伴って閉塞警報が出力されなかった場合には、ガス検査機70の閉塞警報機能が正常に作動していないと判断する。また、このように閉塞警報機能に異常があるガス検査機70については、ガス吸引流量が適正流量範囲から乖離している吸引流量異常を有する以前に、そもそも吸引流量が略ゼロになる閉塞異常を有する可能性もあると判断できる。
そして、ガス検査機70の閉塞警報機能の異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この閉塞警報確認処理(#S13)を終了する。
【0059】
また、閉塞警報確認処理(#S13)を終了するにあたり、閉塞警報機能に異常を有さないガス検査機70に対してのみ、次の吸引流量確認処理(#S14)を実行する。一方、閉塞警報機能に異常を有すると判断した場合には、そのガス検査機70に対するガス警報確認処理(#S15)を含む以降の処理の無駄な実施を回避するべく、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S17)、点検処理(
図4の#S4)を終了することで、当該点検処理の合理化を図る。
【0060】
(吸引流量確認処理)
吸引流量確認処理(#S14)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図9に示す。この吸引流量確認処理(#S14)では、ガス検査機70のガス導入部72からのガス吸引流量が適正流量範囲から乖離している吸引流量異常の有無を確認する。
即ち、吸引流量確認処理(#S14)では、ガス検査機70のガス導入部72に給気用継手5aを接続した状態で、三方弁V1、及び三方弁V3の切替状態を設定して、開放部O2に通じる大気開放経路を介して当該給気用継手5aを大気開放させる。すると、ガス検査機70は、ガス導入部72から当該大気開放経路を通じて大気OAを吸引することになるので、この大気開放経路に設けられた流量計Mf1(開放流量計測部の一例)で計測されたガス流量を、ガス検査機70のガス吸引量として取得して、ガス検査機70において適正なガス吸引流量を確保できない吸引流量異常の有無を把握する。
そして、ガス検査機70の吸引流量異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この吸引流量確認処理(#S14)を終了する。
【0061】
また、この吸引流量異常確認処理(#S14)を終了するにあたり、吸引流量異常を有さないガス検査機70に対してのみ、次のガス警報確認処理(#S15)を実行する。一方、吸引流量異常を有すると判断した場合には、そのガス検査機70に対するガス警報確認処理(#S15)を含む以降の処理の無駄な実施を回避するべく、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S17)、点検処理(
図4の#S4)を終了することで、当該点検処理の合理化を図る。
【0062】
(濃度安定化処理)
濃度安定化処理(#S11)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図8〜10に示す。この濃度安定化処理(#S11)は、後のガス警報確認処理(#S15)の実行当初から流量や濃度が安定した点検用ガスG1をガス検査機70のガス導入部72に供給して正確な点検結果を得るために、当該警報確認処理(#S15)の実行前の閉塞警報確認処理(#S13)又は吸引流量確認処理(#S14)の実行時に実行する処理であり、具体的には初期確認処理(#S12)〜吸引流量確認処理(#S14)の実行に並行して実行し(
図8,9参照)、更には、吸引流量確認処理(#S14)の実行後においても、点検用ガスG1の流量及び濃度が安定するまでは、警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態で実行する(
図10参照)。
【0063】
即ち、濃度安定化処理(#S11)では、前述した希釈処理手段6による希釈処理で生成された点検用ガスG1を外部に排気して、点検用ガスG1の濃度を安定化させる。
具体的には、二方弁V7及び流量調整弁V10を開弁すると共に三方弁V8の切替状態を設定することで、ガス容器C1から取り出した原料ガスG0(本実施形態ではガス容器C1に貯留された原料ガスG0を利用するものとするが、別のガス容器C2のものを利用しても構わない。)を、圧力レギュレータR2で圧力を安定化させた上で流量計Mf2に通流させて、合流部B1に供給する。同時に、ポンプP1を作動させ、二方弁V11を開弁させると共に三方弁V12,V13の切替状態を設定することで、開放部O3から取り込んだ大気OAを、フィルタF3及び流量計Mf3に通流させて合流部B1に供給する。このことで、合流部B1では、流量計Mf2が設けられた原料ガス経路6bに通流された原料ガスG0が、流量計Mf3が設けられた大気供給経路6aに通流された大気OAにより希釈される所謂希釈処理が実行されて、点検用ガスG1が生成される。
【0064】
また、合流部B1に供給される原料ガスG0の流量は流量調整弁V10の開度調整により制御されており、一方、合流部B1に供給される大気OAの流量はポンプP1の出力調整により制御されている。そして、これら制御により、点検用ガスG1の流量及び濃度が所望の流量及び濃度に調整される。
そして、このような希釈処理において、ガス容器C1,C2の容量をできるだけ小さいもので済むように、原料ガスG0の希釈割合に応じて設定される原料ガスG0の設定流量は、同希釈割合に応じて設定される大気OAの設定流量よりも小さいものとされている。
そして、この濃度安定化処理(#S11)では、三方弁V4,V5の切替状態を設定することで、合流部B1で生成された点検用ガスG1は、三方弁V4,V5を介して開放部O4に供給され、当該開放部O4から外部に排気される。即ち、点検用ガスG1の供給先は、ガス検査機70側の給気用継手5aから外部の開放部O4に切り替えて当該点検用ガスG1を排気可能に構成されている。
【0065】
この濃度安定化処理(#S11)では、ポンプP2を作動させながら、二方弁V2及びV6を開弁することで、アダプタ50の開口部59から取り込んだ周辺空気を排気EAとして開放部O4から外部に排出する状態とされる。即ち、開放部O4を介して外部に排気される点検用ガスG1は、アダプタ50の開口部59から取り込んだ周辺空気により希釈されたものとなり、点検用ガスG1を高濃度のまま外部に排気することが回避されている。
【0066】
更に、前述した希釈処理の実行開始時、即ちこの濃度安定化処理(#S11)の実行開始時において、一時的に、流量調整弁V10の開度が増加されて、原料ガスG0の流量を、同原料ガスG0の希釈割合に応じた設定流量よりも多く設定する。このことで、合流部B1で生成される点検用ガスG1の濃度が早期に上昇して適切な濃度に到達することになり、結果、警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態での濃度安定化処理(#S11)の実行時間をできるだけ短いものとすることができる。
【0067】
更に、
図9に示すように、警報確認処理(#S15)の実行開始を待機した状態での濃度安定化処理(#S11)を実行する間は、前述した初期確認処理(#S12)と同様に、ガス検査機70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを開放部O1に開放させることで、ガス検査機70は、ガス導入部72から開放部O1を介して大気OAを吸引するようにする。
【0068】
(ガス警報確認処理(希釈処理))
希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図11に示す。このガス警報確認処理(#S15)では、ガス検査機70のガス導入部72に対して、ガス供給部である分岐部B2及び給気用継手5aを介して希釈処理により生成された点検用ガスG1を供給して、ガス検査機70のガス警報機能の異常の有無を確認する。
尚、このガス警報確認処理(#S15)では、希釈処理により乾燥処理が施されていない大気OAで希釈された点検用ガスG1がガス検査機70に供給されるため、ガス検査機70のセンサ部76は、過剰に乾燥することなく、適度に湿気を含んだ通常の大気OAと同程度の状態に維持されて、通常使用時と同条件下で作動することになる。
【0069】
即ち、
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、
図10の濃度安定化処理(#S11)の状態から、三方弁V1,V4,V5の切替状態を設定することで、三方弁V4に供給された点検用ガスG1を、ガス供給部としての分岐部B2及び給気用継手5aを介して、ガス検査機70のガス導入部72に供給し、ガス検査機70に当該点検用ガスG1を吸引させる。すると、ガス検査機70は特定成分を含む点検用ガスG1がガス導入部72から導入されることになり、その際にガス検査機70のガス警報機能が正常に作動してガス警報を出力するか否かをガス検査機70側の制御部78との通信により確認して、ガス検査機70のガス警報機能の異常の有無を確認する。
そして、ガス検査機70のガス警報機能の異常の有無をディスプレイ3に表示したバンプテスト画面(
図6(c)参照)上に表示した上で、この警報確認処理(#S15)を終了する。
【0070】
更に、この
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、ガス検査機70のガス吸引流量、即ちガス検査機70側の吸引ポンプ75の吸引流量よりも多い点検用ガスG1がガス検査機70のガス導入部72に通じるガス供給部である分岐部B2に供給する。すると、ガス検査機70のガス導入部72に吸引されなかった点検用ガスG1が存在することになるが、その点検用ガスG1を、三方弁V5を介して開放部O4から外部に排出する。このことで、ガス検査機70は、不足することなく点検用ガスG1を吸引し、更にはその吸引流量をシステム本体1側の点検用ガスG1の供給流量に関係なく適正な吸引流量に維持して、通常使用時と同条件下で作動することになる。
【0071】
また、ガス警報確認処理(#S15)を終了するにあたり、ガス警報異常を有さないガス検査機70に対しては、前の閉塞警報確認処理(#S13)及び吸引流量確認処理(#S14)においても正常であったことから、総合判断として正常である旨を表示した上で(#S16)、点検処理(
図4の#S4)を終了する。一方、ガス警報異常を有すると判断した場合には、総合判断として異常である旨を表示した上で(#S17)、点検処理(
図4の#S4)を終了する。
【0072】
(ガス警報確認処理(非希釈処理))
上述した
図11に示すガス警報確認処理(#S15)では、ガス容器C1から取り出した原料ガスG0を大気OAで希釈して点検用ガスG1を生成する希釈処理を実行する場合のものであるが、この希釈処理に代えて、ガス容器C1から取り出した原料ガスG0をそのまま希釈することなく点検用ガスとする非希釈処理を実行する場合のガス警報確認処理を行うことができ、以下に、その詳細について説明を加える。
尚、このガス警報確認処理(#S15)では、原料ガスG0をそのまま点検用ガスとして利用するため、前述した濃度安定化処理(#S11)は省略されることになる。
【0073】
非希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)での各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を
図13に示す。このガス警報確認処理(#S15)では、ガス検査機70のガス導入部72に対して、ガス供給部である分岐部B2及び給気用継手5aを介して非希釈処理により点検用ガスとしてガス容器C1から取り出した原料ガスG0を供給して、ガス検査機70のガス警報機能の異常の有無を確認する。
【0074】
即ち、
図13に示すガス警報確認処理(#S15)では、ポンプP1の作動を停止すると共に三方弁V13を閉弁して開放部O3から大気OAの取り込みを停止する。同時に、流量調整弁V10を開弁すると共に三方弁V8の切替状態を設定することで、ガス容器C1から取り出した原料ガスG0を、圧力レギュレータR2で圧力を安定化させた上で、上述した希釈処理において大気OAが通流する流量計Mf3側の大気供給経路6aに通流させて、点検用ガスとして合流部B1に供給する。すると、その原料ガスG0が、ガス検査機70のガス導入部72に点検用ガスを供給するガス供給部としての分岐部B2及び給気用継手5aに供給されることになる。
このことで、原料ガスG0をそのまま点検用ガスとして利用する場合において、当該原料ガスG0の流量が点検用ガスの必要流量に相当する比較的大流量になる場合でも、その原料ガスG0を、上記希釈処理において比較的大流量の大気OAが通流する比較的大流量に対応した大気供給経路6aに通流させ、例えばその原料ガスG0の流量を比較的大流量に対応する流量計Mf3で計測することができる。一方、上記希釈処理において比較的小流量の原料ガスG0が通流する流量計Mf2側の原料ガス供給経路は、小流量のみに対応する比較的簡単且つ小型なものとして構成されており、例えば流量計Mf2としても比較的小流量に対応するものが利用されている。
【0075】
以上が、
図4に示す点検処理方法における点検処理(#S4)の詳細な処理フローであり、当該点検処理(#S4)の実行後において、同じグループに属する次の点検対象のガス検査機70が存在する場合には(#S5)、その同じグループ内で点検対象とするガス検査機70を変更し、変更後のガス検査機70に対して点検処理(#S4)を実行する。その際、希釈処理で生成した点検用ガスG1を利用している場合には、同じグループ内での点検対象の変更時において、生成した点検用ガスG1を一時的に三方弁V4,V5を介して開放部O4に供給して排気する形態で、希釈処理を継続する。このことで、点検対象の変更時の濃度安定化処理などが割愛され、当該変更に必要な時間が短縮される。
【0076】
同じグループに属する次の点検対象のガス検査機70の点検処理に移行する際には、所定の第1クリーニング処理(#S8)を実行し、また、同じグループ内のガス検査機70の点検処理が全て終了した際には、所定の第2クリーニング処理(#S9)を実行する。
【0077】
〔クリーニング処理〕
同じグループに属する次の点検対象のガス検査機70の点検処理に移行する際に実行する第1クリーニング処理(#S8)では、ガス検査機70のガス導入部72に大気OAを導入させて当該ガス検査機70のクリーニング(以下「ガス検査機クリーニング」と呼ぶ。)を行う。
一方、同じグループ内のガス検査機70の点検処理が全て終了した際に実行する第2クリーニング処理(#S6)では、ガス検査機クリーニングに加えて、点検用ガスG1又はその原料となる原料ガスG0が通流するガス経路に大気OAを通流させて当該ガス経路のクリーニング(以下「ガス経路クリーニング」と呼ぶ。)を行う。
尚、
図12には、ガス経路クリーニングとガス検査機クリーニングとを同時に行う際の各種補機の作動状態及びガスの流れ状態を示す。
【0078】
(ガス経路クリーニング)
具体的に、ガス経路クリーニングでは、
図11のガス警報確認処理(#S15)の状態から、流量調整弁V10を閉弁することで、ガス容器C1からの原料ガスG0の供給を停止すると共に、三方弁V8,V13の切替状態を設定して、開放部O3から取り込んだ大気OAを、ガス警報確認処理(#S15)等で原料ガスG0が通流していた流量計Mf2側の原料ガス経路6bに通流させる。このことで、当該原料ガス経路6bに残留する原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該原料ガス経路6bがクリーニングされることになる。
【0079】
更に、原料ガス経路6bを通流した後の大気OAは、ガス警報確認処理(#S15)等で点検用ガスG1が通流していた合流部B1から分岐部B2までの点検用ガス経路6cを通流する。このことで、当該点検用ガス経路6cに残留する点検用ガスG1が大気にOAに置換されて、当該点検用ガス経路6cがクリーニングされることになる。
そして、このようなガス経路クリーニングを実行することにより、次の点検対象のガス検査機70に対する点検処理において、ガス経路に残留する点検用ガスG1や原料ガスG0に起因する誤点検が回避される。
このガス経路クリーニングにおいて、原料ガス経路6b及び点検用ガス経路6cを通流後に分岐部B2に供給された大気OAは、三方弁V1,V5の切替状態を設定することで、開放部O4を介して外部に排気される。
【0080】
尚、
図11に示す非希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)の後に実行されるガス経路クリーニングでは、当該ガスガス警報確認処理(#S15)で原料ガスG0が通流した経路に大気OAを通流させることが望ましい。即ち、三方弁V13,V8,V12の切替状態を設定することで、開放部O3から取り込んだ大気OAを、三方弁V13からガス経路6b側に供給すると共に、その大気OAを三方弁V8から三方弁12側に戻して、当該三方弁12の下流側の大気供給経路6aに通流させる。このことで、非希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)で原料ガスG0が通流した経路に残留する原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該経路がクリーニングされることになる。
【0081】
更に、ガス経路クリーニングにおいて、同時に実行されるガス検査機クリーニングが終了すると、三方弁V1の切り替え状態を設定して、分岐部B2にある大気OAを、三方弁V1側に供給する。すると、分岐部B2から三方弁V1までの経路に残留する点検ガスG1や原料ガスG0が大気OAに置換されて、当該経路がクリーニングされることになる。
【0082】
(ガス検査機クリーニング)
一方、ガス検査機クリーニングでは、前述した初期確認処理(#S12)と同様に、ガス検査機70のガス導入部72が接続された給気用継手5aを開放部O1に開放させることで、ガス検査機70のガス導入部72には、開放部O1から取り込んだ大気OA、即ち上記ガス経路を通流したものとは別の新鮮な大気OAが導入される。そして、その大気OAがガス導入部72を介してガス検査機70に導入され、センサ部76を通流する。このことで、ガス検査機70側のガス導入部72やセンサ部76に残留する点検用ガスG1が大気OAに置換されて、当該ガス検査機70がクリーニングされることになる。
尚、このガス検査機クリーニングは、ガス検査機70のセンサ部76の出力信号から導入ガス中の特定成分濃度が略ゼロになったと判断したときに終了する。
【0083】
そして、このようなガス検査機クリーニングを実行することにより、かかる点検処理直後のガス検査機70の使用にあたり、ガス導入部72等に残留する点検用ガスG1に起因する誤検知が回避される。
尚、このガス検査機クリーニングにおいて、ガス検査機70の排気部77から排出された排気EAは、開口部59から周辺空気と共に取り込まれ、排気用継手5bを介して開放部O4から外部に排出される。このことで、この排気EAが収容部5側の前面から放出されることが防止されている。更に、この開口部59から吸引した排気EAは、ガス経路クリーニングで原料ガス経路6b及び点検用ガス経路6cを通流後の大気OAとまとめて排出される。このことで、ガス検査機クリーニング及びガス経路クリーニングのための排気経路が簡素化されている。
尚、これら排気EAと大気OAとは別々に外部に排出しても構わない。
【0084】
尚、本実施形態では、ガス経路クリーニング及びガス検査機クリーニングを各別の大気OAで行うように構成したが、例えばガス経路を通流した大気をガス検査機70に導入するなどして、夫々のクリーニングを同じ大気で行うように構成しても構わない。
【0085】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、点検処理(#S4)及びその前後において、希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)の他に、種々の処理を実行するように構成したが、これら他の処理については、適宜省略又は改変しても構わない。
また、これら希釈処理を行う場合のガス警報確認処理(#S15)の詳細についても、上記実施形態の構成が本発明の権利範囲を実質的に何ら限定するものではなく、適宜改変しても構わない。
【0086】
(2)上記実施形態では、収容部5に着脱自在に装着されるアダプタ50を介在させて、ガス検査機70を収容部5に収容するように構成したが、アダプタ50を省略し、収容部5をガス検査機70の型式に適応したものとすることで、ガス検査機70を直接収容部5に収容するように構成しても構わない。