特許第6784603号(P6784603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784603
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】分光測定方法および分光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20201102BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20201102BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   G01N21/65
   G01N21/27 Z
   G02B21/00
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-402(P2017-402)
(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公開番号】特開2018-109568(P2018-109568A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】513214136
【氏名又は名称】株式会社右近工舎
(73)【特許権者】
【識別番号】516093312
【氏名又は名称】有限会社オプトニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】特許業務法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 義規
(72)【発明者】
【氏名】熊本 康昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀央
(72)【発明者】
【氏名】右近 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 賢知
(72)【発明者】
【氏名】河村 明徳
(72)【発明者】
【氏名】星野 真一
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 淳一
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−512532(JP,A)
【文献】 特開2011−242392(JP,A)
【文献】 特表2010−523973(JP,A)
【文献】 特表2013−515249(JP,A)
【文献】 特開2016−212154(JP,A)
【文献】 特開2007−232374(JP,A)
【文献】 特表2016−532154(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/100421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/73
G02B 21/00
G01N 15/00−15/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に撮影用照明光と分光用照明光とを照射し、撮影用カメラによって前記試料の形態と前記分光用照明光の照射点の画像を取得しつつ、前記分光用照明光によって励起される光を分光測定する分光測定方法であって、
前記試料に前記撮影用照明光を照射し、前記分光用照明光を複数の箇所に照射する照射工程と、
前記試料の形態の画像と前記分光用照明光の複数の照射点の画像とを取得する画像取得工程と、
前記分光用照明光によって複数の照射点から励起される光をそれぞれ分光測定する分光測定工程と、
取得した前記試料の形態の画像において、画像情報から同一の構造体で構成される画像領域を抽出し、抽出した各画像領域を閉領域として分割する画像処理工程と、
前記分光用照明光の複数の照射点毎の分光測定結果を前記各画像領域に分割された前記試料の形態の画像における前記分光用照明光の複数の照射点に重ね合わせ、前記各画像領域内における前記分光用照明光の複数の照射点の分光測定結果に基づいて前記各画像領域の構造体を特定する領域判定工程と、
から構成される分光測定方法。
【請求項2】
前記領域判定工程において、一つの前記画像領域内における前記分光用照明光の複数の照射点に対する同一の構造体を示す分光測定結果を有する分光用照明光の照射点の数の割合が所定値以上の場合、その前記画像領域の構造体をその分光測定結果の構造体として特定する請求項1に記載の分光測定方法。
【請求項3】
前記照射工程において、前記分光用照明光が照明光分割手段によって複数の分光用照明光に分割されて前記試料に同時に照射され、前記画像取得工程と前記分光測定工程とが同時に実施される請求項1または請求項2に記載の分光測定方法。
【請求項4】
前記画像処理工程において、前記画像情報が、色相、明度、彩度、輝度のうち少なくとも一つの情報から構成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の分光測定方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の分光測定方法を実施する分光測定装置であって、
所定波長の分光用照明光源と、
分光器と、
撮影用カメラと、
撮影用照明光源と、
ピンホールが形成されている全反射ミラーと、
前記所定波長の分光用照明光とそれよりも短い波長の光のみを透過させるダイクロイックミラーと、を備え、
前記全反射ミラーと前記ダイクロイックミラーとが前記分光用照明光の光軸上に配置されており、
前記分光用照明光源からの分光用照明光が、前記全反射ミラーのピンホールを通過して前記試料に照射され、
前記試料に照射された分光用照明光によって励起される光が前記ダイクロイックミラーに反射されて前記分光器に入射され、
前記撮影用照明光源からの撮影用照明光が、前記全反射ミラーに反射されて前記分光用照明光の光軸に前記撮影用照明光の光軸を一致させた状態で前記試料に照射され、
前記試料から反射した撮影用照明光が、その光軸を前記分光用照明光の光軸に一致させた状態で前記全反射ミラーに反射されて前記撮影用カメラに入射される分光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光測定方法および分光測定装置、特にラマン分光測定方法およびラマン分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザー光が物質に照射されると発生するラマン散乱光を利用して、物質の構成を特定するラマン分光測定装置が知られている。ラマン散乱光は、レーザー光の照射点の物質の分子構造に応じてそれぞれ固有のスペクトルで発生する。このため、ラマン分光測定装置は、ラマン散乱光を発生させるレーザー光等の光源、ラマン分光器(検出器)に加えてレーザー光の照射点等を確認するためのカメラと撮影用照明光源を備えたものがある。例えば特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の顕微ラマン分光装置は、カメラのレンズの光軸上にレーザー光用のハーフミラー(半透明鏡)と撮影用照明光源用のハーフミラーとが配置されている。つまり、ハーフミラーにより反射されたレーザー光の一部と別のハーフミラーにより反射された撮影用照明光の一部をカメラとレンズを結ぶ光軸上に一致させている。これにより、特許文献1に記載の顕微ラマン分光装置は、レーザー光の照射点の撮影をより正確に行うことができる。
【0004】
特許文献1に記載の技術は、試料の任意の位置に照射されたレーザー光の照射点を撮影するとともに分光測定によりその照射点における試料の構造体を特定するものである。このため、照射点に異物等が付着していた場合、あるいは、分光測定に基づく構造体識別の正答率が100%でない限り、顕微ラマン分光装置では、照射点の構造体と異なる構造体を示す分光測定結果が得られる可能性がある。しかし、顕微ラマン分光装置は、単独の照射点の分光測定結果に基づく構造体の判定が正しいか否かを判断することができない。また、顕微ラマン分光装置は、走査型の分光測定によって二次元の面状に配置した複数の照射点における分光測定結果から構造体を特定することが可能である。しかし、走査型の顕微ラマン分光装置は、単独の照射点の場合と同様に分光測定結果に基づく判定が正しいか否かを判断することができない。さらに、走査型の顕微ラマン分光装置では、測定が長時間になることに加えて、照射点以外の部分の構造体を周囲の分光測定結果から推測するしかなく、試料において同一の構造体から構成されている領域を正確に特定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−214899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、所定の領域を構成する構造体の特定を短時間で精度よく正確に行うことができる分光測定方法および分光測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、試料に撮影用照明光と分光用照明光とを照射し、撮影用カメラによって前記試料の形態と前記分光用照明光の照射点の画像を取得しつつ、前記分光用照明光によって励起される光を分光測定する分光測定方法であって、前記試料に前記撮影用照明光を照射し、前記分光用照明光を複数の箇所に照射する照射工程と、前記試料の形態の画像と前記分光用照明光の複数の照射点の画像とを取得する画像取得工程と、前記分光用照明光によって複数の照射点から励起される光をそれぞれ分光測定する分光測定工程と、取得した前記試料の形態の画像において、画像情報から同一の構造体で構成される画像領域を抽出し、抽出した各画像領域を閉領域として分割する画像処理工程と、前記分光用照明光の複数の照射点毎の分光測定結果を前記各画像領域に分割された前記試料の形態の画像における前記分光用照明光の複数の照射点に重ね合わせ、前記各画像領域内における前記分光用照明光の複数の照射点の分光測定結果に基づいて前記各画像領域の構造体を特定する領域判定工程と、から構成される。
【0009】
分光測定方法は、前記領域判定工程において、一つの前記画像領域内における前記分光用照明光の複数の照射点に対する同一の構造体を示す分光測定結果を有する分光用照明光の照射点の数の割合が所定値以上の場合、その前記画像領域の構造体をその分光測定結果の構造体として特定するものである。
【0010】
分光測定方法は、前記照射工程において、前記分光用照明光が照明光分割手段によって複数の分光用照明光に分割されて前記試料に同時に照射され、前記画像取得工程と前記分光測定工程とが同時に実施されるものである。
【0011】
分光測定方法は、前記画像処理工程において、前記画像情報が、色相、明度、彩度、輝度のうち少なくとも一つの情報から構成されているものである。
【0012】
前記分光測定方法を実施する分光測定装置であって、所定波長の分光用照明光源と、分光器と、撮影用カメラと、撮影用照明光源と、ピンホールが形成されている全反射ミラーと、前記所定波長の分光用照明光とそれよりも短い波長の光のみを透過させるダイクロイックミラーと、を備え、前記全反射ミラーと前記ダイクロイックミラーとが前記分光用照明光の光軸上に配置されており、前記分光用照明光源からの分光用照明光が、前記全反射ミラーのピンホールを通過して前記試料に照射され、前記試料に照射された分光用照明光によって励起される光が前記ダイクロイックミラーに反射されて前記分光器に入射され、前記撮影用照明光源からの撮影用照明光が、前記全反射ミラーに反射されて前記分光用照明光の光軸に前記撮影用照明光の光軸を一致させた状態で前記試料に照射され、前記試料から反射した撮影用照明光が、その光軸を前記分光用照明光の光軸に一致させた状態で前記全反射ミラーに反射されて前記撮影用カメラに入射されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0014】
分光測定方法においては、一つの構造体から構成される範囲として設定される画像領域内における複数箇所の分光測定結果を画像領域に適用することで、画像領域内の分光用照明光が照射されていない部分を含む画像領域全体の構造体が特定される。これにより所定の領域を構成する構造体の特定を短時間で精度よく行うことができる。また、測定密度を高くして画像領域内を測定する場合よりも測定時間を短くすることができる。
【0015】
分光測定方法においては、画像領域内の各分光測定結果の全体から一つの結果を導きだして判定するので、測定結果に誤判定が含まれていても画像領域全体の構造が正確に特定される。これにより、所定の領域を構成する構造体の特定を正確に行うことができる。
【0016】
分光測定方法においては、一度に画像領域内の複数の箇所に分光用照明光が照射される。これにより、所定の領域を構成する構造体の特定を精度よく行うことができる。また、測定密度を高くして画像領域内を測定する場合よりも測定時間を短くすることができる。
【0017】
分光測定方法においては、試料の形態の画像がその形態に応じて適切に画像領域に分割される。これにより、所定の領域を構成する構造体の特定を精度よく行うことができる。
【0018】
分光測定装置においては、複数の分光用照明光が光学系の影響を受けることなく出力を維持した状態で一度に照射され、分光測定結果を画像領域に適用することで画像領域内の分光用照明光が照射されていない部分を含む画像領域全体の構造体が特定される。これにより、所定の領域を構成する構造体の特定を精度よく正確に行うことができる。また、測定密度を高くして画像領域内を測定する場合よりも測定時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ラマン分光測定装置の一実施形態における全体構成を示す概略図。
図2】ラマン分光測定装置の一実施形態における制御構成を示すブロック図。
図3】ラマン分光測定法の一実施形態における工程を示すフローチャートを表す図。
図4】ラマン分光測定装置の一実施形態におけるレーザー光の照射態様を示す概略図。
図5】ラマン分光測定装置の一実施形態における撮影用照明光の照射態様とその反射光の集光の態様とを示す概略図。
図6】ラマン分光測定装置の一実施形態におけるラマン散乱光の分光器への集光の態様を示す概略図。
図7】(a)ラマン分光測定装置の一実施形態における撮影用カメラによる試料の形態の画像とレーザー光の複数の照射点の画像とを示す図、(b)図7(a)における照射点の2次元配列がマルチ光ファイバで1次元配列に再構成された状態の画像を示す図。
図8】(a)ラマン分光測定装置の一実施形態における撮影用カメラによる画像において画像情報から同一の構造体からなる画像領域を抽出した画像を示す図、(b)図8(a)における画像領域を独立した閉領域として分割した画像を示す図。
図9図8(b)における照射点に分光測定結果を重ね合わせた画像を示す図、(b)図9(a)の第1画像領域における照射点のラマンスペクトルを表すグラフを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
初めに、図1図2とを用いて、分光測定方法を実施する分光測定装置であるラマン分光測定装置の一実施形態であるラマン分光測定装置1について説明する。なお、本実施形態において、分光測定装置としてラマン分光測定装置1について具体的に説明するがこれに限定するものではなく、蛍光分光測定装置等の様々な分光用照明光を用いる分光測定装置においても同様である。
【0021】
図1に示すように、ラマン分光測定装置1は、試料Sに分光用照明光としてレーザー光L1を照射することで試料Sから発生するラマン散乱光L2を検出するものである。ラマン分光測定装置1は、レーザー光源2、レーザー光用第1レンズ3、レーザー光用第2レンズ5、全反射ミラー6、ダイクロイックミラー7、結像レンズ8、ラマン用結像レンズ9、ラマン分光器10、ハーフミラー11、撮影用結像レンズ12、撮影用カメラ13、撮影用照明光源14および制御装置15を具備している。
【0022】
レーザー光源2は、ラマン散乱光L2を発生させるための分光用照明光であるレーザー光L1を発振するものである。レーザー光源2は、所定波長のレーザー光L1を発振する。本実施形態において、レーザー光源2は、短波長(400nmから600nm)レーザー光L1を発振するものとする。なお、本実施形態においてレーザー光源2の媒質は、短波長のレーザー光L1を発振するものであればよい。
【0023】
レーザー光用第1レンズ3は、入射された光を平行光にするレンズである。レーザー光用第1レンズ3は、レーザー光源2からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光源2と隣り合うように配置されている。
【0024】
照明光分割手段であるマイクロレンズアレイ4は、入射されたレーザー光L1を複数のレーザー光L1に分割するものである。マイクロレンズアレイ4は、マイクロレンズが格子状に形成されている。マイクロレンズアレイ4は、レーザー光用第1レンズ3からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光用第1レンズ3と隣り合うように配置されている。マイクロレンズアレイ4は、入射されるレーザー光L1を複数の光路に分割してマイクロレンズアレイ4から出射するように構成されている。なお、本実施形態において、照明光分割手段がマイクロレンズアレイ4から構成されているがこれに限定するものではなく、回折光学素子やマルチ光ファイバなどの光路分割光学系であればよい。
【0025】
レーザー光用第2レンズ5は、入射されたレーザー光L1を集束させるレンズである。レーザー光用第2レンズ5は、マイクロレンズアレイ4からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にマイクロレンズアレイ4と隣り合うように配置されている。レーザー光用第2レンズ5は、入射される複数の光路に分割されたレーザー光L1が所定の集束位置Pを通過するようにレーザー光用第2レンズ5から出射するように構成されている。
【0026】
全反射ミラー6は、中央にピンホール6aが形成されている。全反射ミラー6は、レーザー光用第2レンズ5からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光用第2レンズ5と隣り合うように配置されている。また、全反射ミラー6は、レーザー光用第2レンズ5を透過した複数の光路に分割されたレーザー光L1の集束位置Pとピンホール6aの位置とが一致するように配置されている。つまり、全反射ミラー6は、複数の光路に分割されたレーザー光L1が全反射ミラー6のピンホール6aの位置で集束して全反射ミラー6と干渉することなくピンホール6aを通過するように構成されている。
【0027】
本実施形態において、全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸に対して90度の方向から全反射ミラー6に向かって出射された光線をレーザー光L1の光軸と一致するように全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射させるように構成されている。一方、全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸方向から全反射ミラー6に向かって出射された光線をレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射するように構成されている。なお、本実施形態において、全反射ミラー6、ダイクロイックミラー7およびハーフミラー11の配置角度は、それぞれ45度に限定されるものでは無く、機器構成上の適する配置にすればよい。
【0028】
波長選択ハーフミラーであるダイクロイックミラー7は、所定の波長の光のみを選択的に透過させるものである。本実施形態において、ダイクロイックミラー7は、レーザー光L1の波長とそれよりも短い波長の光のみを選択的に透過するように構成されている。ダイクロイックミラー7は、全反射ミラー6のピンホール6aを通過したレーザー光L1が入射するように、レーザー光L1の光軸上に全反射ミラー6と隣り合うように配置されている。また、ダイクロイックミラー7は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。つまり、ダイクロイックミラー7は、長波長であるラマン散乱光L2をレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に反射するように構成されている。
【0029】
結像レンズ8は、レーザー光L1を集光するレンズである。結像レンズ8は、ダイクロイックミラー7からのレーザー光L1が入射するように、レーザー光L1の光軸上にダイクロイックミラー7と隣り合うように配置されている。また、結像レンズ8は、試料Sに照射されるレーザー光L1の照射点から発生するラマン散乱光L2が結像レンズ8の試料S側から入射される。
【0030】
ラマン用結像レンズ9は、ラマン散乱光L2を集光してラマン分光器10に入射させるレンズである。ラマン用結像レンズ9は、ダイクロイックミラー7からの光が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置にダイクロイックミラー7と隣り合うようにして配置されている。つまり、ラマン用結像レンズ9は、ダイクロイックミラー7によってレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に反射されたラマン散乱光L2が入射するように配置されている。
【0031】
ラマン分光器10は、ラマン散乱光L2からラマンスペクトルを検出するものである。ラマン分光器10は、例えばマルチ光ファイバ、回折格子、エリアセンサとレンズ、ミラー等から構成されている。ラマン分光器10は、ラマン用結像レンズ9からのラマン散乱光L2が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置にラマン用結像レンズ9と隣り合うように配置されている。さらに本実施形態において、不要な短波長光をカットするために、ダイクロイックミラー7とラマン分光器10の間にロングパスフィルタ10aを入れる構成をとることが好ましい。
【0032】
ハーフミラー11は、光の一部を透過させて一部を反射させるものである。ハーフミラー11は、全反射ミラー6で反射される光が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置に全反射ミラー6と隣り合うように配置されている。また、ハーフミラー11は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。つまり、ハーフミラー11は、レーザー光L1の光軸に対して平行な方向に光を反射させる。
【0033】
撮影用結像レンズ12は、撮影用カメラ13に集光するレンズである。撮影用結像レンズ12は、ハーフミラー11によって反射された光が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して平行な位置にハーフミラー11と隣り合うように配置されている。撮影用結像レンズ12は、撮影用カメラ13に集光するように構成されている。
【0034】
撮影用カメラ13は、試料Sの形態の画像とレーザー光L1の照射点の画像とを撮影するものである。撮影用カメラ13は、CMOSカメラ等から構成されている。撮影用カメラ13は、撮影用結像レンズ12からの光が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して平行な位置に撮影用結像レンズ12と隣り合うように配置されている。撮影用カメラ13によって、レーザー光L1の照射点および試料Sの表面状態を視認することができる。
【0035】
撮影用照明光源14は、撮影用照明光L3を発生させるものである。撮影用照明光源14は、全反射ミラー6に撮影用照明光L3を照射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置にハーフミラー11と隣り合うように配置されている。撮影用照明光源14は、撮影用照明光用レンズ14a、ハーフミラー11を介して全反射ミラー6に向かって撮影用照明光L3を出射するように構成されている。
【0036】
図2に示すように、制御装置15は、ラマン分光測定装置1を制御するものである。制御装置15は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成であってもよく、あるいはワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置15は、ラマン分光測定装置1を制御するために種々のプログラムやデータが格納されている。
【0037】
制御装置15は、レーザー光源2と撮影用照明光源14とに接続され、レーザー光源2と撮影用照明光源14とを制御することができる。
【0038】
制御装置15は、ラマン分光器10に接続され、ラマン分光器10を制御することができる。また、制御装置15は、ラマン分光器10から分光測定結果を取得することができる。
【0039】
制御装置15は、撮影用カメラ13に接続され、撮影用カメラ13を制御することができる。また、制御装置15は、撮影用カメラ13から撮影した画像を取得することができる。
【0040】
このように構成されるラマン分光測定装置1は、レーザー光源2から照射されるレーザー光L1がマイクロレンズアレイ4によって複数の光路に分割された状態で一度に試料Sの複数の箇所にレーザー光L1が照射される。合わせて、ラマン分光測定装置1は、撮影用照明光源14からの撮影用照明光L3が全反射ミラー6を介して試料Sに照射される。レーザー光L1の照射により試料Sから発生したラマン散乱光L2は、ダイクロイックミラー7によってラマン分光器10に入射される。ラマン分光測定装置1は、ラマン分光器10によってラマン散乱光L2を分光測定する。一方、撮影用照明光源14から試料Sに照射された撮影用照明光L3は、試料Sに到達すると試料Sからの反射した光(以下、単に「反射光L4」と記す)になる。試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6およびハーフミラー11によって反射されて撮影用カメラ13に入射される。ラマン分光測定装置1は、撮影用カメラ13によって、反射光L4から試料Sの形態の画像とレーザー光L1の複数の照射点の画像とを得る。ラマン分光測定装置1は、制御装置15によって、分光測定結果と試料Sの形態の画像とレーザー光L1の複数の照射点の画像とから試料Sの構造体を特定する。
【0041】
次に、図3から図9を用いて、ラマン分光測定装置1における分光測定方法について説明する。
【0042】
図3に示すように、分光測定方法は、工程K110として、試料Sに撮影用照明光L3を照射し、分光用照明光であるレーザー光L1を複数の箇所に照射する照射工程と、工程K120として、試料Sの形態の画像とレーザー光L1の複数の照射点の画像とからなる画像Vを取得する画像取得工程と、工程K130として、レーザー光L1によって複数の照射点から励起されるラマン光をそれぞれ分光測定する分光測定工程と、工程K140として、取得した画像Vの試料Sの形態の画像において、画像情報である色相、明度、彩度、輝度から同一の構造体の画像を構成している画素の集合体を画像領域として抽出し、抽出した各画像領域を閉領域として分割する画像処理工程と、工程K150として、レーザー光L1の複数の照射点毎の分光測定結果を画像Vにおけるレーザー光L1の複数の照射点の画像に重ね合わせ、分光測定結果に基づいて各画像領域の構造体を特定する領域判定工程と、から構成されている。分光測定方法は、工程K110から順に工程K150まで実施される。
【0043】
図4に示すように、工程K110(図3参照)において、ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1の照射工程として、レーザー光源2で発振されたレーザー光L1(薄墨部分参照)がレーザー光用第1レンズ3に入射される。レーザー光L1は、無限遠にある点光源からの平行光としてレーザー光用第1レンズ3から出射される。レーザー光用第1レンズ3から出射されたレーザー光L1は、マイクロレンズアレイ4に入射される。レーザー光L1は、複数の光路に分割されてマイクロレンズアレイ4から出射される。マイクロレンズアレイ4から出射された複数の光路に分割されたレーザー光L1は、レーザー光用第2レンズ5に入射される。
【0044】
複数の光路からなるレーザー光L1は、全反射ミラー6のピンホール6aの位置で集束するようにレーザー光用第2レンズ5から出射される。レーザー光用第2レンズ5から出射されたレーザー光L1は、全反射ミラー6と干渉することなくピンホール6aを通過する。全反射ミラー6を通過したレーザー光L1は、ダイクロイックミラー7に入射される。短波長光であるレーザー光L1は、長波長光を反射するダイクロイックミラー7に反射されることなく透過する。ダイクロイックミラー7を透過したレーザー光L1は、結像レンズ8に入射される。レーザー光L1は、光路毎に試料Sの表面に集光するように結像レンズ8から出射される。レーザー光L1は、試料Sの複数の箇所に照射される。これにより、レーザー光L1は、試料Sの照射箇所からその分子構造に応じたスペクトルを有するラマン散乱光L2(図6参照)を発生させる。
【0045】
このように、ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1が複数の光路に分割されてもレーザー光用第2レンズ5によって集束されて全反射ミラー6のピンホール6aを干渉することなく通過するように構成されている。また、ラマン分光測定装置1は、ラマン散乱光L2を反射するダイクロイックミラー7によってレーザー光L1の一部が反射されないように構成されている。つまり、ラマン分光測定装置1においては、レーザー光L1の光軸上に配置された全反射ミラー6とダイクロイックミラー7とによってレーザー光L1が遮蔽されない。これにより、光源からのレーザー光L1が試料Sに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【0046】
図5に示すように、工程K110(図3参照)において、ラマン分光測定装置1は、撮影用照明光L3の照射工程として、ハーフミラー11に向かって撮影用照明光源14から撮影用照明光L3が出射される。撮影用照明光L3は、その一部がハーフミラー11を透過して全反射ミラー6に向かって出射される。全反射ミラー6に向かって出射された撮影用照明光L3は、レーザー光L1の光軸と一致するように全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射される。全反射ミラー6で反射された撮影用照明光L3は、レーザー光L1の光軸に沿って長波長光を反射するダイクロイックミラー7に入射される。撮影用照明光L3は、短波長領域の光のみがダイクロイックミラー7を透過して結像レンズ8に入射される。ダイクロイックミラー7を透過した撮影用照明光L3の短波長領域の光は、試料Sの表面に集光するように結像レンズ8から出射される。撮影用照明光L3の短波長領域の光が試料Sに照射されるとともに試料Sの表面で反射する。
【0047】
工程K120(図3参照)において、ラマン分光測定装置1は、画像取得工程として、レーザー光L1と撮影用照明光L3の短波長領域の光との試料Sからの反射光L4が結像レンズ8に試料S側から入射される。(以下、結像レンズ8に光が試料S側から入射される場合、単に「試料側レンズ8」と記す)。すなわち、試料Sからの反射光L4は、試料側レンズ8に入射される。試料Sからの反射光L4は、無限遠にある点光源からの光として試料側レンズ8から出射される。試料側レンズ8から出射された試料Sからの反射光L4は、長波長光を反射するダイクロイックミラー7に入射される。短波長領域の光である試料Sからの反射光L4は、ダイクロイックミラー7を透過する。すなわち、試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6に向かって出射される。全反射ミラー6に向かって出射された試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6によってハーフミラー11に向かって反射される。試料Sからの反射光L4は、その一部がハーフミラー11によって撮影用カメラ13に向かって反射される。
【0048】
図7(a)に示すように、ラマン分光測定装置1は、撮影用カメラ13(図4参照)が反射光L4から画像Vを生成する。画像Vには、試料Sの形態の画像とレーザー光L1の複数の照射点s1・s2・s3・・・s16の画像とが同時に表示されている。さらに画像Vには、試料Sのうち第1構造体Saの部分と第2構造体Sb(薄墨部分)の部分とが表示されている。ラマン分光測定装置1は、制御装置15が撮影用カメラ13から画像Vを取得する。このように、ラマン分光測定装置1は、複数の照射点s1・s2・s3・・・s16における試料Sの表面状態とラマン散乱光L2のラマンスペクトルとを同時に確認することができる(図3参照)。
【0049】
このように構成することで、ラマン分光測定装置1は、試料Sからの反射光L4がダイクロイックミラー7によって反射されないように構成されている。また、ラマン分光測定装置1は、試料Sからの反射光L4が全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射される。つまり、ラマン分光測定装置1においては、レーザー光L1の光軸上に配置された全反射ミラー6とダイクロイックミラー7とによって試料Sからの反射光L4がほとんど阻害されない。これにより、試料Sからの反射光L4がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。なお、本実施形態において、撮影用照明光源14からの撮影用照明光L3と試料Sからの反射光L4とはハーフミラー11によって同じ光軸になるように構成されているがこれに限定されるものではなく、撮影用カメラ13と撮影用照明光源14とを一体的に構成してハーフミラー11を省略した構成でもよい。
【0050】
図6に示すように、工程K130(図3参照)において、ラマン分光測定装置1は、分光測定工程として、試料Sの照射箇所からそれぞれ発生した長波長のラマン散乱光L2が試料側レンズ8に入射される。複数の光路からなるラマン散乱光L2は、試料側レンズ8に入射され、そして出射される。試料側レンズ8から出射されたラマン散乱光L2は、ダイクロイックミラー7に入射される。長波長のラマン散乱光L2は、長波長光を反射するダイクロイックミラー7によって反射される。すなわち、複数の光路からなるラマン散乱光L2は、ダイクロイックミラー7によってラマン用結像レンズ9に入射される。ラマン散乱光L2は、ラマン分光器10の入射面に結像するようにラマン用結像レンズ9から出射される。
【0051】
図7(b)に示すように、ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1の照射点s1・s2・s3・・・s16からのラマン散乱光L2を、ラマン用結像レンズ9を介してマルチ光ファイバ16の一端である2次元配列部分で受光する。ラマン分光測定装置1は、マルチ光ファイバ16の一端で受光した2次元配列を1次元配列に変換してマルチ光ファイバ16の他端から回析格子に出射する。出射された1次元配列に変換されたラマン散乱光L2が回折格子を介してエリアセンサに導かれるように構成されている。これにより、ラマン分光測定装置1は、複数の照射点s1・s2・s3・・・s16のラマン分光スペクトルをラマン分光器10で測定することができる。
【0052】
このように構成することで、ラマン分光測定装置1は、複数の光路に分割されたレーザー光L1によって発生する複数の光路からなるラマン散乱光L2をダイクロイックミラー7によってラマン分光器10にむかって反射させる。つまり、ラマン分光測定装置1においては、発生した複数の光路からなるラマン散乱光L2をラマン分光器10に入射させることができる。従って、ラマン分光測定装置1は、複数の光路に分割されたレーザー光L1が試料Sに照射され、試料からのラマン散乱光L2の分光測定を行う分光測定工程と反射光L4から画像Vを取得する画像取得工程とを同時に実施することができる。
【0053】
図8に示すように、工程K140(図3参照)において、ラマン分光測定装置1の制御装置15は、画像処理工程として、取得した画像Vの試料Sの形態の画像において、画像を構成している最少単位である単位画素(以下、単に「画素」と記す)毎に割り当てられている画像情報に基づいて同一の構造体の範囲を特定する。制御装置15は、隣接する画素間において画像情報である色相、明度、彩度、輝度のうち、任意に選択された少なくとも一つの値が規定値を超えている場合、その隣接している画素がそれぞれ異なる構造体の画像を構成していると判定する。
【0054】
制御装置15は、全ての画素において隣接する画素間での画像情報による判定結果に基づいて境界を設定し、同一の構造体の画像を構成している画素の集合体を画像領域として抽出する(図8(a))。同様にして、制御装置15は、画像Vの試料Sの形態の画像において、他の同一の構造体の画像を構成している画素の集合体を画像領域として抽出し、独立した閉領域である第1画像領域Ar1、第2画像領域Ar2および第3画像領域Ar3に分割する(図8(b))。なお、本実施形態において、隣接する画素間の画像情報が規定値を超えているか否かで画像領域の境界を判定しているがこれに限定するものではなく、画像情報を用いて同一の構造体をあらわす画像領域を抽出できればよい。
【0055】
図9(a)に示すように、工程K150(図3参照)において、ラマン分光測定装置1の制御装置15は、領域判定工程として、画像Vにおいて同一の構造体の閉領域である第1画像領域Ar1、第2画像領域Ar2および第3画像領域Ar3に分割された試料Sの形態の画像にレーザー光L1の複数の照射点s1・s2・s3・・・s16の分光測定結果を重ね合わせる。制御装置15は、同一の構造体からなる第1画像領域Ar1内でのレーザー光L1の複数の照射点s1・s2・s3・s4・s5・s6の分光測定結果のうち同一の構造体を示す分光測定結果である照射点の数の割合が所定値以上であるか否かを判定し、所定値以上の場合、第1画像領域Ar1内の構造体をその分光測定結果の構造体として特定する。
【0056】
ラマン分光器10(図6参照)は、照射点s1・s2・s3・・・s16(図7参照)のラマン散乱光L2のラマンスペクトルを出力する。
図9(b)に示すように、制御装置15は、ラマン分光器10から照射点s1・s2・s3・s4・s5・s6のラマンスペクトルを取得する。照射点s1・s2・s3・s4・s5・s6のうち照射点s4・s5の波形およびピーク位置が照射点s1・s2・s3・s6の波形およびピーク位置と異なる。この結果は、照射点s1・s2・s3・s6(図9(a)Ar1内の黒丸)における構造体と、照射点s4・s5(図9(a)Ar1内の白丸)における構造体とが異なることを示している。
【0057】
本実施形態において、第1画像領域Ar1における6点の照射点s1・s2・s3・s4・s5・s6の分光測定結果のうち照射点s1・s2・s3・s6の4点が同一の第1構造体Saを示す分光測定結果(図9(a)Ar1内の黒丸)である場合、第1画像領域Ar1内の第1構造体Saを示す分光測定結果である照射点の数の割合は、4/6≒0.67=67%になる。所定値を65%とした場合、制御装置15は第1構造体Saを示す分光測定結果である照射点の数の割合が所定値よりも大きいので、第1画像領域Ar1を第1構造体Saであると特定する。同様に、第2画像領域Ar2における5点の照射点s7・s8・s9・s10・s11の分光測定結果のうち照射点s7・s8・s10・s11の4点が同一の第2構造体Sbを示す分光測定結果(図9(a)Ar2内の黒丸)である場合、第2画像領域Ar2内の第2構造体Sbを示す分光測定結果である照射点の数の割合は4/5=0.8=80%になる。従って、制御装置15は、第2画像領域Ar2を第2構造体Sbであると特定する。
【0058】
一方、第3画像領域Ar3における5点の照射点s12・s13・s14・s15・s16の分光測定結果のうち照射点s14・s15・s16の3点が同一の第1構造体Saを示す分光測定結果(図9(a)Ar3内の黒丸)である場合、第3画像領域Ar3内の第1構造体Saを示す分光測定結果である照射点の数の割合は3/5=0.6=60%になる。制御装置15は、第1構造体Saを示す分光測定結果である照射点の数の割合が本実施形態における所定値65%未満なので、第3画像領域Ar3を第1構造体Saであると特定できない。従って、ラマン分光測定装置1は、第3画像領域Ar3についてレーザー光L1の照射工程、画像取得工程、分光測定工程および画像処理工程および領域判定工程を再び実施する。制御装置15は、以上の工程に沿って同一の構造体の閉領域に分割された第1画像領域Ar1、第2画像領域Ar2、第3画像領域Ar3の構造体をその分光測定結果の割合に基づいて判定する。
【0059】
このように構成することで、ラマン分光測定装置1は、試料Sの形態の画像とレーザー光L1の複数の照射点s1・s2・s3・・・s16の画像とを含む画像Vを取得して、試料Sにおけるレーザー光L1の複数の照射点s1・s2・s3・・・s16を観察することができる。さらに、ラマン分光測定装置1は、画像情報に基づいて同一の構造体から構成される範囲として設定される第1画像領域Ar1内、第2画像領域Ar2内、第3画像領域Ar3内のそれぞれの複数箇所の分光測定結果を各画像領域に重ね合わせることで第1画像領域Ar1内、第2画像領域Ar2内、第3画像領域Ar3内のレーザー光L1が照射されていない部分を含む各画像領域全体の構造体が特定される。これにより、第1画像領域Ar1、第2画像領域Ar2、第3画像領域Ar3を構成する構造体の特定を精度よく行うことができる。また、走査型の顕微ラマン分光装置で第1画像領域Ar1、第2画像領域Ar2、第3画像領域Ar3を測定する場合よりも測定時間を短くすることができる。
【0060】
以上、ラマン分光測定装置の一実施形態であるラマン分光測定装置1は、複数の光路に分割したレーザー光L1を試料Sに照射する構成としているがこれに限定するものではない。また、レーザー光L1の光路を基準として、レーザー光源2側の位置に撮影用の光路が設けられ、試料S側の位置にラマン散乱光L2の光路が設けられているがこれに限定するものではない。ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1の光路を基準として、全反射ミラー6を用いて撮影用の光路を確保し、ダイクロイックミラー7を用いてラマン散乱光L2の光路を確保する構成であればよい。上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0061】
1 分光測定装置
S 試料
V 画像
L1 レーザー光
L2 ラマン散乱光
L3 撮影用照明光
L4 反射光
Ar1 第1画像領域
Ar2 第2画像領域
Ar3 第3画像領域
Sa 第1構造体
Sb 第2構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9