特許第6784651号(P6784651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784651
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/01 303
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-151420(P2017-151420)
(22)【出願日】2017年8月4日
(65)【公開番号】特開2019-30970(P2019-30970A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】赤井 和彦
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−196127(JP,A)
【文献】 特開2007−105927(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0046900(US,A1)
【文献】 特開2006−129369(JP,A)
【文献】 特開2017−43057(JP,A)
【文献】 特開2016−215522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主走査方向に延在させて配設され、記録媒体を支持するプラテンと、
(b)該プラテンに沿って主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、
(c)該キャリッジに搭載され、キャリッジの移動に伴って記録媒体に向けてインク滴を吐出し、記録を行う記録ヘッドと、
(d)前壁、頂壁及び背壁を備え、装置本体を包囲する筐体と、
(e)前記前壁に配設され、筐体内の状態を観察するための透過窓と、
(f)筐体内の所定の箇所に配設され、光源によって発生させた光を放射光として放射する照明装置と、
(g)該照明装置によって放射された放射光を反射し、反射光によって筐体内の被照射物を照射する反射装置とを有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記反射装置は、照明装置から放射された放射光を拡散させて反射する請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記反射装置は前記プラテンの上方に配設される請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記照明装置は頂壁に、前記反射装置は頂壁及び前壁の境界部分に配設される請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記照明装置は、光源によって発生させられた光を、ほぼ平行光線から成る放射光にする光路変更部を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記照明装置は前壁に、前記反射装置は頂壁に配設される請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記反射装置は頂壁に、前記照明装置は反射装置の下方に配設される請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記透過窓は、下端が上端より背壁側に位置させられる請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置、例えば、インクジェットプリンタにおいては、キャリッジがレールに沿って移動させられ、キャリッジに搭載された記録ヘッドからインク滴が吐出され、記録媒体に付着させられることによって文字、イメージ等の画像が形成され、印刷が行われるようになっている。
【0003】
ところで、前記インクジェットプリンタにおいては、インクジェットプリンタの本体、すなわち、装置本体を包囲する筐体内の状態、例えば、印刷が行われた直後の記録媒体の状態を観察すると、印刷の不良を早期に発見することができる。
【0004】
そのために、前記筐体に透明カバーが配設され、操作者は、透明カバーを介して筐体内を目視することによって記録媒体の状態を観察することができる。
【0005】
ところが、筐体内は暗いので、視認性が低く、操作者は記録媒体の状態を十分に観察することができない。
【0006】
そこで、レジストレーションを行うためにキャリッジに配設された検査用のセンサの発光素子であるLEDを利用し、キャリッジを移動させながら記録ヘッドによる記録を行うとともに、LEDを発光させ、発生させられた光を記録媒体に照射するようにしたインクジェットプリンタが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
該インクジェットプリンタにおいては、記録ヘッドのノズルからのインク滴の吐出に同期させてLEDが発光させられ、発生させられた光が記録媒体に照射されるので、操作者は、透明カバーを介して筐体内を目視することによって、記録媒体の状態を観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−105927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来のインクジェットプリンタにおいては、検査用のセンサの発光素子であるLEDの発光強度が低いだけでなく、発生させられた光が照射される範囲が狭いので、キャリッジの周辺だけが明るくなり、キャリッジから離れた箇所における記録媒体の状態を観察することができない。キャリッジから離れた箇所における記録媒体の状態を観察しようとすると、キャリッジを移動させなければならず、インクジェットプリンタの操作が煩わしい。
【0010】
また、LEDの光は記録媒体にスポット的に照射されるので、照射むらが発生し、記録媒体の状態を精度良く観察することができない。
【0011】
そして、記録媒体に照射されたLEDの光が記録媒体上で反射したときの反射光の強度が大きいので、操作者が記録媒体を見る角度によっては、反射光が目に入り、眩しくて、記録媒体の状態を観察することができなくなってしまう。
【0012】
さらに、用紙詰まり等の不具合が生じた場合には、キャリッジが停止させられるので、LEDの光を不具合が生じた箇所に照射することができず、不具合の状態を観察することができない。
【0013】
本発明は、前記従来のインクジェットプリンタの問題点を解決して、操作者が筐体内の状態を十分に観察することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのために、本発明のインクジェットプリンタにおいては、主走査方向に延在させて配設され、記録媒体を支持するプラテンと、該プラテンに沿って主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、該キャリッジに搭載され、キャリッジの移動に伴って記録媒体に向けてインク滴を吐出し、記録を行う記録ヘッドと、前壁、頂壁及び背壁を備え、装置本体を包囲する筐体と、前記前壁に配設され、筐体内の状態を観察するための透過窓と、筐体内の所定の箇所に配設され、光源によって発生させた光を放射光として放射する照明装置と、該照明装置によって放射された放射光を反射し、反射光によって筐体内の被照射物を照射する反射装置とを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インクジェットプリンタにおいては、主走査方向に延在させて配設され、記録媒体を支持するプラテンと、該プラテンに沿って主走査方向に移動自在に配設されたキャリッジと、該キャリッジに搭載され、キャリッジの移動に伴って記録媒体に向けてインク滴を吐出し、記録を行う記録ヘッドと、前壁、頂壁及び背壁を備え、装置本体を包囲する筐体と、前記前壁に配設され、筐体内の状態を観察するための透過窓と、筐体内の所定の箇所に配設され、光源によって発生させた光を放射光として放射する照明装置と、該照明装置によって放射された放射光を反射し、反射光によって筐体内の被照射物を照射する反射装置とを有する。
【0016】
この場合、筐体内の所定の箇所に照明装置が配設され、照明装置において光源によって発生させられた光が放射光として放射され、放射された放射光が、反射装置によって反射され、反射光によって筐体内の被照射物が照射される。
【0017】
したがって、照明装置から放射された放射光の向きが反射装置によって変えられ、反射光によって被照射物が照射されるので、被照射物が筐体内のいずれの箇所にあっても照射することができ、操作者は筐体内の状態を十分に観察することができる。
【0018】
また、照明装置から放射された放射光ではなく、反射装置によって反射された反射光によって被照射物が照射されるので、照射むらが発生することがなく、筐体内の状態を精度良く観察することができる。
【0019】
さらに、反射光によって被照射物が照射されたときに、被照射物上で反射される反射光の強度が小さくなるので、反射光が操作者の目に入っても、操作者は、眩しくなく、筐体内の状態を確実に観察することができる。
【0020】
そして、照明装置を筐体内の任意の箇所に配設することができるので、照明装置の配置の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態における照明装置の斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態における反射装置の要部断面図である。
図5】本発明の第2の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部断面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態における照明装置及び反射装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのインクジェットプリンタについて説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態におけるインクジェットプリンタの斜視図である。
【0024】
図において、10はインクジェットプリンタ、Csは該インクジェットプリンタ10の本体、すなわち、装置本体を包囲する筐体、Frはインクジェットプリンタ10のフレームであり、該フレームFrは、アッパフレームFr1及びロワフレームFr2から成る。
【0025】
前記アッパフレームFr1は、インクジェットプリンタ10を前側(図2において手前側)から見たときの左端から右端にかけて延在させて配設された受け板PB、該受け板PBの左端から立ち上げて形成された第1の主支持部としてのサイドプレートPL1、前記受け板PBの右端から立ち上げて形成された第2の主支持部としてのサイドプレートPR1、前記サイドプレートPL1より所定の距離だけ右方において受け板PBから立ち上げて形成された第1の副支持部としての枠体PL2、及び前記サイドプレートPR1より所定の距離だけ左方において受け板PBから立ち上げて形成された第2の副支持部としての枠体PR2を備える。
【0026】
前記ロワフレームFr2は、インクジェットプリンタ10の左端の近傍と右端の近傍との間に所定の距離を置いて平行に配設され、アッパフレームFr1を支持する台座35、36を備え、該台座35、36間に、印刷が終了した後の記録媒体を巻き取るための図示されない巻取装置が配設される。
【0027】
前記筐体Csは、前記アッパフレームFr1を包囲する外装体であり、枠体PL2、PR2間を包囲する第1の筐体部Cs1、サイドプレートPL1と枠体PL2との間を包囲する第2の筐体部Cs2、及びサイドプレートPR1と枠体PR2との間を包囲する第3の筐体部Cs3から成る。また、前記筐体Csは、頂壁Wt、該頂壁Wtの前端部から斜め下方に向けて延在させられる前壁Wf、及び頂壁Wtの後端部から垂下させて延在させられる背壁Wrを備え、前記前壁Wfにおける枠体PL2、PR2間に、光透過材料(透明又は半透明の材料)で形成された、筐体Cs内の状態を観察するための透過窓としての板状のカバー28が、上端に配設されたヒンジhgによって開閉自在に配設される。前記カバー28は、通常は自重で閉状態に置かれ、操作者が下端を持ち上げることによって開状態に置かれる。そして、前記第2、第3の筐体部Cs2、Cs3における第1の筐体部Cs1側の縁部に、閉状態に置かれたカバー28の傾斜角度を保持するための支持片29が、第1の筐体部Cs1に向けて突出させて形成される。なお、サイドプレートPL1、PR1によって筐体Csの側壁が構成される。
【0028】
前記筐体Cs内において、サイドプレートPL1、PR1間にレール15が配設(架設)され、該レール15に沿ってキャリッジ17が左右方向、すなわち、主走査方向に移動自在に配設される。そのために、前記サイドプレートPR1に図示されない駆動側のプーリが、サイドプレートPL1に図示されない従動側のプーリが回転自在に配設され、駆動側のプーリと従動側のプーリとの間に図示されない無端ベルトが走行自在に張設され、該無端ベルトの所定の箇所に前記キャリッジ17が取り付けられる。該キャリッジ17には、一つ又は複数の、本実施の形態においては、複数の記録ヘッドHdi(i=1、2、…、n)が搭載される。
【0029】
前記キャリッジ17は、レール15より前方に形成された第1の部分としての主ケース17A、及び該主ケース17Aの上端から後方に向けて延在させて形成された第2の部分としての副ケース17Bを備え、前記主ケース17A内に、前記記録ヘッドHdiがノズル面を下方に向けて配設される。なお、主ケース17Aは、前壁Wfと同じ角度で傾斜させて形成され、記録ヘッドHdiの上方を覆う傾斜壁部Vfを備える。
【0030】
前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に延在させて図示されないリニアスケールが配設され、該リニアスケールの目盛りが、キャリッジ17に配設された図示されないエンコーダによって読み取られ、該エンコーダのセンサ出力に基づいてキャリッジ17の位置が検出される。また、キャリッジ17の位置の変化及び時間に基づいてキャリッジ17の移動速度が算出される。
【0031】
したがって、駆動源としての図示されないキャリッジモータを駆動することによって前記駆動側のプーリを回転させ、無端ベルトを走行させると、キャリッジ17を主走査方向に移動させ、各記録ヘッドHdiを主走査方向に移動させることができる。このとき、キャリッジ17の移動に伴って各記録ヘッドHdiから各色のインク滴を記録媒体に向けて吐出し、記録媒体に付着させることによって、記録媒体に文字、イメージ等の画像が形成される。これにより、記録ヘッドHdiによって記録が行われる。なお、本実施の形態においては、記録媒体として、用紙のほかに、塩化ビニル、PET等の樹脂製のフィルム等を使用することができる。
【0032】
また、前記レール15に沿って、かつ、レール15と平行に、すなわち、主走査方向に延在させて、プレート状の形状を有するプラテン25が配設される。該プラテン25は、第1の筐体部Cs1内において、前記受け板PB上における枠体PL2、PR2間に延在させて配設され、プラテン25上を搬送される記録媒体を支持する。
【0033】
そして、前記プラテン25の下方に、記録媒体を負圧によってプラテン25に引き寄せるための空気吸引装置38が配設される。該空気吸引装置38は、プラテン25の下方の全域に形成され、複数の部屋に区画された吸引室39、該各吸引室39の前面に配設された図示されない吸引用のファン等から成る。前記プラテン25には複数の孔が形成され、吸引用のファンによって各孔を介して吸引室39に吸引された筐体Cs内の空気が、図示されないダクトを介して筐体Cs外に排出される。これにより、記録媒体はプラテン25によって平坦に支持される。
【0034】
また、前記第1の筐体部Cs1内におけるプラテン25より後方に、第1の媒体案内部としてのリヤペーパガイド26が配設され、該リヤペーパガイド26は、図示されない繰出しロールから繰り出された記録媒体を前記プラテン25に案内する。そのために、背壁Wrにおけるリヤペーパガイド26と対向する箇所に媒体導入口Eiが形成され、前記リヤペーパガイド26とプラテン25との間に、搬送部材としての搬送ローラ対30が回転自在に配設される。
【0035】
該搬送ローラ対30は、プラテン25に隣接させて、インクジェットプリンタ10の走査方向における複数箇所に、回転自在に配設された第1のローラとしての搬送ローラ31、及び該搬送ローラ31より上方において回転自在に配設され、記録媒体を搬送ローラ31に押し付ける第2のローラとしてのピンチローラ32から成る。搬送用の駆動部としての図示されない搬送モータを駆動し、搬送ローラ31を回転させると、ピンチローラ32が連れ回りで回転させられる。
【0036】
これにより、記録媒体は、搬送ローラ31とピンチローラ32とによって挟まれた状態で繰出しロールから繰り出され、リヤペーパガイド26に沿って搬送され、プラテン25上に送られる。そして、記録媒体と記録ヘッドHdiのノズル面とが対向させられ、記録ヘッドHdiからインク滴が吐出され、記録媒体に付着させられる。
【0037】
この場合、前記搬送モータを駆動して記録媒体を所定の距離搬送した後、搬送モータを停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。1走査が終了すると、前記搬送モータを再び駆動して記録媒体を所定の距離搬送した後、搬送モータを停止させ、その状態でキャリッジ17を移動させ、記録ヘッドHdiからインク滴を吐出することによって、1走査が行われ、1ライン分の画像が形成される。この動作を繰り返すことによって、記録媒体に画像が形成され、印刷が行われる。
【0038】
なお、本実施の形態においては、シングルパス方式によって印刷が行われるようになっているが、マルチパス方式によって印刷を行う場合は、前記記録媒体を搬送する距離が記録ヘッドHdiの図示されないノズル列より短くされ、複数の走査を行うことによって1ライン分の画像が形成される。
【0039】
また、前記第1の筐体部Cs1内におけるプラテン25より前方に、印刷が行われた後の記録媒体を筐体Cs外に案内し、排出するための第2の媒体案内部としてのフロントペーパガイド33が配設される。該フロントペーパガイド33は、前記プラテン25から水平方向に排出された記録媒体を下方に向けて案内するために、湾曲した形状を有する。そして、カバー28の下端とフロントペーパガイド33との間に媒体排出口Eoが形成される。
【0040】
したがって、媒体導入口Eiから筐体Cs内に供給された記録媒体は、リヤペーパガイド26によって案内されてプラテン25に送られ、プラテン25上において、記録ヘッドHdiから吐出されたインク滴が付着させられて記録が行われ、印刷が行われた後、フロントペーパガイド33によって案内されて媒体排出口Eoから筐体Cs外に排出され、ロワフレームFr2に配設された前記巻取装置に送られて、巻き取られる。
【0041】
なお、前記リヤペーパガイド26、プラテン25及びフロントペーパガイド33には加熱部材としての図示されないヒータが埋設され、記録媒体が、リヤペーパガイド26において予熱され、プラテン25及びフロントペーパガイド33において加熱され、これにより、記録媒体に付着したインク滴が乾燥するのが促進される。
【0042】
また、第1、第3の筐体部Cs1、Cs3内には、記録ヘッドHdiの図示されないノズルを良好な状態に保持するために、各記録ヘッドHdiのノズル面を払拭するワイパー、ノズルの乾燥を防止するキャップ、ノズル内で粘度が高くなったインクを吸引する吸引機構等から成る図示されないメンテナンス装置が配設される。そして、第3の筐体部Cs3の所定の箇所に、操作ボタン等から成る操作部、及び表示ランプ等から成る表示部を備えた操作パネル43が配設される。
【0043】
ところで、前記インクジェットプリンタ10においては、筐体Csの前壁Wfにおける枠体PL2、PR2間に前記カバー28が形成されているので、筐体Cs内の状態、例えば、画像が形成され、印刷が行われた記録媒体の状態、記録ヘッドHdiによる記録の状態、メンテナンス装置によるメンテナンスの状態、用紙詰まり(ジャム)等の不具合が生じた場合における不具合の状態等をカバー28を介して観察することができる。
【0044】
ところが、筐体Cs内が暗いと、視認性が低く、筐体Cs内の状態を十分に観察することができない。
【0045】
そこで、本実施の形態においては、筐体Cs内を明るくするために、前記筐体Cs内の所定の箇所、本実施の形態においては、頂壁Wtの内周面における前壁Wf側の近傍に複数の照明装置45が、頂壁Wtと前壁Wfとの境界部分としての連結部ptの内周面に反射装置46が配設されるようになっている。
【0046】
そのために、前記第1の筐体部Cs1における頂壁Wtの所定の箇所、本実施の形態においては、記録媒体の搬送方向、すなわち、副走査方向における中央部より所定の距離だけ前壁Wf側の位置に、前側を高く、後側を低くすることによって段差部psが形成される。そして、前記各照明装置45が、段差部psに後端(副走査方向における上流側の端部)を当接させて、主走査方向において隣接させて頂壁Wtの内周面に取り付けられる。
【0047】
各照明装置45は、主走査方向(照明装置45の長手方向)に延在させて形成された光源ユニット48、及び該光源ユニット48を包囲する包囲体49を備える。
【0048】
また、反射装置46は、頂壁Wtと前壁Wfとの前記連結部ptの内周面に沿って湾曲させて形成された反射部材51を備える。
【0049】
各照明装置45の光源ユニット48によって発生させられた光は、放射光として反射装置46に向けて放射され、反射装置46は、照明装置45から放射された放射光を、反射部材51によって反射し、反射光を主として下方に向けて出射し、反射光によって筐体Cs内の各部位の、例えば、記録媒体、キャリッジ17、記録ヘッドHdi、プラテン25、メンテナンス装置等の被照射物を照射する。
【0050】
この場合、光源ユニット48に配設された、後述される光源としての複数の発光素子、本実施の形態においては、各LED54(図3)が発光させられ、各LED54の光が照射される範囲が広いので、筐体Cs内の全体が明るくなり、操作者は筐体Cs内の状態を確実に観察することができる。すなわち、キャリッジ17の周辺だけでなく、キャリッジ17から離れた箇所におけるプラテン25の状態、印刷が行われた直後の記録媒体の状態、メンテナンス装置によるメンテナンスの状態等を観察することができる。さらに、インクジェットプリンタ10において用紙詰まり等の不具合が生じた場合においても、不具合の状態を観察することができる。
【0051】
また、光源ユニット48を構成するLED54は極めて小さいので、照明装置45を小型化し、薄型化することができる。さらに、LED54は、発光に伴う発熱量が少なく、消費電力が小さいので、各LED54の発光強度を大きくすることによって被照射物の照射強度を大きくすることができる。したがって、視認性を高くすることができる。
【0052】
そして、本実施の形態においては、照明装置45だけでなく、反射装置46が配設されるので、照明装置45によって発生させられた光によって、直接、被照射物を照射することができなくても、反射装置46を介して被照射物を照射することができる。したがって、照明装置45を筐体Cs内の任意の箇所に配設することができるので、照明装置45の配置の自由度を向上させることができる。また、反射装置46を複数配設し、所定の反射装置から出射された反射光を他の反射装置に入射させるようにすることによって、照明装置45の配置の自由度を一層向上させることができる。
【0053】
さらに、照明装置45から放射された放射光ではなく、反射装置46によって反射された反射光である間接光によって被照射物が照射されるので、被照射物に照射された反射光が被照射物上で反射したときの反射光の強度が小さくなる。したがって、反射光が操作者の目に入っても、操作者は、眩しくなく、筐体Cs内の状態を確実に観察することができる。しかも、被照射物が記録媒体である場合、反射光によって照射された記録媒体が白く輝くことがないので、記録媒体の視認性を高くすることができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、反射装置46がプラテン25の上方に配設されるので、反射装置46から出射された反射光を、反射装置46に近接するプラテン25に照射することができる。したがって、反射光の損失を少なくすることができるので、筐体Cs内を十分に明るくすることができる。
【0055】
次に、各照明装置45について説明する。
【0056】
図3は本発明の第1の実施の形態における照明装置の斜視図である。
【0057】
図において、45は照明装置、48は光を発生させる光源ユニット、49は、光源ユニット48を包囲するとともに、光源ユニット48によって発生させられた光を放射光として反射装置46(図1)に向けて放射する包囲体49である。前記光源ユニット48は、主走査方向に延在させて形成された基板53、及び該基板53上に所定の間隔を置いて配設された複数のLED54を備える。該LED54は、図示されない制御部からの信号を受けて駆動(点灯)され、発光させられ、光を発生させる。なお、各LED54は、各照明装置45を互いに隣接させて筐体Cs内に取り付けた場合に、主走査方向において等ピッチで配設される。
【0058】
また、前記包囲体49は、断面が「U」字状の形状を有する反射板から成り、各LED54によって発生させられた光を、光路を変更することによってほぼ平行光線から成る放射光にする光路変更部58、該光路変更部58の両端に配設された側壁部59、及び前記光路変更部58の前端(副走査方向における下流側の端部)を覆い、放射光を放射する光放出部60を備える。該光放出部60は、ポリカーボネート等の透明な樹脂、又はガラスによって形成される。
【0059】
前記光路変更部58は、後端の近傍に形成され、所定の曲線、本実施の形態においては、放物線形状を有する湾曲部55、及び該湾曲部55から前端にかけて互いに平行に形成された平板部56、57から成り、湾曲部55の焦点部分にLED54を置き、LED54を発光させると、発生させられた光Aは湾曲部55で反射させられ、ほぼ平行光線から成る放射光B〜Dになる。各放射光B〜Dの光路はいずれも水平に延びるが、放射光Bが副走査方向に対して平行にされるのに対して、放射光C、Dは副走査方向に対して傾斜させられる。すなわち、各放射光B〜Dの垂直方向の成分はほぼ0であり、放射光Bの主走査方向の成分はほぼ0であり、放射光C、Dの主走査方向の成分は、副走査方向に対する傾斜角度に応じた値を有する。
【0060】
このように、照明装置45から放射された放射光は、放射方向が制限され、垂直方向には広がらず、左右方向にだけ広がって反射装置46に向けて放射される。
【0061】
次に、反射装置46について説明する。
【0062】
図4は本発明の第1の実施の形態における反射装置の要部断面図である。
【0063】
図において、46はプラテン25の上方に配設された反射装置、51は反射部材であり、該反射部材51は、前記照明装置45(図1)から放射された放射光を反射し、反射光によって筐体Cs内の各部位の被照射物を照射する。
【0064】
前記反射部材51は、本実施の形態のように、光源としてLED54のような点光源が使用された場合でも、照射むらが発生しないように、放射光を内部で拡散させて反射することができるようになっている。
【0065】
そのために、反射部材51は、第1の層としての反射層61、該反射層61を覆う第2の層としての透過層62、及び該透過層62を覆う第3の層としての透過層63を備え、透過層62、63間に微細な凹凸が形成される。本実施の形態においては、透過層62の表面に凸部66及び凹部67が形成される。
【0066】
反射層61及び透過層62、63は、アクリル、ポリカーボネート等の透明な樹脂材料から成り、反射層61の表面に白色、銀色等の塗料が塗布される。
【0067】
照明装置45から放射された放射光Eが反射部材51の表面に対して直角の方向から入射されると、反射層61によって反射させられ、透過層62、63の境界部分で微細な凹凸によって様々な方向に屈折させられ、透過層63の表面から拡散された反射光F〜Hが様々な方向に向けて出射される。
【0068】
したがって、照明装置45から放射された放射光を反射装置46の内部で拡散させて反射させることができるので、反射光によって被照射物を照射したときに、照射する位置によって照射強度にばらつきが生じることがなく、照射むらが発生しない。したがって、操作者は被照射物を十分に観察することができる。
【0069】
なお、放射光を拡散させると、被照射物の照射強度が小さくなり、筐体Cs内が暗くなってしまう。そこで、筐体Csの内周面に白色、銀色等の塗料を塗布し、透過層63の表面から出射された反射光を筐体Csの内周面で再び反射させることによって、筐体Cs内を十分に明るくすることができる。
【0070】
本実施の形態においては、透過層62、63間に微細な凹凸が形成されるようになっているが、反射部材51を、第1の層としての反射層及び第2の層としての透過層によって形成し、反射層と透過層との間に微細な凹凸を形成することによって、放射光を拡散させることができる。
【0071】
このように、本実施の形態においては、筐体Cs内の所定の箇所に照明装置45が配設され、該照明装置45においてLED54によって光が発生させられ、放射光が放射され、放射された放射光が反射装置46によって反射され、反射光によって筐体Cs内の被照射物が照射される。
【0072】
したがって、照明装置45から放射された放射光の向きが反射装置46によって変えられ、反射光によって被照射物が照射されるので、キャリッジ17が筐体Cs内のいずれの箇所にあっても被照射物を照射することができ、操作者は筐体Cs内の状態を十分に観察することができる。
【0073】
また、照明装置45から放射された放射光ではなく、反射装置46によって反射された反射光である間接光によって被照射物が照射されるので、照射むらが発生することがなく、筐体Cs内の状態を精度良く観察することができる。
【0074】
さらに、反射光によって被照射物が照射されたときに被照射物上で反射される反射光の強度が小さくなるので、反射光が操作者の目に入っても、操作者は、眩しくなく、筐体Cs内の状態を確実に観察することができる。
【0075】
そして、照明装置45を筐体Cs内の任意の箇所に配設することができるので、照明装置45の配置の自由度を向上させることができる。
【0076】
本実施の形態においては、反射装置46がプラテン25の上方に配設されるようになっているが、反射装置46を副走査方向におけるプラテン25よりわずかに下流側に配設することができる。その場合、反射光は、前壁Wf側から背壁Wr側に向けてわずかに傾斜させられ、被照射物を照射することになる。したがって、反射光が操作者の目に入るのを防止することができるので、視認性を向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態において、反射部材51は樹脂材料で形成されるようになっているが、反射部材を、鏡面加工が施され、頂壁Wtと前壁Wfとの連結部ptの形状に沿って湾曲させられた金属プレートによって形成することができる。
【0078】
さらに、本実施の形態においては、反射装置46を筐体Csとを別体に配設するようになっているが、反射装置46を筐体Csと一体に形成することができる。その場合、筐体Csの頂壁Wtと前壁Wfとの連結部ptにおいて、内周面に白色、銀色等の塗料を塗布することによって、照明装置45から放射された放射光を反射させることができる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0080】
図5は本発明の第2の実施の形態におけるインクジェットプリンタの要部断面図である。
【0081】
この場合、筐体Cs内の所定の箇所、本実施の形態においては、前壁Wfにおける透過窓としてのカバー28の上端の近傍に照明装置145が配設され、頂壁Wtの内周面における前壁Wf側の端部に、前壁Wfとの境界部分としての連結部ptに隣接させて反射装置146が配設される。
【0082】
前記照明装置145の光源ユニット48は、発生させた光を放射光として副走査方向における上流側の斜め上方の反射装置146に向けて放射し、反射装置146は反射光をプラテン25に向けて出射し、被照射物を照射する。
【0083】
このように、放射光は、副走査方向における上流側の斜め上方に向けて放射されるので、カバー28から漏れることがない。したがって、放射光が操作者の目に直接入ることがないので、操作者は、眩しくなく、筐体Cs内の状態を確実に観察することができる。
【0084】
また、照明装置145だけでなく、反射装置146が配設されるので、照明装置145によって発生させられた光によって、直接、被照射物を照射することができなくても、反射装置146を介して被照射物を照射することができる。したがって、照明装置145を筐体Cs内の任意の箇所に配設することができるので、照明装置145の配置の自由度を向上させることができる。
【0085】
ところで、画像形成装置としてのインクジェットプリンタ10が設置された室内の天井等の蛍光灯等の室内照明器具からの光が、カバー28に当たり、カバー28に室内照明器具の映像が写ると、被照射物の視認性が低下してしまう。そこで、本実施の形態においては、カバー28が筐体Cs内に向けて傾斜させられ、カバー28の下端がカバー28の上端より背壁Wr側に位置させられる。なお、カバー28は、第2、第3の筐体部Cs2、Cs3等との間において、図示されない磁石によって傾斜状態が維持される。
【0086】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0087】
図6は本発明の第3の実施の形態における照明装置及び反射装置の概念図である。
【0088】
この場合、筐体Cs(図1)内の所定の箇所、本実施の形態においては、頂壁Wtの内周面における前壁Wf側の端部に、前壁Wfとの連結部ptに隣接させて反射装置246が配設され、該反射装置246の下方の所定の箇所に照明装置245が配設される。
【0089】
前記反射装置246の反射部材251は凹面鏡から成り、該凹面鏡の焦点部分に照明装置245の光源ユニット48が配設される。該光源ユニット48によって発生させられた光は、光路を変更することによってほぼ平行光線から成る反射光にされる。
【0090】
したがって、破線で示されるような反射光I、Jを少なくすることができるので、反射光によって被照射物、例えば、プラテン25上の記録媒体を十分に照射することができる。すなわち、光源ユニット48によって発生させられた光を有効に利用することができる。
【0091】
また、光源ユニット48において、基板53がLED54より下方に配設されるので、LED54によって発生させられた光が下方、すなわち、プラテン25側に漏れるのを防止することができる。
【0092】
そして、反射部材251の両縁eg1、eg2は、中央部分より曲率が大きくされ、両縁eg1、eg2における反射光K、Lは、確実にプラテン25上に集められ、プラテン25から外れることはない。したがって、被照射物の照射強度を大きくすることができる。
【0093】
前記各実施の形態において、前記照明装置45、145、245及び反射装置46、146、246は、いずれも、筐体Cs内の第1、第2の副支持部としての枠体PL2、PR2(図1)間に延在させて配設されるようになっているが、第1、第2の主支持部としてのサイドプレートPL1、PR1間に延在させて配設することができる。
【0094】
また、前記各実施の形態においては、照明装置45、145、245の光源としてLED54が使用されるようになっているが、光源として、ランプ、蛍光灯等を使用することができる。
【0095】
そして、前記各実施の形態においては、反射部材51、251において放射光が拡散させられるようになっているが、反射部材51、251として鏡を使用し、放射光を正反射させることができる。
【0096】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0097】
10 インクジェットプリンタ
17 キャリッジ
25 プラテン
28 カバー
45、145、245 照明装置
46、146、246 反射装置
54 LED
Cs 筐体
Hdi 記録ヘッド
Wf 前壁
Wr 後壁
Wt 頂壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6