(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784705
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】内燃エンジン用ピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/22 20060101AFI20201102BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20201102BHJP
F01P 3/10 20060101ALI20201102BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F02F3/00 Z
F02F3/00 R
F01P3/10 A
F16J1/09
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-567201(P2017-567201)
(86)(22)【出願日】2016年7月19日
(65)【公表番号】特表2018-523051(P2018-523051A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016067178
(87)【国際公開番号】WO2017016934
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】102015214512.3
(32)【優先日】2015年7月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エーマン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヘティッヒ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マンゴールド セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ゲジー アジズ
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−036764(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/055964(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102006024098(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00−3/28
F01P 3/10
F16J 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン用のピストン(1)であって、
ピストンクラウン(2)と、
上記ピストンクラウン(2)に形成され、くぼみ縁部(16)を有する燃焼室くぼみ(3)と、
ピストンリングを収容するための上記ピストンクラウンに最も近いリング溝(4)と、
上記ピストン(1)を冷却するための冷却ダクト(5)とを備え、
上記冷却ダクト(5)は、上記ピストンクラウンに最も近いリング溝(4)の上記ピストンクラウンから遠いフランク(22)よりも全体が上記ピストンクラウン(2)に近く、
上記冷却ダクト(5)は、第1位置(8)において上記ピストンクラウン(2)からの最小距離(6)を有し、かつ第2位置(9)において上記燃焼室くぼみ(3)からの最小距離(7)を有し、
上記冷却ダクト(5)は、上記第1位置(8)と上記第2位置(9)との間において丸みを帯びて構成されていて、上記冷却ダクトの表面に対して垂直に測定して、上記くぼみ縁部(16)に対向する第3位置(18)において上記くぼみ縁部(16)からの最大距離(17)を有し、
上記第2位置(9)から始まって上記第1位置(8)までにおいて、上記丸み部は、互いに隣接しかつ各々が上記ピストン径dの4%以上である少なくとも3つの半径R1,R2,R3によって記述され、
上記半径R1,R2,R3は互いに異なる
ことを特徴とするピストン。
【請求項2】
請求項1において、
上記第3位置(18)における上記丸み半径は、上記ピストン径dの5%以上である
ことを特徴とするピストン。
【請求項3】
請求項1において、
上記第1半径R1は、上記第2半径R2よりも大きく、
および/または、
上記第1半径R1は、上記第3半径R3よりも小さく、
および/または、
上記第2半径R2は、上記第3半径R3よりも小さい
ことを特徴とするピストン。
【請求項4】
請求項1において、
上記第1半径R1は、約3.7mmであり、
上記半径R2は、約3.6mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項5】
請求項1又は4において、
上記第3半径R3は、約4.4mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
上記丸み部を記述し、上記第3半径R3に隣接し、上記第1位置(8)まで到達し、かつ上記半径R1およびR2よりも小さい第4半径R4が設けられている
ことを特徴とするピストン。
【請求項7】
請求項6において、
上記第4半径R4は、約1.3mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
上記ピストン径dは、約83mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
上記ピストンクラウン(2)からの上記最小距離(6)は、約3.0mmであり、
および/または、
上記燃焼室くぼみ(3)からの上記最小距離(7)は、少なくとも2.6mm、好ましくは約3.3mmであり、
および/または、
上記くぼみ縁部からの上記最大距離(17)は、約7.1mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項において、
上記半径R3に対する上記冷却ダクト(5)の高さhの比率は、h/R3≧0.6、特にh/R3≧0.65である
ことを特徴とするピストン。
【請求項11】
請求項10において、
上記冷却ダクト(5)の上記高さhは、約6.6mmである
ことを特徴とするピストン。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項において、
上記冷却ダクト(5)は、上記ピストンクラウンに最も近いリング溝(4)の上記ピストンクラウンに近いフランク(21)よりも全体が上記ピストンクラウン(2)に近い
ことを特徴とするピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る、ピストンクラウンおよびピストンクラウン内に形成された燃焼室くぼみを備えた内燃エンジン用ピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃エンジン用の一般的なタイプのピストンが開示されている。このピストンは、ピストンクラウンと、このピストンクラウン内に形成された燃焼室くぼみと、ピストンリングを収容するための少なくとも1つのリング溝とを備える。また、ピストンを冷却するための冷却ダクトが設けられている。
【0003】
特許文献2には、内燃エンジン用の別のピストンが開示されている。このピストンは、ピストン軸に沿った高さに関して、および/または径方向において異なる高さに位置する2つの区分を有する少なくとも1つの冷却ダクトを備える。ここで、2つまたはそれ以上の冷却ダクトが設けられていてもよく、その中の少なくとも2つは、ピストン軸に沿った高さに関して、および/または径方向において異なる高さに配置される。
【0004】
特許文献3には、内燃エンジン用の別のピストンが開示されている。このピストンは、もっぱら少なくとも1つの流入部および少なくとも1つの流出部の領域においてピストンクラウンから比較的離れた低い位置に設けられ、それ以外では一貫してピストンクラウンに近い高い位置に設けられた少なくとも1つの冷却ダクトを備える。その結果、特に、ピストンの冷却が改善され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第2828237号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102004056769号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102008002571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術から公知の燃焼室くぼみを備えたピストンの場合、特にくぼみ縁部の領域において、長期的なネガティブな影響を及ぼし得る比較的高い熱負荷が生じる。
【0007】
したがって、本発明の課題は、一般的なタイプのピストンのための改良されたまたは少なくとも従来のものに代わる実施形態であって、特に長い耐用年数によって特徴付けられる実施形態を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、この課題は、独立請求項1の主題にしたがって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、内燃エンジンのピストン内の冷却ダクトに、ピストンクラウンおよび燃焼室くぼみに対して比較的大きな半径を伴って丸みを帯びさせることによって当該領域で改善されたノッチ効果を実現するという基本思想に基づく。当該ノッチ効果は、特に、改善された態様で、当該領域で生じる高い熱負荷に耐えるのに役立つ。
【0010】
ここで、本発明に係るピストンは、上述したピストンクラウンと、このピストンクラウンに形成された燃焼室くぼみと、ピストンリングを収容するための少なくとも1つのリング溝と、ピストンを冷却するための冷却ダクトとを備える。そして、ピストンの耐用年数および耐熱性能を改善することができるように、冷却ダクトは、少なくとも1つのリング溝よりもピストンクラウンに近くなるように設けられている。これは、冷却ダクトの全体が、1つのリング溝または複数(往々にして、3つ)のリング溝のうち最上部のリング溝の下側フランクよりも上側に設けられていることを意味する。本願では、複数のリング溝のうちピストンクラウンに最も近い最上部のリング溝のみを考慮する。ある好ましい実施形態では、冷却ダクトの全体が、ピストンクラウンに最も近いリング溝の上側フランクよりも上側に設けられている。記載中の「上側」および「下側」の方向は、ピストンのピストン軸に沿ったエンジンの通常の設置および動作位置に関連し、したがってピストンクラウンに近くて燃焼室に面する側、およびピストンクラウンから遠くて燃焼室とは反対側を向く側をそれぞれ表す。冷却ダクトをピストンクラウンの近くに配置することによって、まず、ピストンクラウンへの熱入力箇所に対して冷却ダクトが近くなることの結果として、燃焼室からの改善された熱伝導がもたらされる。しかしながら、その実質的な利点は、従来技術に係る最上部のリング溝の内側におけるピストンクラウンから径方向に離れた配置によって、リング溝と燃焼室くぼみとの間で応力集中が生じるのに対して、冷却ダクトが、ピストンクラウンと、燃焼室くぼみと、リング溝またはリング担持部との間で、機械的応力が比較的小さい領域である中心部に実質的に配置されることにある。
【0011】
また、冷却ダクトは、第1位置においてピストンクラウンからの最小距離を、第2位置において燃焼室くぼみからの最小距離を有し、加えて第1位置と第2位置との間において丸みを帯びて構成されている。ピストンクラウンから燃焼室くぼみへの移行部を形成するくぼみ縁部からの最大距離を伴う第3位置が、第1および第2位置の間に位置している。ここで、くぼみ縁部から第3位置までの距離は、当該第3位置において放射状に、すなわち冷却ダクト面に対して垂直に測定される。本発明によると、冷却ダクトは、そのくぼみ縁部に対向する表面の領域において特に大きな丸み部を有し、少なくとも第3位置における丸み半径は、ピストン径の4%以上、特に好ましくは5%以上である。大きな丸み部は、好ましくは、冷却ダクト面の比較的広い領域にわたって延びており、当該領域は、第2位置から第3位置まで、ピストン径の4%以上の丸み半径を連続的に有する。
【0012】
ある特に好ましい実施形態では、丸み部は、第2位置よりも下側から始まっていて、すなわち燃焼室くぼみからの最小距離よりもピストンクラウンから離れた位置から始まっていて、互いに隣接しかつ各々がピストン径の4%以上である少なくとも3つの半径R1,R2,R3を介して第3位置を越えて延びている。当該3つの半径R1,R2,R3は、結果として、燃焼室くぼみとピストンクラウンとの間の領域に、比較的大きな冷却ダクトの丸み部を実現可能にする。本発明に係る丸み部は、上述した最小半径が全体を通して維持される限りにおいて、互いに隣接する1つもしくはそれ以上の円弧R1,R2,R3によって構成されていてもよく、または凸状の連続的に湾曲した形状を有していてもよい。大きな丸み部は、第1位置までもしくは当該第1位置を越えて延びていてもよく、または好ましくは第3位置と第1位置との間の領域で終わっていてもよい。概して、特に、比較的大きな丸み部によってくぼみ縁部に対向する冷却ダクト面の当該部分においてノッチ効果を低減することができ、したがって本発明に係るピストンの耐熱性能を改善することができる。
【0013】
本発明に係る解決策のある有利な態様では、第1半径R1は、第2半径R2よりも大きく、および/または第3半径R3よりも小さい。その結果、冷却ダクトの丸み部が、比較的大きな半径を伴う第3位置にわたって案内され得、それにより当該領域においてノッチ効果が特にポジティブな影響を受け得る。加えてまたは代えて、第2半径が第3半径よりも小さくてもよく、それにより既に比較的大きい第1および第2半径R1,R2がより一層大きくなり、結果として、冷却ダクトの丸み部が、当該領域においておよび第3位置に向かって特に有利なものになる。
【0014】
本発明に係る解決策の別の有利な実施形態では、丸み部を記述し、第3半径R3に隣接し、第1位置まで到達し、しかし半径R1,R2よりも小さく、また特に第3半径R3よりも小さい第4半径R4が設けられる。その結果、冷却ダクトは、第1位置の領域において楕円形状に丸みを帯び得、また例えば1.3mmであってもよい比較的小さな第4半径を介して、隣接する直線部に、すなわち冷却ダクトの丸みを帯びていない領域に徐々に変化し得る。冷却ダクトの当該丸みを帯びていない領域は、特にソルトコアまたはサンドコアの製造のために必要とされる。
【0015】
好適には、第1半径R1は約3.7mmであり、第2半径R2は約3.6mmであり、第3半径R3は約4.4mmであり、かつ第4半径R4は約1.3mmである一方、ピストン径dは約83mmである。実験では、当該寸法が本発明に係るピストンの特に高い耐熱性能をもたらした。各半径および直径の比率は、より大きなまたはより小さなピストンに対応して推定されてもよく、したがって様々なサイズのピストンに適合され得ることは言うまでもない。当該領域における当該比率は、したがって、比較的大きな半径R3のために、実質的に全てのピストンに対して、くぼみ縁部の領域において最適なノッチ効果をもたらす。
【0016】
本発明に係る解決策の別の有利な実施形態では、ピストンクラウンからの最小距離は約3.0mmであり、加えてまたは代えて、燃焼室くぼみからの最小距離は少なくとも2.6mm、好ましくは約3.3mmである一方、くぼみ縁部からの最大距離は約7.1mmであってもよい。このことから、冷却ダクトとピストンクラウンとの間、および冷却ダクトと燃焼室くぼみとの間には、特に83mmのピストン径dの場合に、ほんの小さな距離しか存在しないことがわかる。そして、当該小さな距離によると、第1位置および第2位置の領域におけるピストンの最適な冷却が実現可能になる。
【0017】
一方、本発明によると、燃焼室くぼみ、くぼみ縁部、およびピストンクラウンに対向する冷却ダクト面の領域が考慮に入れられ、ファイアランドに対向する径方向外側領域の、およびピストンクラウンから最も遠い冷却ダクト面の当該部分の形状設計は、強度状態にほとんど影響しないことが見出された。そのため、ここでは任意の所望の表面プロファイルが実現可能であり、当該表面プロファイルは、強度を損なうことなく、より小さな半径、縁部、または突出部を含む凸状の冷却ダクト断面を有し得る。
【0018】
本発明に係る解決策の別の有利な実施形態では、第3位置における半径R3に対する冷却ダクトの高さhの比率は、h/R3≧0.6にしたがって規定される。特に好ましくは、h/R3≧0.65である。その結果、円形に比べて大幅に改善された卵形の冷却ダクトが実現され得、それにより耐用年数および耐熱負荷性能に関して改善されたピストンが製造され得る。
【0019】
本発明の別の重要な特徴および利点は、従属請求項から、図面から、および図面を参照した関連する図の説明から明らかになるだろう。
【0020】
上述したあるいは後述する特徴が、それぞれに示す組合せにおいてのみでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、その他の組合せにおいてまたは単独でも利用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係るピストンの細部断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に係るピストンの冷却ダクトの各半径を示す細部図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい例示的な実施形態について、図示すると共に詳細に説明する。同一の符号は、同一のもしくは類似のまたは機能的に同一の構成要素を示す。
【0023】
図1および
図2によると、内燃エンジン(図示せず)の本発明に係るピストン1は、ピストンクラウン2と、このピストンクラウン2に形成されると共に当該ピストンクラウン2への移行領域にくぼみ縁部16を形成する燃焼室くぼみ3とを備える。ピストンリング(図示せず)を収容するための少なくとも1つのリング溝4(ここでは、ピストンクラウンに最も近いリング溝4)が、ピストン1の外面に設けられている。リング溝4は、ピストンクラウンに近いフランク21と、ピストンクラウンから離れたフランク22とを有する。これらのフランク21,22は、環状に構成されかつピストン軸11に対して実質的に垂直である。実質的に円柱状の溝底部23が、フランク21とフランク22との間に位置している。ピストン1を冷却するための冷却ダクト5が、また設けられている。
【0024】
ピストン1の耐熱負荷性能、したがって間接的にその耐用年数を向上させることができるように、冷却ダクト5は、少なくとも1つのリング溝4よりもピストンクラウン2に近い。これは、冷却ダクト5の全体が、あるリング溝4またはピストンクラウンに最も近いリング溝4の少なくともピストンクラウンから遠いフランク22よりもピストンクラウン2の近くに設けられていることを意味する。好ましい例示的な実施形態では、冷却ダクト全体の断面が、最上部のリング溝4のピストンクラウンに近いフランク21よりもピストンクラウン2に近い。原則として、ピストン1は、また、ピストンクラウンからより離れた別のリング溝(図示せず)を有する。さらに、冷却ダクト5は、第1位置8においてピストンクラウン2からの最小距離6を有し(
図2を参照)、かつ第2位置9において燃焼室くぼみ3からの最小距離7を有する。また、第1位置8と第2位置9との間においてくぼみ縁部16に対向する第3位置18において、冷却ダクト5は、くぼみ縁部16の領域における燃焼室側ピストン面と冷却ダクト面との間の最大距離17を有しており、当該距離17は、冷却ダクト面に対して垂直に測定される。ここで、冷却ダクト5は、第3位置8と第2位置9との間において丸みを帯びて構成されており、当該丸み部は、第3位置18においてピストン径の5%以上の半径R3を有する。第2位置9から第3位置18までの領域には、ピストン径の4%以上の丸み半径R3と、急な曲がりを伴わずにR3に隣接するピストン径dの4%以上の半径R2とが連続的に存在している。
【0025】
第2位置9から第3位置18を越えて第1位置8の直前までにおいて、冷却ダクト断面は、互いに隣接しかつ各々がピストン径dの4%以上である少なくとも3つの半径R1,R2,R3によって記述される。
【0026】
ここで、第1半径R1は、例えば3.7mmであって、例えば3.6mmである第2半径R2よりも大きい。それに加えてあるいは代えて、第1半径R1は、例えば4.4mmであってもよい第3半径R3よりも小さくてもよい。
【0027】
図2を考慮すると、冷却ダクト5の丸み部を記述し、第3半径R3に隣接し、第1位置8まで到達し、かつ半径R1,R2よりも小さく、また半径R3よりも小さい半径R4が設けられていることがわかる。第4半径R4は、例えば1.3mmであってもよい。ピストン径dは、例えば、乗用車用ピストンに慣例的な83mmの値を有していてもよい。ここで、上述した各寸法は、特に互いに比例して守られるべきであり、その結果、それに応じて拡大または縮小された半径R1,R2,R3,R4およびピストン径dを有するピストン1が、正負の推定を介して本発明に含まれ得る。
【0028】
再び
図2を考慮すると、同図から、第1位置8とピストンクラウン2との間の最小距離6は、例えば3mmであってもよく、第2位置9と燃焼室くぼみ3との間の最小距離7は、例えば3.3mm、特に3.374mmであってもよい一方、第3位置18とくぼみ縁部16との間の最大距離17は、例えば7.1mmであってもよいことがわかる。当該距離6,7が、ピストン径dの変化に応じて推定されまたは適合および変換されてもよいことは言うまでもない。
【0029】
図1を考慮すると、冷却ダクト5が高さhを有することがわかる。ここで、第3位置における半径R3に対する冷却ダクト5の高さhの比率は、可能な限り低いノッチ効果を、したがって高い耐熱負荷性能および長い耐用年数を実現できるように、h/R3≧0.6、特に好ましくはh/R3≧0.65であってもよく、またはあるべきである。ここで、冷却ダクト5の高さhは、例えば6.6mmであってもよい。
【0030】
図1および
図2からわかるように、冷却ダクト5は、直線部10を有しており、当該直線部10は、ピストン軸11に対して約8°の角度αをもって傾斜している(
図1および
図2を参照)。このタイプの部分10によって、ピストン1の製造が改善され得る。
【0031】
ピストン1の耐熱負荷性能および長期の耐用年数に関連する特に有利な実施形態が、ピストンクラウン2および燃焼室くぼみ3に関連した、特にリング溝4の構成および半径R1〜R4の選択に関連した冷却ダクト5の本発明に係る構成によって実現され得る。