特許第6784652号(P6784652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784652
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20201102BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20201102BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   F24F7/06 D
   F24F7/06 Q
   F24F7/007 B
   G21C13/00 500
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-161119(P2017-161119)
(22)【出願日】2017年8月24日
(65)【公開番号】特開2019-39592(P2019-39592A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 宣久
(72)【発明者】
【氏名】上島 直幸
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/099895(WO,A1)
【文献】 特表2019−504305(JP,A)
【文献】 特開平11−094325(JP,A)
【文献】 特開2007−332597(JP,A)
【文献】 特開2017−032494(JP,A)
【文献】 特開2016−042009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/007
G21C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁、天井および床により囲まれた部屋と、
液化酸素を貯留する液化酸素貯留部を前記部屋の外部に配置して前記部屋の内部に通じて設け、前記部屋の外部の圧力よりも高い酸素ガスを前記部屋の内部に供給する酸素ガス供給手段と、
液化窒素を貯留する液化窒素貯留部を前記部屋の外部に配置して前記部屋の内部に通じて設け、前記部屋の外部の圧力よりも高い窒素ガスを前記部屋の内部に供給する窒素ガス供給手段と、
前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段の少なくとも一方より前記部屋の内部に供給されるガスと、前記部屋の内部のガスとの間で熱交換して前記部屋の内部のガスに含まれる二酸化炭素を液化して除去する二酸化炭素除去手段と、
を備える換気システム。
【請求項2】
前記部屋の内部の酸素濃度を検出する酸素検出手段と、
前記酸素検出手段の検出値に基づいて前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段によるガス供給量を制御する制御手段と、
を備える請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記部屋の内部に前記部屋の外部のガスを送る送気手段と、
前記部屋の外部における有害ガスを検出する有害ガス検出手段と、
前記部屋の内部の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段と、
前記有害ガス検出手段により有害ガスが検出された場合、前記送気手段を停止して前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を作動させ、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段からのガス供給量を制御する一方、前記有害ガス検出手段により有毒ガスが検出されない場合、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を停止し、前記送気手段を作動させる制御手段と、
をさらに備える請求項1または2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記部屋の内部に前記部屋の外部のガスを送る送気手段と、
前記送気手段により前記部屋の内部に送られるガスに含まれた放射性ガスの通過を遮断するフィルタ部と、
前記部屋の外部における放射性ガスを検出する放射性ガス検出手段と、
前記部屋の外部における放射性希ガスを検出する放射性希ガス検出手段と、
前記部屋の内部の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段と、
前記放射性希ガス検出手段により放射性希ガスが検出された場合、前記送気手段を停止して前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を作動させ、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段からのガス供給量を制御する一方、前記放射性希ガス検出手段により放射性希ガスが検出されず、かつ前記放射性ガス検出手段により放射性ガスが検出された場合、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を停止し、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記送気手段によるガス供給量を制御する制御手段と、
をさらに備える請求項1または2に記載の換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1および特許文献2に記載の換気システムは、原子力設備において事故が発生した場合に、放射性ガスの通過を遮断するフィルタ部を経たガスを部屋に送るようにしており、フィルタ部では除去できない放射性希ガスを検出した場合、部屋への外気の供給を停止する。さらに、この換気システムは、部屋への外気の供給を停止しているときに部屋の内部の二酸化炭素濃度が高くなった場合には、ボンベからの空気供給手段により部屋に酸素を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5714066号公報
【特許文献2】特許第6133822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1および特許文献2によれば、放射性ガスの除去や放射性希ガスの遮断を行いつつ、放射性希ガスの遮断時において部屋の内部に酸素を供給して部屋の内部の安全を確保することができる。
【0005】
ここで、例えば、100人ほどの収容を可能とする部屋の場合、放射性希ガスの発生期間(原子力設備の事故発生から24時間から1週間程度)の酸素を確保するため、一般に用いられている47リットルボンベが1000本ほど必要となる。従って、このような多量のボンベを設置するための設置面積や、ボンベを保管する保管場所などの設備や、ボンベを維持管理するための費用が嵩む問題がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、部屋の内部の安全を確保する酸素を供給するための手段に係る設備や費用を削減することのできる換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る換気システムは、壁、天井および床により囲まれた部屋と、液化酸素を貯留する液化酸素貯留部を前記部屋の外部に配置して前記部屋の内部に通じて設け、前記部屋の外部の圧力よりも高い酸素ガスを前記部屋の内部に供給する酸素ガス供給手段と、液化窒素を貯留する液化窒素貯留部を前記部屋の外部に配置して前記部屋の内部に通じて設け、前記部屋の外部の圧力よりも高い窒素ガスを前記部屋の内部に供給する窒素ガス供給手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る換気システムでは、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段の少なくとも一方より前記部屋の内部に供給されるガスと、前記部屋の内部のガスとの間で熱交換して前記部屋の内部のガスに含まれる二酸化炭素を液化して除去する二酸化炭素除去手段をさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る換気システムでは、前記部屋の内部の酸素濃度を検出する酸素検出手段と、前記酸素検出手段の検出値に基づいて前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段によるガス供給量を制御する制御手段と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る換気システムでは、前記部屋の内部に前記部屋の外部のガスを送る送気手段と、前記部屋の外部における有害ガスを検出する有害ガス検出手段と、前記部屋の内部の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段と、前記有害ガス検出手段により有害ガスが検出された場合、前記送気手段を停止して前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を作動させ、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段からのガス供給量を制御する一方、前記有害ガス検出手段により有毒ガスが検出されない場合、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を停止し、前記送気手段を作動させる制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る換気システムでは、前記部屋の内部に前記部屋の外部のガスを送る送気手段と、前記送気手段により前記部屋の内部に送られるガスに含まれた放射性ガスの通過を遮断するフィルタ部と、前記部屋の外部における放射性ガスを検出する放射性ガス検出手段と、前記部屋の外部における放射性希ガスを検出する放射性希ガス検出手段と、前記部屋の内部の二酸化炭素濃度を検出する二酸化炭素検出手段と、前記放射性希ガス検出手段により放射性希ガスが検出された場合、前記送気手段を停止して前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を作動させ、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段からのガス供給量を制御する一方、前記放射性希ガス検出手段により放射性希ガスが検出されず、かつ前記放射性ガス検出手段により放射性ガスが検出された場合、前記酸素ガス供給手段および前記窒素ガス供給手段を停止し、前記二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、前記送気手段によるガス供給量を制御する制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸素ガス供給手段の液化酸素貯留部から液化酸素により部屋の外部の圧力よりも高い酸素ガスを部屋の内部に供給し、窒素ガス供給手段の液化窒素貯留部から液化窒素により部屋の外部の圧力よりも高い窒素ガスを部屋の内部に供給するため、部屋の内部を外部よりも高圧な状態としつつ酸素を供給することができ、有害ガスを遮断しつつ呼吸が妨げられる事態を防いで、部屋の内部の安全を確保することができる。しかも、本発明によれば、液化酸素貯留部に液化酸素を貯留し、液化窒素貯留部に液化窒素を貯留することから、保有量を気体と比較して減容することができ、ボンベやタンクを設置するための設置面積や、ボンベやタンクを保管する保管場所などの設備や、ボンベやタンクを維持管理するための費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係る換気システムの概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る換気システムのフィルタ部を示す概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る換気システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の実施形態に係る換気システムの他の動作を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の実施形態に係る換気システムの他の例の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本実施形態に係る換気システムの概略図であり、図2は、本実施形態に係る換気システムのフィルタ部を示す概略図であり、図3は、本実施形態に係る換気システムの動作を示すフローチャートである。図4は、本実施形態に係る換気システムの他の動作を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の換気システム1は、部屋2と、放射性ガス除去手段3と、放射性ガス検出手段4Aと、放射性希ガス検出手段4Bと、酸素ガス供給手段5と、窒素ガス供給手段6と、二酸化炭素検出手段7と、酸素検出手段8と、部屋内圧力検出手段9と、二酸化炭素除去手段10と、制御手段11と、を含む。
【0017】
部屋2は、壁、天井および床により囲まれたものである。この部屋2は、例えば、原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋内に設置される制御室、会議や居住するために原子炉建屋内に設置される居室、原子力設備の事故時などに原子力設備を制御・監視するために原子炉建屋外に設置される代替制御室、原子力設備の事故時などに会議や居住するために原子炉建屋外に設置される代替居室、原子力設備の事故時などに原子力設備に従事する人や原子力設備近くの住民が避難するための非常用居室、原子力設備近くにある病院や介護施設などがある。
【0018】
本実施形態において、部屋2は、内部の気圧低下と空気の損失を最小限にしつつ、内外に行き来を行うためのエアロック2Aが設けられている。また、部屋2は、内部の温度や湿度を適宜保つための空調設備2Bが設けられている。空調設備2Bは、室内機2Baと室外機2Bbとを有し、室内機2Baにより部屋2の内部の温度や湿度を検出して適した温度や湿度となるように制御される。また、部屋2は、部屋2の内部の圧力が部屋2の外部の圧力(大気圧)よりも高くなるように調整する圧力調整手段2Cを有する。圧力調整手段2Cは、例えば、部屋2の内部と外部とを連通するダクト2Caと、部屋2の内部の空気を部屋2の外部に排出するようにダクト2Caを開閉または開度調整する圧力調整弁2Cbからなる。また、部屋2は、内部の臭いを吸着し除去する脱臭機2Dが設けられている。
【0019】
放射性ガス除去手段3は、ガス状の放射性よう素(よう素I,有機よう素CHI)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断するものである。放射性ガス除去手段3は、フィルタ部3Aと、送気管3Bと、送風機3Cと、開閉調整弁3Dと、を有する。
【0020】
フィルタ部3Aは、図2に示すように、周囲が外壁で囲まれて一端側および他端側に開口部がそれぞれ形成された一繋がりのケーシング3Aaを有している。そして、フィルタ部3Aは、ケーシング3Aa内に、一端側から加熱部3Ab、粗フィルタ3Ac、上流側高性能フィルタ3Ad、放射性ガスフィルタ3Ae、および下流側高性能フィルタ3Afが設けられている。
【0021】
加熱部3Abは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガスを加熱するためのものである。加熱部3Abの配置は、放射性ガスフィルタ3Aeよりもガスの流通の上流側であればよい。
【0022】
粗フィルタ3Acは、例えば、対象粒子径が50μm以上の空気濾過フィルタや、対象粒子径が25μm以上の中高性能フィルタが適用される。
【0023】
上流側高性能フィルタ3Adおよび下流側高性能フィルタ3Afは、例えば、対象粒子径が0.15μmで99.97%の除去効率のHEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)が適用される。
【0024】
放射性ガスフィルタ3Aeは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガス中に含まれる放射性物質を吸着する。具体的に、放射性ガスフィルタ3Aeは、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、活性白土などが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、放射性ガスフィルタ3Aeは、添着物質として、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri−Ethylene−Di−Amine)または、よう化カリウム(KI)を含む。この放射性ガスフィルタ3Aeは、上記構成により、ガス状の放射性よう素(よう素I,有機よう素CHI)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を吸着することで、当該放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断する。
【0025】
なお、図には明示しないが、フィルタ部3Aは、ケーシング3Aaの内部であって、放射性ガスフィルタ3Aeよりもガスの流通の上流側にガス処理フィルタを設けてもよい。ガス処理フィルタは、ケーシング3Aaの内部に流通されるガス中に含まれる有機溶剤ガス成分や酸性ガス成分を捕集する。具体的に、ガス処理フィルタは、母体を構成する基材と、この基材に添着される添着物質とを含む。基材に用いられる材料としては、特に限定されるものではなく、表面に複数の細孔を有するものであればよく、例えば、活性炭、アルミナ、ゼオライト、シリカゲル、モレキュラーシーブなどが挙げられる。ゼオライトとしては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトのどちらでもよい。また、ゼオライトとして、モルデナイト系ゼオライトなどが挙げられる。基材は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、ガス処理フィルタは、添着物質として、酸性成分、アルカリ成分、トリエチレンジアミン(TEDA:Tri−Ethylene−Di−Amine)、よう化カリウム(KI)の少なくとも1つを含む。このガス処理フィルタは、上記構成により、ガス状の放射性よう素(よう素I,有機よう素CHI)の他、ミスト状のセシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)などを含む放射性物質を吸着することで、当該放射性物質を含む放射性ガスの通過を遮断することが可能である。
【0026】
送気管3Bは、フィルタ部3Aの下流側と部屋2の内部とを連通するものである。
【0027】
送風機3Cは、送気管3Bに設けられてフィルタ部3Aのケーシング3Aaの内部に空気を通過させるものである。送風機3Cによりフィルタ部3Aのケーシング3Aaの内部を通過する空気は、送気管3Bを介して部屋2の内部に送られる。
【0028】
開閉調整弁3Dは、送気管3Bに設けられて当該送気管3Bを開閉または開度調整するものである。
【0029】
なお、フィルタ部3Aを除き、送気管3Bと、送風機3Cと、開閉調整弁3Dとで、部屋2の内部に部屋2の外部のガス(外気)を送る送気手段として構成することができる。
【0030】
なお、図1において、送風機3Cは、送気管3Bにおいて開閉調整弁3Dの下流側に設けられているが開閉調整弁3Dの上流側に設けられていてもよい。さらに、図1において、送風機3Cは、送気管3Bに設けられているが、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aa内の他端側(最も下流側)に設けられていてもよい。
【0031】
放射性ガス検出手段4Aは、部屋2の外部であって、例えば、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aaの一端側の外部に設けられ、放射性ガスを検出するものである。放射性ガス検出手段4Aは、ガスクロマトグラフやガンマ線検出器がある。放射性ガス検出手段4Aは、例えば、原子力設備の事故時において放射性ガスが発生した場合に、この放射性ガスを検出し、その後に原子炉内の燃料が溶融して放射性希ガスが発生した場合に、放射線の検出値が放射性ガスを検出した検出値を超えることで放射性希ガスを検出することができ、その後に放射線の検出値が下回ることで放射性希ガスの放射線が減衰して放射性希ガスが減少したことを検出することができる。
【0032】
放射性希ガス検出手段4Bは、部屋2の外部であって、例えば、フィルタ部3Aにおけるケーシング3Aaの一端側の外部に設けられ、キセノン(Xe)やアルゴン(Ar)などの放射性希ガスを検出するものである。放射性希ガス検出手段4Bは、例えば、原子力設備の事故時において放射性ガスが発生した後、原子炉内の燃料が溶融して放射性希ガスが発生した場合に、放射性希ガスを検出する。
【0033】
なお、放射性ガス検出手段4Aおよび放射性希ガス検出手段4Bは、有害ガスを検出する有害ガス検出手段4として設けられている。
【0034】
酸素ガス供給手段5は、部屋2の内部に酸素ガスを供給するものである。酸素ガス供給手段5は、液化酸素貯留部5Aと、供給管5Bと、流量調整弁5Cと、流量計5Dとを有する。
【0035】
液化酸素貯留部5Aは、液化酸素を高圧状態(大気圧よりも高い圧力)で貯留するボンベや、液化酸素を高圧状態(大気圧よりも高い圧力)で貯留するタンクを含む。液化酸素を貯留するボンベやタンクは、車両などの移動手段(図示せず)に積載されることにより移動可能に設けられる。
【0036】
供給管5Bは、液化酸素貯留部5Aと部屋2の内部とを連通するものである。
【0037】
流量調整弁5Cは、供給管5Bに設けられて当該供給管5Bを通過する液化酸素貯留部5Aから送られる液体酸素の流量を調整するものである。なお、流量調整弁5Cは、部屋2の内部の圧力が部屋2の外部の圧力(大気圧)よりも高くなるように調整する圧力調整手段も構成する。
【0038】
流量計5Dは、供給管5Bに設けられて当該供給管5Bを通過する液化酸素貯留部5Aから送られる液体酸素の流量を計測するものである。
【0039】
窒素ガス供給手段6は、部屋2の内部に窒素ガスを供給するものである。窒素ガス供給手段6は、液化窒素貯留部6Aと、供給管6Bと、流量調整弁6Cと、流量計6Dとを有する。
【0040】
液化窒素貯留部6Aは、液化窒素を高圧状態(大気圧よりも高い圧力)で貯留するボンベや、液化窒素を高圧状態(大気圧よりも高い圧力)で貯留するタンクを含む。液化窒素を貯留するボンベやタンクは、車両などの移動手段(図示せず)に積載されることにより移動可能に設けられる。
【0041】
供給管6Bは、液化窒素貯留部6Aと部屋2の内部とを連通するものである。
【0042】
流量調整弁6Cは、供給管6Bに設けられて当該供給管6Bを通過する液化窒素貯留部6Aから送られる液体窒素の流量を調整するものである。なお、流量調整弁6Cは、部屋2の内部の圧力が部屋2の外部の圧力(大気圧)よりも高くなるように調整する圧力調整手段も構成する。
【0043】
流量計6Dは、供給管6Bに設けられて当該供給管6Bを通過する液化窒素貯留部6Aから送られる液体窒素の流量を計測するものである。
【0044】
二酸化炭素検出手段7は、部屋2の内部の空気中の二酸化炭素濃度を検出するものである。
【0045】
酸素検出手段8は、部屋2の内部の空気中の酸素濃度を検出するものである。
【0046】
部屋内圧力検出手段9は、部屋2の内部の圧力を検出するものである。
【0047】
二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部の二酸化炭素を除去するものである。二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部において、酸素ガス供給手段5の供給管5B、および窒素ガス供給手段6の供給管6Bに設けられている。
【0048】
酸素ガス供給手段5の供給管5Bに設けられた二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部の空気を供給管5Bに送られる液体酸素と熱交換することで、部屋2の内部の二酸化炭素を液体化または固体化する。液体酸素は、沸点が−183℃であり、二酸化炭素は沸点が−78.5℃であるため、二酸化炭素に圧力を掛けつつ液体酸素の冷熱と熱交換することで温度が低下して液体化し、この液体の圧力を急激に下げると固体化する。従って、二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部の空気を液体酸素と熱交換することで、当該空気中の二酸化炭素を液体化または固体化して取り出して除去することができる。液体化または固体化した二酸化炭素は、例えば、エアロック2Aから部屋2の外部に出すことができる。一方、二酸化炭素除去手段10において熱交換された液体酸素は、温度が上昇し酸素ガスとなって部屋2の内部に排出される。すなわち、酸素ガス供給手段5において流量調整弁5Cを開けて部屋2の内部に酸素ガスを送ることで、同時に二酸化炭素除去手段10により部屋2の内部の二酸化炭素が除去される。
【0049】
また、窒素ガス供給手段6の供給管6Bに設けられた二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部の空気を供給管6Bに送られる液体窒素と熱交換することで、部屋2の内部の二酸化炭素を液体化または固体化する。液体窒素は、沸点が−196℃であり、二酸化炭素は沸点が−78.5℃であるため、二酸化炭素に圧力を掛けつつ液体窒素の冷熱と熱交換することで温度が低下して液体化し、この液体の圧力を急激に下げると固体化する。従って、二酸化炭素除去手段10は、部屋2の内部の空気を液体窒素と熱交換することで、当該空気中の二酸化炭素を液体化または固体化して取り出して除去することができる。一方、二酸化炭素除去手段10において熱交換された液体窒素は、温度が上昇し窒素ガスとなって部屋2の内部に排出される。すなわち、窒素ガス供給手段6において流量調整弁6Cを開けて部屋2の内部に窒素ガスを送ることで、同時に二酸化炭素除去手段10により部屋2の内部の二酸化炭素が除去される。
【0050】
制御手段11は、換気システム1を統括制御する。制御手段11は、放射性ガス検出手段4Aの検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dを制御する。また、制御手段11は、放射性希ガス検出手段4Bの検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dや、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを制御する。また、制御手段11は、二酸化炭素検出手段7の検出結果に基づいて、放射性ガス除去手段3の送風機3Cおよび開閉調整弁3Dや、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを制御する。また、制御手段11は、酸素検出手段8の検出結果に基づいて、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを制御する。また、制御手段11は、部屋内圧力検出手段9の検出結果に基づいて、圧力調整手段(圧力調整手段2Cや流量調整弁5Cや流量調整弁5C)を制御する。
【0051】
本実施形態の換気システム1の動作について説明する。原子力設備に事故が発生した場合、図3に示すように、制御手段11は、放射性ガス除去手段3を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS1)。すなわち、制御手段11は、放射性ガス除去手段3の送風機3Cを停止して開閉調整弁3Dを閉作動させ、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cを開状態とし、かつ窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開状態としつつ部屋内圧力検出手段9により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば、10mmAq以上)、圧力調整手段を作動させる(圧力調整手段2Cの圧力調整弁2Cbを閉作動、または酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開作動)。これにより、部屋2は、放射性ガスや放射性希ガスが遮断された状態で、内部に酸素ガスおよび窒素ガスが供給される。この結果、原子力設備に事故が発生した直後に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぎ、かつ部屋2の内部の人の呼吸が妨げられる事態を防ぐことができる。
【0052】
ステップS1の後、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出され(ステップS2:Yes)、かつ放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出された場合(ステップS3:Yes)、制御手段11は、放射性ガス除去手段3を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS4)。すなわち、制御手段11は、ステップS1の動作を続ける。
【0053】
なお、ステップS3において、放射性希ガスが検出されない場合(ステップS3:No)、制御手段11は、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を停止して放射性ガス除去手段3を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS5)。すなわち、制御手段11は、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cを閉状態とし、かつ窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを閉状態とし放射性ガス除去手段3の送風機3Cを運転して開閉調整弁3Dを開作動させつつ部屋内圧力検出手段9により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば10mmAq以上)圧力調整手段を作動させる(圧力調整手段2Cの圧力調整弁2Cbを閉作動)。この結果、部屋2の内部の人が放射性ガスにより被曝する事態を防ぐことができる。
【0054】
ステップS4の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS6:Yes)、制御手段11は、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6の供給量を制御する(ステップS7)。すなわち、ステップS6において、制御手段11は、二酸化炭素検出手段7による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS7において、酸素供給量が増加するように、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS7において、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6の供給量を制御した後は、ステップS6に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS6において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS6:No)、制御手段11は、ステップS4(ステップS1)の動作を維持しつつステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
【0055】
一方、ステップS5の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS8:Yes)、制御手段11は、放射性ガス除去手段3の空気供給量を制御する(ステップS9)。すなわち、ステップS8において、制御手段11は、二酸化炭素検出手段7による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppm以上となった場合)、ステップS9において、放射性ガス除去手段3による空気供給量が増加するように、放射性ガス除去手段3の送風機3Cの回転数を速く作動または開閉調整弁3Dを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS9において、放射性ガス除去手段3の空気供給量を制御した後は、ステップS8に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS8において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS8:No)、制御手段11は、ステップS5の動作を維持しつつステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
【0056】
なお、ステップS2において、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出されない場合(ステップS2:No)、制御手段11は、部屋2を外気に開放する(ステップS10)。すなわち、制御手段11は、ステップS2において、放射性ガスが検出されず安全が確認された場合、ステップS10において、放射性ガス除去手段3、酸素ガス供給手段5、窒素ガス供給手段6および圧力調整手段2Cを停止する。また、ステップS10の後は、再びステップS2に戻り、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを監視すると共に、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスを監視する。
【0057】
ところで、ステップS1は、なくてもよいが、原子力設備に事故が発生した場合に、部屋2の内部の人が放射性ガスや放射性希ガスにより被曝する事態を防ぐ効果を顕著に得るため、放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスを検出する以前に、放射性ガス除去手段3を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とすることが好ましい。
【0058】
また、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転する際、制御手段11は、酸素検出手段8により検出される酸素濃度に基づいて酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を制御する。具体的に、図4に示すように、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転した後(ステップS11)、酸素濃度が閾値を下回った場合(ステップS12:Yes)、制御手段11は、酸素ガス供給量を多く制御する(ステップS13)。すなわち、ステップS12において、制御手段11は、酸素検出手段8による酸素濃度の検出結果を取得し、この酸素濃度が閾値を下回った場合(例えば、18.5%未満となった場合)、ステップS13において、酸素供給量が増加するように、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cの開度を大きくし、部屋2の内部の酸素濃度を閾値(例えば18.5%)以上となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。一方、ステップS11の後、酸素濃度が閾値を上回った場合(ステップS12:No)、制御手段11は、酸素ガス供給量を少なく制御する(ステップS14)。すなわち、ステップS12において、制御手段11は、酸素検出手段8による酸素濃度の検出結果を取得し、この酸素濃度が閾値を上回った場合(例えば、21%を超えた場合)、ステップS14において、酸素供給量が減少するように、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cの開度を小さくし、部屋2の内部の酸素濃度を適した値(例えば18.5%〜21%)となるようにする。この動作は、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を作動させている場合に常に行う。この動作により、酸素ガス(液化酸素)の消費を抑えることができる。
【0059】
上述したように、本実施形態の換気システム1によれば、酸素ガス供給手段5の液化酸素貯留部5Aから液化酸素により部屋2の外部の圧力よりも高い酸素ガスを部屋2の内部に供給し、窒素ガス供給手段6の液化窒素貯留部6Aから液化窒素により部屋2の外部の圧力よりも高い窒素ガスを部屋2の内部に供給するため、部屋2の内部を外部よりも高圧な状態として酸素を供給することができ、有害ガスを遮断しつつ呼吸が妨げられる事態を防いで、部屋2の内部の安全を確保することができる。
【0060】
原子力設備では、当該原子力設備を制御・監視するための制御室や、制御室に従事する人の居住空間が必要である。そして、万が一の事故発生時において、制御室(制御室が何らかの損傷を受けた場合は原子力設備の制御・監視を行う代替制御室)や居室(居室が何らかの損傷を受けた場合は代替居室、または住民の避難のための非常用居室、あるいは原子力設備近くにあって緊急に避難することが困難な病院や介護施設)などのような部屋2の内部の人の被曝を防止し、呼吸を維持する必要がある。
【0061】
しかも、本実施形態の換気システム1によれば、液化酸素貯留部5Aに液化酸素を貯留し、液化窒素貯留部6Aに液化窒素を貯留することから、保有量を気体と比較して減容することができ、ボンベやタンクを設置するための設置面積や、ボンベやタンクを保管する保管場所などの設備や、ボンベやタンクを維持管理するための費用を削減することができる。例えば、100人収容する部屋2において酸素ガスを1週間供給する場合、酸素ガスを貯留するボンベを1000本程度保有する必要があるが、液化酸素および液化窒素を貯留するボンベの場合50本以下に削減することができる。
【0062】
また、本実施形態の換気システム1によれば、酸素ガス供給手段5の液化酸素や、窒素ガス供給手段6の液化窒素は、二酸化炭素の沸点よりも低温であるため、二酸化炭素除去手段10において、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6の少なくとも一方より部屋2の内部に供給されるガスと、部屋2の内部のガスとの間で熱交換することで、部屋2の内部のガスに含まれる二酸化炭素を液化して除去する。この結果、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低く抑えることができ、部屋2の内部の安全を確保することができ、かつ部屋2の内部に供給する液化酸素や液化窒素の冷熱を利用する手段であるため、専用に二酸化炭素除去する手段と比較して簡略化することができる。
【0063】
また、本実施形態の換気システム1によれば、酸素検出手段8により部屋2の内部の酸素濃度を検出し、制御手段11により酸素検出手段8の検出値に基づいて酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6によるガス供給量を制御する。このため、部屋2の内部の酸素濃度を適した値に調整することができる。
【0064】
また、本実施形態の換気システム1によれば、放射性ガス除去手段3と、放射性ガス検出手段4Aと、放射性希ガス検出手段4Bと、二酸化炭素検出手段7と、を備え、制御手段11において、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出された場合、放射性ガス除去手段3から部屋2の内部へのガスの供給を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を作動させ、二酸化炭素検出手段7により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6からのガス供給量を制御する一方、放射性希ガス検出手段4Bにより放射性希ガスが検出されず、かつ放射性ガス検出手段4Aにより放射性ガスが検出された場合、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を停止し、二酸化炭素検出手段により検出する二酸化炭素濃度が予め設定した閾値以下となるように、放射性ガス除去手段3から部屋2の内部へのガス供給量を制御する。
【0065】
放射性ガス(ガス状の放射性よう素やミスト状のセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を空気中に含むガス)は、フィルタ部3Aにより除去できるが、炉心溶融などの初期に発生する放射性希ガス(キセノン、クリプトンなどを空気中に含むガス)はフィルタ部3Aでは十分に除去しきれない。そこで、本実施形態の換気システム1によれば、放射性希ガスを検出した場合、部屋2を外気から遮断して酸素ガスおよび窒素ガスを供給することで、放射性ガスを含み放射性希ガスが部屋2の内部へ送られる事態を防ぐことができ、部屋2の内部の人の呼吸を維持することができる。特に、この換気システム1によれば、二酸化炭素検出手段7による二酸化炭素濃度の検出値に基づいて酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を制御するため、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が低いときには、酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を抑えることで、液化酸素および液化窒素の貯留量を節約して確保することができ、一方、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が高いときには、酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を極力抑える範囲内で酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を増すことで部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低減することができる。
【0066】
ところで、上述した実施形態では、放射性ガス除去手段3を用いて放射性ガスを除去した空気を部屋2の内部に送る構成であるが、放射性ガス除去手段3を用いなくてもよい。この場合、図には明示しないが、上述した放射性ガス除去手段3に代えて、部屋2の内部に部屋2の外部のガス(外気)を送る送気手段として、放射性ガス除去手段3のフィルタ部3Aを除き、送気管3Bと、送風機3Cと、開閉調整弁3Dと、を有する構成とする。また、上述した換気システム1は、部屋2の内部への放射性ガスの通過を遮断するものであるが、放射性ガスに限らず、その他に人体に影響をおよぼす様々な有害ガスの部屋2の内部への通過を遮断することとしてもよい。その場合は、上述した放射性ガス検出手段4Aおよび放射性希ガス検出手段4Bは、有害ガスを検出する有害ガス検出手段4として設けられる。また、有害ガスが遮断される部屋2は、上述した原子力設備に付帯されるものでなくてもよく、有害ガスを発生させるおそれのある様々な設備に付帯することができる。
【0067】
以下に、部屋2の内部に部屋2の外部のガス(外気)を送る送気手段を有し、放射性ガスを含む有害ガスの部屋2の内部への通過を遮断する換気システム1の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る換気システムの他の例の動作を示すフローチャートである。
【0068】
例えば、設備に事故が発生した場合、図5に示すように、制御手段11は、送気手段を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS21)。すなわち、制御手段11は、送気手段の送風機3Cを停止して開閉調整弁3Dを閉作動させ、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cを開状態とし、かつ窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開状態としつつ部屋内圧力検出手段9により検出する圧力が部屋2の外部の圧力よりも高くなるように(例えば、10mmAq以上)、圧力調整手段を作動させる(圧力調整手段2Cの圧力調整弁2Cbを閉作動、または酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開作動)。これにより、部屋2は、有害ガスが遮断された状態で、内部に酸素ガスおよび窒素ガスが供給される。この結果、設備に事故が発生した直後に、部屋2の内部の人が有害ガスの影響を受ける事態を防ぎ、かつ部屋2の内部の人の呼吸が妨げられる事態を防ぐことができる。
【0069】
ステップS21の後、有害ガス検出手段4により有害ガスが検出された場合(ステップS22:Yes)、制御手段11は、送気手段を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS23)。すなわち、制御手段11は、ステップS21の動作を続ける。
【0070】
ステップS23の後、二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(ステップS24:Yes)、制御手段11は、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6の供給量を制御する(ステップS25)。すなわち、ステップS24において、制御手段11は、二酸化炭素検出手段7による二酸化炭素濃度の検出結果を取得し、この二酸化炭素濃度が閾値を超えた場合(例えば、通常300ppm〜390ppm程度のところ、人の健康を阻害する5000ppmを超える場合)、ステップS25において、酸素供給量が増加するように、酸素ガス供給手段5の流量調整弁5Cおよび窒素ガス供給手段6の流量調整弁6Cを開作動させ、部屋2の内部の二酸化炭素濃度を閾値(例えば5000ppm)以下となるようにする。この結果、部屋2の内部の人の健康を維持することができる。なお、ステップS25において、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6の供給量を制御した後は、ステップS24に戻り、二酸化炭素濃度を監視する。また、ステップS24において、二酸化炭素濃度が閾値を超えていなければ(ステップS24:No)、制御手段11は、ステップS23(ステップS21)の動作を維持しつつステップS22に戻り、有害ガス検出手段4により有害ガスを監視する。
【0071】
なお、ステップS22において、有害ガス検出手段4により有害ガスが検出されない場合(ステップS22:No)、制御手段11は、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を停止し、送気手段(送風機3C)を運転し部屋2の内部を正圧とする(ステップS26)。ステップS26においては、送気手段(送風機3C)を運転しなくてもよい。
【0072】
ところで、ステップS21は、なくてもよいが、原子力設備に事故が発生した場合に、部屋2の内部の人が有害ガスにより影響を受ける事態を防ぐ効果を顕著に得るため、有害ガス検出手段4により有害ガスを検出する以前に、送気手段を停止して酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転し部屋2の内部を正圧とすることが好ましい。
【0073】
また、酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を運転する際、制御手段11は、酸素検出手段8により検出される酸素濃度に基づいて酸素ガス供給手段5および窒素ガス供給手段6を制御する。具体的に、図4に示す。この結果、酸素ガス(液化酸素)の消費を抑えることができる。
【0074】
この実施形態の換気システム1では、酸素ガス供給手段5の液化酸素貯留部5Aから液化酸素により部屋2の外部の圧力よりも高い酸素ガスを部屋2の内部に供給し、窒素ガス供給手段6の液化窒素貯留部6Aから液化窒素により部屋2の外部の圧力よりも高い窒素ガスを部屋2の内部に供給するため、ボンベやタンクの設置面積や、ボンベやタンクを保管する保管場所などの設備に余裕があり貯留容量を多く確保することができるため、有害ガスを除去するフィルタ部(例えば、フィルタ部3A)などの構成を省くことも可能である。
【0075】
その場合に、本実施形態の換気システム1によれば、有害ガスを検出した場合、部屋2を外気から遮断して酸素ガスおよび窒素ガスを供給することで、放射性ガスを含み放射性希ガスが部屋2の内部へ送られる事態を防ぐことができ、部屋2の内部の人の呼吸を維持することができる。特に、この換気システム1によれば、二酸化炭素検出手段7による二酸化炭素濃度の検出値に基づいて酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を制御するため、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が低いときには、酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を抑えることで、液化酸素および液化窒素の貯留量を節約して確保することができ、一方、部屋2の内部の二酸化炭素濃度が高いときには、酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を極力抑える範囲内で酸素ガスおよび窒素ガスの供給量を増すことで部屋2の内部の二酸化炭素濃度を低減することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 換気システム
2 部屋
2C 圧力調整手段
3 放射性ガス除去手段
3A フィルタ部
3B 送気管(送気手段)
3C 送風機(送気手段)
3D 開閉調整弁(送気手段)
4 有害ガス検出手段
4A 放射性ガス検出手段
4B 放射性希ガス検出手段
5 酸素ガス供給手段
5A 液化酸素貯留部
6 窒素ガス供給手段
6A 液化窒素貯留部
7 二酸化炭素検出手段
8 酸素検出手段
9 部屋内圧力検出手段
10 二酸化炭素除去手段
11 制御手段
図1
図2
図3
図4
図5