(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784684
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の走行用バッテリの充電状態を管理するための方法
(51)【国際特許分類】
B60W 20/13 20160101AFI20201102BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20201102BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20201102BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20201102BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20201102BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20201102BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20201102BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20201102BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20201102BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
B60W20/13ZHV
B60W10/26 900
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H01M10/44 Q
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L50/16
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H02J7/04 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-542347(P2017-542347)
(86)(22)【出願日】2015年11月2日
(65)【公表番号】特表2018-501148(P2018-501148A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】FR2015052946
(87)【国際公開番号】WO2016071615
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年8月9日
(31)【優先権主張番号】1460586
(32)【優先日】2014年11月3日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミロ−パドヴァーニ, トマ
(72)【発明者】
【氏名】ウラバ, アブダル−シャリル
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0061322(US,A1)
【文献】
特開2002−199505(JP,A)
【文献】
特開2011−098652(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0015202(US,A1)
【文献】
特開2014−148225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
B60L 50/00 − 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの充電の状態を既定の目標の充電の状態値(SOC_target)より上に維持する目的で間欠的に充電されるバッテリのフロート充電フェーズを作動させるステップを含む、前記バッテリの充電の状態(SOC)を管理するための方法であって、前記バッテリが、内燃機関と電気機械とを含むハイブリッド車両の走行用バッテリであり、
− 前記バッテリの充電の状態を前記既定の目標の充電の状態値(SOC_target)より上に維持することができない前記バッテリの使用の臨界状況を検出するステップと、
− 前記バッテリの使用の前記臨界状況が検出されたときに、前記既定の目標の充電の状態値(SOC_target)を増大させるステップと
− 前記フロート充電フェーズを作動させることにより、前記バッテリの前記充電の状態を既定の目標の充電の状態値(SOC_target)より上に維持するステップと
を含み、
最大充電パワーに基づいて計算されるバッテリ充電見込みの予測値が減少し始め、次いで0に近づく前記バッテリの使用の前記臨界状況を検出する前記ステップが、
前記車両の現在の運転状況と前記車両の車載低電圧電気系統にパワー供給するために前記バッテリによって供給される電気エネルギーとに基づいて、前記バッテリに供給することが可能である前記最大充電パワーを予測するステップと、
前記最大充電パワーと前記バッテリの使用の前記臨界状況の所定のパワー閾値とを比較するステップとを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記バッテリに供給することが可能である前記最大充電パワーの前記予測が、以下の計算を含むことを特徴とし、
式中、P
chargemax(t)は、前記バッテリに供給することが可能である前記最大充電パワーの予測値であり、
は前記内燃機関が供給することができる最大機械パワーであり、
Pbat
maxは、前記バッテリに認められた前記最大充電パワーであり、
P
dcdc(t)は、前記車両の前記低電圧車載電気系統が前記走行用バッテリで取得される前記エネルギーから供給されることを可能にするために使用されるDC/DC変換器によって消費されるパワーであり、
P
GMT(t)は、走行に必要とされる機械パワーであり、
η
MEは、前記電気機械の効率である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大充電パワーの前記予測値が、スライドする時間窓にわたって得られる、それぞれPdcdc(t)およびPGMT(t)の一組の瞬時値の平均値から導出される平均された値(Pavgchargemax)であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スライドする時間窓が、約300秒の継続期間を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記既定の目標の充電の状態値(SOC_target)を増大させる前記ステップが、全電気式モードにある前記車両の目標自律値を決定すること、前記車両の使用の現在の状況における前記目標自律値を確実にするために必要とされる電気エネルギー値の予測、ならびに前記バッテリの温度および経年変化を考慮に入れる変換係数を使用することによる前記必要とされる電気エネルギー値の充電の状態値への変換を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
バッテリの充電の状態(SOC)を既定の目標の充電の状態値(SOC_target)より上に維持するために前記バッテリを間欠的様式で充電するように設計されるバッテリ充電手段を作動させるためのバッテリ制御手段を含む、前記バッテリの充電の状態を管理するための装置であって、前記バッテリが、内燃機関と電気機械とを含むハイブリッド車両の走行用バッテリであり、前記制御手段が、前記バッテリの充電の状態を前記既定の目標の充電の状態値より上に維持することができない前記バッテリの使用の臨界状況を検出すること、および、使用の前記臨界状況が検出されたときに前記既定の目標の充電の状態値(SOC_target)の増大、および前記バッテリ充電手段を作動させることにより、前記バッテリの前記充電の状態を既定の目標の充電の状態値(SOC_target)より上での維持を命令することができ、前記制御手段は、前記車両の現在の運転状況と前記車両の車載低電圧電気系統にパワー供給するために前記バッテリによって供給される電気エネルギーとに基づいて、前記バッテリに供給することが可能である最大充電パワーを予測すること、および、前記最大充電パワーと前記バッテリの使用の前記臨界状況の所定のパワー閾値とを比較することにより、前記最大充電パワーに基づいて計算されるバッテリ充電見込みの予測値が減少し始め、次いで0に近づく前記バッテリの使用の前記臨界状況を検出することを特徴とする、装置。
【請求項7】
走行用バッテリと、請求項6に記載の前記バッテリの充電の状態を管理するための装置と、を含むハイブリッドモータ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリのフロート充電フェーズを作動させるステップを含む、バッテリの充電の状態を管理するための方法に関し、ここでバッテリは、バッテリの充電の状態を既定の目標値より上に維持する目的で間欠的に充電される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、好ましくは、内燃機関と、車両の駆動車輪へのトルクの伝達を同時にまたは独立して確実にするための少なくとも1つの電気機械とを含む、ハイブリッドパワートレイン搭載のハイブリッド車両の走行用バッテリに当てはまる。本発明は非限定的な様式で、車両が始動するフェーズまたは停止からの「発進」フェーズ中、および低速度の車両の動きで、車輪に提供されるパワーが車両の走行用バッテリから排他的に供給されることを必要とするハイブリッドパワートレイン構造に実装される走行用バッテリに当てはまる。意図的に、内燃機関は既定の閾値車両速度からのみ車両の推進力に介入することができ、その結果、パワートレインが、内燃機関が介入することができる前記既定の閾値車両速度まで車両を始動させるおよび動かすために車両の走行用バッテリに格納される電気エネルギーのみ有するという特定の構造が、まさにそれに当てはまる。
【0003】
この「発進」フェーズでは、内燃機関は、走行に関与することもバッテリを充電することもない。その結果、走行用バッテリの充電レベルが事前に定義された閾値を下回って低下しすぎると、車両は、車両が停止状態にある間に走行用バッテリの充電モードを作動させるために(一時的に)静止されなければならない。しかしながら、交通渋滞タイプの運転状況において、または(雪の中)低速度で坂道を上るとき、バッテリの充電の状態を閾値より上に維持して、必要とされる最小パワーレベルを提供することを可能にすることは困難になり得る。電気付属品の寄与も、走行用バッテリの放電を加速する可能性のある悪化要因である。最後に、温度も、それが走行に実際に利用可能な電気エネルギーに影響を与える限りにおいて、考慮すべき要因である。
【0004】
故に、いくつかの使用のケースにおいて、専用のバッテリ管理コンピュータによって適用されるエネルギー管理規則が、必要とされる最小パワーレベルを確実にすることを可能にする状況にバッテリが維持されることを許可しない。その結果、車両は一時的な静止に直面する可能性があり、この場合、走行用バッテリは、車両を停止から、および車両の低移動速度で、発進させるために必要とされる走行パワーを供給することができない。
【0005】
特許文献FR2992274は、出願者の名の下に、上記に示すような制限を有するハイブリッドパワートレイン搭載のハイブリッド車両走行用バッテリの充電を制御する方法を開示し、この方法は、車両の強制停止の場合には、バッテリの充電の状態が閾値を上回って戻らない限り車両始動が完全に拒否されるなか、内燃機関が発電機モードで動作する電気機械を駆動してバッテリを充電し、必要とされる最小パワーレベルを供給することを可能にすると定めている。
【0006】
このシステムの不都合な点は、走行用バッテリの性能特性が回復されるまで、言い換えると、走行用バッテリの性能特性が必要とされる最小パワーレベルを供給することを可能にする充電状態および温度状況に戻るまで、車両が静止されることである。
【発明の概要】
【0007】
故に、停止状態で走行用バッテリを再充電するために車両が静止されるというケースが発生することをできる限り制限可能にする必要がある。
【0008】
この目的は、バッテリのフロート充電フェーズを作動させるステップを含む、バッテリの充電の状態を管理するための方法を通して達成され、ここでバッテリは、バッテリの充電の状態を既定の目標の充電の状態値より上に維持する目的で間欠的に充電され、本方法は、
− バッテリの充電の状態が既定の目標の充電の状態値より上に維持されることを妨げる可能性のあるバッテリの使用の臨界(critiques)状況の検出のステップと、
− バッテリフロート充電フェーズを作動させるステップに事前に対処するために、バッテリの使用の臨界状況が検出されたときに、既定の目標の充電の状態値を増大させるステップと
を含むことを特徴とする。
【0009】
本バッテリは内燃機関と電気機械とを含むハイブリッド車両の走行用バッテリであり、バッテリの使用の臨界状況を検出するステップは有利に、
− 車両の現在の運転状況と車両の車載低電圧電気系統にパワー供給するために走行用バッテリによって供給される電気エネルギーとを考慮して、バッテリに供給することが可能である最大充電パワーを予測するステップと、
− 予測された最大充電パワーの、バッテリの使用の臨界状況の検出の事前に定義されたパワー閾値との比較と
を含む。
【0010】
有利に、バッテリに供給することが可能である最大充電パワーの予測は、以下の計算を含み、
式中、P
chargemax(t)はバッテリに供給することが可能である最大充電パワーの予測値であり、
は内燃機関が供給することができる最大機械パワーであり、
Pbat
maxはバッテリに認められた最大充電パワーであり、
P
dcdc(t)は、車両の低電圧車載ネットワークが走行用バッテリで引き出されるエネルギーから供給されることを可能にするために使用されるDC/DC変換器によって消費されるパワーであり、
P
GMT(t)は走行に必要とされる機械パワーであり、
η
MEは電気機械の効率である。
【0011】
好ましくは、最大充電パワーの予測値は、スライドする時間窓にわたって得られる、それぞれP
dcdc(t)およびP
GMT(t)の一組の瞬時値の平均値から導出される平均された値である。
【0012】
有利に、スライドする時間窓は約300秒の持続期間を有する。
【0013】
好ましくは、既定の目標の充電の状態値を増大させるステップは、全電気式モードにある車両の目標自律値を決定すること、車両の使用の現在の状況における目標自律を確実にするために必要とされる電気エネルギー値の予測、ならびにバッテリの温度および経年変化を考慮に入れる変換係数を使用することによる必要とされる電気エネルギー値の充電の状態値への変換を含み得る。
【0014】
コンピュータプログラム製品がさらに提案され、それはこのプログラムがプロセッサによって実行されるとき上記の方法のステップを実施するための命令を含む。
【0015】
そのため、上記の方法は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどのデジタル処理手段によって実装され得る。
【0016】
バッテリの充電の状態を既定の目標の充電の状態値より上に維持するためにバッテリを間欠的様式で充電するように設計されるバッテリ充電手段を作動させるためのバッテリ制御手段を含む、バッテリの充電の状態を管理するための装置がさらに提案され、前記装置は、前記制御手段がバッテリの充電の状態が既定の目標の充電の状態値より上に維持されることを妨げる可能性のあるバッテリの使用の臨界状況を検出すること、およびバッテリの充電手段の作動に事前に対処するために、使用の臨界状況が検出されたときに既定の目標の充電の状態値の増大を命令することができることを特徴とする。
【0017】
上記のような走行用バッテリと管理装置とを含むハイブリッドモータ車両がさらに提案される。
【0018】
本発明の他の機能および利点は、経時的な車両速度の増加に対して、使用の臨界状況およびバッテリの充電の状態(SOC)の臨界状況を決定するために使用されるバッテリが利用可能な最大理論充電パワーの予測値の平均値における変化を例証する単一の添付の図面を参照して、非限定的な指示として与えられる本発明の特定の実施形態の以下の記述を読むことで明らかになるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】5%斜面および車両の電気付属品の高消費で、通常運転の第1のフェーズに続き第2の交通渋滞フェーズを含むシナリオに従って、時間の関数としての車両の速度曲線、ならびに並行して、下記に概説される原則に従って予測される最大平均充電パワーの曲線およびバッテリの充電の状態(SOC)の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の記述は、内燃機関と少なくとも1つの電気モータとを含むハイブリッドパワートレイン搭載のハイブリッド車両を参照してなされ、ここで車両が停止状態および低速度(およそ0から15km/h)にある間の車両の「発進」フェーズは、電気モータによって、および走行用バッテリからの電気パワーを介して確実にされる。走行に必要とされる、具体的には停止状態で充電するための事前の静止なしの車両発進に必要とされるエネルギーをバッテリが供給する能力を確実にすることができるように、本発明の方法は、バッテリの電気エネルギーを貯蔵するための専用モードを必要に応じて作動させることができるように、バッテリの充電の状態を維持するのに不利な使用の臨界状況を検出することを提供する。
【0021】
これを行うには、
− 車両速度:v
veh(t)と、
− DC/DC変換器によって消費されるパワー:P
dcdc(t)(DC/DC変換器は、従来、走行用バッテリで引き出されるエネルギーから、車両の車載低電圧電気系統(14VDC)を供給することを可能にするために使用され、そこで電気パワーは利用可能であり、また車両に搭載されて設置されかつ車載電気系統に電気的に接続される様々な電気負荷によって消費される)と、
− (加速装置を介して)運転者によって表される車輪でのトルク需要と車輪の回転速度との積に対応する、パワートレインによって車輪に供給されるパワー:P
GMT(t)=T
GMT(t)×ω
wheel(t)と、
− バッテリに供給することが可能である最大充電パワーの予測値と
を含む、車両においてすでに利用可能な特定の数の変数が必要とされる。この値は以下のように計算され、
(1)
正の電気パワーはバッテリの負荷パワーであるという慣習に従う。
【0022】
は内燃機関が最も好ましい変速比で供給することができる最大機械パワーである。全ての既存の比におけるエンジン速度を計算することによって、各比におけるその最大トルクが予測され得、最大トルクと速度との積が各比におけるエンジンの最大パワーを与え、
は全ての比において獲得される最も高いパワーにより与えられる。
【0023】
Pbat
maxは、バッテリおよび電気機械に認められる最大充電パワーであり、したがって、この値は、機械が達することができる性能レベルとBMS(Battery Management System)によって計算されるバッテリ制約との併合である。
【0024】
上の式(1)では、発明者らは、エンジンが
を供給することができる最大機械パワーから開始し、発明者らは、P
GMT(t)、即ち、走行に必要とされる機械パワーを差し引く。残りの機械パワー(ある場合)は、η
MEにより与えられる予測された機械効率を介して電気パワーに変換される。獲得された電気パワーから、発明者らは、DC/DC変換器によって引き出される電気パワーP
dcdc(t)、を差し引く。結果として生じる電気パワーは、バッテリに送られ得る最大パワーPbat
maxによって減少する。
【0025】
車両の2つの異なる使用のケースが、バッテリに供給することが可能である最大充電パワーを予測するための先の計算の利用を例証するために下に記述される。
【0026】
第1の使用ケースは、50km/hの一定速度で車両を運転するフェーズに関する。このケースでは、P
GMT(t)は、低値、例えば10kWと予測され得る。値
は高値と予測され得る。したがって、例えば80kWに等しいと見なされるエンジンの最大パワー
は60kWと予測され得る。P
dcdc(t)は平均値に設定され、例えば−500Wに等しく、η
MEは80%に設定される。
【0027】
これらの状況において、最大理論充電パワーは、(60−10)
*0.8−0.5=39.5kWと予測され得る。
【0028】
それにもかかわらず、実際には、バッテリに認められる最大充電パワーはより低く、例えば20kWに等しい。故に、バッテリに供給することが可能である最大充電パワーP
chargemax(t)は、この使用ケースでは最終的に20kWと予測される。この結果は、所望の場合、20kWがバッテリに伝えられるという事実を反映する。これは、それが車両に適用される命令であるということを意味しない。反対に、バッテリに伝えられ得るパワーのレベルを考慮して、車両の全経路がこれらの使用状況で発生する場合、バッテリの充電の状態を維持することができない可能性はゼロであると見なされ得る。
【0029】
ここで、車両の発進フェーズに関する、例えば5km/hでの使用の第2のケースを検討する。このケースでは、P
GMT(t)は、運転者によって要求される加速に依存するが、それは、例えば荒い発進で、15kWに達することができる。しかしながら、この使用のケースでは、上で説明したように、内燃機関がこの速度では走行に関与することはできないため、
はゼロである。使用の第1のケースに設定されるものと同じ値が、P
dcdc(t)およびη
MEに関して保持され、即ち、P
dcdc(t)=−500Wおよびη
ME=80%である。しかしながら、この使用のケースでは、電気機械が走行時に動作し、故に電気エネルギーを消費して、もはや電気エネルギーを生成しないため、その実際の収率は1/80%と逆である。
【0030】
これらの状況において、最大理論充電パワーは、(0−15)
*(1/0.8)−0.5=−19.25kWと予測され得る。ここで、最大充電パワーは、放電パワーに実際に対応して負である。これは、これらの使用の状況において、およびバッテリを再充電するといういかなる要望にもかかわらず、−19.25kWまでのバッテリの放電が不可避であるという事実を例証する。したがって、当業者は、多くの発進を有する経路の間、かつその間の速度が、内燃機関が使用され得る速度15km/hをめったに超えることがない場合、バッテリの充電の状態を維持することができない真の可能性があるということを想像することができる。
【0031】
実施形態に従って、バッテリの充電の状態の維持に対する臨界状況を特徴付けるための上記の変数の瞬時値を「外挿する」ために、スライド平均法が経過時間窓上で使用される。したがって、スライドする時間窓において獲得される変数の瞬時値は平均されて、そこからフィルタされた信号を決定する。スライドする時間窓の長さは、バッテリの充電の状態を保つための戦略の補正パラメータであり、その指標は、例えば300秒である。スライド平均を使用する欠点は、それが平均されたサンプルを構成する全ての要素がメモリに保存されることを必要とすることである。使用される変数は、例えば、1Hzのサンプリング周波数で得られるため、300秒の時間窓では各変数が300の値を格納しなければならない。RAMメモリの必要性は、結果として、バッテリの充電の状態を保つための戦略を実装するコンピュータに適合される。
【0032】
したがって、この実施形態に従って、これらの平均された値は、上記のように得られる4つの変数:
− 車両の平均速度:v
avgveh(t)
− DC/DC変換器によって消費される平均パワー:P
avgdcdc(t)
− パワートレインによって車輪に供給される平均パワー:P
avgPT(t)
− 最大平均充電パワー:P
avgchargemax(t)
の瞬時値から割り出される。
【0033】
最大平均充電パワーは、使用の状況がバッテリの充電の状態の維持に対する臨界であるか否かを決定するために使用される変数である。例えば、概して、スライドする時間的窓の持続期間にわたって、即ち、上で示される例に従って300秒間の実行にわたって、予測された最大平均充電パワーが、
− >>0である場合、これらの状況において、バッテリの充電の状態を維持することができないリスクを考慮する理由はなく、
− 0に近い場合、バッテリの充電の状態を維持することができないリスクが考慮され、
− <0である場合、充電の状態を維持することができない真のリスクがある。
【0034】
P
avgchargemax(t)の値への使用のための臨界状況のパワー検出閾値およびそれらを避けるためのヒステリシスは、有利に、バッテリの充電の状態を保つための戦略の補正パラメータである。
【0035】
使用の状況が臨界であると見なされない場合、エネルギー管理規則によって考慮されるバッテリの目標の充電の状態値は、反復性を促進するために一定のままである(例えば、約20%)。使用の臨界状況の検出があった場合、このようにして充電の状態を保つための戦略が作動され、目標の充電の状態値を増大させるためのステップが実装される。より正確には、増大された目標の充電の状態値は以下のように計算される。
【0036】
まず、全電気式モード(ZEV、「Zero Emission Vehicle」モードにおける自律)にある車両に対して発明者らが保証することを望む、Autonomy
targetとして知られる目標自律、例えば約5kmが決定される。
【0037】
この目標自律を確実にするために必要とされるエネルギーが、車両の使用の現在の状況において予測され、
式中、
は走行に必要とされる平均電気パワーであり、P
avgdcdc(t)はDC/DC変換器によって消費される平均電気パワーであり、指数
は目標自律を満たすのに必要とされる持続期間を表す。
【0038】
次いで、W/hで表される予測された目標エネルギーは、BMSによって提供され、かつ温度およびバッテリの経年変化を考慮に入れる変換係数に基づいて、目標の充電の状態SOC_targetのパーセンテージに換算される。最後に、このようにして決定される目標の充電の状態値は、固定の最小値と最大値との間に制限される。
【0039】
使用の状況が臨界であると見なされないとき、最大平均充電パワーP
avgchargemax(t)の増大が記録され、バッテリの充電の状態を保つための戦略の作動停止を導き、次いで目標の充電の状態値はその初期の一定値に戻ることに留意されたい。
【0040】
単一の添付の図面は、上記のようにバッテリの充電の状態を保つための戦略を実装する利点を示す。
図1は、5%斜面および車両の電気付属品の高消費で、通常運転の第1のフェーズに続き第2の交通渋滞フェーズを含むシナリオに従って、時間の関数としての車両の速度曲線、ならびに並行して、上に概説される原則に従って予測される最大平均充電パワーの曲線およびバッテリの充電の状態(SOC)の曲線を示す。
【0041】
図中に例として例証されるシナリオは、都市外部条件における慣習的な運転フェーズから開始し、初期の充電の状態は65%であり、車両はしたがってZEVモードで動いており、内燃機関は使用されない。例証されるように、t=1000秒で、車両は斜面上の交通渋滞フェーズに入る。これらの使用の状況においてバッテリに供給することが可能である最大充電パワーに基づいて充電の状態を保つための戦略によって計算されるバッテリ充電見込みの予測値は、次いで、減少し始め、それはt=1200秒あたりで0に極めて近づく。その結果、これらの臨界状況の検出が、充電の状態を保つための戦略の作動をトリガする。上に概説される原則に従って、図中の例に従って最初は20%に設定されるバッテリの目標の充電の状態値SOC_targetは、20%から35%に増大される。t=1800秒で、バッテリの充電の状態は、目標の充電の状態値SOC_targetを下回り、車両はZEVモード運転を脱し、戦略はバッテリの充電の状態を維持することの開始を命令する。内燃機関は、このように始動し、可能なときに(車両速度>15km/h)バッテリを充電するために回生モードで動作する電気機械を駆動する。しかしながら、図に示されるように、バッテリ充電は、増大された目標の充電の状態値に関してバッテリの充電の状態が完全に維持されることを確実にするには十分ではなく、バッテリの充電の状態は緩徐に低下する。しかしながら、戦略の実装を伴わないバッテリの充電の状態における変化の外挿を表す点線を考慮すると、即ち、目標の充電の状態値が20%というその初期値のままで、車両がフロート充電へと切り替えていなかった場合、バッテリの充電の状態はおよそt=3000秒で20%の値に達したと予測され得、バッテリのフロート充電が作動されていたのはこの時のみである。したがって、この例は、本発明に従う戦略が、バッテリの充電の状態の維持に対する臨界状況が検出されたときの目標の充電の状態値の増大のおかげで、およそ1200秒でバッテリの充電の状態の維持の作動に事前に対処すること、およびこのようにしてバッテリの充電の状態を保つことを可能にすることを示す。この例に従うと、t=3000秒で、バッテリの充電の状態は、本発明の戦略が実装されるとき、バッテリが前記戦略の使用を伴わなかった場合よりもおよそ12%高い。この差は、有利に、上に引用された特許文献FR2992274に論じられるようにバッテリ充電フェーズの実装を遅延させることを可能にする。
【0042】
加えて、交通渋滞フェーズが終了したとき、最大充電パワーP
avgchargemax(t)は、それが使用の臨界状況の事前に定義されたパワー検出閾値を超えるまで増大し、ここで目標の充電の状態値は、例に従って20%というその公称値に戻り、電気パワーが再び消費される。
【0043】
バッテリの充電の状態を保つための戦略の作動のために使用の臨界状況における事前に定義されたパワー検出閾値と比較されるべき最大充電パワーP
avgchargemax(t)を予測するために実装される計算手段は、車両に搭載のコンピュータ、例えば、車両のパワートレインを全体として制御するために適合されるコンピュータによって実装される。