(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記PI3K−mTOR阻害薬が、1−(4−{[4−(ジメチルアミノ)ピペリジン−1−イル]カルボニル}フェニル)−3−[4−(4,6−ジモルホリン−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]尿素または薬学的に許容できるその塩である、請求項1に記載の使用。
前記オーリスタチンが、2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミドまたは薬学的に許容できるその塩である、請求項1に記載の使用。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態では、がんなどの異常な細胞成長を処置する方法であって、それを必要とする患者に、オーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCと、PI3K/mTOR阻害薬、MEK阻害薬、タキサン、および他の抗がん薬から選択される第2の薬剤との組合せの有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0005】
制がん薬の標的であるmTORは、2種類の複合体、ラプターサブユニットを含有するmTORC1、およびリクターを含有するmTORC2で存在する。当技術分野において公知のとおり、「リクター」は、ヒト遺伝子座5p13.1を有する細胞成長調節タンパク質を指す。これらの複合体は、異なって調節され、異なる基質範囲を有する。mTORC2は一般に、ラパマイシンおよび選択的阻害薬に対して非感受性である。mTORC2は、Aktなどの一部のAGCキナーゼのC末端疎水性モチーフをリン酸化することによって、成長因子シグナル伝達をモジュレートすると考えられる。多くの細胞に関連して、mTORC2は、AktのS473部位のリン酸化のために必要とされる。したがって、mTORC1活性は、Aktによって部分的に制御されるが、Akt自体は、mTORC2によって部分的に制御される。ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)の成長因子刺激は、2つの重要な部位、S473およびT308におけるリン酸化によって、Aktの活性化を引き起こす。Aktの完全な活性化は、S473およびT308活性の両方のリン酸化を必要とすることが報告されている。Aktは、アポトーシスの抑制、グルコース取り込みの促進、および細胞代謝の変更を含む多くの方法で、細胞生存および増殖を促進する。Akt上の2つのリン酸化部位のうち、PDK1によって媒介されるT308における活性化ループのリン酸化は、キナーゼ活性のために不可欠であると考えられているが、S473における疎水性モチーフのリン酸化は、Aktキナーゼ活性を増強させる。S473におけるAKTリン酸化は、PI3K/AKT mTOR経路の構成的活性化のためのマーカーとして使用することができる。
【0006】
本発明の別の実施形態は、対象においてがんを処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびPI3K−mTOR阻害薬を併用投与することを含み、前記PI3K−mTOR阻害薬がPF−384およびPF−502から選択される方法に関する。
【0007】
好ましい一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬は、PF−384である。
【0008】
別の実施形態では、対象においてがんを処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびPI3K−mTOR阻害薬を併用投与することを含み、PI3K−mTOR阻害薬が、PF−384およびPF−502から選択され、前記オーリスタチンが、式
【0009】
【化1】
[式中、出現するごとに独立に、
Wは、
【0010】
【化2】
であり、
R
1は、水素、C
1〜C
8アルキルまたはC
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
2は、水素、C
1〜C
8アルキルまたはC
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
3AおよびR
3Bは、
(i)R
3Aは、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキル、ハロゲンまたはアラルキルであり、かつ
R
3Bは、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキル、アラルキルもしくはハロゲンである、または
(ii)R
3AおよびR
3Bは一緒になって、C
2〜C
8アルキレンもしくはC
1〜C
8ヘテロアルキレンである
のいずれかであり、
R
4AおよびR
4Bは、
(i)R
4Aは、水素であり、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキルまたはアラルキルであり、かつ
R
4Bは、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキルもしくはアラルキルである、または
(ii)R
4AおよびR
4Bは一緒になって、C
2〜C
8アルキレンもしくはC
1〜C
8ヘテロアルキレンである
のいずれかであり、
R
5は、
【0011】
【化3】
、C
1〜C
10ヘテロシクリル、C
3〜C
8カルボシクリルおよびC
6〜C
14アリールであり、これらは、C
1〜C
8アルキル、−C
1〜C
8アルキル−N(R’)
2、−C
1〜C
8アルキル−C(O)R’、−C
1〜C
8アルキル−C(O)OR’−O−(C
1〜C
8アルキル)、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)
2、−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、ハロゲン、−N
3、−N(R’)
2、−CN、−NHC(=NH)NH
2、−NHCONH
2、−S(=O)
2R’および−SR’からなる群から独立に選択される1、2、3、4または5個の基で置換されていてもよく、各R’は、水素、C
1〜C
8アルキルおよび非置換アリールからなる群から独立に選択されるか、または2個のR’は、それらが結合している窒素と一緒になって、C
1〜C
10ヘテロシクリルを形成することができ、または
R
5は、
【0012】
【化4】
であり、これらは、C
1〜C
8アルキル、−C
1〜C
8アルキル−N(R’)
2、−C
1〜C
8アルキル−C(O)R’、−C
1〜C
8アルキル−C(O)OR’、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)
2、−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、ハロゲン、−N
3、−N(R’)
2、−CN、−NHC(=NH)NH
2、−NHCONH
2、−S(=O)
2R’、−SR’およびアリーレン−R’からなる群から独立に選択される1、2、3、4または5個の基で置換されていてもよく、各R’は、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ヘテロシクリル、C
1〜C
10アルキレン−C
3〜C
8ヘテロシクリルおよびアリールからなる群から独立に選択されるか、もしくは2個のR’は、それらが結合している窒素と一緒になって、C
1〜C
10ヘテロシクリルを形成することができ、
R
6は、水素、−C
1〜C
8アルキル、−C
2〜C
8アルケニル、−C
2〜C
8アルキニルまたは−C
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
12は、水素、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
10ヘテロシクリルまたはC
6〜C
14アリールであり、
R
13は、C
1〜C
10ヘテロシクリルであり、
Xは、Oである]
の化合物または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、または前記化合物もしくは塩もしくは溶媒和物の抗体−薬物コンジュゲートである、方法を提供する。
【0013】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬は、PF−384およびPF−502から選択され、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADC、PF−101およびMMAFから選択される。
【0014】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬は、PF−384およびPF−502から選択され、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADCである。
【0015】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬は、PF−384およびPF−502から選択され、オーリスタチンは、オーリスタチン−101である。
【0016】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬は、PF−384およびPF−502から選択され、オーリスタチンは、MMAFである。
【0017】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬およびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、肺がんを処置するために使用する。
【0018】
そのような方法のさらなる一実施形態では、PI3K−mTOR阻害薬およびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、乳がんを処置するために使用する。
【0019】
そのような方法のさらなる一実施形態では、オーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCおよびPI3K−mTOR阻害薬を同時投与するか、または逐次投与する。
【0020】
そのような方法のさらなる一実施形態では、オーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCおよびPI3K−mTOR阻害薬を、いずれかの順序で逐次投与する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、一定量のオーリスタチンまたは薬学的に許容できるその塩、一定量のPF−384または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、対象においてがんを処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびMEK阻害薬を併用投与することを含む方法に関する。
【0023】
好ましい一実施形態では、MEK阻害薬は、PD−901である。
【0024】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬は、PD−901であり、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADC、PF−101およびMMAFから選択される。
【0025】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬は、PD−901であり、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADCである。
【0026】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬は、PD−901であり、オーリスタチンは、オーリスタチン−101である。
【0027】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬は、PD−901であり、オーリスタチンは、MMAFである。
【0028】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬およびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、肺がんを処置するために使用する。
【0029】
そのような方法のさらなる一実施形態では、MEK阻害薬およびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、乳がんを処置するために使用する。
【0030】
また別の実施形態では、本発明は、一定量のオーリスタチンもしくはオーリスタチンをベースとしたADC、または薬学的に許容できるその塩、および一定量のPD−901または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、対象においてがんを処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびタキサンを併用投与することを含む方法に関する。
【0032】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルであり、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADC、PF−101およびMMAFから選択される。
【0033】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルであり、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADCである。
【0034】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルであり、オーリスタチンは、オーリスタチン−101である。
【0035】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンは、パクリタキセルまたはドセタキセルであり、オーリスタチンは、MMAFである。
【0036】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンおよびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、肺がんを処置するために使用する。
【0037】
そのような方法のさらなる一実施形態では、タキサンおよびオーリスタチンまたはオーリスタチンをベースとしたADCを、乳がんを処置するために使用する。
【0038】
また別の実施形態では、本発明は、一定量のオーリスタチンもしくはオーリスタチンをベースとしたADC、または薬学的に許容できるその塩、および一定量の、パクリタキセルおよびドセタキセルまたは薬学的に許容できるその塩から選択されるタキサン、ならびに薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物に関する。
【0039】
オーリスタチンおよび前記タキサンを当時投与するか、または逐次投与する実施形態も提供する。
【0040】
オーリスタチンおよび前記タキサンをいずれかの順序で逐次投与する実施形態も提供する。
【0041】
さらなる一実施形態は、一定量のオーリスタチンまたは薬学的に許容できるその塩、一定量のタキサンまたは薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を含む。
【0042】
オーリスタチンをPI3K/mTOR阻害薬と共に、オーリスタチンをMEK阻害薬と共に、およびオーリスタチンをタキサンと共に投与することを含む本明細書に記載の併用投与の方法のいずれかにおいて、併用投与によって達成される抗がん効果が、前記第1および第2の医薬組成物を非併用投与することによって達成される抗がん効果よりも大きい実施形態を提供する。
【0043】
(a)オーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)PF−384およびPF−502から選択されるPI3K−mTOR阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形実施形態を提供する。
【0044】
(a)オーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)PD−901であるMEK阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形実施形態を提供する。
【0045】
(a)オーリスタチン−101であるオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)パクリタキセルもしくはドセタキセルであるタキサン、または薬学的に許容できるその塩、ならびに(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形実施形態を提供する。
【0046】
(a)第1の単位剤形中のオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、PF−384およびPF−502から選択されるPI3K−mTOR阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含む、キット実施形態を提供する。
【0047】
(a)第1の単位剤形中のオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、PD−901であるMEK阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含む、キット実施形態を提供する。
【0048】
(a)第1の単位剤形中の、オーリスタチン−101であるオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、パクリタキセルまたはドセタキセルであるタキサン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含む、キット実施形態を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明において、次の用語は、別段に示さない限り、下記に示すとおりに説明される。
【0051】
オーリスタチン:本明細書において使用する場合、「オーリスタチン(auristatin)」または「オーリスタチン(auristatins)」という用語は、天然産物タツナミガイ(Dolabella auricularia)に由来する薬物、ならびにオーリスタチン−101、MMAEおよびMMAFなどの構造的に関連した化合物を含む、ポリペプチドをベースとした化合物のクラスを指す。本発明の組合せ(複数可)の成分を記載するために本明細書において使用する場合、「オーリスタチン(auristatin)」または「オーリスタチン(auristatins)」はまた、オーリスタチンを組み込んでいるか、またはそれを含むバイオコンジュゲート分子、例えば、抗体(Ab)などの生物学的部分がポリペプチド部分に連結している抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を指す。代表的なオーリスタチンポリペプチドをベースとした分子には、オーリスタチン−101、MMAE、およびMMAFが含まれる。代表的なオーリスタチンADCには、5T4−ADCが含まれる。
【0052】
「オーリスタチン−101」は、オーリスタチンポリペプチド化合物:式
【0053】
【化5】
の2−メチルアラニル−N−[(3R,4S,5S)−3−メトキシ−1−{(2S)−2−[(1R,2R)−1−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−3−{[(1S)−2−フェニル−1−(1,3−チアゾール−2−イル)エチル]アミノ}プロピル]ピロリジン−1−イル}−5−メチル−1−オキソヘプタン−4−イル]−N−メチル−L−バリンアミド、または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、またはその誘導体を指す。
【0054】
「MMAE」は、モノメチルオーリスタチンEとして知られる、式
【0055】
【化6】
を有するオーリスタチンポリペプチド化合物、または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、またはその誘導体を指す。
【0056】
「MMAF」は、モノメチルオーリスタチンF、または(S)−2−((2R,3R)−3−((S)−1−((3R,4S,5S)−4−((S)−N,3−ジメチル−2−((S)−3−メチル−2−(メチルアミノ)ブタンアミド)ブタンアミド)−3−メトキシ−5−メチルヘプタノイル)ピロリジン−2−イル)−3−メトキシ−2−メチルプロパンアミド)−3−フェニルプロパン酸として知られる、式
【0057】
【化7】
を有するオーリスタチンポリペプチド化合物、または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、またはその誘導体を指す。
【0058】
「5T4−ADC」は、「mc」リンカーを介して、5T4抗原に特異的な抗体にコンジュゲートしているオーリスタチンポリペプチドMMAFを含む分子を指す。
【0059】
「抗5T4抗体−薬物コンジュゲート」は、切断不可能なマレイミドカプロイル(mc)リンカーを介して強力なチューブリン阻害薬であるモノメチルオーリスタチンF(MMAF)に連結している抗5T4 A1抗体を指す。抗5T4 ADCと呼ばれるA1mcMMAFにおける標的薬剤は、ヒト5T4を特異的に認識するヒト化IgG1モノクローナル抗体A1である(Sapra P、Damelin M、Dijoseph J、Marquette K、Geles KG、Golas Jら Long−term tumor regression induced by an antibody−drug conjugate that targets 5T4, an oncofetal antigen expressed on tumor−initiating cells.Molecular cancer therapeutics.2013;12:38〜47)。mcMMAFのマレイミドが、抗体上のシステインスルフヒドリル基にコンジュゲートされた。得られたADCは、4mol/molの平均薬物:抗体比を有する。標的細胞に内部移行すると、ADCはリソソームにおいて分解されて、cysmcMMAFの放出をもたらし、それが、チューブリン重合を阻害し、アポトーシスおよび細胞死をもたらすことが提案されている。
【0060】
本明細書において使用する場合、「PI3K/mTOR阻害薬」は、PI3KおよびmTOR標的を二重阻害し得る化合物を指す。そのような二重特異性阻害薬は、mTORおよびPI3KのATP結合部位の両方に結合する。そのような阻害薬の例には、ウォルトマニン、LY294002、PI−103(Cayman chemical)、SF1126(Semafore)、BGT226(Novartis)、XL765(Exelixis)およびNVP−BEZ235(Novartis)が含まれる(Liuら、Nature Review、8、627〜644、2009)。一部の態様では、二重特異性阻害薬は、イミダゾキナゾリン(例えば、イミダゾ[4,5−c]キノリン誘導体)であろう。化合物がPI3Kおよび/もしくはmTORに結合し、かつ/またはそれらを阻害するかどうかのための例示的なアッセイは、当技術分野において周知である。
【0061】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用される。「対象」および「患者」の例には、これらだけに限定されないが、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリおよびニワトリが含まれる。例示的な一実施形態では、対象または患者はヒトである。
【0062】
臨床開発中で、かつ本発明において特に重要なPI3K/mTOR阻害薬にはまた、2−アミノ−8−[trans−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシピリジン−3−イル)−4−メチルピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン:
【0063】
【化8】
または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、またはその誘導体、および1−(4−{[4−(ジメチルアミノ)ピペリジン−1−イル]カルボニル}フェニル)−3−[4−(4,6−ジモルホリン−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]尿素:
【0064】
【化9】
または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、またはその誘導体がある。
【0065】
この第2のトリアジンをベースとした化合物は、PF−05212384、PF−’384、PF−384、またはPKI−587としても公知である。
【0066】
本明細書において使用する追加の用語には、2D(二次元細胞培養);3D(三次元細胞培養);5T4(腫瘍胎児抗原またはTPBG);5T4−ADC(5T4mAbもしくはmABsとmcMMAF毒素とのコンジュゲート);CR(完全応答);CI(併用指数);ED50(50%有効用量);IC50(50%阻害濃度);IgG(免疫グロブリンG);IHC(免疫組織化学);mc(切断不可能なマレイミドカプロイルリンカー);mcMMAF(切断不可能なマレイミドカプロイルリンカーに接続されたモノメチルオーリスタチンF);MMAF−Ome(モノメチルオーリスタチンFの透過性バージョン);mTOR(ラパマイシンの哺乳類標的);PD−901(MEK阻害薬PD0325901);PF−384(二重PI3K/mTOR阻害薬PF−05212384またはPKI−587);PI3K(ホスホイノシチド3−キナーゼ);PTX(パクリタキセル);RNAseq(RNA配列決定);SOC(標準治療処置);TCGA(The Cancer Genome Atlas);およびWYE−132(包括的mTOR阻害薬WYE−125132)が含まれる。
【0067】
本発明において使用するための活性な部位阻害薬の別のクラスは、選択的mTOR阻害薬である。このクラスのmTOR阻害薬は、1種または複数のI型ホスファチジルイノシトール3−キナーゼと比較して、mTORC1およびmTORC2活性を選択的に阻害する。I型ホスファチジルイノシトール3−キナーゼは、例えば、PI3キナーゼu、PI3キナーゼp、PI3キナーゼ7、またはPI3キナーゼ6から選択することができる。これらの活性な部位阻害薬は、m TORの活性部位に結合するが、PI3Kには結合しない。そのような阻害薬の例には、Torin1(GuertinおよびSabatini)、PP242(2−(4−アミノ−I−イソプロピル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−3−イル)−1H−インドール−5−オール)、PP30、Ku−0063794、WAY−600(Wyeth)、WAY−687(Wyeth)、WAY−354(Wyeth)、およびAZD8055(SparksおよびGuertin、Oncogene、29、2733〜2744、2010、Liuら、Nature Review、8、627〜644、2009)が含まれる。一部の態様では、mTor阻害薬は、ピラゾロピリミジンであろう。mTOR阻害薬の選択性を決定するための方法は、当技術分野において公知である。本発明において使用するためのmTOR阻害薬の別のクラスは、本発明において、「ラバログ」と称される。本明細書において使用する場合、「ラバログ」という用語は、m TOR FRBドメイン(FKBPラパマイシン結合ドメイン)に特異的に結合し、ラパマイシンと構造的に類似していて、かつmTOR阻害特性を保持している化合物を指す。
【0068】
本明細書において使用する場合、「PI3K阻害薬」という用語は、PI3Kに結合し、その少なくとも1つの活性を阻害する化合物またはリガンドを指す。PI3Kタンパク質は、3つのクラス、クラス1 P13K、クラス2 P13K、およびクラス3 P13Kに分類することができる。PI3K阻害薬の例には、BKM120(クラス1 P13K阻害薬、Novartis)、XL147(クラス1 P13K阻害薬、Exelixis)、GDC0941(クラス1 P13K阻害薬、Genentech)、GSK1059615(pan−P13K阻害薬、GlaxoSmithKline)、PX−866(クラス1 P13K阻害薬;p110u、p110p、およびp1107アイソフォーム、Oncothyreon)、およびCAL−101(クラス1 P13K阻害薬;p1106アイソフォーム、Calistoga)が含まれる。
【0069】
本明細書において既に述べたものに加えて、本発明に関連して有用なPI3KまたはPI3K/mTOR阻害薬には、GDC0941(PI3Ki)およびGDC−0980(PI3K/mTORi)(Genetech/ Roche);BEZ235(PI3K/mTORi)、BGT226(PI3K/mTORi)、BKM120(PI3Ki)およびエベロリムス(mTORC1i ラバログ)(Novartis);XL−767(PI3K/mTORi)、XL−147(PI3Ki)、およびXL−388(Exelixis/ Sanofi−Aventis);AZD8055(mTORi)(Astrazeneca);GSK214179(AKTi)およびGSK2126458(PI3K/mTORi)(GSK);OSI−027(mTORi)およびOXA−01(mTORi)(OSI);CAL−101(PI3Kδ)およびCAL120(PI3Kγ/δi)(Calistoga);SF1126(PI3Ki)(Semafore);INK−128(mTORi)、PI3Kγ/δ、およびPI3Kα/βi(Intellikine);SB2312(PI3K/mTORi)(S
*Bio);AR−mTOR−1(mTORi)およびAR−mTOR−26(mTORi)(ARRAY);PX−866(PI3Ki)(Oncothyreon);AEZS−126(PI3Ki)(Aeterna Zentaris);ZSTK474(Japanese foundation of Cancer Research);WX037(Wilex);NV−128(mTORi)(Novagen);EZN−4150(PI3Ki)(Enzon);ならびにXcovery、Cellzomeなどが開発中の化合物が含まれる。本明細書において既に述べたものに加えて、本発明に関連して有用なFGFR阻害薬には、AZD−4547(AstraZeneca);LY2874455(Lilly);BGJ−398およびドビチニブ(Novartis);ブリバニブアラニンエステル(BMS);スルファチニブ(Hutchinson Medi Pharm);インテダニブ(Boehringer Ingelheim);レンバチニブ(Eisai);およびTSU−68(Taiho Pharmaceutical)が含まれる。
【0070】
本明細書において使用する場合、「MEK阻害薬」は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ酵素MEK1および/またはMEK2を阻害する薬品または薬物である。MEK阻害薬を使用して、一部のがんにおいて過剰活性であることが多いMAPK/ERK経路に影響を及ぼすことができる。したがって、MEK阻害薬は、BRAF変異黒色腫およびKRAS/BRAF変異結腸直腸がんを含む一部のがんを処置するために可能性を有する。MEK阻害薬には、BRAF変異黒色腫を処置するためにFDA承認されていて、かつBRAF変異黒色腫を処置するためにBRAF阻害薬ダブラフェニブと組み合わせて研究されているトラメチニブ(GSK1120212);非小細胞肺がん(NSCLC)のためのフェーズ2治験において、PFSの改善を実証しており、ブドウ膜黒色腫、および分化甲状腺癌腫のための他の治験が進行中であるセルメチニブ;胆管癌および黒色腫のためにフェーズ1治験を受けているビニメチニブまたはMEK162;乳がん、結腸がん、および黒色腫と関連して調査されているPD−325901、またはPCD−901;進行黒色腫を処置するために、ベムラフェニブ(Zelboraf(登録商標))と組み合わせてフェーズIII治験中のコビメチニブまたはXL518;ならびにCI−1040が含まれる。MEK阻害薬PD−325901が、本発明に特に関連している。
【0071】
パクリタキセルは、がん化学療法において使用される有糸分裂阻害薬であり、これと、ドセタキセルとは、薬物の「タキサン」ファミリーの代表である。
【0072】
この方法の一実施形態では、異常な細胞成長は、これらだけに限定されないが、中皮腫、肝胆道(肝および胆管)、原発性もしくは続発性CNS腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、扁平上皮細胞がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚もしくは眼内黒色腫、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)がん、乳がん、子宮がん、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、睾丸がん、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、または上述のがんの1種または複数の組合せを含む。
【0073】
本発明の別の実施形態では、がんは、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、頭頸部がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、乳がん、腎臓または尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および脊髄軸腫瘍から選択されるか;または肺がん(NSCLCおよびSCLC)、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがんから選択されるか;または肺がん(NSCLCおよびSCLC)、卵巣がん、結腸がんおよび直腸がんから選択されるか;または膀胱がん、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、胃がん、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、乳がんおよび扁平上皮細胞がんから選択されるか;または子宮内膜癌、胃がん、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、乳がんおよび扁平上皮細胞がんから選択されるか;または子宮内膜癌、胃がんおよび肺がん(NSCLCおよびSCLC)から選択されるか;または上述のがんの1種または複数の組合せである。
【0074】
本発明の一実施形態では、対象において癌を処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびPI3K−mTOR阻害薬を併用投与することを含み、前記PI3K−mTOR阻害薬を、PF−384およびPF−502から選択することを含む方法を提供する。
【0075】
本発明の追加の実施形態には、PI3K−mTOR阻害薬がPF−384であるものが含まれる。
【0076】
本発明の追加の実施形態には、オーリスタチンが、式
【0077】
【化10】
[式中、出現するごとに独立に、
Wは、
【0078】
【化11】
であり、
R
1は、水素、C
1〜C
8アルキルまたはC
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
2は、水素、C
1〜C
8アルキルまたはC
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
3AおよびR
3Bは、
(iii)R
3Aは、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキル、ハロゲンまたはアラルキルであり、かつ
R
3Bは、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキル、アラルキルもしくはハロゲンである、または
(iv)R
3AおよびR
3Bは一緒になって、C
2〜C
8アルキレンもしくはC
1〜C
8ヘテロアルキレンである
のいずれかであり、
R
4AおよびR
4Bは、
(iii)R
4Aは、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキルまたはアラルキルであり、かつ
R
4Bは、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ハロアルキル、C
3〜C
8カルボシクリル、C
1〜C
10ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアラルキルもしくはアラルキルである、または
(iv)R
4AおよびR
4Bは一緒になって、C
2〜C
8アルキレンもしくはC
1〜C
8ヘテロアルキレンである
のいずれかであり、
R
5は、
【0079】
【化12】
、C
1〜C
10ヘテロシクリル、C
3〜C
8カルボシクリルおよびC
6〜C
14アリールであり、これらは、−C
1〜C
8アルキル、−C
1〜C
8アルキル−N(R’)
2、−C
1〜C
8アルキル−C(O)R’、−C
1〜C
8アルキル−C(O)OR’−O−(C
1〜C
8アルキル)、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)
2、−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、ハロゲン、−N
3、−N(R’)
2、−CN、−NHC(=NH)NH
2、−NHCONH
2、−S(=O)
2R’および−SR’からなる群から独立に選択される1、2、3、4または5個の基で置換されていてもよく、各R’は、水素、C
1〜C
8アルキルおよび非置換アリールからなる群から独立に選択されるか、または2個のR’は、それらが結合している窒素と一緒になって、C
1〜C
10ヘテロシクリルを形成することができ、または
R
5は、
【化13】
であり、これらは、C
1〜C
8アルキル、−C
1〜C
8アルキル−N(R’)
2、−C
1〜C
8アルキル−C(O)R’、−C
1〜C
8アルキル−C(O)OR’、−O−(C
1〜C
8アルキル)、−C(O)R’、−OC(O)R’、−C(O)OR’、−C(O)N(R’)
2、−NHC(O)R’、−S(O)
2R’、−S(O)R’、−OH、ハロゲン、−N
3、−N(R’)
2、−CN、−NHC(=NH)NH
2、−NHCONH
2、−S(=O)
2R’、−SR’およびアリーレン−R’からなる群から独立に選択される1、2、3、4または5個の基で置換されていてもよく、各R’は、水素、C
1〜C
8アルキル、C
1〜C
8ヘテロシクリル、C
1〜C
10アルキレン−C
3〜C
8ヘテロシクリルおよびアリールからなる群から独立に選択されるか、または2個のR’は、それらが結合している窒素と一緒になって、C
1〜C
10ヘテロシクリルを形成することができ、
R
6は、水素、−C
1〜C
8アルキル、−C
2〜C
8アルケニル、−C
2〜C
8アルキニルまたは−C
1〜C
8ハロアルキルであり、
R
12は、水素、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
10ヘテロシクリルまたはC
6〜C
14アリールであり、
R
13は、C
1〜C
10ヘテロシクリルであり、
Xは、OまたはSであるが、
ただし、R
3Aが水素である場合には、XはSである]
の化合物、または薬学的に許容できるその塩もしくは溶媒和物、または前記化合物もしくは塩もしくは溶媒和物の抗体−薬物コンジュゲートであるものが含まれる。
【0080】
本発明の追加の実施形態は、オーリスタチンが抗体薬物コンジュゲート5T4−ADC、PF−101およびMMAFから選択されるものを含む。
【0081】
本発明の追加の実施形態は、オーリスタチンが抗体薬物コンジュゲート5T4−ADCであるものを含む。
【0082】
本発明のさらなる実施形態は、オーリスタチンがオーリスタチン−101であるものを含む。
【0083】
本発明のさらなる実施形態は、オーリスタチンがMMAFであるものを含む。
【0084】
本発明のさらなる実施形態には、肺がんであるがんを処置する方法を含む。
【0085】
本発明のさらなる実施形態は、乳がんであるがんを処置する方法を含む。
【0086】
本発明のいっそうさらなる実施形態は、オーリスタチンおよびPI3K−mTOR阻害薬を同時投与または逐次投与するものを含む。逐次投与は、オーリスタチンを最初にまたは二番目に投与するいずれかの順序で行ってもよい。
【0087】
本発明の実施形態は、一定量のオーリスタチンまたは薬学的に許容できるその塩、一定量のPF−384または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を含む。
【0088】
本発明の実施形態はまた、対象においてがんを処置するための方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびMEK阻害薬を併用投与することを含む方法を含む。
【0089】
追加の実施形態は、MEK阻害薬がPD−901であるものを含む。
【0090】
追加の実施形態は、オーリスタチンが抗体薬物コンジュゲート5T4−ADC、PF−101およびMMAFから選択されるものを含む。
【0091】
一部の実施形態では、オーリスタチンは、抗体薬物コンジュゲート5T4−ADCである。
【0092】
一部の実施形態では、オーリスタチンは、オーリスタチン−101である。
【0093】
一部の実施形態では、オーリスタチンは、MMAFである。
【0094】
オーリスタチン/MEK組合せでは、実施形態は、がんが肺がんであるもの、およびがんが乳がんであるものを含む。
【0095】
本発明の一部の実施形態では、オーリスタチンおよびMEK阻害薬を、同時投与するか、または逐次投与し、逐次投与する場合には、いずれかの順序で投与する。
【0096】
本発明の一部の実施形態では、一定量のオーリスタチンまたは薬学的に許容できるその塩、一定量のPD−901または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0097】
本発明の一部の実施形態では、対象においてがんを処置する方法であって、それを必要とする対象にオーリスタチンおよびタキサンを併用投与することを含み、オーリスタチンがオーリスタチン−101であり、タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルである方法を提供する。これらの方法は、肺がんを処置する方法、および乳がんを処置する方法を含む。
【0098】
本発明の一部の実施形態では、オーリスタチン−101およびタキサンを当時投与するか、または逐次投与し、逐次投与する場合には、いずれかの順序で投与する。
【0099】
本発明はさらに、一定量のオーリスタチンまたは薬学的に許容できるその塩、一定量のタキサンまたは薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0100】
本明細書に記載の一部の実施形態では、前記併用投与によって達成される抗がん効果は、前記第1および第2の医薬組成物を非併用投与することによって達成される抗がん効果よりも大きい。
【0101】
本発明の一部の実施形態では、(a)オーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)PF−384およびPF−502から選択されるPI3K−mTOR阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、ならびに(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形を提供する。
【0102】
本発明の一部の実施形態では、(a)オーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)PD−901であるMEK阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形を提供する。
【0103】
本発明の一部の実施形態では、(a)オーリスタチン−101であるオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、(b)パクリタキセルまたはドセタキセルであるタキサン、または薬学的に許容できるその塩、ならびに(c)薬学的に許容できる担体または希釈剤を含む、哺乳類においてがんを処置するための剤形を提供する。
【0104】
本発明の一部の実施形態では、哺乳類において治療効果を達成するためのキットであって、(a)第1の単位剤形中のオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、PF−384およびPF−502から選択されるPI3K−mTOR阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含むキットを提供する。
【0105】
本発明の一部の実施形態では、哺乳類において治療効果を達成するためのキットであって、(a)第1の単位剤形中のオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、PD−901であるMEK阻害薬、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含むキットを提供する。
【0106】
本発明の一部の実施形態では、哺乳類において治療効果を達成するためのキットであって、(a)第1の単位剤形中の、オーリスタチン−101であるオーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、(b)第1の単位剤形中の、パクリタキセルまたはドセタキセルであるタキサン、または薬学的に許容できるその塩、および薬学的に許容できる担体または希釈剤、ならびに(c)前記第1および第2の剤形を収容するための手段を含むキットを提供する。本発明の一実施形態は、参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2008/002578号、米国特許出願公開第2008−0090801A1号、および米国特許第7,696,213号において記載されている2−アミノ−8−[trans−4−(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]−6−(6−メトキシピリジン−3−イル)−4−メチルピリド[2,3−d]ピリミジン−7(8H)−オン(化合物1A)
【0107】
【化14】
に関する。化合物1Aは、クラスI PI3KおよびmTORの両方の構造的に新規で強力なATP−競合的および可逆的二重阻害薬である。Dundee UniversityおよびInvitrogenキナーゼスクリーニングサービスを利用する81種のプロテインキナーゼおよびクラスIII PI3KファミリーhVps34のパネルにおける活性の欠如によって示されるとおり、化合物1Aは、PI3Kファミリーについて高い選択度を実証した。有意な阻害活性は、10μM(選択率>500)まで、評価されたキナーゼのいずれでも観察されなかった。in vivoラットPK研究から、化合物1Aは、低いクリアランスおよび良好な経口生物学的利用能(F(%)56+/−16)を実証した。化合物1Aは、20.2%の未結合画分(Fu)で、ラットにおいて中等度の血漿タンパク質結合を示した。その結果、1Aの未結合クリアランスは低い。これらの特性は、強固なin vivo性能を実証していると解釈されており、化合物1Aは、PI3K経路の異常を伴うヒトがん細胞株を移植されたマウス異種移植片モデルにおいて、in vivo活性を有する。
【0108】
本発明の別の実施形態は、参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2009/044774号、米国特許出願公開第2009−0291079A1号、および米国特許第8,039,469号において記載されている1−(4−{[4−(ジメチルアミノ)ピペリジン−1−イル]カルボニル}フェニル)−3−[4−(4,6−ジモルホリン−4−イル−1,3,5−トリアジン−2−イル)フェニル]尿素(化合物1B)
【0109】
【化15】
に関する。化合物1Bは、(IV)投与される高度に強力なpan−PI3K/mTOR阻害薬である。化学的には、化合物1Bは、PI3K酵素のATP結合ポケットにおいて結合する2,4−ビスモルホリノ−6−アリールウレイドトリアジンである。重要な結合相互作用は、モルホリノ酸素とヒンジ領域Val851との、尿素酸素とLys−802アミノ基との間のH結合、ならびに両方のウレイド−NHとAsp810カルボキシラートとの間の二重H結合である。236キナーゼに対するそのキナーゼ選択性スクリーン(Invitrogen)によって証拠づけられるとおり、化合物1Bは、PI3KおよびPIKKについて高度に選択的である。当該化合物は、50種超の多様なヒト腫瘍細胞株において、IC
50<100nMで強い抗増殖効果を有する。さらに、化合物1Bは、がん細胞株において、PI3Kシグナル伝達を上昇させながらアポトーシスを誘導し、AKTなどのPI3K/mTOR下流エフェクターのリン酸化を抑制した。特に応答性の細胞株の1つ、MDA−MB−361では、アポトーシスが、4時間目に30nMの化合物1Bで誘導され、切断PARPの抑制によって証拠づけられた。これらのin vitro結果は、in vivo結果に変換され、その場合、化合物1Bは、乳房(BT474、MDA−MB−361)、結腸(HCT116)、肺(H1975)、および膠腫(U87MG)異種移植片モデルにおいて腫瘍成長を阻害した。週1回、25mg/kgで投薬された化合物1Bは、大きな(1000mm3)MDA−MB−361腫瘍を縮小させ、再成長を抑制した。この腫瘍退縮は、MDA−MB−361モデルにおけるリン酸化Aktの退縮と相関した。
【0110】
本発明のまた別の実施形態は、参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第WO2004/011465号、米国特許出願公開第2004−0019210A1号、および米国特許第7,196,090号において記載されている1−シクロペンチル−7−(4−ジエチルアミノ−ブチルアミノ)−3−(2,6−ジフルオロ−3,5−ジメトキシ−フェニル)−3,4−ジヒドロ−1H−ピリミド[4,5−d]ピリミジン−2−オン:
【0111】
【化16】
に関する。化合物2は、チロシンキナーゼのFGFRファミリー:FGFR1、2、3、および4の経口利用可能で、強力で、かつ高度に選択的な小分子阻害薬である。化合物2は、FGFR遺伝子が変更された細胞株に対して選択的に強力であり、in vitroおよびin vivoの両方で胃および肺がん細胞株において優先的選択性を実証している。化合物2は、試験された60種超のキナーゼに対して高いキナーゼ選択性を示す。細胞アッセイにおいて、当該化合物は、FGFR2と比較して、VEGFR2に対して100倍超の選択性を有し、in vitroおよびin vivoの両方でFGFRおよび他の下流マーカーのリン酸化を阻害することが示されている。当該化合物は、FGFR遺伝子増幅または変異によって特徴づけられる様々な異種移植片腫瘍モデルにおいてin vivoで腫瘍成長を阻害することが示されている。化合物2は、薬物様医薬特性を有し、QDまたはBID経口投与に適した薬物動態プロファイルを有すると予測される。
【0112】
「処置すること」という用語は、本明細書において使用する場合、別段に示さない限り、そのような用語が適用されている障害もしくは状態、またはそのような障害もしくは状態の1種もしくは複数の症状を反転するか、緩和するか、その進行を阻害するか、または予防することを意味する。「処置」という用語は、本明細書において使用する場合、別段に示さない限り、処置する行為を指し、この際、「処置すること」は、直前で定義されている。
【0113】
本発明によって処置される患者には、これらだけに限定されないが、ヒト、ウマ、イヌ、モルモット、またはマウスなどの任意の温血動物が含まれる。例えば、患者は、ヒトである。医学分野の当業者は、がんに罹患していて、処置を必要とする個々の患者を容易に同定することができる。
【0114】
「同時投与」または「併用投与」という用語は、本明細書において使用する場合、個々の治療用化合物が、重複期間中を含めて、対象内に同時に存在するような、複数の治療用化合物の投与を指す。同時投与または併用投与はまた、個々の治療用化合物が、同じ期間また重複期間で個体中に存在するかどうかに関わらず、患者が複数の治療用化合物を投与される期間、または処置過程を指し得る。
【0115】
逐次投与は、治療用化合物が投与されない期間がその間にあってもなくても、患者が、第1の治療用化合物を第1の処方期間に与えられ、かつ第2の治療用化合物を第2の処方期間に与えられるような、複数の治療用化合物が逐次投与される処置過程を指す。
【0116】
この方法の一実施形態では、がんには、これらだけに限定されないが、中皮腫、肝胆道(肝および胆管)、原発性もしくは続発性CNS腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、扁平上皮細胞がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚もしくは眼内黒色腫、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)がん、乳がん、子宮がん、ファロピウス管がん、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、睾丸がん、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、または上述のがんの1種または複数の組合せが含まれる。
【0117】
本発明の一実施形態では、がんは、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、頭頸部がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、乳がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍または上述のがんの1種または複数の組合せから選択される。
【0118】
「相乗的」という用語は、本明細書において使用する場合、2種以上の単一薬剤の相加的効果よりも有効である治療薬の組合せを指す。例えば、5T4−mcMMAF(またはMMAFもしくは他のオーリスタチン)と1種または複数の化学療法剤との間の相乗的相互作用の決定は、本明細書に記載のアッセイから得られる結果に基づき得る。併用指数「CI」を得るために、これらのアッセイの結果を、CalcuSynソフトウェアを用いてChouおよびTalalay組合せ方法および用量効果分析を使用して分析する(ChouおよびTalalay(1984)Adv.Enzyme Regul.22:27〜55)。本発明が提供する組合せは、複数のアッセイシステムにおいて評価されており、抗がん薬において相乗作用、相加作用、および拮抗作用を定量化するための標準的なプログラムを利用して、データを分析することができる。利用するのが好ましいプログラムは、ChouおよびTalalayによって、「New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy」、Academic Press、1987において記載されている。0.8未満の併用指数(CI)値は、相乗効果を示し、1.2超の値は、拮抗作用を示し、0.8〜1.2の間の値は、相加効果を示す。併用療法は、「相乗効果」をもたらし得、かつ、「相乗的」であることが判明しており、すなわち、活性成分を一緒に使用した場合に達成される効果は、化合物を別々に使用して生じる効果の合計よりも大きい。相乗効果は、活性成分を:(1)同時に製剤化し、合わせた単位製剤で同時に投与または送達するか;(2)別々の製剤として交互に送達するか;または(3)いくつかの他のレジメンによって送達するときに達成され得る。交互治療で送達する場合、化合物を逐次的に、例えば、別々のシリンジで異なる注射剤によって投与または送達する場合に、相乗効果が達成され得る。一般に、交互治療の間、有効な投与量の各活性成分を逐次的に、すなわち、時間的に連続的に投与する。
【0119】
in vivoまたは治療相乗効果を測定する際に、相乗効果の1つの尺度は、「最高の単剤に対する超過(Excess over Highest Single Agent)」相乗効果として公知である。固定用量の組合せが、その成分用量の両方よりも優れていて、それが、「最高の単剤に対する超過」と呼ばれるような場合に、最高の単剤に対する超過の相乗効果が生じる(組合せ薬品を評価するためにそのような方法を用いるFDA’s policy at 21 CFR 300.50;およびBorisyら(2003)Proceedings of the National Academy of Science.を参照されたい)。もちろん、本明細書における「相乗効果」の使用はまた、追加および/または代替の方法によって測定されるとおりのin vivo相乗効果を包含する。
【0120】
本発明のある種の態様は、薬学的に許容できる塩の投与に関する。「薬学的に許容できる塩」という用語は、本明細書において使用する場合、別段に示さない限り、本発明の化合物中に存在し得る酸性または塩基性基の塩を含む。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプト酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる。これらは、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属に基づくカチオン、さらには、これらだけに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなどを含む非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオンを含み得る(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるS.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.、1977;66:1〜19;およびHandbook of Pharmaceutical Salts、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(編) Published jointly by VHCA (Zurich, Switzerland)&Wiley−VCH (Weinheim, Germany) 2002を参照されたい)。この用語はまた、薬学的に許容できる酸付加塩を含み、関連化合物は、水和物または溶媒和物として存在してよく、水和物および溶媒和物も、本発明の範囲内である。
【0121】
有効量の化合物(または薬学的に許容できるその塩)は、腫瘍細胞の成長またはがん転移の進行を予防または阻害するために十分な量を本発明の組合せ中に含むと理解され得る。用量および投与レジメンの治療的または薬理学的有効性はまた、具体的な腫瘍を経験している患者において寛解を誘導、増強、維持、または延長する能力としても特徴づけられ得る。
【0122】
本発明の方法または組合せにおいて利用される化合物は、臨床で通常用いられる投与量また用量で投与し得る。当業者は、公知の方法に従って、本発明の組合せにおいて使用する各化合物の適切な有効量または投与量を決定することができ、年齢、体重、全身健康、投与化合物、投与経路、処置を必要とするがんの性質および進行、ならびに他の医薬の存在などの因子を考慮して、患者に投与することができる。
【0123】
本発明の組合せの化合物の投与を、作用部位に化合物を送達することができる任意の方法によって行うことができる。これらの方法には、経口経路、十二指腸内経路、非経口注射(静脈内、皮下、筋肉内、血管内、または注入を含む)、局所、および直腸投与が含まれる。
【0124】
本発明の方法または組合せの化合物は、投与前に製剤化し得る。その製剤を好ましくは、特定の投与様式に適合させる。これらの化合物は、当技術分野において公知の薬学的に許容できる担体と共に製剤化し、当技術分野において公知の広範囲の様々な剤形で投与し得る。本発明の医薬組成物の製造では、活性成分を通常、薬学的に許容できる担体と混合するか、または担体によって希釈するか、もしくは担体内に密閉する。そのような担体には、これらだけに限定されないが、固体希釈剤または賦形剤、添加剤、滅菌水性媒体、および様々な非毒性有機溶媒が含まれる。投薬単位形態または医薬組成物には、錠剤、ゼラチンカプセル剤などのカプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、水性および非水性経口用液剤および懸濁剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、硬キャンディー剤、噴霧剤、クリーム剤、膏薬、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤、注射用液剤、エリキシル剤、シロップ剤、ならびに個々の用量に細分するために適合させた容器中にパッケージングされた非経口液剤が含まれる。
【0125】
非経口製剤には、薬学的に許容できる水性または非水性液剤、分散剤、懸濁剤、乳剤、およびそれを調製するための滅菌散剤が含まれる。担体の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。レシチンなどのコーティング剤、界面活性剤の使用、または適切な粒径の維持によって、流動性を維持することができる。例示的な非経口投与形態には、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコールまたはデキストロース水溶液中の本発明の化合物の液剤または懸濁剤が含まれる。そのような剤形を、所望の場合には適切に緩衝することができる。
【0126】
加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルクなどの滑沢剤は多くの場合に、製錠目的に有用である。同様の種類の固体組成物は、充填された軟および硬ゼラチンカプセル剤にも用いることができる。そのための好ましい材料には、ラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁剤またはエリキシル剤が経口投与のために望ましい場合には、その中の活性化合物を、様々な甘味剤または香味剤、着色剤または色素および、所望の場合には、乳化剤または懸濁化剤と共に、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、またはその組合せなどの希釈剤と一緒に合わせてもよい。
【0127】
特定の量の活性な化合物を含む様々な医薬組成物を調製する方法は公知であるか、または当業者には明らかであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easter, Pa.、15th Edition(1975)を参照されたい。
【0128】
本発明による方法、組成物およびキットは、化合物1Aもしくは薬学的に許容できるその塩、または化合物1Bもしくは薬学的に許容できるその塩を単独で、または化合物2もしくは薬学的に許容できるその塩を単独で含む従来の抗がん処置と比較して、抗がん活性である抑制の改善レベルをもたらし得る。したがって、より少ない副作用で同じか、または適正なレベルの抗がん活性を維持しながら、本発明の抗がん薬は、他の抗がん薬の非存在下では不十分であろう用量(すなわち、治療量以下)で利用することが可能であり得る。
【0129】
本発明の方法、組成物およびキットでは、オーリスタチン、または薬学的に許容できるその塩は、1日1回約0.1〜約20mgの投与量で経口(「PO」)投与し得る。例えば、1日1回約0.1〜約20mg、1日1回約0.5〜約15mg、1日1回約1〜約10mg、または1日1回約2〜8mgの投与量で。一実施形態では、特許請求の範囲に記載の治療用化合物は、1日1回約2〜8mg、または1日1回1、2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10mgの投与量で経口(「PO」)投与し得る。投与はまた、より多いか、または少ない頻度で、例えば、1日2回、2、3、4、5または6日毎に1回、2週間に1回、月に1回または処方されたとおりに行い得る。別の実施形態では、治療用化合物は静脈内注入によって投与し得る。
【0130】
本発明の方法、組成物およびキットでは、薬学的に許容できるその塩を含む治療用化合物は、週に1回約15分から約3時間かけて静脈内注入によって、好ましくは約30分かけて静脈内注入によって約10〜約500mgの投与量で投与し得る。投与はまた、より多いか、または少ない頻度で、例えば、1日1回、2、3、4、5または6日毎に1回、2週間に1回、月に1回または処方されたとおりに行ってもよい。特許請求の範囲に記載の方法および組合せにおけるオーリスタチン化合物は、他の組合せ化合物の投与の前、その間、またはその後に投与することができる。そのような併用の投与(併用投与)は、別々の剤形で、または同じ剤形であることができる。
【0131】
一部の事例では、当業者によって決定されるとおり、前述範囲の下限未満の投与量レベルでも、十分すぎることがある一方で、他の場合には、さらにより多い用量を用いてもよい。
【0132】
本発明の方法、組成物およびキットの実行を、様々な投与レジメンによって達成してよい。一態様では、当該化合物を、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週または8週サイクルで投与してよい。がん細胞の所望の減少または削減を達成するために必要な場合には、投与レジメンを繰り返してよい。
【0133】
本発明はまた、オーリスタチンおよび別の治療用化合物(もちろん、一方または両方の薬学的に許容できる塩を含む)ならびに治療剤を投与するための指示書を含むキットに関する。一実施形態では、指示書は、例えば、本発明の治療剤の同時投与または逐次投与について、治療剤の投与様式を詳述および限定する。別の実施形態では、キットは、これらだけに限定されないが、中皮腫、肝胆道(肝および胆管)、原発性もしくは続発性CNS腫瘍、原発性もしくは続発性脳腫瘍、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、扁平上皮細胞がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚もしくは眼内黒色腫、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、胃腸(胃、結腸直腸、および十二指腸)がん、乳がん、子宮がん、ファロピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、睾丸がん、慢性もしくは急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、多発性骨髄腫、胆管癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、または上述のがんの1種または複数の組合せを含むがん;またはより具体的には、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、頭頸部がん、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、乳がん、腎臓もしくは尿管がん、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、または上述のがんの1種または複数の組合せ;またはより具体的には、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、または上述のがんの1種または複数の組合せ;またはより具体的には、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、卵巣がん、結腸がん、直腸がん、または上述のがんの1種または複数の組合せ;または膀胱がん、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、胃がん、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、乳がんおよび扁平上皮細胞がん、または上述のがんの1種または複数の組合せ;または子宮内膜癌、胃がん、肺がん(NSCLCおよびSCLC)、乳がんおよび扁平上皮がん、または上述のがんの1種または複数の組合せ;または子宮内膜癌、胃がんおよび肺がん(NSCLCおよびSCLC)、または上述のがんの1種または複数の組合せを処置するためのものである。
【実施例】
【0134】
(実施例1)
細胞株および試薬
ヒト腫瘍細胞株NCI−H1975、Calu−6、NCI−H358、HCC2429、MDA−MB−468、MDA−MB−231、CAOV−3、TOV−112D、OV−90、OVCAR−3、SKOV−3、HT−29、NCI−N87、Raji、RamosをAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入した。MDAMB361−DYT2細胞MDAMB435/5T4は、ヒト5T4を安定的にトランスフェクトされた細胞である。37622A1 NSCLC患者由来の異種移植片(PDX)、ならびに37622A1からの一次血清非含有培養物TUM622の樹立および特性決定は記載されている(6)。各細胞株を、ATCCが推奨するとおりのその標準培地中で培養した。in vitro研究では、化学療法薬をSiugma−Aldrichから得た。エルロチニブおよびペメトレキセドは、Selleck Chemicalsから購入した。PF−05212384(PKI−587)、PD−0325901(PD−901)、O−Me−MMAF(MMAF)およびオーリスタチン101は、市販の試薬を用いて、公知の技術に従って調製した。5T4−ADC(A1mcMMAF)の調製は、US20120251558Aにおいて既に記載されている。
【0135】
(実施例2)
2D細胞増殖アッセイ
細胞を、透明底の96ウェルプレート(Corning)に蒔き、様々な濃度の化合物で4日間処置した。CellTiter Glo発光細胞生存率アッセイキット(Promega)を使用することによって決定し、Victor X3プレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して測定した。データを、対照群(空ベクターまたはDMSO)に対して正規化した。IC50値を、50%成長阻害をもたらす濃度として定義した。XL fit v4.2を用いるロジスティック非線形回帰、モデル番号203(IDBS、Guldford、Surry、UK)を使用して、IC50値を計算した。すべての実験ポイントを3つの反復ウェルに配置し、2連で独立に行った。
【0136】
(実施例3)
3D細胞増殖スフェロイドアッセイ
100%BD Matrigel Matrix、Growth Factor Reduced(#354230)40μl/ウェルを含む透明底の96ウェルプレート。2%マトリゲル中の3000/ウェル最終濃度のMDA−MB−468またはH−1975の細胞懸濁液を100%マトリゲルベースの頂部に重ねた。細胞を成長させ、スフェロイドを形成させ、スフェロイドが約100uMのサイズに達したときに(光学顕微鏡によって測定)、薬物処置を開始した。単回用量処置およびIC50決定では、スフェロイドの2連ウェルを化合物またはADCで処置して、9ポイント、2倍用量反応曲線を7日間得た。処置後7日目に、CellTiter Glo発光細胞生存率アッセイキット(Promega#G7570)を使用して、増殖を測定した。
【0137】
(実施例4)
相乗効果アッセイ
Chou−Talalay中央値効果分析を使用して、薬物の組合せの効果を評価した(28)。2つの独立した96ウェルプレートにおいて、対角行列形式(diagonal matrix format)で、細胞を単独の各薬物で、かつ組合せで処置し、CellTiter Gloキット(Promega)を使用することによって、増殖を測定した。未処置対象の測定ルミネセンスカウントと比較して、処置サンプルの測定ルミネセンスカウントに基づき、結果を生存画分(影響を受けた画分(fraction affected)、Fa)として表した。固定薬物比での様々な用量効果曲線を表す7つのダイアゴナルを使用して、Calcusynソフトウェア(Biosoft、Ferguson、MO)を用いて、組合せのそれぞれについて併用指数(CI)を測定した。各実験において、ED50レベルでのCI指数を、7〜8のデータポイントを有する3つの用量効果曲線で平均した。
図1を参照されたい。
【0138】
(実施例5)
インピーダンスアッセイ
96Eプレートを使用し、xCeLLigence RTCA MPシステム(Acea Biosciences Inc、San Diego、CA)を使用して、細胞成長をリアルタイムでモニターした。xCeLLigenceシステムは、導電性インピーダンスを測定することによって、細胞数の変化を検出し、ウェルの底部に付着している細胞数に直接関係する細胞指数値を生成する(29)。基線プレート細胞指数を、細胞を播種する前に得た。細胞を、4,000細胞/ウェル、50ml体積で播種し、終夜インキュベートした。投薬日(1日目)に、化合物を指示濃度で添加し、インピーダンス示度を約250時間モニターした。薬物またはビヒクル処置アームでのインピーダンス指数値を実験の終了時にプロットするか、または経時的に比較することができる。
【0139】
(実施例6)
カスパーゼ3/7アポトーシスアッセイ
MDA−468およびH−1975細胞を、処置の前日に、96ウェルプレートに1ウェル当たり15,000で播種した。処置の16、24または48時間後に、製造者プロトコールに従ってCaspase−Glo3/7アッセイ(Promega G8092、Madison、USA)を使用して、カスパーゼ3/7活性を測定した。2連のプレートで、CellTiter Glo発光細胞生存率アッセイキット(Promega G7573、Madison、USA)によって、細胞生存率を決定した。薬物処置サンプルにおけるカスパーゼ3/7活性の増大が最初に、ビヒクル処置対照と比較して表され、それが生存率について正規化され、ビヒクル処置対照と比較して、誘導倍率として表された。
【0140】
(実施例7)
細胞周期分析
製造者プロトコールに従ってFlowCellect Bivariate Cell Cycleキット(Millipore、カタログ番号FCCH025103)を使用して、組合せの細胞周期およびホスホ−ヒストンH3分析のために、細胞を調製した。FACS Calibur機器(BD Biosciences)およびFlowJoソフトウェア(TreeStar、Ashland OR)を使用するフローサイトメトリーによって、サンプルを分析した。
【0141】
(実施例8)
異種移植片有効性
雌の無胸腺nu/nuマウス(18〜23g)をCharles River Laboratories、Wilmington、MAから得た。マウスに、腫瘍細胞を皮下注射し、ステージ分類された腫瘍(staged tumor)を有する動物に、生理食塩水(ビヒクル)、5T4−ADC、PF−384、パクリタキセル、または組合せの5T4−ADC+PF−384、5T4−ADC+パクリタキセルを静脈内投与した。ADCを、1群当たり8〜10マウスで、Q4D×4(4日毎)のスケジュールで、mAbタンパク質含有率に基づきAb2または3mg/kgで投与した。5T4−ADC、PF−384およびパクリタキセルを、ヒトにおいてこれらの薬物によって達成された曝露から外挿された臨床関連用量(CRD)で投薬した。マウスを使用するすべての手順は、確立されたガイドラインに従って、Pfizer Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。薬物処置群を比較するために、エンドポイントまでの時間(腫瘍がなくなるまでの時間、または腫瘍3倍化の速度)を使用した。図の説明文において示されているとおり、T検定を使用して、個々の腫瘍体積を比較した。
【0142】
(実施例9)
in vitroでの5T4−ADCまたはオーリスタチンペイロードの組合せ
肺、乳がんおよび卵巣がん細胞株において、様々な標準治療(SOC)剤または選択されたシグナル伝達阻害薬と組み合わせた5T4−ADCまたはオーリスタチンペイロードのin vitro細胞傷害性活性を評価した。以前に記載されたとおりに(Sapraら、2013)、5T4状態に基づき、各腫瘍適応のための細胞株を選択した。薬物組合せ研究を開始する前に、従来の2D増殖アッセイにおける各薬剤のIC50値を決定した。Chou−Talalay法を用いて、種々の用量−効果レベルでのCI値を計算した。独立した実験からの平均CI値を、表2〜5および
図1Aおよび1Bにおいて表す。CI値<0.9を相乗効果;0.9〜1.1を相加効果;CI>1.1を拮抗作用の証明と判断した。5T4−ADCをPF−384、PD−901、ペメトレキセド、エルロチニブ、またはタキサンと組み合わせた場合には、一貫して強い相乗効果が存在した。多くの細胞株が、単独のPD−901またはエルロチニブに対して比較的非感受性であったが、感受性および非感受性細胞の両方が、相乗的相互作用(表2〜5)を示した。5T4−ADCを白金化合物と組み合わせた場合には、相加性が一般的に観察されたが、中等度の相加または拮抗作用が、5T4−ADCと、アドリアマイシン、エピルビシンまたはゲムシタビン(gemcitibine)との間で観察された。オーリスタチンまたは追加の微小管阻害薬も組合せアッセイに含まれた。相乗的または相加的相互作用のパターンは、ペイロード、MMAF−OMe、またはオーリスタチン−101の細胞透過性バージョンと、上記薬剤との間でも観察された。細胞株のより小さなサブセットにおいてPF−384と組み合わせた場合に、パクリタキセルまたはビノレルビンも、相乗的または相加的関係を示した。高度に選択的なmTORキナーゼ阻害薬WYE−132(表5)は、HT−29、N87細胞においてオーリスタチン−101の抗増殖性効果を増強し、これは、mTORの機能を低減させることが全体として、少なくとも部分的に、オーリスタチンとPF−384との間で観察された広範な相乗効果を担い得るという見解を裏付ける所見である。オーリスタチンをベースとした薬剤と、PF−384またはパクリタキセルとの間のより強固な相乗効果が、より広い範囲の細胞株および腫瘍種にわたって同定されるという事実は、これらの組合せが、有望な臨床的有用性を提供し得ることを示唆している。
【0143】
相乗的相互作用の反応速度を理解するために、xCelligenceシステムを使用する細胞成長の動的モニタリングを行ったが、これは、リアルタイムで増殖および付着の導電性インピーダンス測定を提供する。長期間にわたる効果の増強のより正確な可視化を可能にするために、所定の最適以下の用量の薬物で、MDA−468細胞を、単独の単一薬物5T4−ADC、PF−384で、または5T4−ADC/PF−384の組合せで処置した。約11日間の経過にわたって、試験濃度の5T4−ADC、またはPF−384によって、細胞成長の軽微な阻害が観察された(
図2A、B)。しかしながら、5T4−ADC/PF−384の組合せに起因する増殖の阻害は、単独の個々の薬剤のいずれかの効果よりもかなり顕著であった。組合せ混合物の添加直後に、増強が認められ、その効果は、実験の全時間経過を通じて続いた。遊離の非コンジュゲートペイロードMMAF−OMeをPF−384と組み合わせた場合に、同様の結果が得られた(
図2C、D)。したがって、これらの結果によって、従来の増殖アッセイを使用しての本発明者らの先行する所見が確認され、in vitroでの相乗効果の時間依存性についての追加の洞察が得られた。
【0144】
細胞外マトリックスの存在下で生成した多細胞3Dスフェロイドは、成長中の固形腫瘍とより高い類似性を有するが、2D培養とは対照的に、3D条件下の細胞は、よりゆっくりとした速度で増殖し、静止状態にある細胞を含有する。3D条件下での薬物の組合せ効果についての生物学的洞察を得るために、5T4−ADC、MMAF−OMe、PF−384およびパクリタキセルでの処置に対するMDA−468スフェロイドの応答を調査して、単独での各薬剤についてのIC50を決定した。次いで、固定用量の第2の薬剤と組み合わせた5T4−ADCの段階希釈法によって、または2種の薬物の相互組合せとして、組合せを評価した。単独の単一薬物対照を得るために、組み合わせた薬剤を単一薬剤としても同じ実験に含めた。3Dスフェロイド細胞毒性の有意な増強が、5T4−ADC/PF−384、MMAF−OMe/PF−384、または5T4−ADC/パクリタキセルの組合せで観察された(
図3A〜F)。5T4−ADC/PF−384、MMAF−OMe/PF−384または5T4−ADC/PTXの組合せで処置された肺がんH−1975スフェロイドで、同様の観察が成された(
図3G〜J及び図示していないデータ)。
【0145】
(実施例10)
アポトーシスおよび細胞周期に対するPF−384またはパクリタキセルの効果
5T4−ADCおよびPF384またはパクリタキセルの組合せによって誘導された相乗的成長阻害がアポトーシスによるものかどうかを評価するために、H−1975またはMDA−468細胞におけるプロアポトーシスシグナルカスパーゼ3/7活性化を決定した。単独の5T4−ADCまたはPF−384は、インキュベーションから24時間後に測定すると、両方の細胞株において、カスパーゼ3/7の中等度の活性化をもたらした(
図4)。しかしながら、組合せ処置は、カスパーゼ3/7の誘導の顕著な増強を示した(
図4A、E)。同じ細胞をMMAF−OMe+PF−384で処置した場合に、同様の結果が得られたが、これは、5T4−ADC/PF−384の組合せにおけるアポトーシスの誘導が、親ペイロードであるMMAF−OMeの作用に機械的に連結していることを示唆している(
図4B、F)。切断PARPでのイムノブロット分析(図示せず)が、5T4−ADC/PF384またはMMAF−OMe/PF384の組合せによるアポトーシスの誘導をさらに裏付ける。さらに、カスパーゼ3/7活性化の増強はまた、単独の単一薬剤で処置された細胞と比較して、5T4−ADCまたはMMAF−OMe+パクリタキセルで48時間処置されたMDA−468細胞において観察された(
図4C、D)。総じて、これらの所見は、組合せで観察される抗増殖効果が、少なくとも部分的に、カスパーゼ3/7によって媒介されるアポトーシス応答の増強によると考えられ得ることを実証している。
【0146】
加えて、細胞周期進行のモジュレーションが、細胞周期に対して別個の効果を有すると予測される薬剤である5T4−ADCとPF−384との間の相乗効果についての説明を与え得るかどうかを評価した。細胞増殖のためにIC50で、またはそれを超える濃度での薬物曝露から24または36時間後に、細胞周期分析をMDA−468およびH−1975細胞の両方で行った(
図5A〜Cまたデータは図示せず)。予測されたとおり、PF−384は、細胞周期のG0/G1期にある細胞の蓄積を誘導し、G2/M期にある細胞の画分が低減した。この効果は、薬物処置から24および36時間後に明らかであった。対照的に、5T4−ADCは、細胞周期のG2/M期にある細胞の用量依存的蓄積を引き起こし、かつ5T4−ADCおよびPF−384の組合せでの曝露処置から24〜36時間以内でのG0/G1細胞の同時低下は、曝露から24時間までに、G1にある細胞の当初蓄積、およびG2/M期にある細胞のほぼ正常なパーセンテージをもたらした(
図5A、B)。単独での5T4−ADCとは違って、組合せでは、あらゆる時点で、G2/Mピークの増大は観察されず、36時間までにG2/Mの減少が明らかであった。これは、G1以下の著しい増大を随伴し、このことは、G2/Mのより短い期間は、細胞周期のこの段階での細胞死の増強によって説明され得ることを示唆している(データは図示せず)。さらに、G0/G1およびG2/Mに対する、10−または100nM−PF−384と組み合わせた未コンジュゲートMMAF−OMeの効果は、少なくとも試験濃度では、単独のMMAF−OMeと総じて同様であった(データは図示せず)。当該組合せについて検出された総G2/Mピークの減少と一致して、単独の5T4−ADCと比較して、5T4−ADC/PF−384の組合せで24または36時間処置された細胞では、ホスホ−ヒストンH3のレベルの減少が観察された(24時間、5T4−ADC+PF−384(4.9%)対5T4−ADC(7.7%);36時間、5T4−ADC+PF−384(6.2%)対5T4−ADC(10.8%))。これは、薬物の組合せで処置された細胞が有糸分裂停止状態からより速く出ることを示唆し得る知見である(
図5C)。
【0147】
(実施例11)
5T4−ADCおよびPF−384またはパクリタキセルでのin vivo併用療法
in vitroでの5T4−ADC/PF−384または5T4−ADC/パクリタキセルでの細胞増殖の優先的な減少、およびアポトーシスの誘導が、in vivo設定に変換することができるかを決定するために、2種の以前に特徴づけられた腫瘍異種移植片モデルにおける個々の単一の薬剤、および組合せの有効性を評価した。MDA−468三種陰性乳がんおよびH−1975肺腺癌モデルは、フローサイトメトリーおよびIHC染色によって示されているとおり、幅広い範囲の5T4発現レベルを有する5T4+腫瘍異種移植片である(3)。この研究において使用した薬剤は、高用量で使用した場合ほど、高い有効性につながり得るが、本発明者らのデータから臨床診療へのより良好な変換性を保証するために、これらの薬物の臨床関連用量の投与が焦点であった。腫瘍不含(腫瘍退縮)までの時間のエンドポイントまでの時間(TTE)分析を、H−1975異種移植片と比較して、5T4−ADCに対して通常はより感受性のあるMDA−468乳がんモデルについて行った。TTEプロットは、PF−384(7.5mg/kg)で処置された動物はすべて、腫瘍をなお含有したが、5T4−ADC(2mg/kg)および5T4−ADC/PF−384群は、研究経過にわたって腫瘍退縮を達成したことを示している(
図6A)。単独の5T4−ADCに対して、組合せアームでは、完全な腫瘍退縮を達成するために必要な時間は、かなり短く(対数順位検定によればp<0.0001)、5T4−ADC/PF−384群の動物はすべて、36日目までに腫瘍不含となった。さらに、平均腫瘍体積における有意な差が、最初の投薬から53日後に、単一処置アームと5T4−ADC/PF−384の組合せとの間で観察された(PF−384対5T4−ADC/PF−384でp<0.0001;t検定によれば5T4−ADC対5T4−ADC/PF−384でp=0.02)(
図6B)。留意すべきことに、53日目に、5T4−ADC/PF−384の組合せアームは、10/10の完全寛解(CR)を有したのに対して、単独の5T4−ADCでは僅か3/8のCRであり、PF−384群ではCRがなかった(
図6B)。腫瘍体積の3倍未満の増加を有する動物のパーセンテージを、一般にMDA−468よりも5T4−ADCに対して感受性の低いH−1975モデルの分析のための生存エンドポイントとして使用した。TTE分析は、単独の5T4−ADC(3mg/kg;p=0.0356、対数順位検定)または単独のPF−384(7.5mg/kg、p<0.0001、対数順位検定、
図6C)と比較して、組合せ群では、腫瘍3倍化速度の統計的に有意な遅延を示した。5T4−ADC+PF384での処置も、腫瘍成長のより完全な抑制をもたらし、治療の開始から21日目には(p=0.006)、腫瘍体積の統計的に有意な差を有した(
図6C)。
【0148】
in vitroで5T4−ADCとタキサンとの間で観察される所与の好ましい相互作用、in vivoでのこの組合せの潜在的な抗腫瘍活性を調査した。MDA−468異種移植片を、5T4−ADC(2mg/kg)+パクリタキセル(22.5mg/kg)の組合せで試験した。これらの組合せのTTE分析によって、単独の単一薬物と比較して、組合せアームでは、完全な腫瘍退縮を達成するために必要な時間が有意により短いことが判明した(
図7A、C)。
図7Bにおいて示されているとおり、5T4−ADC単剤療法は、2mg/kgで強い抗腫瘍活性を示し、53日目までに8の腫瘍のうちの3において腫瘍退縮をもたらしたが、10mg/kgでの単独のパクリタキセルは、腫瘍成長に対して顕著な効果を有さなかった。10の腫瘍のうちの9の腫瘍における腫瘍退縮および平均腫瘍体積の有意な差によって証明されるとおり(t検定p=5T4−ADC/PTX対5T4−ADCでは0.037;5T4−ADC/PTX対PTXではp<0.0001)、5T4−ADC/PTX組合せ群は、単剤療法処置を上回る治療効果を示した。パクリタキセル22.5mg/kgと組み合わせた5T4−ADCは、53日目までに9の腫瘍のうちの9で顕著で永続的な退縮を示したが、単独の単一処置は、より中等度の抗腫瘍活性を示した(5T4−ADCでは3/9のCR、PTXでは6/10のCR;平均腫瘍体積:5T4−ADC/PTX対5T4−ADCではp=0.037;5T4−ADC/PTX対PTXではp<0.0001)(
図6D)。H−1975肺がん異種移植片も、同様の単一の薬剤(5T4−ADC3mg/kg、パクリタキセル10mg/kg)または併用療法で処置した(
図7)。単独での5T4−ADCまたはPTX処置アームと比較して、組合せ群での腫瘍3倍化速度の有意な遅延によって証明されるとおり、5T4−ADC+パクリタキセルでの二重処置は、単剤療法処置と比較して、抗腫瘍活性の明白な増強をもたらした(
図7A)。さらに、平均腫瘍体積は、単独の単一薬物処置アームに対して、当初投与から46日後に5T4−ADC/PTX群において著しく減少した(
図7F;p<0.0001、t検定)。
【0149】
本発明者のグループにおいて最近立証された肺がんAA37622のPDXモデル、k−ras変異モデルを含むために、研究を行った(3、4)。際立ったことに、3mg/kgの5T4−ADCおよび22.5mg/kgのパクリタキセルの同様の組合せは、単剤療法処置と比較すると、より顕著な腫瘍成長の抑制をもたらした(5T4−ADC/PTX対5T4−ADCではp<0.001、5T4−ADC/PTX対PTXではp<0.0001、56日目での二元ANOVA;
図7G)。
【0150】
生物学的データ
【0151】
【表1】
【0152】
【表2-1】
【0153】
【表2-2】
【0154】
【表3-1】
【0155】
【表3-2】
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
表1には、研究において使用したがん細胞株が列挙されている。各細胞株での細胞株の名称、由来組織、選択された変異または分子状態を、公的に利用可能な供給源に基づきまとめている。
【0159】
表2〜5には、ED50レベルでのそれぞれ決定された組合せでの平均併用指数(CI)値が列挙されている。CIは、次のとおり解釈されている:非常に強い相乗効果(0.1未満)、強い相乗効果(0.1〜0.3)、相乗作用(0.3〜0.7)、中等度の相乗作用(0.7〜0.85)、僅かな相乗作用(0.85〜0.9)、ほぼ相加的(0.9〜1.1)、僅かな拮抗作用(1.1〜1.2)および中等度の拮抗作用(1.2〜1.45)。結果は、少なくとも3回の独立した実験の平均である。