特許第6784594号(P6784594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784594
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】内燃機関を運転するための方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20201102BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20201102BHJP
   F02D 41/32 20060101ALI20201102BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20201102BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   F02D45/00 368Z
   F02D45/00 368F
   F02D45/00
   F02D45/00 345
   F02D45/00 358
   F02D41/22
   F02D41/32
   F02D43/00 301B
   F02D43/00 301H
   F02P5/15 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-539433(P2016-539433)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公表番号】特表2016-529443(P2016-529443A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2014002374
(87)【国際公開番号】WO2015032487
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2016年4月21日
【審判番号】不服2019-1521(P2019-1521/J1)
【審判請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】102013014674.7
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・デーリング
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・アウアー
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 鈴木 充
【審判官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−303189(JP,A)
【文献】 米国特許第7031828(US,B1)
【文献】 米国特許第5651353(US,A)
【文献】 特開2010−230016(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/124327(WO,A1)
【文献】 特許第2885813(JP,B2)
【文献】 特開平4−103854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00-45/00
F02P 5/145-5/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダを備える内燃機関を運転するための方法、すなわちミスファイアをシリンダ個別式に検出するための方法であって、
前記内燃機関の個々のシリンダにおける個々の排ガスセンサを用いて、前記内燃機関の個々のシリンダの排ガスにおいて、前記個々のシリンダに関して個別に、排ガス実際値が測定技術的に検知され、測定技術的に検知された個々の当該排ガス実際値は排ガス目標値と比較され、それにより前記シリンダのそれぞれに関して、前記排ガス目標値と前記排ガス実際値とのシリンダ個別の偏差を特定し、個々のシリンダに関して個々のシリンダ個別の偏差に基づいて、前記個々のシリンダにおいてミスファイアがあるかどうか個別に決定され、
シリンダの前記排ガス目標値は、少なくとも一つの他のシリンダの排ガス実際値に依存しており、
前記シリンダそれぞれの前記排ガスセンサを介してガイドされる排ガスが、前記排ガスの流れ方向で見て、排ガスタービンの下流において排ガス管路の内部に導かれることを特徴とする方法。
【請求項2】
個々のシリンダに関して、個々の排ガス実際値は、シリンダ個別の排ガスセンサを用いて、測定技術的に検知されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個々のシリンダの前記個々の排ガスセンサにおいて、前記個々の排ガス実際値は、シリンダ個別の排ガス実際値を検知する際、他のシリンダから排出される排ガスからの影響が最小化されるように、シリンダ個別のクランク軸角度領域内でのみ検知されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
個々のシリンダに関する排ガス実際値として、NOx実際値が、NOxセンサとして形成された排ガスセンサを用いて検知され、および/または空燃比もしくは残留酸素含有量が、ラムダセンサとして形成された排ガスセンサを用いて検知され、および/またはCH4実際値および/または粒子実際値および/またはスート実際値および/またはH2実際値が検知されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
排ガス実際値として、実測値が用いられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
排ガス実際値として、測定間隔を介して検知された測定値から、平均値もしくは最大値または時間積分が用いられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
シリンダにおいてミスファイアが存在するとき、当該シリンダへの燃料供給が中断され、および/または当該シリンダにおける点火時期に影響が及ぼされ、および/または当該シリンダにおける空燃比に影響が及ぼされることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記個々の排ガスセンサを較正するために、前記個々の排ガスセンサに基準ガスが供給され、それにより排ガスを前記個々の排ガスセンサから排出し、
前記較正は、前記個々の排ガスセンサに基準ガスを供給する状態で得られる測定値に基づいて行われ、
前記較正の後、前記個々の排ガスセンサに再び排ガスが供給されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
過給機関において、一のシリンダからの排出の下流、かつ、他のシリンダの複数の排ガスの統合部の上流と、少なくとも一つの前記排ガスタービンの下流とに流体技術的な接続が作り出され、前記排ガス実際値を決定するための前記センサは、前記流体技術的な接続内に取り付けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のシリンダを備える内燃機関を運転するための方法、すなわちミスファイアをシリンダ個別式に検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関が満たさなければならない排ガス規制はより厳しくなる傾向にある。このような排ガス規制を満たすための一つの可能性は、内燃機関の作動を、制御を介して最適化することである。このとき内燃機関において、当該内燃機関の個々のシリンダを個別に制御することもすでに知られている。このような排ガス規制を満たすための他の可能性は、内燃機関の排ガスを、排ガス後処理システムを介してガイドし、それにより煤、CO、NOまたは炭化水素などの排ガス成分の排出を低減することである。
【0003】
実践から知られている排ガス後処理システムは、炭化水素に対する高い酸化能力を有している。炭化水素の酸化は発熱を伴って行われるので、排ガス中の炭化水素濃度が高過ぎる場合、排ガス後処理システムが熱的に損傷することがあり得る。
【0004】
排ガス後処理システムを熱的に損傷させることになる排ガス中の高い炭化水素濃度は、例えば内燃機関のシリンダにおけるミスファイアによって生じさせられ得る。このようなミスファイアの際、これらのシリンダ内にもたらされる燃料は燃焼されずに排ガス後処理システムに到達するからである。この場合、排ガス後処理システムに対する損傷の危険は特に高い。
【0005】
特に危機的なのは、排ガス後処理システムの領域内に、例えばCH酸化触媒またはCHO酸化触媒などの酸化触媒を有しているガスエンジンにおけるこのようなミスファイアである。このような酸化触媒は、ガスエンジンのシリンダにミスファイアがあるとき、特に大きな損傷の危険に曝されている。
【0006】
従って、内燃機関のシリンダにおけるミスファイアを検出することは重要である。
【0007】
特許文献1から知られている装置は、当該装置を用いて内燃機関におけるミスファイアが確認され得るものである。その際、温度センサが用いられる。しかしながら温度センサは、温度センサの熱慣性が大きすぎるために、散発的に生じるミスファイアを確実に検出できない。温度センサはむしろ、恒久的に故障しているシリンダを認識するためにのみ用いられ得る。しかしながら内燃機関のシリンダにおいて散発的なミスファイアが生じるまさにそのとき、排ガス後処理システムの領域内で、当該排ガス後処理システムの触媒における温度上昇が過度に大きくなり、それにより排ガス後処理システムの損傷が生じる。従って散発的なミスファイアも安全かつ確実に検出することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第2528785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の点に鑑み、本発明は内燃機関を運転するための新式の方法を創出し、当該方法を用いてミスファイアの検出が改善され得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は請求項1に記載の内燃機関を運転するための方法によって解決される。
【0011】
本発明によれば、少なくとも一つの排ガスセンサを用いて、内燃機関の個々のシリンダの排ガスにおいて、個々のシリンダに関して個別に、少なくとも一つの排ガス実際値が測定技術的に検知され、測定技術的に検知された個々の排ガス実際値は排ガス目標値と比較され、それによりシリンダのそれぞれに関して、排ガス目標値と排ガス実際値とのシリンダ個別の少なくとも一つの偏差を特定し、その際、個々のシリンダに関して単独または個々のシリンダ個別の偏差に基づいて、個々のシリンダにおいてミスファイアがあるかどうか、個別に決定される。
【0012】
本発明により、以下の提案がなされる。すなわち、少なくとも一つの排ガスセンサを用いて内燃機関の個々のシリンダの排ガスを個別に測定技術的に検査し、個々のシリンダの排ガスにおいて少なくとも一つの排ガス実際値を測定技術的に検知することである。個々のシリンダの排ガス実際値を対応する排ガス目標値と比較することにより、当該個々のシリンダにおいてミスファイアがあるかどうか検出され得る。シリンダの排ガスにおいてシリンダ個別式に検知される排ガス実際値を用いて、散発的なミスファイアも確実に認識され得る。排ガス実際値として、個々のシリンダの排ガスにおいて、好適に排ガス中のNOx量またはNOx濃度または酸素含有量が、NOxセンサとして、またはラムダセンサとして形成された少なくとも一つの排ガスセンサによって検知される。これにより散発的なミスファイアが特に確実に特定され得る。個々のシリンダに対する排ガス目標値として好適に、他のシリンダの排ガス実際値もしくは他のシリンダの排ガス実際値の平均値が用いられる。これにより、散発的かつシリンダ個別のミスファイアを特に簡単かつ確実に検出することが可能となる。
【0013】
好適にシリンダにおいてミスファイアがあった場合、当該シリンダへの燃料供給が中断され、および/または当該シリンダにおける点火時期に影響が及ぼされ、および/または当該シリンダにおける空燃比に影響が及ぼされる。これらの措置により、ミスファイアの結果としての排ガス後処理システムの損傷の危険に抗する作用が及ぼされる。
【0014】
本発明の第一の有利な発展形態によれば、個々のシリンダに関して単独または個々の排ガス実際値は、少なくとも一つのシリンダ個別の排ガスセンサを用いて、測定技術的に検知され、個々のシリンダの個々の排ガスセンサにおいて、個々の排ガス実際値はシリンダ個別のクランク軸角度領域内でのみ検知され、それによりシリンダ個別の排ガス実際値を検知する際、他のシリンダから排出される排ガスとの相互作用を最小化する。
【0015】
本発明の第二の代替的な有利な発展形態によれば、複数のシリンダに関して単独または個々の排ガス実際値は、共通の排ガスセンサを用いて測定技術的に検知され、複数のシリンダの共通の排ガスセンサに対して、常に唯一のシリンダの排ガスが周期的に供給され、それによりシリンダ個別の排ガス実際値を検知する際、他のシリンダから排出される排ガスとの相互作用を最小化する。
【0016】
本発明の第一の有利な発展形態も、本発明の第二の代替的な有利な発展形態も、シリンダ個別の排ガス実際値、特に排ガス濃度の値を正確に測定技術的に決定することを可能にし、しかも、一のシリンダの排ガスにおいて行われる排ガス実際値の測定技術的な検知が、他のシリンダから排出される排ガスとの相互作用によって損なわれる危険がない。
【0017】
本発明のさらなる有利な発展形態によれば、個々のシリンダに関する排ガス実際値として、NOx実際値がNOxセンサとして形成された排ガスセンサを用いて検知される。付加的に、または代替的に、個々のシリンダに関する排ガス実際値として、空燃比もしくは残留酸素含有量が、ラムダセンサとして形成された排ガスセンサを用いて検知される。シリンダ個別の排ガス実際値を、NOxセンサまたはラムダセンサを介して測定技術的に検知することは好適である。
【0018】
本発明の好適な発展形態は、従属請求項と以下の詳細な説明に記載されている。本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳しく説明するが、本発明は当該実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る方法を明らかにするために、内燃機関を概略的に示す図である。
図2】本発明に係る方法を明らかにするために、さらなる内燃機関を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は内燃機関を運転するための方法、すなわち特にガスエンジンとして形成された船舶用エンジンにおいて、内燃機関のシリンダにおけるミスファイアをシリンダ個別式に検出するための方法に関する。
【0021】
図1は複数のシリンダ11を備える内燃機関10の概要を極めて概略的に示している。図1において示される6個のシリンダ11の数および当該シリンダ11を二つのシリンダグループへとグループ化することは、純粋に例示的なものである。
【0022】
過給気管路12を起点として、内燃機関10のシリンダ11に過給気が供給され、図1に示す実施の形態において、過給気はターボチャージャ14のコンプレッサ13において圧縮される。このために必要とされるエネルギーは、ターボチャージャのタービン15において、内燃機関10のシリンダ11を出た排ガスが当該タービン15内で膨張させられることにより得られる。すなわち、シリンダ11を出た排ガスは、排ガス管路16を介してターボチャージャ14のタービン15に供給され得る。このようなターボチャージャ14の存在は好ましいが、任意選択的である。ターボチャージャ14のタービン15の下流には、図に示されていない排ガス後処理システムが設けられている。
【0023】
本発明によれば、内燃機関10におけるミスファイアのシリンダ個別式の検出を確立することが提案され、そのために少なくとも一つの排ガスセンサ17を用いて、個々のシリンダ11に関して個々のシリンダ11の排ガスにおいて、個別に、少なくとも一つの排ガス実際値が測定技術的に検知される。測定技術的に検知された個々のシリンダ11の当該個々の排ガス実際値は、対応する排ガス目標値と比較され、それにより個々のシリンダに関して、排ガス目標値と測定技術的に検知された排ガス実際値とのシリンダ個別の偏差を特定する。その後、当該シリンダ個別の偏差に基づいて、個々のシリンダ11に関して、個々のシリンダにおいてミスファイアがあるかどうか、個別に決定される。
【0024】
図1によれば内燃機関10の個々のシリンダ11には、個別の排ガスセンサ17が配設されている。個々のシリンダ個別の排ガスセンサ17は排ガスの流れ方向で見て、個々のシリンダ11の下流で、かつ、シリンダ個別の排ガス排出流路19と排ガス管路16との統合箇所18の上流に設けられている。排ガスセンサ17がシリンダ11の燃焼室内に突出していることも可能である。
【0025】
個々のシリンダ個別の排ガスセンサ17の領域内で、個々のシリンダ11の排ガスに対してシリンダ個別式に測定技術的な検知が行われ、それにより個々のシリンダ11に関して、少なくとも一つのシリンダ個別の排ガス実際値を特定する。このとき、個々のシリンダ11の個々の排ガスセンサ17において、個々の排ガス実際値はシリンダ個別のクランク軸角度領域内でのみ検知され、それによりシリンダ個別式に排ガス実際値を検知する際、他のシリンダから排出される排ガスとの相互作用を最小化するか、または排気弁のバルブオーバーラップによっては完全に回避さえする。
【0026】
個々のシリンダ11の排気弁は異なるクランク軸角度領域内で開き、従って個々のシリンダ11から異なるクランク軸角度領域において排ガスを排出するので、そのようにしてシリンダ個別の排ガス実際値を検知する際、他のシリンダの排ガスが当該実際値の検知を損なうことは回避され得る。
【0027】
図1によればシリンダ個別の排ガスセンサ17を介してガイドされる排ガスは、当該排ガスの流れ方向で見て、タービン15の下流で排ガス管路16内に導かれる。これには、ターボチャージャを介しての圧力降下ゆえに、排ガスが常に個々のシリンダから排ガスセンサを介して、排ガスタービンの下流に向かって流れるという有利点がある。図1の実施の形態は、比較的高速で作動する内燃機関において、ミスファイアをシリンダ選択式に検出することの十分な正確さを保証するために好適である。
【0028】
図2は代替的な構成を示しており、当該構成では、シリンダ11に関するシリンダ個別の排ガス実際値を特定するために、共通の排ガスセンサ17が設けられている。当該排ガスセンサ17は、弁20を介在させた状態でシリンダ個別の排ガス排出流路19とそれぞれ連結されており、それにより共通の排ガスセンサ17に対して、常にただ一つのシリンダ11の排ガスを供給する。このとき弁20の制御は、やはりシリンダ個別のクランク軸角度領域に応じて行われ、それにより個々のシリンダ11の排気弁が排ガスを排出する際、当該シリンダ11に配設された弁20を開くことにより、個々のシリンダ11の排ガスを共通の排ガスセンサ17に供給する。図2の実施の形態においても、共通の排ガスセンサ17を介してガイドされる排ガスは、ターボチャージャ14のタービン15の下流で、排ガス管路16内に導かれる。
【0029】
図2の実施の形態は、比較的低速で作動する内燃機関において好適である。比較的低速で作動する内燃機関では、個々のシリンダの排ガス排出サイクルの頻度が小さいために、単独の排ガスセンサを用いても、ミスファイアをシリンダ選択式に検出することの十分な正確さが保証され得る。
【0030】
実際値を検知するにあたり、図1および図2の変化形態において、シリンダ11から排ガスセンサ17への排ガスの移動時間が考慮され得る。
【0031】
図1のシリンダ個別の排ガスセンサ17、もしくは図2の共通の排ガスセンサ17は、それぞれ排ガス実際値をシリンダ個別式に検知するために用いられ、好ましくはNOxセンサおよび/またはラムダセンサである。図1において、排ガスセンサ17としてNOxセンサが用いられ、図2において、共通の排ガスセンサとしてNOxセンサが用いられるとき、シリンダ個別の排ガス実際値としてNOx実際値が特定され、NOx濃度もNOx量も特定され得る。図1における排ガスセンサ17として、もしくは図2における共通の排ガスセンサ17として、ラムダセンサが用いられるとき、シリンダ個別の排ガス実際値として好適に、空燃比もしくは残留酸素含有量が特定される。
【0032】
NOxセンサもしくはラムダセンサを用いることが好適であるが、排ガスセンサとしてCHセンサまたはHセンサまたはスートセンサも、ミスファイアをシリンダ選択式に検出することに関連して用いられ得る。
【0033】
排ガス実際値を測定技術により特定する際、排ガス実際値の実測値を用いるか、あるいは測定間隔にわたって検知された排ガス実際値の測定値から、平均値もしくは最大値または時間積分を特定し、その後、当該値をシリンダ個別の排ガス実際値として用いることが可能である。同様に測定間隔内で、ターニングポイントをシリンダ個別の排ガス実際値として用いることが可能である。比較的高速で作動する内燃機関では、排ガス実際値として平均値を用いることが好適である。比較的低速で作動する内燃機関では、排ガス実際値として最大値または時間積分またはターニングポイントを用いることが好適である。
【0034】
個々のシリンダ11に関して複数の排ガス実際値が特定され得、それにより当該複数の排ガス実際値を対応する排ガス目標値と比較し、当該比較に応じてシリンダ個別のミスファイアの検出を行う。
【0035】
このときNOx実際値は、残留酸素含有量もしくは空燃比の実際値と共に特定され、対応する目標値と比較され得る。これに関連してNOxセンサおよびラムダセンサは無傷では分離不能なユニットを形成し得る。
【0036】
本発明のさらなる有利な発展形態によれば、内燃機関10のシリンダ11に関する排ガス目標値として、内燃機関10のエンジン動作点に依存している排ガス目標値が用いられる。このようにすれば内燃機関10の全負荷運転と部分負荷運転とに対して、内燃機関10のシリンダ11のための異なる排ガス目標値を用意することが可能である。
【0037】
一のシリンダに対する排ガス目標値として、他のシリンダの排ガス実際値が好適に用いられる。すなわち例えば、一のシリンダに対する排ガス目標値として他のシリンダの排ガス実際値の平均値を用いることが可能である。一のシリンダに関して、個々の排ガス実際値と個々の排ガス目標値との間に、限界値よりも大きい重大な偏差が確認されるとき、当該シリンダにおけるミスファイアが想定される。
【0038】
内燃機関のシリンダにおいて、シリンダ選択的にミスファイアが存在することが認識されるとき、その結果は少なくとも一つのエンジン制御機器に記憶され、それにより後で行うメンテナンスの際、当該結果を読み出して、個々のシリンダにおいて相応のメンテナンス措置を開始する。
【0039】
本発明の有利な発展形態によれば、シリンダにおいてミスファイアの存在が認識されたとき、当該シリンダに対して当該シリンダへの燃料供給が中断され、および/または当該シリンダにおける点火時期に影響が及ぼされ、および/または当該シリンダにおける空燃比に影響が及ぼされる。これにより、内燃機関10に対して後置された排ガス後処理システムの領域における、許容できないほど大きな温度上昇に対抗する措置が取られ得る。
【0040】
ミスファイアをシリンダ選択式に検出するために用いられる排ガスセンサは、作動中に経年劣化プロセスを経るので、個々の排ガスセンサの測定特性曲線は動作持続時間にわたって変化する。従って本発明のさらなる有利な発展形態によれば、単独または個々の排ガスセンサを較正することが行われる。
【0041】
排ガスセンサの較正の開始時に、個々の排ガスセンサに基準ガスが供給されることにより、全ての排ガスが排ガスセンサから排出される。個々の排ガスセンサの較正の間に、当該排ガスセンサにはさらに基準ガスが供給され、それにより、較正の間に当該排ガスセンサに排ガスが供給されることを回避する。較正が行われた後、較正済みとなった排ガスセンサに、再び排ガスが供給され得る。
【0042】
オーバーランカットオフを有する内燃機関において、すなわち、オーバーランモードにおいて内燃機関のシリンダ内で燃料が燃焼されない内燃機関において、排ガスセンサには較正のために過給気が供給され得、その後、過給気は基準ガスとして用いられる。過給気の酸素含有量は、環境空気の酸素含有量に相当し、それによりその後、例えばラムダセンサは、基準ガスとして過給気を用いて、簡単かつ確実に較正され得る。
【0043】
較正すべき排ガスセンサが相応の測定室内に設けられているとき、較正の前に、測定室が基準ガスによって満たされることにより、測定室から排ガスが除去される。すでに述べた通り、好ましくは較正全体の間に、基準ガスが連続的に所定の圧力で測定室内に供給され、それにより較正の間に排ガスが測定室内に到達することを回避する。較正の終了後、排ガスは再び個々の排ガスセンサの測定室内に直接的に導入され得、それにより基準ガスを測定室から排出し、排ガスセンサを再び本来の測定動作のために用いる。
【0044】
較正すべき排ガスセンサが測定室内に配置されているとき、当該測定室は例えばガス透過性膜を介して排ガス流路から遮蔽されていてよい。そのとき測定室に通じる基準ガス管路を介して、較正用ガスが測定室内に導かれ得、測定室に存在する排ガスは、ガス透過性膜を介して排ガス流路内に押し出される。較正の間、好ましくは常に所定の量の較正用ガスが測定室に導入され、それにより、膜を介して測定室内に排ガスが到達しないことを確実にする。較正の終了後、基準ガス管路を介した較正用ガスの供給は停止され、それによりその後、ガス透過性膜を介して再び排ガスが測定室に進入し得、それによりその後、排ガスセンサを再び通常の測定動作のために用いる。このとき排ガスを個々の排ガスセンサの測定室に加速された状態で確実に進入させるために、個々の測定室に通じる基準ガス管路を介して、較正用ガスは個々の測定室から吸引され得る。別個の吸気管路が設けられていてもよく、それにより基準ガスを個々のセンサの測定室から吸引する。基準ガスのためのこのような吸気工程は、制御された状態で行われ得、例えばいずれにせよ存在するエンジン吸気システムの吸気管路を介して、個々の排ガスセンサの個々の測定室に通じる吸引管路における制御可能な弁と共に行われ得る。
【符号の説明】
【0045】
10 内燃機関
11 シリンダ
12 過給気管路
13 コンプレッサ
14 ターボチャージャ
15 タービン
16 排ガス管路
17 排ガスセンサ
18 統合箇所
19 排ガス排出流路
20 弁
図1
図2