(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0024】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光伝送装置1及び光モジュール2の構成を示す模式図である。光伝送装置1は、プリント回路基板11を備えている。また、光モジュール2は、プリント回路基板21を備えている。当該実施形態に係るプリント回路基板は、これらプリント回路基板11,21のいずれか又は両方である。
【0025】
光伝送装置1は、IC12をさらに備える。光伝送装置1は、例えば、大容量のルータやスイッチである。光伝送装置1は、例えば交換機の機能を有しており、基地局などに配置される。光伝送装置1は、光モジュール2より受信用のデータ(受信用の電気信号)を取得し、IC12などを用いて、どこへ何のデータを送信するかを判断し、送信用のデータ(送信用の電気信号)を生成し、プリント回路基板11を介して、該当する光モジュール2へそのデータを伝達する。
【0026】
光モジュール2は、送信機能及び受信機能を有するトランシーバであり、光ファイバ3Aを介して受信する光信号を電気信号に変換するROSA23Aと、電気信号を光信号に変換して光ファイバ3Bへ送信するTOSA23Bと、を含んでいる。プリント回路基板21と、ROSA23A及びTOSA23Bとは、それぞれフレキシブル基板22A,22B(フレキシブルプリント基板,FPC:Flexible Printed Circuit)を介して接続されている。ROSA23Aより電気信号がフレキシブル基板22Aを介してプリント回路基板21へ伝送され、プリント回路基板21より電気信号がフレキシブル基板22Bを介してTOSA23Bへ伝送される。光モジュール2と光伝送装置1とは電気コネクタ5を介して接続される。ROSA23AやTOSA23Bは、プリント回路基板21に電気的に接続され、光信号又は電気信号のうち一方から他方へ変換する光素子である。
【0027】
当該実施形態に係る伝送システムは、2個以上の光伝送装置1と2個以上の光モジュール2と、1個以上の光ファイバ3を含む。各光伝送装置1に、1個以上の光モジュール2が搭載される。2個の光伝送装置1にそれぞれ搭載される光モジュール2の間を、光ファイバ3が接続している。一方の光伝送装置1が生成した送信用のデータが、搭載される光モジュール2によって光信号に変換され、かかる光信号を光ファイバ3へ送信される。光ファイバ3上を伝送する光信号は、他方の光伝送装置1に搭載される光モジュール2によって受信され、光モジュール2が光信号を電気信号へ変換し、受信用のデータとして当該他方の光伝送装置1へ伝送する。
【0028】
ここで、各光モジュール2が送受信する電気信号のビットレートは100Gbit/s級のものであり、光モジュール2は、送信用に4チャンネル、受信用に4チャンネルの多チャンネル方式である。各々のチャネルを伝送する電気信号のビットレートは25Gbit/s乃至28Gbit/sのいずれかであり、具体的には、各々のチャンネルを伝送する電気信号のビットレートは25.78Gbit/sである。差動伝送線路はビットレート25.78Gbit/sの電気的なシリアルデータ信号を伝搬させるためのものである。
【0029】
図2は、当該実施形態に係るプリント回路基板31の一部の平面を示す模式図である。
図3は、当該実施形態の係るプリント回路基板31の一部の断面を示す模式図である。
図2及び
図3は、プリント回路基板31の構造を理解するために、平面及び断面をそれぞれ模式的に示しており、実際の平面図及び断面図とは異なっている。プリント回路基板31は、それぞれ誘電体層を介して複数の導体層が形成される多層構造のプリント配線基板であり、
図2及び
図3に、多層構造のうち、プリント回路基板31のうち、差動伝送線路と共振体構造が形成される部分(上部のみ)が図示されている。
図3は、
図2に示すIII−III線による断面を示している。
【0030】
当該実施形態に係るプリント回路基板31は、高速デジタル信号用の差動伝送線路を複数備えており、プリント回路基板31は複数のチャネルを有している。
図2及び
図3には、複数の差動伝送線路のうち、1つの差動伝送線路32(1チャンネル)が示されている。ここで、差動伝送線路32に伝送される電気信号のビットレートは25.78Gbit/sである。なお、ここで、プリント回路基板31は、光モジュール2のプリント回路基板21であるが、前述の通り、光伝送装置1のプリント回路基板11であってもよい。
【0031】
図2及び
図3に示す通り、プリント回路基板31は、誘電体層100と、1対のストリップ導体101,102と、接地導体層103と、第1共振体導体104と、1対の第1バイアホール105a,105bと、を備える。なお、
図2に示す最上表面には、保護用誘電体膜107が全面に亘って配置されているが、プリント回路基板31の多層構造の理解を容易にするために、保護用誘電体膜107は省略されている。また、同様に、誘電体層100は
図2には表示されていない。
【0032】
誘電体層100には、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料(ガラスエポキシ樹脂)が用いられる。例えば、誘電体層100の比誘電率3.5とする。誘電体層100は、第1共振体導体104を内部に含むとともに、1対のストリップ導体101,102と接地導体層103と、の間に配置される。
【0033】
1対のストリップ導体層101,102は、接地導体層103の積層方向の基板表面側(
図3に示す上側)に配置され、ともに第1の方向(
図2に示す上下方向)に沿って延伸している。1対のストリップ導体層101,102はともに、プリント回路基板31の多層構造の最上層の金属層上に形成される。1対のストリップ導体101,102は、厚さ37μmの銅箔である。1対のストリップ導体101,102の幅Wは、ともに0.17mmであり、1対のストリップ導体101,102の間隔Gは0.20mmである。ここで、間隔Gは、ストリップ導体101の内縁からストリップ導体102の内縁までの距離である。1対のストリップ導体101,102は、互いに間隔Gで離間しつつ、ともに幅Wで、互いに平行に第1の方向に直線形状に延伸しているのが望ましい。しかしながら、1対のストリップ導体101,102の形状は、プリント回路基板31に実装される他の部品との関係により、屈曲する場合などが考えられる。その場合であっても、第1共振体導体104と立体的に交差する領域及びその近傍の領域において、平行な直線形状であればよい。なお、1対のストリップ導体101,102の平面形状は、パタンニングにより加工形成される。
【0034】
接地導体層103は、厚さ18μmの銅箔であり、プリント回路基板31の多層構造のうち、表面側から数えて第3番目の金属層である。
図3に示す通り、1対のストリップ導体101,102と接地導体層103との距離H
1は166μmである。ここで、1対のストリップ導体101,102と接地導体層103との距離H
1は、1対のストリップ導体101,102の下表面と、接地導体層103の上表面と、の間の距離である。誘電体層100と、1対のストリップ導体101,102と、接地導体層103と、により、デジタル変調信号が伝送される、マイクロストリップ線路形式の差動伝送線路32が構成される。差動伝送線路32の差動モードにおける特性インピーダンスを100Ωとすることができる。接地導体層103は、プリント回路基板31の全面に亘って配置されるのが望ましいが、1対のストリップ導体101,102及び第1共振体導体104の下方となる領域を含むとともに第2の方向の両側へ広がる形状であればよい。第2の方向は、第1の方向に交差する方向である。
【0035】
第1共振体導体104は、1対のストリップ導体101,102と接地導体層103と、の間に配置される。第1共振体導体104は、厚さ36μmの銅箔であり、プリント回路基板31の多層構造のうち、表面側から数えて第2番目の金属層である。
図3に示す通り、1対のストリップ導体101,102と第1共振体導体104との距離H
2は65μmである。ここで、1対のストリップ導体101,102と第1共振体導体104との距離H
2は、1対のストリップ導体101,102の下表面と、第1共振体導体104の上表面と、の間の距離である。距離H
1は距離H
2の2倍以上となるのが望ましく、当該実施形態に係るプリント回路基板31では、かかる条件を満たしている。
【0036】
第1共振体導体104は、第2の方向に沿って、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する。第1の方向と第2の方向のなす角は、85°以上90°以下が望ましく、第1の方向と第2の方向とは、実質的に直交している(なす角が90°である)のがさらに望ましい。当該実施形態において、第1の方向(
図2の上下方向)と第2の方向(
図2の左右方向)とは、直交している。第1共振体導体104は、その両端にそれぞれ円形状(直径0.45mm)のランド部110a,110b(ビアランド)を備えている。
【0037】
1対の第1バイアホール105a,105b(円形状)は、その円形状の中心が、理想的には、ランド部110a,110bの円形状の中心を貫くように、それぞれ配置される。1対の第1バイアホール105a,105bはそれぞれ、直径0.20mmの円柱形状のスルーホールであり、スルーホールの内壁には金属が配置される。1対の第1バイアホール105a,105bの中心間距離Dは2.0mmである。誘電体層100にドリル工程により、プリント回路基板31の平面方向と垂直に、1対のストリップ導体101,102(最上層の金属層)から接地導体層103(第3番目の金属層)に至るように、円形状の穴(スルーホール)を穿ち、その穴の内壁(内側の側面)に銅メッキを施すことにより、1対の第1バイアホール105a,105bは形成される。1対の第1バイアホール105a,105bは、第1共振体導体104(の両端のランド部110a,110b)と、接地導体層103と、をそれぞれ接続する。接地導体層103と、第1共振体導体104と、1対の第1バイアホール105a,105bと、により、第1共振体構造が構成される。
【0038】
保護用誘電体膜107は、
図2及び
図3に示す通り、プリント回路基板31の最上層であり、1対のストリップ導体101,102及び誘電体層100を覆って配置されている。保護用誘電体膜107は、ソルダレジストと呼ばれるハンダ付着防止用の誘電体膜であり、厚さは40μm程度である。なお、特に必要がなければ、保護用誘電体膜107は配置しなくてもよい。
【0039】
当該実施形態に係るプリント回路基板31の第1の特徴は、第1共振体導体104の形状にある。そして、第2の特徴は、距離H
1が距離H
2の2倍以上であることである。以下、第1共振体導体104の形状について説明する。なお、第1共振体導体104の平面形状は、パタンニングにより加工形成される。
【0040】
第1共振体導体104は、両端にあるランド部110a,110b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ、直線形状で延伸している。すなわち、第1共振体導体104は、1対の第1バイアホール105a,105b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ延伸している。ここで、「第1共振体導体104の内側へ延伸する」とは、第1共振体導体104が立体的に交差する1対のストリップ導体101,102に対して、両側から近づく向きへ延伸することを言う。「第1共振体導体104の外側へ延伸する」とは、第1共振体導体104が立体的に交差する1対のストリップ導体101,102に対して、両側から遠ざかる向きへ延伸することを言う。実際には、第1共振体導体104の平面形状と、1対の第1バイアホール105a,105bとは、別々の工程で形成されるので、ランド部110a,110b(の中心)と1対の第1バイアホール105a,105b(の中心)とは、それぞれ位置ずれが発生する。ここで位置ずれ量は0.125mmである。ランド部110a,110bの直径0.45mmは、1対の第1バイアホール105a,105bの直径0.20mm及び位置ずれ量0.125mmに対して対応できる値となっている。また、第1共振体導体104のうち、(屈曲している部分を除いて)、直線形状で延伸する部分の幅W
1は、0.20mmである。
【0041】
ここで、ランド部110a,110bそれぞれから、又は、1対の第1バイアホール105a,105bそれぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104が延伸しているとは、製造上の位置ずれの誤差を許容しており、ランド部110a,110bの中心より、第1共振体導体104の直線形状の部分の中心が、厳密に延伸していなくてもよく、また、直線形状の延伸方向は、第2の方向に沿っていればよく、厳密に第2の方向と平行でなくてもよい。本明細書において、「第1の方向(又は、第2の方向)に沿う」との表記については、同様とする。
【0042】
当該実施形態に係る第1共振体導体104は、その両端(ランド部110a,110b)から、又は、第1の第1バイアホール105a,105bそれぞれから、第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へともに延伸し、さらに、第1の方向のいずれか一方の向き(
図2の下向き)へともに屈曲するのが望ましい。さらに、第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へともに延伸し、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分へともに至るのが望ましい。すなわち、第1共振体導体104は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第2の方向に沿って外側へ延伸し、第1の方向のいずれか一方の向き(
図2の上向き)へ屈曲するとともにさらに第1の方向に沿って延伸し、第2の方向の外側へ屈曲するとともに第2の方向に沿って外側へ延伸して、1対の第1バイアホールと接続する、のが望ましい。
【0043】
当該実施形態に係る第1共振体導体104は、その両端に配置されるランド部110a,110bより第2の方向に沿って内側へ延伸する形状となっている。第1共振体導体104がかかる形状となっていることにより、ランド部110a,110bと1対の第1バイアホール105a,105bとの位置ずれに起因する特性の劣化を抑制することができている。この効果の詳細については後述する。また、当該実施形態に係る第1共振体導体104は、第1の方向に沿って延伸する1対のストリップ導体101,102と、第2の方向に沿って、立体的に交差するとともに、立体的に交差する部分より第2の方向に沿ってそれぞれ延伸し、ともに屈曲と延伸を繰り返して、その両端に配置されるランド部110a,110bに接続する形状を有している。当該実施形態に係る第1共振体導体104がかかる形状を有することにより、1対の第1バイアホールの一方のバイアホール(例えば、バイアホール105a)の中心位置から他方のバイアホール(例えば、バイアホール105b)の中心位置までの、第1共振体導体104の線路長Lは3.4mmである。ここで、線路長Lは、第1共振体導体が延伸する直線形状の中心線の長さであり、屈曲する部分においては、両側にそれぞれ伸びる直線形状の中心線に基づいて計算すればよい。
図2に示す通り、第1共振体導体104の第1の方向に延びる直線形状部分の中心線の長さL
1は0.7mmである。すなわち、中心線で考えれば、第1の方向に沿って0.7mmという小さな領域に、3.4mmという長い線路長を有する第1共振体導体104を配置することができている。また、第1の方向に沿う0.7mmの直線形状部分を両側にそれぞれ1本ずつ(都合2本)設けることができており、かかる2本の直線形状部分が迂回経路となり、第2の方向に沿う直線形状部分を短くすることができている。
【0044】
第1共振体導体104は、比誘電率ε
rが3.5の誘電体層100の内部に配置されており、誘電体層100中の真空中に対する波長短縮率(1/√ε
r)は0.535である。ビットレートに対応する周波数25.78GHzにおける第1共振体導体104の一波長λ
gは6.22mmと算出される。よって、第1共振体導体104の線路長Lである3.4mmは、波長λ
gに換算すれば、0.55λ
gとなる。第1共振体導体104の線路長Lは、第1共振体導体104の形状を変化させる場合、第1共振体導体104と接地導体層103との距離を変化させる場合、誘電体層100の材料を変化させる場合には、それに応じて適当な値を選択すればよい。適当となる値は、例えば、電磁界解析ツールにより求めることができ、デジタル変調信号のビットレートに対応する周波数において0.4波長以上0.6波長以下の長さとなるのが望ましい。ここで、ビットレートは25.78Gbit/sであり、ビットレートに対応する周波数とは25.78GHzである。すなわち、デジタル変調信号のビットレートに対応する周波数とは、ビットレート(単位bit/s)の数値をそのままにして、単位をHzに変化させたものである。
【0045】
第1共振体導体104は、平面視して、1対のストリップ導体101,102に対して、実質的に線対称となる形状を有しているのが望ましい。ここで、「1対のストリップ導体101,102に対して線対称である」とは、1対のストリップ導体101,102の中心線(ストリップ導体101の中心線と、ストリップ導体102の中心線と、の中心線)に対して線対称であることを言う。差動伝送線路に伝送する差動信号成分が伝導伝搬することに及ぼされる影響を低減するのが望ましく、そのためには、共振体構造が1対のストリップ導体101,102に対して対称的であるのが望ましい。
【0046】
図4は、当該実施形態に係る差動伝送線路32の特性を示す図である。
図4に、差動伝送線路32における差動モード通過特性(Sdd21)、差動モード反射特性(Sdd11,Sdd22)、及びコモンモード通過特性(Scc21)の周波数依存性を示すグラフが示されている。第1共振体導体104(第1共振体構造)が1対のストリップ導体101,102(差動伝送線路32)と立体的に交差しているので、差動モード反射特性(Sdd11,Sdd22)において劣化(増加)が生じているが、周波数0〜30GHzの範囲において−20dB以下の値となっており、比較的良好な値を保っている。これは、第1共振体導体104は、幅W
1が0.20mmである細い直線形状を有しており、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する面積(対向する面積、平面視して重畳する面積)を低減させていることによるものと考えられる。
【0047】
また、差動モード通過特性(Sdd21)も良好な特性を示している。一方、コモンモード通過特性(Scc21)は、周波数26.3GHzを中心とした減衰領域が生じており、周波数25.78GHzのコモンモード信号成分の伝導伝搬を10dB程度阻害できている。
【0048】
図18は、当該実施形態の比較例に係るプリント回路基板331の一部の平面を示す模式図である。
図19は、当該比較例に係る差動伝送線路32の特性を示す図であり、位置ずれΔyが+0.125mm、0、及び−0.125mmである場合のコモンモード通過特性(Scc21)がそれぞれ示されている。当該比較例に係るプリント回路基板331は、第1共振体導体304の形状が、当該実施形態に係る第1共振体導体104の形状と異なっている以外は、同じ構造を有している。当該比較例に係る第1共振体導体304は、両端に配置されるランド部310a,310bより、第1の方向のいずれかの向き(
図12に示す下向き)に沿ってともに延伸し、第2の方向に沿って、第1共振体導体304の内側へともに延伸し、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分へともに至っている。1対の第1バイアホール105a,105bの中心間距離Dを1.4mmとし、バイアホール105aの中心位置からバイアホール105bの中心位置までの、第1共振体導体304の線路長Lを3.2mmとしている。第1共振体導体304がかかる形状を有することにより、1対の第1バイアホール105a,105bそれぞれの中心位置が、ランド部310a,310bそれぞれの中心位置に配置される場合、差動伝送線路332の特性は、
図4に示す差動伝送線路32と同様の特性が得られる。
【0049】
次に、当該実施形態に係る差動伝送線路32と、当該比較例に係る差動伝送線路32との、1対の第1バイアホール105a,105bの第1共振体導体104(又は304)に対する位置ずれによる、特性の影響について検討する。前述の通り、位置ずれ量は0.125mmである、1対の第1バイアホール105a,105bは、第1共振体導体104(又は304)に対して、第1の方向及び第2の方向それぞれに対して、最大±0.125mm変動し得る。前述の通り、第1共振体導体104(又は304)と1対の第1バイアホール105a,105bとは、それぞれ別の工程で形成されるので、第1共振体導体104(又は304)と1対の第1バイアホール105a,105bとの相対的な位置は変動するものの、第1共振体導体104の平面形状はパタンニングにより形成されるので、第1共振体導体104(又は304)のランド部110a,110b(又は、310a,310b)同士の相対的な位置の変動は非常に小さい。同様に、1対の第1バイアホール105a,105bは共通のドリル工程により形成されるので、1対の第1バイアホール105a,105bの相対的な位置(中心間距離D)の変動は非常に小さい。
【0050】
第1に、当該比較例に対して、1対の第1バイアホール105a,105b(それぞれの中心位置)が、第1の方向(
図18に示す上下方向)に沿って、ランド部310a,310b(それぞれの中心位置)に対する位置ずれΔyについて考察する。位置ずれΔy=0は、1対の第1バイアホール105a,105bそれぞれの中心位置が、ランド部310a,310bそれぞれの中心位置に一致する場合であり、位置ずれΔ=+0.125mmは、1対の第1バイアホール105a,105bそれぞれの中心位置が、ランド部310a,310bそれぞれの中心位置より、
図18に示す上向きに位置ずれしている場合であり、位置ずれΔ=−0.125mmは、1対の第1バイアホール105a,105bそれぞれの中心位置が、ランド部310a,310bそれぞれの中心位置より、
図18に示す下向きに位置ずれしている場合である。当該比較例に係る第1共振体導体304は、第1の方向に沿う位置ずれΔyにより、線路長Lが変動する。Δy=+0.125mmのときの線路長Lは、Δy=0のときの線路長Lより0.25mm長くなり、Δy=−0.125mmのときの線路長Lは、Δy=0のときの線路長Lより0.25mm短くなり、位置ずれΔyにより、第1共振体304の線路長Lは大きく変動することとなる。すなわち、当該比較例に係る差動伝送線路332は、第1共振体導体304と1対の第1バイアホール105a,105bとの第1の方向に沿う位置ずれの影響を大きく受けることとなる。
図19に示す通り、コモンモード通過特性(Scc21)における減衰領域の中心周波数が上下に3.6GHzと大きく変動している。よって、当該比較例1に係る差動伝送線路332では、製造ばらつきに起因して、第1共振体構造により、デジタル変調信号のビットレートに対応する周波数(25.78GHz)のコモンモード信号成分の伝導伝搬を阻害するのが困難であることがわかる。
【0051】
これに対して、当該実施形態に係る第1共振体導体104は、両端にあるランド部110a,110b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ、直線形状で延伸している。それゆえ、1対の第1バイアホール105a,105b(それぞれの中心位置)が、第1の方向(
図2に示す上下方向)に沿って、ランド部110a,110b(それぞれの中心位置)に対する位置ずれΔyが発生する場合であっても、当該実施形態に係る第1共振体導体104の線路長Lの変動は抑制され、位置ずれΔyに起因する当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)における減衰領域の中心周波数の変動は、当該比較例に係る差動伝送線路332の変動と比べて、非常に小さい。
【0052】
第2に、1対の第1バイアホール105a,105b(それぞれの中心位置)が、第2の方向(
図2に示す左右方向)に沿って、ランド部110a,110b(それぞれの中心位置)に対する位置ずれΔxが発生する場合について、考察する。位置ずれが第2の方向のいずれの向きに発生する場合であっても、当該実施形態に係る第1共振体導体104の線路長Lの変動は非常に小さい。バイアホール105aがランド部110aに対して、例えば、
図2に示す右向きに位置ずれする場合、バイアホール105a側の第1の方向に沿う中心線の長さは位置ずれ量に応じて減少するが、バイアホール105b側の第1の方向に沿う中心線の長さは位置ずれ量に応じて増加し、線路長Lの変動は非常に小さくなる。よって、当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)における減衰領域の中心周波数の変動は、非常に小さい。なお、当該比較例に係る1対の第1バイアホール105a,105bが第2の方向に沿って(
図18に示す左右方向)、第1共振体導体304に対して位置ずれΔyが発生する場合は、当該実施形態に係る第1共振体導体104の第1の方向に沿う位置ずれΔxと同様に、当該比較例に係る第1共振体導体304の線路長Lの変動は小さい。
【0053】
当該実施形態に係る差動伝送線路32では、差動信号成分の伝導伝搬の劣化を抑制しつつ、差動伝送線路32へのコモンモード信号成分の伝導伝搬を選択的に阻害することができている。すなわち、実質的に、差動伝送線路へのコモンモード信号成分の伝導伝搬のみを選択的に阻害することができている。また、当該実施形態に係る第1共振体導体104及び1対の第1バイアホール105a,105bを形成する上で、新たに追加する工程は必要なく、製造コストの増加が抑制される。さらに、当該実施形態に係る第1共振体導体104の形状が屈曲していることにより、第1共振体導体104が配置される領域を縮小することができ、高密度に配置することができている。
【0054】
なお、当該実施形態に係る誘電体層100は、ガラス布基材とエポキシ樹脂からなる材料(ガラスエポキシ樹脂)を用いて形成するとしたが、この材料に限定されることはなく、液晶ポリマ(LCP;Liquid Crystal Polymer)やフッ素系樹脂(PTFE;Polytetrafluoroethylene)であってもよい。
【0055】
光ファイバ伝送用の光モジュール(光送受信機、光トランシーバモジュール)は、近年のブロードバンドネットワークの普及と共に高速化、小型化、及び低コスト化が図られ、高速化に関しては、現在ではビットレートが100Gbit/sのものが広く用いられている。小型化及び低コスト化に関しては、CFP MSA(Multi Source Agreement)規格からCFP2、CFP4、QSFP28(各MSA規格)へと、筺体(ケース)体積の縮小化・部品数の削減化が進んでいる。
【0056】
また、光モジュールが搭載される光伝送装置(ネットワーク装置)には、その装置が発生する不要電磁波の強度を法規に定められた限度値以下に抑えることが求められている。例えば、米国では、「FCC Part 15 Subpart B」規格に定められる限度値53.9dB(μV/m)(Class B規格で、距離が3m、周波数範囲が1GHz〜40GHzである場合)以下に不要電磁波の強度を低減させる必要がある。光モジュールでは、内蔵するICのスイッチングノイズ等に起因して、高周波数における不要電磁波を発生する場合が多い。よって、これら不要電磁波の装置外部への放射を低減する設計技術が、光伝送装置及び光モジュールの双方において重要である。
【0057】
光モジュールにおいては、不要電磁波の主要な励振源は、電気的なシリアルデータ信号(変調信号)を増幅し出力する(CDR、Driver、TIA等の)ICである。クロック信号とは異なり、理想的なシリアルデータ信号は繰り返しの信号パタンを含まないため、周波数スペクトル上では大きなピーク強度を持たない。しかしながら、実際のIC内部の差動増幅回路においては、トランジスタの非線形性に起因してスイッチングノイズが発生する。それゆえ、出力信号のコモンモード成分の周波数スペクトルを観測した場合に、ビットレートに対応する周波数に大きなピークが生じる。このコモンモード信号成分は、プリント回路基板上の差動伝送線路を伝導伝搬する間に、その一部が放射損失として空間に伝搬する。これに伴い、ビットレート100Gbit/sの送信側・受信側がともに4チャンネルの光モジュールにおいては、ビットレートが25.78Gbit/sの電気的なシリアルデータ信号を用いるため、そのビットレートに対応する周波数25.78GHzの不要電磁波を発生してしまう。従来の光モジュールでは、その外殻にある金属筺体
(金属ケース)の間隙をより小さくすることにより、電磁波の空間伝搬をより遮蔽し、さらに、金属筺体の内部に電波吸収材料を配置することにより、電磁波の空間伝搬を減衰させて、光送受信機からの不要電磁波の漏れを抑制していた。
【0058】
近年では、光伝送装置の大容量化が進み、それに伴い、光伝送装置に、消費電力(発熱量)の大きなLSI(FPGA)が搭載されている。光伝送装置においては、送風冷却を強化するために多数の送風穴を配置し、装置のシールド効果が低くなる傾向にある。また、光伝送装置には、100Gbit/s級の光モジュールが複数搭載されている。主要なMSA規格である、例えばQSFP28に準ずる光モジュールでは、プリント回路基板の一端上に外部接続用端子が配置されており、当該外部接続用端子が、金属筺体の外部において、光伝送装置に搭載されるコネクタと、接続される。この構成によれば、金属筺体の外部に引き出した差動伝送線路やコネクタより放射される不要電磁波が主原因となり、光伝送装置の不要電磁波が十分に抑制できないという課題があった。
【0059】
QSFP28に準ずる光モジュールにおいて、基板幅が16mm程度の小型のプリント回路基板上に、送信回路用に4対の差動伝送線路を、受信回路用に4対の差動伝送線路を、それぞれ配置する必要がある。従来における共振体構造のサイズ(長さや幅)が所望の共振周波数を得るには比較的大きな面積を要し、従来における共振体構造を、QSFP28に準ずる光モジュールのプリント回路基板上に配置するのは困難であるとの知見を発明者らは得ている。これに対して、当該実施形態に係るプリント回路基板31は、かかる課題を解決するのに適した構造を有している。
【0060】
図5は、当該実施形態に係る光モジュール2の外部形状を示す概略斜視図である。
図6は、当該実施形態に係る光モジュール2の構造を示す概略斜視図である。
図6は、光モジュール2が光伝送装置1に搭載される状態を示している。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、ここではプリント回路基板21である。
【0061】
当該実施形態に係る光モジュール2は、QSFP(MSA規格)に準拠する光モジュールである。
図5に示す通り、光モジュール2は、上部ケース200と、下部ケース201と、ラッチ202と、カードエッジコネクタ210と、を含んでいる。上部ケース200及び下部ケース201の材料に、亜鉛やアルミニウムなどの金属を用いており、上部ケース200と下部ケース201とを含んで、金属筺体が構成される。上部ケース200及び下部ケース201は、カードエッジコネクタ210を通すための開口部以外の部分において、間隙がないように互いに密着させて、プリント回路基板21を覆って、電磁的シールドを構成している。すなわち、金属筺体(上部ケース200及び下部ケース201)は金属筐体内部におけるプリント回路基板21からの輻射に対して電磁的シールドとして機能する。金属筺体は開口部を有しているが、電磁的シールドとしては十分機能する。一方、金属筐体には、光モジュールから光伝送装置への出力信号に含まれる不要ノイズ成分が伝導伝搬することを妨げる機能は無く、開口部を介して金属筐体外部に引き出された差動伝送線路およびコネクタ部位まで伝導伝搬された不要ノイズ成分に起因した、不要電磁波が輻射し得る。カードエッジコネクタ210はプリント回路基板21の端部であり、コネクタ接続用の複数の接点端子が1列に並んで配置されている。カードエッジコネクタ210は、上部ケース200及び下部ケース201の後方(
図5の右側)の開口部(スロット開口部)より外部に露出しており、活線挿抜の機能を担っている。なお、開口部はプリント回路基板21の一部を外部へ露出するために設けられる。
【0062】
図6は、光モジュール2が光伝送装置1に搭載される状態を示しており、さらに、光モジュール2の内部の構造を示すために、上部ケース200及び下部ケース201の一部が表示されていない。
図6に、光伝送装置1内部のプリント回路基板11の一部及びフロントパネル204と、が示されている。さらに、プリント回路基板11は、QSFP28(MSA規格)に準拠するコネクタ208をさらに含んでおり、コネクタ208はプリント回路基板11上に搭載されている。光モジュール2の上部ケース200及び下部ケース201の内部には、ROSA23A(光受信サブアセンブリ)、TOSA23B(光送信サブアセンブリ:図示せず)、及びフレキシブル基板22A,22B(22Bは図示せず)が搭載されている。プリント回路基板21は、複数のICを含んでいる。例えば、プリント回路基板21上には、受信側のCDR−IC207(Clock Data Recovery IC)が搭載されており、CDR−IC207は、4チャンネルの差動デジタル変調信号をビットレート25.78Gbit/sで出力する。この出力信号は、プリント回路基板21上に配置される4対の差動伝送線路32(図示せず)、カードエッジコネクタ210、及びコネクタ208を介して、光伝送装置1内部のプリント回路基板11に伝導伝搬する。プリント回路基板21に配置される4対の差動伝送線路32それぞれに、
図2に示す第1共振体構造が配置される。
【0063】
CDR−IC207の出力スペクトルを測定すると,ビットレートに対応する周波数25.78GHzに、本来は不要なクロックノイズ成分がピーク単一のピークとして観測される。しかしながら、4対の差動伝送線路32のそれぞれに、
図2に示す第1共振体構造が配置されることにより、周波数25.78GHzのコモンモード信号成分の伝導伝搬を、光モジュール2の上部ケース200及び下部ケース201の内部において阻害することができている。それゆえ、カードエッジコネクタ210、コネクタ208、及び光伝送装置1のプリント回路基板11において、コモンモード信号成分に起因する不要電磁波の輻射を低減することができている。このメカニズムと同様に、光伝送装置1のプリント回路基板11上に配置される差動伝送線路に、
図2に示す第1共振体構造が配置されることにより、光伝送装置1内部への不要電磁波の輻射、及び光伝送装置1の冷却送風用の通気孔などを介して光伝送装置1の外部への不要電磁波の輻射を低減することができる。
【0064】
なお、
図5及び
図6に示すプリント回路基板21では、受信用のCDR−IC207はプリント回路基板21上に配置されているが、これに限定されることはなく、ROSA23Aの内部に実装されていてもよい。この場合、CDR−IC207をプリント回路基板21上に配置することが不要となるために、4対の差動伝送線路それぞれに対して、
図2に示す第1共振体導体104をプリント回路基板21上に配置するための面積をより広く配分することができ、プリント回路基板21の回路設計の自由度が向上する。
【0065】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の平面を示す模式図である。
図8は、当該実施形態に係る差動伝送線路32の特性を示す図である。
図8に、当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と、比較のために、本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と、が示されている。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1共振体導体104に加えて、第2共振体導体114、及び第2のバイアホール115a,115bをさらに備える点において、第1の実施形態と異なっているが、それ以外については第1の実施形態と同じ構造をしている。
【0066】
第2共振体導体114は、第1共振体導体104と同一層上(第2番目の金属層)に配置され、その両端にそれぞれ円形状のランド部120a,120bを備えている。第2共振体導体114は、第1の方向(
図7の上下方向)に沿って、第1共振体導体104と並んで配置され、第2共振体導体114の平面形状は、
図7に示す直線Xに対して、第1共振体導体104の平面形状と、実質的に線対称となっている。第2共振体導体114は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第1共振体導体104と互いに並行して第2の方向に沿って外側へ延伸し、第1の方向のいずれか他方の向き(
図2の下向き)へ屈曲するとともにさらに第1の方向に沿って第1共振体導体104から遠ざかるように延伸し、第2の方向の外側へ屈曲するとともに第2の方向に沿って外側へ延伸して、1対の第2バイアホール115a,115bと接続している。第1共振体導体104と同様に、1対の第2バイアホール115a,115b(円形状)は、その円形状の中心が、理想的には、ランド部120a,120bの円形状の中心を貫くように、それぞれ配置される。1対の第2バイアホール115a,115bは、第2共振体導体114(の両端のランド部120a,120b)と、接地導体層103と、をそれぞれ接続する。接地導体層103と、第2共振体導体114と、1対の第2バイアホール115a,115bと、により、第2共振体構造が構成される。
【0067】
ここでは、当該実施形態に係るプリント回路基板32において、第1の方向に沿って並ぶ、1対の第1バイアホールのうちの一方の第1バイアホール(バイアホール105a)と、1対の第2バイアホールのうちの一方の第2バイアホール(バイアホール115a)と、の中心間距離(Via Pitch)を変化させることにより、コモンモード通過特性における減衰特性を調整することができる。ここでは、中心間距離(Via Pitch)を2.2mmとしている。しかしながら、この値に限定されることはなく、コモンモード通過特性における減衰特性に応じて、適当な値とすればよい。
【0068】
当該実施形態に係るプリント回路基板32には、第1共振体導体104と第2共振体導体114とが配置されるので、2つの共振体導体を配置するために、より広い領域を必要とする。しかしながら、
図8に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)は、周波数26.3GHzを中心とする減衰領域が生じており、周波数25.78GHzのコモンモード信号成分の伝導伝搬を20dB程度阻害することができている。本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と比較して、当該実施形態に係るコモンモード通過特性(Scc21)は、より大きな減衰を実現しているとともに、コモンモード信号成分の伝導伝搬を阻害できる周波数範囲をより広くすることができている。
【0069】
図9は、本発明の当該実施形態に係るプリント回路基板31の一部の平面を示す模式図である。
図10は、当該実施形態に係る差動伝送線路32の特性を示す図である。
図9は、
図7に示すプリント回路基板31において、1対の第1バイアホール105a,105b及び1対の第2バイアホール115a,115bが、第1の方向のいずれか一方(
図9に示す下向き)へ、ランド部110a,110b及びランド部120a,120bに対して、位置ずれΔyが発生する場合を示している。ここで、位置ずれΔyは、−0.125mmである。
図10に、
図9に示す差動伝送線路32(Δy=0)のコモンモード通過特性(Scc21)と、比較のために、
図7に示す差動伝送線路32(Δy=±0.125mm)のコモンモード通過特性(Scc21)と、が示されている。第1共振体導体104の平面形状と第2共振体導体114の平面形状とは、直線Xに対して線対称であるために、第1の方向のいずれの向きに(
図9に示す上向き又は下向き)位置ずれが発生しても、その絶対値が同一であれば、得られるコモンモード通過特性(Scc21)は、実質的に同一である。
図10に示す通り、位置ずれΔyが発生する(Δy=±0.125mm)場合であっても、コモンモード通過特性(Scc21)における減衰領域の中心周波数が0.5GHz程度低い周波数へ変動するものの、周波数25.78GHzにおいてコモンモード信号成分の伝導伝搬を20dB程度阻害することができている。
【0070】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の平面を示す模式図である。
図12は、当該実施形態に係る差動伝送線路32の特性を示す図である。
図12に、当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と、比較のために、本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と、が示されている。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第2共振体導体114の形状が第2の実施形態と異なっているが、それ以外については第2の実施形態と同じ構造をしている。
【0071】
第2の実施形態において、第2共振体導体114の平面形状は、
図7に示す直線Xに対して、第1共振体導体104の平面形状と、実質的に線対称となっているのに対して、当該実施形態において、第2共振体導体114の平面形状は、第1共振体導体104の平面形状を第1の方向のいずれか一方(
図11の下向き)へ並進移動させたものと実質的に意一致する。第2共振体導体114は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第1共振体導体104と互いに並行して第2の方向に沿って外側へ延伸し、第1の方向のいずれか一方の向き(
図2の下向き)へ屈曲するとともにさらに第1の方向に沿って第1共振体導体104と同じ向きに延伸し、第2の方向の外側へ屈曲するとともに第2の方向に沿って外側へ延伸して、1対の第2バイアホールと接続している。第2の実施形態と同様に、1対の第2バイアホール115a,115b(円形状)は、その円形状の中心が、理想的には、ランド部120a,120bの円形状の中心を貫くように、それぞれ配置される。1対の第2バイアホール115a,115bは、第2共振体導体114(の両端のランド部120a,120b)と、接地導体層103と、をそれぞれ接続する。接地導体層103と、第2共振体導体114と、1対の第2バイアホール115a,115bと、により、第2共振体構造が構成される。
【0072】
第2の実施形態と同様に、当該実施形態に係るプリント回路基板32において、第1の方向に沿って並ぶ、1対の第1バイアホールのうちの一方の第1バイアホール(バイアホール105a)と、1対の第2バイアホールのうちの一方の第2バイアホール(バイアホール115a)と、の中心間距離(Via Pitch)を変化させることにより、コモンモード通過特性における減衰特性を調整することができる。ここでは、中心間距離(Via Pitch)を1.2mmとしている。しかしながら、この値に限定されることはなく、コモンモード通過特性における減衰特性に応じて、適当な値とすればよい。
【0073】
当該実施形態に係るプリント回路基板32には、第1共振体導体104と第2共振体導体114とが配置されるので、2つの共振体導体を配置するために、より広い領域を必要とする。しかしながら、
図12に示す通り、当該実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)は、周波数26.3GHzを中心とする減衰領域が生じており、周波数25.78GHzのコモンモード信号成分の伝導伝搬を20dB程度阻害することができている。本発明の第1の実施形態に係る差動伝送線路32のコモンモード通過特性(Scc21)と比較して、当該実施形態に係るコモンモード通過特性(Scc21)は、より大きな減衰を実現しているとともに、コモンモード信号成分の伝導伝搬を阻害できる周波数範囲をより広くすることができている。
【0074】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の平面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1共振体導体104の形状が第1の実施形態と異なっているが、それ以外については第1の実施形態と同じ構造をしている。第1の実施形態に係る第1共振体導体104は、両端にあるランド部110a,110b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ、直線形状で延伸しているのに対して、当該実施形態に係る第1共振体導体104は、両端にあるランド部110a,110b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の外側へ、直線形状で延伸している。すなわち、当該実施形態に係る第1共振体導体104は、1対の第1バイアホール105a,105b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の外側へ延伸している。
【0075】
第1共振体導体104の両端よりそれぞれ延伸する向きを、第1延伸向きと、第2延伸向きと、するならば、第1乃至第3の実施形態(及び第5乃至第7の実施形態)において、第1延伸向きと第2延伸向きは、一直線上を互いに向き合っており、第1延伸向きと第2延伸向きとがなす角は180°となっている。第4の実施形態において、第1延伸向きと第2延伸向きは、一直線上を互いに離れようとしており、第1延伸向きと第2延伸向きとがなす角は180°となっている。第1延伸向きと第2延伸向きとは、第2の方向に沿って、互いに向き合うか(内側へ向く)、互いに遠ざかるか(外側へ向く)、いずれであってもよく、いずれの場合も、第2の方向に沿う位置ずれΔxに対して、線路長Lの変動を低減することができている。
【0076】
当該実施形態に係る第1共振体導体104は、その両端(ランド部110a,110b)から、又は、第1の第1バイアホール105a,105bそれぞれから、第2の方向に沿って、第1共振体導体104の外側へともに延伸し、さらに、第1の方向のいずれか一方の向き(
図13の下向き)へともに屈曲するのが望ましい。さらに、第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へともに延伸し、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分へともに至るのが望ましい。すなわち、第1共振体導体104は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第2の方向に沿って外側へ延伸し、第1の方向のいずれか一方の向き(
図2の上向き)へ屈曲するとともにさらに第1の方向に沿って延伸し、第2の方向のうち内側へ屈曲するとともに第2の方向に沿ってうち内側へ延伸して、1対の第1バイアホールと接続する、のが望ましい。
【0077】
1対の第1バイアホール105a,105bの中心間距離Dを1.1mmとし、第1共振体導体104の幅W
1を0.20mmとする。第1共振体導体104は、延伸する直線形状の部分と、屈曲する部分とを有するが、インピーダンス整合のために、屈曲する部分の角は切り落とされた形状となっている。なお、中心線の長さL
1は0.45mmである。当該実施形態に係るプリント回路基板31であっても、第1の実施形態と同様の効果を奏している。
【0078】
[第5の実施形態]
図14は、本発明の第5の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の構造を示す模式図(斜視図)である。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1共振体導体104の形状が第1の実施形態と異なっているが、それ以外については第1の実施形態と同じ構造をしている。
【0079】
第1の実施形態に係る第1共振体導体104は、屈曲する部分を有しているのに対して、当該実施形態に係る第1共振体導体104は、両端にあるランド部110a,110b(の中心)それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ、直線形状で延伸し、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分へともに至っている。すなわち、第1共振体導体104は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第2の方向に沿って外側へ延伸し、1対の第1バイアホールと接続する、のが望ましい。
【0080】
当該実施形態に係る第1共振体導体104は、両側のランド部110a,110bを除いて、直線形状に延伸している。1対の第1バイアホール105a,105bとの中心間距離Dは3.05mmとする。第1共振体導体104の幅W
1は0.19mmとしている。第1共振体導体104を直線形状とすることにより、中心間距離Dは長くなるが、非常に簡素な構成で共振体構造を実現することができている。
【0081】
[第6の実施形態]
図15は、本発明の第6の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の構造を示す模式図(斜視図)である。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1共振体導体104の形状及び第2共振体導体114の形状が第2及び第3の実施形態と異なっているが、それ以外については第2及び第3の実施形態と同じ構造をしている。
【0082】
第2及び第3の実施形態に係る第1共振体導体104及び第2共振体導体114はそれぞれ、屈曲する部分を有しているのに対して、当該実施形態に係る第1共振体導体104及び第2共振体導体114はそれぞれ、両端にあるランド部それぞれから、ともに第2の方向に沿って、第1共振体導体104の内側へ、直線形状で延伸し、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分へともに至っている。すなわち、第1共振体導体104及び第2共振体導体114は、1対のストリップ導体101,102と立体的に交差する部分より、第2の方向に沿って外側へ延伸し、1対の第1バイアホール及び1対の第2バイアホールとそれぞれ接続する、のが望ましい。
【0083】
当該実施形態に係る第1共振体導体104及び第2共振体導体114は、両側のランド部を除いて、直線形状に延伸している。1対の第1バイアホール105a,105bとの中心間距離D、及び1対の第2バイアホール115a,115bの中心間距離Dは、ともに3.05mmとする。第1共振体導体104の幅W
1は0.19mmとしている。第1共振体導体104及び第2共振体導体114を直線形状とすることにより、中心間距離Dは長くなるが、非常に簡素な構成で共振体構造を実現することができている。
【0084】
[第7の実施形態]
図16は、本発明の第7の実施形態に係るプリント回路基板31の一部の構造を示す模式図(斜視図)である。
図17は、当該実施形態の係るプリント回路基板31の一部の断面を示す模式図である。当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1共振体導体104及び1対の第1バイアホール105a,105bの構造が第5の実施形態と異なっているが、それ以外については、第5の実施形態と同じ構造をしている。
【0085】
当該実施形態に係る第1共振体導体104の平面形状は、第5の実施形態に係る第1共振体導体104の平面形状と一致しているが、
図17に示す通り、プリント回路基板31の多層構造において、当該実施形態に係る第1共振体導体104は最上層の金属層に配置され、当該実施形態に係る1対のストリップ導体101,102は第2番目の金属層に配置されている。すなわち、第1共振体導体104は、接地導体層103の積層方向の基板表面側に配置され、1対のストリップ導体101,102は、第1共振体導体104と接地導体層103と、の間に配置される。第1共振体導体104は、1対のストリップ導体101,102の積層方向の基板表面側に配置される。1対の第1バイアホール105a,105bは、第1共振体導体104(の両端のランド部110a,110b)と、接地導体層103と、をそれぞれ接続する。
【0086】
ここで、1対のストリップ導体101,102と接地導体層103との距離H
1は138μmであり、1対のストリップ導体101,102と第1共振体導体104との距離H
2は65μmである。前述の通り、距離H
1は距離H
2の2倍以上となるのが望ましく、当該実施形態に係るプリント回路基板31では、かかる条件を満たしている。1対のストリップ導体101,102の幅Wは、ともに0.20mmであり、1対のストリップ導体101,102の間隔Gは0.20mmである。1対の第1バイアホール105a,105bの中心間距離Dは3.05mmであり、第1共振体導体104の幅W
1は0.19mmである。
【0087】
当該実施形態に係るプリント回路基板31では、第1共振体導体104が配置される層が、第1乃至第6の実施形態に係るプリント回路基板31と異なっているが、当該実施形態に係るプリント回路基板31は、第1の実施形態と同様の効果を奏している。第1共振体導体104及び第2共振体導体114が、1対のストリップ導体101,102のさらに上方に配置される構成は、当該実施形態に限定されることはなく、第2乃至第6の実施形態にそれぞれ適用してもよい。
【0088】
以上、本発明の実施形態に係るプリント回路基板、光モジュール、及び光伝送装置について説明した。本発明は上記実施形態に限定されることはなく、共振体構造とマイクロストリップ線路形式の差動伝送線路とを有するプリント回路基板に広く適用することが出来る。本発明に係るプリント回路基板は、光伝送装置や光モジュールに備えられるプリント回路基板としたが、他の装置に備えられるプリント回路基板であってもよい。また、本発明の実施形態に係るプリント回路基板は、各チャネルを通じて伝送されるデジタル電気信号のビットレートが25.78Gbit/sとなる場合について説明したが、かかるビットレートに限定されることはなく、さらに高いビットレートに対して好適である。