(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784547
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ドアホールシール
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20201102BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
B60R16/02 620C
B60J5/00 501E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-175906(P2016-175906)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-39422(P2018-39422A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆史
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−282127(JP,A)
【文献】
特開2009−051459(JP,A)
【文献】
特開2014−113022(JP,A)
【文献】
特開2006−256566(JP,A)
【文献】
実開平06−044610(JP,U)
【文献】
実開平02−043713(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0084622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムシートと透明フィルムとが溶着によって一体化されたドアホールシールであって、
上記ゴムシートに、ワイヤーハーネスを通すスリット部が形成されており、
上記ゴムシートにおける上記スリット部の近傍に第1の穴が形成されており、
上記第1の穴の近傍には、上記第1の穴が上記スリット部の方向に変位できる程度の切り込みが形成されており、
上記ゴムシートにおける上記第1の穴の位置を上記スリット部の方向にずらして、上記第1の穴の位置を変位させることで、上記スリット部の開口が上記第1の穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力を上記ゴムシートに働かせた状態で、上記ゴムシートが上記透明フィルムに溶着されていることを特徴とするドアホールシール。
【請求項2】
ゴムシートと透明フィルムとが溶着によって一体化されたドアホールシールであって、
上記ゴムシートに、ワイヤーハーネスを通すスリット部が形成されており、
上記スリット部の一端には、当該一端付近における上記ゴムシートの破れを防止するための破れ防止穴が形成されており、
上記破れ防止穴の近傍には、第2の穴、および上記破れ防止穴が上記第2の穴の方向に変位できる程度の切り込みが形成されており、
上記ゴムシートにおける上記破れ防止穴の位置を上記第2の穴の位置までずらして、上記破れ防止穴を上記第2の穴に重ね合せることで、上記スリット部の開口が上記破れ防止穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力を上記ゴムシートに働かせた状態で、上記ゴムシートが上記透明フィルムに溶着されていることを特徴とするドアホールシール。
【請求項3】
上記スリット部の開口が、上記切り込みであり、
上記スリット部の開口の形状が、略L字形状であることを特徴とする請求項1に記載のドアホールシール。
【請求項4】
上記スリット部の一端には、当該一端付近における上記ゴムシートの破れを防止するための破れ防止穴が形成されており、
上記破れ防止穴の近傍に第2の穴が形成されており、
上記ゴムシートにおける上記第1の穴の位置を上記第2の穴の位置までずらすことにより、上記第1の穴が、上記第2の穴に重ね合されていることを特徴とする請求項1に記載のドアホールシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシートと透明フィルムとが溶着によって一体化されたドアホールシールに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスを車外側から車内側に抜き出すためのスリット部が形成されたドアホールシールが従来技術として知られている。例えば、特許文献1には、ワイヤーハーネスが挿通されるスリットが形成されると共に、このスリットを覆うサブシートが溶着部により溶着されているサービスホールカバー(ドアホールシール)が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、ワイヤーハーネスを車外側から車内側に抜き出すためのスリット機構が設けられ、スリット機構は、メインシールの車外側にサブシールを、少なくともその上端部を水密に重ねて取付け、しかも、メインシールに水平方向に第一スリットを形成すると共に、サブシールに水平方向に第二スリットを形成し、その第二スリットを、メインシールに形成した第一スリットより下位にしたドアホールシールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009− 51459号公報(2009年 3月12日公開)
【特許文献2】特開2006−282127号公報(2006年10月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術には、スリットまたはスリット機構にワイヤーハーネスを通すと、ワイヤーハーネスの径以上の隙間が発生(ワイヤーハーネスの周辺にも隙間が発生)し、ドアホールシールによる遮音性能が悪化してしまうという問題点がある。例えば、
図2の(c)に示すようなゴムシート102のスリット部3にワイヤーハーネス8を通した場合、スリット部3に隙間が発生し、その隙間の影響でドアパネル内と室内の隙間が拡大され、遮音性能への影響が発生し、その結果、車内騒音が増加してしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができるドアホールシールなどを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールシールは、ゴムシートと透明フィルムとが溶着によって一体化されたドアホールシールであって、上記ゴムシートに、ワイヤーハーネスを通すスリット部が形成されており、上記ゴムシートにおける上記スリット部の近傍に第1の穴が形成されており、上記ゴムシートにおける上記第1の穴の位置を変位させることで、上記スリット部の開口が上記第1の穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力を上記ゴムシートに働かせた状態で、上記ゴムシートが上記透明フィルムに溶着されている構成である。
【0008】
上記構成によれば、ゴムシートにおける第1の穴の位置を変位させることでスリット部の開口が第1の穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、スリット部にワイヤーハーネスを通しても、上記張力によりスリット部の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールシールは、ゴムシートと透明フィルムとが溶着によって一体化されたドアホールシールであって、上記ゴムシートに、ワイヤーハーネスを通すスリット部が形成されており、上記スリット部の一端には、当該一端付近における上記ゴムシートの破れを防止するための破れ防止穴が形成されており、上記ゴムシートにおける上記破れ防止穴の位置を変位させることで、上記スリット部の開口が上記破れ防止穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力を上記ゴムシートに働かせた状態で、上記ゴムシートが上記透明フィルムに溶着されている構成である。
【0010】
上記構成によれば、ゴムシートにおける破れ防止穴の位置を変位させることでスリット部の開口が破れ防止穴の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、スリット部にワイヤーハーネスを通しても、上記張力によりスリット部の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るドアホールシールは、上記スリット部の開口の形状が、略L字形状であっても良い。上記構成によれば、スリット部の開口(隙間)が狭小化される面積の割合をより大きくすることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係るドアホールシールは、上記スリット部の一端には、当該一端付近における上記ゴムシートの破れを防止するための破れ防止穴が形成されており、上記破れ防止穴の近傍に第2の穴が形成されており、上記第1の穴が、上記第2の穴に重ね合されていても良い。上記構成によれば、第1の穴を第2の穴に重ね合わせることで、スリット部の開口が狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、スリット部にワイヤーハーネスを通しても、上記張力によりスリット部の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係るドアホールシールは、上記破れ防止穴の近傍に第2の穴が形成されており、上記破れ防止穴が、上記第2の穴に重ね合されていても良い。上記構成によれば、破れ防止穴を第2の穴に重ね合わせることで、スリット部の開口が狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、スリット部にワイヤーハーネスを通しても、上記張力によりスリット部の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係るドアホールシールは、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る自動車の概要構成を示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るドアホールシールを構成する第2シートの外観を示す図であり、(c)は、上記ドアホールシールを構成する第1シートの外観を示す図であり、(d)は、張力を働かせる前のゴムシートの状態を示す図であり、(e)は、張力を働かせた後のゴムシートの状態を示す図である。
【
図2】(a)は、本発明の変形例1のドアホールシールに関し、張力を働かせる前のゴムシートの状態を示す図であり、(b)は、張力を働かせた後のゴムシートの状態を示す図であり、(c)は、従来のゴムシートにワイヤーハーネスを通したときの状態を示す図であり、(d)は、変形例1のドアホールシールのゴムシートにワイヤーハーネスを通したときの状態を示す図であり、(e)は、張力を働かせた後の変形例1のドアホールシールの状態を示す断面図である。
【
図3】(a)は、本発明の変形例2のドアホールシールに関し、上記ドアホールシールを構成する第1シートの外観を示す図であり、(b)は、張力を働かせる前のゴムシートの状態を示す図であり、(c)は、張力を働かせた後のゴムシートの状態を示す図であり、(d)は、張力を働かせた後の変形例2のドアホールシールの状態を示す断面図であり、(e)は、張力を働かせた後の変形例2のドアホールシールのゴムシートにおけるスリット部にワイヤーハーネスを通したときの状態を示す図である。
【
図4】従来のドアホールシール(既存)の遮音性能と、本発明の一実施形態に係るドアホールシール(改良)の遮音性能とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<自動車の構成>
まず、
図1の(a)に基づき、本発明の一実施形態に係る自動車10の概要構成について説明する。
図1の(a)は、自動車10の概要構成を示す図である。同図に示すように、自動車10のドア部のウエストラインの下側には、本発明の一実施形態に係るドアホールシールが設置されている。また、同図では、フロント側とリア側の両方のドア部のそれぞれにドアホールシールが設置されている様子が示されているが、本実施形態では、フロント側のドア部に設置されたドアホールシール1について説明する。
【0017】
<ドアホールシールの構成>
次に、
図1の(b)〜(e)に基づき、本発明の一実施形態に係るドアホールシール1の構成について説明する。
図1の(b)は、ドアホールシール1を構成する第2シート1bの外観を示す図である。第2シート1bは、自動車10の室内側に配置されるシートであり、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体ゴム)系の材料で構成されたシートであり、その比重は0.04〜0.1程度である。
【0018】
次に、
図1の(c)は、ドアホールシール1を構成する第1シート1aの外観を示す図である。第1シート1a(ドアホールシール)は、自動車10の室外側に配置されるシートであり、ゴムシート2と透明フィルム6とが溶着にて一体化されたシートである。ゴムシート2は、発泡ゴム製のシートであり、透明フィルム6は、ポリエチレン製のシートである。なお、透明フィルム6は、ポリエチレン製に限定されず、その他の透明性を有するシート材料を採用することができる。
【0019】
次に、
図1の(d)は、張力を働かせる前のゴムシート2の状態を示す図である。同図に示すように、ゴムシート2には、開口部の形状が略直線形状であるスリット部3が形成されており、スリット部3の下側の端部(一端)には、当該端部付近におけるゴムシート2の破れを防止するための破れ防止穴3aが形成されている。スリット部3は、ワイヤーハーネス8を車外側から車内側に抜き出す(通す)ための開口部である。
【0020】
また、破れ防止穴3aの近傍には、第2の穴4が形成されており、スリット部3の中央付近の近傍には、第1の穴5が形成されている。なお、スリット部3の近傍であれば、第1の穴5の位置は特に限定されない。
【0021】
次に、
図1の(e)は、張力を働かせた後のゴムシート2の状態を示す図である。
図1の(d)に示す状態で、ゴムシート2における第1の穴5の位置を矢印の方向に変位させ、第1の穴5を第2の穴4に重ね合せることでスリット部3の開口が第1の穴5の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力をゴムシート2に働かせ、この張力が働いている状態でゴムシート2を透明フィルム6に溶着させると、
図1の(e)に示す状態になる。
【0022】
上記のように、ゴムシート2における第1の穴5の位置を変位させて、第1の穴5を第2の穴4に重ね合せることでスリット部3の開口が第1の穴5の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力がゴムシート2に働く。このため、スリット部3にワイヤーハーネスを通しても、上記張力によりスリット部3の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【0023】
<ドアホールシールの変形例1>
次に、
図2の(a)〜(e)に基づき、本発明の一実施形態に係るドアホールシールの変形例1について説明する。
図2の(a)は、本発明の変形例1のドアホールシールに関し、張力を働かせる前のゴムシート2の状態を示す図である。
【0024】
ゴムシート2には、開口部が略直線形状であるスリット部3が形成されており、スリット部3の下側の端部には、当該端部付近におけるゴムシート2の破れを防止するための破れ防止穴3aが形成されている。また、破れ防止穴3aの近傍には、第2の穴4が形成されている。
【0025】
次に、
図2の(b)は、張力を働かせた後のゴムシート2の状態を示す図である。
図2の(a)に示す状態で、ゴムシート2における破れ防止穴3aの位置を矢印の方向に変位させ、破れ防止穴3aを第2の穴4に重ね合せることでスリット部3の開口が破れ防止穴3aの位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力をゴムシート2に働かせ、この張力が働いている状態でゴムシート2を透明フィルム6に溶着させると、
図2の(b)に示す状態になる。
【0026】
上記のように、ゴムシート2における破れ防止穴3aの位置を矢印の方向に変位させ、破れ防止穴3aを第2の穴4に重ね合せることでスリット部3の開口が破れ防止穴3aの位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、
図2の(d)に示すように、スリット部3にワイヤーハーネス8を通しても、上記張力によりスリット部3の開口(隙間)が狭小化される。このため、
図2の(c)に示す従来のドアホールシール(ゴムシート102)と比較して遮音性能を向上させることができる。
【0027】
図2の(d)は、変形例1のドアホールシールのゴムシート2にワイヤーハーネス8を通したときの状態を示す図である。同図に示すように、上記張力が働いている状態では、スリット部3の開口のワイヤーハーネス8の周囲の隙間が狭小化されている様子が示されている。
【0028】
次に、
図2の(e)は、張力を働かせた後の変形例1のドアホールシールの状態を示す断面図である。同図に示すように、ゴムシート2、透明フィルム6、および溶着下型7のそれぞれは、この順で層状に配置されており、第2の穴4からは、溶着下型7の突起部7aの先端が突出している。破れ防止穴3aを、溶着下型7の突起部7aに対して上側から嵌め込み、破れ防止穴3aを第2の穴4に重ね合せることで、ゴムシート2にスリットテンション(張力)が生じ、この状態でゴムシート2と透明フィルム6とが溶着される。
【0029】
<ドアホールシールの変形例2>
次に、
図3の(a)〜(e)に基づき、本発明の一実施形態に係るドアホールシールの変形例2について説明する。
図3の(a)は、本発明の変形例2のドアホールシールに関し、ドアホールシールを構成する第1シート1a(ドアホールシール)の外観を示す図である。第1シート1aは、ゴムシート2と透明フィルム6とが溶着にて一体化されたシートである。同図に示すように、ゴムシート2には、スリット部3が形成されており、本変形例では、スリット部3の開口の形状が、略L字形状となっている。スリット部3の開口の形状を上記の形状にすることにより、後述するゴムシート2に張力が働いている状態において、スリット部3の開口(隙間)が狭小化される面積の割合をより大きくすることができる。なお、スリット部3の開口の形状は、略L字形状に限定されず、円弧形状等であっても良い。
【0030】
また、スリット部3の下側の端部(一端)には、当該端部付近におけるゴムシート2の破れを防止するための破れ防止穴3aが形成されており、スリット部3の折曲部(中央部)の近傍には、第1の穴5が形成されている。
【0031】
図3の(b)は、張力を働かせる前のゴムシート2の状態を示す図であり、
図3の(c)は、張力を働かせた後のゴムシート2の状態を示す図である。
【0032】
図3の(b)に示す状態で、ゴムシート2における第1の穴5の位置を矢印の方向に変位させ、第1の穴5を溶着下型7の突起部7aに対して嵌め込む(第1の穴5を溶着下型7の突起部7aに固定する)ことでスリット部3の開口が第1の穴5の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力をゴムシート2に働かせ、この張力が働いている状態でゴムシート2を透明フィルム6に溶着させると、
図3の(c)に示す状態になる。なお、本変形例では、スリット部3の周囲における第1の穴5が形成されている側の辺が、その対辺に重なっている。
【0033】
上記のように、ゴムシート2における第1の穴5の位置を矢印の方向に変位させ、第1の穴5を突起部7aに対して嵌め込むことでスリット部3の開口が、第1の穴5の位置を変位させる前の状態よりも狭小化するような張力がゴムシートに働く。このため、
図3の(e)に示すように、スリット部3にワイヤーハーネス8を通しても、上記張力によりスリット部3の開口(隙間)が狭小化される。このため、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができる。
【0034】
次に、
図3の(e)は、張力を働かせた後の変形例2のドアホールシールの状態を示す断面図である。同図に示すように、ゴムシート2、透明フィルム6、および溶着下型7のそれぞれは、この順で層状に配置されており、第1の穴5からは、溶着下型7の突起部7aの先端が突出している。第1の穴5を、溶着下型7の突起部7aに対して上側から嵌め込むことで、ゴムシート2に張力が生じ、この状態でゴムシート2と透明フィルム6とが溶着される。
【0035】
<遮音性能の比較データ>
次に、
図4は、従来のドアホールシール(既存;スリットA)の遮音性能と、本発明の一実施形態に係るドアホールシール(改良;スリットB)の遮音性能と、を残無響室法にて測定した結果を示すグラフである。実線のグラフは、従来のドアホールシール(既存;スリットA)の遮音性能を示すグラフであり、破線のグラフは、本発明の一実施形態に係るドアホールシール(改良;スリットB)の遮音性能を示すグラフである。同図の横軸は、音の周波数(Hz)を示しており、縦軸は、透過損失T.L.<Transmission Loss>(dB)を示している。
【0036】
また、同図の1500Hz〜3000Hzの間におけるグラフの状態を見ると、スリットA(既存)は、スリットB(改良)と比較して最大で0.3dB程度の遮音性能の向上が見られる。以上の結果より、本発明の一実施形態に係るドアホールシールによれば、従来のドアホールシールと比較して遮音性能を向上させることができることが分かる。
【0037】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ドアホールシール 1a 第1シート 1b 第2シート 2 ゴムシート
3 スリット部 3a 破れ防止穴 4 第2の穴 5 第1の穴
6 透明フィルム 7 溶着下型 7a 突起部 8 ワイヤーハーネス
10 自動車