(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施の形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面に関して、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて各部の幅、厚さ、形状等を模式的に表す場合があるが、それら模式的な図は一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。さらに、本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同一又は類似の要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0010】
本発明において、ある一つの膜を加工して複数の膜を形成した場合、これら複数の膜は異なる機能、役割を有することがある。しかしながら、これら複数の膜は同一の工程で同一層として形成された膜に由来し、同一の層構造、同一の材料を有する。したがって、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0011】
なお、本明細書中において、図面を説明する際の「上」、「下」などの表現は、着目する構造体と他の構造体との相対的な位置関係を表現している。本明細書中では、側面視において、後述する絶縁表面からバンクに向かう方向を「上」と定義し、その逆の方向を「下」と定義する。本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
また、本明細書中において、「表示装置」とは、液晶層や、有機EL素子等の発光素子を用いて画像を表示する装置を指す。したがって、表示装置には、液晶層や、有機EL素子等の発光素子を含む表示モジュール(表示パネルともいう。)、及び表示モジュールに対して他の要素(例えば、カバーガラスなど)を組み合わせた表示装置が含まれる。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置100の構成を示した概略図であり、有機EL表示装置100を平面視した場合における概略構成を示している。本明細書では、有機EL表示装置100を画面(表示領域)に垂直な方向から見た様子を「平面視」と呼ぶ。
【0014】
図1に示すように、有機EL表示装置100は、絶縁表面上に形成された、表示領域102と、表示領域102の周辺に位置する周辺領域103と、走査線駆動回路104と、データ線駆動回路105と、ドライバIC106と、を有する。ドライバIC106は、走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路105に信号を与える制御部として機能する。データ線駆動回路105は、ドライバIC106に含まれる場合もある。また、データ線駆動回路105は、ドライバIC106内に組み込まれていてもよい。ドライバIC106は、ICチップのような形態で別途基板101上に配置してもよく、フレキシブルプリント回路(Flexible Print Circuit:FPC)108に設けて外付けしてもよい。FPC108は、周辺領域103に設けられた端子107と接続される。
【0015】
ここで、絶縁表面は、基板101の表面である。基板101は、その表面上に設けられる画素電極や絶縁層などの各層を支持する。尚、基板101は、それ自体が絶縁性材料からなり、絶縁表面を有していても良いし、基板101上に別途絶縁膜を形成して絶縁表面を形成しても良い。絶縁表面が得られる限りにおいて、基板101の材質や、絶縁膜を形成する材料は特に限定しない。
【0016】
図1に示す表示領域102には、複数の画素110がマトリクス状に配置される。各画素110は、後述する画素電極と、該画素電極の一部(アノード)、該画素電極上に積層された発光層を含む有機層(発光部)及び陰極(カソード)からなる発光素子と、を含む。各画素110には、データ線駆動回路105から画像データに応じたデータ信号が与えられる。それらデータ信号に従って、各画素110に設けられた画素電極に電気的に接続されたトランジスタを駆動し、画像データに応じた画面表示を行うことができる。トランジスタとしては、典型的には、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を用いることができる。但し、薄膜トランジスタに限らず、電流制御機能を備える素子であれば、如何なる素子を用いても良い。
【0017】
図2は、第1実施形態の有機EL表示装置100における表示領域102の構成を示す図である。具体的には、表示領域102の一部として、6つの発光素子201を平面視した構成を示している。なお、
図2では、6つの発光素子201について例示しているが、実際には、表示領域102では、数百万個以上の発光素子が画素に対応してマトリクス状に配置されている。
【0018】
上述したように、各画素110は、画素電極と、画素電極の一部(アノード)、該画素電極上に設けられ、有機EL材料を含む発光層を有する有機層(発光部)及び有機層上に設けられた対向電極(カソード)からなる発光素子201とを有する。発光素子201は、発光領域に設けられる。ここで、発光領域とは、平面視において、後述する第2絶縁層(バンク)から露出された、画素電極の一部を意味する。第2絶縁層(バンク)は、画素電極の端部を覆い、隣接する画素電極間に設けられる。対向電極上には、第4絶縁層(第1無機絶縁層)335が設けられる。対向電極は、第2絶縁層(バンク)よりも下層に設けられた配線205と電気的に接続している。
図2では、対向電極と配線205とが接続している部分を接続部207として示している。尚、
図2では、発光素子201、第4絶縁層335、配線205及び接続部207以外の構成については、記載を省略している。
【0019】
有機EL表示装置100は、表示領域102において、互いに隣接する2つの発光領域の間で、少なくとも対向電極及び第4絶縁層335が、不連続となる領域209を有する。領域209は、平面視において、少なくとも一つの発光素子201を囲むように設けられる。
図2に示すように、本実施形態では、領域209は、平面視において、一つの発光素子201を囲むように設けられる。
【0020】
なお、本実施形態では、画素配列として、画素がストライプ配列された例を示したが、その他デルタ配列やベイヤー配列、又はペンタイル構造を実現する配列であってもよい。
【0021】
図3は、第1実施形態の有機EL表示装置100における画素の構成の一例を示す図である。具体的には、
図2に示した表示領域102をA−Aで切断した断面の構成を示す図である。
図3を参照して、本実施形態に係る有機EL表示装置100について詳細に説明する。
図3に示すように、有機EL表示装置100は、基板301を有する。基板301は、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の可撓性を有する樹脂基板)を用いることができる。基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。特に、基板としてフレキシブル基板を用いる場合には、前述のような積層構造を有する下地層を設けて外部からの保護機能を高めることが望ましい。
【0022】
基板301上には、下地層303が設けられる。下地層303は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム等の無機材料で構成される絶縁層である。下地層303は、単層に限定されるわけではなく、例えば、酸化シリコン層と窒化シリコン層との積層構造を有してもよい。この構成は、基板301との密着性や、後述する薄膜トランジスタ305に対するガスバリア性を考慮して適宜決定すれば良い。
【0023】
下地層303上には、薄膜トランジスタ305が設けられる。薄膜トランジスタ305の構造は、トップゲート型であってもボトムゲート型であってもよい。本実施形態では、薄膜トランジスタ305は、下地層303上に設けられた半導体層307、半導体層307を覆うゲート絶縁膜309、ゲート絶縁膜309上に設けられたゲート電極311、ゲート電極311を覆う層間絶縁膜315及び317、並びに、層間絶縁膜317上に設けられ、それぞれ半導体層307に接続されたソース電極319及びドレイン電極321を含む。尚、本実施形態では、層間絶縁膜が層間絶縁膜315、317の積層構造を有している例を説明しているが、層間絶縁膜は単層であってもよい。
【0024】
なお、薄膜トランジスタ305を構成する各層の材料は、公知の材料を用いればよく、特に限定はない。例えば、半導体層307としては、一般的にはポリシリコン、アモルファスシリコン又は酸化物半導体を用いることができる。ゲート絶縁膜309としては、酸化シリコン又は窒化シリコンを用いることができる。ゲート電極311は、銅、モリブデン、タンタル、タングステン、アルミニウムなどの金属材料で構成される。層間絶縁膜315、317としては、酸化シリコンまたは窒化シリコンを用いることができる。ソース電極及びドレイン電極319、321は、それぞれ銅、チタン、モリブデン、アルミニウムなどの金属材料で構成される。
【0025】
尚、ゲート電極311と同じ層には、ゲート電極311を構成する金属材料と同一の金属材料で構成された配線313を設けることができる。配線313は、例えば、走査線駆動回路104によって駆動される走査線等として設けることができる。また、
図3には図示しないが、ソース電極及びドレイン電極319、321と同じ層には、配線313と交差する方向に延在する配線を設けることができる。該配線は、例えば、信号線駆動回路105によって駆動される信号線等として設けることができる。
【0026】
薄膜トランジスタ305上には、第1絶縁層323が設けられる。第1絶縁層323は、平坦化膜として機能する。第1絶縁層323は、有機樹脂材料を含んで構成される。有機樹脂材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、エポキシ等の公知の有機樹脂材料を用いることができる。これらの材料は、溶液塗布法により膜形成が可能であり、平坦化効果が高いという特長がある。特に図示しないが、第1絶縁層323は、単層構造に限定されず、有機樹脂材料を含む層と無機絶縁層との積層構造を有してもよい。
【0027】
第1絶縁層323は、ソース電極又はドレイン電極321の一部を露出させるコンタクトホール324を有する。コンタクトホール324は、後述する画素電極325とソース電極又はドレイン電極321とを電気的に接続するための開口部である。したがって、コンタクトホール324は、ソース電極又はドレイン電極321の一部に重畳して設けられる。コンタクトホール324の底面では、ソース電極又はドレイン電極321が露出される。
【0028】
第1絶縁層323上には、画素電極325が設けられる。画素電極325は、コンタクトホール324に重畳し、コンタクトホール324の底面で露出されたソース電極又はドレイン電極321と電気的に接続する。本実施形態の有機EL表示装置100において、画素電極325は、発光素子201を構成する陽極(アノード)として機能する。画素電極325は、トップエミッション型であるかボトムエミッション型であるかで異なる構成とする。例えば、トップエミッション型である場合、画素電極325として反射率の高い金属膜を用いるか、酸化インジウム系透明導電膜(例えばITO)や酸化亜鉛系透明導電膜(例えばIZO、ZnO)といった仕事関数の高い透明導電膜と金属膜との積層構造を用いる。逆に、ボトムエミッション型である場合、画素電極325として上述した透明導電膜を用いる。本実施形態では、トップエミッション型の有機EL表示装置を例に挙げて説明する。画素電極325の端部は、後述する第2絶縁層327によって覆われている。
【0029】
また、本実施形態において、第1絶縁層323上には、隣接する画素電極325の間において、画素電極325とは電気的に独立した配線205が設けられる。配線205は、画素電極325と同じ層に設けられ、画素電極325と同一の材料で構成されることができる。配線205は、後述する対向電極333と電気的に接続される。特に図示しないが、配線205は、表示領域の外側まで延在して、
図1において示した端子107に接続される。尚、本実施形態では、配線205は、画素電極325と同じ層に設けられるが、配線205の位置はこれに限定されず、後述する第2絶縁層(バンク)327よりも下層に設けられていればよい。また、後述する領域209の位置に応じて、配線205は、
図3とは異なる箇所に設けられてもよい。
【0030】
画素電極325上には、有機樹脂材料で構成される第2絶縁層327が設けられる。有機樹脂材料としては、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系といった公知の樹脂材料を用いることができる。第2絶縁層327は、画素電極325上の一部に開口部を有する。第2絶縁層327は、互いに隣接する画素電極325の間に、画素電極325の端部(エッジ部)を覆うように設けられ、隣接する画素電極325を離隔する部材として機能する。このため、第2絶縁層327は、一般的に「隔壁」、「バンク」とも呼ばれる。この第2絶縁層327から露出された画素電極325の一部が発光領域300である。第2絶縁層327の開口部は、内壁がテーパー形状となるようにしておくことが好ましい。これにより後述する発光層の形成時に、画素電極325の端部におけるカバレッジ不良を低減することができる。第2絶縁層327は、画素電極325の端部を覆うだけでなく、コンタクトホール324に起因する凹部を埋める充填材として機能させてもよい。
【0031】
また、本実施形態において、
図3に示すように、第2絶縁層327には、配線205と後述する対向電極333とを電気的に接続するためのコンタクトホール328が設けられる。尚、配線205が表示領域102外に設けられる場合、コンタクトホール328は省略することができる。
【0032】
第2絶縁層327上には、第2絶縁層327を覆う第3絶縁層(第2無機絶縁層)329が設けられる。第3絶縁層329は、酸化シリコンまたは窒化シリコンといった無機材料で構成される。第3絶縁層329は、発光領域300において開口部を有する。また、第3絶縁層329は、コンタクトホール328において、配線205を露出する開口部を有する。
【0033】
図4は、
図3における、画素電極325と第2絶縁層327との接触部分の近傍の拡大図を示している。第3絶縁層329は、第2絶縁層327を構成する有機樹脂材料から発生するガスや水分が後述する有機層331に侵入することを防止するバリア層として機能する。そのため、
図4に示すように、第2絶縁層327と有機層331とが接触しないように、第3絶縁層329は、第2絶縁層327の周囲で画素電極325に接触している。
【0034】
尚、第3絶縁層329は、有機EL表示装置100において必須の構成要素ではなく、省略することもできる。
【0035】
画素電極325上には、有機層331が設けられる。有機層331は、少なくとも有機材料で構成される発光層を有し、発光素子201の発光部として機能する。有機層331には、発光層以外に、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層といった各種の電荷輸送層も含まれ得る。有機層331は、発光領域300覆うように、即ち、発光領域300における第2絶縁層327の開口部及び第3絶縁層329の開口部を覆うように設けられる。
【0036】
なお、本実施形態では、所望の色の光を発する発光層を有機層331に設け、各画素電極325上に異なる発光層を有する有機層331を形成することで、RGBの各色を表示する構成とする。つまり、本実施形態において、有機層331は、隣接する画素電極325の間では不連続である。有機層331には、公知の構造や公知の材料を用いることが可能であり、特に本実施形態の構成に限定されるものではない。また、有機層331は、白色光を発する発光層を有し、カラーフィルタを通してRGBの各色を表示してもよい。この場合、有機層331は、第3絶縁層329上にも設けられてもよい。
【0037】
有機層331上及び第3絶縁層329上には、対向電極333が設けられる。対向電極333は、発光素子201を構成する陰極(カソード)として機能する。本実施形態の有機EL表示装置100は、トップエミッション型であるため、対向電極333としては透明電極を用いる。透明電極を構成する薄膜としては、MgAg薄膜もしくは透明導電膜(ITOやIZO)を用いる。対向電極333は、各画素201間を跨いで第3絶縁層329上にも設けられる。対向電極333は、表示領域102の端部付近の周辺領域において下層の導電層を介して外部端子へと電気的に接続される。上述したように、本実施形態では、第2絶縁層327から露出した画素電極325の一部(アノード)、有機層331(発光部)及び対向電極333(カソード)によって発光素子201が構成される。
【0038】
対向電極333は、コンタクトホール328を介して配線205と電気的に接続する。具体的には、対向電極333は、コンタクトホール328において露出された配線205と接続する。対向電極333と配線205との接続部は、
図2における接続部207に対応する。対向電極333は、配線205から所定の電位の電圧の供給を受ける。
【0039】
対向電極333上には、第4絶縁層(第1無機絶縁層)335が設けられる。第4絶縁層335は、有機EL素子を外部の水分や外気等から保護するためのバリア層として機能し、無機材料を含んで構成される。第4絶縁層335としては、窒化シリコン膜など緻密性の良い無機絶縁膜を用いることが好ましい。尚、第4絶縁層335は、
図2における絶縁層203に対応している。
【0040】
以上説明した基板301から第4絶縁層335までをまとめて、本実施形態ではアレイ基板と呼ぶ。
【0041】
本実施形態に係る有機EL表示装置100は、隣接する発光領域300の間で、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が、不連続となる領域209を有する。具体的には、
図3に示すように、隣接する2つの発光領域300の間、つまり、隣接する画素電極325を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327上において、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335には、開口部337が設けられる。開口部337の底面では、第2絶縁層327が露出される。この開口部337が、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域209に対応している。開口部337は、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335に入れられたスリットであり、有機EL表示装置100が曲げられる等してアレイ基板に応力がかかった際、無機材料で構成された第3絶縁層329及び第4絶縁層335にかかる応力を緩和する応力緩和部として機能し、第3絶縁層329及び第4絶縁層335の割れを防止することができる。
【0042】
尚、有機EL表示装置100において、第3絶縁層329が省略される場合、開口部337は、対向電極333及び第4絶縁層335に設けられる。この場合、隣接する2つの発光領域300の間で、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる。対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域は、無機材料で構成された第4絶縁層335にかかる応力を緩和する応力緩和部として機能し、第4絶縁層335の割れを防止する。
【0043】
アレイ基板上には、接着材及び保護材として機能する充填材(フィル材)339を介して対向基板341が設けられる。充填材339としては、ポリイミド系、ポリアミド系、アクリル系、エポキシ系もしくはシロキサン系の公知の樹脂材料を用いることができる。充填材339は、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335に設けられた開口部337を充填する。充填材339には、アレイ基板と対向基板341との間の間隙を確保するためにスペーサを設けてもよい。このようなスペーサは、充填材に混ぜてもよいし、アレイ基板上に樹脂等により形成してもよい。また、基板周辺部分で十分な封止、及びアレイ基板と対向基板341とのギャップ保持が実現できるのであれば、充填材339を用いず、中空封止とすることもできる。
【0044】
対向基板341には、例えば、平坦化を兼ねてオーバーコート層が設けられてもよい。有機層331が白色光を出射する場合、対向基板341には、主面(基板301に対向する面)にRGBの各色にそれぞれ対応するカラーフィルタ、及び、カラーフィルタ間に設けられたブラックマスクが設けられてもよい。対向基板341は、有機EL表示装置100の必須要素ではなく、充填材339が十分な膜厚と強度を有しており、第4絶縁層335以下の層を外部からの異物の接触等から好適に保護できるのであれば、対向基板341は省略することができる。対向基板341を省略するとともに、カラーフィルタが必要な場合は、例えば第4絶縁層335上等に直接カラーフィルタを形成し、その上から充填材339を形成すればよい。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る有機EL表示装置100では、隣接する2つの発光領域300の間、つまり、隣接する画素電極325を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327上において、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335に開口部337を設け、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域209を設けている。この領域209が、有機EL表示装置100が曲げられる等してアレイ基板に応力がかかった際、無機材料で構成された第3絶縁層329及び第4絶縁層335の割れを防止する。そのため、有機EL表示装置100の信頼性を向上させることができる。
【0046】
(表示装置の製造方法)
以下、上述した構成を備える本実施形態の有機EL表示装置100におけるアレイ基板の製造工程について、
図5〜
図11を参照して説明する。
【0047】
図5に示すように、基板301上に下地層303を形成し、その上に公知の方法により薄膜トランジスタ(TFT)305を形成する。基板301としては、ガラス基板、石英基板、フレキシブル基板(ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートその他の可撓性を有する基板)等を用いることができる。基板301が透光性を有する必要がない場合には、金属基板、セラミックス基板、半導体基板を用いることも可能である。
【0048】
下地層303としては、典型的には、酸化シリコンもしくは窒化シリコンで構成される絶縁層、またはそれらの積層膜を用いることができる。下地層303は、基板301からの汚染物質の侵入を防いだり、基板301の伸縮により発生する応力を緩和したりする機能を有する。
【0049】
薄膜トランジスタ305は、前述のように公知の方法により形成すればよい。例えば、下地層303上にポリシリコン、アモルファスシリコン又は酸化物半導体で構成される半導体層307を形成し、半導体層307を覆うように酸化シリコンで構成されるゲート絶縁膜309を形成する。ゲート絶縁膜309の上には、銅、モリブデン、タンタル、タングステン、アルミニウムなどの金属材料で構成されるゲート電極311を形成する。ここで、ゲート電極311と同じ層にゲート電極311と同じ材料を用いて配線313を形成してもよい。ゲート電極311上にゲート電極311を覆うように層間絶縁膜315、317を形成する。層間絶縁膜315、317としては、酸化シリコンもしくは窒化シリコンで構成される絶縁層を用いることができる。さらに、層間絶縁膜315、317及びゲート絶縁膜309に半導体層307に達するコンタクトホールを形成した後、銅、チタン、モリブデン、アルミニウムなどの金属材料で構成されるソース電極及びドレイン電極319、321を形成する。尚、層間絶縁膜315又は317は、省略されることができる。つまり、層間絶縁膜は単層であってもよい。
【0050】
以上のプロセスにより薄膜トランジスタ305が形成される。なお、本実施形態では、薄膜トランジスタ305としてトップゲート型薄膜トランジスタを形成する例を示したが、公知の方法によりボトムゲート型薄膜トランジスタを形成してもよい。
【0051】
薄膜トランジスタ305を形成した後、
図6に示すように、第1絶縁層323を形成し、ソース電極又はドレイン電極321に達するコンタクトホール324を形成する。本実施形態では、第1絶縁層323として、感光性アクリル樹脂で構成される樹脂層を形成し、フォトマスクを用いた露光によりコンタクトホール324を形成する。なお、第1絶縁層323は平坦化膜として用いるため、膜厚を1〜3μmとすることが好ましい。
【0052】
次に、
図7に示すように、第1絶縁層323上に画素電極325を形成する。画素電極325は、コンタクトホール324を覆うように形成される。画素電極325は、例えば、ITO薄膜で銀薄膜を挟んだ三層構造の導電層を形成し、その導電層をパターニングすることにより形成される。本実施形態では、表示装置の上方(基板301から遠ざかる方向を上とする)に向かって光を取り出す構成とするため、銀薄膜を反射層として利用する。このように形成された画素電極325は、本実施形態の発光素子201における陽極(アノード)として機能する。また、画素電極325と同様に、配線205も形成する。
【0053】
次に、
図8に示すように、隣接する画素電極325を分離して隣接する発光領域30を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327を形成する。第2絶縁層327は、画素電極325上に膜厚1μm程度の樹脂層を形成した後、画素電極325の一部と重畳する領域において、樹脂層に開口部801を形成して画素電極325の一部を露出し、さらに配線205の一部と重畳する領域にコンタクトホール328を形成して配線の一部を露出することによって得ることができる。開口部801によって露出された画素電極325の一部が発光領域300である。
【0054】
第2絶縁層327を形成した後、第3絶縁層329を形成する。第3絶縁層329は、第2絶縁層327上に酸化シリコンまたは窒化シリコンといった無機材料で無機膜を形成した後、発光領域300において無機膜に開口部を形成して画素電極325を露出させ、さらにコンタクトホール328の底部において配線205露出させるための開口部を形成することによって得ることができる。
【0055】
次に、
図9に示すように、発光領域300において画素電極325上に有機層331を形成する。有機層315は、公知の方法で形成することができる。例えば、低分子の有機EL材料を蒸着により形成したり、高分子の有機EL材料をインクジェット法等により形成したりしてもよい。
【0056】
次に、
図10に示すように、発光素子201の陰極として機能する対向電極333を形成する。本実施形態において、対向電極333は、全ての画素110に対して共通に形成する。対向電極333は、スパッタ法で形成したITO膜又はIZO膜を用いる。また、対向電極333の材料としては、他の透明導電膜を用いてもよく、光が透過する程度の薄膜として形成された金属膜を用いてもよい。
【0057】
その後、保護膜として窒化シリコンを含んで構成される第4絶縁層335を対向電極333上に形成する。このとき、対向電極333と第4絶縁層335とを外気に触れさせることなく連続形成することが望ましい。
【0058】
次に、
図11に示すように、隣接する2つの画素電極325の間に設けられ、隣接する発光領域300を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327上において、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335に第2絶縁層327を露出する開口部337を形成する。開口部337を形成することにより、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域209が形成される。
【0059】
以上のようにして、本実施形態の有機EL表示装置100のアレイ基板が完成する。さらに完成したアレイ基板に対し、
図3に示した対向基板341を充填材339により貼り合わせれば、
図3に示した有機EL表示装置100を得ることができる。
【0060】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態の有機EL表示装置1200における画素の構成の別の一例による断面構造を示す図である。
図12に示した有機EL表示装置1200、
図3に示した第1実施形態の有機EL表示装置100における画素の構成と同一又は類似の構成については、
図3における参照番号と同一の参照番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0061】
第2実施形態の有機EL表示装置1200では、有機層331上及び第2絶縁層327上に設けられる対向電極1301を除いて、上述した第1実施形態の有機EL表示装置100と略同一の構成を有する。
【0062】
有機EL表示装置1200において、対向電極1301は、第4絶縁層335によって被覆されている。即ち、表示領域102において、対向電極1301の端部は、領域209に露出しない。本実施形態に係る有機EL表示装置1200において、第3絶縁層329及び第4絶縁層335は、隣接する2つの発光領域300の間で開口部1303を有する。具体的には、
図12に示すように、隣接する2つの発光領域300の間、つまり、隣接する画素電極325を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327上において、第3絶縁層329及び第4絶縁層335には、開口部1303が設けられる。第3絶縁層329及び第4絶縁層335に設けられる開口部1303により、第2絶縁層327が露出される。この開口部1303が、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域209に対応している。ここで、上述した第1実施形態に係る有機EL表示装置100とは異なり、本実施形態に係る有機EL表示装置1200では、対向電極1301の端部は、開口部1303の側壁に露出されていない。即ち、対向電極1301の端部は、第3絶縁層329及び第4絶縁層335の端部よりも発光領域300に近い側にある。尚、各発光素子201に設けられた有機層331の端部は、対向電極1301の端部よりも、発光領域300に近い側にある。
【0063】
本実施形態では、対向電極1301の端部1301が開口部1303に露出されず、対向電極13301の端部が第4絶縁層335によって被覆される。そのため、対向電極1301が外気や外部からの水分などに晒されず、対向電極1301の劣化を防止することができる。
【0064】
本実施形態に係る有機EL表示装置1200の製造方法は、対向電極1301のパターニングを除いて、上述した第1実施形態の係る有機L表示装置100の製造方法と略同一である。
【0065】
(製造方法)
以下では、本実施形態の有機EL表示装置1200におけるアレイ基板の製造工程について、
図13〜
図15を参照して説明する。尚、上述した上述した第1実施形態の係る有機L表示装置100の製造方法と同一の製造工程の説明は省略する。
【0066】
まず、
図9に示したように、有機層331を発光領域300における画素電極325上に形成した後、
図13に示すように、パターニングされた対向電極1301を形成する。対向電極1301は、メタルマスクを用いた蒸着により形成することができる。対向電極1301に用いる材料としては、上述した有機EL表示装置100の対向電極333と同様でよい。
【0067】
また、有機層331を発光領域300における画素電極325上に形成した後、導電膜を全ての画素201に対して共通に形成し、形成した導電膜をフォトリソグラフィによりパターニングすることより、対向電極1301を形成してもよい。
【0068】
次に、
図14に示すように、保護膜として窒化シリコンを含んで構成される第4絶縁層335を対向電極333上に形成し、隣接する2つの発光領域300の間、つまり、隣接する画素電極325を離隔するバンクとして機能する第2絶縁層327上において、第3絶縁層329及び第4絶縁層335に第2絶縁層327を露出する開口部1303を形成する。開口部1303を形成することにより、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域209が形成される。
【0069】
(第3実施形態)
以上に述べた本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る有機EL表示装置100、1200では、表示領域102において、第3絶縁層(第2無機絶縁層)331、対向電極333、1301及び第4絶縁層(第1無機絶縁層)335が不連続となる領域209が、平面視で、一つの発光素子201を囲むように設けられる。しかしながら、領域209の位置は、これに限定されず、平面視で、少なくとも一つの発光素子201を囲むように設けられればよい。
【0070】
図15は、本発明の第3実施形態の有機EL表示装置1600における表示領域1602の構成を示す図である。具体的には、表示領域1602の一部として、12個の発光素子201を平面視した構成を示している。尚、有機EL表示装置1600を平面視した場合における概略構成は、
図1に示した有機EL表示装置100を平面視した場合における概略構成と同一であるため、省略する。
図15では、
図2に示した第1実施形態の有機EL表示装置100における表示領域102の構成と同一又は類似の構成には、
図2における参照番号と同一の参照番号を付す。また、以下に述べる本実施形態の有機EL表示装置1600の説明において、上述した第1実施形態の有機EL表示装置100における構成と同一又は類似の構成については、詳細な説明を省略する。
【0071】
図15に示すように、表示領域1602では、絶縁層(第1無機絶縁層)1603は、ストライプ配列された各画素に対応する発光素子201のうち、1列において連続する3つの発光素子201を覆っている。即ち、本実施形態では、少なくとも対向電極及び絶縁層1603が不連続となる領域1605は、平面視において、1列において連続する3つの発光素子201を囲むように設けられる。したがって、平面視において、1列において連続する3つの発光素子201において、対向電極は共通とすることができ、対向電極と配線205との接続部207は、平面視で、少なくとも対向電極及び絶縁層1603が不連続となる領域1605よりも内側に設けられる。
図15では、絶縁層(第1無機絶縁層)1603は、発光素子201のうち、1列において連続する3つの発光素子201を覆っているが、絶縁層(第1無機絶縁層)1603が覆う発光素子201の数は3つに限定されるわけではない。
【0072】
図16は、第3実施形態の有機EL表示装置1600における画素の構成の一例を示す図である。具体的には、
図15に示した表示領域1602をC−Cで切断した断面の構成を示す図である。
図16において、
図3に示した第1実施形態の有機EL表示装置100における画素の構成と同一又は類似の構成については、
図3における参照番号と同一の参照番号を付する。
図16に示すように、第3実施形態の有機EL表示装置1600における画素の構成は、第3絶縁層329、対向電極333及び第4絶縁層335が不連続となる領域1605の位置を除いて、第1実施形態の有機EL表示装置100における画素の構成と略同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
尚、少なくとも対向電極及び第4絶縁層が不連続となる領域の位置は、以上に述べた第1〜第3実施形態における少なくとも対向電極及び第4絶縁層が不連続となる領域の位置に限定されるわけではない。
図17〜
図19は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の表示領域の一部を平面視した図である。尚、
図17〜
図19に示した表示領域において、画素は、
図1において示した画素110と同様にストライプ状に配置されているものとする。
【0074】
例えば、
図17及び
図18に示すように、表示領域1802、1902において、第4絶縁層1803、1903及び第4絶縁層1803、1903の下層に設けられる対向電極(図示せず)は、表示領域1802、1902の一端部に位置する画素から他端部に位置する画素まで共通するように設けられてもよい。少なくとも対向電極及び第4絶縁層1803、1903が不連続となる領域は、
図17において、隣接する第4絶縁層1803の間に設けられ、
図18において、隣接する第4絶縁層1903の間に設けられる。また、この場合、対向電極に所定の電位の電圧を供給するための配線1805、1905は、表示領域1802、1902外に設けられる。尚、
図18において、配線1905は、表示領域1902の両端部に隣接する2箇所に設けられているが、表示領域1902の一端部に隣接する箇所に設けられてもよい。
【0075】
また、例えば、
図19に示すように、表示領域2002において、第4絶縁層2003及び第4絶縁層2003の下層に設けられる対向電極(図示せず)は、平面視で階段形状になるように設けられてもよい。少なくとも対向電極及び第4絶縁層2003が不連続となる領域は、
図19において、隣接する第4絶縁層2003の間に設けられる。この場合、対向電極に所定の電位の電圧を供給するための配線2005は、表示領域2002外に設けられる。
【0076】
本発明の実施形態として説明した有機EL表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。また、上述した各実施形態は、技術的矛盾の生じない範囲において、相互に組み合わせることが可能である。
【0077】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。