特許第6784647号(P6784647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

特許6784647排水分配装置及び有機性排水処理システム
<>
  • 特許6784647-排水分配装置及び有機性排水処理システム 図000002
  • 特許6784647-排水分配装置及び有機性排水処理システム 図000003
  • 特許6784647-排水分配装置及び有機性排水処理システム 図000004
  • 特許6784647-排水分配装置及び有機性排水処理システム 図000005
  • 特許6784647-排水分配装置及び有機性排水処理システム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784647
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】排水分配装置及び有機性排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20201102BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C02F3/12 M
   C02F3/12 S
   C02F1/44 F
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-114338(P2017-114338)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-202371(P2018-202371A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】矢次 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】永江 信也
(72)【発明者】
【氏名】都築 佑子
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0017193(KR,A)
【文献】 特開2011−147868(JP,A)
【文献】 特開平10−128355(JP,A)
【文献】 特開2012−005924(JP,A)
【文献】 米国特許第3482694(US,A)
【文献】 特開昭63−097296(JP,A)
【文献】 特開昭57−081886(JP,A)
【文献】 特開2012−110863(JP,A)
【文献】 特開2005−279386(JP,A)
【文献】 特開2013−000664(JP,A)
【文献】 特開昭61−227894(JP,A)
【文献】 特開2012−076005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/12
C02F 3/02− 3/10
C02F 3/28− 3/34
C02F 3/00
B01D 21/00− 21/01
B01D 21/02− 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を生物処理するための複数の生物処理系列と、各生物処理系列に有機性排水を分配供給する水路との間に設けられる排水分配装置であって、
各生物処理系列が膜分離装置を備える膜分離活性汚泥処理系列であり、
各生物処理系列と前記水路とを仕切る壁体に、各生物処理系列に対応してそれぞれ貫通開口部が設けられ、
各貫通開口部を介して各生物処理系列と前記水路とが連通するように構成されるとともに、前記貫通開口部から前記生物処理系列側または前記水路側に向けて汚泥流出阻止路が延設されている、ことを特徴とする排水分配装置。
【請求項2】
前記貫通開口部から前記生物処理系列側に向けて前記汚泥流出阻止路が延設され、前記汚泥流出阻止路の先端が下方に向けて開口されている、ことを特徴とする請求項1に記載の排水分配装置。
【請求項3】
前記貫通開口部から前記水路側に向けて前記汚泥流出阻止路が延設され、前記汚泥流出阻止路の先端が上方に向けて開口されている、ことを特徴とする請求項1に記載の排水分配装置。
【請求項4】
前記水路に有機性排水が供給される供給部を備え、
各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、有機性排水が供給される際の圧力損失が大きくなるように設定されている、ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の排水分配装置。
【請求項5】
各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部の開口面積が小さい、ことを特徴とする請求項4に記載の排水分配装置。
【請求項6】
各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部から延設される汚泥流出阻止路の長さが長くなるように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載の排水分配装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の排水分配装置を備え、
前記複数の生物処理系列に対して、1つのヘッダ管から分岐させてガスを供給して曝気処理を行う、ことを特徴とする有機性排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水分配装置及び有機性排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性排水を生物処理するために複数の生物処理系列を備えた有機性排水処理システムでは、各生物処理系列に有機性排水を分配供給する水路との間に排水分配装置が設けられている。
【0003】
特許文献1には、各生物処理系列の水位の均一化のために、水路の壁面に各生物処理系列に対応して越流用の開口部を形成し、各開口部から各生物処理系列に流入する有機性排水の量を調整する仕切り弁を備えた排水分配装置が開示されている。水路の壁面に各生物処理系列に対応して越流堰を設け、越流堰の高さを調整可能に構成された排水分配装置でも同様に各生物処理系列への配水量が調整できる。
【0004】
上述した従来の排水分配装置を用いて各生物処理系列への配水量を調整した場合でも、各生物処理系列への配水量に多少のばらつきが生じるのであるが、生物処理系列が処理水槽の底部に曝気装置を備えて好気的生物処理を行なう標準活性汚泥法を採用した生物処理系列である場合には、生物処理後の処理水が共通の越流堰を経て最終沈澱池に導かれるように構成されていたため、各生物処理系列の水位は共通の越流堰の存在によってほぼ均一に保たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−279386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図1に示すように、生物処理系列が、膜分離装置20を備える膜分離活性汚泥処理系列10である場合には、生物処理系列の水位をほぼ均一に保つ機能を発揮していた最終沈澱池が不要となるため、図2(a)に示すような堰3を用いた排水分配装置15を用いた場合の排水量の僅かなばらつきと、膜分離装置20による透過水量のばらつきが合わさって、各生物処理系列10の水位に大きなばらつきが生じる虞があった。
【0007】
そして、ブロワBにより供給された空気を、一つのヘッダ管から分岐させて各生物処理系列10の膜分離装置20に備えた膜ユニットに対する洗浄用の曝気装置へ供給する場合、各生物処理系列10の水位がばらつくと、膜面洗浄風量に偏りが生じ、膜面洗浄風量が不足して生物処理系列10で膜閉塞トラブルが発生する虞があった。
【0008】
この様なトラブルの発生を回避するために、各生物処理系列10に向けて分岐配管された給気管8毎に風量計Fと電油操作弁Vを設置するとともに各生物処理系列に水位計Wを備え、水位計Wや風量計Fの計測値に基づいて電油操作弁Vを木目細かに制御する制御装置を備える必要があり、その結果、設備コストが上昇するという問題があった。
【0009】
なお、図1に示す符号2は最初沈澱池、4は最初沈澱池で固液分離された汚水の分配用の水路、10aは無酸素槽、10bは嫌気槽、10cは膜分離槽(好気槽)、Pはポンプである。
【0010】
そこで、図2(b)に示すように、上述した従来の堰3を用いた排水分配装置15に代えて、各生物処理系列10と水路4とを仕切る壁体40に各生物処理系列10に対応して開閉可能なゲート5を備えた貫通開口部6を設け、各貫通開口部6を介して各生物処理系列10と水路4とが連通するように構成することも考えられる。
【0011】
しかし、各生物処理系列10の膜分離装置20に備えた膜ユニットの目詰まり緩和のため、所定インタバルで膜ろ過と停止の交互運転を行なっているので、膜分離装置20の停止により貫通開口部6から生物処理系列10内への流れが止まると、生物処理系列10を構成する反応タンク内で浮遊する汚泥が逆に貫通開口部6から水路4側に流出するようになる。
【0012】
その結果、水路4の上流側の反応タンクのMLSS濃度は下がりやすく、下流側の反応タンクのMLSS濃度は上がりやすい傾向となり、有機性排水処理システムを安定的に維持管理するのが困難になる。なお、ゲート5を開閉作動させるために膜分離装置20の停止時間以上の時間が必要となるため、膜分離装置20の停止の都度ゲート5を閉じるのは困難であり、頻繁なゲートの開閉は故障の原因にもなり得る。
【0013】
また、大規模な有機性排水処理システムでは、各生物処理系列10に有機性排水を供給する水路4が長くなり、当該水路4の上流側と下流側とで水位に差が生じ、その結果、各生物処理系列10の水位も不均一となり各生物処理系列10で均一な生物処理が困難になる。
【0014】
各生物処理系列10の水位差を低減するために水路4を流れる有機性排水の流速を遅くする手立ても考えられるが、そうすると固形物が水路4内で沈殿するため、水路内を曝気する必要が生じ、生物学的脱窒素・脱りんに対して悪影響を及ぼす。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題に鑑み、複数の膜分離活性汚泥処理系列の汚泥の流出や水位ばらつきを回避可能な排水分配装置及び有機性排水処理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明による排水分配装置の第一特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、有機性排水を生物処理するための複数の生物処理系列と、各生物処理系列に有機性排水を分配供給する水路との間に設けられる排水分配装置であって、各生物処理系列が膜分離装置を備える膜分離活性汚泥処理系列であり、各生物処理系列と前記水路とを仕切る壁体に、各生物処理系列に対応してそれぞれ貫通開口部が設けられ、各貫通開口部を介して各生物処理系列と前記水路とが連通するように構成されるとともに、前記貫通開口部から前記生物処理系列側または前記水路側に向けて汚泥流出阻止路が延設されている点にある。
【0017】
貫通開口部から生物処理系列側または水路側に向けて延設された汚泥流出阻止路を介して、水路から有機性排水が各生物処理系列に供給され生物処理系列の水位がほぼ同水位に保たれる。また、生物処理系列に配された膜分離装置が停止した場合でも、浮遊する汚泥が沈降する際に汚泥流出阻止路の内部を通って水路側に流出するようなことが殆ど回避されるので、水路の上流側の生物処理系列のMLSS濃度も下流側の生物処理系列のMLSS濃度もほぼ一定に維持される。
【0018】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記貫通開口部から前記生物処理系列側に向けて前記汚泥流出阻止路が延設され、前記汚泥流出阻止路の先端が下方に向けて開口されている点にある。
【0019】
汚泥流出阻止路の先端が下方に向けて開口されているので、当該開口の水位より上側で浮遊している汚泥が沈降しても当該開口から汚泥流出阻止路内に進入するようなことがない。
【0020】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記貫通開口部から前記水路側に向けて前記汚泥流出阻止路が延設され、前記汚泥流出阻止路の先端が上方に向けて開口されている点にある。
【0021】
浮遊する汚泥が沈降して貫通開口部を通過して水路側に進入しても、水路側に向けて延設された汚泥流出阻止路を浮遊して上方に向けた開口から水路に移動することは殆どない。
【0022】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記水路に有機性排水が供給される供給部を備え、各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、有機性排水が供給される際の圧力損失が大きくなるように設定されている点にある。
【0023】
供給部から水路に供給された有機性排水が、水路の上流側に位置する生物処理系列から下流側に位置する生物処理系列まで、各貫通開口部を介して配水される際に、供給部に近い貫通開口部ほど圧力損失が大きくなるように設定されているので、汚水の流出が問題となる水路の上流側ほど汚水の流出を抑制する作用が強くなる。さらには、水路の下流側ほど水位が低下しても、各生物処理系列の水位をほぼ一定に設定できるようになる。
【0024】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第四の特徴構成に加えて、各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部の開口面積が小さい点にある。
【0025】
供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部の開口面積を小さくすることにより、供給部に近い貫通開口部ほど圧力損失が大きくなる。
【0026】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第四の特徴構成に加えて、各貫通開口部のうち前記供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部から延設される汚泥流出阻止路の長さが長くなるように構成されている点にある。
【0027】
供給部に近い貫通開口部ほど、貫通開口部から延設される汚泥流出阻止路を長くすることにより、供給部に近い貫通開口部ほど圧力損失が大きくなる。
【0028】
本発明による有機性排水処理システムの特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成を備えた排水分配装置を備え、前記複数の生物処理系列に対して、1つのヘッダ管から分岐させてガスを供給して曝気処理を行う点にある。
【0029】
排水分配装置により各生物処理系列への有機性排水の配水量がほぼ一定に調整されるので、各生物処理系列の水位がほぼ一定となり、個別に曝気量を調整する必要が無く、1つのヘッダ管から分岐させてガスを供給して安価に且つ簡素な構成で曝気処理することが可能になる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した通り、本発明によれば、複数の膜分離活性汚泥処理系列の汚泥の流出や水位ばらつきを回避可能な排水分配装置及び有機性排水処理システムを提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】複数の膜分離活性汚泥処理系列を備えた有機性排水処理システムの説明図
図2】(a)は堰を備えた排水分配装置の説明図、(b)はゲート及び貫通開口部を備えた排水分配装置の説明図
図3】本発明による有機性排水処理システムの説明図
図4】(a)は流入水路水位とゲート開口面積の説明図、(b)は本発明による排水分配装置の説明図
図5】(a)は別実施形態を示す排水分配装置の縦断面説明図、(b)は同平面説明図、(c)はさらに他の別実施形態を示す排水分配装置の縦断面説明図、d)は同平面説明図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明による排水分配装置及び有機性排水処理システムの実施形態を説明する。
図3には、本発明による有機性排水処理システム1が示されている。当該有機性排水処理システム1は、下水道などから流入した有機性排水である汚水を固液分離する最初沈澱池2と、最初沈澱池2で固液分離された汚水を生物処理する複数の生物処理系列10と、各生物処理系列10に汚水を供給する水路4を備えている。
【0033】
各生物処理系列10は、コンクリート躯体で構成され、長手方向で隣接するように並置された複数の反応タンクに構築されている。反応タンクの一端側の壁体が水路4の長手方向壁体40と接するように配置され、最初沈澱池2で固液分離された汚水は、水路4の上流端に設置された供給部4aから水路4に流入し、当該壁体40に設けられた排水分配装置15を介して水路4から各反応タンクに流入する。後述するように、当該排水分配装置15を設けることにより、各生物処理系列10からの汚泥の流出が抑制されるとともに、各生物処理系列10の液位がほぼ一定に維持される。
【0034】
各反応タンクは隔壁11を介して上流側から無酸素槽10a、嫌気槽10b、膜分離槽(好気槽)19cの各領域に区画され、膜分離槽19cには複数の膜分離装置20が浸漬配置されている。膜分離装置20には吸引用のポンプPが接続され、何れかの反応タンクに設けられた水位センサWの値に基づいて膜透過水量を制御すべく、ポンプPの吸引圧が調整される。そして、膜分離槽19cにはブロワBに接続された一つのヘッダ管80に分岐接続された給気管8を介して好気処理用の曝気装置及び膜分離装置20の下部に設置された膜洗浄用の曝気装置に空気が供給されるように構成されている。
【0035】
図外の循環用ポンプを介して膜分離槽19cから無酸素槽10aに汚泥が返送されるように構成され、無酸素槽10aで脱窒素処理が行なわれ、嫌気槽10bで脱リン処理が行なわれ、膜分離槽19cで硝化処理が行なわれる。
【0036】
排水分配装置15により各生物処理系列10の液位がほぼ一定となるので、各反応タンクに個別に水位計を設けたり、個別に曝気量を調整したりする必要が無く、1つのヘッダ管80から分岐させてガスを供給して安価に且つ簡素な構成で曝気処理することが可能になる。なお、図3には、ヘッダ管80に曝気量を調整する電油操作弁を備えた構成を示しているが、ブロワBを回転数制御して送風量を調整してもよい。
【0037】
以下に、排水分配装置15について詳述する。
上述したように排水分配装置15は、有機性排水を生物処理するための複数の生物処理系列10と、各生物処理系列10に有機性排水を分配供給する水路4との間に設けられている。
【0038】
図4(b)に示すように、各生物処理系列10と水路4とを仕切る壁体40に、各生物処理系列10に対応して貫通開口部6が設けられ、各貫通開口部6を介して各生物処理系列10と水路4とが連通するように構成されている。
【0039】
各貫通開口部6には、貫通開口部6を開閉可能なゲート5が設けられるとともに、貫通開口部6から生物処理系列10側に向けて汚泥流出阻止流路として機能する管路7が延設され、その管路7の先端が下方に向けて屈曲し下方に向けて開口されている。
【0040】
最初沈澱池2で固液分離された汚水は、水路4の上流端に備えた供給部4aから水路4に流入するように構成され、水路4を流れる汚水は、供給部4aが設けられた上流端から下流端に向けて配置された各生物処理系列10を構成する反応タンクに供給されるため、水路4の汚水水位は上流端から下流端に向けて次第に低下し、水路4の下流側ほど水頭値が低くなる。
【0041】
つまり、各貫通開口部6を介して配水される際に、供給部4aに近い貫通開口部6ほど圧力損失が大きくなるように設定されているので、汚水の流出が問題となる水路4aの上流側ほど汚水の流出を抑制する作用が強くなる。そして、供給部4aから遠い貫通開口部6ほど圧力損失が小さくなるように設定されているので、水路4の下流側ほど水位が低下しても、各生物処理系列の水位をほぼ一定に設定できるようになる。
【0042】
具体的に、図4(a)に示すように、上流側の貫通開口部6の開口面積が下流側の貫通開口部6の開口面積よりも小になるように設定され、各貫通開口部6の最下点の高さが同じになるように設定されている。
【0043】
供給部4aから水路4に供給された有機性排水が、水路4の上流側に位置する生物処理系列10から下流側に位置する生物処理系列10まで、各貫通開口部6を介して配水される際に、供給部4aに近い貫通開口部6ほど圧力損失が大きくなるように設定されているので、水路4の下流側ほど水位が低下しても、上流側の生物処理系列を構成する各反応タンクからの汚水の流出が抑制され、また、各反応タンクの水位をほぼ一定に維持できるようになる。
【0044】
なお、当該構成は一例であり、供給部4aに近い貫通開口部6ほど、有機性排水が供給される際の圧力損失が大きくなるように設定されていればこの様な構成に限るものではない。例えば、貫通開口部6の開口面積を等しくして、管路7の長さを供給部4aに近い管路7ほど長くなるように設定してもよい。また、貫通開口部6の開口面積を等しくして、管路7の流路断面積を供給部4aに近い管路7ほど小さくなるように設定してもよい。
【0045】
上述した膜分離槽19cは、常時連続運転されるものではなく、分離膜表面に堆積したファウリング物質等を除去するために、一定時間(本実施形態では9分)運転した後に所定時間(本実施形態では1分)休止して曝気のみ行なうリフレッシュ運転を行なうように運転管理されている。
【0046】
そのような膜分離槽19cの休止時には、汚水の流れが滞り、汚泥が反応タンク内で浮遊しつつ汚泥濃度の低い水路4側に向けて拡散し、その結果、水路4に沿う上流側の反応タンク内のMLSS濃度が低下し、下流側の反応タンク内のMLSS濃度が上昇するというアンバランスな状態が発現する虞がある。
【0047】
しかし、貫通開口部6から生物処理系列10側に向けて管路7が延設され、その管路の先端が下方に向けて屈曲し開口されているため、膜分離装置20が停止した場合でも、浮遊する汚泥が沈降する際に管路7の内部を通って水路4側に流出するようなことが殆ど回避されるようになる。その結果、水路4の上流側から下流側にかけて設けられた各反応タンクのMLSS濃度の変動が抑制され、略均一に維持されるので、均質な生物処理が可能になる。
【0048】
特に、管路7の先端が下方に向けて屈曲し、下方に向けた開口部7aが形成されているので、当該開口部7aの水位より上側で浮遊している汚泥が沈降しても当該開口部7aから管路内に進入するようなことがない。そして、貫通開口部6の下端部の高さは、反応タンクの底部から運転目標水深の80%以上の高さであることが好ましく、管路7の先端側の開口部7aの高さは、膜分離装置20が例えば薬液洗浄のために長時間(本実施形態では2時間)停止した場合に沈降する汚泥の界面より高い位置に設定されていればよい。
【0049】
なお、少なくとも貫通開口部6から生物処理系列10側に向けて管路7が延設されていればよく、管路7の先端が下方に開口することなく管路7の軸心に垂直に開口した態様であっても、下方に向けて屈曲することなく下方に向けて開口された態様であってもよい。
【0050】
各貫通開口部6のうち汚泥が水路4に流出する傾向が強い供給部4aに近い貫通開口部6ほど、貫通開口部6から延設される管路7の長さLが長くなるように構成されていると供給部4aに近い貫通開口部6ほど圧力損失が大きくなるので、より好ましい。
【0051】
さらに、貫通開口部6から生物処理系列10側に向けて管路が延設された態様に代えて、水路4側に向けて管路7が延設されていてもよい。
【0052】
例えば、図4(a),(b)に示すように、貫通開口部6から水路4側に向けて管路7が延出し、さらに水路4の長手方向に沿って水平方向に延設され、管路7の先端が上方に向けて開口されていてもよい。浮遊する汚泥が沈降して貫通開口部6を通過して水路4側に進入しても、水路4側に向けて延設された管路7を浮遊して上方に向けた開口部7aから水路4に移動することは殆どない。
【0053】
また、上述した実施形態では、汚泥流出阻止路を管路7で構成される態様を説明したが、図4(c),(d)に示すように、管路7に代えて水路4内を仕切る壁面により水路7を汚泥流出阻止路として機能させてもよい。
【0054】
上述した実施形態は、本発明の一例であり、該記載により本発明が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1:有機性排水処理システム
2:最初沈澱池
4:水路
4a:供給部
5:ゲート
6:貫通開口部
7:汚泥流出阻止路(管路)
10:生物処理系列(膜分離活性汚泥処理系列)
10a:嫌気槽
10b:無酸素槽
10c:膜分離槽
15:排水分配装置
20:膜分離装置
40:壁体
B:ブロワ
P:ポンプ
W:水位計
図1
図2
図3
図4
図5