特許第6784685号(P6784685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784685精製装置としてメンブレンフィルターを用いて重合性ポリアルキルシロキサン化合物から溶融石英を製造する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784685
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】精製装置としてメンブレンフィルターを用いて重合性ポリアルキルシロキサン化合物から溶融石英を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 19/14 20060101AFI20201102BHJP
   B01D 61/36 20060101ALI20201102BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20201102BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20201102BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20201102BHJP
   B01D 71/68 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C03B19/14 Z
   B01D61/36
   B01D69/00
   B01D71/32
   B01D71/36
   B01D71/68
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-543795(P2017-543795)
(86)(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公表番号】特表2018-507160(P2018-507160A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016053311
(87)【国際公開番号】WO2016131849
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】15155566.1
(32)【優先日】2015年2月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】オットー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】トロマー,マーチン
【審査官】 長谷川 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−511923(JP,A)
【文献】 特開2001−026429(JP,A)
【文献】 特表2001−520675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 1/00− 5/44
C03B 8/00− 8/04
C03B 19/12−20/00
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)原料蒸気を生成しながら、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する原料を気化させる工程と、
(b)工程(a)により得られた前記原料蒸気を少なくとも一つの精製装置に通過させ、前記原料蒸気を精製する工程と、
(c)工程(b)により得られた精製された前記原料蒸気を、酸化及び/又は加水分解により前記原料蒸気がSiO粒子に変化する反応領域に供給する工程と、
(d)工程(c)により得られた前記SiO粒子を堆積面に堆積させる工程と、
(e)場合によっては、工程(d)により得られた前記SiO粒子を乾燥及びガラス化させ、合成石英ガラスを形成する工程と
を含む合成石英ガラスを製造する方法であって、
前記少なくとも一つのポリアルキルシロキサン化合物を、工程(b)において、130〜210℃の温度に加熱されたメンブレンフィルターに通すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記メンブレンフィルターを140〜190℃の温度に加熱することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メンブレンフィルターを、キャリアガス群と蒸気状のポリアルキルシロキサン化合物との蒸気混合物において確立される、使用される前記ポリアルキルシロキサン化合物の露点より3〜60℃高い作動温度に加熱することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記メンブレンフィルターが、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー、パーフルオロアルコキシビニルエーテル、又はポリエーテルスルホンからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含むメンブレンフィルターであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記メンブレンフィルターの孔径が、0.5μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記メンブレンフィルターの平均最大厚さが、前記原料蒸気の流れ方向と平行な方向において、200μm未満であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記メンブレンフィルターの未透過側と透過側の間の圧力差が、800mbar未満であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、5bar以下の絶対圧で行われることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアルキルシロキサン化合物が、オクタメチルシクロテトラシロキサンであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記原料蒸気中の前記ポリアルキルシロキサン化合物の含有量が、少なくとも15体積%であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記原料蒸気が、不活性ガスを更に含むことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
a.原料蒸気を生成するために、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する少なくとも一つの原料を気化させる少なくとも一つの気化器領域と、
b.前記少なくとも一つの気化器領域a.から得られる前記原料蒸気が導入される、メンブレンフィルターを含む少なくとも一つの精製装置と、
c.前記精製装置b.により得られる精製された前記原料蒸気が導入され、熱分解又は加水分解により前記原料がSiO粒子に変化する少なくとも一つの反応領域と、
.合成石英ガラスを形成するために、前記反応領域c.により得られる前記SiO粒子が堆積される領域を有する少なくとも一つの堆積領域と、
を備える合成石英ガラスを製造する装置であって、
30〜210℃の作動温度に加熱される前記メンブレンフィルターを含むものであることを特徴とする装置。
【請求項13】
少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する合成石英ガラスの製造において、原料蒸気を精製するためのメンブレンフィルターの使用であって、前記少なくとも一つのポリアルキルシロキサン化合物を、気化の後、かつ、熱分解又は加水分解の前に、130〜210℃の温度に加熱されたメンブレンフィルターに通すことを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成石英ガラスを製造する方法、及び、本発明の方法の範囲内で使用できる合成石英ガラスを製造する装置に関する。本発明の方法及び本発明の装置は、特定のメンブレンフィルターによって特徴付けられる。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するため、CVD法では、加水分解又は酸化によりケイ素含有出発物質からSiO粒子を生成し、可動支持体上に堆積させる。この方法は、内付け堆積法と外付け堆積法に分類することができる。外付け堆積法の場合、SiO粒子は回転支持体の外側に付着する。適当な外付け堆積法の例としては、いわゆるOVD法(Outside Vapor Phase Deposition,外付け気相堆積)、VAD法(Vapor Phase Axial Deposition,気相軸付け堆積)、又はPECVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition,プラズマ化学気相堆積)が挙げられる。最も良く知られる内付け堆積法の例は、SiO粒子が外部から加熱されたチューブの内壁に堆積されるMCVD法(Modified Chemical Vapor Deposition,改良化学気相堆積)である。
【0003】
支持面の領域の温度が十分に高い場合、SiO粒子は直接ガラス化される。これは「直接ガラス化」としても知られている。これに対して、いわゆる「スート法」では、SiO粒子の堆積の間、温度が低いため、多孔質SiOスート層が得られ、この多孔質SiOスート層は、別の方法工程において透明な石英ガラスに焼結される。直接ガラス化とスート法ではどちらも、高密度、透明、かつ高純度の合成石英ガラスを得ることができる。
【0004】
四塩化ケイ素(SiCl)は、従来技術から、合成石英ガラスを製造するためのケイ素含有原料として知られている。四塩化ケイ素及び他の類似の塩素含有物質は、100℃以下のあまり高くない温度で、十分な蒸気圧を既に有するため、通常、不純物が液相に残り、超高純度のスート体の製造が容易になる。
【0005】
しかしながら、四塩化ケイ素の気化の間、部分的な液滴が、使用される不活性蒸気流中に伴出され、反応領域に到達するまで完全に気化されないことが知られている。このため、液相に含有される不純物は最終的にスート体に到達し、これにより、製造されるその石英ガラスの品質が下がってしまう。この不純物は通常金属である。
【0006】
四塩化ケイ素等の塩素含有原料の更なる欠点は、合成石英ガラスに変化させた際に塩酸が生成され、ガス抜き洗浄や処理のために高いコストが生じることである。このため、原則として、四塩化ケイ素が使用される時は、水分の浸入を防ぐ装置が使用される。これにより、塩酸の生成が抑制され、ケイ酸の生成が回避される。この手法は、当業者によく知られている。
【0007】
従来、これらの要求を避けるため、多くのいわゆる結晶フリーの有機ケイ素化合物が、石英ガラスの製造のための原料として検討されてきた。ここで挙げられる例としては、モノシラン、アルコキシシラン、シロキサン、及びシラザンがある。これらのいわゆる無塩素有機ケイ素化合物のうち、特に興味深いグループは、例えばDE 30 16 010 A1で知られる、ポリアルキルシロキサン(単に「シロキサン」とも呼ばれる)である。特に、ポリアルキルシロキサンに含めることができる環状ポリアルキルシロキサンは、合成石英ガラスの製造におけるそれらの使用の経済性に寄与する、重量比あたりの特に高いケイ素含量によって特徴付けられる。高純度で産業的に入手が容易であるため、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が特に用いられる。
【0008】
このようなポリアルキルシロキサン化合物は、重合可能であり、典型的に、液体状で、単体又は他の成分との混合物として、原料中に存在する。これらの化合物は、微量の重合性シラノールを含有することもできる。ポリアルキルシロキサン化合物は、液体状で堆積用バーナー等の消費器に供給され、バーナー口や炎中に噴霧されることができる。しかしながら、通常、原料は気化器によってガス状又は蒸気状に変えられ、ラインシステムを介して連続的なガス気流として消費器に供給される。
【0009】
これらのいわゆる塩素フリーの原料を基に、合成石英ガラスを製造するいくつかの方法が従来技術に記載されている。例えば、EP 0 760 373 A、WO 99/15468 A、WO 99/54259 A、WO 2013/092553 A、及びEP 0 529 189 A等の発行物を参照されたい。
【0010】
しかしながら、ポリアルキルシロキサンの使用は、得られる石英ガラスの品質に原料の不純物が与え得る影響に関して、四塩化ケイ素中の低分子金属不純物が得られる石英ガラスの品質を低下させ、同時に水分の浸入が避けられる上記の方法とは根本的に異なる、別の問題を内包している。原則として、四塩化ケイ素は、環状ポリアルキルシロキサンより熱的に安定であり、より低い沸点を有する。一方で、環状ポリアルキルシロキサンは、実用的に室温で水分と反応しない。しかしながら、環状ポリアルキルシロキサンの使用と関連する主な問題の一つは、用いられる気化条件下で、ゲル状及びゴム状の残留物の形成と共に重合が起こることである。既に上述したように、ポリアルキルシロキサンは、水、シラノール、時には重合触媒活性を有する微量成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)等の微量の極性不純物を含有し得ることが知られている。シラノールの場合、これらの不純物は、自身と反応して重合体を形成することも、出発化合物と開環反応を起こすこともできる。これは、最終的に、上記の重合体シロキサン残留物やゲルの形成を引き起こす。これらの重合体及びゲルは、通常、気化器において、蒸気ライン、制御弁、絞り弁、他のガス測定器及びラインに残り、そこで濃縮される。これにより、材料気流の制御挙動に大きな障害が生じ得る。このため、再生プロセスの管理が困難になる。極端な場合は、これにより詰まりが生じる。どちらの結果もメンテナンス及び精製工程のためのダウンタイムを増加させ、これにより、ポリアルキルシロキサンを用いたプロセスは対応するコストを必要とする。
【0011】
一方、これらの残留物は、原料蒸気の質量流量の均等な分布が制御不可能であり、再現性が得られないため、得られる石英ガラスの特性に対する負の効果も有する。これにより、その後の脱水又は塩素化工程において、スートの径方向及び軸方向の密度のバラツキや塩素含有量のバラツキが増加する。更に、このような残留物は、複数バーナー法における外径のバラツキの増加を引き起こす。これは、曳いては、対応する材料の損失に関連して、不良品に大きな影響を与える。その結果、製造コストの増加と共に、プロセス効率が低下する。また、この原料は、ppmの範囲ではあるが、上述したプロセスの制御性及び再現性の欠如の一因となる、所定のバッチのバラツキを一般に受けやすい。異なるメーカーの原材料は、異なる不純物/汚染レベルも有するため、得られる石英ガラスの品質に対する制御は確保されない。
【0012】
結果として、製造コストの増加と共に、プロセス効率が低下する。また、出発材料は、ppmの範囲ではあるが、上述したプロセスの制御性及び再現性の欠如の一因となるバッチごとのバラツキを一般的に本来受けやすい。ポリアルキルシロキサンの気化の間のゲル形成の問題に関する更なる従来技術としては、US 5,879,649、EP 1 094 990 A、WO 2013/092553 A、EP 0 463 045 A、US 5,970,751、及びUS 2012/ 0276291 Aに言及されている。
【0013】
これらの問題を解決するため、US 5,558,687では、まずポリアルキルシロキサン成分を噴霧し、部分的に液体状で充填材料に付着させることが提案されている。同様の手法が、四塩化ケイ素の使用と関連して、EP 0 765 845 Aに記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術に開示された解決案は、依然として十分なものではない。従って、本発明の目的は、合成石英ガラスの製造において、ゲル形成を抑制できる本発明の方法を提供することである。
【0015】
また、本発明の目的は、原料蒸気の質量流量が本質的に制御可能で、曳いては再現可能である、合成石英ガラスを製造する方法及び装置も提供することである。
【0016】
本発明の更なる目的は、特に、その後の脱水又は塩素化工程において、スートの径方向及び軸方向の密度のバラツキや塩素含有量のバラツキを減少させる、合成石英ガラスを製造する方法及び装置を提供することである。
【0017】
本発明の更なる目的は、特に、複数バーナー法における外径のバラツキを減少させる、合成石英ガラスを製造する方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
これらの目的は、以下に記載される、合成石英ガラスを製造する本発明の方法、及び、同様に以下に記載される、上記の方法に用いられる本発明の装置によって達成される。
【0019】
本発明は、
(a)原料蒸気を生成しながら、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する原料を気化させる工程と、
(b)工程(a)により得られた原料蒸気を少なくとも一つの精製装置に通過させ、原料蒸気を精製する工程と、
(c)工程(b)により得られた精製された原料蒸気を、酸化及び/又は加水分解により原料蒸気がSiO粒子に変化する反応領域に供給する工程と、
(d)工程(c)により得られたSiO粒子を堆積面に堆積させる工程と、
(e)場合によっては、工程(d)により得られたSiO粒子を乾燥及びガラス化させ、合成石英ガラスを形成する工程と
を含む合成石英ガラスを製造する方法を提供する。
【0020】
更に、本発明の方法は、上記の少なくとも一つのポリアルキルシロキサン化合物を、工程(b)において、130〜210℃の温度に加熱されたメンブレンフィルターに通すことによって特徴付けられる。
【0021】
驚くべきことに、ゲルを重合及び/又は形成する原料蒸気の傾向は、130〜210℃の温度で作用するメンブレンフィルターを用いることによって減少する。
【0022】
これは、一方で、重合によって生じた不純物は揮発しないため、液相から分離されなければならないことが従来技術に記載されているという点で、特に驚くべきことである。他方で、これは、メンブレンフィルターの使用により、メンブレンフィルターが重合体の堆積及び/又はゲル形成による詰まりを受けないような程度に、気化の間に形成された多量体及び/又は重合体成分を分離することができることから、驚くべきことである。
【0023】
これは、驚くべきことに、全体的にメンブレンフィルターに対する圧低下が小さく保たれ、特に技術的及び経済的に好適であり、また、液相での高価な上流液固抽出プロセスを回避できるという事実を導く。
【0024】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、原料には、気化器中及び蒸気ライン中に残留物を生じさせ得る、多様な微量不純物が含有されていることが考えられる。
【0025】
A)高沸点微量不純物
これらは、その非常に低い蒸気圧又は低い露点のため、非常に気化されにくく、気化器中及び気化器ライン中に残る可能性があり、滞留時間が長い場合、気化システム中のゲル状残留物と関連付けられ得るという事実により特徴付けられる。
【0026】
B)極性微量不純物
このような反応性の微量不純物は、例えば、上述したシラノールである。これらの微量不純物は、その極性OH基により、環状シロキサンの開環反応を開始させる可能性がある。これらは、主要な環状成分との縮合反応を経て、高沸点の不純物へと反応し、その後、蒸気ライン中で、ゲル状不純物として凝縮されることもある。
【0027】
C)触媒活性微量不純物
反応性の触媒活性微量不純物は、例えば、ルイス酸及びルイス塩基である。これらの化合物は、微量の残留水分の存在下で、開環反応を開始させる可能性がある。また、これらは、例えば、環状シロキサンの開環反応にも関与する金属微量成分(金属酸化物及び/又は金属ハロゲン化物)である。主要な環状成分との更なる反応は、より高沸点の不純物を生じさせ、これらは、その後、蒸気ライン中で、ゲル状不純物として凝縮されることもある。
【0028】
A)の高沸点微量不純物は、驚くべきことに、本発明によると、原材料とB)及びC)の反応性微量不純物(例えば、シラノール、ルイス酸及びルイス塩基)の反応により得られる、可動であり、気相で絞り弁や制御弁等で凝縮する重合性二次生成物と同様に、原料を原料蒸気の形態で本発明のメンブレンフィルターを有する加熱された精製装置に通過させた場合、原材料蒸気から効果的かつ効率的に除去することができる。
【0029】
従って、本発明の方法、又は後述する本発明の装置は、合成石英ガラスを製造するのに特に好適であり、A)の高沸点微量不純物及び/又は原材料とB)及びC)の反応性微量不純物の反応により得られる重合性二次生成物は、製造プロセスにおいて、本発明のメンブレンフィルターにより除去される。
【0030】
このように、本発明により提供されるメンブレンフィルターによって、A)の高沸点微量不純物や、特に、原材料とB)及びC)の微量不純物の反応により得られる可動重合性二次生成物を保持することができ、その結果、高感度な絞り弁及び制御弁に生じる障害堆積物が大幅に減少される。このため、出発化合物におけるバッチ差を補うことができ、全体的に、製造される合成石英ガラスは一貫して良好な品質を有する。このため、蒸気ライン、制御弁、絞り弁、他のガス測定器及びラインにおける重合体及び/又はゲルの堆積が低減及び/又は防止の結果として、質量流量の均一な分布を達成できるという事実と共に、本発明の内容によって、制御及び再現可能な方式で、上記の方法を行うことができる。これにより、上述したように、大幅なコストの削減がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の装置の概略代表図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の方法の個々の方法工程を詳細に説明する。
【0033】
本発明によると、「含む(comprising)」という用語は、「から成る(consisting of)」を意味すると解される。
【0034】
(方法工程(a)−原料の気化)
方法工程(a)では、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する原料を気化させて、原料蒸気を生成する。
【0035】
原則として、合成石英ガラスの製造に好適であるいずれの重合性ポリアルキルシロキサン化合物も本発明により用いることができる。本発明の範囲内で、ポリアルキルシロキサンという用語は、直鎖状分子構造(分岐状構造も含む)と環状分子構造の両方を含む。
【0036】
特に好適な環状ポリアルキルシロキサンの代表例は、以下の一般式を有するポリアルキルシロキサンである。
Si(R)2p
(式中、pは2以上の整数である。残基Rはアルキル基であり、最も単純な場合はメチル基である。)
【0037】
ポリアルキルシロキサンは、合成石英ガラスの製造におけるそれらの使用の経済性に寄与する、重量比あたりの特に高いケイ素含量を有することによって特徴付けられる。
【0038】
これに関して、ポリアルキルシロキサン化合物は、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、これらの直鎖同族体、及び上記化合物の混合物からなる群から選ばれる。D3、D4、D6、D7、及びD8という表記は、ゼネラルエレクトリック社によって導入された表記に由来する。ここで、「D」は[(CHSi]−O−基を示す。この表記は、当業者にとって公知である。
【0039】
上記ポリアルキルシロキサン化合物の混合物は、本発明の範囲内で、同じように用いることができる。
【0040】
今のところ、高純度で商業的に大量に入手できるため、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)が好ましく使用される。従って、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)である場合、本発明の範囲内で、特に好ましい。
【0041】
一般に、方法工程(a)への導入前に、原料に精製プロセスを実施することが可能である。このような精製プロセスは、当業者にとって公知である。しかしながら、好ましい実施形態では、予め原料に上流の精製プロセスを実施しない。これは、好ましくは、市販品から不純物を除去するプロセスを原料に実施しないことを意味する。好ましくは、上述したA)〜C)の不純物は除去されない。特に好ましくは、本発明の方法は、気化の前及び/又は気化の間、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物の液体状原料に固相抽出を実施しないことによって特徴付けられる。これにより、好ましくは、原料に液固抽出が実施されない。それにもかかわらず、驚くべきことに、本発明の方法により、高い制御性及び再現性を有する石英ガラスを製造することができることが分かった。特に、付加的な精製工程を省略することができるという点で、本発明の方法、又は後述する本発明の装置は、時間を削減し、ダウンタイムを減少させることで、コストを削減することができる。
【0042】
また、特に原料に液固抽出を実施しない場合、上述したように、固相から原料への付加的な汚染を避けることが可能となる。
【0043】
原料の気化は、キャリアガス成分の存在下で、又は、非存在下で行うことができる。好ましくは、原料の気化は、ポリアルキルシロキサン化合物の沸点より低い温度で気化を開始することができるため、キャリアガスの存在下で行われる。これは、原料蒸気が好ましくはキャリアガスを更に含むことを意味する。原料の気化をその沸点より低い温度で開始すべき場合は、このような手法が好ましい。この不活性ガスは、好ましくは、化学的に不活性であり、より好ましくは、窒素又はアルゴンである。これに代わって、キャリアガスとして、酸素を用いることもできる。キャリアガスに対する重合性ポリアルキルシロキサン化合物のモル比は、好ましくは、0.01〜2の範囲内、特に好ましくは0.02〜1.5の範囲内、特により好ましくは、0.05〜1.25の範囲内である。特に、キャリアガスが40質量ppm未満の水分含量を有する窒素であり、ポリアルキルシロキサン化合物としてOMCTSを用いることが好ましい。この場合、窒素に対するOMCTSのモル比は、0.015〜1.5の範囲内であることも好ましい。
【0044】
気化の方法工程は、本質的に、当業者にとって公知である。ポリアルキルシロキサン化合物は、ポリアルキルシロキサン化合物とキャリアガスの選択されたモル比に応じて、120〜200℃の間の温度で気相に変化する。気化室内の気化温度は、常に、ポリアルキルシロキサン化合物の露点より少なくとも数度高くするべきである。この露点も、ポリアルキルシロキサン化合物とキャリアガスの選択されたモル比に依存する。好ましい実施形態では、ポリアルキルシロキサン化合物は、気化の前に、40〜120℃の間の温度に予備加熱され、その後、原料の予備加熱より高い温度を有する気化室に噴霧される。好ましい実施形態では、不活性ガスは、気化室に導入される前に、250℃以下の温度に更に予備加熱されることができる。気化室内の温度は、ポリアルキルシロキサンとキャリアガスの混合物の露点温度よりも常に平均的に高いことが有利である。好適な気化プロセスは、例えば、国際特許出願WO2013/087751 A及びWO 2014/187513 Aやドイツ特許出願DE 10 2013 209 673に記載されている。
【0045】
本発明の範囲内で、「露点」という用語は、凝結する液体と蒸発する液体との平衡状態が得られる温度を示す。
【0046】
原料の沸点より低い温度が用られる場合、気化は好ましくは不活性キャリアガスと共に行われる。
【0047】
本発明の範囲内で、「気化」とは、原料が液相から気相に本質的に変わるプロセスを意味すると解される。これは、上述したように、原料の主成分である重合性ポリアルキルシロキサン化合物の露点より高い温度で行われることが好ましい。原料の小さな液滴が伴出される可能性があることを技術的に排除できないことは当業者に知られている。従って、方法工程(a)では、より良くは97モル%未満、好ましくは98モル%未満、より好ましくは99モル%未満、特に好ましくは99.9モル%未満のガス状成分を含有する原料蒸気が好ましくは生成される。
【0048】
方法工程(a)により生成された原料蒸気は、続いて、方法工程(b)に供給される。
【0049】
(方法工程(b)−原料蒸気の精製)
方法工程(b)では、原料蒸気を精製するために、方法工程(a)により得られた原料蒸気を少なくとも一つの精製装置に通過させる。方法工程(b)の精製装置は、130〜210℃の温度に加熱されたメンブレンフィルターを含む。
【0050】
本発明の範囲内で、メンブレンフィルターが加熱される温度は、フィルターメンブレンの及び/又はメンブレンが機械的に保持又は支持される支持体の温度である。
【0051】
本発明によると、メンブレンが作動するための温度が低すぎる場合、即ち、特にこの温度が130℃より低い場合、気化されたポリアルキルシロキサンが再び凝結することが見出されたため、対応するメンブレンの作動温度の選択が目標とされる。当業者にとって知られているように、気化されたポリアルキルシロキサンの露点は、使用されたキャリアガス群と気化されたポリアルキルシロキサンのモル比、及び、気化システムにおける現在の絶対圧に依存する。メンブレンフィルター上の露点が下がった場合、メンブレンは液体の膜で覆われるため、蒸気の流れが遮られる。一方、高温、特に210℃より高い温度では、メンブレンの構造が熱変形により変化し、使用できなくなる恐れがある。
【0052】
好ましい実施形態では、メンブレンフィルターは140〜190℃の温度に加熱される。更に、メンブレンフィルターは、温度にかかわらず、使用されるキャリアガス群と蒸気状のポリアルキルシロキサン化合物との蒸気混合物において確立される、使用されるポリアルキルシロキサン化合物の露点より3〜80℃、特には3〜60℃、より好ましくは7〜40℃高い温度に加熱されることが好ましい。さもなければ、連続的なプロセスでのメンブレンの持続的な使用を確保することができない。
【0053】
更に、メンブレンフィルターの平均孔径が0.5μm以下、より好ましくは、0.2μm以下、更に好ましくは0.02μm以下であると好ましいことが分かった。
【0054】
本発明の範囲内で、メンブレンフィルターが、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、パーフルオロアルコキシビニルエーテル、又はポリエーテルスルホンからなる群から選ばれる少なくとも一つの材料を含む場合、又は上述した材料のうち一つ以上から成る場合が特に好ましい。市販の好適なメンブレンシステムは、例えば、ポールマイクロエレクトロニクス製のメンブレンフィルター、ウルチクリーンTMCDSフィルターである。
【0055】
本発明における好適なメンブレンフィルターは、その大きさに関して、当業者に一般に知られる手法で、対応する使用装置に適合させることができる。通常使用されるメンブレンフィルターは、原料蒸気の流れ方向と平行な方向において、200μm未満、より好ましくは100μm未満、更に好ましくは50μm未満のメンブレンフィルターの平均最大厚さを有する。本発明によると、メンブレンの面積は、メンブレンの面積の増加に伴いより多くの重合体を吸収することができるため、できる限り大きくなるように選択される。特に好ましくは、メンブレンの大きさは、OMCTSについて、メンブレン面積1mあたり0.5〜500kg/h、より好ましくはメンブレン面積1mあたり1〜400kg/hのスループットが実現するように選択される。
【0056】
また、本発明の方法の範囲内で、メンブレンフィルターの未透過側と透過側の間の圧力差は、800mbar未満、より好ましくは600mbar未満、更に好ましくは400mbar未満であることが好ましい。未透過側と透過側の間の圧力差が高すぎる場合、メンブレン上に保持される「可動な」重合体がメンブレンを通って擬似的に押される恐れがあることが分かった。従って、未透過側と透過側の間の圧力差は、高すぎず、好ましくは上記の範囲内にあることを確保すべきである。
【0057】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明の方法は、本質的に高度に架橋された重合体や実質的に非強固に架橋された重合体の重合体形成を引き起こすと考えられる。本質的に高度に架橋された重合体は、通常、気化器領域に固定され、例えば、管壁又は気化器壁に粘着性でゴム状の層又は塊として形成されるが、実質的に非強固に架橋された重合体は、依然として十分な可動性を有しており、蒸気流内に更に運ばれ得るため、高感度の絞り弁及び制御弁に到達する可能性がある。従って、本発明の方法は、石英ガラスの製造の間、原料蒸気から実質的に非強固に架橋された重合体を除去するのに特に好適である。
【0058】
従って、第1の実施形態では、本発明の方法は、上記で定義したようなA)の高沸点微量不純物から形成されるポリメチルシロキサンを分離するのに特に好適である。
【0059】
第2の実施形態では、本発明の方法は、原料とB)及びC)の微量不純物の反応により形成されるポリメチルシロキサンを分離するのに特に好適である。
【0060】
本発明の第1の及び第2の実施形態の方法により分離されるポリメチルシロキサンは、好ましくは500〜1800g/molの分子量を有する。このような分子量を有するポリアルキルシロキサンは、本発明により提供されるメンブレンを気相で通過することが通常予想される。しかしながら、理論に縛られることを望むものではないが、B)及びC)の微量不純物の反応により得られるポリアルキルシロキサンは、おそらくその非常に低い蒸気圧のため、メンブレン上で微細な液滴の形態で保持され、滞留時間の増加に伴う重合体の形成を経て、メンブレンに付着したままになると考えられる。十分な長期使用後は、ポリアルキルシロキサンからなる重合体膜の平坦な堆積物がメンブレン上に見られる。
【0061】
特に、これらのポリメチルシロキサンは、滞留時間の増加と共にメンブレン上で更に架橋され、好ましくは1800g/molより大きい分子量を有するポリメチルシロキサンになる。これらの多量体又は重合体ポリメチルシロキサンは、通常、環状及び直鎖状ポリアルキルシロキサンである。環状ポリメチルシロキサンとしては、例えば、D8、D9、D10、及びD11が挙げられる。しかしながら、末端Si原子が、例えば、トリメチルシリル基又はジメチルシラノール基である直鎖状ポリアルキルシロキサンも挙げられる。
【0062】
原料蒸気の良好な精製が起こることで、次の装置内でゲル及び重合体の形成を回避することが可能であり、これにより、石英ガラス製造の良好な制御性及び再現性が得られる。また一方で、対応するメンブレンフィルターの使用は、耐久性があり、特に、石英ガラスの製造の工程フロー全体において、パッキングに対するわずかな圧低下で最小限のみ損なわれる。メンブレンフィルターの交換はほとんど必要とされないため、ダウンタイムが減少する。また、精製装置は装置として単純であり、石英ガラスを製造するための既存の装置に後で組み込むこともできる。
【0063】
本発明によると、方法工程(a)からメンブレンフィルターを用いた精製工程への原料蒸気の流入速度は、好ましくは0.01〜2m/s、特に好ましくは0.02〜1m/sである。このような速度であれば、高スループットにもかかわらず、良好な精製性能を依然として達成することができる。
【0064】
方法工程(b)では、原料蒸気は100℃より高い温度、好ましくは120℃より高い温度、特に好ましくは130℃より高い温度を有すべきである。これにより、原料が本質的に蒸気状に保たれていることが確実になる。適切な場合、この原料蒸気の温度を確実なものとするため、この目的のための付加的な加熱装置を設けることができる。
【0065】
本発明によると、原料とB)及びC)の微量不純物の反応により形成される可動重合性二次生成物がメンブレン上に主に保持されるため、特に、高感度の絞り弁及び制御弁に堆積される障害堆積物を非常に少ないものとすることができる。特に、本発明の精製工程(b)により、再現性のある一定の組成を有する原料蒸気を提供することができる。その結果、液体状原料におけるバッチのバラツキが、得られる合成石英ガラスの品質に影響を及ぼさない。
【0066】
(方法工程(c)−原料蒸気の変換)
方法工程(c)では、方法工程(b)により得られた精製された原料蒸気を、酸化及び/又は加水分解により原料蒸気がSiO粒子に変化する反応領域に供給する。
【0067】
この方法工程は、特に、公知のスート法又は公知の直接ガラス化法に相当する。考えられる実施形態は当業者にとって公知である。
【0068】
(方法工程(d)−SiO粒子の堆積)
方法工程(d)では、方法工程(c)により得られたSiO粒子を堆積面に堆積させる。考えられる実施形態は当業者にとって公知である。
【0069】
(方法工程(e)−任意の乾燥及びガラス化)
方法工程(e)では、必要に応じて、方法工程(d)により得られたSiO粒子を乾燥及びガラス化させ、合成石英ガラスを形成する。この方法工程は、特に、前に実施された工程がスート法に従って行われていた場合に必要である。考えられる実施形態は当業者にとって公知である。
【0070】
全体的に、本発明の方法は、「直接ガラス化」による合成石英ガラスの製造にも好適である。この方法では、方法工程(d)における堆積面へのSiO粒子の堆積の間、温度が十分に高いため、SiO粒子の直接ガラス化が起こる。従って、「直接ガラス化」の場合、任意の方法工程(e)は省略される。更に、本発明の方法は、「スート法」による合成石英ガラスの製造にも好適である。スート法では、方法工程(d)におけるSiO粒子の堆積の間、温度が低いため、多孔質SiOスート層が得られ、この多孔質SiOスート層は、合成石英ガラスを得るため、別の方法工程(e)において乾燥及びガラス化される。
【0071】
本発明の方法は、外付け堆積法又は内付け堆積法として実施される合成石英ガラスの製造に好適である。本発明の方法が外付け堆積法として実施される場合、これは、好ましくは、OVD法(Outside Vapor Phase Deposition,外付け気相堆積)、VAD法(Vapor Phase Axial Deposition,気相軸付け堆積)、又はPECVD法(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition,プラズマ化学気相堆積)である。本発明の方法が内付け堆積法として実施される場合、これは、好ましくは、MCVD法(Modified Chemical Vapor Deposition,改良化学気相堆積)である。
【0072】
(装置)
本発明の別の態様では、以下の構成要素:
原料蒸気を生成するために、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する少なくとも一つの原料を気化させる少なくとも一つの気化器領域1、
少なくとも一つの気化器領域1から得られる原料蒸気が導入される、メンブレンフィルターを含む少なくとも一つの精製装置2、
精製装置2により得られる精製された原料蒸気が導入され、熱分解又は加水分解により原料がSiO粒子に変化する少なくとも一つの反応領域3、
合成石英ガラスを形成するために、反応領域3により得られるSiO粒子が堆積される領域を有する少なくとも一つの堆積領域4、
によって特徴付けられる、合成石英ガラスを製造する装置が提供される。
【0073】
本発明の装置は、好ましくは、本発明の方法を実施するために役立つ。従って、3次元的な物理特性を有する上記の全ての好ましい例は、本発明の装置にとっても好ましい。
【0074】
以下、例として図1を参照して、本発明の装置について説明する。
【0075】
本発明の装置は、少なくとも一つの気化器領域1を含む。少なくとも一つのポリアルキルシロキサン化合物を含有する少なくとも一つの原料は、原料蒸気を生成するため、この気化器領域で気化される。上述した原料は、個々の又は組み合わせられた全ての実施形態における原料として用いることができる。
【0076】
従って、気化器領域1は、少なくとも一つの原料のための供給ライン5を含む。また、気化器領域は、不活性ガスのための供給ライン6を任意に含むことができる。
【0077】
液体状原料の気相への転移が気化器領域1で起こり、原料蒸気を生成する。このような気化器領域の実施形態は、当業者にとって公知である。
【0078】
気化された原料は、加熱された管を介して精製装置2に入る。また、精製装置2は、原料蒸気の速度を測定及び/又は調整するための制御装置を含むことができる。更に、メンブレンフィルターの精製装置前後の圧力の損失を測定することができる。必要に応じて、交換又は精製操作の必要性を判別するため、制御装置により得られたデータを介して、精製装置2の状態に関する結論を出すことも可能である。
【0079】
精製装置2は、少なくとも一つの温度制御部を更に含むことができる。これは、少なくとも一つの精製装置2において、100℃より高い、好ましくは120℃より高い温度で、原料蒸気が気相に保たれることを確実にするためである。
【0080】
メンブレンフィルターは、管を介して入り口側で気化器と連結された、好ましくはステンレス鋼からなる温度抵抗ハウジングに位置することが好ましい。メンブレンフィルターの後方には、測定及び/又は制御装置があり、堆積用バーナーに原材料を供給する。堆積プロセスで複数のバーナーが使用される場合、分配器システムを介して、堆積用バーナーに気化された原材料が供給される。
【0081】
原料蒸気は、実質的に直線状の経路で、気化器領域1から精製装置2に導入されることが好ましい。
【0082】
本発明の装置の少なくとも一つの反応領域3は、当業者にとって公知である。少なくとも一つの精製装置2により得られる精製された原料蒸気は、この反応領域に導入され、酸化及び/又は加水分解により原料がSiO粒子に変えられる。ここで、上記の直接ガラス化法又はスート法による実施形態を提供することができる。
【0083】
反応領域3により得られるSiO粒子が堆積される領域を有する少なくとも一つの堆積領域4も、本質的に、当業者にとって公知である。
【0084】
(使用)
本発明の更なる態様では、少なくとも一つの重合性ポリアルキルシロキサン化合物を含有する原料蒸気を精製するためのメンブレンフィルターの使用が提供される。メンブレンフィルターは、好ましくは、上述した個々の又は組み合わせられた全ての実施形態とすることができる。
【0085】
第1の実施形態では、メンブレンフィルターは、上記で定義したようなA)の高沸点微量不純物から形成されるポリメチルシロキサンを分離するのに特に好適である。
【0086】
第2の実施形態では、本発明の方法は、原料と上記で定義したようなB)及びC)の微量不純物の反応により形成されるポリメチルシロキサンを分離するのに特に好適である。
【0087】
第1の及び第2の実施形態により分離されるポリメチルシロキサンは、好ましくは500〜1800g/molの分子量を有する。
【0088】
特に、これらのポリメチルシロキサンは、滞留時間の増加と共にメンブレン上で更に架橋され、好ましくは1800g/molより大きい分子量を有するポリメチルシロキサンになる。これらの多量体又は重合体ポリメチルシロキサンは、通常、環状及び直鎖状ポリアルキルシロキサンである。環状ポリメチルシロキサンとしては、例えば、D8、D9、D10、及びD11が挙げられる。しかしながら、末端Si原子が、例えば、トリメチルシリル基又はジメチルシラノール基である直鎖状ポリアルキルシロキサンも挙げられる。
【0089】
(石英ガラス)
本発明の更なる態様では、本発明の方法により得られる合成石英ガラスが提供される。このような方法で得られた石英ガラスは、原料蒸気の効果的な精製の結果として、均質性及び再現性を有する。
【0090】
(符号の説明)
1 気化器領域
2 精製装置
3 反応領域
4 堆積領域
5 少なくとも一つの原料のための供給ライン
6 不活性ガスのための供給ライン
【0091】
(実施例)
国際特許出願PCT/EP2012/075346の実施形態に従って、液体状原料OMCTSを、キャリアガスとして180℃に予備加熱された窒素と共に、気化器において170℃で気化した。窒素−OMCTS蒸気混合物の組成は、選択されたプロセス条件下でのOMCTSの露点が125℃となるように設定された。気化された原料は、175℃に加熱された管を介して、以下の表に示される温度に加熱されたメンブレンフィルター、ポール社製ウルチクリーンCDSフィルター、オール・フロロポリマーカートリッジ型ABF UFR3EH1(除去等級0.2μm)に通された。フィルターでの圧力差を監視したところ、メンブレン前後の最大圧力差は、800mbarを超えず、好ましくは500mbarを超えない。
【0092】
【表1】
【0093】
上記表において、個々の略語は以下の意味を持つ。
++:フィルターの後方の蒸気管システム中に重合体堆積物の視覚的痕跡がない。
+:フィルターの後方の蒸気管システム中に重合体堆積物の付いた小さい点のみが見つかった。
−:蒸気管システム中に堆積物の明らかな形跡があった。
【0094】
メンブレンフィルターの後方の気化器システムにおける堆積物は、メンブレンフィルターの有効性の尺度であり、これにより、
a)フィルターの後方の蒸気分配システムにおいて視覚的に見える重合体堆積物の形態で、及び
b)複数バーナー法におけるガラス化製品のOD値のバラツキの形態で、
2トンのOMCTSの気化後の有効性が測定される。
【0095】
メンブレンフィルターを使用しない比較方法に対して、10トンを超えるOMCTSの気化後、導入装置に単独のメンテナンス及び精製操作は不要だった。更に、大幅に改善されたプロセス再現性と改善された製品均質性(スート体又は石英ガラスの軸方向均質性)が見られた。
【0096】
210℃より高い場合、メンブレンは熱応力により経時的に縮み、及び/又は、部分的に破壊されることが予測される。130℃より低い場合、露点より低下するため、凝結液がメンブレン上に凝集する恐れがある。このメンブレンは、その後、液体により湿って、もはや機能できなくなる。
図1