特許第6784508号(P6784508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784508燃料電池装置及び電流センサの異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784508
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】燃料電池装置及び電流センサの異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20201102BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20201102BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20201102BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/00 Z
   !H01M8/12
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-87937(P2016-87937)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-199502(P2017-199502A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】井上 弘一
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−79746(JP,A)
【文献】 特開2013−90473(JP,A)
【文献】 特開2006−86080(JP,A)
【文献】 特開2011−154849(JP,A)
【文献】 特開2015−122819(JP,A)
【文献】 特開2005−354785(JP,A)
【文献】 特開2009−118673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置であって、
ヒータを含む補機と、
前記ヒータと電力系統との間に設けられているスイッチと、
前記ヒータの付近の温度を計測する温度センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度センサによる計測値が第1閾値温度以上である場合、前記電力系統と前記燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常の検出を行い、
前記電流センサの異常の検出では、前記スイッチをオン状態にして前記ヒータを稼働状態にした場合の前記電流センサの第1検出値に基づいて、前記電流センサの異常を検出する、燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流センサの第1検出値と、前記スイッチをオフ状態にして前記ヒータを非稼働状態にした場合の前記電流センサの第2検出値とに基づき、前記電流センサの異常を検出する、請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1検出値と前記第2検出値とが同等である場合、前記電流センサが異常であると検出する、請求項に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電流センサの異常が検出されない場合、再度、前記ヒータを稼働状態及び非稼働状態にして、前記第1検出値及び前記第2検出値を取得した後、前記電流センサの異常の検出を行う、請求項2又は3に記載の燃料電池装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度センサによる計測値が第1閾値温度を下回る場合、前記ヒータが所定温度以上になるまで、前記ヒータを稼働状態に維持した後、前記電流センサの異常の検出を行う、請求項1から4までの何れか一項に記載の燃料電池装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1検出値の極性から、前記電力系統への逆潮流が生じていると判定した場合、前記電流センサが異常であると検出する、請求項1からまでの何れか一項に記載の燃料電池装置。
【請求項7】
前記ヒータは、燃焼触媒を加熱させる燃焼触媒ヒータである、請求項1から6までの何れか一項に記載の燃料電池装置。
【請求項8】
燃料電池装置にて、電力系統と燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常を検出する電流センサの異常検出方法であって、
前記燃料電池装置は、
ヒータを含む補機と、
前記ヒータと電力系統との間に設けられているスイッチと、
前記ヒータの付近の温度を計測する温度センサと、を備え、
前記流センサの異常検出方法は、
前記温度センサによる計測値が第1閾値温度以上である場合、前記電力系統と前記燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常の検出を行うステップを含み、
前記電流センサの異常の検出を行うステップは、前記スイッチをオン状態にして前記ヒータを稼働状態にした場合の前記電流センサの第1検出値に基づいて、前記電流センサの異常を検出するステップを含む、電流センサの異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置及び電流センサの異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池装置を需要家施設に設置させることが普及しつつある。その一方で、現在の日本の制度では、燃料電池装置の出力電流を、商用電力系統(以下「電力系統」と略記する)へ逆潮流させることが認められていない。そのため、燃料電池装置を電力系統に接続させる際は、燃料電池装置から電力系統への逆潮流を防止するために、電流センサを設置させる必要がある。
【0003】
ここで、電流センサは、設置業者によって手作業で取り付けられる。そのため、設置業者は、電流センサを設置する際、電流センサの取り付け向きを誤るおそれがある。また、電流センサの取り付け強度が不十分であると、電流センサの設置後に、例えば地震等の外的要因によって、電流センサが脱落するおそれがある。また、電流センサが例えばクランプ式の場合、可動コアの閉開用の爪が老朽化等の経時変化によって劣化して、電流センサに不具合が生じるおそれがある。
【0004】
このように、電流センサの取り付け向きが逆であったり、電流センサが脱落してしまったりすると、燃料電池装置から電力系統への逆潮流を防止することができない。そこで、燃料電池装置において、電流センサの異常を検出する方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の方法では、インバータによって燃料電池装置の出力を変動させることで、電流センサが検出する値を変動させ、この電流センサの検出する値の変動量に基づき、電流センサの異常を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−250945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、インバータによって燃料電池装置の出力を変動させている。そのため、インバータの制御処理等によって、電流センサの異常を検出する際の処理が複雑になってしまう。
【0007】
かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、電流センサの異常検出を容易に行うことができる燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る燃料電池装置は、燃料電池装置であって、ヒータを含む補機と、前記ヒータと電力系統との間に設けられているスイッチと、前記ヒータの付近の温度を計測する温度センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度センサによる計測値が第1閾値温度以上である場合、前記電力系統と前記燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常の検出を行い、前記電流センサの異常の検出では、前記スイッチをオン状態にして前記ヒータを稼働状態にした場合の前記電流センサの第1検出値に基づいて、前記電流センサの異常を検出する。
【0009】
また、本発明の一実施形態に係る電流センサの異常検出方法は、燃料電池装置にて、電力系統と燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常を検出する電流センサの異常検出方法であって、前記燃料電池装置は、ヒータを含む補機と、前記ヒータと電力系統との間に設けられているスイッチと、前記ヒータの付近の温度を計測する温度センサと、を備え、前記流センサの異常検出方法は、前記温度センサによる計測値が第1閾値温度以上である場合、前記電力系統と前記燃料電池装置との間に設けられている電流センサの異常の検出を行うステップを含み、前記電流センサの異常の検出を行うステップは、前記スイッチをオン状態にして前記ヒータを稼働状態にした場合の前記電流センサの第1検出値に基づいて、前記電流センサの異常を検出するステップを含む


【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態に係る燃料電池装置によれば、電流センサの異常検出を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料電池装置の一例の概略構成を示す図である。
図2】ヒータ(燃焼触媒ヒータ)に流れる電流値の時間依存性の一例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る燃料電池装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[システム構成]
図1において、各機能ブロックを結ぶ実線は電力線を示し、破線は制御線及び信号線を示す。制御線及び信号線が示す接続は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0014】
燃料電池装置100は、図1に示すように、燃料の電気化学反応によって発電する装置である。燃料電池装置100には、例えば、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)等を採用することができる。燃料電池装置100は、セルスタック10と温度センサ11と補機20とを有する発電部30と、電力変換部40と、スイッチ50と、制御部60と、通信部70と、記憶部80とを備える。
【0015】
セルスタック10は、補機20から供給される燃料(例えば、所定割合で配合されたガス、空気及び改質水)によって電気化学反応を生起させ、直流電圧を発電する。セルスタック10は、発電した直流電圧を、電力変換部40に出力する。
【0016】
温度センサ11は、発電部30内の温度(セルスタック10の周辺温度及びヒータ21の付近の温度)を計測し、その計測値を、制御部60に供給する。
【0017】
補機20は、セルスタック10を発電させるために必要な周辺機器であり、例えば、ガス処理部、空気処理部及び改質水処理部等を含む。補機20は、ヒータ21を含む。
【0018】
ヒータ21は、燃料電池装置100の補機の一種である。ヒータ21は、例えば、燃焼触媒を加熱させる燃料触媒ヒータ、凍結防止ヒータ又は着火ヒータ等である。
【0019】
電力変換部40は、発電部30から供給される直流電圧を交流電圧に変換し、その変換した交流電圧を、スイッチ50及び一般負荷400に供給する。
【0020】
スイッチ50は、ヒータ21と電力変換部41との間に設けられる。スイッチ50は、制御部60の制御に基づき、オン/オフ状態の切り替えを行う。スイッチ50がオン状態になると、ヒータ21は稼働状態になる。また、スイッチ50がオフ状態になると、ヒータ21への通電が停止し、ヒータ21は非稼働状態になる。
【0021】
制御部60は、燃料電池装置100全体を制御及び管理するものであり、例えばプロセッサにより構成することができる。制御部60は、記憶部80に記憶されているプログラムを読み出して実行し、様々な機能を実現させる。制御部60は、例えば、電流センサ300の異常検出を行う。この処理の詳細については後述する。
【0022】
通信部70は、リモコン200と通信する。また、通信部70は、ネットワークを介して遠隔のサーバ等と通信することができる。
【0023】
記憶部80は、燃料電池装置100の処理に必要な情報や、燃料電池装置100の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを記憶している。記憶部80は、例えば、後述の第1閾値温度等を記憶している。
【0024】
リモコン200は、燃料電池装置100の発電量等を設定する際に、利用者が使用するものである。また、リモコン200は、制御部60から電流センサ300が異常である旨の信号を受信すると、電流センサ300が正しく機能していない旨を示す警告を表示して利用者に提示する。
【0025】
電流センサ300は、電力系統500と燃料電池装置100との間に配置される。電流センサ300は、電力系統500と燃料電池装置100との間に流れる電流値を検出し、その検出した値を燃料電池装置100に送信する。
【0026】
一般負荷400は、需要家施設で使用される負荷機器であり、燃料電池装置100及び電力系統500から供給される電力を消費する。一般負荷400は、例えば、冷蔵庫、ドライヤー等の電気製品である。
【0027】
以下、電流センサ300の異常検出を行う際における制御部60の処理の詳細について説明する。なお、以下では、燃料電池装置100が備える補機20に含まれるヒータ21によって電流センサ300の異常検出を行う際の処理について説明するが、これに限定されない。例えば、制御部60は、ヒータ21以外の他の補機(例えば、発電部30外に存在するブロア及びポンプ等の補機)を使用して、本実施形態に係る処理を行ってもよい。
【0028】
まず、制御部60は、電流センサ300の異常検出を行う前に、ヒータ21が所定温度以上であるか否かを判定する。例えば、制御部60は、温度センサ11によるヒータ21の付近の計測値を取得し、取得した計測値が記憶部80に記憶されている第1閾値温度以上である場合、ヒータ21は所定温度以上であると判定する。ヒータ21が所定温度以上であるか否か判定する際に用いる第1閾値温度は、ヒータ21の特性等を考慮し、任意の値を用いることができる。
【0029】
制御部60は、ヒータ21が所定温度以上であると判定した場合、電流センサ300の異常を検出する処理へ移行する。一方、制御部60は、ヒータ21が所定温度を下回ると判定した場合、スイッチ50をオン状態にし、ヒータ21を稼働させる。そして、制御部60は、ヒータ21が所定温度以上になるまで、ヒータ21を稼働状態に維持する。ヒータ21が所定温度以上になると、制御部60は、スイッチ50をオフ状態にしてヒータ21を停止させた後、電流センサ300の異常を検出する処理へ移行する。
【0030】
このように本実施形態では、制御部60は、ヒータ21が所定温度以上である場合に、電流センサ300の異常検出を行う。以下、この理由について図2を参照しつつ説明する。
【0031】
図2において、縦軸はヒータに流れる電流値を示し、横軸はヒータが稼働している時間(稼働時間)を示す。また、図2において、ハッシングで示す部分は、ヒータに流れる交流電流がとり得る電流値の範囲を示す。また、図2では、一例として、燃焼触媒ヒータに流れる電流値の時間依存性が示されている。ここで、ヒータの温度はヒータの稼働時間に依存し、ヒータの稼働時間が長いほどヒータの温度上昇は大きくなり、ヒータの稼働時間が短いほどヒータの温度上昇は小さくなる。さらに、ヒータの抵抗値はヒータの温度に依存し、ヒータの温度が低いほどヒータの抵抗値は低くなり、ヒータの温度が高いほどヒータの抵抗値は高くなる。従って、ヒータの稼働時間が短いと、ヒータの温度上昇が小さくヒータの抵抗値が低くなるため、図2に示すように、ヒータに流れる電流値は大きくなる。一方、ヒータの稼働時間が長くなると、ヒータの温度上昇が大きくなりヒータの抵抗値が高くなるため、図2に示すように、ヒータに流れる電流値は小さくなる。
【0032】
ここで、ヒータ21の温度上昇が小さく、ヒータ21に流れる電流値が大きいと、スイッチ50に流れる電流値も大きくなる。このようなスイッチ50に流れる電流値が大きい状態で、スイッチ50のオン/オフ状態の切り替えを繰り返すと、スイッチ50の劣化の進行が早まる。一方で、ヒータ21の温度上昇が大きく、ヒータ21に流れる電流値が小さいと、スイッチ50に流れる電流値も小さくなる。このようなスイッチ50に流れる電流値が小さい状態で、スイッチ50のオン/オフ状態の切り替えを繰り返せば、スイッチ50の劣化の度合いを低減させることができる。
【0033】
そこで、本実施形態では、スイッチ50に流れる電流値を小さくし、スイッチ50の劣化の度合いを低減させるために、ヒータ21が所定温度以上である場合に、電流センサ300の異常の検出を行う。これにより、電流センサ300の異常検出によってスイッチ50にオン状態/オフ状態の切り替えを繰り返させても、スイッチ50に流れる電流値は小さいため、スイッチ50の劣化の度合いを低減させることができる。
【0034】
なお、ヒータ21の代わりに他の補機(例えば、発電部30外に存在するブロア及びポンプ等の補機)によって電流センサ300の異常検出を行う場合、制御部60は、上述の処理を行わなくてもよい。
【0035】
続いて、ヒータ21が所定温度以上になった後の電流センサ300の異常検出における制御部60の処理について説明する。
【0036】
制御部60は、ヒータ21が所定温度以上になると、ヒータ21が稼働状態である場合の電流センサ300が検出する電流値(以下「第1検出値」という)を取得する。次に、制御部60は、ヒータ21への通電を停止させる。そして、制御部60は、ヒータ21が非稼働状態である場合の電流センサ300が検出する電流値(以下「第2検出値」という)を取得する。
【0037】
その後、制御部60は、取得した第1検出値及び第2検出値から、電流センサ300が正常であるか否か判定する。電流センサ300が正常であると判定する方法の一例は、下記<電流センサが正常であると判定する方法>において説明する。
【0038】
制御部60は、電流センサ300が正常であると判定した場合、処理を終了する。一方、制御部60は、電流センサ300が正常であると判定しない場合、取得した第1検出値及び第2検出値から、電流センサ300が異常であるか否か判定する。電流センサ300が異常であると判定する方法の一例は、下記<電流センサが異常であると判定する方法>において説明する。
【0039】
制御部60は、電流センサ300が異常であると判定した場合、通信部70を介し、電流センサ300が異常である旨の信号を、リモコン200に送信する。リモコン200は、制御部60から電流センサ300が異常である旨の信号を受信すると、電流センサ300が正しく機能していない旨を示す警告を表示して利用者に提示する。
【0040】
一方、制御部60は、電流センサ300が異常であると判定しない場合、再度、ヒータ21を稼働状態及び非稼働状態にして第1検出値及び第2検出値を取得し、電流センサ300の異常検出を行う。
【0041】
以下、電流センサが正常であると判定する方法の一例、及び、電流センサが異常であると判定する方法の一例を説明する。
【0042】
<電流センサが正常であると判定する方法>
ヒータ21が稼働状態である場合、ヒータ21によって電力が消費されているため、電力系統500から燃料電池装置100に流れる電流値は、ヒータ21が非稼働状態である場合と比較して、増加する。従って、制御部60は、第1検出値と第2検出値とを比較し、第1検出値が第2検出値よりも大きい場合、電流センサ300が正常であると判定する。
【0043】
<電流センサが異常であると判定する方法>
ヒータ21が稼働状態である場合、ヒータ21によって電力が消費されているため、電力系統500から燃料電池装置100に流れる電流値は、ヒータ21が非稼働状態である場合と比較して、増加する。従って、制御部60は、第1検出値と第2検出値とを比較し、第1検出値が第2検出値よりも小さい場合、電流センサ300は異常であると判定する。なお、この場合の電流センサ300の異常は、電流センサ300の取り付け向きが逆であることによる。
また、ヒータ21が稼働状態である場合、ヒータ21によって電力が消費され、電力系統500から燃料電池装置100に流れる電流が増加する。このため、電流センサ300の取り付け向きが正しければ、制御部60は、電流センサ300によって電力系統500の順潮流を検出する。従って、制御部60は、例えば、第1検出値の極性から電力系統500への逆潮流が生じていると判定した場合、電流センサ300が異常であると判定する。なお、この場合の電流センサ300の異常は、電流センサ300の取り付け向きが逆であることによる。
【0044】
また、制御部60は、例えば、第1検出値と第2検出値とが同等である場合、電流センサ300が異常であると判定する。このとき、制御部60は、第1検出値と第2検出値との差が所定範囲内である場合に、第1検出値と第2検出値とが同等であると判定してもよい。なお、この場合の電流センサ300の異常は、電流センサ300が脱落していることによる。
【0045】
[システム動作]
以下、本発明の一実施形態に係る燃料電池装置100の動作について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る燃料電池装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
まず、制御部60は、ヒータ21が所定温度以上であるか否かを判定する(ステップS101)。例えば、制御部60は、温度センサ11によるヒータ21の付近の計測値を取得し、取得した計測値が記憶部80に記憶されている第1閾値温度以上である場合は、ヒータ21が所定温度以上であると判定する。制御部60は、ヒータ21が所定温度以上であると判定した場合(ステップS101:Yes)、ステップS105の処理に進む。一方、制御部60は、ヒータ21が所定温度を下回ると判定した場合(ステップS101:No)、ステップS102の処理に進む。
【0047】
このように、ステップS101の処理によってヒータ21が既に所定温度以上であると判定した場合、ステップS102〜S104の処理を行わず、電流センサ300の異常検出を行うステップS105の処理に進む。これにより、電流センサ300の異常検出を早く行うことができる。
【0048】
ステップS102の処理では、制御部60は、スイッチ50をオン状態にし、ヒータ21を稼働させる。
【0049】
ステップS103の処理では、制御部60は、ヒータ21が所定温度以上になるまで、ヒータ21を稼働状態に維持する。
【0050】
ステップS104の処理では、制御部60は、スイッチ50をオフ状態にし、ヒータ21への通電を停止させる。
【0051】
このように、ステップS101の処理によってヒータ21が所定温度を下回ると判定した場合、ステップS102〜S104の処理によってヒータ21は、所定温度以上にされる。
【0052】
ステップS105の処理では、制御部60は、ステップS102の処理と同様にして、ヒータ21を稼働させる。その後、制御部60は、ヒータ21が稼働状態である場合の電流センサ300の第1検出値を取得する(ステップS106)。
【0053】
ステップS107の処理では、制御部60は、ステップS104の処理と同様にして、ヒータ21への通電を停止させる。その後、制御部60は、ヒータ21が非稼働状態である場合の電流センサ300の第2検出値を取得する(ステップS108)。
【0054】
このように、ステップS105〜S108の処理では、ヒータ21を単に稼働状態及び非稼働状態にすることで、電流センサ300の異常を検出する際に用いる第1検出値及び第2検出値を取得する。これにより、電流センサ300の異常検出を容易に行うことができる。
【0055】
ステップS109の処理では、制御部60は、ステップS106,S108の処理で取得した第1検出値及び第2検出値から、電流センサ300が正常であるか否か判定する。制御部60は、例えば、上記<電流センサが正常であると判定する方法>によって、電流センサ300が正常であるか判定する。制御部60は、電流センサ300が正常であると判定した場合(ステップS109:Yes)、処理を終了する。一方、制御部60は、電流センサ300が正常であると判定しない場合(ステップS109:No)、ステップS110の処理に進む。
【0056】
ステップS110の処理では、制御部60は、ステップS106,S108の処理で取得した第1検出値及び第2検出値から、電流センサ300が異常であるか否か判定する。制御部60は、例えば、上記<電流センサが異常であると判定する方法>によって、電流センサ300が異常であるか判定する。制御部60は、電流センサ300が異常であると判定した場合(ステップS110:Yes)、ステップS111の処理に進む。一方、制御部60は、電流センサ300が異常であると判定しない場合(ステップS110:No)、ステップS105からの処理を繰り返し行う。
【0057】
ステップS111の処理では、制御部60は、通信部70を介し、電流センサ300が異常である旨の信号を、リモコン200に送信する。リモコン200は、制御部60から電流センサ300が異常である旨の信号を受信すると、電流センサ300が正しく機能していない旨を示す警告を表示して利用者に提示する。
による。
【0058】
このように、電流センサ300が正常又は異常であると判定しない場合は、ステップS105〜S110の処理によってスイッチ50のオン/オフ状態の切り替えが繰り返される。しかしながら、本実施形態では、ヒータ21を所定温度以上にし、スイッチ50に流れる電流値を低減させているため、スイッチ50のオン/オフ状態の切り替えの繰り返しによる、スイッチ50の劣化の度合いを低減させることができる。
【0059】
なお、一般負荷400が消費する電力は、時間によって変動することがある。そのため、ステップS106,S108の処理において、制御部60は、一般負荷400が消費する電力が変動するタイミングで、第1検出値及び第2検出値を取得してしまうことがある。そこで、電流センサ300の異常の検出をより確実に行うために、ステップS105〜S110の処理を複数回繰り返し行う。そして、連続でN回以上、ステップS109の処理で電流センサ300が正常(又はステップS110の処理で電流センサ300が異常)であると判定した場合に、電流センサ300は正常(又は異常)であると判定してもよい。
【0060】
また、ヒータ21によって電流センサ300の異常検出を行う際は、ヒータ21は、燃焼触媒ヒータであってもよい。ヒータ21に、ある程度負荷が大きい燃焼触媒ヒータを用いることで、電流センサ300の異常を検出する際のスイッチ50のオン/オフ状態の切り替えの繰り返し回数を減らすことができ、スイッチ50の劣化の度合いをさらに低減させることができる。
【0061】
また、ヒータ21と、ヒータ21以外の他の補機(例えば、発電部30外に存在するブロア及びポンプ等の補機)とを組み合わせて、本実施形態に係る電流センサ300の異常検出を行ってもよい。また、ヒータ21以外の他の補機を組み合わせて、本実施形態に係る電流センサ300の異常検出を行ってもよい。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る燃料電池装置100では、ヒータ21を単に稼働状態及び非稼働状態にすることで、電流センサ300の異常を検出する際に用いる第1検出値及び第2検出値を取得する。これにより、電流センサ300の異常検出を容易に行うことができる。
【0063】
さらに、本実施形態では、ヒータ21によって電流センサ300の異常検出を行う際は、ヒータ21が所定温度以上である場合に、電流センサ300の異常検出を行っている。つまり、燃料電池装置100では、スイッチ50に流れる電流値を低減させた状態で、電流センサ300の異常検出を行っている。これにより、電流センサ300の異常を検出する際における、スイッチ50のオン/オフ状態の切り替えの繰り返しによる、スイッチ50の劣化の度合いを低減させることができる。従って、本実施形態では、燃料電池装置100の信頼性を維持しつつ、電流センサ300の異常を検出することができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る燃料電池装置100では、電流センサ300の異常を検出するための専用の負荷を燃料電池装置100に内蔵させずに、燃料電池装置100が備えるヒータ21を利用して電流センサ300の異常を検出している。これにより、燃料電池装置100では、専用の負荷を燃料電池装置100に設けることで、燃料電池装置の構成がより複雑化してしまうことを防ぐことができる。
【0065】
また、本実施形態に係る燃料電池装置100では、上述の処理により、電流センサ300の異常を自動的に検出することができる。これにより、設置業者によって電流センサ300が設けられた後に、電流センサ300に異常が生じても、自動的に電流センサ300の異常を検出することができる。さらに、燃料電池装置100は電流センサ300の異常を自動的に検出できるため、設置業者は、電流センサ300を設ける際に、電流センサ300の取り付け向きを確認するための装置等を持参しなくてもよくなる。従って、燃料電池装置100の設置を効率よく行うことができる。
【0066】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、本発明について装置を中心に説明してきたが、本発明は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0067】
10 セルスタック
11 温度センサ
20 補機
21 ヒータ
30 発電部
40 電力変換部
50 スイッチ
60 制御部
70 通信部
80 記憶部
100 燃料電池装置
200 リモコン
300 電流センサ
400 一般負荷
500 電力系統
図1
図2
図3