特許第6784583号(P6784583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤倉ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000006
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000007
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000008
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000009
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000010
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000011
  • 特許6784583-印刷用ブランケット 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784583
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】印刷用ブランケット
(51)【国際特許分類】
   B41N 10/04 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   B41N10/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-239591(P2016-239591)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-94753(P2018-94753A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100095463
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 潤三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 建作
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−503755(JP,A)
【文献】 特開2015−171779(JP,A)
【文献】 特開2008−183808(JP,A)
【文献】 特開2005−144833(JP,A)
【文献】 特開2010−253782(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0109783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土台層と、該土台層上に位置しゴム成分を含有する表面印刷層と、を備え、
前記表面印刷層は超高分子量ポリエチレンを含有する
ことを特徴とする印刷用ブランケット。
【請求項2】
前記超高分子量ポリエチレンは微粒子状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷用ブランケット。
【請求項3】
前記超高分子量ポリエチレンは、その平均粒子径が200μm以下である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷用ブランケット。
【請求項4】
前記表面印刷層における前記超高分子量ポリエチレンの含有量は、前記表面印刷層のゴム成分100重量部に対して1〜50重量部の範囲である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷用ブランケット。
【請求項5】
前記表面印刷層は、シリコーン系添加剤を、前記表面印刷層のゴム成分100重量部に対して1〜30重量部の範囲で含有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷用ブランケット。
【請求項6】
前記表面印刷層は、前記ゴム成分として、エチレンプロピレンゴム(EP)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM、EPT)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)、ブチルゴム(IIR)、カルボキシル化NBR(XNBR)、多硫化ゴム、の少なくとも1種を含有する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷用ブランケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用ブランケットに関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷では、一般にブランケットを装着した胴に版を介して湿し水とインキを供給し、その後、ブランケット胴と圧胴との間、あるいは、対向するブランケット胴との間に供給された被印刷物にブランケット上のインキを転移して印刷が行われる。
【0003】
この時、ブランケット表面と紙などの被印刷物との離れ性(紙離れ性、排紙性)が悪いと被印刷物がブランケット表面に巻き付いたり、カールしたりして、被印刷物の搬送に不具合が生じることがある。この離れ性を改善するために、ブランケット表面に紫外線を照射する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭51−37706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1に開示されているように、ブランケット表面印刷層に紫外線を照射して表面印刷層を改質する場合、改質による作用は表面印刷層の最表面及びその近傍にしか及ばない。その結果、例えば長期使用によりブランケット表面が摩耗した場合、離れ性の効果が不十分になってしまう。また、EPDMなどの耐候性に優れる表面ゴムの場合、紫外線を照射した場合の効果が不十分な場合がある。
【0006】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであって、ブランケット表面と紙などの被印刷物との離れ性(紙離れ性、排紙性)に優れた印刷用ブランケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の印刷用ブランケットは、土台層と、該土台層上に位置しゴム成分を含有する表面印刷層と、を備え、前記表面印刷層は超高分子量ポリエチレンを含有するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記超高分子量ポリエチレンは微粒子状態であるような構成とした。
また、本発明の他の態様として、前記超高分子量ポリエチレンは、その平均粒子径が200μm以下であるような構成とした。
また、本発明の他の態様として、前記表面印刷層における前記超高分子量ポリエチレンの含有量は、前記表面印刷層のゴム成分100重量部に対して1〜50重量部の範囲であるような構成とした。
【0009】
さらに、本発明の他の態様として、前記表面印刷層は、シリコーン系添加剤を、前記表面印刷層のゴム成分100重量部に対して1〜30重量部の範囲で含有するような構成とした。
【0010】
また、本発明の他の態様として、前記表面印刷層は、前記ゴム成分として、エチレンプロピレンゴム(EP)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM、EPT)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)、ブチルゴム(IIR)、カルボキシル化NBR(XNBR)、多硫化ゴム、の少なくとも1種を含有するような構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブランケット表面と紙などの被印刷物との離れ性(紙離れ性、排紙性)に優れた印刷用ブランケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の印刷用ブランケットの一実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、離れ性を測定するために用いられるコート紙を示す概略図であり、図2(A)はコート紙の平面図であり、図2(B)は図2(A)に示す矢印D方向から見たコート紙の側面図である。
図3図3は、図2に示されるコート紙がブランケット表面に載せられた状態を側面から見た概略図である。
図4図4は、図3に示されるようにブランケット表面に載せられたコート紙を剥離する様子を側面から見た概略図である。
図5図5は、ブランケット表面からコート紙を剥離した場合に、カールが発生していないコート紙を示す概略図であり、図5(A)はコート紙の平面図であり、図5(B)は図5(A)に示す矢印F方向から見たコート紙の側面図である。
図6図6は、ブランケット表面からコート紙を剥離した場合に、カールがやや発生したコート紙を示す概略図であり、図6(A)はコート紙の平面図であり、図6(B)は図6(A)に示す矢印G方向から見た側面図である。
図7図7は、ブランケット表面からコート紙を剥離した場合に、カールが発生し、円筒形状になったコート紙を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。また、本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
【0014】
図1は、本発明の印刷用ブランケットの一実施形態を示す概略断面図である。図1において、本発明のブランケット11は、土台層12の一方の面に、ゴム成分を含有する表面印刷層13を備えている。
【0015】
ブランケット11を構成する土台層12は、例えば、コットン、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維等の基布、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等の樹脂フィルム等であってよい。土台層12の厚みは、例えば、0.2〜2.8mmの範囲で適宜設定され得る。
【0016】
土台層12は、複数の基布を接着ゴム層を介して積層した積層体であってもよく、また、このような積層体を構成する基布の間に圧縮層を介在させたものであってもよい。積層体を構成する基布の数は適宜設定することができ、例えば、2〜5枚程度で設定することができる。また、積層体を構成する接着ゴム層のゴム成分としては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EP)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM、EPT)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)、ブチルゴム(IIR)、カルボキシル化NBR(XNBR)、多硫化ゴム等を挙げることができ、これらの1種を単独で、または、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0017】
また、圧縮層の材料としては、従来のブランケットに使用されている材料を使用することができ、例えば、多層織物、不織布、あるいは、ゴム材料中に中空構造の微粒子を含有させた発泡構造シートや発泡剤などで中空構造を設けた発泡構造シート(スポンジゴム)等とすることができる。なお、圧縮層は、基布間に介在するものに限定されず、土台層12と表面印刷層13との間に位置するものであってもよい。
【0018】
ブランケット11を構成する表面印刷層13は、ゴム成分とともに、超高分子量ポリエチレンを含有している。表面印刷層13が含有するゴム成分としては、従来公知のブランケット用のゴム材料を使用することができ、例えば、エチレンプロピレンゴム(EP)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM、EPT)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)、ブチルゴム(IIR)、カルボキシル化NBR(XNBR)、多硫化ゴム等を挙げることができ、これらの1種を単独で、または、2種以上の組み合わせで使用することができる。
【0019】
表面印刷層13に含有させる超高分子量ポリエチレンは粉末であってもよく、その平均粒子径が200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下である。なお、超高分子量ポリエチレンは、通常2〜30万の分子量を50〜700万まで高めたポリエチレンをいう。
【0020】
このような超高分子量ポリエチレンの表面印刷層13における含有量は、表面印刷層のゴム成分100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは5〜40重量部の範囲とすることができる。超高分子量ポリエチレンの含有量が1重量部未満では、離れ性(ブランケット表面からの被印刷物の離れやすさを示す指標)が不十分な場合があり、また、50重量部を超えると、ブランケット製造時における加工性が悪化する場合がある。
【0021】
また、表面印刷層13は、ゴム成分と、上述した超高分子量ポリエチレンとともに、シリコーン系添加剤を含有するものであってもよい。シリコーン系添加剤の表面印刷層13における含有量は、表面印刷層13のゴム成分100重量部に対して1〜30重量部の範囲とすることができる。シリコーン系添加剤の含有量が1重量部未満では、表面印刷層13において高い耐摩耗性が発現されない場合があり、好ましくない。また、シリコーン系添加剤の含有量が30重量部を超えると、インキによる膨潤が生じて、例えば、印刷版を切り替えたときに、以前の印刷版の影響が残るような場合があり、好ましくない。表面印刷層13が含有するシリコーン系添加剤としては、例えば、シリコーンとアクリルとのグラフト共重合物、高分子量シリコーン等を挙げることができる。
【0022】
シリコーンとアクリルとのグラフト共重合物としては、例えば、ポリアルキルシロキサンとメタクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル共重合物とのグラフト共重合物、ポリアルキルシロキサンとメタクリル酸アルキルエステル・アクリル酸アルキルエステル共重合物のグラフト共重合物、ポリアルキルシロキサンとメタクリル酸アルキルエステル共重合物のグラフト共重合物を挙げることができる。このようなシリコーンとアクリルとのグラフト共重合物の表面印刷層13における含有量は、上記のように表面印刷層13のゴム成分100重量部に対して1〜30重量部の範囲であり、好ましくは2〜20重量部の範囲である。このようなシリコーンとアクリルとのグラフト共重合物としては、例えば、日信化学工業(株)製、シャリーヌ R−170S、シャリーヌ R−170等を挙げることができる。
【0023】
また、高分子量シリコーンとしては、例えば、主成分としてシロキサンを65重量%以上、好ましくは65〜75重量%の範囲で含有するシリコーンを挙げることができ、表面印刷層13における含有量は、上記のように表面印刷層13のゴム成分100重量部に対して1〜30重量部の範囲であり、好ましくは2〜20重量部の範囲である。この高分子量シリコーンは、副成分としてシリカを25〜35重量%の範囲で含有するものであってもよい。このような高分子量シリコーンとしてはペレット状の高分子量シリコーン等があり、例えば、旭化成ワッカーシリコーン(株)製 GENIOPLAST PELLET S等を挙げることができる。
【0024】
このような表面印刷層13は、基材12の一方の面に直接形成されたものであってよく、また、接着ゴム層を介して形成されたものであってよい。接着ゴム層は、上述の積層体構造の基材を構成する接着ゴム層と同様に、例えば、エチレンプロピレンゴム(EP)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM、EPT)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、ニトリルブタジエンイソプレンゴム(NBIR)、ブチルゴム(IIR)、カルボキシル化NBR(XNBR)、多硫化ゴム等を挙げることができ、これらの1種を単独で、または、2種以上の組み合わせで使用することができ、接着ゴム層の厚みは、適宜設定され得る。
【0025】
表面印刷層13の厚みは、例えば、0.17〜0.65mm、好ましくは0.25〜0.65mmの範囲で適宜設定され得る。また、表面印刷層13は、多層構造であってもよく、この場合、少なくとも最表面層は、上記のように、超高分子量ポリエチレンを含有するものである。このような多層構造の表面印刷層13における最表面層の厚みは、例えば、0.05〜0.64mmの範囲で適宜設定され得る。
【0026】
このような本発明は、ブランケット表面と紙などの被印刷物との離れ性(紙離れ性、排紙性)に優れた印刷用ブランケットを実現することができる。
【0027】
上述の実施形態は例示であり、本発明の印刷用ブランケットはこれらに限定されるものではない。例えば、表面印刷層13にシランカップリング剤を適量添加してもよい。シランカップリング剤の添加量は適宜設定され得る。シランカップリング剤の添加量として、例えば、表面印刷層13のゴム成分100重量部に対して0.1〜15重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲で設定することができる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
<ブランケットの作製>
第2層布としての基布の一方の面に、アクリル系中空微粒子(有機系熱膨張マイクロバルーン)を含有する圧縮層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。また、第1層布としての基布の一方の面に、接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。次いで、上記の2枚の基布の糊引きした面同士を貼り合わせた。
【0029】
次に、上記のように貼り合わせた第2層布としての基布の他方の面に接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。さらに、第3層布としての基布の一方の面に、接着ゴム層用のNBR系ゴム糊を塗布して乾燥した。次いで、第2層布としての基布の糊引きした面と第3層布としての基布の糊引きした面とを貼り合わせた。その後、加圧・加熱して加硫を行い、第1層布〜第3層布の基布を有し、第1層布の基布と第2層布の基布との間に圧縮層を介在させた厚み1.6mmの土台層を得た。
【0030】
一方、下記の表1、2に示される組成物1〜10の10種の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫状態)をトルエン溶剤に溶解させて、表面ゴム糊を調製した。この10種の表面ゴム糊を、それぞれ上記のように作製した土台層を構成する第1層布としての基布に塗布して乾燥した。その後、140℃、7時間の缶加硫を行って表面印刷層を形成し、この表面印刷層を研磨して、ブランケット(試料1〜試料10)を作製した。
【0031】
また、表面印刷層用のゴム組成物を下記の表3に示される組成物11〜14の4種とした以外は、試料1〜10のブランケットと同様に、ブランケット(試料11〜14)を作製した。ただし、組成物11〜14の4種の表面印刷層用のゴム組成物(未加硫状態)については、これらをトルエンとメチルイソブチルケトン(MIBK)との混合溶剤に溶解させて、表面ゴム糊を調製した。
【0032】
下記の表1、表2、表3に記載の配合成分の略記は以下の通りである。なお、表1、表2、表3に記載の数値は重量部を表している。
・超高分子量ポリエチレンA:三井化学(株)製 ミペロン(登録商標) XM−221U
(平均粒子径約25μm)
・超高分子量ポリエチレンB:三井化学(株)製 ミペロン(登録商標) PM−200
(平均粒子径約10μm)
・シリコーン系添加剤 :日信化学工業(株)製 シャリーヌ(登録商標) R170S
・可塑剤A :ポリエーテルエステル系可塑剤
・可塑剤B :エステル系
・加硫促進剤A :チウラム系加硫促進剤
・加硫促進剤B :スルフェンアミド系加硫促進剤
・加硫促進剤C :ジチオカルバミン酸系加硫促進剤
・加硫促進剤D :スルフェンアミド系加硫促進剤
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
<ブランケットの評価>
上述のように作製した各ブランケット(試料1〜14)について、表面印刷層からの被印刷物の離れ性、インキ転移濃度、テーバー摩耗指数を下記の方法・条件で測定し、結果を下記の表4に示した。
【0037】
(離れ性の測定方法・条件)
酢酸ブチルに溶解したインキ溶液をコーティングすることでインキ膜が形成されたフィルムを準備した。そのフィルムをブランケット表面に載せ、フィルムが載せられた状態のブランケットを、プレス機を使用してプレスした後、ブランケット表面からフィルムを一定の速度で剥離した。
【0038】
次に、フィルムからインキ膜が転写されたブランケット11の表面に、2つの対頂点(P,Q)を結ぶ対角線の長さが約77mmの正方形状のコート紙50を載せ(図2および図3参照)、このコート紙50が載せられたブランケットを、プレス機を使用してプレスした。その後、図4に示すように、ブランケット11の表面からコート紙50を、当該コート紙50の一方の対頂点Pから、この一対頂点に対向する他方の対頂点Qに向かうように、20±5mm/秒の速度で、ブランケット11の表面に対して90°〜120°の方向(例えば90°であれば矢印Eで示される方向)へ剥離した。
【0039】
ブランケット11の表面からコート紙50を剥離した後、一方の対頂点Pから他方の対頂点Qまでの長さをノギスで測定した。この長さが長い、すなわち上述した対角線の長さ(約77mm)に近いほど、コート紙50におけるカールが発生していないか、またはカールがほぼ発生していないものと認められるほどにカールの発生が抑えられていることになり、離れ性(紙離れ性・排紙性)に優れていることになる。
【0040】
例えば、図5に示す剥離後のコート紙50’のように、カールがほとんど発生していない場合、コート紙50’の2つの対頂点(P,Q)の長さL1は対角線の長さ77mmと同一ないし長さ77mmに近似した長さとなる。また、図6に示す剥離後のコート紙50”のように、カールがやや発生している場合、コート紙50”の2つの対頂点(P,Q)の長さL2は図5に示すコート紙50’におけるL1より短い長さとなる。
【0041】
他方、図7に示す剥離後のコート紙50”’のように、カールが発生しコート紙が円筒形状になったような場合は、2つの対頂点(P,Q)の長さに代えて、円筒形状のコート紙50”’の直径を測定し、測定された直径によりカールの程度を判定することになる。なお、この場合、当該直径が対角線77mmより短くなることは明らかであり、カールの発生を目視によって確認することもできる。
【0042】
(インキ転移濃度の測定方法・条件)
作製したブランケットのそれぞれについて、インキ転移試験を行い、紙に転移されたインキ転移濃度を反射濃度計(エックスライト社製 QUIKdens)を用いて測定した。この濃度が高い程、インキ転移性が良好となる。
【0043】
なお、離れ性及びインキ転移濃度の測定において使用したインキとしては、試料1〜10については『FLASH DRY(登録商標) カルトン X 紅M(東洋インキ株式会社製 紫外線硬化型インキ)』を使用し、試料11〜14については『WEB DRY(登録商標) レオエックス 紅(東洋インキ株式会社製 油性インキ)』を使用した。
【0044】
(テーバー摩耗指数の測定方法・条件)
作製したブランケットを用いて、JISK6264に準拠し、荷重500g、摩耗輪H−18でテーバー摩耗試験を実施した。テーバー摩耗指数が低いほど、ブランケットの摩耗が少ないものとなる。
【0045】
【表4】
【0046】
表4における結果から、表面印刷層に超高分子量ポリエチレンA、Bのいずれかを含有するブランケット(試料2〜5、試料7〜10、試料12〜14)は、ブランケット(試料1、試料6、試料11)に比べて、インキ転移性を損なうことなく、離れ性(紙離れ性・排紙性)が改善されていることが確認された。また、表4における結果から、耐候性に優れるEPDMを主成分とするブランケットであっても、離れ性(紙離れ性・排紙性)の改善に十分な効果があることが確認された。
さらに、ブランケット(試料1〜5)と、ブランケット(試料6〜10)とのテーバー摩耗指数の対比から、表面印刷層へのシリコーン系添加剤の添加が、離れ性(紙離れ性・排紙性)の改善の効果を損なうことなく、ブランケットの摩耗抑制に有効であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
ブランケットを利用する方式の印刷に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
11…ブランケット
12…土台層
13…表面印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7