(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切替機構部は、前記電子ペン本体部の前記ペン先部側とは反対側の端部が衝合すると共に、前記棒状の機能部材の前記一端側とは反対側の端部が衝合する傾斜部を備えるカムを備え、前記電子ペン本体部の前記ペン先部と、前記棒状の機能部材の前記一端とが、前記筐体の軸心方向において同じ位置にあるときに、前記電子ペン本体部の前記ペン先部側とは反対側の端部と、前記棒状の機能部材の前記一端側とは反対側の端部とが、異なる傾斜部の中間に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能電子ペン。
前記切替機構部は、前記筐体の軸心方向の前記開口側とは反対側の側面から外部に突出する、前記電子ペン本体部及び前記棒状の機能部材とのそれぞれに結合されている操作部を、前記軸心方向にスライド移動させることにより、前記電子ペン本体部の前記ペン先部が前記開口から前記筐体外に突出する状態と、前記棒状の機能部材の前一端部側が前記開口から前記筐体外に突出する状態とを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の多機能電子ペン。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明による多機能電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0015】
[第1の実施形態;回転式の切替機構部を備える多機能電子ペン]
図1(A)は、この発明による多機能電子ペンの第1の実施形態の構造の一例を示す図である。この例の多機能電子ペン1においては、筒状の外部筐体 2 の中空部内に、電磁誘導方式の電子ペン本体部3と、筆記具としてのボールペンの芯(カートリッジやリフィル)4とが収納されている。そして、筒状の外部筐体2の軸心方向の一方の端部は多機能電子ペン1のペン先側とされていて、ペン先側には開口2aが形成されている。なお、筒状の外部筐体2のペン先側とは反対側の開口は、後端蓋部2Eにより閉塞されている。電子ペン本体部3と、ボールペンの芯4とは、この開口2aから、それらのペン先部のいずれかが外部筐体2の外部に突出させることができるように、外部筐体2内に収納されている。なお、以下の説明において、この発明による多機能電子ペンの軸心方向のうち、ペン先側を先端側、ペン先側とは反対側の後端側と称する。
【0016】
そして、この例の多機能電子ペン1は、後で詳述するような構成の回転式の切替機構部5を備える。そして、この回転式の切替機構部5により、電子ペン1の外部筐体2の開口2aからは、電子ペン本体部3のペン先部と、ボールペンの芯4のペン先部とのいずれを外部筐体2の外部に突出させるかを切り替えることができるように構成されている。
【0017】
[電子ペン本体部3及びボールペンの芯4の構成例]
図2(A)は、市販のノック式ボールペンの芯4を示し、また、
図2(B)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示している。市販のノック式ボールペンの芯4は、
図2(A)に示すように、金属のボールが先端に配設されている金属製のペン先部41と、インク収納部42とが、結合部43で結合されて一体化された周知の構成を備える。ボールペンの芯4は、周知のようにペン先部41以外の部分、すなわち、インク収納部42はプラスチックなどにより構成され、柔軟性を有しているので、外力を加えても折れることなく、容易に全方向にある程度曲がるように構成されている。なお、結合部43は、インク収納部42と同じ径を有している。
【0018】
一方、この実施形態の電子ペン本体部3は、
図2(B)に示すように、その外径がボールペンの芯4と同様の外形に形成されている。この電子ペン本体部3は、インク収納部42に対応する内部筐体33と、ボールペンの芯4のペン先部41に対応する芯体34とを備える。内部筐体33は、筒状に形成され、この内部筐体33の内部には、後述の
図3に示すように、コイル31が巻回された磁性体コアの例としてのフェライトコア32、筆圧検出部35、プリント基板(回路基板)36などが収納されていると共に、後述するように、筆圧検出部35に対して、芯体34が挿脱自在に取り付けられる構成を備える。
【0019】
そして、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、電子ペン本体部3の内部筐体33の先端側には、ボールペンの芯4のペン先部41の寸法とほぼ等しい寸法で形成された芯体ガイド部33bが構成されている。この芯体ガイド部33bの径は、ボールペンの芯4のペン先部41の径R1とほぼ等しくなるように構成されている。そして、芯体ガイド部33bの他端側には、本体部品収納部33cが構成されている。この本体部品収納部33cの先端側の端部33dから芯体34のペン先部34aまでの長さは、ボールペンの芯4のペン先部41の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0020】
また、電子ペン本体部3の本体部品収納部33cの径は、ボールペンの芯4のインク収納部42の径R2とほぼ等しく、ペン先部41の径R1よりは大きく設定されている(R2>R1)。
図1(A)に示した外部筐体2の開口2aの径は、ボールペンの芯4のインク収納部42の径R2よりは小さく設定されている。したがって、外部筐体2の開口2aからは、ボールペンの芯4のペン先部41及び電子ペン本体部3の先端側の芯体ガイド部33bが、外部に突出することができる。そして、電子ペン本体部3の芯体34のペン先部34aから本体部品収納部33cの後端側の端部33e側の端縁までの長さ、すなわち、電子ペン本体部3の全長は、ボールペンの芯4の全長L2と等しく選定されている。
【0021】
次に、電子ペン本体部3の内部の構成例について説明する。
図3は、第1の実施の形態の電子ペン本体部3の内部の構成例と当該電子ペン本体部3を用いて構成される筆記具のペン先側の構成について説明するための図である。
【0022】
図3に示すように、電子ペン本体部3は、コイル31と、フェライトコア32と、芯体ガイド部33b及び本体部品収納部33cからなる内部筐体33と、芯体34と、筆圧検出部35と、プリント基板36と、保護パイプ37と、基板保持部材38と、嵌合部材39とから構成される。
【0023】
芯体34は、例えば樹脂等により棒状に形成され、ペン先部34aと、軸部34bとからなる。ペン先部34aは、軸部34bの先端側の端部に形成され、内部筐体33の先端側の端部に設けられた開口33aから突出させることができるように内部筐体33に収納されている。
【0024】
内部筐体33は、芯体ガイド部33bと、本体部品収納部33cとからなり、芯体ガイド部33bは本体部品収納部33cの先端側の端部33dで本体部品収納部33cと連結されている。そして、芯体ガイド部33bには、コイル31が巻回されたフェライトコア32の先端側の一部が収納され、フェライトコア32の後端側の残部が筆圧検出部35、プリント基板36とともに本体部品収納部33cに収納される。
【0025】
フェライトコア32は、例えば円柱状のフェライト材料に、芯体34を挿通するための所定の径(例えば径=1mm)を有する軸心方向へ延伸形成された貫通孔が、軸心方向の中心線を含む位置に配置されたものである。芯体34は、このフェライトコア32の軸心方向の長さよりも長く構成されている。また、フェライトコア32の当該貫通孔には、芯体34の軸部34bが挿入される。この芯体34の軸部34bは、フェライトコア32の貫通孔の径よりもやや小さい径を有するものとされており、フェライトコア32の貫通孔内を軸心方向に移動可能となるように構成されている。
【0026】
なお、芯体34のペン先部34aは、フェライトコア32の貫通孔の径よりも大きい径を有している。そして、この芯体34のペン先部34aは、先端部分が半球状に加工され、位置検出装置のセンサの上部の電子ペンの操作面上において、スムーズに移動させることができるようにされている。
【0027】
そして、
図3(A)に示すように、フェライトコア32の軸心方向の所定の長さの部分にはコイル31が巻回されてコイル巻回部32cとなる。そして、このコイル巻回部32cを挟んで、フェライトコア32の先端側と後端側はコイルが巻回されていないコイル非巻回部32a及びコイル非巻回部32bとなっている。
【0028】
フェライトコア32に巻回されたコイル31は、その巻き始め端及び巻き終わり端からのリード線(図示は省略)が、内部筐体33の内側を、プリント基板36まで延伸されて、プリント基板36に設けられているキャパシタに接続される。コイル31とプリント基板36上のキャパシタとによって共振回路が構成され、位置検出装置との間において、電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにしている。
【0029】
そして、フェライトコア32の後端側のコイル非巻回部32b側には、筆圧検出部35が設けられている。この筆圧検出部35は、モールド部35Aと、嵌合部35Bとを有し、この嵌合部35Bにより内部筐体33の内部に保持される。この例では、モールド部35Aの内部には、先端側から順に、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5が設けられている。これらの各部が、モールド部35Aと、嵌合部35Bとによって挟み込まれ、筆圧を検出する筆圧検出部35を構成する。
【0030】
芯体保持部A1は、例えば硬質ゴム等によりカップ状に形成され、芯体34の軸部34bの後端側の端部が挿脱自在に差し込まれて、芯体34を保持する。そして、芯体保持部A1は、例えば平板形状に形成された導電ゴムA2に対向して配置され、芯体34のペン先部34aに加えられる筆圧に応じて軸心方向に移動することで、リングスペーサA3を介して導電ゴムA2を押圧する押圧部として機能する。
【0031】
誘電体A4の後端側の面に対向する位置には、所定の面積を有する端子部材A5が設けられている。導電ゴム(第1の電極)A2と端子部材(第2の電極)A5とが、誘電体A4を介して対向する構成により、可変容量コンデンサ(キャパシタ)が構成され、この可変容量コンデンサの静電容量の変化として、芯体34に印加される筆圧を検出する。
【0032】
この例において、芯体保持部A1、導電ゴムA2、リングスペーサA3、誘電体A4、端子部材A5により構成される筆圧検出部35は、例えば特許文献:特開平5−275283号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様のものである。また、筆圧検出部35は、特開2011−186803号公報に記載されている周知の構成の筆圧検出手段と同様に構成することもできる。また、例えば、特開2013−161307号公報に開示されているような筆圧に応じて静電容量を可変とする半導体素子を用いた構成することもできる。
【0033】
そして、嵌合部35Bには、プリント基板36の先端側の端部36aが嵌合され、これにより、プリント基板36が、内部筐体33内に収納固定される。なお、プリント基板36の後端側の端部36bは、内部筐体33の後端側の端部33e付近に設けられている基板保持部材38により保持されるように構成されている。また、この例では、プリント基板36は、内部筐体33内においては、保護パイプ37により、一部または全部が覆われて保護されている。
【0034】
プリント基板36には、コイル31と共に共振回路を構成する主要なキャパシタの他、共振回路の共振周波数を調整するためのキャパシタなどの回路部品が搭載されている。
【0035】
そして、この例では、内部筐体33の後端側の端部33eは、蓋部材を兼用する嵌合部材39により閉塞される。この嵌合部材39には、後述するように、多機能電子ペン1の切替機構部の嵌合部材と嵌合するための球形の凹部39aが形成されている。
【0036】
次に、この実施形態の多機能電子ペン1の回転式の切替機構部5について、
図1(A)を参照して説明する。
【0037】
この実施形態の多機能電子ペン1の外部筐体2は、回転式の切替機構部5により、その一部を回転可能とするために、 ペン先側筐体2Aと、後端側筐体2Bとの2つに分かれている。なお、
図1(A)においては、この実施形態の多機能電子ペン1の特徴を理解し易くするために、外部筐体2の内部の構成部分は断面図とせず、外部筐体2の部分のみを破断した断面図として示した。
【0038】
この実施形態の多機能電子ペン1においては、ペン先側筐体2Aと、後端側筐体2Bとは、これらを接続するためのジョイントパイプ2Cによって接続される。そして、ペン先側筐体2Aと後端側筐体2Bとが、軸心方向において対向する接続部には、接続部リング2Dが設けられ、使用者がペン先側筐体2Aと後端側筐体2Bのそれぞれの部分を明確に区別できるようにしている。そして、ペン先側筐体2Aと後端側筐体2Bは、ジョイントパイプ2Cにより接続された状態で、外部筐体2の軸心位置を中心にして、互いに回転させることができるように構成されている。
【0039】
後端側筐体2Bの後端部2Gは、後端蓋部2Eにより閉じられる。この後端蓋部2Eには、多機能電子ペン1を使用者の上着のポケットなどに止めるためのクリップ2Fが設けられている。そして、後端側筐体2B内の後端蓋部2E側には、後端側筐体2Bの内径に一致する外径を有する三角カム51が設けられている。この三角カム51は、円筒状の部材の上面部から底面部にかけて斜めに切断した傾斜部51aを有するようにした形状に形成される 。この三角カム51は、ペン先側筐体2Aに対して、後端側筐体2Bを回転させたときに、これに連動して一緒に回転する。
【0040】
また、後端側筐体2B内には、電子ペン本体部3用の押し出し棒52及びボールペンの芯4用の押し出し棒53が設けられる。これら押し出し棒52及び53は、ジョイントパイプ2Cにより後端側筐体2Bの内部に保持され、その後端側の端部には、それぞれスライド部52A及び53Aが設けられている。このスライド部52A及び53Aは、上述した三角カム51の傾斜部51aの端面に当接し、当該三角カム51の傾斜部51aの端面に沿ってスライド移動するように、山型に形成される。
【0041】
そして、押し出し棒52及び53の周囲には、バネ52B及び53Bが設けられる。これらバネ52B及び53Bのそれぞれは、ジョイントパイプ2Cの後端側の端部と、押し出し棒52及び53のスライド部52A、53Aとの間に保持されるように設けられる。これらバネ52B及び53Bのそれぞれは、切替機構部5により、電子ペン本体部3またはボールペンの芯4を、そのペン先部が外部筐体2の開口2aから突出している状態から外部筐体2の内部に収納するように切り替えるときに、そのペン先部が突出している電子ペン本体部3またはボールペンの芯4と結合している押し出し棒52または押し出し棒53を、後端蓋部2E側に引き込むように機能する。
【0042】
押し出し棒52及び押し出し棒53の先端側の端部には、電子ペン本体部3の嵌合部材39及びボールペンの芯4の後端側の嵌合部と嵌合する嵌合部52C及び53Cが形成されている。
【0043】
そして、押し出し棒52の嵌合部52Cは、球状凸部52Caが設けられている。この球状凸部52Caは、電子ペン本体部3の後端側に設けられた嵌合部材39の球状凹部39aに嵌合する。そして、押し出し棒52の嵌合部52Cの球状凸部52Caと電子ペン本体部3の嵌合部材39の球状凹部39aとによって、いわゆる自在継手(ユニバーサルジョイント)を構成する。一方、押し出し棒53の嵌合部53Cは、ボールペンの芯4の後端部が嵌合するように構成されている。
【0044】
この場合、電子ペン本体部3は、その内部に、プリント基板36や保護パイプ37などが収納されているため、ボールペンの芯4に比べて曲がりにくいものである。しかし、電子ペン本体部3は、
図1に示すように、押し出し棒52の嵌合部52Cの球状凸部52Caと電子ペン本体部3の嵌合部材39の球状凹部39aとが嵌合した部分において、全方向に自在に、かつ、容易に折れ曲がることができる。これにより、ペン先側筐体2A及び後端側筐体2B内において、電子ペン本体部3の内部筐体33がペン先側筐体2Aの内壁に当たっても、電子ペン本体部3を撓ませるような大きな負荷がかかることなく、出没移動することができる。すなわち、多機能電子ペン1の外部筐体2内で電子ペン本体部3が斜めに移動し、そのペン先部34aを外部筐体2の開口2aから突出させることができる。
【0045】
なお、ボールペンの芯4のインク収納部42が金属製のボールペン用芯を用いる場合などにおいては、電子ペン本体部3Aの接続部分と同様に自在継手を用いる構成としてもよい。
【0046】
以上の説明から理解されるように、この実施形態の多機能電子ペン1における切替機構部5は、ペン先側筐体2Aと後端側筐体2Bとがジョイントパイプ2Cを介して回転可能に結合される構成と、三角カム51と、押し出し棒52及び53とを含んで構成されるものである。
【0047】
そして、上述したように構成される多機能電子ペン1において、ペン先側筐体2Aに対して、後端側筐体2Bを、外部筐体2の軸心位置を中心にして回転させると、後端側筐体2B内に設けられた三角カム51が、後端側筐体2Bと共に回転する。これに応じて、押し出し棒52及び53の後端側の端部に設けられているスライド部52A及び53Aが、三角カム51の端面上をスライド移動する。
【0048】
すなわち、三角カム51の回転によって、押し出し棒52,53のうちの一方は、三角カム51の先端側 に移動し、同時に、押し出し棒52,53のうちの他方は、三角カム51の後端側に移動する。
【0049】
このため、三角カム51の先端側に移動した押し出し棒52または押し出し棒53に嵌合されている電子ペン本体部3またはボールペンの芯4のペン先部41が、ペン先側筐体2Aの開口2a側に押し出されて、このペン先側筐体2Aの開口2aから突出される。同時に、ペン先部34aが開口2aから突出していない方のボールペンの芯4または電子ペン本体部3は、それが嵌合している押し出し棒53または押し出し棒52が、バネ53Bあるいはバネ52Bにより、多機能電子ペン1の後端側に引き込まれながら、三角カム51の後端側に移動して、外部筐体2内に収納される状態になる。
【0050】
この例の場合には、押し出し棒52は三角カム51の先端側に位置し、この押し出し棒52に嵌合されている電子ペン本体部3の先端側の一部がペン先側筐体2Aの開口2aから突出している(
図1(B)参照)と共に、押し出し棒53が三角カム51の後端側に位置し、バネ53Bにより引き込まれて、この押し出し棒53に嵌合されているボールペンの芯4の全体が、外部筐体2内に収納されている。
【0051】
そして、この実施形態では、このように電子ペン本体部3の先端側の部分が、開口2aから外部筐体2の外部に突出する状態では、電子ペン本体部3のフェライトコア32に巻回されたコイル31及びプリント基板36に設けられたキャパシタからなる共振回路が、位置検出装置のセンサとの間で電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにされる。
【0052】
この場合に、電子ペン本体部3の先端側の部分が、開口2aから外部筐体2の外部に突出する状態では、コイル31の後端側の端部と、ボールペンの芯4の金属製のペン先部4aの先端とは、互いに所定距離ΔL3だけ離間する状態となるように、切替機構部5は構成されている。さらに、この実施形態では、コイル31が巻回されていないフェライトコア32の後端側のコイル非巻回部32bの端縁と、ボールペンの芯4の金属製のペン先部4aの先端とは、互いに所定距離ΔL4だけ離間する状態となるように、切替機構部5は構成されている。
【0053】
この実施形態の切替機構部5は、上記の状態を現出するために、三角カム51と、押し出し棒52及び53とからなる構成が工夫されている。すなわち、切替機構部5は、例えば特開2009−196260号公報と同様に三角カム51と、押し出し棒52及び53とを備える構成を有するが、電子ペン本体部3とボールペンの替え芯4との離間距離が
図1(B)のように、比較的大きくなるようにした点が、前記公報との切替機構部の構成とは異なる。
【0054】
図4は、この切替機構部5の、三角カム51と、押し出し棒52及び53とからなる部分の構成を説明するための図である。
【0055】
図4(A)において実線で示すものは、
図1(A)の状態、すなわち電子ペン本体部3を使用している際における三角カム51に対する押し出し棒52及び53の位置を示すものである。そして、この実施形態においては、三角カム51は、円筒部材を先端側から、後端側のほぼ全周分に亘って斜めに切断したような形状を有する。したがって、三角カム51の傾斜部51aは、ペン先側の先端部51bから、左右に後端蓋部2E側の後端側部51cまでのほぼ180度角範囲分の長さを有する2個の傾斜部として形成される。
【0056】
図4(B)は、三角カム51を展開した状態を示す図であり、その先端部51bから、左右に、後端蓋部2E側の後端側部51cまでに亘って、それぞれほぼ180度角の範囲分の長さを有する2個の傾斜部51aL及び51aRが形成されている。そして、この実施形態では、電子ペン本体部3が嵌合される押し出し棒52とボールペンの芯4が嵌合される押し出し棒53は、電子ペン本体部3とボールペンの芯4のペン先部41が共に電子ペン1の外部筐体2の開口2aから突出することなく当該外部筐体2内に収納される状態では、
図4(B)において点線矢印52AR´及び53AR´で示すように、傾斜部51aL及び51aRの丁度中央の位置に在るように構成されている。
図4(A)では、このときの押し出し棒52及び53の位置を点線52´及び53´で示している。
【0057】
この状態で、ペン先側筐体2Aに対して、後端側筐体2Bを、外部筐体2の軸心位置を中心にして時計回りに90度回転させる。すると、後端側筐体2B内に設けられた三角カム51が、後端側筐体2Bと共に回転するので、
図4(B)に示すように、電子ペン本体部3が嵌合されている押し出し棒52は、実線矢印52ARで示すように、三角カム51の先端部51bの位置に移動する。一方、ボールペンの芯4が嵌合されている押し出し棒53は、実線矢印53ARで示すように、三角カム51の後端側部51cの位置に移動する。すなわち、押し出し棒52と押し出し棒53とは、互いに、より離れる方向に移動する。
【0058】
これにより、電子ペン本体部3の芯体34のペン先部34aが外部筐体2の開口2aから外部に突出する状態では、
図4(B)に示すように、押し出し棒52と押し出し棒53とは、互いに、傾斜部51aL、51aR分の距離SR2だけ離れる状態になる。そして、この距離SR2により、
図1(B)に示したように、電子ペン本体部3のコイル31の後端側の端部及びフェライトコア32の後端側の端部と、ボールペンの芯4のペン先部4aの先端とは、それぞれΔL3及びΔL4以上離れるように構成されている。
【0059】
次に、前述した特開2009−196260号公報に開示されている従来の切替機構部と、この実施形態の切替機構部5との構成の違いについて説明する。
図4(C)は、前述した特開2009−196260号公報に開示されている従来の切替機構部を説明するための図で、
図4(B)に対応して、従来の切替機構部の三角カム510を展開した状態を示す図である。
【0060】
すなわち、この三角カム510は、円筒部材をペン先側の先端部510bから、後端蓋部2E側の後端側部510cにまで亘って180度の角範囲部分を斜めに切断すると共に、残りの180度の角範囲は、後端側部510cの位置で、軸心方向に直交する方向に切断した形状を有する。したがって、三角カム510は、その先端部510bから、左右に、後端側部510cまでに亘って、それぞれほぼ90度角範囲分の長さを有する2個の傾斜部510aL及び510aRを備えるものとして形成されている。
【0061】
そして、この三角カム510と共に用いられる2個の押し出し棒52,53は、電子ペン本体部3とボールペンの芯4のペン先部が共に電子ペン1の外部筐体2の開口2aから突出することなく当該外部筐体2内に収納される状態では、
図4(C)において点線矢印520AR´及び530AR´で示すように、後端側部510cの位置に在るように構成されている。
【0062】
この状態で、ペン先側筐体2Aに対して、後端側筐体2Bを、外部筐体2の軸心位置を中心にして時計回りに90度回転させると、後端側筐体2B内に設けられた三角カム510が、後端側筐体2Bと共に回転するので、
図4(C)に示すように、電子ペン本体部3が嵌合されている押し出し棒52は、実線矢印520ARで示すように、三角カム51の先端部510bの位置に移動し、一方、ボールペンの芯4が嵌合されている押し出し棒53は、実線矢印530ARで示すように、三角カム510の後端側部510cの位置で回転方向に移動する。
【0063】
したがって、電子ペン本体部3の芯体34のペン先部34aが外部筐体2の開口2aから外部に突出する状態では、
図4(C)に示すように、2個の押し出し棒52,53は、互いに傾斜部510aLまたは510aRの距離SR1だけ離れる状態になる。すなわち、三角カム510の場合には、一方の押し出し棒は、三角カム510の後端側部510cの位置で回転方向に移動するだけであるので、2個の押し出し棒は、互いに傾斜部510aL、510aR分の距離SR1だけしか離れることができない。この距離SR1は、
図4(B)と
図4(C)とから明らかなように、距離SR2の1/2である。
【0064】
このため、従来の三角カム510を用いて、電子ペン本体部3のコイル31の後端側の端部及びフェライトコア32の後端側のコイル非巻回部32bの端縁と、ボールペンの芯4のペン先部4aの先端とを、それぞれΔL3及びΔL4以上離れるようにするためには、傾斜部510aLまたは510aRの長さを、
図4(B)の傾斜部51aL,51aRと等しくする必要がある。このように等しくするためには、傾斜部51aL及び51aRの傾斜角をより急峻にする必要がある。しかしながら、このように傾斜部51aL及び51aRの傾斜角をより急峻にすると、押し出し棒の三角カム510に対するスライド移動がスムーズに行えない恐れがある。これを回避するために、傾斜部510aLまたは510aRの傾斜角を変えないようにしてしまうと、外部筐体2の径が太くなってしまうという問題を新たに招来してしまう。
【0065】
これに対して、この実施形態の三角カム51と、2個の押し出し棒52及び53とからなる切替機構部5は、上述のように構成されているので、
図4(C)の三角カム510を用いる場合の外部筐体2の径を太くすることなく、電子ペン本体部3のコイル31の後端側の端部及びフェライトコア32の後端側のコイル非巻回部32bの端縁と、ボールペンの芯4のペン先部の先端とを、所望する距離だけ離間させるようにすることができる。
【0066】
[電子ペン本体部3と電磁誘導方式の座標検出センサの回路構成例]
次に、多機能電子ペン1において、
図1(A)に示したように、電子ペン本体部3の芯体34の先端が、外部筐体2の開口2aから外部筐体2の外部に突出しているときに、この電子ペン本体部3により指示された位置の検出および筆圧の検出(検知)を行う電磁誘導方式の位置検出装置200の回路構成例について、
図5を参照して説明する。
【0067】
電子ペン本体部3は、回路構成としては、信号送受用のコイル31と、このコイル31に並列に接続されるキャパシタCfと、筆圧検出部35を構成する可変容量キャパシタ35Cとからなる共振回路によって現される。
【0068】
一方、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群204Xと、Y軸方向ループコイル群204Yとを積層させて設けることにより、電磁誘導方式の座標検出センサ201が形成されている。各ループコイル群204X,204Yは、それぞれn本,m本(n,mは正の整数)の矩形のループコイルからなっている。各ループコイル群204X,204Yを構成する各ループコイルは、等間隔に並んで順次重なり合うように配置されている。
【0069】
また、位置検出装置200には、X軸方向ループコイル群204X及びY軸方向ループコイル群204Yが接続される選択回路206が設けられている。この選択回路206は、2つのループコイル群204X,204Yのうちの一のループコイルを順次選択する。
【0070】
さらに、位置検出装置200には、発振器203と、電流ドライバ205と、切り替え接続回路207と、受信アンプ208と、検波器209と、低域フィルタ210と、サンプルホールド回路212と、A/D変換回路213と、同期検波器216と、低域フィルタ217と、サンプルホールド回路218と、A/D変換回路219と、処理部214とが設けられている。
【0071】
発振器203は、周波数f0の交流信号を発生し、電流ドライバ205と同期検波器216に供給する発振器203である。電流ドライバ205は、発振器203から供給された交流信号を電流に変換して切り替え接続回路207へ送出する。切り替え接続回路207は、後述する処理部214からの制御により、選択回路206によって選択されたループコイルが接続される接続先(送信側端子T、受信側端子S)を切り替える。この接続先のうち、送信側端子Tには電流ドライバ205が、受信側端子Rには受信アンプ208が、それぞれ接続されている。
【0072】
選択回路206に選択されたループコイルに発生する誘導電圧は、選択回路206及び切り替え接続回路207を介して受信アンプ208に送られる。受信アンプ208は、ループコイルから供給された誘導電圧を増幅し、検波器209及び同期検波器216へ送出する。
【0073】
検波器209は、ループコイルに発生した誘導電圧、すなわち受信信号を検波し、低域フィルタ210へ送出する。低域フィルタ210は、前述した周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、検波器209の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路212へ送出する。サンプルホールド回路212は、低域フィルタ210の出力信号の所定のタイミング、具体的には受信期間中の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路213へ送出する。A/D変換回路213は、サンプルホールド回路212のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部214に出力する。
【0074】
一方、同期検波器216は、受信アンプ208の出力信号を発振器203からの交流信号で同期検波し、それらの間の位相差に応じたレベルの信号を低域フィルタ217に送出する。この低域フィルタ217は、周波数f0より充分低い遮断周波数を有しており、同期検波器216の出力信号を直流信号に変換してサンプルホールド回路218に送出する。このサンプルホールド回路218は、低域フィルタ217の出力信号の所定のタイミングにおける電圧値を保持し、A/D(Analog to Digital)変換回路219へ送出する。A/D変換回路219は、サンプルホールド回路218のアナログ出力をデジタル信号に変換し、処理部214に出力する。
【0075】
処理部214は、位置検出装置200の各部を制御する。すなわち、処理部214は、選択回路206におけるループコイルの選択、切り替え接続回路207の切り替え、サンプルホールド回路212、218のタイミングを制御する。処理部214は、A/D変換回路213、219からの入力信号に基づき、X軸方向ループコイル群204X及びY軸方向ループコイル群204Yから一定の送信継続時間をもって電波を送信させる。
【0076】
X軸方向ループコイル群204X及びY軸方向ループコイル群204Yの各ループコイルには、電子ペン1から送信される電波によって誘導電圧が発生する。処理部214は、この各ループコイルに発生した誘導電圧の電圧値のレベルに基づいて電子ペン1のX軸方向及びY軸方向の指示位置の座標値を算出する。また、処理部214は、送信した電波と受信した電波との位相差(周波数差)に基づいて筆圧を検出する。
【0077】
[電子ペン本体部3のコイルの端部と、ボールペンの芯4のペン先部4aとの離間距離について]
図5を用いて説明したように、位置検出装置200は、電磁誘導方式の電子ペン本体部3と、所定周波数の電磁波を授受することにより、電子ペン本体部3により指示された位置や、電子ペン本体部3の芯体34に印加される筆圧を検出するようにする。この場合に、電子ペン本体部3では、コイル31とキャパシタとからなる共振回路で、位置検出装置200からの電磁波を受信し、また、送信するので、当該共振回路の共振周波数は、位置検出装置200から送出される電磁波の周波数となるように調整されている。
【0078】
ところが、冒頭で述べたように、共振回路を構成するコイル31の近傍に金属、すなわちボールペンの芯4のペン先部4aが存在すると、当該金属の影響を受けて、共振回路の調整された共振周波数(位相)が変化してしまう。
【0079】
この共振回路の調整された共振周波数(位相)が変化してしまうと、位置検出装置200での電子ペン本体部3による指示位置の検出感度が劣化してしまうと共に、電子ペン本体部3の芯体34の先端に印加される筆圧を正確に検出することが困難になる恐れがある。
【0080】
図6に、ボールペンの芯4の金属のペン先部4aと、コイル31の端部との距離と、共振回路の位相(共振周波数)の変化との関係を測定した結果の例を示す。この
図6からは、ボールペンの芯4の金属のペン先部4aとコイル31の端部との距離が、5mm以上であれば、共振回路の位相の変化が小さく、実用上、許容することができることが分かった。
【0081】
なお、この
図6の例の関係は、コイル31がフェライトコア32の端部にまで巻回されていて、コイル31の端部と、フェライトコア32の端部とがほぼ同一位置となっている場合である。コイル31がフェライトコア32の端部にまで巻回されずに、フェライトコア32の端部にコイルが巻回されていない部分が生じているときには、フェライトコア32の端部からも、ボールペンの芯4の金属のペン先部4aが離間していた方が、共振回路への影響がなくなることは言うまでもない。
【0082】
なお、
図6の例の関係は、一例であり、ボールペンの芯4のペン先部4aを構成する金属の材質や外径、コイル31の仕様や、磁性体コアなどが変わると、共振回路の位相が変化する距離も変化するものである。
【0083】
この実施形態では、上述したように、切替機構部5により、電子ペン本体部3の芯体34のペン先部34aが外部筐体2の開口2aから外部に突出する状態のときには、コイル31及びフェライトコア32の端部と、ボールペンの芯4のペン先部4aとは、それぞれ距離ΔL3及び距離ΔL4だけ離間するようになっている。
【0084】
そして、この実施形態では、
図6の関係を踏まえ、少なくとも距離ΔL4が5mm以上となるようにしている。この結果、この実施形態の多機能電子ペン1においては、電子ペン本体部3の芯体34の先端を、外部筐体2の開口2aから外部に突出させるようにする当該電子ペン本体部3の使用状態においては、ボールペンの芯4の金属製のペン先部4aの影響を最小限にすることができるという顕著な効果を奏する。
【0085】
[第2の実施形態;ノック式の多機能電子ペンの例]
第2の実施形態の多機能電子ペンは、切替機構部が、回転式ではなく、ノック式の構造を備えるノック式の多機能電子ペンの場合である。
【0086】
図7は、上述した第1の実施形態の多機能電子ペン1に用いた電子ペン本体部3と同様の構成の電子ペン本体部3Pと、ボールペンの替え芯4と同様の構成のボールペンの芯4Bk,4Rdとを用いて構成するノック式の多機能電子ペン1Pの外観を示す構成図である。この
図7の例では、多機能電子ペン1Pの外部筐体2Pが透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0087】
多機能電子ペン1Pの外部筐体2Pは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構と同一の構成を備えている。市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構をそのまま用いてもよい。この外部筐体2P内には、この例では、この実施形態の電子ペン本体部3Pと、黒色のインクのボールペンの替え芯4Bkと、赤色のインクのボールペンの替え芯4Rdとが収納されている。電子ペン本体部3Pは、後述するノック棒6Eとの嵌合部が異なるだけで、
図2(B)及び図(3)(A)に示した電子ペン本体部3と同様の構成を備える。ボールペンの替え芯4Bk、4Rdは、いずれも
図2(A)に示したボールペンの替え芯4と同様の構成を有するものである。以下の説明においては、上述した第1の実施形態の電子ペン本体部3及びボールペンの芯4と同一部分には、同一の参照符号を付す。
【0088】
多機能電子ペン1Pのノック機構には、電子ペン本体部3Pが嵌合されるノック棒6Eと、黒色のインクのボールペンの芯4Bkが嵌合されるノック棒6Bkと、赤色のインクのボールペンの芯4Rdが嵌合されるノック棒6Rdとが備えられている。
【0089】
ノック棒6Eが、ペン先側にスライド移動されることで、
図7(B)に示すように、電子ペン本体部3Pの芯体34のペン先部34aと、芯体ガイド部33b及び本体部品収納部33cからなる内部筐体33のペン先側部が外部筐体2Pの開口2Paから突出する。これにより、フェライトコア32に巻回されたコイル31及びキャパシタからなる共振回路が、位置検出装置200のセンサと電磁誘導により結合して、相互に信号を送受することができるようにされる。
【0090】
この場合に、この実施形態では、このように電子ペン本体部3Pのペン先側が外部筐体2Pの開口2Paから突出する状態のときには、電子ペン本体部3Pの内部筐体33内に収納されているコイル31の後端側の端部及びコイル31が巻回されたフェライトコア32の後端側のコイル非巻回部の端縁と、ボールペンの替え芯4Bk及び4Rdのペン先部とが、それぞれ距離ΔL3以上及び距離ΔL4以上離間するように構成されている。すなわち、ノック棒6Eのスライド移動距離は、電子ペン本体部3Pの内部筐体33内に収納されているコイル31の後端側の端部及びコイル31が巻回されたフェライトコア32の後端側のコイル非巻回部の端縁と、ボールペンの替え芯4Bk及び4Rdのペン先部とが、それぞれ距離ΔL3以上及び距離ΔL4以上離間するような距離とされている。
【0091】
したがって、この第2の実施形態の多機能電子ペン1Pにおいても、電子ペン本体部3Pのペン先側が外部筐体2Pの開口2Paから突出する状態とされる電子ペン本体部3Pの使用時には、ボールペンの芯4Bk及び4Rdの金属製のペン先部の影響が軽減されて、共振回路の共振周波数は、ほぼ調整された通りとなるので、位置検出装置200では、電子ペン本体部3Pによる指示位置の検出を良好に行うことができると共に、筆圧のも適切に検出することが可能となる。
【0092】
なお、ノック棒6Bkが、ペン先側にスライド移動されることで、ボールペンの芯4Bkのペン先部が突出して黒色のインクで筆記が可能にされる。また、同様に、ノック棒6Rdが、ペン先側にスライド移動されることで、ボールペンの替え芯4Rdのペン先部が突出して赤色のインクで筆記が可能にされる。
【0093】
図7に示す多機能電子ペン1Pの場合、電子ペン本体部3P、ボールペンの替え芯4Bk、4Rdのそれぞれは、多機能電子ペン1Pの外部筐体2P内において軸心を囲むように軸心の周囲に位置するようにして、外部筐体2P内に収納される。
【0094】
このため、電子ペン本体部3P、ボールペンの芯4Bk、4Rdのそれぞれは、ノック棒6E,6Bk、6Rdによるスライド移動に応じて、外部筐体2Pの内部においては、斜めの方向から外部筐体2Pの開口2Paに向かって移動することになる。このため、電子ペン本体部3P、ボールペンの芯4Bk、4Rdのそれぞれは、そのペン先が外部筐体2Pと接触しやすくなる。
【0095】
しかし、
図7に示した多機能電子ペン1Pの場合にも、上述した実施の形態の筆記具である多機能電子ペン1の場合と同様に、電子ペン本体部3Pの芯体34やフェライトコア32は、内部筐体33に保護されて、外部筐体2Pの開口2Paの周囲部分に引っかかることなく移動し、突出する。これにより、上述した実施の形態の電子ペン本体部3Pを、
図7に示した構成のノック式の多機能ペンに適用した場合であっても、芯体34やフェライトコア32が内部筐体33により保護されるので、損傷したり、変形したりすることがないようにできる。しかも、芯体34が、外部筐体2Pの開口2Paの周囲部分と接触した状態が生じることがないので、外部筐体2Pの開口2Paの周囲部分が芯体34の摺動移動の障害になることがなく、適切に筆圧の検出も可能である。
【0096】
なお、
図7に示したノック式の多機能電子ペンの場合にも、電子ペン本体部3Pと、これに対応する押し出し棒との接続部分は、自在継手の構成することによって、電子ペン本体部3Pが開口2Paに向って斜めに移動する場合にも、大きな負荷がかかることなく移動させることができる。
【0097】
[その他の実施形態または変形例]
なお、上述の実施形態では、切替機構部により電子ペン本体部と切り替えられる機能部材はボールペンの替え芯としたが、カートリッジやリフィルの構成のシャープペンシル機能部材であってもよい。
【0098】
また、切替機構部により電子ペン本体部と切り替えられる機能部材は、共振回路の共振周波数に影響を及ぼす、先端に金属を有する部材としたが、共振回路の共振周波数に影響を及ぼす、先端に磁性体を有する部材である場合にも、この発明は適用可能である。
【0099】
また、切替機構部により電子ペン本体部と切り替えられる機能部材はボールペンの替え芯やカートリッジやリフィルの構成のシャープペンシルなどの筆記具に限られるものではなく、棒状の部材で先端が金属や磁性体材料からなるものであれば、どのようなものでもよい。
【0100】
なお、上述の実施形態では、電子ペン本体部は、位置検出装置からの電磁波を共振回路で受信し、その受信した電磁波に基づいた電磁波を、位置検出装置に帰還するようにしたものとした。しかし、電磁誘導方式の電子ペン本体部は、このような構成のものに限らず、電子ペン本体部に信号発生回路を備え、その信号発生回路からの信号を、共振回路を通じて、位置検出装置に送信する構成のものであってもよい。