特許第6784690号(P6784690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784690回転スパッタリングターゲットを形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784690
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】回転スパッタリングターゲットを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C23C14/34 B
   C23C14/34 C
【請求項の数】34
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2017-548999(P2017-548999)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公表番号】特表2018-507961(P2018-507961A)
(43)【公表日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】EP2016055780
(87)【国際公開番号】WO2016146733
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年1月24日
(31)【優先権主張番号】62/134,807
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/134,762
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318002895
【氏名又は名称】先▲導▼▲薄▼▲膜▼材料(▲広▼▲東▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】VITAL THIN FILM MATERIALS(GUANGDONG)CO,.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−ウォン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス・マーガダント
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−141515(JP,A)
【文献】 特開2012−140658(JP,A)
【文献】 特開2015−036431(JP,A)
【文献】 特開2016−176147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転スパッタリングターゲットの形成方法であって、
熱及び電気伝導性材料ベースのバッキングチューブを提供するステップであって、前記バッキングチューブは、内径と、外径と、長手方向軸とを呈し、前記バッキングチューブは、前記バッキングチューブの前記長手方向軸の周囲に画定された外径面を有する、ステップと、
第1の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、前記第1の中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、長手方向軸とを有し、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸の周囲には内径面及び外径面が画定され、前記第1の中空円筒状ターゲット本体は、電気伝導性材料を含み、それによって電気伝導体である、ステップと、
内径を有する誘導加熱器を提供するステップと、
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記バッキングチューブの湿潤した外径面を形成するように、前記バッキングチューブの前記外径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸が前記バッキングチューブの前記長手方向軸に実質的に平行になるように、前記バッキングチューブを前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径内に垂直かつ同軸に配置するステップと、それによって外径面が湿潤された状態の前記バッキングチューブの第1の部分と、湿潤した内径面を有する前記第1の中空円筒状ターゲット本体とで構成される第1のアセンブリを形成するステップであって、前記第1のアセンブリは、長手方向軸を有し、前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記湿潤した外径面と前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面との間に形成された第1の間隙を呈し、前記第1の間隙は、前記第1のアセンブリの前記長手方向軸の周囲に画定され、前記第1のアセンブリは、前記第1のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された、前記第1の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、前記第1のアセンブリの前記第1の端部及び前記第2の端部は、互いに対向している、ステップと、
前記誘導加熱器の前記内径の内側に前記第1のアセンブリを配置するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第1のアセンブリの前記第1の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第1の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第1の部分を、第1の温度で予熱するステップであって、前記第1の温度は、前記第1の間隙を充填するように、前記頂部開放端部アクセスを通じて前記第1の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、前記第1の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップと、
前記第1のアセンブリの前記頂部開放端部アクセスを通じて、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面と前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記湿潤した外径面との間の前記第1の間隙を、融相下にあるはんだ材料で充填するステップと、
第1の軸方向の正の勾配温度が前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで生成されるように、前記第1のアセンブリの前記第1の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第1の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第1の部分を、前記第1のアセンブリの前記長手方向軸に沿って前記誘導加熱器を用いて加熱するステップであって、前記第1の軸方向の正の勾配温度は、前記第1のアセンブリの前記長手方向軸に沿って、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで変位され、軸方向勾配は長手方向に配向されており、前記第1の間隙内の前記はんだ材料の冷却を前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで誘導し、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面と前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記外径面との間に、前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで接着を生成し、それによって前記回転スパッタリングターゲットを形成する、ステップと、を含む、回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項2】
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に取り外し可能に結合された第1の保護材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を前記第1の保護材料で少なくとも部分的に覆うステップは、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、追加ステップを含む、請求項1に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項3】
前記予熱するステップ中及び/又は前記加熱するステップ中、前記バッキングチューブは、その長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、請求項1又は2に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項4】
前記第1の間隙を溶融はんだ材料で充填するステップの前に、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスを、バー手段で覆うステップを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項5】
前記加熱するステップの後で、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記カバー手段を取り外すステップを含む、請求項4に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項6】
少なくとも第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、長手方向軸とを有し、内径面及び外径面が、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸の周囲に画定され、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体は、電気伝導性材料からなる、ステップと、
前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記内径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸が前記バッキングチューブの前記長手方向軸に実質的に平行になるように、前記第1の中空円筒状ターゲット本体がボンディングされた前記バッキングチューブを、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記内径内に垂直かつ同軸に配置し続ける又は配置するステップであって、それによって前記湿潤した内径面を有する前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体と、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、はんだ材料で被覆された湿潤した外径面を有する前記バッキングチューブの第2の部分とで構成される第2のアセンブリを形成し、前記第2の部分は前記第1の部分から所定離間距離だけ離間し、前記第2のアセンブリは、長手方向軸と、前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記湿潤した外径面と前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面との間に形成された第2の間隙とを有し、前記第2の間隙は、前記第2のアセンブリの前記長手方向軸の周囲に画定され、前記第2のアセンブリは、前記第2のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された前記第2の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、前記第2のアセンブリの前記第1の端部及び前記第2の端部は、互いに対向している、ステップと、
前記誘導加熱器の前記内径の内側に前記第2のアセンブリを配置するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第2のアセンブリの前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体、又は前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第2の部分を、第2の温度で予熱するステップであって、前記第2の温度は、前記第2の間隙を充填するように、前記頂部開放端部アクセスを通じて前記第2の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、前記第2の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップと、
前記第2のアセンブリの前記頂部開放端部アクセスを通じて、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面と前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記湿潤した外径面との間の前記第2の間隙を、融相下にあるはんだ材料で充填するステップと、
第2の軸方向温度の正の勾配が前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで生成されるように、前記第2のアセンブリの前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体、又は前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第2の部分を、前記第2のアセンブリの前記長手方向軸に沿って前記誘導加熱器を用いて加熱するステップであって、前記第2の軸方向温度の正の勾配は、前記第2のアセンブリの前記長手方向軸に沿って、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで変位され、前記第2の軸方向温度の正の勾配は長手方向に配向されており、前記第2の間隙内の前記はんだ材料の冷却を前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで誘導し、それによって、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記内径面と前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記外径面との間に、前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで接着を生成し、前記バッキングチューブにボンディングされた少なくとも2つの円筒状中空ターゲット本体を有する回転スパッタリングターゲットを形成する、ステップと、を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項7】
2の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第2の保護材料は、好ましくは自己粘着性であり、前記第2の保護材料は、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に、好ましくは保持手段によって取り外し可能に結合され、前記保持手段は、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記外径面上に前記第2の保護材料を維持し、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体の前記内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、追加ステップを含む、請求項6に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項8】
前記予熱するステップ中及び/又は前記加熱するステップ中、前記バッキングチューブは、その長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、請求項6又は7に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項9】
前記第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスを、バー手段で覆うステップを含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項10】
前記加熱するステップの後で、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記カバー手段を取り外すステップを含む、請求項9に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項11】
前記バッキングチューブにボンディングされた少なくとも3個のターゲット本体、好ましくは前記バッキングチューブにボンディングされた3〜5個のターゲット本体を呈する回転スパッタリングターゲットを形成するように、請求項6〜10に記載のステップのいずれかを繰り返す、請求項6〜10のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項12】
ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコンからなる群から選択された導電性材料を含む第1及び/又は第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体を選択するステップを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項13】
モリブデン、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、及び銅、又はこれらの材料の任意の合金からなる群から選択された電気伝導性材料を含み、好ましくはその材料で構成される、バッキングチューブを選択するステップを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項14】
チタン又は任意のチタン合金で構成されるバッキングチューブを選択するステップを含む、請求項13に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項15】
回転スパッタリングターゲットの形成方法であって、
熱伝導性及び電気伝導性材料ベースのバッキングチューブを提供するステップであって、前記バッキングチューブは、外径及び外径面を呈する、ステップと、
第1の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、前記第1の中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、内径面及び外径面が周囲に画定された長手方向軸とを有し、前記第1の中空円筒状ターゲット本体は、低電気伝導性材料を含み、それによって低電気伝導体である、ステップと、
内径及び内径面を有する誘導加熱器を提供するステップと、
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記バッキングチューブの湿潤した外径面を形成するように、前記バッキングチューブの前記外径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸が前記バッキングチューブの前記長手方向軸に実質的に平行になるように、前記バッキングチューブを前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径内に垂直かつ同軸に配置するステップと、それによって外径面が湿潤した状態の前記バッキングチューブの第1の部分と、湿潤した内径面を有する前記第1の中空円筒状ターゲット本体とで構成される第1のアセンブリを形成するステップであって、前記第1のアセンブリは、長手方向軸を有し、前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記湿潤した外径面と前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面との間に形成された第1の間隙を呈し、前記第1の間隙は、前記長手方向軸の周囲に画定され、前記第1のアセンブリは、前記第1のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された、前記第1の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、前記第1のアセンブリの前記第1の端部及び前記第2の端部は、互いに対向している、ステップと、
1の電気伝導性材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性の導電性フィルム又はラップを用いて、より好ましくは、炭素系電気伝導性フィルム又は炭素系電気伝導性ラップを用いて、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第1の電気伝導性材料は、保持手段によって前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に取り外し可能に結合されているか、又は前記第1の電気伝導性材料は、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に対して自己粘着性である、ステップと、
前記第1の電気伝導性材料が前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面と前記誘導加熱器の前記内径との間に配置されるように、前記誘導加熱器の前記内径の内側に第1のアセンブリを配置するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第1の電気伝導性材料の存在を介して、前記第1のアセンブリの前記第1の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第1の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第1の部分を、第1の温度で予熱するステップであって、前記第1の温度は、前記第1の間隙を充填するように前記第1の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、前記第1の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップと、
前記第1のアセンブリの前記頂部開放端部アクセスを通じて、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面と前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記湿潤した外径面との間の前記第1の間隙を、融相下にあるはんだ材料で充填するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第1の電気伝導性材料の存在を介して、第1の軸方向の温度勾配が前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで生成されるように、前記第1のアセンブリの前記第1の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第1の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第1の部分を、前記第1のアセンブリの前記長手方向軸に沿って加熱するステップであって、前記第1の軸方向の温度勾配は正の勾配であり、前記正の軸方向勾配は、前記第1のアセンブリの前記長手方向軸に沿って、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで変位され、前記軸方向勾配は長手方向に配向されており、前記第1の間隙内の前記はんだ材料の冷却を前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで誘導し、それによって、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面と前記バッキングチューブの前記第1の部分の前記外径面との間に、前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで接着を生成し、前記回転スパッタリングターゲットを形成する、ステップと、を含む、回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項16】
前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を第1の電気伝導性材料で覆うステップの前に、
1の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第1の保護材料は、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に保持手段によって取り外し可能に結合されるか、又は、前記第1の保護材料は、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に対して自己粘着性であり、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第1の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、追加ステップを含む、請求項15に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項17】
前記予熱するステップ中及び/又は前記加熱するステップ中、前記バッキングチューブは、その長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、請求項15又は16に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項18】
前記第1の間隙を溶融したはんだ材料で充填するステップの前に、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスを、バー手段で覆うステップを含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項19】
前記加熱するステップの後で、前記第1のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記カバー手段を取り外すステップを含む、請求項18に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項20】
前記加熱するステップの後で、前記第1の電気伝導性材料を取り外すステップに続いて、好ましくは、第1の保護材料を取り外すステップを含む、請求項15〜19のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項21】
少なくとも第2の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、前記第2の中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、内径面及び外径面が周囲に画定された長手方向軸とを有し、前記第2の中空円筒状ターゲット本体は、低電気伝導性材料からなるか又は低電気伝導性材料を含む、ステップと、
前記第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面を、んだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップと、
前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記長手方向軸が前記バッキングチューブの前記長手方向軸に実質的に平行になるように、前記第2の中空円筒状ターゲット本体がボンディングされた前記バッキングチューブを、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記内径内に垂直かつ同軸に配置し続ける又は配置するステップであって、それによって前記湿潤した内径面を有する前記第2の中空円筒状ターゲット本体と、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、はんだ材料で被覆された湿潤した外径面を有する前記バッキングチューブの第2の部分とで構成される第2のアセンブリを形成し、前記第2の部分は前記第1の部分から所定離間距離だけ離間し、前記第2のアセンブリは、長手方向軸と、前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記湿潤した外径面と前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面との間に形成された第2の間隙とを有し、前記第2の間隙は、前記長手方向軸の周囲に画定され、前記第2のアセンブリは、前記第2のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された前記第2の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、前記第2のアセンブリの前記第1の端部及び前記第2の端部は、互いに対向している、ステップと、
2の電気伝導性材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性の導電性フィルム又はラップを用いて、より好ましくは、炭素系電気伝導性フィルム又は炭素系電気伝導性ラップを用いて、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第2の電気伝導性材料は、保持手段によって前記外径面に取り外し可能に結合されているか、又は前記第2の電気伝導性材料は、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に対して自己粘着性である、ステップと、
前記第2の電気伝導性材料が前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面と前記誘導加熱器の前記内径面との間に配置されるように、前記誘導加熱器の前記内径の内側に前記第2のアセンブリを配置するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第2の電気伝導性材料の存在を介して、前記第2の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第2の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第2の部分を、第2の温度で予熱するステップであって、前記第2の温度は、前記第2の間隙を充填するように前記第2の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、前記第2の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップと、
前記第2のアセンブリの前記頂部開放端部アクセスを通じて、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記湿潤した内径面と前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記湿潤した外径面との間の前記第2の間隙を、融相下にあるはんだ材料で充填するステップと、
前記誘導加熱器を用いて、前記第2の電気伝導性材料の存在を介して、第2の軸方向温度の正の勾配が、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで生成されるように、前記第2のアセンブリの前記第2の中空円筒状ターゲット本体、又は前記第2の中空円筒状ターゲット本体及び前記バッキングチューブの前記第2の部分を、前記第2のアセンブリの前記長手方向軸に沿って加熱するステップであって、前記第2の軸方向温度の正の勾配は、前記第2のアセンブリの前記長手方向軸に沿って、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで変位され、軸方向勾配は長手方向に配向されており、前記第2の間隙内の前記はんだ材料の冷却を前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで誘導し、それによって、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面と前記バッキングチューブの前記第2の部分の前記外径面との間に、前記底部開放端部アクセスから前記頂部開放端部アクセスまで接着を生成し、前記バッキングチューブにボンディングされた少なくとも2つの円筒状中空ターゲット本体を有する回転スパッタリングターゲットを形成する、ステップとを含む、請求項15〜20のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項22】
前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を第2の電気伝導性材料で覆うステップの前に、
2の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、前記第2の保護材料は、前記外径面に保持手段によって取り外し可能に結合されるか、又は、前記第2の保護材料は、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面に対して自己粘着性であり、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、前記第2の中空円筒状ターゲット本体の前記内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、追加ステップを含む、請求項21に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項23】
前記予熱するステップ中及び/又は前記加熱するステップ中、前記バッキングチューブは、その長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、請求項21又は22に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項24】
前記第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスを、バー手段で覆うステップを含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項25】
前記加熱するステップの後で、前記第2のアセンブリの前記底部開放端部アクセスから前記カバー手段を取り外すステップを含む、請求項24に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項26】
前記加熱するステップの後で、前記第2の電気伝導性材料を取り外すステップに続いて、好ましくは、第2の保護材料を取り外すステップを含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項27】
前記バッキングチューブにボンディングされた少なくとも3個のターゲット本体、好ましくは前記バッキングチューブにボンディングされた3〜5個のターゲット本体を呈する回転スパッタリングターゲットを形成するように、請求項21〜26に記載のステップのいずれかを繰り返す、請求項21〜26のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項28】
低アルミナAZO、ドープ又はアンドープLiPO、アンドープシリコン、ZnO、及びリチウム含有遷移金属酸化物からなる群から選択される低導電性材料を含む第1及び/又は第2の中空円筒状ターゲット本体を選択するステップを含む、請求項15〜27のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項29】
前記リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式LiMO又はLiMM’Oを有するように選択され、Mは、Ni、Co、Mn、Ti、Al、V、Cr、Y、Sr、Ca、Zr、Zn、Si、Mg、Ga、W、Fe、Cu、La、又は少なくとも1つのこれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属であり、M’は、Ti、Al、V、Cr、Y、Sr、Ca、Zr、Zn、Si、Mg、Ga、W、Fe、Cu、La、又は少なくとも1つのこれらの組み合わせからなる群から選択されるドーパントである、請求項28に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項30】
前記LiMO又はLiMM’Oのリチウム含有遷移金属酸化物は、Li/M又はLi/(M+M’)原子比が、0.90以上かつ1.25以下、好ましくは0.98以上かつ1.05以下を有するように選択される、請求項29に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項31】
前記LiMM’Oのリチウム含有遷移金属酸化物は、M’/M原子比が、0.001以上かつ0.05以下を有するように選択される、請求項29又は30に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項32】
前記LiMOのリチウム含有遷移金属酸化物は、一般式LiCoOを有するように選択される、請求項29〜31のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項33】
前記一般式LiCoOは、Li/Co比が、1.0+/−0.50に等しくなるように選択される、請求項32に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【請求項34】
モリブデン、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、及び銅又はこれらの材料の任意の合金からなる群から選択された電気伝導性材料を含み、好ましくはその電気伝導性材料で構成される、バッキングチューブを選択するステップを含む、請求項15〜33のいずれか一項に記載の回転スパッタリングターゲットの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転スパッタリングターゲットアセンブリを製造する方法及びこのような方法で製造された回転スパッタリングターゲットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリングターゲットアセンブリは、多種多様な製品の形成に使用される。スパッタリングターゲットアセンブリのターゲット材料が堆積されるいくつかの典型的な基板としては、半導体デバイス、コンパクトディスク(CD)、磁気ディスクドライブにおいて使用されるハードディスク、太陽電池、平面パネルディスプレイなどの光学デバイス、及び非水リチウム二次電池などの物品が挙げられる。
【0003】
上記の物品の製造において使用されるような典型的なスパッタリング装置は真空チャンバを備え、その内部にスパッタリングターゲットアセンブリ及び基板が配置される。ターゲットアセンブリのターゲットは、大きなイオン束をもつ電極となるように電気的に構成されている。不活性ガスが、しばしば反応性ガスと併せてチャンバに導入され、電力がターゲット/電極に供給されるとイオン化する。正に荷電した不活性ガスイオンはターゲットと衝突して、ターゲットから原子サイズの粒子を放出させる。粒子は、その後薄膜として基板の表面上に堆積される。
【0004】
この電気的構成のために、ターゲットは非常に熱くなることがあり、冷却する必要がある。典型的なスパッタリング装置では、冷却は水冷されたバッキング部材によって提供され、ターゲットは取り付け層によってバッキング部材に取り付けられている。いくつかのスパッタリングシステムでは、長方形のターゲット及びバッキングプレートが使用され、他のシステムでは、ターゲット及びバッキング支持体は、形状が円筒状である。
【0005】
平面パネルディスプレイ及び上記されたもののような他のデバイスの製造における傾向は、より小型の半導体デバイスをウェハ上に製造するように、1つの非常に大型の基板上に多数のデバイスを製造するというものである。例えば、平面パネルディスプレイ製造業者は、約1200平方インチ(7742平方センチメートル)〜6000平方インチ(38,700平方センチメートル)以上の表面積を有する正方形又は長方形の平面パネルディスプレイ基板を処理できることを望んでいる。これらの大きな基板のうちのいくつかは、バッキングプレートにインジウム接合された大きな長方形のスパッタリングターゲットを使用して現在処理されている。しかし、円筒状スパッタリングターゲットは、平坦なターゲットの対応するスパッタリングよりも、成膜速度の増加、ノジュール形成傾向の低下、及びターゲット材料の利用率向上の点で利点を提供することができる。しかしながら、(例えば、約1200平方インチ以上の大きさの)大きな表面積を有する基板と共に使用するのに十分な長さの回転(例えば、円筒状ターゲット)スパッタリングターゲットアセンブリの製造は、特別なボンディングの考慮及び課題を呈している(一例として、例えば0.5〜4メートル以上の円筒状スパッタリングターゲットアセンブリの初期製造と、フィルム形成に関連したますます厳格になる基準を満たすのに十分に高品質なスパッタリングターゲットアセンブリの製造との両方において、難点がある)。
【0006】
スパッタリングターゲットアセンブリの製造方法としては、スパッタリングターゲット(すなわち、スパッタリングターゲットアセンブリにおいて使用されるターゲット本体)を原料粉末から成形して、その成形体を焼結する方法が挙げられる。そのうえ、スパッタリングターゲットの品質要求としては、例えば、純度管理、適切な構造(例えば、結晶構造)、適切な粒度分布、均一な組成分布、及び高密度が挙げられる。ここで、相対密度とは、多孔質材料の密度と、気孔のない状態の同組成を有する材料の密度との比を意味する。
【0007】
スパッタリングターゲットが原料粉末の焼結体で構成されている場合、このようなターゲットの製造及び使用の両方において、問題につながり得る多数の要因(物理的及び化学的属性)が存在する。例えば、このようなセラミック材料ターゲットは、焼結体の形成中に容易に壊れる可能性があり、また高密度及び良好な均質性を常に有する焼結体を製造することは困難である。また、スパッタリングターゲットは、使用中、過酷な環境に置かれ、潜在的に(やはり物理的及び化学的な)劣化影響を受け、従って、使用中のそのような劣化(例えば、望ましくないノジュール形成、欠け、剥がれ、ひび割れ、支持体からの分離など)を回避しようと形成されなければならない。更に、ターゲットアセンブリの製造プロセスにおいて生成されるより低い品質属性に起因する、デボンディング、共通バッキング上で支持された複数のターゲット本体に関する不均一な表面、ノジュール形成などを伴う問題を回避するために、スパッタリングターゲットアセンブリ自体が高品質である必要がある。
【0008】
中空円筒状スパッタリングターゲットは大型化するにつれて製造がより困難になるため、スパッタリングターゲットアセンブリにおける長さが長いという要件を満たすために、大型のスパッタリングターゲットは、一般に、複数のターゲット本体(又はセグメント)がボンディングされた共通のバッキングチューブからなる。すなわち、ターゲット本体が、ボンディング材料によってバッキング支持体に直列に(典型的にはある程度の中間間隔を備えて)取り付けられており、このボンディング材料は、金属はんだとも呼ばれる低融点を有する金属若しくは金属合金、又は充填エラストマーなどの他の種類の電気伝導性かつ熱伝導性の接着剤とすることができる。
【0009】
支持体の機能は、電力伝達、機械的強度、及び冷却水への熱伝達を提供することであり、ターゲットがスパッタリング源に取り付けられることを可能にする。円筒状ターゲット本体又はセグメントは、シリンダの形態では、はんだ付けによって支持体にボンディングされることが多いので、たいていの場合、ターゲット材料と支持体材料との間の熱膨張係数に不一致があり、その結果、特にターゲットのボンディング又ははんだ付け後の冷却中に、またスパッタリングプロセスにおけるターゲットの使用中にも、はんだ層、ターゲットセグメントとはんだとの間の界面、及びはんだとバッキング本体との間の界面に熱応力が生じる。加えて、はんだが凝固するときにはんだの容積縮みがある可能性があり、これもまた界面収縮応力につながる。
【0010】
例えば、スパッタリング作業中に、累積熱応力及び収縮応力が、バッキング本体若しくはターゲットセグメント材のいずれか一方又は両方からのはんだ層の強力かつ制御されない離層につながることがよくある。より大きな表面積にわたって離層が生じる場合、ターゲットセグメントから支持体への熱放散は最小限であり、それにより局所的過熱をきたし、より不均一な熱応力を引き起こし、やがてはスパッタリング中のターゲットセグメントのひび割れを引き起こす。また、バッキングチューブに沿って中空円筒状ターゲットセグメントを直列にボンディングすることで、破損及び追加の再作業費用にもつながり得る。特に、例えば、適切な湿潤技術が欠けている場合には、バッキング支持体に円筒状ターゲット本体を最初に配置する際に破損が生じる可能性がある。また、貧弱又は不正確な組み立ても、ターゲットアセンブリの低品質領域(例えば、非整列の外側面又は外径面、目に見えない多くのひび割れ、漏出領域及び/又は間隔形成の問題)につながることがあり、ひび割れ、ノジュール形成などの前述の作業上の問題につながり得る。
【0011】
ターゲットをそれらの支持体にボンディングするための様々な技術が提案されており、特定のタイプの周方向に配置された中空セラミックターゲット本体(例えば、ITOターゲット及びAZOターゲットなどのセラミックターゲット)を内部支持チューブに対してボンディングすることが挙げられ、このような技術は、金属はんだバインダ(例えば、インジウム)の使用を含み、このバインダは輻射加熱と併せて提供され、この輻射加熱は、組み立て時にセラミックシリンダとバッキングチューブの温度を上げ、溶融はんだがターゲットと支持体との間に形成された間隙に注がれるときにはんだの融点を上回る上記組み合せの温度を維持するのに使用される。この輻射加熱は、垂直シェル型ヒータ(vertical clam shell heater)設計によって達成することができる。
【0012】
このような輻射加熱の下では、上下の温度勾配は、サイズが大きいマルチゾーンヒータでしか制御できない。このサイズは、ボンディングされるターゲットアセンブリへのアクセスを物理的及び視覚的の両方で制限し、例えば、セグメントの間隙の間又はひび割れたセラミック壁の間のはんだの漏れを十分に早期に検出して、広範な再作業による無駄な時間及び材料を最小化するアセンブラの能力を制限し得る。温度勾配の制御は、マルチゾーンヒータを用いても不十分であり、ターゲット本体のひび割れやはんだ酸化を引き起こす元になり得る局所的なホットスポットや熱衝撃につながり得る。従って、スパッタリングターゲットをそのバッキング支持体へ接合する間の適切な加熱は、ターゲットアセンブリの形成に関連して生じる上述の問題に関する範囲の一例であり、対処されなければ、スパッタリングターゲットアセンブリを使用する製品の製造中に潜在的な問題(例えば、不適切に動作するスパッタリングターゲットアセンブリに伴って形成される低品質の薄膜製品)を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0074969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような状況を鑑み、本発明の実施形態は、回転スパッタリングターゲットアセンブリを製造するための製造方法を提供することを目的とし、この回転スパッタリングターゲットアセンブリは、1つ以上の中空円筒状ターゲット本体(例えば、セラミック又は低導電性金属で形成されたものなどである円筒形のターゲット本体又はセグメントの積み重なり(好ましくは、わずかに間隔が空いている))から形成されており、ターゲット本体は、共通の管状の、内部の、同心状に配置された支持チューブなどの適切なバッキング支持体にボンディングされている。本発明は、(利用される場合には)湿潤材料及びバインダ材料(湿潤材料及びバインダ材料は同じであっても異なっていてもよい)に必要な熱を提供するために誘導加熱を用いて回転スパッタリングターゲットアセンブリをボンティングする方法を含む。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の方法は、a)ターゲット本体上の粘着付着物を回避する保護ラップを提供することと、b)(特に、ターゲット本体の誘電率及び透磁率又はバッキング支持体の性質により直接誘導加熱が困難である場合に)誘導加熱器と共に使用するための導電性ラップ(例えば、導電層又はブランケット)を提供することと、c)1つ以上のターゲット本体をバッキング支持体にボンディングするための誘導加熱プロセスに関して内部保護ラップ及び外部導電性ラップの両方を提供することを伴う組み合わせとを含む。
【0016】
従って、本発明は、誘導加熱を使用してターゲットアセンブリを組み立てる方法を提供し、スパッタリング装置での使用によく適し、ターゲットアセンブリの製造及び使用に関連する上記の1つ以上の難点などの難点を回避又は軽減することを対象とするターゲットアセンブリをもたらす。
【0017】
物体の誘導加熱の速度は、誘導電流の周波数、誘導電流の強度、材料の比熱、材料の透磁率、及び電流の流れに対する材料の抵抗を含むいくつかの要因に依存する。これは、多様な円筒状セラミック材料を含み得るターゲットボンディング製造現場(target bonding shops)において、直接誘導加熱に対して概して非感受性の物理特性を有する材料もあるなかで、誘導加熱の使用に著しい制限を生じさせると通常認識されるであろう。LiMOの形態(例えば、LiCoOの形態)は、このような非感受性のセラミックの代表例である。
【0018】
換言すると、誘導加熱器の1つの制限は、加熱される材料が誘電係数と透磁率との適切な組み合せを有するという要件である。これは、比較的高い比抵抗値を有するものもある多様な円筒状ターゲット(例えば、セラミック)材がボンディング対象となるターゲットボンディング製造現場での使用には著しい制限となる。しかしながら、本発明は、このような制限を取り除く汎用的な方法論を提供する。例えば、本発明の実施形態の下では、ターゲット本体(例えば、セラミックターゲット本体)を直接誘導加熱する(含まれる材料が適切な場合には本発明の下で実行することができる)代わりに、ターゲットを、加熱された誘導感受性材で巻装し、巻装されたターゲット本体の温度を上昇させるために従来の熱伝達を使用する。金属材及び非金属材を含む多数のラップ及びスリーブが適用可能であると考えられるが、炭素埋め込み織布(例えば、繊維ガラス又は他のセラミック繊維で構成される)製のラップは、支持体にボンディングされている巻装された円筒状ターゲットセグメント(例えば、チタンの1種などの金属バッキングチューブにボンディングされたLiCoOなどのLiMOの円筒状ターゲット本体)の効率的な加熱を提供する。また、このラップは、その下側材に関して非接触領域(及び潜在的な絶縁エアポケット)を回避するように、その巻装されている下側材に対して十分な可撓性があるという望ましい品質を満たす。
【0019】
有利には、誘導加熱器制御の電力及び周波数を適切に調整することによって、巻装された中空円筒状ターゲット本体を誘導加熱ユニットの付属コイルで取り囲むことを可能にする寸法を有する環状誘導加熱ユニットが、効率的な加熱を提供する。加えて、ターゲット本体(例えば、LiMO製の焼結セラミックシリンダ)の内部(又は内)径(ID)より小さい外径(OD)のバッキングチューブを中空シリンダ内に配置することができ、この組み合わせは同時に効果的に加熱される。例えば、本発明は、冷間等方圧加圧(CIP)緻密化されかつ焼結されたLiCoOセラミック円筒状ターゲット本体から形成されたターゲット本体である巻装されたLiMO材料円筒状ターゲット本体を特徴とするボンディング技術を含む。
【0020】
誘導加熱技術の使用を通じて1つ以上の円筒状ターゲット本体又は円筒状ターゲットセグメントからなる回転円筒状スパッタリングターゲットアセンブリを形成するための本発明の方法は、例えば、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、LiMO、LiPO、ドープされたLiPO、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコン製の中空円筒状ターゲット本体などのターゲット本体の高品質なボンディングを提供する。更に、本発明の下でのスパッタリングターゲットアセンブリの誘導熱によるボンディング形成は、いくつかの例として、ステンレス鋼、チタン、モリブデン、アルミニウム又はアルミニウム合金、及び銅又は銅合金製のチューブなど多様なバッキング支持体上での使用に適している。
【0021】
一般に、本発明は、多様なスパッタリングターゲットアセンブリの形成、特に、ターゲット本体とバッキング構造とが異なる熱膨張係数を有するアセンブリの形成におけるボンディング技術としてよく適している。例えば、本発明は、CIPによる緻密化及び焼結ターゲット本体形成プロセスにより形成されるターゲット本体を接合するのに適している。例えば、本発明は、CIP緻密化し、LiMO(例えば、LiCoO)焼結中空シリンダなどを材料とする成形された中空セラミックシリンダを焼結して生じるような中空円筒状ターゲットをボンディングするための技術を特徴とする。すなわち、本発明は、形成及びボンディングするのに困難な材料を代表する1つ以上のセラミックLiMO(例えば、LiCoO)中空円筒状ターゲット本体から構成される回転円筒状ターゲットを形成するための方法を特徴とする(例えば、薄膜電池などの薄膜製品の生成の場合のように薄膜の(パルスDC電源、又はDC電源、MF−AC電源、RF電源などの他の電源を用いた)スパッタリングにおける使用に適した複数のLiMO(例えば、LiCoO)中空円筒ターゲット本体を含むスパッタリングターゲットアセンブリを提供する)。
【0022】
また、本発明は、上記されたものなど様々な異なる種類の円筒状ターゲット本体のボンディングにおける使用に適用可能であるが、様々な異なる方式で形成されたターゲット本体(例えば、熱間加圧成形(HP)、冷間軸方向加圧成形(CAP)、熱間等方加圧成形(HIP)、その成形体の焼結を含むスリップキャストを特徴とする形成技術を含む、前述のCIPプロセスの直接使用以外の形成プロセスで形成されたターゲット本体)をボンディングする際の使用にも利用可能である。
【0023】
本発明は、更に、1つ以上の中空円筒状ターゲット本体から構成される回転スパッタリングターゲットアセンブリを組み立てるための効率的かつ費用効果の高い製造方法を更に含み、中空円筒状ターゲット本体はドープ又はノンドープ材料から形成される、例えば、金属管状支持体などの管状バッキング支持体にボンディングされた、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、LiMO、LiPO、ドープLiPO、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコンなどの円筒状焼結ターゲット本体である。本発明の一実施形態は、内部(又は内側)円筒管状支持体(好ましくはチタンで形成されるような金属チューブ)にボンディングされた、予め形成された円筒形状の焼結されたLiMO(例えば、LiCoO)ターゲット本体から組み立てられたLiMO(例えば、LiCoO)スパッタリングターゲットアセンブリを更に含む。好ましいボンディング材料の一例は、In若しくはIn合金、Sn若しくはSn合金、又はAg合金のうちの1つなどの金属はんだである。このような合金は、濡れ性及びボンディング強度を改善するために若しくは融点を低下させるために、又は有益な汚染成分として、特定の量の他の金属成分を含み得る。このような成分としては、Ti、Zn、Cu、Ni、Ga、Ce、Bi、Sb、Si、Pbがあり得る。また、このような合金は、バッキング基板をターゲット本体に接合するために最終的な間隙充填ボンディング材料が提供される前に、表面湿潤プロセスと併せて利用することもできる。
【0024】
また、本発明の実施形態は、バインダ材料の制御加熱を含むスパッタリングターゲットアセンブリの形成ための方法を含み、このバインダ材料は、互いに対向してボンディングを施されるチューブ支持体又は構成要素ターゲット本体表面のいずれか一方又は両方の表面の湿潤のために使用されるようなバインダ材料である。すなわち、本発明における誘導による加熱は、(設けられている場合には)湿潤材料を加熱すること、及び1つ以上のスパッタリングターゲット本体と内部に配置されるバッキング支持体との間の周方向の間隙に供給されるバインダ材料のために適切な温度を維持することの両方に適している。本発明のボンディング技術は、他のバインダ適用加熱技術(例えば、前述の輻射による加熱技術)に関連する問題の回避を容易にする。例えば、本発明の下では、誘導加熱器は、ボンディング中の回転ターゲットアセンブリ内の温度の制御に関して輻射加熱器に対して顕著な利点を提供する。電気周波数及びエネルギーレベルは、軸方向及び半径方向の平衡加熱を促進するように制御することができる。例えば、適度な導電性のセラミックターゲット材料の、高導電性又は少なくとも当該材料よりも高い導電性のバッキングチューブ(例えば、金属バッキングチューブ)の存在下での加熱を効果的に制御するように、周波数を選択することができる。本発明の実施形態の下で誘導加熱システムと共に提供される電力制御を用いて勾配を最小化しながら加熱及び冷却の速度を最大化することができる。例えば、ボンディングプロセスの下で材料が冷却し始め、誘導加熱器の焦点が支持バッキング手段によって支持された1つ以上のターゲット本体に関して軸方向にシフトされるときに、ボンディング間隙内で所望の軸方向温度勾配を達成するように、間隙の底部から頂部の方向において相対的熱レベル差を正確に制御することができる。これにより、ボンディング材料凝固プロセスに関して高度な温度制御が存在するので、ボンディングプロセス中の熱衝撃又は制御されない離層領域を回避することが容易になる。従って、本発明の実施形態は、組み立て時間の短縮を提供するだけでなく、組み立てプロセスの間の望ましくない事象に起因する、欠陥ターゲットセグメント又は欠陥ターゲットアセンブリの廃棄を回避するのに適している。また、誘導加熱装置は、加熱されるアセンブリへの良好なアクセス(例えば、物理的及び視覚的)を提供するように小さく作製することもできる。
【0025】
本発明の方法は、円筒状ターゲットのバッキングチューブへのボンディングにおける誘導加熱のための導電性ラップを利用することを含み、低アルミナAZO円筒状ターゲット、ドープ又はアンドープLiPO、アンドープ(ノンドープ)シリコン円筒状ターゲット、ITO、及びLiMO(例えば、LiCoO)を含む多種多様な異なる誘電率のセラミック及び金属材料をボンディングすることを含む。本発明の導電性ラップ及び保護ラップの特徴の各々は、別個の実施形態として、又は誘導ラップ及び保護ラップの両方を特徴とする組み合わせからなる構成要素として使用することができる(保護ラップは、好ましくは、ターゲット本体と導電性ラップとの間にあり、また各々は、各ラップの下にエアポケットが形成されるのを回避するようにして、例えば、外側の2つの積層ラップは各々、最も近接する下側材表面の全域に対して実質的に100%直接接触するようにしてラップする)。多くの場合、内部保護ラップとその周りに配置された外側誘導加熱導電性ラップとの組み合わせが好ましく、これは、この組み合わせが、別の方法ではターゲット本体を汚す恐れのある導電性ラップを選択するときに、より大きな自由度を提供するからである(例えば、この組み合わせにより、炭素系導電性ラップからターゲット本体への炭素汚れの可能性が回避される)。この種の汚れは、望ましくない粉塵発生機械加工の場合と同様に、追加の除去処理を必要とすることがある。
【0026】
保護ラップには、その加熱中に円筒状ターゲット本体と接触する恐れがあるように配置された接着剤はないが、これもまた、望ましくない汚れ及び追加の材料除去(及び潜在的に追加される粉塵発生)につながる可能性があるためである。従って、本発明の実施形態の下では、保護ラップ層は、誘導ラップ層よりも円筒状ターゲット表面の近くに配置される。例えば、好適な実施形態では、(少なくとも接着剤汚れを加える恐れがある面に比べて)接着剤のない保護ラップが、保護されるターゲット本体に直接接触して配置される(例えば、ターゲット本体の全外径の露出周囲の周りを周方向に完全に保護する)。更に、保護ラップはまた、好ましくは、保護ラップの非ターゲット本体側にのみ延びるようなテープ又は他の保持手段との相対位置において保持される。保護ラップ(例えば、ブランケットフィルム又は巻回された材料リボン)の内部接触面は、好ましくは、保護されるターゲット本体シリンダの外面と直接接触して適用される。保護ラップ層の外面の周りに配置された維持材又は保持材は、ボンディングプロセスの間保護されるターゲット本体の加熱に付随する熱レベルに適切に耐えるテープ(この状況では、接着剤の存在は保護フィルムラップの外部との接触のため許容される)などの任意の適切な保持材料とすることができる。また、利用される保護ラップは、一度の巻装でターゲット本体の軸方向全長を覆うラップ、又はターゲット本体の周りに複数回巻回されて軸方向全長を覆う、より短い軸方向長さを覆うラップ(例えば、巻装されたターゲット本体の軸方向全長よりも小さい幅を有する材料リボン)であってもよい。
【0027】
従って、本発明の方法は、円筒状ターゲット本体の周りに保護のために巻かれた保護ラップと併せて誘導加熱を使用して、円筒状ターゲット(例えば、セラミック製の)をバッキングチューブにボンディングすることを含む(円筒状ターゲットは、例えば、先行する段落に記載した材料のうちの1つであり、各ターゲットセグメントに対してそれぞれのラップが、個別になっていることが好ましい)。
【0028】
本発明の方法(及び本発明のターゲットアセンブリ製造を実施する際に使用される構造的ターゲットアセンブリ形成装置)は、構造的ターゲットアセンブリ形成装置ごとに、加熱対象ターゲット本体の外面の周囲に同心円状に配置された1つ以上の誘導加熱器を含む。各誘導加熱器は、好ましくは、ターゲット本体(別々のサイズがスパッタリングターゲットアセンブリ内に位置している場合には、軸方向の長さが最小のターゲット本体)の軸方向長さの200%以下である軸方向長さ(すなわち、垂直積み重ね配置におけるターゲット本体を加熱するために誘導加熱器が垂直に配向されたときの誘導加熱器の「高さ」)を有する。一層大きな軸方向温度制御のためには、誘導加熱器の軸方向の長さ(又は「高さ」)は、既述の個々のターゲット本体の軸方向長さに概ね相当する(約100%)か、又はそれらの軸方向の長さより小さい(例えば、40〜80%)。
【0029】
この制限された誘導加熱器の軸方向長さ関係は、大きなサイズの輻射加熱器など従来技術における輻射加熱装置に関連する難点を回避するのに役立ち、大きなサイズの輻射加熱器は、物理的及び視覚的の両方で、ボンディングされるターゲット本体にアクセスする際に難点となり、セグメント間隙の間又はひび割れたセラミック壁の間のはんだの漏れを十分に早期に検出して広範な再作業による無駄な時間及び材料を最小化するアセンブラの能力を制限し得る。更に、このような(スパッタリングターゲットアセンブリの全長に比べて)制限された軸方向長さを用いることにより、誘導加熱器又は部分的に完成したスパッタリングターゲットアセンブリのいずれか1つ又はその両方の位置を調整(振動を含む)してその2者間の軸方向相対関係を変更することを通じて、より正確な加熱及びより望ましい軸方向温度勾配制御を達成することができる。また、1つの誘導加熱器又は複数の垂直方向に直列に配置された誘導加熱器を利用することができ、この複数の誘導加熱器は、各誘導加熱器が、好ましくは、軸方向の間隙を間に挟んで既述の制限された軸方向の長さを有する状態で、各々が、独立した制御ユニット又は共通の(ただし好ましくは個別に調整可能な)制御ユニットの下にある。
【0030】
部分的に完成したスパッタリングターゲットアセンブリが、固定された誘導加熱器に対して調整される状況では、共通のバッキングチューブに固定された垂直方向に調整可能な装置のような適切な軸方向調整手段が設けられ、この手段は、互いにボンディングされる他の構成要素(及び誘導加熱器内部の円筒状開口部自体)との所望の同心度を保持する。代替的シナリオでは、本発明に用いられる誘導加熱システムは、好ましくは、調整可能な支持体を含み、この支持体は、十分な同心度を維持しながら、熱の適用を意図するスパッタリングターゲットアセンブリ内に配置された所望のターゲット又はターゲット本体と一致するように、誘導加熱器(又は複数の加熱器について、全体的に若しくは個別に)の軸方向の調整を提供する。追加の実施形態では、所定の場所に固定された複数の離間した誘導加熱器と、これも所定の場所に固定された、受容された部分的に完成したターゲットアセンブリと、誘導加熱器システム制御ユニットとが存在し、この誘導加熱器システム制御ユニットは、バッキングチューブの長さに沿って電源が投入され切断される誘導加熱器の順序付けられた運転を介して、バッキングチューブの長さに沿ってターゲット本体の順序付けられた加熱を提供する。追加の実施形態では、ターゲットアセンブリ(すなわち、バッキングチューブ又は円筒状ターゲット本体が取り付けられたバッキングチューブ)をバッキングチューブの中心軸と一直線上にある軸上で回転させ、それによってターゲットアセンブリ内の半径方向の勾配を最小化する。ターゲットアセンブリは、加熱及び冷却プロセス中には回転されるが、インジウムを添加する間又はバッキングチューブの周囲に円筒体を配置する間には回転されない。
【0031】
従って、本発明の誘導加熱器を使用することを通じて、上述の従来技術の輻射加熱器(マルチゾーン輻射加熱器にさえも)に付随するような問題を回避することができ、加熱されるターゲット本体の長さ及び周辺に沿った温度勾配をより良く制御し、またセラミック及びはんだ酸化物のひび割れの元になる局所的なホットスポットを回避する能力が得られる。
【0032】
また、誘導加熱器は、ボンディング中に回転ターゲットアセンブリ内の温度を制御する点において輻射加熱器よりも著しく優れている。電気周波数及びエネルギーレベルが、組み立てられるスパッタリングターゲットに含まれる材料に関して軸方向及び半径方向の平衡加熱を促進するように容易に制御される。例えば、高導電性金属バッキングチューブの存在下で、適度な導電性のセラミックターゲット材料(上述したものなど)の加熱を効果的に制御するように周波数を調整することができる。簡単な電力制御で所望の軸方向の勾配を維持しながら、加熱及び冷却の速度を最大化することができる。これによりアセンブリ時間が短縮される。誘導加熱素子は、比較的小さく作製することができ、加熱されるアセンブリに関する改善されたアクセス(視覚的及び物理的な)及び集中加熱ゾーンを提供するように、ターゲット本体サイズを考慮して寸法設定することができる。
【0033】
前述したように、誘導加熱器の1つの制限は、概して、加熱される材料が導電率と透磁率との適切な組み合わせを有するという要件である。この制限は、本発明によるターゲット本体(例えば、セラミックシリンダ)に導電性「ブランケット」ラップを使用することによって、本発明の下でより低導電率のターゲット本体について克服することができる。このようなラップの1つに、長手方向に炭素繊維、ガラス/ポリエステル繊維織物、及び固定された自己エッジング(self−edging)を有する、市販材料の炭素系布がある。こうした布は、Suter Kunststoffe AG又はSuter Swiss(Switzerland)から入手可能である。
【0034】
本発明の下では、誘導加熱器環境において電気を伝導するのに適した材料を用いて様々な導電性織物を利用することができる。例えば、導電性織物は、織物の構造に織られた金属撚り線で作製することができる。また、通常の織物に炭素又は金属系の粉末を含浸させることによって作製された半導体織物も取り上げられる。本発明の導電層又は導電性ラップの実施形態は、非導電性又は低導電性の基板を含む導電性布を含み、この基板は、その後、炭素、ニッケル、銅、金、銀又はチタンであることが多い電気伝導性成分で被覆されるか又はこれらを埋め込まれるかのいずれかである。
【0035】
金属及び非金属材料を含む多数のラップ及びスリーブが特徴とされるが、炭素埋め込み織布製の(すなわち、繊維ガラス又は他のセラミック繊維で構成される)ラップは、セラミックLiMOの1種(例えば、LiCoO)など、巻装された円筒状ターゲット本体の効率的な加熱を提供する。有利には、誘導加熱器制御の適切な電力の調整及び周波数の調整により、巻装された中空LiCoOシリンダを誘導加熱ユニットの付属コイルで取り囲むことを可能にする寸法を有する環状誘導加熱ユニットが、別の方法では誘電加熱が困難であるこの材料の効率的な加熱を提供する。加えて、本発明の下では、シリンダターゲットの内径(ID)より小さい外径(OD)のバッキングチューブを中空シリンダターゲット内に配置することができ、この組み合わせは同時に加熱される。
【0036】
例えば、湿潤した外径(OD)の金属バッキングチューブの周囲にプレウェッティングした内径(ID)を有するターゲット本体(例えば、セラミック)シリンダを配置した後、上記材料で構成された導電性スリーブ又はこうした布のラップを、セラミックシリンダの外側表面にテープで固定するか又は別の方法で所定の位置に保持することができる。次に、このアセンブリを加熱リングの誘導コイル内に配置する。導電性ラップの誘導加熱は、熱(放射)がシリンダ(及びバッキングチューブの内部)に半径方向に伝達される状態で、軸方向において容易に制御される。電力及び周波数の適切な選択により、バッキングチューブ及び巻装されたターゲット本体(例えば、セラミック)シリンダ(及び任意の湿潤又は熱係数架橋添加材料)の平衡かつ同時誘導加熱が達成される。
【0037】
本発明による誘導加熱は、別々の比誘電率値を有する(ドーピング程度(例えば、シリコン及びホウ素ドープシリコンなどのドープシリコン)やAZOターゲット本体内のAl含有量が低から高になるなど、共通の種類の材料内での変化に起因する)様々な円筒状セラミック若しくは金属(例えば、シリコンのような低導電性金属)スパッタリングターゲット材料、又はITO、AZO、LiMOなど、ある種のターゲット本体材料から別種のターゲット本体材料まで、様々な円筒状セラミック若しくは金属スパッタリングターゲット材料に適している。
【0038】
通常誘導加熱することが困難なターゲット本体の例としては、1%未満のアルミナでドープされたAZO及びLiMO(例えば、LiCoO)セラミックシリンダが言及され、導電性ラップは、いくつかの種類のスパッタリングターゲットボンディングについて、別の方法では成功した加熱とは見なされないであろう加熱を可能にする。低又は半導電性円筒状金属ターゲット材料(例えば、アンドープシリコン)を扱う場合などの別の状況では、誘導によるターゲット本体の加熱をより成功裡に達成するために使用できる点で、導電性ラップは有益であり得る。換言すると、ホウ素ドープシリコンターゲット本体は、いくつかの状況では追加の導電性ラップなしで直接誘導加熱することができるが、アンドープシリコンターゲット本体では、ボンディングを成功裡に達成するために導電性ラップを追加する必要があり得る。ラップが必要(又は有益)であるか否かは、本発明の下で取り上げられる潜在的に多様なターゲット本体及びバッキング支持体材料に関する試行錯誤によって決定することができる。
【0039】
更に、LiCoOセラミックシリンダなどのターゲット本体のボンディングでは、本発明の実施形態の下では、導電性ラップとターゲット本体との間で望ましくない化学反応が、ターゲット表面の望ましくない変色の生成につながることがある。しかし、これは、本発明の保護層又は保護ラップによって回避される。例えば、耐熱性ポリマーフィルム(Kapton(商標)ラップ)を用いたLiCoOシリンダの薄い事前巻装は、アセンブリのために得られた優れたボンディング品質を備え、LiCoO材料を反応から保護することができる。
【0040】
Bドープシリコンシリンダのボンディングでは、このような保護ラップをターゲット本体のエッチングされたOD面上で利用することにより、ODをインジウム小滴及び他のデブリがない状態を保つことが可能になり、迅速な最終クリーニングが容易になるが、重要なことは、後にセグメント間隙内に堆積し得る、又は表面に残ってスパッタリングチャンバに入り込み得る粉塵の形成を引き起こし得る表面研磨が回避されるということである。
【0041】
本発明の下では、ボンディング中のひび割れによる材料損失、ひび割れたタイルを置き換えるための付随する再作業を最小化することによって、またボンディングされたアセンブリの表面の最終クリーニングに要する時間の短縮によって製造コストを低減することができる。
【0042】
また、本発明の誘導加熱システムは、好ましくは、加熱中にターゲット本体に関連付けられた半径方向及び軸方向の温度勾配の制御を容易にする、誘導加熱器に付随する制御ユニットも含む。典型的には、誘導加熱器は、中程度の周波数(MF−30〜300kHz)又は無線周波数(RF−MhZ)のいずれかの範囲で動作するような周波数電源(又は周波数発生器)、ワークヘッド(変圧器)、及びコイル(インダクタ)を含む。誘導加熱は、一般に、強い磁界(例えば、加熱中に接触することなくターゲット本体を取り囲む誘導加熱器のコイル及びコイルケーシング)を利用することによって導電体を加熱する非接触方式である。本発明の実施形態は、最大出力20kWで12kHzまで動作する能力を有する発熱体を特徴とする。この能力は、例えば、2〜3kWのより低出力で動作することを伴う本発明の典型的な用途の多くを上回っている。出力レベルは、誘導加熱器の制御を使用して設定することができ、周波数を、ターゲット本体アセンブリの関連材料(例えば、バッキングチューブ材料、湿潤/間隙ボンディング材料及びターゲット本体材料)の所望の加熱のタイミング及びレベルに最も望ましい周波数に調整することができる。
【0043】
従って、本発明の実施形態は、高品質のスパッタリングターゲットアセンブリを製造する方法(及びそのような製造から得られるスパッタリングターゲットアセンブリ)を含み、誘導加熱を用いた(スパッタリングターゲットのボンディングの助けとなる場合に導電性ラップの使用を含む)、LiMO(例えば、LiCoO)(CIPのLiMO成形体など)などの扱いの難しい材料製のターゲット本体を含むスパッタリングターゲットアセンブリを含み、スパッタリングターゲットアセンブリは、バッキングチューブに対して周方向に配置された中空ターゲット本体(例えば、セラミックの、一体構造又はスペーサあり及びなしでの積み重なり)を含む。また、本発明の実施形態は、本明細書に記載の誘導加熱技術を用いて、CIPによるLiMO(例えば、LiCoO)ターゲット本体がターゲットアセンブリ形成プロセスにおいて組み合わされる有利な構成も含む。
【0044】
本発明の例は、以下のボンディング方法を含む。
【0045】
a)円筒形状の焼結されたターゲット本体(例えば、ID及び/又はOD機械加工によって改良された、内径(ID)及び外径(OD)を有する)を、以下を含むボンディング技術を用いて管状支持体などの適切なバッキング支持体にボンディングする。
i.インジウム又はインジウム合金などの湿潤材料でシリンダ(例えば、LiCoOシリンダ)のターゲット本体IDを湿潤させる(例えば、直接湿潤させる)。
ii.管状バッキング支持体のODを湿潤させる(例えば、直接湿潤させる)(例えば、インジウム又はインジウム合金などの湿潤材料を用いる)。
iii.管状バッキング支持体をターゲット本体内で、それらの間に間隙を画定するように周方向内部に配置する。
iv.湿潤した表面の間に追加のインジウム又はインジウム合金などの中間間隙充填ボンディング材料を提供して、ターゲット本体を対応するバッキング支持体にボンディングする。
v.ボンディングプロセスと併せて誘導発熱体を利用する。
【0046】
本発明の実施形態は以下を含む。
【0047】
A)以下を含む方法を伴う、スパッタリングターゲットアセンブリの形成。
スパッタリングターゲット本体が内径面を有し、バッキング支持体及びスパッタリングターゲット本体が、各々、外径面を有する状態で、バッキング支持体がスパッタリングターゲット本体の内径内に配置されるように、スパッタリングターゲット本体とバッキング支持体とを相対的に配置すること、
バッキング支持体の外径とスパッタリングターゲット本体の内径との間のボンディング材料(例えば、湿潤材料及び/又はボンディング間隙充填材)が加熱されるように、スパッタリングターゲット本体の外径を誘導加熱器で加熱すること(例えば、誘導加熱/ボンディング領域全体にわたって改善された半径方向熱勾配が形成されるように、バッキングチューブの加熱も併せる)、
ボンディング材料を冷却してスパッタリングターゲット本体とバッキング支持体との間のボンディング関係を確立するように、誘導加熱器を用いた加熱を停止すること。
【0048】
B)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性材料を、スパッタリングターゲット本体の外径面に沿って延びるようにして、誘導加熱器が導電性材料(例えば、誘導加熱器から独立し、かつ半径方向内側に離間している導電性材料、又は誘導加熱器から独立し、かつ導電性ラップの非導電性半径方向外側領域又は絶縁ラミネート層などを用いて、誘導加熱器と接触している導電性材料)を加熱する位置に配置する。
【0049】
C)Bに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性材料として(例えば、可撓性の)導電性ラップを利用し、この導電ラップはスパッタリングターゲット本体の外径面の周りに延びる。
【0050】
D)Cに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性ラップは、炭素材料を含む。
【0051】
E)Cに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性ラップは、炭素材料及び可撓性布構成要素を含む布である。
【0052】
F)Bに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性材料は、炭素材料を含む。
【0053】
G)Bに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、低アルミナAZO(例えば、1重量%未満のアルミナ)、ドープ又はアンドープLiPO、アンドープシリコン、ZnO、及びLiMOからなる群から選択された材料で形成された円筒体である。
【0054】
H)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、LiMO材料製である(遷移金属酸化物材料の一部として材料Mを特徴とする実施形態を用いる(例えば、Mは、Ni、Co及びMnなどの主要な対象金属又はそれらの組み合わせと、Ti、Al、V、Cr、Y、Sr、Ca、Zr、Zn、Si、Mg、Ga、W、Fe、Cu、La、又はそれらの組み合わせを含む他のドーパント又は改質剤を含む)。また、本発明の実施形態は、化学量論的及び非化学量論的形態の両方において、LiMO材料を特徴とする(本スパッタリング装置に適合するLi/M(例えば、Li/Co)比は、Li/M比0.90〜1.25であり、実例としては0.98〜1.05である)。
【0055】
I)Hに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、LiCoO材料製である。
【0056】
J)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、相対的配置は、以下のi)又はii)のうちの一方又は両方を含む。
i)ボンディング材料の加熱及び/又は冷却段階の間、バッキング支持材を回転させること。
ii)加熱及び/又は冷却段階の間、バッキング支持体の振動させること。
【0057】
K)Jに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、LiMOを含む。
【0058】
L)Bに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体の外面と導電性材料との間に保護フィルムを更に設ける。
従って、本発明の一実施形態において結果として得られるスパッタリングターゲットアセンブリは、半径方向において内側から外側の順序で、支持チューブ、バインダ、本明細書に記載のスパッタリングターゲット、保護ラップ、及び導電性ラップを含む。その周りには、誘導加熱器が、スパッタリングターゲットアセンブリ形成装置に対して配置される。
【0059】
M)Lに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、保護フィルムのスパッタリングターゲット本体の外径面に対向する側には、接着剤がない。
【0060】
N)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体及びバッキング支持体の少なくとも一方は、誘導加熱器によって加熱されるボンディング材料として湿潤材料を有する。
【0061】
O)Nに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体及びバッキング支持体の各々は、誘導加熱器によって加熱されるボンディング材料として提供された湿潤材料を有する。
【0062】
P)Nに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、その湿潤材料は、インジウムを含む金属はんだである。
【0063】
Q)Nに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、加熱対象のボンディング材料として、スパッタリングターゲット本体の内径とバッキング支持体の外径との間に形成される間隙に提供される間隙充填金属はんだが更に提供される。
【0064】
R)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、加熱対象のボンディング材料として、スパッタリングターゲット本体の内径とバッキング支持体の外径との間に形成される間隙を充填するように配置された導電性取り付け材料が更に提供される。
【0065】
S)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、セラミック中空円筒体である。
【0066】
T)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、LiMO、LiPO、ドープLiPO、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコンからなる群から選択された材料製である。
【0067】
U)Tに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、LiMO製である。
【0068】
V)Uに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、LiCoO製である。
【0069】
W)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性材料を、スパッタリングターゲット本体の外径面に沿って延びるようにして、誘導加熱器が導電性材料層を加熱する位置に配置することを更に含み、バッキング支持体は、金属を含む中空円筒状チューブの形態である。
【0070】
X)Wに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、バッキング支持体は、チタンを含む。
【0071】
Y)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、ターゲット本体上に保護ラップを提供することを更に含む。
【0072】
Z)Yに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、保護ラップは、ターゲット本体外径面にテープ材を用いて固定される。
【0073】
AA)Bに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性材料は、所定の位置にテープを用いて固定される。
【0074】
BB)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、組み立て方法は、導電性ラップを、スパッタリングターゲット本体の外径面に沿って延びるようにして、誘導加熱器が導電性ラップを加熱する位置に配置するステップを更に含み、導電性ラップは、スパッタリングターゲット本体の外径の周囲に延びるように配置されている。
【0075】
CC)BBに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性ラップは、スパッタリングターゲット本体の外径の周囲に、重なりを有して渦巻き状に巻回される(例えば、ボンディング作業中にスパッタリングターゲット本体に沿って軸方向の熱勾配を変更するために重なり度は異なる)。
【0076】
DD)BBに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、この導電性ラップは、スパッタリングターゲット本体の周りに巻回された複数の導電性ラップのうちの1つである(又は、複数のラップラミネート層を提供するように、ラッピング繰り返し構成(1つの下側ラップ部又は層がターゲットの軸方向全長を完全に覆い隠し、そして導電性ラップの追加のラップ層が、導電性ラップのその下側層を覆い隠す構成など)がある)。
【0077】
EE)BBに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、誘導加熱器とスパッタリングターゲット本体とのうちの少なくとも一方が他方に対して互いに調整される。
【0078】
FF)EEに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、位置が固定された誘導加熱器に対して調整される。
【0079】
GG)Aに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のスパッタリングターゲット本体がバッキング支持体に沿って直列配置で設けられ、各スパッタリングターゲット本体は、ボンディングプロセスの間に誘導加熱を施される。
【0080】
HH)GGに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、バッキング支持体の周りに延び、かつ隣接するスパッタリングターゲット本体を誘導加熱するように1つ以上のスパッタリングターゲット本体の周りに周方向に延びる、1つ以上の誘導加熱器が存在する。
【0081】
II)HHに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、バッキング支持体に沿って直列に配置された複数の誘導加熱器が存在する。
【0082】
JJ)GGに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のスパッタリングターゲット本体は、その1つ以上が周りに導電性ラップが延在する状態で存在し、誘導加熱器は、その1つ以上の導電性ラップを誘導加熱するように配置されている。
【0083】
KK)JJに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のスパッタリングターゲット本体の各々は、導電性ラップを有する。
【0084】
LL)JJに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、バッキング支持体に沿って配置された少なくとも2つの異なるスパッタリングターゲット本体に設けられた導電性ラップ導電性材料の量に差がある(例えば、ラップごとの導電性材料の差、ラップごとの数又は長さの差、変化する重なり率で螺旋状に巻回されたラップなど、重なり率の相対量の差など)。
【0085】
MM)スパッタリングターゲットアセンブリの形成は、以下を含む方法を伴う。
バッキングチューブ、スパッタリングターゲット本体、及び誘導加熱器を、バッキングチューブが内部であり、スパッタリングターゲット本体が中間であり、誘導加熱器が外部である周方向配置になるように配置すること、
スパッタリングターゲット本体を加熱するように誘導加熱器を操作すること、
バッキングチューブと誘導加熱を施されるスパッタリングターゲット本体との間に形成された間隙にボンディング材料を提供すること。
【0086】
NN)請求MMに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成は、スパッタリングターゲット本体と誘導加熱器との間で周方向に導電性巻装を提供することを更に含む。
【0087】
OO)請求NNに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性巻装は、スパッタリングターゲット本体上の所定の位置に巻き付けられ固定される可撓性導電性布である。
【0088】
PP)請求NNに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、導電性巻装は、炭素材料導電性巻装である。
【0089】
QQ)請求NNに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体と導電性巻装との間に、保護巻装が配置される。
【0090】
RR)請求MMに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、スパッタリングターゲット本体は、ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、LiMO、LiPO、ドープLiPO、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコンからなる群から選択された材料製の中空円筒体である。
【0091】
SS)請求MMに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、バッキング支持体は、モリブデン、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム又はアルミニウム合金、及び銅又は銅合金製の材料で形成されたバッキングチューブである。
【0092】
TT)MMに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のスパッタリングターゲット本体がバッキング支持体に沿って直列配置で設けられ、各スパッタリングターゲット本体は、ボンディング目的でボンディングプロセス中に誘導加熱される。
【0093】
UU)TTに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、1つ以上のスパッタリングターゲット本体のために、スパッタリングターゲット本体と誘導加熱器との間で周方向に導電性巻装を提供することを更に含む。
【0094】
VV)UUに記載されたスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のターゲット本体上に設けられた導電性巻装が提供され、誘導加熱中に異なる軸方向熱勾配形成を提供するように、少なくとも2つのスパッタリングターゲットの間で、導電性巻装において異なる量の導電性材料が存在する。
【0095】
WW)TTに記載のスパッタリングターゲットアセンブリの形成において、複数のスパッタリングターゲットのうちの少なくとも1つは、誘導加熱器に対して所定の位置で軸方向に調整される。
【0096】
XX)
外側面(又は外径面)を備えるバッキング支持体と、
外側面(又は外径面)及び内面を備えるスパッタリングターゲット本体であって、バッキング支持体がこの内面を通じて軸方向に延びる、スパッタリングターゲット本体と、
スパッタリングターゲット本体と熱連通関係にある誘導加熱器と、を含むアセンブリ。
【0097】
YY)XXのアセンブリにおいて、誘導加熱器は、ターゲット本体の周りに周方向に延び、ターゲット本体と共通の水平面断面を有するように配置される。
【0098】
ZZ)請求XXのアセンブリにおいて、ターゲット本体の周りに延び、誘導加熱器による誘導加熱のために配置された導電層が更に含まれる。
【0099】
AAA)請求ZZのアセンブリにおいて、ターゲット本体の周りかつ導電層の内側に延びている保護ラップが更に含まれる。
【0100】
BBB)請求ZZのアセンブリにおいて、導電層は導電性ラップであり、これはターゲット本体上に渦巻き状に配置されている。
【0101】
CCC)請求XXのアセンブリにおいて、バッキング支持体とターゲット本体との間に配置され、誘導加熱器との熱連通のために配置されたボンディング材料が更に含まれる。
【0102】
DDD)XXのアセンブリにおいて、複数のターゲット本体と、これらのターゲット本体との熱連通のために構成された1つ以上の誘導加熱器とが存在する。
【0103】
EEE)DDDのアセンブリにおいて、各ターゲット本体は、導電性材料巻装の形態の導電層を有する。
【0104】
上記の例示的な本発明の実施形態では、ある文字例からそれより前の文字例への参照は、変更及び拡張することができる。例えば、例「H」の「A」に対する参照は、「A」だけではなく、「A」〜「G」のそれぞれに対する参照に拡張することができ、互いに可能性のある矛盾のない組み合わせが、上記に提供された例「A」〜「EEE」に関する本発明の特徴である。
【0105】
第1の態様から見て、本発明は、以下の第1のプロセス(又は方法)の実施形態を更に提供することができる。
【0106】
実施形態1:以下のステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
− 熱伝導性(かつ好ましくは電気伝導性)材料ベースのバッキングチューブを提供するステップであって、バッキングチューブは、外径と、バッキングチューブの(中心)長手方向軸の周囲に画定された外径面とを有する、ステップ。
− 第1の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、第1の中空円筒状ターゲット本体は、第1の本体の互いに対向する2つの縁部(下縁部及び上縁部)の間に画定された(中心)長手方向軸と、内径と、内径面と、外径と、外径面とを有し、内径面及び外径面は、第1の中空円筒状ターゲット本体の長手方向軸の周囲に画定され、第1の中空円筒状ターゲット本体は、電気伝導性材料からなるか又は電気伝導性材料を含み、それによって電気伝導体である、ステップ。
− 内径を有する(少なくとも)1つの誘導加熱器を提供するステップ。
− 第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− バッキングチューブの湿潤した外径面を形成するように、バッキングチューブの外径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− 第1の円筒状ターゲット本体の長手方向軸がバッキングチューブの長手方向軸に(実質的に)平行になるように、バッキングチューブを第1の中空円筒状ターゲット本体の内径内に垂直かつ同軸に配置するステップと、それによって外径面が(はんだ材料によって)湿潤した状態のバッキングチューブの第1の部分と、(はんだ材料によって)湿潤された内径面を有する第1の中空円筒状ターゲット本体とで構成される第1のアセンブリを形成するステップであって、この第1のアセンブリは、(中心)長手方向軸を有し、バッキングチューブの第1の部分の湿潤した外径面と第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面との間に形成された第1の間隙を呈し、この第1の間隙は第1のアセンブリの長手方向軸の周囲に画定され、この第1のアセンブリは、第1のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された、その第1の中間間隙への頂部開放端部アクセスと底部(任意で開放)端部アクセスとを有し、第1のアセンブリの第1の端部及び第2の端部は互いに対向している、ステップ。任意選択で、バッキングチューブは、その長手方向軸が水平面に垂直な基準軸から、0°〜+/−5°の間、好ましくは0°〜+/−2°の間の角度だけずれるように配置される。
− (少なくとも)1つの誘導加熱器の内径の内側(internally within the inner diameter)に第1のアセンブリを配置するステップ。
− (少なくとも1つの)誘導加熱器を用いて、第1のアセンブリの第1の中空円筒状ターゲット本体、又は第1の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの少なくとも第1の部分を、第1の温度で予熱するステップであって、第1の温度は、第1の間隙を充填するように頂部開放端部アクセスを通じて第1の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、第1の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは180℃〜190℃、任意選択で180℃〜200℃である、ステップ。このようにして、第1の間隙は、溶融はんだが頂端部アクセスから底端部アクセスに流れることを可能にするように十分高い温度に上昇される。
− 第1のアセンブリの頂部開放端部アクセスを通じて、第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面とバッキングチューブの第1の部分の湿潤した外径面との間の第1の間隙を、溶融したインジウム系材料など溶融相下にあるはんだ材料で充填するステップ。
− (少なくとも1つの)誘導加熱器を用いて、第1の軸方向温度勾配が、第1のアセンブリ(又は本体)の底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、第1のアセンブリの第1の中空円筒状ターゲット本体、又は第1の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第1の部分を、第1のアセンブリの長手方向軸に沿って加熱するステップであって、第1の軸方向温度勾配は正の勾配であり、この軸方向勾配は長手方向に配向され、第1のアセンブリの長手方向軸に(実質的に)平行な方向に沿って変位し、それにより第1の間隙内のはんだ材料の冷却を底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスに誘導し、それにより、回転スパッタリングターゲットを形成するように、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第1の部分の外径面との間に、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで接着を生成する、ステップ。
【0107】
第1の軸方向温度勾配は正であり、これは、第1のアセンブリ又は第1の本体の温度値が、第1の本体及びバッキングチューブの第1の部分を含む第1のアセンブリの底部開放アクセス(又は底部高さ)から頂部開放端部アクセス(又は頂部高さ)へ増加することを意味する。
【0108】
第1の正の軸方向勾配は長手方向に配向されており、これは、温度値が、第1のアセンブリの長手方向軸に平行な方向において、底部開放アクセスから頂部開放端部アクセスへ増加することを意味する。
【0109】
任意選択で、第1の軸方向温度勾配は、例えば、第1のアセンブリの底部高さで測定された温度が、25℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは25℃〜75℃、最も好ましくは25℃〜50℃に含まれるように設計される。任意選択で、第1のアセンブリの底部高さの温度は、例えば、ターゲット本体の外径面の第1の画定領域において測定される。別の代替案では、第1のアセンブリの底部高さにおける温度は、第1の本体の底縁部で測定される。
【0110】
第1のアセンブリの頂部高さで測定される温度は、180℃〜250℃、好ましくは190℃〜200℃に含まれる。同様に、第1のアセンブリの頂部高さでの温度は、ターゲット本体の外径面の第2の画定領域において任意選択で測定される。別の代替案では、第1のアセンブリの頂部高さにおける温度は、第1の本体の頂縁部で測定される。
【0111】
加熱ステップ中に1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の動作周波数及び電力を適切に変調することによって、長手方向に配向された第1の軸方向温度勾配が第1のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、底部開放端部アクセスと頂部開放端部アクセスとの間の温度プロファイルを調整することができ、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を更に適切に操作することによって、第1の軸方向温度勾配は、底部開放アクセス端部から頂部開放アクセス端部に(漸進的に)シフト又は変位され、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導する。
【0112】
例えば、適切な電力及び周波数で誘導加熱器を使用することによって、また誘導加熱器を第1のアセンブリの長手方向軸に沿って底端部から頂端部へ画定された方向に適切な速度で変位させることによって、第1の軸方向の正の温度勾配の変位又はシフトを確実にすることができ、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0113】
あるいは、連続した数個の誘導加熱器を使用して、少なくとも2つの誘導加熱器で構成される構造体を形成することができ、この誘導加熱器構造体の内径内に第1のアセンブリを完全に取り囲むようにし、各誘導加熱器を独立して変調することによって、第1の軸方向温度勾配のシフト又は変位を得て、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0114】
この具体的実施形態では、第1の軸方向勾配が、第1の加熱器(垂直構造体の底部加熱器)から数個の加熱器で構成される構造体を横切って何個目かの加熱器(又はこの垂直構造体の頂部加熱器)まで進むように構造体の各加熱器を変調することによって、第1の軸方向勾配のシフト/変位を確実にする。
【0115】
第1の軸方向温度勾配に、第1の半径方向温度勾配を関連付けることができる。この第1の半径方向温度勾配は、円筒状中空ターゲット本体の外径面からバッキングチューブ又は第1のアセンブリの(好ましくは中心にある)長手方向軸に(すなわちバッキングチューブの内径面に)配向された負の勾配である。
【0116】
負の勾配は、本発明の構成では、第1の本体の外径面からバッキングチューブの外側面に向かって温度が低下することを意味する。
【0117】
第1の軸方向及び半径方向の勾配の組み合わせにより、第1のアセンブリの長手方向軸に沿って第1のアセンブリを横切る第1の長手方向勾配部分が生成されることになり、この第1の長手方向勾配部分は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の所定の長さ以上の長さを有する。第1の長手方向勾配部分の幅は、第1のアセンブリにおける第1の半径方向勾配の所定の(貫通)深さの長さに対応する。
【0118】
第1の半径方向勾配が第1の軸方向勾配と同時に存在する場合、加熱ステップ中、第1のアセンブリの底端部アクセスから頂端部アクセスまでシフト/変位されるのは第1の長手方向勾配部分であり、第1の間隙内のはんだ材料の冷却を、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで、かつバッキングチューブの第1の部分の外径面から第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面まで誘導するようにし、それによって第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第1の部分の外径面との間に底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまでの接着を生成して、回転スパッタリングターゲットを形成するようにする。
【0119】
実施形態2:以下の追加ステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
− 第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に取り外し可能に(すなわち非永久的な方法に基づいて)結合された第1の保護材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第1の中空円筒状ターゲットの外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を第1の保護材料で少なくとも部分的に覆うステップは、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、ステップ。
【0120】
任意選択で、実施形態2において、第1の保護材料は、保護フィルム又は保護ラップである。
【0121】
実施形態2において、第1の保護材料は、保持手段によって第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に結合され保持されることができる。
【0122】
好ましくは、実施形態2において、第1の保護材料は、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップである。
【0123】
より好ましくは、実施形態2において、第1の保護材料は、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップである。
【0124】
特に、第1の保護材料は、好ましくは、自己粘着性である。
【0125】
第1の保護材料は、好ましくは、第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの後で取り外される。
【0126】
あるいは、第1の保護材料は、加熱ステップの後で取り外すことができる。
【0127】
優先的には、保護材料は、数個(少なくとも2つ)の中空円筒状ターゲットがバッキングチューブ上に結合される複数のボンディングステップの最後に取り外される。
【0128】
実施形態3:予熱ステップ中及び/又は加熱ステップ中、バッキングチューブはその長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0129】
実施形態4:第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの間に溶融はんだ材料が底部開放端部アクセスを通って流れるのを防止するように、第1の間隙を溶融したはんだ材料で充填するステップの前に、第1のアセンブリの底部開放端部アクセスを、シール、好ましくはゴムシールなどのカバー手段で覆うステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0130】
実施形態5:加熱ステップの後で、第1のアセンブリの底部開放端部からカバー手段を取り外すステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0131】
実施形態6:以下のステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
− 少なくとも第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、第2の電気伝導性中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、内径面及び外径面が周囲に画定された(中心)長手方向軸とを有し、第2の中空円筒状ターゲット本体は、電気伝導性材料からなるか又は電気伝導性材料を含む、ステップ。
− 第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− 第2の円筒状ターゲット本体の長手方向軸がバッキングチューブの長手方向軸に(実質的に)平行になるように、第1の中空円筒状ターゲットがボンディングされたバッキングチューブを、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径内に垂直かつ同軸に配置し続ける又は配置するステップであって、それによって内径面が(はんだ材料によって)湿潤した第2の中空円筒状ターゲット本体と、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、はんだ材料で被覆された湿潤した外径面を有するバッキングチューブの第2の部分とで構成される第2のアセンブリを形成し、第2の部分は第1の部分から所定離間距離だけ離間し、第2のアセンブリは、(中心)長手方向軸と、バッキングチューブの第2の部分の湿潤した外径面と第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面との間に形成された第2の間隙とを有し、第2の間隙は、第2のアセンブリの長手方向中心軸の周囲に画定され、第2のアセンブリは、第2のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置されたその第2の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、第2のアセンブリの第1の端部及び第2の端部は、互いに対向している、ステップ。
【0132】
任意選択で、バッキングチューブは、その長手方向軸が水平面に垂直な基準軸から、0°〜+/−5°の間、好ましくは0°〜+/−2°の間の角度だけずれるように配置される。
− 1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の内径の内側に第2のアセンブリを配置するステップ。
− 1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を用いて、第2のアセンブリの第2の中空円筒状ターゲット本体、又は第2の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの少なくとも第2の部分を、第2の温度で予熱するステップであって、第2の温度は、第2の間隙を充填するように、頂部開放端部アクセスを通じて第2の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、第2の温度は、好ましくは180℃以上かつ任意選択で250℃未満、より好ましくは190℃以上かつ任意選択で200℃未満である。
− 第2のアセンブリの頂部開放端部アクセスを通じて、第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面とバッキングチューブの第2の部分の湿潤した外径面との間の第2の間隙を、溶融したインジウム系材料など溶融相下にあるはんだ材料で充填するステップ。
− 1つ(又はそれ以上の)誘導加熱器を用いて、第2の軸方向温度勾配が、第2のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、第2の中空円筒状ターゲット本体、又は第2の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第2の部分を、第2のアセンブリの長手方向軸に沿って加熱するステップであって、第2の軸方向温度勾配は正の勾配であり、この第2の軸方向温度勾配は、長手方向に配向され、第2のアセンブリの底部端部アクセスから頂部端部アクセスまで画定された方向に沿って変位し、それによって第2の間隙内のはんだ材料の冷却を底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスに誘導し、バッキングチューブにボンディングされた少なくとも2つの円筒状中空ターゲット本体を有する回転スパッタリングターゲットを形成するように、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第2の部分の外径面との間に、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで接着を生成する、ステップ。
【0133】
第2の軸方向温度勾配は正であり、これは、温度値が、底部開放アクセス(底部高さ)から頂部開放端部アクセス(頂部高さ)へ増加することを意味する。
【0134】
第2の正の軸方向勾配は長手方向に配向されており、これは、温度値が、第2のアセンブリの長手方向軸に平行な方向において、底部開放アクセスから頂部開放端部アクセスへ増加することを意味する。
【0135】
任意選択で、第2の軸方向温度勾配は、例えば、第2のアセンブリの底部高さで(又は第2の本体の底縁部で)測定された温度が、25℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは25℃〜75℃、最も好ましくは25℃〜50℃に含まれるように設計される。
【0136】
あるいは、第2のアセンブリの底部高さの温度は、例えば、ターゲット本体の外径面の第1の画定領域内で、又は第2の本体の底縁部で測定される。
【0137】
第2のアセンブリの頂部高さで測定される温度は、180℃〜250℃、好ましくは190℃〜200℃に含まれる。同様に、第2のアセンブリの頂部高さ(又は第2の本体の頂縁部)での温度は、任意選択で、ターゲット本体の外径面の第2の画定領域内で、又は第2の本体の頂縁部で測定される。
【0138】
この実施形態において、第2のターゲット本体をバッキングチューブの第2の部分とボンディングする機構は、本発明による第1のプロセスに関して実施形態1で説明したものと、類推上、類似しており、以下に更に説明される。
【0139】
加熱ステップ中に1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の動作周波数及び電力を適切に変調することによって、長手方向に配向された第2の軸方向温度勾配が第2のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、底部開放端部アクセスと頂部開放端部アクセスとの間の温度プロファイルを調整することができ、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を更に適切に操作することによって、第2の軸方向温度勾配は、底部開放アクセス端部から頂部開放アクセス端部に(漸進的に)シフト又は変位され、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導する。
【0140】
例えば、適切な電力及び周波数で1つの誘導加熱器を使用することによって、また誘導加熱器を第2のアセンブリの長手方向軸に沿って底端部から頂端部まで画定された方向に適切な速度で変位させることによって、第2の軸方向の正の温度勾配の変位又はシフトを確実にすることができ、それによって、構成要素、すなわち、第2のターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0141】
あるいは、連続した数個の誘導加熱器を使用して、少なくとも2つの誘導加熱器で構成される構造体を形成することができ、この誘導加熱器構造体の内径内に第2のアセンブリを完全に取り囲むようにし、各誘導加熱器を独立して変調することによって、第2の軸方向温度勾配のシフト又は変位を得て、それによって、構成要素、すなわち、第2のターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0142】
第2の軸方向温度勾配に第2の半径方向温度勾配を関連付けることができる。この第2の半径方向温度勾配は、円筒状中空ターゲット本体の外径面からバッキングチューブの好ましくは中心にある長手方向軸に(バッキングチューブの内径面に)配向された負の勾配である。
【0143】
第2の軸方向及び半径方向の勾配の組み合わせにより、第2のアセンブリの長手方向軸に沿って第2のアセンブリを横切る第2の長手方向勾配部分が生成されることになり、この第2の長手方向勾配部分は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の所定の長さ以上の長さを有し、第2の長手方向勾配部分の幅は、第2の半径方向勾配の所定の貫通深さの長さに対応する。
【0144】
第2の半径方向勾配が第2の軸方向勾配と同時に存在する場合、加熱ステップ中、第2のアセンブリの底端部から頂端部までシフト/変位されるのは第2の長手方向勾配部分であり、第2の間隙内のはんだ材料の冷却を、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで、かつバッキングチューブの第2の部分の外径面から第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面まで誘導するようにし、それによって第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第2の部分の外径面との間に底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまでの接着を生成して、回転スパッタリングターゲットを形成するようにする。
【0145】
実施形態7:以下の追加ステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
− 保護フィルム又はラップなどの第2の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第2の保護材料は、好ましくは自己粘着性であり、第2の中空円筒状ターゲットの外径面に、好ましくは保持手段によって、取り外し可能に結合され、第2の中空円筒状ターゲットの外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、ステップ。
【0146】
実施形態8:予熱ステップ中及び/又は加熱ステップ中、バッキングチューブはその長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、実施形態6又は7による回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0147】
実施形態9:第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に、第2のアセンブリの底部開放端部アクセスを、シール、好ましくはゴムシールなどのカバー手段で覆うステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0148】
実施形態10:加熱ステップの後で、第2のアセンブリの底部開放端部からカバー手段を取り外すステップを含む、実施形態9による回転スパッタリングターゲットを形成する第1のプロセス。
【0149】
実施形態11:バッキングチューブにボンディングされた少なくとも3個のターゲット本体、好ましくはバッキングチューブにボンディングされた3〜5個のターゲット本体を呈する回転スパッタリングターゲットを形成するように、実施形態6〜10のステップのいずれかを繰り返す、回転ターゲットを形成する第1のプロセス。
【0150】
実施形態12:ガリウムアルミニウム亜鉛酸化物(GAZO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、ドープSnO、アンチモンスズ酸化物(ATO)、ITO、AZO、シリコン、及びBドープシリコンからなる群から選択された導電性材料を含む第1及び/又は第2の円筒状中空ターゲット本体を選択するステップを含む、回転ターゲットを形成する第1のプロセス。
【0151】
実施形態13:モリブデン、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、及び銅、又はこれらの材料の任意の合金からなる群から選択された電気伝導性材料を含むか、好ましくはその材料で構成されるバッキングチューブを選択するステップを含む、回転ターゲットを形成する第1のプロセス。
【0152】
実施形態14:チタン又は任意のチタン合金で構成されるバッキングチューブを選択するステップを含む、回転ターゲットを形成する第1のプロセス。
【0153】
実施形態15:以下のステップを含む、回転ターゲットを形成する第1のプロセス。
− 第1の(及び好ましくは少なくとも第2の)湿潤した中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、これらの中空円筒状ターゲット本体は、内径と、内径面と、外径と、外径面とを有し、第1及び第2の中空円筒状ターゲット本体は、電気伝導性材料を含むか又は電気伝導性材料からなり、それによって電気伝導体であり、湿潤した中空円筒状ターゲット本体は、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆された内径面を有する、ステップ。
− 熱伝導性(かつ好ましくは電気伝導性)材料ベースの湿潤バッキングチューブを提供するステップであって、バッキングチューブは、外径と、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆された外径面とを呈する、ステップであって
第1の(及び好ましくは第2の)円筒状中空ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するステップ及びバッキングチューブの湿潤した外径面を形成するステップは省略される。
【0154】
第2の態様から見て、本発明は、以下の第2のプロセス(又は方法)の実施形態を更に提供することができる。
【0155】
実施形態16:以下のステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
− 熱伝導性(かつ好ましくは電気伝導性)材料ベースのバッキングチューブを提供するステップであって、バッキングチューブは、外径と、バッキングチューブの(中心)長手方向軸の周囲に画定された外径面とを呈する、ステップ。
− 第1の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、第1の中空円筒状ターゲット本体は、内径と、外径と、内径面及び外径面が周囲に画定された(中心)長手方向軸とを有し、第1の中空円筒状ターゲット本体は、低電気伝導性材料を含み、それによって低電気伝導体である、ステップ。
− 内径及び内径面を有する1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を提供するステップ。
− 第1の円筒状中空ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− バッキングチューブの湿潤した外径面を形成するように、バッキングチューブの外径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− 第1の円筒状ターゲット本体の長手方向軸がバッキングチューブの長手方向軸に(実質的に)平行になるように、バッキングチューブを第1の中空円筒状ターゲット本体の内径内に垂直かつ同軸に配置するステップと、それによって外径面が(はんだ材料によって)湿潤した状態のバッキングチューブの第1の部分と、(はんだ材料によって)湿潤された内径面を有する第1の中空円筒状ターゲット本体とで構成される第1のアセンブリを形成するステップであって、この第1のアセンブリは、(中心)長手方向軸を有し、バッキングチューブの第1の部分の湿潤した外径面と第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面との間に形成された第1の間隙を呈し、この第1の間隙は、長手方向軸の周囲に画定され、この第1のアセンブリは、第1のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置された、その第1の中間間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、第1のアセンブリの第1の端部及び第2の端部は、互いに対向している、ステップ。任意選択で、バッキングチューブは、その長手方向軸が水平面に垂直な基準軸から、0°〜+/−5°の間、好ましくは0℃〜+/−2°の間の角度だけずれるように配置される。
− 電気伝導性フィルム又は電気伝導性ラップなどの第1の電気伝導性材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性の導電性フィルム又はラップを用いて、より好ましくは、炭素系電気伝導性フィルム又は炭素系電気伝導性ラップを用いて、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第1の電気伝導性材料は、保持手段によって第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に取り外し可能に結合されているか、又は第1の電気伝導性材料は、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に対して自己粘着性である、ステップ。
− 第1の電気伝導性材料が第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面と誘導加熱器の内径面との間に配置されるように、誘導加熱器の内径の内側に第1のアセンブリを配置するステップ。
− 1つ(又はそれ以上の)誘導加熱器を用いて、第1の電気伝導性材料の存在を介して、第1の中空円筒状ターゲット本体、又は第1の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第1の部分を、第1の温度で予熱するステップであって、第1の温度は、第1の間隙を充填するように第1の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、第1の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップ。
− 第1のアセンブリの頂部開放端部アクセスを通じて、第1の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面とバッキングチューブの第1の部分の湿潤した外径面との間の第1の間隙を、溶融したインジウム系材料など溶融相下にあるはんだ材料で充填するステップ。
− 1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を用いて、第1の電気伝導性材料の存在を介して、第1の軸方向温度勾配が第1のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、第1の中空円筒状ターゲット本体、又は第1の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第1の部分を、第1のアセンブリの長手方向軸に沿って加熱するステップであって、第1の軸方向温度勾配は長手方向に配向された正の勾配であり、第1のアセンブリの底端部アクセスと頂端部アクセスの間に画定された方向に変位/シフトし、それによって第1の間隙内のはんだ材料の冷却を底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスに誘導し、回転スパッタリングターゲットを形成するように、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第1の部分の外径面との間に、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで接着を生成する、ステップ。
【0156】
この実施形態において、第1のターゲット本体をバッキングチューブの第1の部分とボンディングする機構は、本発明による第1のプロセスに関して実施形態1で説明したものと、類推上、類似しており、以下に詳述される。
【0157】
第1の軸方向温度勾配は正であり、これは、温度値が、第1のアセンブリの底部開放アクセス(底部高さ)から頂部開放端部アクセス(頂部高さ)へ増加することを意味する。
【0158】
第1の正の軸方向勾配は長手方向に配向されており、これは、温度値が、第1のアセンブリの長手方向軸に平行な方向において、底部開放アクセスから頂部開放端部アクセスへ増加することを意味する。
【0159】
任意選択で、第1の軸方向温度勾配は、例えば、第1のアセンブリの底部高さで測定された温度が、25℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは25℃〜75℃、最も好ましくは25℃〜50℃に含まれるように設計される。任意選択で、第1のアセンブリの底部高さの温度は、例えば、ターゲット本体の外径面の第1の画定領域、又はターゲット本体の底縁部において測定される。
【0160】
第1のアセンブリの頂部高さで測定される温度は、180℃〜250℃、好ましくは190℃〜200℃に含まれる。同様に、第1のアセンブリの頂部高さの温度は、任意選択で、ターゲット本体の外径面の第2の画定領域、又はターゲット本体の頂縁部において測定される。
【0161】
加熱ステップ中に1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の動作周波数及び電力を適切に変調することによって、長手方向に配向された第1の軸方向温度勾配が第1のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、底部開放端部アクセスと頂部開放端部アクセスとの間の温度プロファイルを調整することができ、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を更に適切に操作することによって、第1の軸方向温度勾配は、底部開放アクセス端部から頂部開放アクセス端部に(漸進的に)シフト又は変位され、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導する。
【0162】
例えば、適切な電力及び周波数で1つの誘導加熱器を使用することによって、また誘導加熱器を第1のアセンブリの長手方向軸に沿って底端部から頂端部まで画定された方向に適切な速度で変位させることによって、第1の軸方向の正の温度勾配の変位又はシフトを確実にすることができ、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0163】
あるいは、連続した数個の誘導加熱器を使用して、少なくとも2つの誘導加熱器で構成される構造体を形成することができ、この誘導加熱器構造体の内径内に第1のアセンブリを完全に取り囲むようにし、各誘導加熱器を独立して変調することによって、第1の軸方向温度勾配のシフト又は変位を得て、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第1の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0164】
第1の軸方向温度勾配に第1の半径方向温度勾配を関連付けることができる。この第1の半径方向温度勾配は、円筒状中空ターゲット本体の外径面からバッキングチューブの好ましくは中心にある長手方向軸に(バッキングチューブの内径面に)配向された負の勾配である。
【0165】
第1の軸方向及び半径方向の勾配の組み合わせにより、第1のアセンブリの長手方向軸に沿って第1のアセンブリを横切る第1の長手方向勾配部分が生成されることになり、この第1の長手方向勾配部分は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の所定の長さ以上の長さを有し、第1の長手方向勾配部分の幅は、第1の半径方向勾配の所定の貫通深さの長さに対応する。
【0166】
第1の半径方向勾配が第1の軸方向勾配と同時に存在する場合、加熱ステップ中、第1のアセンブリの底端部から頂端部までシフト/変位されるのは第1の長手方向勾配部分であり、第1の間隙内のはんだ材料の冷却を、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで、かつバッキングチューブの第1の部分の外径面から第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面まで誘導するようにし、それによって第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第1の部分の外径面との間に底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまでの接着を生成して、回転スパッタリングターゲットを形成するようにする。
【0167】
この実施形態の構成では、軸方向及び半径方向の第1の勾配は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の適切な周波数/電力の適用及び1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器によって放出された放射を熱に変換する第1の電気伝導性材料の存在によって規定される。
【0168】
実施形態17:第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を第1の電気伝導性材料で覆うステップの前に、以下の追加のステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス方法。
− 保護フィルム又は保護ラップなどの第1の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第1の保護材料は、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に保持手段によって取り外し可能に結合されるか、又は、第1の保護材料は、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面に対して自己粘着性であり、第1の中空円筒状ターゲットの外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第1の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、第1の中空円筒状ターゲット本体の外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第1の中空円筒状ターゲット本体の内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、ステップ。
【0169】
実施形態18:予熱ステップ中及び/又は加熱ステップ中、バッキングチューブはその長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、実施形態16又は17による回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0170】
実施形態19:第1の間隙を溶融はんだ材料で充填するステップの前に、第1のアセンブリの底部開放端部アクセスを、シール、好ましくはゴムシールなどのカバー手段で覆うステップを含む、実施形態16〜18のいずれかによる回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0171】
実施形態20:加熱ステップの後で、第1のアセンブリの底部開放端部からカバー手段を取り外すステップを含む、実施形態19による、回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0172】
実施形態21:加熱ステップの後で、第1の導電性材料を取り外すステップに続いて、好ましくは、第1の保護材料を取り外すステップを含む、実施形態16〜20のいずれかによる回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0173】
実施形態22:以下のステップを含む、実施形態16〜21のいずれかによる回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
− 少なくとも第2の中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、第2の中空円筒状ターゲット本体は、(中心)長手方向軸と、内径と、内径面と、外径と、外径面とを有し、内径面及び外径面は、第2の中空円筒状ターゲット本体の長手方向軸の周りに画定され、第2の中空円筒状ターゲット本体は、低電気伝導性材料からなるか又は低電気伝導性材料を含むステップ。
− 第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するように、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面を、インジウム系材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆するステップ。
− 第2の円筒状ターゲット本体の長手方向軸がバッキングチューブの長手方向軸に(実質的に)平行になるように、第1の中空円筒状ターゲットがボンディングされたバッキングチューブを、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径内に垂直かつ同軸に配置し続ける又は配置するステップであって、それによって内径面が(はんだ材料によって)湿潤した第2の中空円筒状ターゲット本体と、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、はんだ材料で被覆された湿潤した外径面を有するバッキングチューブの第2の部分とで構成される第2のアセンブリを形成し、第2の部分は第1の部分から所定離間距離だけ離間し、第2のアセンブリは、(中心)長手方向軸と、バッキングチューブの第2の部分の湿潤した外径面と第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面との間に形成された第2の間隙とを有し、第2の間隙は、長手方向(中心)軸の周囲に画定され、第2のアセンブリは、第2のアセンブリの第1の端部と第2の端部とにそれぞれ配置されたその第2の間隙への頂部開放端部アクセスと底部開放端部アクセスとを有し、第2のアセンブリの第1の端部及び第2の端部は、互いに対向している、ステップ。任意選択で、バッキングチューブは、その長手方向軸が水平面に垂直な基準軸から、0°〜+/−5°の間、好ましくは0℃〜+/−2°の間の角度だけずれるように配置される。
− 電気伝導性フィルム又は電気伝導性ラップなどの第2の電気伝導性材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性の導電性フィルム又はラップを用いて、より好ましくは、炭素系電気伝導性フィルム又は炭素系電気伝導性ラップを用いて、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第2の電気伝導性材料は、保持手段によって外径面に取り外し可能に結合されているか、又は第2の電気伝導性材料は、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面に対して自己粘着性である、ステップ。
− 第2の電気伝導性材料が第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面と誘導加熱器の内径面との間に配置されるように、誘導加熱器の内径の内側に第2のアセンブリを配置するステップ。
− 誘導加熱器を用いて、第2の電気伝導性材料の存在を介して、第2の中空円筒状ターゲット本体、又は第2の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第2の部分を、第2の温度で予熱するステップであって、第2の温度は、第2の間隙を充填するように第2の間隙に注入されるはんだ材料を溶融相下に維持するのに十分に保たれており、第2の温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上である、ステップ。
− 第2のアセンブリの頂部開放端部アクセスを通じて、第2の中空円筒状ターゲット本体の湿潤した内径面とバッキングチューブの第2の部分の湿潤した外径面との間の第2の間隙を、溶融したインジウム系材料など溶融相下にあるはんだ材料で充填するステップ。
− 誘導加熱器を用いて、第2の電気伝導性材料の存在を介して、第2の軸方向温度勾配が第2のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、第2のアセンブリの第2の中空円筒状ターゲット本体、又は第2の中空円筒状ターゲット本体及びバッキングチューブの第2の部分を、第2のアセンブリの長手方向軸に沿って加熱するステップであって、第2の軸方向温度勾配は、第2のアセンブリの長手方向に配向され、底部端部アクセスから頂部端部アクセスに向けられた正の勾配であり、第2の軸方向勾配は、第2の間隙内のはんだ材料の冷却を、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスに誘導するように、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで長手方向に変位/シフトし、バッキングチューブにボンディングされた少なくとも2つの円筒状中空ターゲット本体を有する回転スパッタリングターゲットを形成するように、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第2の部分の外径面との間に、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで接着を生成する、ステップ。
【0174】
この実施形態において、第2のターゲット本体をバッキングチューブの第2の部分とボンディングする機構は、本発明による第1のプロセスに関して実施形態1で説明したものと、類推上、類似しており、以下に更に説明される。
【0175】
第2の軸方向温度勾配は正であり、これは、温度値が、底部開放アクセスから頂部開放端部アクセスへ増加することを意味する。
【0176】
第2の正の軸方向勾配は長手方向に配向されており、これは、温度値が、第2のアセンブリの長手方向軸に平行な方向において、底部開放アクセス(底部高さ)から頂部開放端部アクセス(頂部高さ)へ増加することを意味する。
【0177】
任意選択で、第2の軸方向温度勾配は、例えば、第2のアセンブリの底部高さで測定された温度が、25℃〜150℃、好ましくは25℃〜100℃、より好ましくは25℃〜75℃、最も好ましくは25℃〜50℃に含まれるように設計される。あるいは、第2のアセンブリの底部高さの温度は、例えば、ターゲット本体の外径面の第1の画定領域内で、又は第2のアセンブリ/第2の本体の底縁部で測定される。
【0178】
第2のアセンブリの頂部高さで測定される温度は、180℃〜250℃、好ましくは190℃〜200℃に含まれる。同様に、第2のアセンブリの頂部高さの温度は、任意選択で、ターゲット本体の外径面の第2の画定領域、又は第2のアセンブリ/第2の本体の頂縁部で測定される。
【0179】
この実施形態において、第2のターゲット本体をバッキングチューブの第2の部分とボンディングする機構は、本発明による第1のプロセスに関して実施形態1で説明したものと、類推上、類似しており、以下に更に説明される。
【0180】
加熱ステップ中に1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の動作周波数及び電力を適切に変調することによって、長手方向に配向された第2の軸方向温度勾配が第2のアセンブリの底部開放端部から頂部開放端部まで生成されるように、底部開放端部アクセスと頂部開放端部アクセスとの間の温度プロファイルを調整することができ、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器を更に適切に操作することによって、第1の軸方向温度勾配は、底部開放アクセス端部から頂部開放アクセス端部に(漸進的に)シフト又は変位され、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導する。
【0181】
例えば、適切な電力及び周波数で1つの誘導加熱器を使用することによって、また誘導加熱器を第2のアセンブリの長手方向軸に沿って底端部から頂端部まで画定された方向に適切な速度で変位させることによって、第2の軸方向の正の温度勾配の変位又はシフトを確実にすることができ、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0182】
あるいは、連続した数個の誘導加熱器を使用して、少なくとも2つの誘導加熱器で構成される構造体を形成することができ、この誘導加熱器構造体の内径内に第2のアセンブリを完全に取り囲むようにし、各誘導加熱器を独立して変調することによって、第2の軸方向温度勾配のシフト又は変位を得て、それによって、構成要素、すなわち、ターゲット本体+バッキングチューブの第2の部分の(漸進的な)冷却を誘導するようにする。
【0183】
第2の軸方向温度勾配に第2の半径方向温度勾配を関連付けることができる。この第2の半径方向温度勾配は、円筒状中空ターゲット本体の外径面からバッキングチューブの好ましくは中心にある長手方向軸に(バッキングチューブの内径面に)配向された負の勾配である。
【0184】
第2の軸方向及び半径方向の勾配の組み合わせにより、第2のアセンブリの長手方向軸に沿って第2のアセンブリを横切る第2の長手方向勾配部分が生成されることになり、この第2の長手方向勾配部分は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の所定の長さ以上の長さを有し、第2の長手方向勾配部分の幅は、第2の半径方向勾配の所定の貫通深さの長さに対応する。
【0185】
第2の半径方向勾配が第2の軸方向勾配と同時に存在する場合、加熱ステップ中、第2のアセンブリの底端部アクセスから頂端部アクセスまでシフト/変位されるのは第2の長手方向勾配部分であり、第2の間隙内のはんだ材料の冷却を、底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまで、かつバッキングチューブの第2の部分の外径面から第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面まで誘導するようにし、それによって第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面とバッキングチューブの第2の部分の外径面との間に底部開放端部アクセスから頂部開放端部アクセスまでの接着を生成して、回転スパッタリングターゲットを形成するようにする。
【0186】
この実施形態の構成では、軸方向及び半径方向の第1の勾配は、1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器の適切な周波数/電力の適用及び1つ(又はそれ以上)の誘導加熱器によって放出された放射を熱に変換する第1の電気伝導性材料の存在によって規定される。
【0187】
実施形態23:第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を第2の電気伝導性材料で覆うステップの前に、以下の追加のステップを含む、実施形態22による回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
− 保護フィルム又はラップなどの第2の保護材料を用いて、好ましくは、取り外し可能かつ非粘着性のフィルム又はラップを用いて、より好ましくは、ポリイミド系フィルム又はポリイミド系ラップを用いて、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆うステップであって、第2の保護材料は、外径面に保持手段によって取り外し可能に結合されるか、又は、第2の保護材料は、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面に対して自己粘着性であり、第2の中空円筒状ターゲットの外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に行われ、好ましくは、第2の中空円筒状ターゲット本体の外径面を少なくとも部分的に覆うステップは、第2の中空円筒状ターゲット本体の内径面をはんだ材料で被覆するステップの前に行われる、ステップ。
【0188】
実施形態24:予熱ステップ中及び/又は加熱ステップ中、バッキングチューブはその長手方向軸に沿って回転及び/又は振動される、実施形態22又は23による回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0189】
実施形態25:第2の間隙をはんだ材料で充填するステップの前に、第2のアセンブリの底部開放端部アクセスを、シール、好ましくはゴムシールなどのカバー手段で覆うステップを含む、実施形態22〜24のいずれかによる回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
好ましくは、この実施形態では、加熱ステップの後で、第2のアセンブリの底部開放端部アクセスからカバー手段を取り外すステップを含む。
【0190】
実施形態26:加熱ステップの後で、第2の導電性材料を取り外すステップに続いて、好ましくは、第2の保護材料を取り外すステップを含む、回転スパッタリングターゲットを形成する第2のプロセス。
【0191】
実施形態27:バッキングチューブにボンディングされた少なくとも3個のターゲット本体、好ましくはバッキングチューブにボンディングされた3〜5個のターゲット本体を呈する回転スパッタリングターゲットを形成するように、実施形態22〜26のステップのいずれかを繰り返す、実施形態22〜26のいずれかによる回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0192】
実施形態28:低アルミナAZO、ドープ又はアンドープLiPO、アンドープシリコン、ZnO、及びリチウム含有遷移金属酸化物からなる群から選択される低導電性材料を含む第1及び/又は第2の円筒状中空ターゲット本体を選択するステップを含む、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0193】
実施形態29:リチウム含有遷移金属酸化物は、一般式LiMO又はLiMM’Oを有するように選択され、Mは、Ni、Co、Mn、Ti、Al、V、Cr、Y、Sr、Ca、Zr、Zn、Si、Mg、Ga、W、Fe、Cu、La、又は少なくとも1つのこれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属であり、M’は、Ti、Al、V、Cr、Y、Sr、Ca、Zr、Zn、Si、Mg、Ga、W、Fe、Cu、La、又は少なくとも1つのこれらの組み合わせからなる群から選択されるドーパントである、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0194】
実施形態30:LiMO又はLiMM’Oリチウム含有遷移金属酸化物は、Li/M又はLi/(M+M’)原子比が、0.90以上かつ1.25以下、好ましくは0.98以上かつ1.05以下を有するように選択される、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0195】
実施形態31:LiMM’Oリチウム含有遷移金属酸化物は、M’/M原子比が、0.001以上かつ0.05以下を有するように選択される、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0196】
実施形態32:LiMOリチウム含有遷移金属酸化物は、一般式LiCoOを有するように選択される、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0197】
実施形態33:LiCoOの式は、Li/Co比が、1.0+/−0.50に等しくなるように選択される、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0198】
実施形態34:モリブデン、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、及び銅又はこれらの材料の任意の合金からなる群から選択された電気伝導性材料を含むか、好ましくはその材料で構成されるバッキングチューブを選択するステップを含む、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
【0199】
実施形態35:以下のステップを含む、回転ターゲットを形成する第2のプロセス。
− 第1の(及び任意選択で少なくとも第2の)湿潤した中空円筒状ターゲット本体を提供するステップであって、これらの中空円筒状ターゲット本体は、内径と、内径面と、外径と、外径面とを有し、第1及び第2の中空円筒状ターゲット本体は、低電気伝導性材料を含むか又は低電気伝導性材料からなり、それによって低電気伝導体であり、湿潤した中空円筒状ターゲット本体は、インジウムベース材料などのはんだ材料で、少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆された内径面を有する、ステップ。
− 熱伝導性(かつ電気伝導性)材料ベースの湿潤バッキングチューブを提供するステップであって、バッキングチューブは、外径と、インジウム系材料などのはんだ材料で少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆された外径面とを呈する、ステップであって、第1の(及び場合により第2の)円筒状中空ターゲット本体の湿潤した内径面を形成するステップ及びバッキングチューブの湿潤した外径面を形成するステップは省略される。
【0200】
実施形態36:バッキングチューブの長手方向軸と第1及び/又は第2のターゲット本体の長手方向軸は、平行であり、任意選択で、長手方向軸は、割線であり、角度α(0<α<5°、好ましくはα=0°)を形成する、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
【0201】
実施形態37:第1及び/又は第2のアセンブリの長手方向軸が中心に位置するように、バッキングチューブの長手方向軸と第1及び/又は第2のターゲット本体の長手方向線は中心に位置し、一致する、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
【0202】
実施形態38:予熱ステップは、第1及び/又は第2のターゲット本体、又は第1及び/又は第2のアセンブリを、十分な所定の温度(好ましくは180℃〜190℃)で予熱するように行われ、それによって、予熱された第1及び/又は第2のターゲット本体及び/又は予熱されたバッキングチューブ(バッキングチューブの第1及び/又は第2の部分)によって生成される放射熱に起因して、溶融はんだ材料が第1及び/又は第2の間隙にそれぞれ注がれるときに溶融相に留まることが可能になる、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
【0203】
この実施形態の構成では、第2及び/又は第1のプロセスについて、「取り外し可能に結合された」という用語は、可逆性接合によって接続されたと理解されなければならない。
【0204】
実施形態39:予熱ステップは、150℃以上かつ250℃以下、好ましくは、180℃以上かつ200℃以下である第1及び/又は第2の予熱温度に達するように行われる、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
【0205】
実施形態40:バッキングチューブの第1(第2)の部分と第1(第2)の円筒状中空体ターゲットとの間に形成された第1及び/又は第2の間隙を充填するステップは、この間隙を、はんだ材料、好ましくはインジウム又はインジウム合金で過充填するステップにあり、溶融相下にあるはんだ材料体積は、間隙容積を最小で3%超過する、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
特に、間隙内に超過して注がれる溶融はんだ材料の体積Vは0.03×Vに等しく、Vは間隙の容積である。
好ましくは、V=0.10×Vである。
より好ましくは、V=0.15×Vである。
任意選択で、好ましくは、V=ξ×Vであり、容積超過係数ξは0.03〜0.20、より好ましくは0.03〜0.15、最も好ましくは0.03〜0.10であり、最小値及び最大値をそれぞれ含む。
【0206】
実施形態41:加熱ステップは、1〜100kHz、好ましくは1〜20kHz(これらの値を含む)に含まれる動作可能周波数で行われる、本発明による第2及び/又は第1のプロセス。
【0207】
より好ましくは、周波数範囲は、6〜12kHz(これらの値を含む)である。
【0208】
任意選択で、誘導ボンディング法において使用される誘導発熱体は、1〜20kW、好ましくは1〜10kW(これらの値を含む)の出力レベルで動作するように配置される。
【0209】
より好ましくは、出力範囲は、1〜3kW若しくは2〜4kW、又は1〜4kW(これらの値を含む)である。
【0210】
本発明は、上記実施形態の態様に限定されるものではなく、多数の変更が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、なされ得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0211】
図1】円筒状スパッタリングターゲットアセンブリの等角図である。
図2】円筒状スパッタリングターゲットアセンブリの側面図である。
図3図2の3−3線に沿って取られた断面図である。
図4】従来の加熱チューブの一部の等角図である。
図5】スパッタリングターゲットアセンブリの形成中に垂直に配置された従来の円筒状スパッタリングターゲットアセンブリの断面図である。
図6A】中空セラミックシリンダスパッタリングターゲットセグメントをそのバッキングチューブに接合するための、正面図及び上面図のそれぞれの配向で従来の順序を示す図である。
図6B】中空セラミックシリンダスパッタリングターゲットセグメントをそのバッキングチューブに接合するための、正面図及び上面図のそれぞれの配向で従来の順序を示す図である。
図7A】本発明のボンディング技術の下で特徴付けられるステップのうちのいくつかを示す図である。
図7B】本発明のボンディング技術の下で特徴付けられるステップのうちのいくつかを示す図である。
図7C】本発明のボンディング技術の下で特徴付けられるステップのうちのいくつかを示す図である。
図8】組み立てられるように準備ができた状態に形成された後の、スパッタリングターゲット上に露出した外面を有する、代表的かつ概略的な中空円筒状ターゲット本体を示す図である。
図9A】この実施形態ではターゲット本体の露出した外径面の周りの半透明保護ラップとして示されている保護ラップを追加した後の図8のターゲット本体を示す図である。
図9B】保護ラップカバー及びテープ保持積層を備えた図9Aにおけるターゲット本体の一部の概略図である。
図10A図9Aの事前に保護的に巻装されたシリンダの周りに導電性ラップを適用開始する第1図である。
図10B図10Aのターゲット本体の一部分の概略図であり、ターゲットの当該部分を覆う中間保護ラップカバー及び外側導電性ラップカバーを有し、各ラップカバーはテープ保持手段を伴う。
図11図9Bの保護された円筒状ターゲット本体の周囲に導電性ラップが螺旋状に巻回された状態の、別の視点からの図10Aの第1図である。
図12】誘導加熱器が、図7Cに示された保護材料及び導電性材料で巻装されたターゲット本体を覆って配置されている状態の、本発明の下での誘導加熱初期段階を示す図である。
図13】誘導加熱器を第1のターゲットセグメントから離して再配置する前に、第2のターゲットセグメントもまた図7Cに示される巻装(又はその変形例)を有する状態で、第2のターゲット本体シリンダ又はターゲットセグメントを、下部の最初に配置されたターゲット本体の上方で、バッキングチューブに追加することを示す図である。
図14図13の配置を示しているが、誘導加熱器は、第1及び第2のターゲット本体の制御された軸方向勾配誘導加熱のために再配置された状態の図である。
図15】誘導加熱器が除去され、導電性ラップ及び保護ラップが依然として所定の位置にある状態の、共通バッキングチューブ上に複数のボンディングされたターゲット本体を有する完成したターゲット本体アセンブリを示す図である。
図16】湿潤層パターンを有するバッキングチューブの配置を示す2つの異なる正面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0212】
図1は、円筒状スパッタリングターゲット12と、円筒状バッキングチューブ16と、取り付け手段又は取り付け層(例えば、はんだボンディング)20とを含む、本発明の回転円筒状スパッタリングターゲットアセンブリ10(本発明において特徴付けられるスパッタリングターゲットアセンブリ方法から得られるアセンブリ)を示す。スパッタリングターゲット12はスパッタリング表面24を含み、これは、スパッタリングプロセスが開始すると、基板上にスパッタリングする材料を放出することができる表面である。本発明において、円筒状スパッタリングターゲット12(図2に示す)の長さ「h」は、スパッタリングプロセスの下で所望の薄膜幅範囲を提供するのに十分な長さである(例えば、約0.5(又は0.6)メートルから4メートル以上)。加えて、円筒状スパッタリングターゲット12は、好ましくは約50mmよりも大きい、より好ましくは75〜175mmの範囲の外径「D」(図3に示す)を有する。
【0213】
図2は、円筒状スパッタリングターゲット12のスパッタリング表面24が、複数の個々の円筒状ターゲット本体又はターゲットセグメント34から構成されることを示している。隣接するターゲット34の各対の間には軸方向間隙38が存在する。軸方向間隙38の幅「w」は、例えば、0.15〜0.55mmであり、従って描写を簡単にするために図2では誇張して示されている。スパッタリングターゲットアセンブリの製造中、バッキング支持体に沿って直列に配置されたそれぞれ隣接するターゲット本体の間の軸方向間隙は、シリコーンガスケット(例えば、シリコーンエラストマー製のガスケット)のような充填部材を介して保持されることができ、このシリコーンガスケットは、取り付け材料の設置後の取り外しに適している。
【0214】
本明細書で使用されるとき、スパッタリングターゲットが1つの材料片から構成されるか2つ以上の材料片から構成されるかにかかわらず、円筒状スパッタリングターゲット12の長さ「h」は、1つの円筒状スパッタリングアセンブリ10におけるスパッタリング表面24の全長を指す。換言すると、長さ「h」は、複数のセグメントが使用される場合に、個々の円筒状ターゲット34の長さ「x」のすべての合計を含む。スパッタリングターゲット表面全体が、一体構造ターゲット本体に基づく又は複数のターゲット本体に基づく可能性を考慮して、スパッタリングターゲットアセンブリにおける「ターゲット」への言及はいずれのシナリオも含むものとする。
【0215】
図2では、幅「w」の合計が非常に小さいので、長さ「h」は、間隙38の幅「w」を含むものとして示されている。この近似法は、幅「w」の合計が長さ「h」よりもはるかに小さいために許容可能である。この許容可能な近似法でもなお、円筒状スパッタリングターゲット12の長さ「h」は、スパッタリング表面24の全長を指す。バッキングチューブ16の露出部分40が、円筒状スパッタリングアセンブリ10の各端部の最後の円筒状ターゲットセグメント34を越えて延在しているので、長さ「h」はアセンブリ10の長さ「k」よりも短い。
【0216】
個々の円筒状ターゲットセグメント34(円筒状スパッタリングターゲット部分又は本体34とも呼ばれる)の各々は、スパッタリングターゲット材料から構成される円筒状材料片である。個々の円筒状ターゲットセグメント34は、バッキングチューブ16及び取り付け層20(図3に示される)を収容するように、中央が中空である。個々の円筒状ターゲットセグメント34の長さ「x」は、対象とするスパッタリング用途に適した様々な長さとすることができる。ある代表的な例としては、長さ「x」は0.1〜1m以上、より好ましくは150〜500mmである。加えて、長さ「x」は、個々の円筒状ターゲットセグメント34ごとに異なっていてもよく、セグメントの数は、対象とする最終用途(例えば、合計が、所与の円筒状スパッタリングターゲットアセンブリ内で0.5〜4メートル以上の長さ「h」を提供する)に合うように確かめることができる。
【0217】
すなわち、比較的短い長さ「x」を有する複数の個々の円筒状ターゲットセグメント34を用いることによって、例えば、上記の0.5〜4メートル以上の長さ「h」を有するより長い円筒状スパッタリングターゲット12を構築することがより簡単になる。これは、長さ「x」が、例えば1メートルよりも大きい1つの円筒状ターゲット本体34を作ることが困難(又は不可能)である、セラミック材料のような特定のスパッタリング材料に対して特に当てはまる。
【0218】
円筒状スパッタリングターゲット12(及び個々の円筒状ターゲット本体34)は、多くの材料から構成することができる。本発明の下でのいくつかの典型的なスパッタリングターゲット材料には、元素材料(例えば、銀、ケイ素、銅、金、タングステン、モリブデン及びアルミニウムなど)、合金(例えば、アルミニウム銅合金、アルミニウムネオジム、インジウムスズ酸化物及びチタンタングステン合金など)、及び化合物(例えば、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、LiMO(例えば、LiCoO)及び窒化チタンのなどのセラミック材料など)が挙げられる。材料が、シリコン単体のように特に導電性でない状況では、(ホウ素ドープシリコンのように)ドーパントを添加して、導電性を高めることができる。本発明の実施形態は、上述したセラミック及びアンドープシリコンなどの比較的低導電性の材料と共に使用されるのに特によく適している。また、以下の材料/比抵抗の表は、ターゲット本体材料に伴う上記の比抵抗の差異のうちのいくつかを示す。
【0219】
【表1】
【0220】
図3は、取り付け層20(例えば、はんだなどのボンディング材料層、又は導電性接着剤及び充填エラストマーを含む何らかの他の取り付け手段)が、円筒状スパッタリングターゲット12とバッキングチューブ16との間に配置されており、取り付け層20が、好ましくは、1.0mmなど約0.5〜2.0mmである(ただし他の幅を使用することもできる)幅「m」を有することを示している。バッキングチューブ16は、円筒状スパッタリングターゲット12を機械的に支持するのに十分に強い、長い中空円筒状チューブである。バッキングチューブ16は管腔42を含み、この管腔42を通って水又は何らかの他の流体が流れ、円筒状スパッタリングターゲット12の冷却剤として作用することができる。好適な実施形態では、バッキングチューブ16は、ステンレス鋼又はチタンチューブ類を含むが、モリブデン、アルミニウム合金、銅又は銅合金など他の材料を使用することが可能である。
【0221】
従来のボンディング技術の説明
先行技術に対する本発明の利点/相違点をより良く理解するために、以下の説明では、2007年4月5日にSimpsonら(以下「Simpson」)に対して発行された米国特許出願公開第2007/0074969号明細書(特許文献1)に記載された、ターゲットリングを金属バッキングチューブに取り付けるために使用される輻射加熱プロセスに関するプロセスに焦点を当てる。また、「Simpson」の米国特許出願公開第2007/0074969号の開示は、本明細書にその全体を参考として組み込まれる。
【0222】
当該公報の図4(参照を容易にするために本出願の図4に示す)は、Simpsonの円筒状スパッタリングターゲットアセンブリの製造において使用される加熱チューブアセンブリ50を示している(本段落における参照はSimpsonの参考文献の図である)。Simpsonでは、加熱チューブアセンブリ50は、アルミニウムから構成される中空円筒状金属加熱チューブ54と、位置決め固定具58と、加熱チューブ54の熱源を提供するための加熱素子60と、複数のスペーサ64とを含んでいる。Simpsonにおける製造プロセス中、加熱チューブ54は、バッキングチューブ16の管腔42内に挿入され、バッキングチューブ16に輻射熱源を提供する。加熱素子60は、チューブ54の長さに平行に延びるチューブ54の外側の周囲に配置された複数の管状輻射加熱器(例えば、29ワット/インチの8つの管状加熱器)を含む。あるいは、加熱素子60は、チューブ54の周囲に巻かれたワイヤコイル形態の熱源ように、別のタイプの熱源であると説明されている。加熱素子60と制御回路との間に電気リード62(図5に示す)が電気的に接続されており、輻射加熱素子60に電力を供給する。スペーサ64は、発熱素子60が収まるように、加熱チューブ54の外側とバッキングチューブ16の内側との間に空間を生成する。
【0223】
Simpsonの図4に更に示されるように(また、この段落に記載されたすべての参照番号はシンプソンの公報の図を参照しているが、便宜上、本出願でも図4として繰り返す)、位置決め固定具58は、加熱チューブ54に(例えば、ボルトで)取り付けられ、製造中に、ターゲット本体34をバッキングチューブ16上に整列させるために使用される。固定具58は、バッキングチューブ止め具68と、バッキングチューブ止め具68よりも長いターゲット止め具70とを含む。この長さの差により、空間72が生成され、バッキングチューブ16は、バッキングチューブ止め具68に載りながらこの空間にぴったりと嵌まることができる。円筒状スパッタリングターゲットアセンブリ10の第1のターゲット本体34は、ターゲット止め具70の表面74に載ることになる(図5参照)。
【0224】
Simpsonの図5(この段落に記載されたすべての参照番号はSimpsonの公報の図を参照しているが、やはり本明細書でも図5とする)には、Simpsonの円筒状スパッタリングターゲットアセンブリ10の製造に使用されるアセンブリスタンド80が示されている。アセンブリスタンド80は鋼鉄から構成され、基部82と垂直固定具86とを含む。一部の製造プロセス中、垂直固定具86を加熱チューブ54の中空内部に挿入し、取り付け層20を形成する間、加熱チューブ54及びバッキングチューブ16を垂直位置に保持する。バッキングチューブ16は、その一端がバッキングチューブ止め具68に載った状態で配置される。バッキングチューブ16がスタンド80上に垂直に配置されている間、又はそれより早く、バッキングチューブ16がまだ水平である間のいずれかにおいて、第1のターゲット本体34がターゲット止め具70の表面74に載るまで、(好ましくは3個ずつの集まりになった)ターゲット本体34をバッキングチューブ16を覆うようにスライドさせる。この時点で、ターゲット本体34とバッキングチューブ16との間にはスロット(空間)90が存在し、このスロットは取り付け材料で充填されることになる。また、Simpsonの図5(及び本明細書の図5)にはまた、バッキングチューブ16の外側表面94及び円筒状スパッタリングターゲット12の内側表面96も示されている。
【0225】
本発明のボンディング技術の説明
本発明のボンディング技術の実施形態が以下に提供され、Simpsonのボンディング技術に対する相違点のいくつかが、以下の説明においてより明らかになるだろう。
【0226】
A.バッキングチューブ及びターゲットセグメントの用意
1A.必要に応じて(すなわち、提供又は形成されたターゲットセグメントの状態がクリーニングの必要性を示唆している場合)、本発明は、本出願の図1に示すバッキングチューブ16の外側表面(又は「OD」)及び/又は円筒状スパッタリングターゲット(ターゲット本体34)12の内側表面(又は「ID」)を、例えば、アルコール及び/又はアセトン(油を除去するのに好適)の溶液を用いた拭き取りなどによって、クリーニングするステップを含む。例えば、本発明の下では、後述する湿潤適用ステップの前に、LiMO(例えば、LiCoO)などのセラミック体のターゲット本体内面をアセトンでクリーニングすることが特徴付けられる。これに関して、図8を参照し、この図では同じ構成の複数のセグメント(例えば、任意の間隙と合計された場合に、所定の基板幅を被覆するのに十分な全長「h」を提供するような、十分なスパッタリングターゲット本体)から形成されたスパッタリングターゲットアセンブリのように、スパッタリングターゲットアセンブリの形成においてターゲットセグメントとしての使用に適した中空の円筒状ターゲット本体が示される。このように、ターゲットセグメントが、各々、例えば、0.10〜1m(以上)、より好ましくは150〜500mmの軸方向長さを有する状態で、スパッタリングシステムにおいて現れるますます増加する長さを満たすために適切な個数(3〜15個のターゲットセグメントなど)を合計することができる。例えば、本発明の下で特徴付けられるLiCoOターゲット本体は、好ましくは、上述の範囲内にある(例えば、約200mmの)軸方向長さ、約75〜175mmのOD(図8は153mmのODの例)、約50〜160mmのID(図8は135mmのIDの例)を有し、また、0.2〜3.0ミクロンの表面粗さ(Ra)を有し[ターゲット本体のID及びOD表面は粗さが同じであっても異なってもよく、好ましくは、湿潤/ボンディング性能を向上させるために、ターゲット本体のIDがそのODよりも高い表面粗さを有するようにして、やはり上記範囲内にある。上記(Ra)表面粗さ値は、JISB0601−2001の標準試験を用いて、決定することができる]、かつ/又は90%以上の相対密度範囲が好ましい(ASTM C693「浮力によるガラスの密度の標準試験方法」に記載されているようなアルキメデスの技術によって決定される)。
【0227】
1B.本発明の代替的実施形態では、必要と考えられる場合には、バッキングチューブ16の表面が、上記Simpsonの公報に記載された応力低減技術に従って改変される。
【0228】
B.円筒状ターゲットセグメントの内側表面の湿潤
1.本発明の実施形態の下では、湿潤プロセスの一部として、Simpsonなどの先行技術とは異なり、保護ラップ自体によって生成される汚染物による円筒状ターゲット本体の汚染の可能性を回避する、保護ラップを覆うステップが含まれる。例えば、ターゲットセグメント34の外側表面(すなわちスパッタリング表面24)は、本発明の下では、その外側表面を非粘着性保護ラップ材料(例えば、Kapton(登録商標)ブランドのポリイミドフィルム(すなわち、従来技術のようなテープではない))で覆うことによって保護されている。これにより、保護巻装されているターゲット本体のOD表面に関する接着剤の存在の可能性を回避する。すなわち、本発明の保護フィルムラップ技術は、ボンディングプロセス中に接着剤がターゲット本体と接触する可能性を回避し、全軸方向長保護ラップ又は上述のKapton(商標)フィルム材料などのフィルムの渦巻き状に巻回されたリボンとすることができる。他の保護フィルムラップは、本発明の下で、好ましくは、可撓性及び接触領域全体にわたる良好な直接接触面保持力(例えば、著しいしわ及び気泡形成の回避)など、Kapton(商標)フィルム材料のような特性と、スパッタターゲットアセンブリ製造シーケンスの間の様々なプロセスサイクルの間に劣化しない能力(例えば、問題になる劣化なく、誘導加熱器を用いた加熱段階に耐えることができる)とを共有すると特徴付けられる。本発明の実施形態は、好ましくは、シリコーンなどの接着剤を含まない、比較的薄い包装材を特徴とする。例えば、約75μmなど、100μm以下の保護ラップフィルムの厚さが、実例であり、このような厚さを有するポリアミド(単体)フィルムは、保護機能を提供するのに好適である。
【0229】
また、保護ラップは、ボンディングプロセス中に保護機能を提供することに加えて、同じラップを、生産設備から別の場所への輸送などの下流段階の間の保護領域として、所定の位置に保持することができる。このようにして、保護ラップは、ターゲット本体を保護することに関して多機能である。また、以下の議論から明らかなように、例えば、後述する導電性ラップの使用時に、エアポケットの回避が、意図された表面の均質な加熱という観点から有利であるという点で、エアポケットの発達なく表面ラップの下の下側表面を覆い隠すことができる材料であるという保護ラップの能力は有利である(例えば、導電性ラップもまた、保護ラップが利用される場合、導電性ラップと保護ラップとの間にエアポケットが形成されないように十分な可撓性を有する材料で形成される)。
【0230】
本発明の下で保護ラップが利用される場合、好ましくは、ボンディングの様々な後続段階(及び後述する下流移動)の間に、保持手段でラップを固定して(例えば、下側保護ラップの外面へのテープの適用など)、ターゲット本体の周りの保護ラップの位置の保持を促進する追加のステップも行われる。例えば、テープの接着側(例えば、ポリアミド及びシリコーンを組み合わせた積層テープの粘着性シリコーン側)は、下側の保護巻装されたターゲット本体の全周囲の周りに、渦巻き状又は1つ以上の間隔をあけた周方向(テープリング)適用のように巻き付けることができるが、これは、保護ラップによってテープからの接着剤がターゲット本体を汚染することが防止されるからである。
【0231】
2.湿潤という一般的な包括の下で、(状況によって望ましいと思われる場合)(例えば、粒度220の炭化ケイ素を用いて)ターゲットセグメントの内側表面IDをブラストすることなどによって、使用されるバインダのより望ましい湿潤保持力のためのプレウェッティング準備をターゲット本体の内部に施す。プレウェッティング準備の代替技術としては、例えば、N中に10%Hのプラズマ雰囲気など、表面を活性化するためのプラズマ処理が挙げられる。ただし、LiMO材料(例えば、本発明の図8に示されるLiCoOターゲット本体)などの円筒状ターゲット本体を用いると、LiMOの内側表面(例えば、図8に示されている円筒状ターゲット本体セグメントなど、LiCoOの代表的な円筒状ターゲット本体セグメント)にやはり良好な湿潤適用を維持しつつ、プレウェッティング準備ステップの必要性がほとんどの場合回避される(例えば、サンドブラスト及び/又はプラズマ生成ステップの必要性が回避される)。
【0232】
3.サンドブラスト(又はプラズマ活性化)を行う場合には、好ましくは、粉塵を空気で吹き飛ばした後、表面をアルコールなどで拭くなど、ターゲットセグメントの内側表面IDの更なる内部クリーニングステップを追加する。LiMO材料の円筒状ターゲット本体(例えば、図8に示すLiCoOターゲット本体)などの円筒状ターゲットに対するプレウェッティング活性化ステップ2(及びステップ3)を回避する利点は、ターゲットの領域で生成されてあたりに吹き飛ばされた追加の粉塵に伴って発生する恐れのある追加の問題が回避されることである。
【0233】
4.本発明の一実施形態の下、ターゲット本体は、標準炉(例えば、単純箱形炉)内で加熱されるか、又は、そうでなければ、例えば、200℃の湿潤適用温度に加熱される。インジウムがまだ約200℃である間に、1つのターゲットの内側表面IDをインジウム又は他のボンディング材料で湿潤するように、インジウムをブラシで広げた後、毛羽立った表面を超音波ツールで処理することによって、1つのターゲットセグメント34の内側表面ID全体が溶融インジウムで被覆される。図8のLiCoO(LiMOの例示的実施形態)ターゲット本体に関して、この材料は、プレウェッティング活性化なしで問題なく湿潤している(例えば、インジウム対インジウムの粘着試験を実施し、活性化ステップなしで良好な湿潤であることが保証され、インジウム対インジウムのボンディングが破損するよりも前にLiCoOセラミックが破損するという点で良好な湿潤粘着性が確認された)。
【0234】
5.ターゲット本体のIDへの湿潤適用及び良好な被覆の確認に続いて、1つのターゲット本体の内側表面全体がインジウムなどの湿潤材料で十分に湿潤された(被覆された)ことが確認され、湿潤材料で被覆されていない領域(乾燥点)がないことが視覚的に確認される。次いで、「湿潤された」ターゲットセグメントを室温に冷却する。本発明の代替的実施形態では、内面に意図的に形成された他とは異なる領域が存在し、この領域はボンディング強度を高めるために選択的に表面処理されており、これは、2013年5月16日に公開され参照として組み込まれる同出願人に対する米国特許出願公開第2013/0118898号(米国第‘898号とする)に記載されたいずれかの方法で処理される。これは、米国第‘898号参考文献で説明されているように、非湿潤領域及び湿潤領域を伴い得る。
【0235】
C.バッキング(支持)チューブの外側表面の湿潤
1.本発明の下では、円筒状バッキングチューブ16の端部もまた、例えば、バッキングチューブの端部をKapton(商標)ブランドのポリイミドテープで覆うことによって汚染から保護される。この場合には、粘着テープを適用することができ、これは、所定の位置に固定することがより容易であり、またバッキングチューブ上の接着剤の除去には問題が少ないためである。あるいは、非粘着性保護フィルム、好ましくは、ターゲットチューブに対する外部テープ保持(ターゲットセグメントの外径面について説明したように)も利用することができる。
【0236】
2.保護対象ではないバッキングチューブの領域には、上記のようなプラズマステップなどの活性化を施す。あるいは、粉塵が発生するのであまり好ましくはないが、バッキングチューブ16の外側表面(OD)を、上記のような方法で粗粒子を用いてブラストする。
【0237】
3.活性化する場合、バッキング支持体の外側表面ODは、エアブラストなどでバッキングチューブの外側表面から粉塵を吹き飛ばし、バッキングチューブをアルコールで拭くことによって、再びクリーニングされる。
【0238】
4.本発明のバッキングチューブを炉の内側に置き、より望ましい湿潤適用のために200℃に加熱する。
【0239】
5.バッキングチューブを所望の温度に加熱した後、一定量のインジウムをバッキングチューブの外側表面(OD)に適用するなどの湿潤ステップを行う。
【0240】
6.インジウムがまだ十分に熱い(例えば、約200℃である)間に、インジウムをブラシで外側表面に広げた後、上記した超音波ホーンなどの超音波を適用することによって、バッキングチューブの外側表面(OD)全体(保護被覆されていない)を溶融インジウムなどのボンディング材料で被覆する。インジウムを広げながら、超音波ツール(ホーン)に超音波エネルギーを印加してインジウムをバッキングチューブに付着させる(すなわち、バッキングチューブの外側表面(OD)をインジウムで湿潤させる)。
【0241】
7.バッキングチューブがまだ暖かい間に、ターゲット本体のIDに関する確認ステップと同様の方法で、バッキングチューブの外側表面全体がインジウムなどの湿潤材料で湿潤された(被覆された)ことを確認することができる。また、好ましくは、湿潤材料で被覆されていない領域(乾燥点)がないことが視覚的に保証される。次いで、バッキングチューブを室温に冷却する。代替的実施形態では、参照により組み込まれる前述の米国特許出願公開第2013/0118898号(ターゲット本体のIDの同様の処置と併せて、又はその代替法としてのいずれかで)によるバッキングチューブの外径に対する選択的な表面処理が行われる。この場合、ターゲット本体と同様、目視検査を行って、適切な湿潤及び非湿潤領域が形成されたことを確認することができる。図16は、米国第‘898号に記載されたプロセスを施されたバッキングチューブの例を示す。
【0242】
D.ターゲット本体/セグメント及び支持体バッキングチューブのボンディングの準備及びそれらのボンディング
上記のように本発明の好適な方法で準備された湿潤したターゲット本体及び同様の湿潤ターゲットチューブを用いて、ターゲット本体アセンブリの組み立てを、それら構成要素のボンディングを介して開始することができる。好適な実施形態は、ターゲット本体を個別にボンディング(チューブの長さに沿って一度に1つずつ)することを特徴とするが、それは、これが、より望ましい視覚的及び物理的アクセスを提供し、かつ1つのターゲット本体から次のターゲット本体への軸方向及び半径方向の温度勾配に対してより望ましい制御を提供するためである(例えば、下の方のターゲット本体の下部領域は、誘導加熱器を、その冷却対象ターゲットセグメントに対する最大加熱状態から遠ざけるように徐々に調整することによって、徐々に冷却することができる)。換言すると、最初の方の設定対象ターゲット本体は、そのターゲットセグメント及び関連する誘導加熱器のいずれか一方又は両方が相対的に移動するために、受ける誘導熱伝達はより小さくなり得る。
【0243】
また、取り付け材料で充填されることになる周方向間隙内の相対的な周方向間隔確保を達成することに併せて(例えば、間隙は、湿潤材料を含まないか、又はより好ましくは、ターゲット本体及びバッキングチューブのいずれか一方又はより好ましくは両方の上の湿潤材料のような湿潤材料によって既に画定されている)、小径ワイヤなどの周辺保持スペーサを配置することができ、これらのスペーサは、充填剤によるボンディングが供給されるときに、間隙周辺の周りの複数の間隙位置において所定の位置に配置することができる。これらの周辺間隔確保手段は、ボンディング材料が完全に凝固する前に、所定の位置に残すか、又は除去することができる(好ましくは除去する)。
【0244】
図6A及び図6Bは、概略的に、中空セラミック円筒スパッタリングターゲットセグメント(ST)をそのバッキングチューブ(BT)に接合するための、正面図及び上面図のそれぞれの配向での従来の順序を示す。この従来の順序の議論は、米国特許出願公開第2013/0118898号(米国第‘898号)に見出すことができる。上述したように、この参考文献は、図6A及び図6Bに示されるような従来のボンディング技術について記載しているだけでなく、本発明の接合プロセスにも組み入れることができる(これは任意選択であり、本発明の実施形態は、本明細書に組み込まれた米国第‘898号公報に説明されている上記ボンディング強化技術のない方法及びその成果物としてのターゲットアセンブリも特徴としているためである)ボンディング強化技術について記載している。
【0245】
すなわち、図6A及び図6Bは、回転ターゲットをボンディングする既知の原理について示しており、バッキングチューブ(BT)の周りにターゲットセグメント(TS)が挿し込まれ、次いで、はんだ又は他の間隙充填ボンディング材料(BM)(溶融インジウム又は別の低溶融温度合金)が、ボンディング材料の融点まで(場合によってはそれ以上に)加熱された両シリンダ間の中間空間に注がれる。その後、ターゲットアセンブリは室温に冷却される。
【0246】
米国第‘898号では、ボンディング強化処理を施し、ターゲットセグメント及びバッキングチューブの取り付け面及び/又は担持面が、選択的に表面処理されて、他とは異なる領域においてボンディング材料のボンディング強度を高める。バッキングチューブの表面処理強化の一例が、図16において特徴付けられる。図16は、同図[この具体的実施形態では2つの図が示されている]に示されたような渦巻きパターン(リング形状の選択的湿潤層を有する)を得るように、バッキングチューブの担持面が部分的に湿潤されていることを示し、ここでは、ソノトロード法を使用し、担持面の50〜80%をインジウム層で選択的に湿潤させた(このソノトロード法は、当業者に周知の超音波ベースの方法である)。各湿潤リングの幅は6〜20mmであり、各未処理面リングの幅は2〜6mmである。
【0247】
この場合もまた、本発明は、このような追加の処理ステップを伴うボンディングだけでなく、伴わないボンディングも含んでおり、それは、本発明が、多くの場合、米国第‘898号に記載されているような強化ステップなしで高品質スパッタリングターゲットアセンブリを生成することに適しているからである。
【0248】
Simpsonの参考文献の図5及び図6に示されるような輻射加熱システムとは異なり、本発明は、図7A図15に示すように、別の技術を使用して、ターゲット本体をバッキング支持体に接合する。図7A図7B図7Cは、本発明のボンディング技術の下で特徴付けられるステップのうちのいくつかを示す。図7Aは、バッキングチューブ(例えば、チタン円筒状チューブ)を示し、このバッキングチューブは、ボンディング中、取り囲んでいるターゲット本体に対して前述の間隙間隔を提供するのに適した寸法を有し、かつスパッタリング装置での使用の間、上述のバッキング支持及び熱伝導機能を実行するのに十分な長さ及び厚さである。
【0249】
図7Bは、「湿潤」のセクションで上述したような方法で湿潤した後に、前述のターゲットセグメントTSと共に使用するように設計されたバッキングチューブBTを示す。図7Bにおいて、非湿潤端部領域を観察することができ、この端部領域は、例えば、チャンバ型スパッタリング装置の回転領域の、適切にシールされた軸受に取り付けるのに適している。
【0250】
図7Cは、更に、この場合は最下部である、第1の湿潤した円筒状ターゲット本体TB又はセグメントTSの、湿潤したバッキングチューブBTに対する配置を示す。図7Cにおけるターゲットセグメントは、その下に位置する接続支持構造体のような任意の適切な手段によって所望の位置に保持され、バッキングチューブ(Simpsonに示されているような支持ブラケットを含む)に一時的に取り付けられる。
【0251】
図8は、(好ましくは、アセトン拭き取りの後かつ後述する保護巻装の前である)露出したセラミック外面を有する代表的な中空円筒状ターゲット本体(例えば、CIP緻密化及び焼結形成ステップ、また湿潤準備状態及びスパッタリングターゲットアセンブリバッキング支持体上での(その後の組み立て)準備状態へ機械加工の後である)を示す。例えば、図8のターゲットセグメントは非湿潤状態であるが、その他の点では、(直接的な又は本明細書に記載されるような保護巻装の追加を伴う)組み立ての準備ができている。図8のシリンダは、CIP緻密化及び焼結されたLiCoO円筒状ターゲット本体(LiCoO原料粉末供給源由来である)を表し、最終成形された円筒状ターゲット本体ではCIP緻密化ベースの粒子配置になる。円筒状焼結成形品は、標準的な方法で所望の構成及び表面粗さ(例えば、3ミクロン(Ra)未満)に機械加工することもできる。例として、LiMO及び金属バッキングチューブのような材料における熱膨張係数(「CTE」線形)の違いのうち、チタンのCTEは7〜9であり、一方、LiCoOのような材料のCTEは11.5である。
【0252】
図9Aは、保護ラップPWの追加後の図8のターゲット本体又はセグメントTSを示し、保護ラップPWは、この実施形態では、露出した外径面の周りの半透明保護ラップ(例えば、最小厚さが、50〜100μm、より好ましくは、約75μmのラップ)として示されている。図9Aに示す実施形態のように、ターゲット本体の露出した表面OD全体を覆うように(渦巻き状の重なりで)巻き付けられたKapton(商標)フィルム(テープではなく、したがって、ターゲット本体によって受け取られる接着剤がない)などのリボンフィルム(例えば、6〜20インチ幅、より好ましくは10〜12インチ幅のリボンのように、2〜24インチ幅(好ましくは、螺旋状巻回を可能にするためにセグメントよりも幅が小さい))が特徴とされる。すなわち、ターゲット本体の軸方向全長に沿って端縁部から端縁部までである。リボン材料は、例えば、より大きなソースロールから巻き出され、所望の巻き終わりの長さに達した後に切断することができ、1回以上の周方向でのラップ適用又は1層以上のラミネート層で、ターゲット本体の外径面全体を覆う。半透明又は透明な材料は、下側のターゲットの目視検査を少なくともある程度容易にするので、好ましい。
【0253】
図9Bは、断面図において、追加の保護ラップ保持手段T1を伴う同じ保護フィルムカバーを示し、保護ラップ保持手段T1は、この実施形態では、ターゲットセグメントTSと直接接触してPWを保持するのに役立つ粘着テープの形態である(本実施形態のテープT1は、好ましくは、図9Bに示すように、PWと直接接触する粘着面を有する)。テープT1には後述する誘導加熱プロセスが施されるので、テープT1は、シリコーンなどの接着剤を備えるポリアミドフィルムのように、そうした環境に適した材料で形成されなければならない(すなわち、Kapton(商標)テープにおいて特徴付けられるような、ポリアミド層と、シリコーン接着剤塗膜とから形成されたテープ)である。また、テープT1の適用により、PWラップと下側のターゲットセグメントTSとの間のエアポケットの回避が容易になる。
【0254】
図10A及び図11は、図9Aの事前に保護巻装されたシリンダの周りに導電性ラップCWの適用を開始することを示す図であるが、代替的実施形態では、CW層をターゲット本体表面に直接適用して、保護ラップを省略することができる。保護ラップの下側面又はターゲット本体のOD表面に対するエアポケットの形成の最小化もたらすように、CWラップは、十分な可撓性を有する材料から構成されなければならない。例えば、CW層は、例えば、下側の積層面との90%以上の完全な接触、より好ましくは、99%の完全な接触範囲を達成するのに十分な可撓性を有しなければならない。更に、1〜5層のラップ又は(潜在的にCW厚さの1〜5倍)のように複数の積層巻装があったとしても、その組み合わせのODをあまり増加させることなく巻装を容易にするように、ラップの厚さは、好ましくは比較的小さい(例えば、0.3〜0.5mm)。好適な実施形態では、導電性材料は、約40〜80mm(例えば、60mm)のリボン幅を有するようなリボンラップ導電性布材料である。
【0255】
保護ラップの使用は、導電性ラップ内の材料とシリンダ本体との間に汚れ又は望ましくない化学反応の可能性があるかもしれない場合(例えば、保護ラップ層なしで炭素系導電性ラップを利用する場合のLiCoOの炭素汚れ)など、いくつかの状況においては、特に望ましい。この実施形態の導電性ラップは、上記の属性を有し、また好ましくはリボン形式である(例えば、前述の導電性炭素繊維布は、CWラップについて上述したような幅で覆うものであり、シールされた布地端を有する)。例えば、リボンラップCWを利用する場合、リボンラップCWは螺旋状に重ねることができる。(「適用された半径方向の」)厚さは、好ましくは、ボンディングプロセスにおいて所望の温度を達成するために利用される上記の誘導による加熱を達成しながら上記の可撓性を維持するのに十分である。
【0256】
リボン導電性ラップに関連する1つの利点は、このリボン導電性ラップが、例えば、ボンディング金属はんだ(例えば、インジウム及びインジウム合金)などの取り付け材料を用いたターゲット本体/バッキング支持体の間隙の充填に続いて、例えば、ゆるやかに頂部がより高温/底部がより低温であるボンディング設定の関係を保持するために軸方向温度勾配調整においてより大きな柔軟性を提供することである。例えば、リボンがターゲット本体に供給されるにつれて、ターゲット本体の上に進むCW材料の重なり率の増加度又は周方向の巻装量の増加により、当該ボンディング状況によく適した、CW駆動の強制(imposed)軸方向温度勾配を提供することができる。ラップ自体は、その長さに沿って含まれる導電性材料の量を(異なる炭素フィラメント又は異なる粉末割合量のように)変化させることによって、その長さに沿って様々な程度の導電性を有することができる。
【0257】
また、後述するような複数セグメントの実施形態において、下部の一重CWラップ厚さ/中間の二重CWラップ/及び上部の三重CWラップという順序を特徴とする誘導加熱設定のように、1つのターゲットセグメントから次のターゲットセグメントへより多量のラップ材料を提供することによって、同様に異なる軸方向温度勾配テーマ(例えば、ゆるやかに頂部がより高温/底部がより低温)を実施することができる。また、同様の軸方向の変化は、例えば、1つのラップから次のラップへとラップ材料の材量の導電率において異なる加重値(weights)を使用することによって実行することもできる。また、導電性ラップは、好ましくは、ターゲットセグメントのOD全体の周りに巻き付けられ、テープT2(例えば、保護ラップPWのために使用されるテープT1と同様のテープであり、この保持手段は、ターゲットセグメントTS(及び存在する場合はPW)に対する導電性ラップの相対位置を保持するのに役立ち、導電性ラップCWと、CWが接触している表面との間のエアポケット分離を回避するのに役立つ)のような保持手段によって所定の位置に保持される。また、代替的実施形態では、下側の保護ラップと導電ラップの両方を所定の位置に同時に固定する、CWの周りにのみ配置された保持手段がある。
【0258】
導電性ラップは、冷却を助け、冷却プロセスを加速させるために、はんだ凝固プロセス中に任意選択で取り外してもよい。導電性ラップは、ターゲットセグメントの底部から優先的に取り外すことができ、アセンブリの加熱された部分の底部から頂部へのゆっくりとした冷却を促進する。
【0259】
図10Bは、本発明の一実施形態において特徴付けられるターゲット本体、保護ラップ、第1のテープ、導電性ラップ、第2のテープの層化構成又は積層構成を示す。ターゲット本体ODを覆う各追加層が比較的薄い場合、この組み合わせは、誘導加熱器の内部と組み合わせ全体のODとの間に所望の周方向間隔を提供するように十分に薄い。例えば、基体としてのターゲット本体のODから始まり、保護ラップの薄い層(例えば、100μm以下の層)と、テープの薄い層(例えば、75μm以下)と、導電性ラップの薄い層又は層セット(例えば、導電性ラップにおける複数ラップ構成、例えば、5重ラップの実施形態の場合でも、1つのCW層の厚さの範囲が0.25〜2mmで、総CWラップ厚さ範囲1.25mm〜10mmとなるように、1つの層が2mm以下(層当たり0.25〜1mm、より好ましくはCW層当たり0.3〜0.5mmなど)である)とが存在し得る。追加例として、約0.4mmの厚さ(3重ラップの実施形態では、1.2mmの追加となる)を有するCWが利用される。
【0260】
上記のテープT1と同じ材料から形成されるテープなど、上述のような追加のテープT2などの導電性ラップ保持手段を追加することもできる(例えば、75μm以下の追加)。このように、上記実施形態では、厚さ2mmのCWラップの値の合計は、様々な(最大5重ラップ)配置に対して、2.25mm(1重CWラップ)から10.25mm(5重CWラップ)の範囲であることを特徴とする。従って、厚さ約0.4mmのCWを特徴とする代替的実施形態では、全体の厚さに、0.65mm(1重CWラップ)から1.45mm(3重CWラップ)の範囲がある。本発明の実施形態は、好ましくは、ターゲット本体外面からの全体的な組み合わせ厚さ(3重ラップの実施形態を含む)が、0.5〜3.5mmの組み合わせ半径方向厚さであることを特徴とする。
【0261】
図7Cは、事前に湿潤されたターゲットチューブに配置され、誘導加熱開始の準備が整っている、この保護ラップ及び導電性ラップ(事前に湿潤された)ターゲットセグメントを示す。
【0262】
図12は、誘導加熱初期段階を示し、誘導加熱器は、図7Cに示された最下部の、保護材料及び導電性材料で巻装されたターゲット本体を覆って配置されている。巻装されたターゲットセグメントTSがバッキングチューブBT及び誘導加熱器IH上に所望の関係で適切に据え付けられると(例えば、所望の軸方向温度勾配スケジュールの取得を容易にするために、開始位置としてターゲット本体の下部領域を周方向に囲む)、誘導加熱プロセスを使用し、取り付け間隙を充填するのに十分なボンディング材料を提供することによって、その最下部のターゲットセグメント又は本体TSのバッキングチューブBTへのボンディングを実行することができる。
【0263】
すなわち、図12に示すように、ターゲット本体、バッキングチューブ及び結合材料(例えば、インジウムなどの金属はんだ)の特徴的材料に対して所望の設定で配置された制御ユニットCU(周波数及びエネルギー設定手段(例えば、ダイヤル又はタッチスクリーン設定オプション)を備える)を備えた誘導加熱器IHが適切に設定される。また、図12に示すように、誘導加熱器の大きさは、ターゲット本体とほぼ一致する高さを有するように作製することができる(例えば、必要に応じて、視覚的及び物理的アクセスを容易にするために、ほぼ同じ(100%)か又はより小さく(40%〜80%)する)。しかしながら、軸方向長さの異なるターゲット本体の可能性を考慮して、誘導加熱器は、軸方向の長さを過度に短く作製されてはならない(例えば、熱調整時間が長すぎる)、又は軸方向の長さを過度に長く作製されてはならない(アクセスしやすさ又は精密な軸方向勾配制御が失われる)。また、誘導加熱器の内部開口アクセス領域は、適切な隙間(誘導加熱は、少なくとも誘導加熱器の開口内に配置された導電性材料に関しては非接触加熱プロセスであるため)を用いて、図12に示されるように取り付けられたターゲット本体の外周を覆って滑り下ろすことができるように大きさが決められているが、誘導加熱能力又は効率を低下させるほど大きな隙間ではない。また、この周方向の間隔は、ターゲット本体(ターゲットアセンブリ)が誘導加熱器に対して移動されるときに相対的調整を提供する。いずれのシナリオでも、非接触誘導加熱を適切に維持することに関して、上記の複数ラップ実施形態の可能性が考慮に入れられる。
【0264】
誘導加熱器が、ターゲット本体の周りで適切に周方向に配置されると(加熱対象ターゲット本体と共通の同じ水平断面高さを共有する)、誘導加熱器に電圧を印加して所望のレベルにすることができ、所望の温度に達し(例えば、165〜220℃)、また周方向隙間領域に適切に加熱された環境が存在するとき(かつ、湿潤材料が存在する場合には、それが所望の(例えば、軟化状態)にあるとき)、「ギャップフィラー」金属はんだのような「ギャップフィラー」ボンディング材料を導入することができる。導入は、図6Aに表わされるような注ぎ込みのように所望の形式で行われ、好ましくは、攪拌による泡の除去と組み合わされる。例えば、インジウムのような金属はんだは、間隙にすくい入れる(又は別の方法で注入する)ことができ、攪拌を用いてボンディング表面からの酸化物及び気泡の除去に役立てることができる。
【0265】
間隙領域の所望の熱レベルが誘導加熱器(及び存在する場合はCW)によって生成され、湿潤材料(存在する場合)が十分に軟化されると、間隙充填ボンディング材料BMの注入を完了することができる。所定の位置で熱供給関係を調整すると又は熱供給を停止すると、ターゲット本体及びバッキングチューブは、該当する間隙領域での十分な冷却に続いて、ボンディングし始める若しくはボンディングされた状態になる、又は互いに取り付けられた状態になる。
【0266】
図12図14に示された実施形態では、ターゲット本体の長さに沿って軸方向の冷却/加熱温度勾配の正確な制御を可能にするような方法で、誘導加熱器が、固定されたバッキングチューブに対して所定の位置で軸方向に調整される(例えば、バッキングチューブは、直立したベース支持部に挿入されたスタブ延長部に入れ子式にかつ固定的に受け入れられる)ことが観察される。このように、先に処理されたターゲット本体は、次のターゲットセグメントをバッキングチューブに配置する前に、(好ましくは、シリコン間隔リングのような中間スペーサを用いて)所望の冷却状態又はより低い加熱レベルにすることができる。このように、操作者はアクセスの機会も有しており、列のうち次のターゲット本体に対するボンディング手順の開始前に、例えば、処理されたターゲットセグメントのひび割れがないことを視覚的に確認し(そのターゲット本体上の導電ラップを取り外した後、保護ラップが存在する場合、典型的には保護ラップを取り外す必要ないが、これは、加熱後でもその薄さ及び/又は半透明若しくは概して透明な特性があるためである)、ボンディング材料漏れ等の問題がない。また、そのステップに続いて、誘導加熱器が、積み重ねられた第2のターゲット本体の加熱を開始するように、誘導加熱器、第1のターゲット本体(又は現状のターゲット本体アセンブリ)又はその両方の相対位置を調整することができる(例えば、本発明の実施形態では、誘導加熱器が最初に2つのターゲット本体を跨ぐこともできることに留意されたい)。また、誘導加熱器(又は複数のIHが利用される場合は複数の加熱器)を軸方向に沿って調整するのではなく、ターゲット本体をIHに対して調整することができる(このようにして、誘導加熱器を特定の水平面に静止して保持することができ、充填対象周方向隙間の上部領域をその誘導加熱器の固定位置に基づいて所望の平面に調整することができるという点において固定されたボンディング材料供給位置を提供することができ、また適切な溶融はんだの間隙移動及び気泡除去を確認するために間隙充填を監視するときのように、間隙充填ボンディングの適用を、視覚的に及び物理的に、適切にアクセス可能な1つの場所で提供することができる。
【0267】
図13(誘導加熱器の調整の実施形態を表す)は、誘導加熱器を第1のターゲットセグメントから離して再配置する前に、第2のターゲット本体シリンダ又はターゲットセグメントを、より下にある、最初に配置されたターゲット本体の上方でバッキングチューブに追加することを示している。本発明の実施形態下では、使用中の膨張を収容するために所望の程度の分離を提供するべく、それぞれの積み重ねられたターゲットの間に軸方向間隙間隔リングを設けることができ、この間隔リングは、第2のターゲット本体を第1のターゲット本体に積み重ねる前に所定の位置に置かれる。
【0268】
図14は、図13の配列を示しているが、誘導加熱器は、第2のターゲット本体の集中的誘導加熱のために再配置されている。
【0269】
所望の数のターゲット本体がターゲットチューブにボンディングされ、そして図15に示すような完成したターゲットアセンブリが得られると(好ましくは個々のターゲット本体の)誘導加熱による位置及びボンディング設定が直列で完了する。すなわち、図15は、共通のバッキングチューブにボンディングされた複数のターゲット本体によりスパッタリングターゲットアセンブリを提供することを示し、ターゲットアセンブリは誘導加熱器から分離されてしまった状態である。また、本発明の下では、(必要に応じて)軸方向の隙間をクリーニングし、取り外し可能な軸方向スペーサがあればそれを取り外すだけで済むので、ポストボンディングの要件はほとんどない(ターゲットセグメントスペーサが利用されない場合(又は永久的なスペーサが利用される場合)を除く)。更に、CWラップ及び保持手段T2が使用される場合(各々がそれより前にターゲット本体検査プロセスで取り外されなかった場合)、製造されたスパッタリングターゲットアセンブリを次の場所に送る前に、それらを取り外すだけでよく、保護(ボンディング段階)ラップが取り外されずにパッケージング保護材料として保持される状況においては追加の汚染の心配がない。すなわち、利用される保護ラップ及び任意のテープT1は、加熱取り付けプロセスに伴う熱に耐えるように設計され、ボンディングプロセスの完了後の継続的な保護用途に適している。
【0270】
実施例1及び2
実施例1
実施例1では、チタンバッキングチューブ上にボンディングされるLiCoOターゲット(以下、LICOターゲットと称す)に、上記本ボンディング方法のステップA〜Dを適用した。
【0271】
LICOターゲット製造
ボンディング対象ターゲットのLICOは、以下のように合成される。
【0272】
14リットルの脱イオン水をポリエチレンバッチタンクに導入する。分散剤として通常使用される合成高分子電解質1.2kgを水に添加して混合する。濃NHOH溶液(〜25重量%)を滴下して、混合物のpHを10+/−0.5に調整する。
【0273】
60kgのCellcore(登録商標)D5のコバルト酸リチウム粉末(出願人UmicoreのビジネスユニットであるRBM(Rechargeable Battery Materials)によって供給される)を、混合しながら水溶液にゆっくりと添加する。
【0274】
混合タンクをビューラーミルの入口及び出口配管に取り付け、混合物を約4時間(装置設定)湿式粉砕する。目標d50値は、0.5ミクロンで、CPS Disc Centrifuge(Model DC 12000)で判断して、1時間ごとに試料を採取する。粉砕プロセス中、n−オクタノールが消泡剤として添加される。
【0275】
上記のCellcore(登録商標)D5のコバルト酸リチウム粉末の粉砕は、図3に示すように、二峰性粒径分布を生じさせる。
【0276】
粉砕が完了したら、得られたスリップを、927g(2重量%)のポリビニルアルコール系バインダの入った混合タンクに移す。この混合物を一晩(〜14時間)撹拌する。
【0277】
顆粒は、得られたスリップをGEA Production Minorスプレータワーで噴霧乾燥することによって調製される。噴霧をポンプ速度毎分25回転(Watson Marlow 520Uポンプ)で実施し、噴流式噴霧ノズルを用いて10〜12kg/時の処理量を得た。入口温度及び出口温度は、225℃及び120℃で制御される。これらの条件により、サイクロンに対する損失を30%未満に最小化した。顆粒は、粒度(d50=60〜100ミクロン、ふるい分析により決定)、安息角(0.3〜0.5;PTL V36.61;ISO 4324)、タップ密度(1.3〜2.0g/cm;Erweka SVM−202);JEL Stampfvolumeter STAV 2003)、及び残留湿度(<2%;OHaus MB45水分計)という特徴があった。
【0278】
主な顆粒粗粒分及び細粒分を、中心に配置された円筒状アルミニウムコア及び頂部並びに底部ポリウレタン保持器を備えた、円筒状CIP型のゴム袋に充填する前に、組み合わせて混ぜ合わせた。ゴムキャップで密封し、排気した後、この型を4000バールの静浮力に曝した。
【0279】
ゴム袋から取り出し、コアを抜き取った後、ODが約181〜184mm、IDが143〜145mm、長さが315〜320mmの寸法の、LiCoOの中空円筒状未焼結体が得られた。
【0280】
これらのサンプルについては、外周面寸法を正しく合わせ、端面を直角にするグリーン加工は行わなかった。代わりに、ブレードで鋭い縁部を除去した。次いで、未焼結体を、ブロワ及びダンパを備えた焼結炉に入れた。脱バインダ及び焼結は、脱バインダ段階(T≦500℃)及び最終冷却(T≦600℃)の間だけブロワがオン、ダンパが開放の状態で、(箱型)炉内において大気圧で1サイクル実施された。
【0281】
バインダを除去するための加熱ステップは、150℃以上かつ600℃以下の第1の温度で、好ましくは連続的に行い、焼結ステップは、この第1の温度より高くかつ1100℃以下、より好ましくは、1050℃以下の第2の温度で好ましくは連続的に行い、この第2の焼結温度は、好ましくは、600℃より高い。より好ましくは、加熱ステップ及び焼結ステップは、切れ目なく連続的に行われ、加熱ステップから焼結ステップへの滑らかな移行の間に中断及び温度低下がないように、加熱ステップと焼結ステップとの間の連続的な移行を伴う。
【0282】
焼結後、シリンダの密度はアルキメデスの方法によって決定されていたが、LiCoO表面の多孔性があるため、外表面を最初に既知の質量及び密度のポリマーコーティング(PlastiDipゴムスプレー)で被覆した。密度は4.65〜4.70g/cmの範囲であった(理論密度=5.16g/cm)。
【0283】
焼結後の寸法は、ODが165〜173mm、IDが130〜136mm、長さが285〜295mmの範囲であった。
【0284】
焼結後のシリンダを(ID及びODの粗さ値が3.0Ra未満であることを確認するために粗さRaを試験して)最終寸法に機械加工した。
【0285】
チタンバッキングチューブへのLICOターゲットのボンディング
上記の本ボンディング方法のステップA〜Dを、LiCoOターゲットに適用した。
【0286】
このLICOターゲットをボンディングするプロセスでは、ステップDは、1〜100kHz、好ましくは1〜20kHz(これらの値を含む)に含まれる動作可能周波数で行われる。
【0287】
より好ましくは、周波数範囲は、6〜12kHz(これらの値を含む)である。
【0288】
実施例1では、誘導ボンディング法において使用される誘導発熱体は、1〜20kW、好ましくは1〜10kW(これらの値を含む)に含まれる出力レベルで動作するように配置される。
【0289】
より好ましくは、出力範囲は、1〜3kW(これらの値を含む)である。
【0290】
実施例2
実施例2において、上記の本ボンディング方法のステップA〜Dを、ITO(酸化インジウムスズ;酸化インジウム90重量%:酸化スズ10重量%)ターゲットに適用した。
【0291】
ITOをボンディングする場合、ITOは導電性材料であるため、導電性ラップの存在は不要であることを留意されたい。
【0292】
このITOターゲットをボンディングするプロセスでは、ステップDは、1〜100kHz、好ましくは1〜20kHz(これらの値を含む)に含まれる動作可能周波数で行われる。
【0293】
より好ましくは、周波数範囲は、6〜12kHz(これらの値を含む)である。
【0294】
実施例2では、本誘導ボンディング法において使用される誘導発熱体は、1〜20kW、好ましくは1〜10kW(これらの値を含む)の出力レベルで動作するように配置される。
【0295】
より好ましくは、出力範囲は、2〜4kW(これらの値を含む)である。
【0296】
周波数及び電力の範囲選択は、アセンブリターゲット+バッキングチューブの幾何学的特性(例えば、ターゲットの長さ及び幅、バッキングチューブの長さ及び幅など)及び材料的特性(例えば、バッキングチューブ材料、ターゲット材料、導電性ラップ材料など)に依存し、本明細書に記載のボンディングが有効であるように調節される。
【0297】
本発明を現在の好適な実施形態の観点から説明してきたが、こうした開示は限定的であると解釈されるべきではないことを理解されたい。上記開示を読んだ後に、様々な変更及び修正が当業者には確実に明らかになるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16