特許第6784506号(P6784506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784506
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】組み合わせ家具
(51)【国際特許分類】
   A47B 83/04 20060101AFI20201102BHJP
   A47B 63/00 20060101ALI20201102BHJP
   A47B 13/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A47B83/04
   A47B63/00 503Z
   A47B13/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-85800(P2016-85800)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2017-192619(P2017-192619A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】平澤 清香
(72)【発明者】
【氏名】上田 俊也
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−249855(JP,A)
【文献】 特開2001−314240(JP,A)
【文献】 特開2000−166663(JP,A)
【文献】 特開2010−022621(JP,A)
【文献】 実開昭61−051052(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 83/04−85/08
A47B 13/00
A47B 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の脚板と天板とによって囲われた内部空間を有していて座卓として使用可能な高さの下台と、
左右の側板の間に物品載置部とその下方に位置して前方及び下方に開口した内部空間とを設けたラックと、
前記下台の内部空間と前記ラックの内部空間とのいずれにも組み込んで使用できる引出し状整理箱とを有し、
前記下台の左右幅及び前後幅と前記ラックの左右幅及び前後幅とを略同じ寸法に設定し、前記ラックを前記下台に載せることが可能になっている構成であって、
前記ラックの物品載置部は、本類をその表紙が前向きになった状態で立てて載置できる本類収納溝を有しており、これら本類収納溝の群が、上段に行くほど後ろにずれた状態になるように多段に形成されている一方、
前記引出し状整理箱は、底板と左右側板と鏡板とを備えて前記下台の内部空間と前記ラックの内部空間とのいずれにも挿脱できる高さ及び左右幅に設定されており、
少なくとも、前記下台にラックを載せた状態で前記下台の内部空間に前記引出し状整理箱を配置する使用態様と、前記下台とラックとを分離した状態で前記ラックの内部空間に前記引出し状整理箱を配置する使用態様とが許容されている、
組み合わせ家具。
【請求項2】
前記下台とラックとに、前記ラックを下台に載せた状態で横ずれ不能に保持するための連結具が嵌まる連結用穴を設けている、
請求項1に記載した組み合わせ家具。
【請求項3】
前記引出し状整理箱は、キャスタを備えたワゴン状になっている、
請求項1又は2に記載した組み合わせ家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主として家庭で使用される組み合わせ家具に関するもので、詳細には、机機能とラック機能と引出し機能とを備えた組み合わせ家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家具において、着脱自在な複数の要素からなる組み合わせ方式とすることが行われている。その例として特許文献1には、机の後部に設けた棚を、下棚と上棚との下分離方式として、上棚を下棚に重ねて載置した状態と、上棚を取り外して床に載置した状態とに選択できることが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、棚付きの机において、机部分を棚の下方に押し込んで格納したり、手前に引き出したりできる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−22621号公報
【特許文献2】特開2016−173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、家具は様々な種類があり、それぞれ必要とする機能を果たすための構成になっているが、組み合わせ家具において異なる機能を備えていると、重宝である。しかるに、特許文献1の場合は、上棚の位置を変更できるに過ぎず、上棚を取り外しても新たな用途が表れる訳ではないため、多機能家具を求めるユーザーの要望には応え難いと云える。同様に、特許文2も、机を不使用時に押し込んでスペースを節約できるに過ぎず、これも多機能であるとは言い難い。
【0006】
本願発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、異なる機能を的確に発揮できる組み合わせ家具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の組み合わせ家具は、請求項1のとおり、
左右の脚板と天板とによって囲われた内部空間を有していて座卓として使用可能な高さの下台と、
左右の側板の間に物品載置部とその下方に位置して前方及び下方に開口した内部空間とを設けたラックと、
前記下台の内部空間と前記ラックの内部空間とのいずれにも組み込んで使用できる引出し状整理箱とを有し、
前記下台の左右幅と前記ラックの左右幅とを略同じ寸法に設定することにより、前記ラックを前記下台に載せて使用することが可能になっている」
という基本構成になっている。
【0008】
そして、請求項1では、上記基本構成において
「前記ラックの物品載置部は、本類をその表紙が前向きになった状態で立てて載置できる本類収納溝を有しており、これら本類収納溝の群が、上段に行くほど後ろにずれた状態になるように多段に形成されている一方、
前記引出し状整理箱は、底板と左右側板と鏡板とを備えて前記下台の内部空間と前記ラックの内部空間とのいずれにも挿脱できる高さ及び左右幅に設定されており、
少なくとも、前記下台にラックを載せた状態で前記下台の内部空間に前記引出し状整理箱を配置する使用態様と、前記下台とラックとを分離した状態で前記ラックの内部空間に前記引出し状整理箱を配置する使用態様とが許容されている」
という構成が付加されている。
【0011】
請求項では、請求項において、前記下台とラックとに、前記ラックを下台に載せた状態で横ずれ不能に保持するための連結具が嵌まる連結用穴を設けている。この場合、連結具は様々の態様のものを採用できるし、連結用穴の態様も、連結具の態様によって相違する。
【0012】
請求項では、請求項1又は2において、前記引出し状整理箱は、キャスタを備えたワゴン状になっている。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、ラックを下台に載せて下台の内部に引出し状整理箱を挿入した状態では、下台の天板はラックの底板として機能しており、下台の天板に物品を載せることができきる。すなわち、ラックを下台に載せた状態では、家具は全体として収納家具として機能している。また、引出し状整理箱は下台の内部に嵌め込むことが普通であるが、引き出して物品の出し入れを行えることはいうまでもでもない。従って、家具は、ラックを下台に載せた状態では、下端部に引出しを設けた収納家具という状態になっている。
【0014】
この場合、引出し状整理箱は、外側から内部を視認できる態様に構成することも可能であり、外側から内部を視認できる状態で下台の内部に嵌め入れると、家具は、全体として手前に開口した収納家具と同じような状態になる。従って、収納・載置している物品を容易に把握できる。
【0015】
ラックを下台から取り外すと、下台は座卓として使用できる。従って、下台を使用して、書き物や読書、勉強、食事などを行える。この点、本願発明の大きな特徴である。また、下台を荷物載置台として使用することも可能であり、この場合は、ラックの内部空間に入らないような大きな物品であっても、下台に載置できる。
【0016】
ラックを取り外して下台を座卓として使用する場合は、引出し状整理箱は、ラックの内部空間に収納できる。これにより、書籍や小物等を整理して格納できる。下台とラックと引出し状整理箱とを別々に床に載置することも可能ではあるが、引出し状整理箱をラックの内部空間に格納すると、それだけスペースを有効利用することができる。下台を物品の載置台として使用する場合は、引出し状整理箱を下台の内部空間に格納することも可能である。
【0017】
ラックの物品載置部は様々な構造にすることができるが、本願発明では、雑誌や教科書、新聞などを表紙が表れた前向き姿勢で載置できるため、使用頻度の高い教科書やノートなどをおくのに好適である。
【0018】
また、ラックと下台とを左右に並設して、下台を座卓として使用する場合、使用者は正座したりあぐらをかいたりして下台を使用することになるため、椅子に腰掛けて机を使用する場合に比べて身体は少し動かしにくくなるが、本願発明では、教科書やノートはその表面が手前に向いていて内容を即座に把握できるため、正座したりあぐらをかいたりした姿勢であっても、必要とする教科書やノートを簡単に取り出したり戻したりすることができる。
【0019】
ラックを下台に載せて使用する場合、ラックは横ずれ不能に保持されている必要がある。この場合のずれ防止手段には様々な構造を採用できるが、請求項のように、連結用穴に嵌め込む連結具を使用すると、連結具は邪魔にならないため、美観に優れると共に物が引っ掛かるような不具合も防止できる。
【0020】
連結具としてはダボも使用できるが、カム付きロータを横からドライバで回転させてピンを引っ張るタイプのものを使用すると、ずれ防止を確実化できるのみならず、ラックを持ち上げた場合に下台も一緒に持ち上げられるため、移動させる場合に便利であると共に、地震による振動にも強くて好適である。
【0021】
また,請求項のように、引出し状整理箱をワゴン状に形成すると、下台又はラックへの出し入れを軽い力で行える利点がある。すなわち、引出し状整理箱を引出しの感覚で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態を示す図で、(A)は全体を組み込んだ状態での斜視図、(B)は引出し状整理箱を後ろから見た斜視図である。
図2】(A)は図1(A)の縦断側面図、(B)は分離した状態での縦断側面図である。
図3】ラックと下台とを分離して左右に並設した状態での斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1).構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各図に示すように、家具は木製であり、下台1とラック2と引出し状整理箱3とで構成されている。下台1は、左右の脚板4で天板5を支持すると共に、左右脚板4の後端を背板6で連結した構成であり、従って、前向きに開口した内部空間7を有している。
【0024】
下台1は平面視で左右横長の長方形であり、児童が座卓として使用できる程度の高さと幅とを有している。例えば、左右幅は600mm程度、高さは300mm程度、奥行きは350〜400mm程度であるが、寸法は任意に設定できる。成人も使用する場合は、高さは400mm程度に設定するのが好ましい。
【0025】
ラック2は、左右の側板8の間のうち下側を前方及び下方に開口した内部空間9と成すと共に、内部空間9の上に物品載置部10を設けた構成であり、内部空間9の個所において左右側板8の後端は背板11で連結されている。左右側板8の上端後部は化粧材12で連結されている。なお、実施形態では化粧材12として丸棒を使用しているが、板材で構成してもよい。化粧材12を板材で構成して、物品載置部10の上方に大きくはみ出る高さとすることにより、化粧材12をピンナップボードのような表示板として使用することも可能である。また、化粧材12は、補強機能も備えている。
【0026】
物品載置部10は、雑誌や教科書、ノート等の本類13を前向き姿勢で陳列できるマガジンラックタイプになっている。すなわち、物品載置部10は、底板14とその前後に配置した起立状板15とによって形成された上向き開口の本類収納溝16が複数段(3段)設けられた構成であり、本類13は、表紙を手前に向けた姿勢で起立状板15に立て掛けられる。
【0027】
本類収納溝16の群は、上段に行くに従って後ろにずれており、底板14及び起立状板15は若干後傾している。このため、左右側板8の上部は、前面が後傾するように斜めにカットされている。敢えて述べるまでもないが、前後に隣り合った本類収納溝16は、1枚の起立状板15を共用している。本類収納溝16の段数は3段には限らず、1段又は2段若しくは4段以上でもよい。本類収納溝16と棚板とを上下又は左右に並設することも可能であるし、本類収納溝16を設けずに、棚板のみを1段又は複数段配置することも可能である。
【0028】
引出し状整理箱3は、底板17と左右側板18と鏡板19を有しており、上方と後方とに開口している。底板17の後端には、物品の脱落を防止するため、高さが低いストッパー20を設けている。また、側板18よりも一回り小さい大きさの仕切り板21を、固定的に又は左右位置変更可能に若しくは着脱可能に設けている。底板17のコーナー部にはキャスタ(コロ)22を設けている。従って、本実施形態の引出し状整理箱3はワゴンタイプになっている。鏡板19の上端部には、手を掛けるための切り欠き23を形成しているが、鏡板19の前面に把手を設けることも可能である。
【0029】
(2).組み合わせ態様
下台1とラック2とは、横幅及び奥行きが殆ど同じ寸法に設定されており、従って、図1(A)のようにラック2を下台1に載せて使用したり、図3のように、ラック2を下台1から降ろして床に載置したりすることができる。ラック2を降ろすと、下台1は、座卓として使用できる。
【0030】
ラック2を下台1に載せた状態では、ラック2を、少なくも水平方向にずれ不能に保持している必要がある。そこで、本実施形態では、連結具として、図1(A)及び図3に大まかに示す回転式ジョイント24を使用して、ラック2と下台1とを連結している。この回転式ジョイント24は市販品であり、ラック2の側板8に設けた横穴27に嵌め込まれるロータ25と、ラック2の側板8と下台1とに跨がって嵌まるピン26とを有している。従って、ラック2の側板8と下台1とにはピン26が嵌まるピン穴28が空いている。ピン穴28は、図3において下台1に空けたものだけを表示している。横穴27とピン穴28は、請求項に記載した連結用穴の例である。
【0031】
ピン26は下台1にねじ込みにて固定されている、図示は省略するが、ピン26上端には、ロータ25に設けたカムと係合する頭が形成されており、ロータ25を外側からドライバで回転操作すると、ピン26がロータ25のカムで上向きに引かれたり、ロータ25とピン26との係合を解除したりすることができる。回転式ジョイント24で連結した状態では、ラック2を持ち上げると、下台1も一緒に上昇する。従って、ラック2と下台1とによって単一構造の家具が構成されているかのような状態になる。図3では、他の連結具としてのダボ29も表示している。
【0032】
引出し状整理箱3は、図1のように下台1の内部空間7に格納したり、図3のように、下台1から取り外したラック2の内部空間9に格納したりすることができる。従って、引出し状整理箱3及びラック2における内部空間7,9の左右横幅と高さH1,H2は、引出し状整理箱3の左右横幅及び高さよりも僅かに大きくなっている。
【0033】
図3では、引出し状整理箱3は、手前に開口させた姿勢でラック2の内部空間9に格納している。従って、ラック2と引出し状整理箱3とにより、棚付きマガジッラックの外観を呈している。図1のように引出し状整理箱3を下台1の内部空間9に格納する場合でも、図3のように、引出し状整理箱3は手前に開口した姿勢にすることができる。逆に、図3のように引出し状整理箱3をラック2の内部空間9に格納する場合でも、引出し状整理箱3を、その鏡板19が手前にした姿勢で格納可能である。
【0034】
従って、引出し状整理箱3については、鏡板19が前にあるというのは便宜的な表現であり、前後の方向にはあまり意味はない。図3のように、引出し状整理箱3を手前に開口させた姿勢でラック2の内部空間9に格納した場合、ストッパー20が前端に位置しているので、ストッパー20に手を掛けて引出し状整理箱3を手前に引き出すことができる。すなわち、ストッパー20を引手に兼用できる。引出し状整理箱3を前向き開口させた状態で格納した場合の引手手段としては、底板17に引手穴を空けておくことも可能である。
【0035】
ラック2の形態が様々なバリエーションを有することは既に述べたとおりであるが、引出し状整理箱3も様々に具体化できる。例えば、後面板を設けて四周を壁で囲った上向き開口の形態にすることも可能であるし、上向きに開口したカゴ状の形態も採用できる。引き出しを設けることも可能である。また、キャスタ22は備えていなくてもよい。
【0036】
図面とは異なる使用方法として、ラック2を下台1に載せた状態で、下台1の天板5に引出し状整理箱3を載せるといったことも可能である。引出し状整理箱3がキャスタ22を備えていない場合は、このような使用態様も採用しやすい。そして、引出し状整理箱3に仕切り板21を設けていると、引出し状整理箱3を下台1の上に載せることにより、教科書などを効率良く格納できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本願発明は、実際に組み合わせ家具に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 下台
2 ラック
3 引出し状整理箱
4 下台の側板
5 下台の天板
7 下台の内部空間
8 ラックの側板
9 ラックの内部空間
10 物品載置部
13 本類
16 本類収納溝
22 キャスタ
24 連結具の例としての回転式ジョイント
27 連結用穴としての横穴
28 連結用穴としてのピン穴
29 連結具の例としてのダボ
図1
図2
図3