【実施例】
【0028】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
<ブランケットの作製>
第2層布としての基布の一方の面に、アクリル系中空微粒子(有機系熱膨張マイクロバルーン)を含有する圧縮層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。また、第1層布としての基布の一方の面に、接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。次いで、上記の2枚の基布の糊引きした面同士を貼り合わせた。
【0029】
次に、上記のように貼り合わせた第2層布としての基布の他方の面に接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。さらに、第3層布としての基布の一方の面に、接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。次いで、第2層布としての基布の糊引きした面と第3層布としての基布の糊引きした面とを貼り合わせた。その後、加圧・加熱して加硫を行い、第1層布〜第3層布の基布を有し、第1層布の基布と第2層布の基布との間に圧縮層を介在させた厚み1.6mmの土台層を得た。
【0030】
一方、下記の表1、2に示される組成物1〜10の10種の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫状態)をトルエン溶剤に溶解させて、表面ゴム糊を調製した。この10種の表面ゴム糊を、それぞれ上記のように作製した土台層を構成する第1層布としての基布に塗布して乾燥した。その後、140℃、7時間の缶加硫を行って表面印刷層を形成し、この表面印刷層を研磨して、ブランケット(試料1〜試料10)を作製した。
【0031】
また、表面印刷層用のゴム組成物を下記の表3に示される組成物11〜14の4種とした以外は、試料1〜10のブランケットと同様に、ブランケット(試料11〜14)を作製した。ただし、組成物11〜14の4種の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫状態)については、これらをトルエンとメチルイソブチルケトン(MIBK)との混合溶剤に溶解させて、表面ゴム糊を調製した。
【0032】
下記の表1、表2、表3に記載の配合成分の略記は以下の通りである。なお、表1、表2、表3に記載の数値は重量部を表している。
・超高分子量ポリエチレンA:三井化学(株)製 ミペロン(登録商標) XM−221U
(平均粒子径約25μm)
・超高分子量ポリエチレンB:三井化学(株)製 ミペロン(登録商標) PM−200
(平均粒子径約10μm)
・シリコーン系添加剤 :日信化学工業(株)製 シャリーヌ(登録商標) R170S
・可塑剤A :ポリエーテルエステル系可塑剤
・可塑剤B :エステル系
・加硫促進剤A :チウラム系加硫促進剤
・加硫促進剤B :スルフェンアミド系加硫促進剤
・加硫促進剤C :ジチオカルバミン酸系加硫促進剤
・加硫促進剤D :スルフェンアミド系加硫促進剤
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
<ブランケットの評価>
上述のように作製した各ブランケット(試料1〜14)について、表面印刷層からの被印刷物の離れ性、インキ転移濃度、テーバー摩耗指数を下記の方法・条件で測定し、結果を下記の表4に示した。
【0037】
(離れ性の測定方法・条件)
酢酸ブチルに溶解したインキ溶液をコーティングすることでインキ膜が形成されたフィルムを準備した。そのフィルムをブランケット表面に載せ、フィルムが載せられた状態のブランケットを、プレス機を使用してプレスした後、ブランケット表面からフィルムを一定の速度で剥離した。
【0038】
次に、フィルムからインキ膜が転写されたブランケット11の表面に、2つの対頂点(P,Q)を結ぶ対角線の長さが約77mmの正方形状のコート紙50を載せ(
図2および
図3参照)、このコート紙50が載せられたブランケットを、プレス機を使用してプレスした。その後、
図4に示すように、ブランケット11の表面からコート紙50を、当該コート紙50の一方の対頂点Pから、この一対頂点に対向する他方の対頂点Qに向かうように、20±5mm/秒の速度で、ブランケット11の表面に対して90°〜120°の方向(例えば90°であれば矢印Eで示される方向)へ剥離した。
【0039】
ブランケット11の表面からコート紙50を剥離した後、一方の対頂点Pから他方の対頂点Qまでの長さをノギスで測定した。この長さが長い、すなわち上述した対角線の長さ(約77mm)に近いほど、コート紙50におけるカールが発生していないか、またはカールがほぼ発生していないものと認められるほどにカールの発生が抑えられていることになり、離れ性(紙離れ性・排紙性)に優れていることになる。
【0040】
例えば、
図5に示す剥離後のコート紙50’のように、カールがほとんど発生していない場合、コート紙50’の2つの対頂点(P,Q)の長さL1は対角線の長さ77mmと同一ないし長さ77mmに近似した長さとなる。また、
図6に示す剥離後のコート紙50”のように、カールがやや発生している場合、コート紙50”の2つの対頂点(P,Q)の長さL2は
図5に示すコート紙50’におけるL1より短い長さとなる。
【0041】
他方、
図7に示す剥離後のコート紙50”’のように、カールが発生しコート紙が円筒形状になったような場合は、2つの対頂点(P,Q)の長さに代えて、円筒形状のコート紙50”’の直径を測定し、測定された直径によりカールの程度を判定することになる。なお、この場合、当該直径が対角線77mmより短くなることは明らかであり、カールの発生を目視によって確認することもできる。
【0042】
(インキ転移濃度の測定方法・条件)
作製したブランケットのそれぞれについて、インキ転移試験を行い、紙に転移されたインキ転移濃度を反射濃度計(エックスライト社製 QUIKdens)を用いて測定した。この濃度が高い程、インキ転移性が良好となる。
【0043】
なお、離れ性及びインキ転移濃度の測定において使用したインキとしては、試料1〜10については『FLASH DRY(登録商標) カルトン X 紅M(東洋インキ株式会社製 紫外線硬化型インキ)』を使用し、試料11〜14については『WEB DRY(登録商標) レオエックス 紅(東洋インキ株式会社製 油性インキ)』を使用した。
【0044】
(テーバー摩耗指数の測定方法・条件)
作製したブランケットを用いて、JISK6264に準拠し、荷重500g、摩耗輪H−18でテーバー摩耗試験を実施した。テーバー摩耗指数が低いほど、ブランケットの摩耗が少ないものとなる。
【0045】
【表4】
【0046】
表4における結果から、表面印刷層に超高分子量ポリエチレンA、Bのいずれかを含有するブランケット(試料2〜5、試料7〜10、試料12〜14)は、ブランケット(試料1、試料6、試料11)に比べて、インキ転移性を損なうことなく、離れ性(紙離れ性・排紙性)が改善されていることが確認された。また、表4における結果から、耐候性に優れるEPDMを主成分とするブランケットであっても、離れ性(紙離れ性・排紙性)の改善に十分な効果があることが確認された。
さらに、ブランケット(試料1〜5)と、ブランケット(試料6〜10)とのテーバー摩耗指数の対比から、表面印刷層へのシリコーン系添加剤の添加が、離れ性(紙離れ性・排紙性)の改善の効果を損なうことなく、ブランケットの摩耗抑制に有効であることが確認された。