(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1または特許文献2に記載された基板処理装置においては、スピンチャックにより保持されて回転する基板の周縁部に連続して処理液を吐出する構成であることから、処理液吐出ノズルより基板の周縁部に吐出された処理液は、基板の回転に伴って、基板の周縁部上面における供給位置から、基板の外側に飛散する。このため、スピンチャックに保持されて回転する基板の外周部には、基板より飛散する処理液を捕獲するためのカップが配設されている。
【0007】
ところで、このような基板処理装置においては、基板の回転に伴って、カップ内に基板の回転方向と同一方向に周回する空気の流れが発生している。このため、基板から飛散し、カップにより捕獲される処理液がカップとの衝突時に飛散し、この処理液の一部が空気の流れに乗って基板の表面に到達する場合がある。この処理液が基板の表面におけるデバイスパターン領域に付着した場合においては、デバイスパターンに欠陥が生じるという問題が発生する。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、処理液が基板表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制し、基板の周縁部の処理を適正に実行することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、外形が略円形の形状を有する基板の主面を略水平とした状態で保持するとともに、前記基板を当該基板の中心を回転中心として回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部に処理液を吐出する処理液吐出ノズルと、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の外周部に配設され、前記基板より飛散する処理液を捕獲するカップと、を備えた基板処理装置において、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の表面より上方において、前記基板より飛散した処理液が前記カップと衝突する衝突位置と前記基板との間に配設され、前記カップと衝突した処理液が前記スピンチャックに保持されて回転する基板の表面に到達することを防止するための反射防止部材を備え
る。前記反射防止部材は、前記カップの基板側の端縁から下方に延びる円筒状の壁部を備えるとともに、前記壁部における前記処理液吐出ノズルと対向する領域に開口部が形成される。前記開口部は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の上流側の位置から、前記基板の回転方向の下流側の位置に亘って形成される。前記開口部の前記基板の回転方向の上流側の端縁は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の上流側に配置されるとともに、前記開口部の前記基板の回転方向の下流側の端縁は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の下流方向に離隔した位置に配置される。前記開口部の前記基板の回転方向の下流側の端縁は、前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置から、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線が前記基板の周縁と交差する位置における前記基板の外周により構成される円の接線方向の位置より前記基板の回転方向の下流方向に配置される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、
外形が略円形の形状を有する基板の主面を略水平とした状態で保持するとともに、前記基板を当該基板の中心を回転中心として回転させるスピンチャックと、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部に処理液を吐出する処理液吐出ノズルと、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の外周部に配設され、前記基板より飛散する処理液を捕獲するカップと、を備えた基板処理装置において、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の表面より上方において、前記基板より飛散した処理液が前記カップと衝突する衝突位置と前記基板との間に配設され、前記カップと衝突した処理液が前記スピンチャックに保持されて回転する基板の表面に到達することを防止するための反射防止部材を備える。前記反射防止部材は、前記カップの基板側の端縁から下方に延びる円筒状の壁部を備えるとともに、前記壁部における前記処理液吐出ノズルと対向する領域に開口部が形成される。
前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置よりも前記基板の回転方向の上流側の位置において、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部に気体を吐出する気体吐出ノズルをさらに備える。前記開口部の前記基板の回転方向の上流側の端縁は、前記基板の回転中心と前記気体吐出ノズルによる前記基板への気体の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の上流側に配置される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記開口部は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の上流側の位置から、前記基板の回転方向の下流側の位置に亘って形成される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記開口部の前記基板の回転方向の上流側の端縁は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の上流側に配置されるとともに、前記開口部の前記基板の回転方向の下流側の端縁は、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より前記基板の回転方向の下流方向に離隔した位置に配置される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記開口部の前記基板の回転方向の下流側の端縁は、前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置から、前記基板の回転中心と前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置とを結ぶ直線が前記基板の周縁と交差する位置における前記基板の外周により構成される円の接線方向の位置より前記基板の回転方向の下流方向に配置される。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記処理液吐出ノズルによる前記基板への処理液の供給位置よりも前記基板の回転方向の上流側の位置において、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部に気体を吐出する気体吐出ノズルをさらに備える。
【0016】
請求項
7に記載の発明は、請求項
1から請求項
6のいずれか
一つに記載の発明において、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の周縁部の上方の処理液供給位置と、前記スピンチャックに保持されて回転する基板の上方から離隔した退避位置との間を揺動可能なアームの先端に複数の処理液吐出ノズルが配設され、前記複数の処理液吐出ノズルが選択的に使用される。
【0017】
請求項
8に記載の発明は、請求項
1から請求項
7のいずれか
一つに記載の発明において、前記カップは、前記基板より飛散する処理液が衝突する衝突面を備え、前記衝突面は、上部が前記スピンチャックに保持されて回転する基板に近接し、下部が前記スピンチャックに保持されて回転する基板から離隔する傾斜面から構成される。
【0018】
請求項
9に記載の発明は、請求項
1から請求項
8のいずれか
一つに記載の発明において、前記壁部の下端部は、上部が前記スピンチャックに保持されて回転する基板に近接し、下部が前記スピンチャックに保持されて回転する基板から離隔する傾斜面を有する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1
および請求項2に記載の発明によれば、反射防止部材の作用により、処理液が基板表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制することができ、基板の周縁部の処理を適正に実行することが可能となる。
【0020】
請求項
1に記載の発明によれば、壁部の作用により処理液が基板表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制することが可能となる。このとき、基板から飛散する処理液は開口部を介して壁部の外側の領域に到達することから、処理液と壁部との衝突を防止することが可能となる。
【0021】
請求項
2に記載の発明によれば、気体吐出ノズルからの気体で基板の周縁部に残存する処理液を除去することにより、基板の周縁部に残存する処理液と処理液吐出ノズルより吐出される処理液とが衝突して液跳ねが生じ、この処理液が基板表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制することが可能となる。
【0022】
請求項
7に記載の発明によれば、複数の処理液を選択的に基板の周縁部に供給して、基板の周縁部の処理を好適に実行することが可能となる。
【0023】
請求項
8に記載の発明によれば、衝突面に衝突した処理液の多くが下方に向けて飛散することから、基板表面に向けて飛散する処理液の量を少ないものとすることが可能となる。
【0024】
請求項
9に記載の発明によれば、壁部に付着した処理液の液切りを好適に実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る基板処理装置を模式的に示す正面概要図である。また、
図2は、この発明に係る基板処理装置の要部を示す平面概要図である。さらに、
図3は、この発明に係る基板処理装置の要部を示す斜視図である。
【0027】
この基板処理装置は、外形が略円形の形状を有する基板としての半導体ウエハWの周縁部に対して処理を実行するものである。この基板処理装置は、半導体ウエハWの主面を略水平とし、半導体ウエハWの下面を吸着保持した状態で、この半導体ウエハWを半導体ウエハWの中心を回転中心として回転させるスピンチャック13を備える。このスピンチャック13は、軸14を介して、ケーシング16内に配設されたモータ等の回転駆動機構15と接続されている。
【0028】
スピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWの外周部には、半導体ウエハWより飛散する処理液を捕獲するためのカップ10が配設されている。このカップ10は、上カップ11と下カップ12とから構成されている。上カップ11は、図示を省略した昇降機構により、下カップ12に対して昇降可能となっている。この上カップ11は、半導体ウエハWに対して処理液を供給するときには、その上部がスピンチャック13に吸着保持された半導体ウエハWの上面より上方となる高さ位置に配置され、半導体ウエハWの搬入搬出時には、その上部がスピンチャック13に吸着保持された半導体ウエハWの正面より下方となる高さ位置に配置される。
【0029】
スピンチャック13に吸着保持された半導体ウエハWの下方における半導体ウエハWの周縁部と対向する位置には、ヒータ17が配設されている。このヒータ17は、半導体ウエハWの処理効率を向上させるために半導体ウエハWの周縁部を加熱するためのものである。このヒータは、半導体ウエハWの搬入搬出時には、図示を省略した昇降機構により、搬送機構と緩衝しない位置まで下降する。
【0030】
この基板処理装置は、第1窒素ガス吐出ノズル41と、複数の処理液吐出ノズル42、43、44(
図2および
図3参照)を備えたノズルヘッド31を備える。このノズルヘッド31は、支持部22を中心として揺動可能なアーム21の先端に支持されている。このアーム21は、モータ23の駆動により、
図2において実線で示す半導体ウエハWの周縁部付近への窒素ガスまたは処理液の供給位置と、
図2において仮想線で示す待機位置との間を揺動可能となっている。
【0031】
第1窒素ガス吐出ノズル41は、
図1に示す開閉弁68を介して、不活性ガスとしての窒素ガスの供給源64と接続されている。また、処理液吐出ノズル42は、
図1に示す開閉弁67を介して、処理液であるSC1の供給源63と接続されている。また、処理液吐出ノズル43は、
図1に示す開閉弁66を介して、処理液である純水(DIW)の供給源62と接続されている。さらに、処理液吐出ノズル44は、
図1に示す開閉弁65を介して、処理液であるHFと純水の混合液の供給源61と接続されている。
【0032】
図4は、処理液吐出ノズル42、43、44から半導体ウエハWの周縁部に処理液を供給する状態を示す模式図である。
【0033】
この図に示すように、処理液吐出ノズル42、43、44に形成された処理液流通路の下端部は、スピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWの周縁部方向を向くように偏向する構成を有する。このため、処理液吐出ノズル42、43、44自体を鉛直方向に配置した場合においても、これらの処理液吐出ノズル42、43、44から吐出される処理液に対して、半導体ウエハWの周縁方向に向けた斜め方向を向く流れを形成することが可能となる。
【0034】
再度、
図1から
図3を参照して、この基板処理装置は、第2窒素ガス吐出ノズル45(
図2および
図3参照)を備えたノズルヘッド33を備える。このノズルヘッド33は、支持部25を中心として揺動可能なアーム24の先端に支持されている。このアーム24は、モータ26の駆動により、
図2において実線で示す半導体ウエハWの周縁部付近への窒素ガスの供給位置と、
図2において仮想線で示す待機位置との間を揺動可能となっている。第2窒素ガス吐出ノズル45は、
図1に示す開閉弁56を介して、不活性ガスとしての窒素ガスの供給源54と接続されている。
【0035】
また、この基板処理装置は、窒素ガス吐出部32を備える。この窒素ガス吐出部32は、支持部28を中心として揺動可能なアーム27の先端に支持されている。このアーム27は、モータ29の駆動により、
図2において実線で示す半導体ウエハWの回転中心付近への窒素ガスの供給位置と、
図2において仮想線で示す待機位置との間を揺動可能となっている。この窒素ガス吐出部32は、円筒状部材の下端部に遮蔽板を付設した構成を有し、スピンチャック13により吸着保持されて回転する半導体ウエハWの回転中心付近からその表面に沿って周縁部に至る窒素ガスの流れを形成する構成を有する。
図1に示すように、窒素ガス吐出部32は、開閉弁53を介して、不活性ガスとしての窒素ガスの供給源51と接続されている。
【0036】
この基板処理装置においては、ベベルとも呼称される半導体ウエハWにおけるデバイスパターンの外側の周縁部に対して、処理液吐出ノズル42、43、44から処理液を供給することにより、周縁部に形成された膜をエッチングして除去する構成を有する。すなわち、この基板処理装置においては、半導体ウエハWをスピンチャック13により保持した状態で半導体ウエハWの中心を回転中心として回転させる。そして、半導体ウエハWの周縁部の上方に処理液吐出ノズル42、43、44のいずれかを配置し、この処理液吐出ノズル42、43、44から連続して回転する半導体ウエハWの周縁部に処理液を供給する。これにより、半導体ウエハWの周縁部に形成された膜がエッチングされ、除去されることになる。
【0037】
このとき、処理液吐出ノズル42、43、44から半導体ウエハWの周縁部に処理液が供給された後、半導体ウエハWの周縁部に供給された処理液が半導体ウエハWの周縁部に残留している状態で、さらに、この周縁部が処理液吐出ノズル42、43、44と対向する位置まで移動して処理液を供給された場合には、処理液吐出ノズル42、43、44から新たに吐出された処理液が、半導体ウエハWの周縁部に残留している処理液に当たって液跳ねを生ずる。この液跳ねにより生じた処理液の液滴が半導体ウエハWの表面におけるデバイスパターン領域に付着した場合においては、デバイスパターンに欠陥が生じるという問題が発生する。
【0038】
このため、この基板処理装置においては、処理液吐出ノズル42、43、44から半導体ウエハWの表面に処理液を供給する前に、半導体ウエハWの周縁部に残存する処理液を、第1窒素ガス吐出ノズル41および第2窒素ガス吐出ノズル45により除去する構成を採用している。
【0039】
このとき、半導体ウエハWの周縁部に残存する処理液を速やかに除去するためには、半導体ウエハWの周縁部に対して大流量の窒素ガスを供給すれば良い。しかしながら、大流量の窒素ガスが半導体ウエハWの周縁部に残存する処理液と衝突した場合においては、処理液に液跳ねを生じ、この液跳ねにより生じた処理液の液滴が半導体ウエハWの表面におけるデバイスパターン領域に付着する可能性がある。一方、半導体ウエハWの周縁部に供給する窒素ガスの流量を小さなものとした場合には、半導体ウエハWの周縁部に残留する処理液を十分に除去し得ない。
【0040】
このため、この基板処理装置においては、第2窒素ガス吐出ノズル45から半導体ウエハWの周縁部に小流量または流速の小さい窒素ガスを供給して半導体ウエハWの周縁部から処理液をある程度除去した後、第1窒素ガス吐出ノズル41から半導体ウエハWの周縁部に大流量または流速の大きい窒素ガスを供給することにより、半導体ウエハWの周縁部に残存する処理液を完全に除去する構成を採用している。
【0041】
なお、このように半導体ウエハWの周縁部の処理液を窒素ガスにより除去する構成を採用するときには、処理液が半導体ウエハWの周縁部から内側に移動することを防止する必要がある。このため、半導体ウエハWの周縁部に対する処理液吐出ノズル42、43、44からの処理液の吐出位置より半導体ウエハWの中心側の位置に対して窒素ガスを供給する必要がある。
【0042】
すなわち、
図2および後述する
図7に示すように、第1窒素ガス吐出ノズル41は、処理液吐出ノズル42、43、44よりも、スピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWの回転中心に近い位置に配置されている。これは、第2窒素ガス吐出ノズル45についても同様である。
【0043】
さらに、この基板処理装置においては、窒素ガス吐出部32により、スピンチャック13により吸着保持されて回転する半導体ウエハWの回転中心付近からその表面に沿って周縁部に至る窒素ガスの流れを形成する構成を採用している。このため、この窒素ガス吐出部32から吐出される窒素ガスにより、液跳ねにより生じた処理液の液滴が半導体ウエハWの表面におけるデバイスパターン領域に付着する可能性をさらに低下させることが可能となる。
【0044】
次に、この発明の特徴部分であるカップ10における上カップ11の構成について説明する。
図5は、上カップ11と半導体ウエハWとの配置を示す平面図である。また、
図6は、上カップ11と半導体ウエハWとの配置を示す部分的な縦断面図である。なお、
図6(a)は、
図5におけるA−A縦断面を示し、
図6(b)は、
図5におけるB−B断面を示している。
【0045】
上述したように、カップ10を構成する上カップ11は、スピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWの外周部に配設され、半導体ウエハWより飛散する処理液を捕獲するためのものである。この上カップ11は、半導体ウエハWを囲む形状を有する。この上カップ11は、半導体ウエハW側の端縁から下方に延びる円筒状の壁部101を備えている。この壁部101は、上カップ11における半導体ウエハWの外周部に対向する領域のうちの一部の領域には設けられておらず、その領域は開口部100となっている。この領域は、後述するように、処理液吐出ノズル42、43、44から半導体ウエハWに処理液が吐出される位置の近傍の領域である。そして、
図6(a)に示すように、壁部101の下端部は、上部がスピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWに近接し、下部がこの半導体ウエハWから離隔する傾斜面102を有している。
【0046】
上カップ11における壁部101以外の領域は、上端の水平方向を向く水平部と、この水平部に接続する傾斜部と、この傾斜部から下方向に延びる垂直部とから構成されている。そして、傾斜部は、上部がスピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWに近接し、下部がこの半導体ウエハWから離隔する傾斜面から構成される。この傾斜部は、基板から飛散する処理液が衝突する、この発明に係る衝突面を構成する。
【0047】
図7は、ノズルヘッド31が、
図2において実線で示す半導体ウエハWの周縁部付近への窒素ガスまたは処理液の供給位置に配置されたときの、ノズルヘッド31と開口部100との配置関係を示す平面図である。また、
図8は、そのときの第1窒素ガス吐出ノズル41および処理液吐出ノズル42、43、44と壁部101に形成された開口部100とを上カップ11の内側から見た概要図である。
【0048】
スピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWの周縁部に向けて処理液吐出ノズル42、43、44から処理液を吐出したときには、半導体ウエハWに供給された処理液は遠心力により半導体ウエハWの外側に向けて飛散する。この処理液の飛散領域において、
図6(a)に示すように上カップ11における壁部101が配置されていた場合には、半導体ウエハWから飛散した処理液が壁部101に衝突することになる。このため、このような領域においては、
図6(b)および
図8に示すように、壁部101に対して開口部100を形成している。そして、このような領域以外の領域に対しては、
図6(a)に示すように、壁部101を配置して、上カップ11に衝突して飛散して処理液が半導体ウエハWの表面に到達することを防止している。
【0049】
この開口部100は、半導体ウエハWの回転中心と処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より半導体ウエハWの回転方向の上流側の位置から、半導体ウエハWの回転方向の下流側の位置に亘って形成される必要がある。より具体的には、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁は、半導体ウエハWの回転中心と処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より半導体ウエハWの回転方向の上流側に配置されるとともに、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の下流側の端縁は、半導体ウエハWの回転中心と処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より半導体ウエハWの回転方向の下流方向に離隔した位置に配置される必要がある。
【0050】
このとき、処理液吐出ノズル42、43、44から半導体ウエハWの周縁部に吐出された処理液は、スピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWの遠心力により外側に飛散するだけではなく、半導体ウエハWの回転中心を中心とする円の接線方向に向けて飛散することになる。このため、
図7において矢印で示すように、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の下流側の端縁は、処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置から、半導体ウエハWの回転中心と処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置とを結ぶ直線が半導体ウエハWの周縁と交差する位置における半導体ウエハWの接線方向の位置より半導体ウエハWの回転方向の下流方向に配置されることが好ましい。
【0051】
そして、上述した実施形態においては、処理液吐出ノズル42、43、44による半導体ウエハWへの処理液の供給位置よりも半導体ウエハWの回転方向の上流側の位置において、半導体ウエハWの周縁部に気体を吐出する第1窒素ガス吐出ノズル41をさらに備えている。これにより、この第1窒素ガス吐出ノズル41から吐出される窒素ガスの作用により、先に処理液吐出ノズル42、43、44により半導体ウエハWの周縁部に吐出され半導体ウエハW上に残存する処理液が除去され、半導体ウエハWの外側に飛散する。このため、この実施形態においては、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁は、半導体ウエハWの回転中心と第1窒素ガス吐出ノズルによる半導体ウエハWへの窒素ガスの供給位置とを結ぶ直線の延長上の位置より半導体ウエハWの回転方向の上流側に配置されることが好ましい。
【0052】
なお、上述した第2窒素ガス吐出ノズル45から吐出される窒素ガスの作用によっても、先に処理液吐出ノズル42、43、44により半導体ウエハWの周縁部に吐出され半導体ウエハW上に残存する処理液が除去され、半導体ウエハWの外側に飛散することになる。しかしながら、上述したように、第2窒素ガス吐出ノズル45からは、第1窒素ガス吐出ノズル41から吐出される窒素ガスと比較して、小流量または流速の小さい窒素ガスを供給する構成を採用していることから、第2窒素ガス吐出ノズル45に対向する領域に開口部を形成する必要はない。すなわち、半導体ウエハWの外側に飛散する処理液は、その大部分が開口部100を介して上カップ11に飛散することになる。
【0053】
例えば、半導体ウエハWの直径を300mmとし、半導体ウエハWの回転数を1300rpmとした場合においては、
図7に示すように、半導体ウエハWの回転中心に対して、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁と第1窒素ガス吐出ノズル41とのなす角度θ1は2度程度であることが好ましく、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁と処理液吐出ノズル42とのなす角度θ2は4度程度であることが好ましく、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁と処理液吐出ノズル44とのなす角度θ3は20度程度であることが好ましく、開口部100の半導体ウエハWの回転方向の上流側の端縁と下流側の端縁とのなす角度θ4は45度程度であることが好ましい。
【0054】
図9は、上カップ11における壁部101とスピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWとの配置関係を示す説明図である。
【0055】
上カップ11における壁部101の下端部とスピンチャック13に吸着保持されて回転する半導体ウエハWの表面との距離Hは、数mm程度であることが好ましい。この距離Hを小さくした場合には、半導体ウエハWから飛散する処理液が壁部101に衝突する可能性がある。一方、この距離Hを大きくした場合には、上カップ11に衝突した処理液が半導体ウエハWの表面に到達する可能性がある。また、上カップ11における壁部101の内側面とスピンチャックに吸着保持されて回転する半導体ウエハWの端部との距離Dは、上カップ11の昇降時に上カップ11と半導体ウエハWとが干渉しない範囲で小さいことが好ましい。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、開口部100は、
図8に示すように、矩形状の形状をしている。しかしながら、この発明に係る開口部100は、このような形状に限定されるものではない。
図10は、ノズルヘッド31が半導体ウエハWの周縁部付近への窒素ガスまたは処理液の供給位置に配置されたときに、第1窒素ガス吐出ノズル41および処理液吐出ノズル42、43、44と壁部101に形成された他の形態に係る開口部100とを上カップ11の内側から見た概要図である。
【0057】
この図に示すように、開口部100の上端は、曲線状であってもよい。このとき、この開口部100の上端の位置は、処理液がより多く飛散する半導体ウエハWの回転方向の上流側で高く、回転方向の下流側で低くすることが好ましい。
【0058】
以上のような構成を有する基板処理装置により半導体ウエハWの周縁部に対してエッチング処理を実行する場合においては、半導体ウエハWをスピンチャック13により吸着保持した状態で、ノズルヘッド31、ノズルヘッド33および窒素ガス吐出部32を
図2において実線で示す位置に配置する。しかる後、上カップ11が
図1および
図6に示す位置まで上昇する。
【0059】
この状態において、半導体ウエハWをスピンチャック13とともに回転させる。そして、処理液吐出ノズル42より半導体ウエハWの周縁部に、最初に、SC1を供給する。半導体ウエハWに供給されたSC1は、半導体ウエハWの端縁より飛散し、上カップ11における壁部101に形成された開口部100を通過した後、上カップ11における傾斜した衝突面と衝突する。この衝突面に衝突した処理としてのSC1の多くは下方に向けて飛散することから、半導体ウエハWの表面に向けて飛散するSC1の量を少ないものとすることが可能となる。
【0060】
また、飛散したSC1の一部は、半導体ウエハWの回転方向と同一方向に周回する空気の流れに乗って浮遊する。しかしながら、このSC1は、
図6(a)に示すように、半導体ウエハWの表面より上方において半導体ウエハWより飛散したSC1が上カップ11における衝突面と衝突する衝突位置と半導体ウエハWとの間に配設された壁部101により捕獲される。そして、このSC1は、壁部101の下端部より滴下する。このとき、壁部101の下端部は、上部が半導体ウエハWに近接し、下部が半導体ウエハWから離隔する傾斜面102を有することから、壁部101に付着したSC1の液切りを好適に実行することが可能となる。
【0061】
半導体ウエハWの端縁に残存するSC1は、第2窒素ガス吐出ノズル45から半導体ウエハWの周縁部に供給された小流量または流速の小さい窒素ガスによりある程度除去された後、第1窒素ガス吐出ノズル41から半導体ウエハWの周縁部に供給された大流量または流速の大きい窒素ガスにより完全に除去される。これにより、処理液吐出ノズル42から供給されたSC1が半導体ウエハWの周縁部残留している状態で、さらに、SC1が供給されて生ずる液跳ねの発生を防止することが可能となる。
【0062】
このようにしてSC1による処理を実行した後に、同様の処理を他の処理液についても実行する。すなわち、引き続き、処理液吐出ノズル43から半導体ウエハWの周縁部に純水を供給して洗浄処理を行い、次に、処理液吐出ノズル44から半導体ウエハWの周縁部にHFと純水の混合液を供給してエッチング処理を行い、さらに、処理液吐出ノズル43から半導体ウエハWの周縁部に再度純水を供給して洗浄処理を行う。これらの処理液により処理を実行するときにも、SC1の場合と同様、壁部101の作用により各処理液が半導体ウエハW表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制することが可能となる。このとき、半導体ウエハWから飛散する処理液は開口部100を介して壁部101の外側の領域に到達することから、処理液と壁部101との衝突を効果的に防止することが可能となる。
【0063】
なお、これらの処理時においては、常に、窒素ガス吐出部32から窒素ガスを供給することにより、スピンチャック13により吸着保持されて回転する半導体ウエハWの回転中心付近からその表面に沿って周縁部に至る窒素ガスの流れを形成する。これにより、処理液の液滴が半導体ウエハWの表面におけるデバイスパターン領域に付着する可能性をさらに低下させることが可能となる。
【0064】
図11は、この発明の第2実施形態に係る上カップ11と半導体ウエハWとの配置を示す部分的な縦断面図である。
【0065】
上述した第1実施形態においては、スピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWの表面より上方において、半導体ウエハW基板より飛散した処理液が上カップ11と衝突する衝突位置と半導体ウエハWとの間に配設され、上カップ11と衝突した処理液が半導体ウエハWの表面に到達することを防止するための反射防止部材として、上カップ11の半導体ウエハW側の端縁から下方に延びる円筒状の壁部101を使用している。これに対して、この第2実施形態においては、半導体ウエハWの外側で、かつ、上カップ11の上端の下方に配置された反射防止部材103を使用している。
【0066】
この反射防止部材103は、
図11(a)に示すように、第1実施形態における壁部101の開口部100以外の領域と相当する領域に配設されている。第1実施形態における壁部101の開口部100と対向する領域には、
図11(b)に示すように、反射防止部材103は配設されていない。そして、この反射防止部材103の下端部は、第1実施形態に係る壁部101の下端部と同様、上部がスピンチャック13に保持されて回転する半導体ウエハWに近接し、下部がこの半導体ウエハWから離隔する傾斜面104を有している。
【0067】
この反射防止部材103を使用した場合においても、壁部101を使用した場合と同様、反射防止部材103の作用により各処理液が半導体ウエハW表面のデバイスパターン領域に到達することを抑制することが可能となる。このとき、半導体ウエハWから飛散する処理液は反射防止部材103が存在しない領域を介して外側の領域に到達することから、処理液と反射防止部材103との衝突を効果的に防止することが可能となる。