特許第6784525号(P6784525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784525
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】蓋構造体及びそれを用いた閉塞構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 19/00 20060101AFI20201102BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   B63B19/00 Z
   E02D29/14 E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-134012(P2016-134012)
(22)【出願日】2016年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-2046(P2018-2046A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和典
(72)【発明者】
【氏名】川崎 修治
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3030973(JP,U)
【文献】 特開2016−099003(JP,A)
【文献】 特開昭62−055291(JP,A)
【文献】 特開2013−256760(JP,A)
【文献】 特開平06−117590(JP,A)
【文献】 特開2003−314694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 19/00
E02D 29/14
E04G 21/32
F16L 5/02 − 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体又は海洋構造物内の電線用ダクトにマンホールまたはハンドホールとして形成された開口を閉塞するための蓋構造体と、前記開口を形成する短管と、を備える、閉塞構造であって、
前記蓋構造体は、
第1表面及び前記第1表面の反対側の第2表面を有し、前記開口を覆うメインプレートと、
前記メインプレートの前記第2表面に突設された筒状体と、
前記筒状体の周りに設けられた、前記メインプレートの前記第2表面に当接する、その中心軸が前記筒状体の中心軸と一致する環状の弾性体と、
前記メインプレートとは反対側から前記弾性体に当接する環状のサブプレートと、
前記弾性体の周方向に沿って互いに間隔をあけて設けられた、前記弾性体が前記メインプレート及び前記サブプレートに当接した状態を保持する複数の保持構造体であって、前記複数の保持構造体は、夫々、前記メインプレートの前記第1表面に設けられた回転部を有し、前記回転部を回転させることにより前記メインプレートと前記サブプレートの間隔を変更可能な保持構造体と、を備える、閉塞構造。
【請求項2】
前記サブプレートの外周縁が前記開口を通過する大きさであり、
前記保持構造体は、ボルト及び前記ボルトの軸部に螺合されたナットを備えており、前記ボルトの頭部及び前記ナットの一方は、前記回転部であり、前記ボルトの頭部及び前記ナットの他方は、前記サブプレートから離れず且つ前記サブプレートに対して回転しないように前記サブプレートに固定されている、請求項1に記載の閉塞構造。
【請求項3】
前記サブプレートの外周縁が前記開口を通過する大きさであり、
前記保持構造体は、ボルトを備え、前記回転部は、前記ボルトの頭部であり、
前記サブプレートには、前記ボルトと係合するためのねじ穴が形成されている、請求項1に記載の閉塞構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口を水密又は気密に閉塞する蓋構造体及びそれを用いた閉塞構造に関する。
【背景技術】
【0002】
船体や海洋構造物等では、その内部の区画やダクト等に設けられた開口を閉塞する構造に水密性や気密性が要求される場合がある。例えば、特許文献1には、水密区画室と、該水密区画室に接続されるアクセストランクと、該アクセストランクに出入りするためのマンホールが開示されている。該マンホールは、喫水線より高い位置に設けられているため、水密区画室が浸水した場合もアクセストランクから海水があふれ出ることが防がれるのを確実にしている。このようなマンホールは、通常、水密性を備えるように蓋で塞がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−47039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水密性又は気密性を確保するための一般的な閉塞構造では、開口の周縁部分が短管状に形成されており、該短管の先端にフランジが設けられている。このフランジにリング状のゴムシートを介して蓋がかぶせられて、フランジと蓋との間の隙間がゴムシートで完全に塞がれるように、フランジに対して蓋をボルトで締結している。
【0005】
上述のような一般的な閉塞構造では、水密又は気密に閉塞するための蓋を形成するプレートの厚みが小さいと、フランジに対して該蓋をボルトで締結する際にその蓋が歪んでゴムシートを均一に押圧できないおそれがある。このため、水密又は気密に閉塞するための蓋は、厚みの大きい鋼鉄プレートで形成されていた。その結果、蓋の重量が大きいものとなっており、蓋の取付及び取り外し作業に大変な労力を要していた。
【0006】
そこで、本発明は、軽量であって且つ開口を水密又は気密に閉塞可能な蓋構造体及びそれを用いた閉塞構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る蓋構造体は、開口を閉塞するための蓋構造体であって、前記開口を覆うメインプレートと、前記メインプレートの一方表面に突設された筒状体と、前記筒状体の周りに設けられた、前記メインプレートの前記一方表面に当接する環状の弾性体と、前記メインプレートとは反対側から前記弾性体に当接する環状のサブプレートと、前記弾性体の周方向に沿って互いに間隔をあけて設けられた、前記弾性体が前記メインプレート及び前記サブプレートに当接した状態を保持する複数の保持構造体であって、前記複数の保持構造体は、夫々、前記メインプレートの他方表面に設けられた回転部を有し、前記回転部を回転させることにより前記メインプレートと前記サブプレートの間隔を変更可能な保持構造体と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、弾性体を開口に通した状態で保持構造体の回転部を回転させることにより、メインプレートとサブプレートの間隔が狭まり、その間に挟まれた弾性体が厚み方向に押圧される。弾性体は、内周面側の膨みが筒状体で規制されるため、弾性体の内周面が筒状体に当接した弾性体は、外周面側にのみ膨らみ、弾性体の外周面は、開口の周縁部に押圧され密着する。これにより、開口を水密又は気密に閉塞することができる。また、上記の構成によれば、メインプレートが多少歪んだとしても水密又は気密に開口を閉塞できるため、従来の蓋よりメインプレートを薄くすることができ、蓋構造体の軽量化を図ることができる。
【0009】
上記の蓋構造体において、前記保持構造体は、ボルト及びナットを備えており、前記回転部は、ボルトの頭部又はナット自体であってもよい。この構成によれば、弾性体がメインプレート及びサブプレートに当接した状態を保持するとともに、メインプレートとサブプレートの間隔を変更する構成を、簡易な構成で実現できる。
【0010】
また、本発明に係る閉塞構造は、上記の蓋構造体と、前記開口を形成する短管と、を備える。この構成によれば、弾性体の外周面を短管の内周面に押圧させることにより、開口を水密又は気密に閉塞するとともに、短管に蓋構造体を安定して保持させることができる。
【0011】
上記の閉塞構造において、例えば、前記開口は、船体又は海洋構造物内の電線用ダクトに形成されたハンドホールである。通常、船体又は海洋構造物内の電線用ダクトは、船体又は海洋構造物内に設けられた区画室の天井等の高所に設けられていることが多い。上記の閉塞構造によれば、蓋構造体が従来のものよりも軽量であるため、該電線用ダクト内の電線布設作業やメンテナンス作業に伴う、ハンドホールへの蓋構造体の取り付けやハンドホールからの蓋構造体の取り外しをより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量であって且つ開口を水密又は気密に閉塞可能な蓋構造体及びそれを用いた閉塞構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る蓋構造体を斜め上方から見た斜視図である。
図2図1に示す蓋構造体を斜め後方から見た斜視図である。
図3図1のIII−III線に沿う蓋構造体の断面図である。
図4図1に示す蓋構造体を用いた開口の閉塞方法を説明するための図であり、(a)は開口を閉塞する前の状態を示し、(b)は開口を閉塞させた状態を示す。
図5図1に示す蓋構造体を用いた閉塞構造を備える電線用ダクトである。
図6図4(b)に示す閉塞構造に防熱を施した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を各図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る蓋構造体1を斜め上方から見た斜視図である。図2は、蓋構造体1を斜め後方から見た斜視図である。図3は、図1のIII−III線に沿う蓋構造体1の断面図である。
【0015】
蓋構造体1は、開口を水密又は気密に閉塞するために用いられる。本実施形態では、蓋構造体1は円形の開口を塞ぐために用いられる。
【0016】
蓋構造体1は、開口を覆うメインプレート2を備える。メインプレート2は、例えば鋼鉄等の金属製である。また、メインプレート2は、開口と同形の円形である。メインプレート2は、第1表面21とその反対側の第2表面22を有している。第1表面21には、蓋構造体1を運ぶために把持される2つの取っ手23が設けられている。
【0017】
メインプレート2の第2表面22には、筒状体3が突設されている。筒状体3は、例えば鋼鉄等の金属製である。筒状体3は、円筒状であって、外周面31、内周面32、外周面31と内周面32を接続する2つの端面33,34を有する。筒状体3の中心軸上には、メインプレート2の中心が位置しており、筒状体3の外周面31は、筒状体3の中心軸方向から見て円形である。筒状体3の一方の端面33は、メインプレート2の第2表面22に溶接により接合されている。
【0018】
筒状体3の周りには、環状の弾性体4が設けられている。弾性体4は、例えばゴム製である。弾性体4は、円筒状であって、外周面41、内周面42、外周面41と内周面42を接続する2つの端面43,44を有する。また、弾性体4の中心軸と筒状体3の中心軸は一致しており、弾性体4の内周面42と筒状体3の外周面31との間には微小な隙間が設けられている。但し、弾性体4の内周面42は、筒状体3の外周面31に当接していてもよい。弾性体4は、その一方の端面43がメインプレート2の第2表面22に当接している。弾性体4の端面43,44間の長さは、筒状体3の端面33,34間の長さよりやや短い。
【0019】
弾性体4は、その中心軸方向(すなわち、厚み方向)に均等に分割された3つの弾性部材4a,4b,4cにより構成されている。3つの弾性部材4a,4b,4cは、同形同大であり、いずれも同じ素材により構成されている。但し、弾性体4は、その中心軸方向に分割されていなくてもよいし、その中心軸方向に2つに又は4つ以上に分割されていてもよい。
【0020】
弾性体4を挟んでメインプレート2とは反対側には、環状のサブプレート5が設けられている。サブプレート5は、弾性体4の中心軸方向から見て弾性体4と略同形同大である。サブプレート5は、弾性体4の端面44を覆うように設けられている。
【0021】
サブプレート5は、第1表面51とその反対側の第2表面52を有している。サブプレート5の第1表面51は、弾性体4の端面44に当接している。すなわち、サブプレート5は、メインプレート2とは反対側から弾性体4に当接しており、弾性体4はメインプレート2とサブプレート5に挟まれている。
【0022】
弾性体4がメインプレート2及びサブプレート5に当接した状態は、複数の保持構造体6により保持されている。本実施形態では、複数の保持構造体6は、それぞれ、弾性体4の周方向に沿って互いに間隔をあけて設けられている。各保持構造体6は、ボルト61、ナット(本発明の回転部に相当)62を有している。
【0023】
本実施形態では、ボルト61の頭部が、サブプレート5の第2表面52上に位置しており、ボルト61の軸部が、該頭部からメインプレート2、弾性体4及びサブプレート5を貫通するように延びている。そして、ナット62が、メインプレート2の第1表面21上に位置しており、ボルト61の軸部に螺合されている。
【0024】
保持構造体6による保持について、より詳しく説明すれば、メインプレート2、弾性体4及びサブプレート5には、メインプレート2の第2表面22に垂直な方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔は、弾性体4の外周面41及び内周面42から等距離に位置し、弾性体4の周方向に沿って互いに間隔をあけて設けられている。そして、これら複数の貫通孔に、サブプレート5の第2表面52側からボルト61の軸部が挿通されて、ボルト61の頭部がサブプレート5の第2表面52に当接している。そして、サブプレート5に対するボルト61の相対位置が変化しないように、言い換えれば、ボルト61がサブプレート5から離れず且つサブプレート5に対して回転しないように、ボルト61の頭部は、サブプレート5に例えば溶接等により固定されている。ナット62は、メインプレート2の第1表面21から突き出たボルト61の軸部に螺合した状態で、メインプレート2の第1表面21に当接している。こうして、ボルト61とナット62により、弾性体4がメインプレート2及びサブプレート5に当接した状態が保持される。
【0025】
さらに、弾性体4は弾性変形可能であるため、ナット62がメインプレート2に当接した状態でナット62を回転させることにより、ボルト61の頭部とナット62の間隔を変化させて、その結果、メインプレート2とサブプレート5の間隔を変化させることができる。これにより、弾性体4に厚み方向に応力をかけて、弾性体4を径方向に膨らませたり、膨らませた状態から元の状態に戻したりすることができる。
【0026】
すなわち、ナット62を回転させてメインプレート2とサブプレート5の間隔を狭めると、弾性体4は、メインプレート2及びサブプレート5から厚み方向に応力を受けて、厚み方向に縮まるとともに、径方向に膨らむ。このとき、弾性体4は、その内周面42が筒状体3に当接し、それ以上の内周面42側の膨みが筒状体3で規制される。このため、弾性体4の内周面42が筒状体3に当接した弾性体4は、外周面41側にのみ膨らむ。
【0027】
また、その逆に、弾性体4が厚み方向に押圧され外周面41側に膨らんでいるときに、ナット62を逆回転させてメインプレート2とサブプレート5の間隔を拡げると、弾性体4は、元の寸法に戻ろうとして厚み方向に伸びるとともに、弾性体4の外周面41側への膨らみも減少する。
【0028】
次に、図4及び図5を参照して、蓋構造体1を用いた閉塞方法について説明する。図4(a)は、開口を閉塞する前の状態を示し、図4(b)は、開口を閉塞させた状態を示す。また、図5は、蓋構造体1を用いた閉塞構造100を備える電線用ダクト101である。
【0029】
電線用ダクト101は、例えば船体内の区画室等の天井等に設けられており、その内部には、電線等が布設される。電線用ダクト101には、その延びる方向に沿って所定間隔(例えば約1m)おきにハンドホールとして開口が形成されている。該開口は、電線の布設作業やメンテナンス作業のために作業者が手や頭を入れるための箇所である。図4及び図5に示すように、開口は、下方に開口しているが、これに限られず、例えば開口は側方や上方に開口していてもよい。また、この開口の周りは、短管状に形成されている。この短管102は、弾性体4の厚み方向の幅と同等又はそれより大きい幅を有する内周面103を備える。この短管102に蓋構造体1が挿入されることにより閉塞構造100が構成される。
【0030】
開口を蓋構造体1で閉塞するために、まず、図4(a)に示すように、蓋構造体1を開口に挿入して、蓋構造体1の弾性体4を開口に通した状態にする。具体的には、蓋構造体1の弾性体4の外周面41と電線用ダクト101の短管102の内周面103が向き合うように、開口に蓋構造体1を配置させる。
【0031】
次に、メインプレート2の第1表面21に当接した複数のナット62を均等に回転させていく。ナット62を回転させることにより、メインプレート2とサブプレート5の間隔が狭まり、その間に挟まれた弾性体4が厚み方向に押圧される。弾性体4は、内周面42側の膨みが筒状体3で規制されるため、図4(b)に示すように、内周面42側の膨みが規制された弾性体4は、外周面41側にのみ膨らむ。こうして、弾性体4の外周面41を、開口の周縁部、すなわち短管102の内周面103に押圧させて密着させる。その結果、開口は、蓋構造体1により水密又は気密に閉塞される。また、弾性体4が短管102の内周面103に押圧されていることにより、電線用ダクト101の開口に蓋構造体1が挿通した状態が保持される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る蓋構造体1は、弾性体4を開口に通した状態でナット62を回転させることにより、メインプレート2とサブプレート5の間隔が狭まり、その間に挟まれた弾性体4が厚み方向に押圧される。弾性体4は、内周面42側の膨みが筒状体3で規制されるため、内周面42が筒状体3に当接した弾性体4は、外周面41側にのみ膨らみ、開口の周縁部に押圧され密着する。これにより、開口を水密又は気密に閉塞することができる。
【0033】
また、本実施形態では、メインプレート2が多少歪んだとしても水密性又は気密性を確保できるため、従来の蓋よりメインプレート2を薄くすることができ、蓋構造体1の軽量化を図ることができる。
【0034】
また、本実施形態では、弾性体4がメインプレート2及びサブプレート5に当接した状態を保持するとともに、メインプレート2とサブプレート5の間隔を変更する構成を、ボルト61及びナット62を備えた簡易な構成の保持構造体6により実現することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る閉塞構造100は、弾性体4の外周面41を短管102の内周面103に押圧させることにより、開口を水密又は気密に閉塞するとともに、短管102に蓋構造体1を安定して保持させることができる。
【0036】
ところで、電線用ダクト101内に電線を布設したりメンテナンスを行ったりするためには、作業者は足場を組んでハンドホールへの蓋の取り付けやハンドホールからの蓋の取り外しを行う必要がある。通常、電線用ダクト101は高所に設けられており、また、多数のハンドホールが形成されている場合が多い。このため、従来の蓋のような重量物の取り付けや取り外しは作業者にとって、非常に労力を要する作業となっていた。本実施形態では、蓋構造体1が従来のものよりも軽量であるため、該電線用ダクト101内の電線布設作業やメンテナンス作業に伴う、ハンドホールへの蓋構造体1の取り付けやハンドホールからの蓋構造体1の取り外しをより容易に行うことができ、作業者の負担を軽減することができる。
【0037】
また、弾性体4が3つの弾性部材4a,4b,4cからなる三層構造であるため、弾性体4が厚み方向に押圧されたときに、弾性部材4a,4b,4cがそれぞれ独立に変形する。このため、弾性体4が一体的に形成されている場合に比べて、弾性体4を厚み方向に沿って、できるだけ均等に膨らませることができる。
【0038】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、メインプレート2の第1表面21にナット62が当接しており、サブプレート5の第2表面52にボルト61の頭部が固定されていたが、その逆に、メインプレート2の第1表面21にボルト61の頭部が当接しており、サブプレート5の第2表面52にナット62が例えば溶接等により固定されていてもよい。また、ボルト61の頭部を回転させることにより、メインプレート2とサブプレート5の間隔を変更してもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、保持構造体6がボルト61とナット62を含む構成であったが、例えば、保持構造体6がナット62を含まない構成であってもよい。この場合、サブプレート5に設けられたボルト61を通すための孔には、ボルト61と係合するためのねじ穴が形成されていてもよい。そして、メインプレート2の第1表面21に当接したボルト61の頭部を回転させることにより、メインプレート2とサブプレート5の間隔を変更してもよい。
【0041】
また、蓋構造体1の各構成要素の形状は、上記実施形態で説明された形状に限られない。例えば、サブプレート5は、弾性体4の中心軸方向から見て弾性体4と略同形同大でなくてもよい。サブプレート5は、その外周縁が少なくとも開口を通過する大きさであり、且つ、その内周縁が筒状体3の中心軸方向から見て外周面31より筒状体3の外方側に位置していればよい。但し、サブプレート5は、弾性体4の中心軸方向から見て弾性体4と略同形同大である方が、弾性体4の端面44を均等に押圧できるために、特に好ましい。
【0042】
また、上記実施形態では、蓋構造体1の各構成要素は、円形の開口を塞ぐためにそれに応じた形状を備えていたが、蓋構造体1の各構成要素は、例えば長丸や楕円形状の開口を塞ぐための形状であってもよい。但し、蓋構造体1が円形の開口を塞ぐように構成されている場合、弾性体4が外周面41側に周に沿って均等に膨らむため、特に好ましい。
【0043】
また、図4に示した例では、開口の周りに短管102が形成されていたが、例えば、開口の周縁部が、弾性体4の厚み方向の幅と同等の幅を有する内周面を有していれば、開口の周りに短管102が形成されていなくてもよい。
【0044】
また、図6に示すように、閉塞構造100は、防熱材104で覆われていてもよい。図6は、図4(b)に示す閉塞構造100に防熱を施した状態を示す断面図である。図6に示す例では、蓋構造体1とともに、電線用ダクト101の外面も防熱材104で覆われている。但し、蓋構造体1とともに、電線用ダクト101の外面の一部のみが防熱材104で覆われていてもよい。このように、閉塞構造100を防熱材104で覆うことにより、閉塞構造100が設けられた空間で万一火災が発生した場合でも、蓋構造体1により閉塞される開口を通じて火災が拡大するのを防止することができる。
【0045】
また、図4に示した例では、蓋構造体1を用いて船体内の電線用ダクト101に設けられた開口を閉塞する例を示したが、蓋構造体1を用いて閉塞される開口は、これに限られない。蓋構造体1を用いて閉塞される開口は、水密又は気密に閉塞されることが要求される開口であればよく、例えば、浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)等の海洋構造物内の電線用ダクトの開口でもよいし、船体や海洋構造物内の区画室を区画する隔壁に設けられた開口であってもよい。あるいは、蓋構造体1を用いて閉塞される開口は、陸上設備内の水密又は気密に閉塞することが要求される開口であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 蓋構造体
2 メインプレート
21 第1表面(他方表面)
22 第2表面(一方表面)
3 筒状体
4 弾性体
5 サブプレート
61 ボルト
62 ナット(回転部)
100 閉塞構造
101 電線用ダクト
102 短管
図1
図2
図3
図4
図5
図6