(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る標本観察装置の実施形態及び実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
本実施形態の標本観察装置は、光源ユニットと、照明光学系と、検出光学系と、光検出素子と、画像処理装置と、を備え、照明光学系と検出光学系とは、標本を挟んで対向して配置され、光源ユニットから出射した光は、照明光学系に入射し、照明光学系によって、照明光学系と検出光学系との間に光スポットが形成され、光源ユニットから光検出素子までの光路中に、走査手段が配置され、走査手段は、光スポットと標本とを相対移動させ、照明光学系と検出光学系の少なくとも一方に光学部材が配置され、照明光学系と検出光学系は、照明光学系の瞳の像が検出光学系の瞳位置に形成されるように配置され、照明光学系の瞳の像は、標本で生じた屈折によって、検出光学系の瞳に対して偏心し、照明光学系、検出光学系及び光学部材は、偏心によって、検出光学系の瞳を通過する光量が変化するように構成され、画像処理装置は、光検出素子の検出結果から、標本の画像を生成することを特徴とする。
【0014】
図1は、本実施形態の標本観察装置を示す図である。標本観察装置1は、光源ユニット2と、照明光学系3と、検出光学系4と、光検出素子5と、画像処理装置6と、を備える。標本観察装置1では、照明光学系3と検出光学系4とは、標本7を挟んで対向して配置されている。
【0015】
光源ユニット2は、点光源、又は、面光源を有する。点光源としては、例えば、レーザがある。面光源としては、例えば、LED、水銀ランプ、キセノンランプがある。
【0016】
面光源は、微小開口と共に用いられる。微小開口としては、例えば、ピンホールがある。面光源と微小開口の組み合わせによって、点光源から出射した光と実質的に同じ光が、光源ユニット2から出射する。
【0017】
光源ユニット2から出射した光(以下、「照明光」という)は、光線分離手段10に入射する。光線分離手段10では、入射した照明光が、透過光と反射光とに分かれて出射する。2つの光に分ける方法としては、光強度による分割、偏光方向の違いによる分割、波長の違いによる分割がある。
【0018】
光線分離手段10で反射された照明光は、照明光学系3に入射する。照明光学系3によって、照明光学系3と検出光学系4との間に光スポットが形成される。照明光学系3と検出光学系4との間には、標本7が配置されている。光スポットの位置に標本7の位置を一致させることで、標本7を光スポットで照明することができる。
【0019】
光スポットが形成されるためには、照明光が、点光源から出射した光であれば良い。上述のように、光源ユニットで2から出射する光は、点光源から出射した光である。よって、標本観察装置1では、光スポットが形成される。
【0020】
標本観察装置1では、顕微鏡光学系が用いられている。よって、標本観察装置1では、照明光学系3として、顕微鏡対物レンズ8(以下、「対物レンズ8」という)が用いられている。
【0021】
上述のように、標本7は光スポットで照明される。この場合、標本7上の1点しか照明されない。標本7の全体を照明するためには、光スポットと標本7を相対移動させなくてはならない。光源ユニット2から光検出素子5までの光路中に、走査手段を配置することで、光スポットと標本7を相対移動させることができる。
【0022】
標本観察装置1では、走査手段として、光源ユニット2と照明光学系3との間の光路に、光走査ユニット9が配置されている。光走査ユニット9は、2つの光偏向素子で構成されている。光偏向素子としては、ガルバノメータスキャナ、ポリゴンスキャナ、音響光偏向素子がある。
【0023】
光走査ユニット9では、光走査ユニット9に入射した光が、直交する2方向、例えば、X方向とY方向に偏向される。このように、光走査ユニット9で、走査パターンが生成される。
【0024】
光走査ユニット9と対物レンズ8との間には、瞳投影光学系11が配置されている。瞳投影光学系11は、レンズ12とレンズ13とで構成されている。瞳投影光学系11によって、光走査ユニット9と対物レンズ8の瞳とが共役になっている。
【0025】
2つの光偏向素子が近接している場合、一方の偏向素子の偏向面から他方の偏向素子の偏向面までの間の任意の位置が、対物レンズ8の瞳位置と共役になっている。2つの偏向素子の間にレンズが配置されている場合、一方の偏向素子の偏向面と他方の偏向素子の偏向面の両方が、対物レンズ8の瞳と共役になっている。
【0026】
光走査ユニット9で生成された走査パターンは、対物レンズ8の瞳に投影される。この走査パターンに基づいて、光スポットが標本7上を移動していく。このとき、光スポットだけが移動し、標本7は移動しない。
【0027】
このように、標本観察装置1では、光軸と直交する面内で、光スポットと標本7とが相対移動する。その結果、離散的又は連続的に、標本を光スポットで走査することができる。
【0028】
標本7を透過した光(以下、「結像光」という)は、検出光学系4に入射する。上述のように、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系と検出光学系の少なくとも一方に光学部材が配置されていれば良い。標本観察装置1では、光学部材15が検出光学系4に配置されている。
【0029】
検出光学系4は、瞳投影レンズ14、光学部材15、レンズ16、及びレンズ17を有する。瞳投影レンズ14として、例えば、顕微鏡のコンデンサレンズを用いることができる。
【0030】
検出光学系4に入射した結像光は、瞳投影レンズ14と光学部材15を通過して、レンズ16に入射する。レンズ16に入射した結像光は、レンズ17を通過して、光検出素子5の受光面に到達する。
【0031】
標本観察装置1では、瞳投影レンズ14の瞳位置と光検出素子5の位置とは、共役になっていない。瞳投影レンズ14の瞳位置と光検出素子5の位置とを共役にしても良い。上述のように、光走査ユニット9と対物レンズ8の瞳位置とが共役になっている。更に、対物レンズ8の瞳位置と瞳投影レンズ14の瞳位置とが共役になっている。瞳投影レンズ14の瞳位置と光検出素子5の位置とを共役にすることで、光走査ユニット9と光検出素子5の位置とを共役にすることができる。
【0032】
光走査ユニット9では、照明光の偏向が行われる。この偏向では、照明光と光軸とのなす角が変化する。ただし、光軸と直交する面内では、照明光の位置は変化しない。光走査ユニット9と光検出素子5の位置とが共役にしておくと、光検出素子5では、受光面に入射する結像光の入射角度は変化するが、受光面における入射位置は変化しなくなる。
【0033】
光検出素子5では、光電変換が行われる。結像光は電気信号に変換され、これにより、標本7の画像信号が生成される。標本7の画像信号は、画像処理装置6に入力される。画像処理装置6では、様々な処理が行われる。
【0034】
標本観察装置1では、照明光学系3と検出光学系4は、照明光学系3の瞳の像が検出光学系4の瞳位置に形成されるように配置されている。よって、対物レンズ8の瞳の像が、瞳投影レンズ14の瞳位置に形成される。このように、標本観察装置1では、対物レンズ8の瞳位置と瞳投影レンズ14の瞳位置とが共役になっている。
【0035】
よって、標本観察装置1では、照明光学系3の瞳の像は、標本7で生じた屈折によって、検出光学系4の瞳に対して偏心する。そして、照明光学系3、検出光学系4及び光学部材15は、偏心によって、検出光学系4の瞳を通過する光量が変化するように構成されている。
【0036】
このように、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、照明光学系の像のずれの変化に変換される。そして、照明光学系の像のずれの変化によって、検出光学系の瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0037】
しかも、本実施形態の標本観察装置では、変調コントラスト法のように変調器を用いる必要がない。そのため、変調器に対する開口部材の位置調整が不要になる。その結果、開口部材の位置調整が簡素になる。更に、変調器を用いないことで、対物レンズは明視野観察法の対物レンズを使用できる。よって、同じ対物レンズで、様々な観察方法(例えば、明視野観察や、蛍光観察や、偏光観察等の観察方法)が手軽に行える。
【0038】
本実施形態の標本観察装置は、標本からの放射光を検出するための第2の光検出素子を更に備え、第2の光検出素子で蛍光の検出を行うことが好ましい。
【0039】
標本7に照明光が照射されると、標本7で反射光が生じる。また、標本が蛍光染色されている場合、標本7から蛍光が発生する。よって、これらの光を用いて光学像を形成することができる。
【0040】
反射光や蛍光の一部は、照明光学系3に入射する。照明光学系3に入射した光は、瞳投影光学系11と光走査ユニット9を通過して、光線分離手段10に入射する。
【0041】
光線分離手段10に入射した光は、光線分離手段10を通過して、共焦点レンズ18で集光される。集光位置には、共焦点ピンホール19が配置されている。共焦点ピンホール19を通過した光は、光検出器20で検出される。
【0042】
光検出器20は、第2の光検出素子である。光検出器20では、標本7から反射した光や蛍光が検出される。よって、標本7の反射像や標本7の蛍光像を得ることができる。
【0043】
光検出器20では、光電変換が行われる。共焦点ピンホール19を通過した光は電気信号に変換され、これにより、標本7の画像信号が生成される。この時の画像信号は、共焦点画像の信号である。
【0044】
本実施形態の標本観察装置では、光検出器20を備えているので、一度の照明で、陰影のある標本像と蛍光像とを、観察することが可能である。また、陰影のある標本像の画像と蛍光像の画像とを重ね合わせることで、2つの像を同時に観察することができる。この場合、2つの画像を正確に重ね合わせることが可能である。
【0045】
標本観察装置1では、走査手段として、2つの光偏向素子が用いられている。しかしながら、走査手段はこれに限られない。別の走査手段について説明する。
【0046】
第1例の走査手段について説明する。
図2Aは、第1例の走査手段を示す図である。第1例の走査手段では、一方の方向の走査を光スポットの移動で行い、他方の方向の走査をステージの移動で行う。よって、第1例の走査手段では、光スポットと標本が共に移動する。
【0047】
第1例の走査手段では、光源ユニットと照明光学系との間の光路に、光走査ユニットが配置されている。光走査ユニットは、1つの光偏向素子で構成されている。また、保持部材31上に、移動ステージ32が載置されている。標本は、移動ステージ32上に載置されている。
【0048】
第1例の走査手段では、光偏向素子によって、照明光30をX方向に移動させる。また、移動ステージ32によって、標本をY方向に移動させる。このようにすることで、離散的又は連続的に、標本を光スポットで走査することができる。
【0049】
第2例の走査手段について説明する。
図2Bは、第2例の走査手段を示す図である。第2例の走査手段では、一方の方向の走査と他方の方向の走査を、共にステージの移動で行う。よって、第2例の走査手段では、光スポットは移動せず、標本のみが移動する。
【0050】
第2例の走査手段では、保持部材31上に、移動ステージ32と移動ステージ33とが載置されている。標本は、移動ステージ33上に載置されている。光源ユニットと照明光学系との間の光路に、光走査ユニットは配置されていない。
【0051】
第2例の走査手段では、照明光30は移動しない。その代わりに、移動ステージ32によって標本をY方向に移動させると共に、移動ステージ33によって標本をX方向に移動させる。このようにすることで、離散的又は連続的に、標本を光スポットで走査することができる。
【0052】
第3例の走査手段について説明する。
図3は、第3例の走査手段を備えた標本観察装置を示す図である。
図1と同じ構成には、
図1と同じ番号を付し、説明は省略する。
【0053】
標本観察装置40は、光源ユニット41と、照明光学系3と、検出光学系4と、光検出素子5と、画像処理装置6と、を備える。標本観察装置40は、第3例の走査手段として、共焦点基板42を有する。共焦点基板42は、光源ユニット41と照明光学系3との間の光路に、配置されている。
【0054】
光源ユニット41は、点光源、又は、面光源を有する。光源ユニット41から出射した光は、点光源から出射した光と面光源から出射した光のどちらでも良い。ここでは、光源ユニット41から出射した光は、点光源から出射した光とする。
【0055】
光源ユニット41から出射した光は、コリメータレンズ44により、略平行な光となる。略平行になった光は、ビームスプリッタ45で反射されて、共焦点基板42に照射される。共焦点基板42は、モータ(不図示)によって、軸43の周りに回転可能になっている。
【0056】
図4は、共焦点基板の構造を示す図である。共焦点基板42は円形の平板であって、遮光部42aと透過部42bとを備えている。遮光部42aは不透明な部材、例えば、金属板で構成されている。透過部42bは金属板に形成された空隙(孔)である。
【0057】
共焦点基板42は、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されていても良い。遮光部42aは、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部42bには何も塗布されていない。よって、透過部42bはガラス板そのものである。
【0058】
透過部42bの大きさは、非常に小さい。よって、透過部42bからは、点光源から出射した光と実質的に同じ光が出射する。また、透過部42bは、複数形成されている。共焦点基板42に照射される光の径は、複数の透過部42bを含むように設定されている。そのため、共焦点基板42の複数の箇所から、点光源から出射した光と実質的に同じ光が出射する。
【0059】
共焦点基板42から出射した光は、結像レンズ46を通過して、対物レンズ8に入射する。対物レンズ8に入射した光は、標本7に照射される。標本観察装置40では、共焦点基板42の位置と標本7の位置とが共役になっている。そのため、標本7上に、複数の光スポットが生成される。
【0060】
上述のように、共焦点基板42は、軸43の周りに回転可能になっている。共焦点基板42を回転させると、標本7上に形成された複数の光スポットが移動する。その結果、連続的に、標本を光スポットで走査することができる。
【0061】
標本7を透過した光は、検出光学系4を介して、光検出素子5の受光面に入射する。標本観察装置40では、標本7上に、複数の光スポットが生成される。よって、光検出素子5の位置は、標本7の位置と共役になっている。
【0062】
標本7で反射された光や、標本7で発生した蛍光は、対物レンズ8、結像レンズ46を通過して、共焦点基板42に入射する。これらの光は、透過部42bとビームスプリッタ45を通過して、レンズ47で集光される。
【0063】
集光位置には、光検出器48が配置されている。レンズ47で集光された光は、光検出器48で検出される。透過部42bは、ピンホールと見なすことができる。よって、光検出器48から、共焦点画像の信号が得られる。
【0064】
光学部材15について説明する。光学部材15は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有する開口部材である。開口部材の構造について説明する。
【0065】
開口部材の構成を
図5A、
図5Bに示す。
図5Aは不透明な部材で構成された開口部材を示し、
図5Bは透明な部材で構成された開口部材を示している。
【0066】
図5Aに示すように、開口部材50は、遮光部50a1と透過部50bとを有する。更に、開口部材50は遮光部50a2を有する。遮光部50a1と50a2は不透明な部材、例えば、金属板で構成されている。透過部50bは金属板に形成された空隙(孔)である。
【0067】
開口部材50では、遮光部50a1を保持するために、遮光部50a1と遮光部50a2との間に接続部50a3が3つ形成されている。そのため、透過部50bは3つに分かれている。透過部50bの各々の形状は略扇状(離散的な輪帯形状)になっている。なお、接続部50a3の数は3つに限定されない。
【0068】
開口部材50は、遮光部50a1が照明光学系の光軸を含むように配置されている。また、遮光部50a1の外縁50cは、照明光学系の光軸から所定の距離だけ離れた位置にある。よって、開口部材50に入射した照明光は、光束の中心が遮光部50a1によって遮光される。ここで、遮光部50a1と透過部50bとの境が、遮光部50a1の外縁50cになる。
【0069】
遮光部50a2は、遮光部50a1や透過部50bよりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。ここで、透過部50bと遮光部50a2との境が、遮光部50a2の内縁50dになる。
【0070】
透過部50bは、遮光部50a1の外縁50cよりも外側に位置している。ここで、遮光部50a1と透過部50bとの境が、透過部50bの内縁になる。また、透過部50bと遮光部50a2との境が、透過部50bの外縁になる。よって、50cは、遮光部50a1の外縁と透過部50bの内縁とを示し、50dは、遮光部50a2の内縁と透過部50bの外縁とを示している。
【0071】
遮光部50a1、50a2及び接続部50a3では、表面の反射率が低く抑えられている。よって、遮光部50a1、50a2及び接続部50a3では、光の反射がほとんど生じない。開口部材50に金属板が用いられた場合、遮光部50a1、50a2及び接続部50a3には、反射防止処理、例えば、黒メッキ処理が施されている。
【0072】
結像光は、光学部材15、例えば、開口部材50に入射する。以下、50a1を例に説明する。結像光の一部は、遮光部50a1に照射される。この照射によって、遮光部50a1では、反射光が生じる。
【0073】
結像光は標本7を透過した光なので、光強度が大きい。遮光部50a1の反射率が高いと、遮光部50a1で発生した反射光の光強度も大きくなる。この場合、強度の大きな反射光が標本7面に戻される。この光はフレアになる。
【0074】
更に、時間的コヒーレンスの高い光源、例えば、レーザを用いた場合、標本面で、照明光と遮光部50a1からの反射光とが干渉する。その結果、標本7面に干渉縞が発生する。そのため、標本7の像に干渉縞の影響がでてしまう。遮光部50a1における反射率を低くすることで、遮光部50a1で生じる反射光の光強度を小さくすることができる。その結果、フレアの発生や干渉縞の発生を抑制することができる。
【0075】
また、
図5Bに示すように、開口部材50’は、遮光部50’a1と透過部50’bとを有する。更に、開口部材50’は遮光部50’a2を有する。遮光部50’a1、50’a2及び透過部50’bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部50’a1と50’a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部50’bには何も塗布されていない。よって、透過部50’bはガラス板そのものである。
【0076】
開口部材50’では、透過部50’bの形状は円環になっている。これは、遮光部50’a2を保持する必要が無いからである。そのため、開口部材50’では、遮光部50’a1と遮光部50’a2との間に接続部は形成されていない。
【0077】
なお、開口部材50’と開口部材50との主な違いは、材料と接続部の有無である。よって、遮光部50’a1、50’a2及び透過部50’bについての詳細な説明は省略する。
【0078】
なお、開口部材50の遮光部50a2と接続部50a3や開口部材50’の遮光部50’a2は、必ずしも必要ではない。例えば、照明光の光束径(直径)を、透過部50bの外縁や透過部50’bの外縁と一致させるようにすれば良い。
【0079】
以上のように、開口部材50、50’は遮光部50a1、50’a1と透過部50b、50’bとを備えている。よって、開口部材50、50’からは、略円環状又は円環状(以下、適宜、「円環状」という)の照明光が出射する。
【0080】
本実施形態の標本観察装置では、検出光学系が光学部材を有し、光学部材は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有する開口部材であって、開口部材は、遮光部又は減光部が検出光学系の光軸を含むように配置され、透過部は、遮光部又は減光部の外縁よりも外側に位置し、透過部の内縁と透過部の外縁との間に、照明光学系の瞳の外縁の像が形成されることが好ましい。
【0081】
光学部材15によって生じる作用について説明する。本実施形態の標本観察装置では、照明光学系と検出光学系の少なくとも一方に光学部材が配置されている。ここでは、検出光学系に光学部材が配置されている場合について説明する。光学部材には、
図5Bに示した開口部材50’が用いられている。
【0082】
開口部材50’は、遮光部50’a1と、遮光部50’a2と、透過部50’bと、を有する。開口部材50’は、遮光部50’a1が検出光学系4の光軸を含むように配置されている。透過部50’bは、遮光部50’a1の外縁よりも外側に位置している。
【0083】
図6Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図6Bは照明光学系の瞳の像と開口部材との関係を示す図である。
図6Aと
図6Bは、標本が存在しない場合を示している。標本が存在しない場合には、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合が含まれる。
【0084】
図7Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図7Bは照明光学系の瞳の像と開口部材との関係を示す図である。
図7Aと
図7Bは、標本が存在する場合を示している。標本が存在する場合とは、標本の表面が傾斜している(非平坦になっている)場合である。よって、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合は、標本が存在する場合に含まれない。
【0085】
標本が存在しない場合、
図6Aに示すように、保持部材55へ入射する光と保持部材55から出射する光とは、光の進行方向が同じになる。その結果、瞳投影レンズ14の瞳位置、すなわち、光学部材15の位置に形成される対物レンズの瞳の像は、
図6Bに示すようになる。なお、符号58で示す円(円周)は対物レンズの外縁像で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳の像になる。
【0086】
図6Bに示すように、透過部56の形状は円環で、遮光部57の形状は円で、外縁像58の形状は円である。そして、透過部56と、遮光部57と、外縁像58とが同心状になっている。また、透過部56の中心と、遮光部57の中心と、外縁像58の中心とは一致している。
【0087】
ここで、透過部56の中心とは、透過部の外縁56aを形作る円の中心のことである(透過部56は円環なので、透過部56の中心は、透過部の内縁56bを形作る円の中心でもある)。
【0088】
外縁像58は、透過部の内縁56bよりも外側(光軸から離れる方向)に位置すると共に、透過部の外縁56aよりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。このように、本実施形態の標本観察装置では、透過部の内縁56bと透過部の外縁56aとの間に、対物レンズの瞳の外縁像58が形成される。
【0089】
ここで、外縁像58よりも外側の光は、対物レンズ8から出射しないので、透過部56を通過しない。よって、透過部56を通過する光束の領域は、透過部の内縁56bから外縁像58までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
【0090】
一方、標本が存在する場合、
図7Aに示すように、保持部材55へ入射する光と保持部材55から出射する光とは、光の進行方向が異なる。その結果、光学部材15の位置に形成される対物レンズの瞳の像は、
図7Bに示すようになる。
図7Bにおいても、符号58で示す円(円周)は外縁像で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳の像になる。
【0091】
図7Bに示すように、透過部56の形状は円環で、遮光部57の形状は円で、外縁像58の形状は円である。ただし、透過部56及び遮光部57と、外縁像58とは同心状になっていない。また、透過部56の中心及び遮光部57の中心と、外縁像58の中心とは一致していない。すなわち、透過部56の中心及び遮光部57の中心に対して、外縁像58の中心は紙面内の左方向にずれている。
【0092】
図7Bにおいても、外縁像58よりも外側の光は、対物レンズ8から出射しないので、透過部56を通過しない。よって、透過部56を通過する光束の領域は、透過部の内縁56bから外縁像58までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
【0093】
ここで、外縁像58は、透過部の内縁56bよりも外側に位置している。言い換えると、
図7Bでは、遮光部57は、外縁像58の内側に位置している。これは、標本の表面の傾斜が小さいからである。一方、標本が存在しない場合でも、遮光部57は、外縁像58の内側に位置している。そのため、標本が存在する場合であっても、標本の表面の傾斜が小さいと、標本像の明るさは、標本が存在しない場合と同じになる。
【0094】
しかしながら、標本の表面の傾斜が更に大きくなると、透過部56の中心に対する外縁像58の中心のずれが更に大きくなる。この場合、外縁像58の一部が、透過部の内縁56bよりも内側に位置するようになる。また、外縁像58の一部が、透過部の外縁56aよりも外側に位置するようになる。言い換えると、外縁像58の一部が、遮光部57の内側に位置する。その結果、透過部56を通過する光束の領域は大きく変化する。すなわち、標本が存在しない場合と、標本像の明るさが異なる。
【0095】
このように、標本観察装置1では、照明光学系の瞳の偏心した量に応じて、光学部材15を通過する光量が増加する。
【0096】
以上のように、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化が、照明光学系の瞳の像のずれの変化に変換される。そして、照明光学系の瞳の像のずれの変化によって、検出光学系に設けた透過部を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を結像光の明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0097】
本実施形態の標本観察装置では、照明光学系が対物レンズを有し、検出光学系が瞳投影レンズを有し、以下の条件式(1)を満たすことが好ましい。
(Rill×β−R0)/(R1−Rill×β)<1 (1)
ここで、
R0は、検出光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R1は、検出光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Rillは、照明光学系の瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0098】
条件式(1)を満足することで、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0099】
なお、(Rill×β−R0)が大きくなりすぎると、条件式(1)を満足しなくなる。この場合、遮光部の大きさが小さくなりすぎる。そのため、標本像の明るさが変化しない状態が長くなってしまう。この場合、標本における細やかな形状の変化を、明暗の変化として検出することが難しくなる。
【0100】
また、(R1−Rill×β)が小さくなり過ぎると、条件式(1)を満足しなくなる。この場合、透過部の外縁から外縁像までの間隔が狭くなりすぎる。照明光学系の瞳の像のずれが大きくなると、外縁像よりも内側に円環状の遮光部(例えば、
図5Bの遮光部50b’)が位置するようになる。そのため、対物レンズの瞳を通過する光束が少なくなる。その結果、標本像が暗くなる。
【0101】
本実施形態の標本観察装置では、照明光学系が対物レンズを有し、検出光学系が瞳投影レンズを有し、以下の条件式(2)、(3)を満たすことが好ましい。
0.7≦R0/(Rill×β)<1 (2)
1<R1/(Rill×β)≦2 (3)
ここで、
R0は、検出光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R1は、検出光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
Rillは、照明光学系の瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0102】
条件式(2)の下限値を下回ると、透過部の内縁から外縁像までの間隔が広くなり過ぎる。この場合、照明光学系の瞳の像のずれが0の場合と0でない場合とで、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量に差がつきにくくなくなる。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。その結果、陰影のある標本像を得ることが困難になる。あるいは、標本像のコントラストが悪くなってしまう。
【0103】
条件式(2)の上限値を上回ると、透過部が、常に対物レンズの瞳の像の外側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することができない。よって、条件式(2)の上限値を上回ることはない。
【0104】
条件式(3)の下限値を下回ると、透過部が、対物レンズの瞳の像の内側に位置する。そのため、標本における形状の変化を、明暗の変化として検出することが困難になる。よって、条件式(3)の下限値を下回ることはない。
【0105】
条件式(3)の上限値を上回らないようにすることで、透過部よりも外側の部分を通過する光束を少なくできる。そのため、フレアやゴーストの発生を防止できる。
【0106】
なお、条件式(2)に代えて、以下の条件式(2’)を満足すると良い。
0.8≦R0/(Rill×β)<1 (2’)
さらに、条件式(2)に代えて、以下の条件式(2”)を満足するとなお良い。
0.9≦R0/(Rill×β)<1 (2”)
【0107】
なお、条件式(3)に代えて、以下の条件式(3’)を満足すると良い。
1<R1/(Rill×β)≦1.5 (3’)
さらに、条件式(3)に代えて、以下の条件式(3”)を満足するとなお良い。
1<R1/(Rill×β)≦1.3 (3”)
【0108】
本実施形態の標本観察装置は、以下の条件式(4)を満たすことが好ましい。
Tin<Tout (4)
ここで、
Tinは、透過部の内縁近傍における透過率、
Toutは、透過部の外側近傍における透過率、
である。
【0109】
条件式(4)を満足することで、照明光学系の瞳の像のずれが変化しても光束の量Iが変化しない状態を少なくすることができる。その結果、標本におけるより細やかな形状の変化を、明暗の変化として検出することができる。
【0110】
以上、検出光学系に光学部材が配置されている場合について説明した。ただし、光学部材は、照明光学系に配置されていても良い。照明光学系に光学部材が配置されている場合について説明する。光学部材には、
図5Bに示した開口部材50’が用いられている。
【0111】
開口部材50’は、遮光部50’a1と、遮光部50’a2と、透過部50’bと、を有する。開口部材50’は、遮光部50’a1が検出光学系4の光軸を含むように配置されている。透過部50’bは、遮光部50’a1の外縁よりも外側に位置している。
【0112】
図8Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図8Bは検出光学系の瞳と開口部材の像との関係を示す図、
図8Cは検出光学系の瞳を通過する光束の様子を示す図である。
図8A、
図8B、
図8Cは、標本が存在しない場合を示している。標本が存在しない場合には、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合が含まれる。
【0113】
図9Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図9Bは検出光学系の瞳と開口部材の像との関係を示す図、
図9Cは検出光学系の瞳を通過する光束の様子を示す図である。
図9A、
図9B、
図9Cは、標本が存在する場合を示している。標本が存在する場合とは、標本の表面が傾斜している(非平坦になっている)場合である。よって、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合は、標本が存在する場合に含まれない。
【0114】
標本が存在しない場合、
図8Aに示すように、保持部材55へ入射する光と保持部材55から出射する光とは、光の進行方向が同じになる。その結果、瞳投影レンズ14の瞳位置に形成される開口部材の像は、
図8Bに示すようになる。なお、符号62で示す円(円周)は瞳投影レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が瞳投影レンズの瞳になる。
【0115】
図8Aに示すように、透過部の像60の形状は円環で、遮光部の像61の形状は円で、外縁62の形状は円である。そして、透過部の像60と、遮光部の像61と、外縁62とが同心状になっている。また、透過部の像60の中心と、遮光部の像61の中心と、外縁62の中心とは一致している。遮光部の像61は、例えば、開口部材50や開口部材50’における遮光部50a1や50’a1の像である。
【0116】
ここで、透過部の像60の中心とは、透過部の外縁の像60aを形作る円の中心のことである(透過部の像60は円環なので、透過部の像60の中心は、透過部の内縁の像60bを形作る円の中心でもある)。
【0117】
そして、透過部の内縁の像60bは、外縁62よりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。また、透過部の外縁の像60aは、外縁62の外縁よりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。このように、本実施形態の標本観察装置では、外縁62よりも内側に、透過部の内縁の像60bが形成され、外縁62よりも外側に、透過部の外縁の像60aが形成される。
【0118】
ここで、外縁62よりも外側の光は、瞳投影レンズの瞳を通過しない(瞳投影レンズから出射しない)。よって、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の領域は、
図8Cに示すように、透過部の内縁の像60bから外縁62までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
【0119】
一方、標本が存在する場合、
図9Aに示すように、保持部材55へ入射する光と保持部材55から出射する光とは、光の進行方向が異なる。その結果、瞳投影レンズの瞳位置に形成される開口部材の像は、
図9Bに示すようになる。なお、
図9Bにおいても、符号62で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
【0120】
図9Bに示すように、透過部の像60の形状は円環で、遮光部の像61の形状は円で、外縁62の形状は円である。ただし、透過部の像60及び遮光部の像61と、外縁62とは同心状になっていない。また、透過部の像60の中心及び遮光部の像61の中心と、外縁62の中心とは一致していない。すなわち外縁62の中心に対して、透過部の像60の中心及び遮光部の像61の中心は紙面内の左方向にずれている。
【0121】
また、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の領域は、
図9Cに示すように、透過部の内縁の像60bから外縁62までの間の領域になる。そして、この領域全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
【0122】
ここで、
図9Bでは、透過部の内縁の像60bは、外縁62の内側に位置している。言い換えると、
図9Bでは、遮光部の像61は、外縁62の内側に位置している。これは、標本の表面の傾斜が小さいからである。一方、標本が存在しない場合でも、遮光部の像61は、外縁62の内側に位置している。そのため、標本が存在する場合であっても、標本の表面の傾斜が小さいと、標本像の明るさは、標本が存在しない場合と同じになる。
【0123】
しかしながら、標本の表面の傾斜が更に大きくなると、瞳投影レンズの瞳の中心に対する透過部の像60の中心のずれ(以下、適宜、「透過部の像のずれ」という)が更に大きくなる。この場合、後述(
図10B)するように、透過部の内縁の像60bの一部が、外縁62よりも外側に位置するようになる。また、透過部の外縁の像60aの一部が、外縁62よりも内側に位置するようになる。言い換えると、遮光部の像61の一部が、外縁62の外側に位置する。その結果、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の領域は大きく変化する。すなわち、標本が存在しない場合と、標本像の明るさが異なる。
【0124】
このように、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化(傾斜の変化)が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0125】
しかも、本実施形態の標本観察装置では、変調コントラスト法のように変調器を用いる必要がない。そのため、変調器に対する開口部材の位置調整が不要になる。その結果、開口部材の位置調整が簡素になる。更に、変調器を用いないことで、対物レンズは明視野観察法の対物レンズを使用できる。よって、同じ対物レンズで、様々な観察方法(例えば、明視野観察や、蛍光観察や、偏光観察等の観察方法)が手軽に行える。
【0126】
照明光学系に光学部材が配置されている場合、瞳投影レンズの瞳に対して、光学部材の像、すなわち、開口部材の像がずれる。ずれ量Δを、瞳投影レンズの瞳に対する開口部材の像のずれ量とし、面積Sを、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の面積とする。ずれ量Δを変化させると、面積Sも変化する。
図10Aは、ずれ量Δと面積Sとの関係を示すグラフである。
図10Bは、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれを示す図である。
【0127】
図10Aでは、R’0×β=0.97×RPL、R’1×β=1.15×RPLで、計算を行っている。ここで、
R’0は、照明光学系の光軸から透過部の内縁までの長さ、
R’1は、照明光学系の光軸から透過部の外縁までの長さ、
RPLは、瞳投影レンズの瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0128】
また、透過部の透過率は100%にしている。また、
図10Aにおいて、横軸の数値は、ずれ量Δを瞳投影レンズの瞳の半径RPLで規格化している。また、縦軸の数値は、ずれ量Δが0のときの面積(π(RPL
2−(R0×β)
2))で規格化している。
【0129】
なお、面積Sは瞳投影レンズの瞳を通過する光束の範囲を示している。よって、面積Sは光束の量Iに置き換えることができる。そこで、
図10Aでは、縦軸の変数としてIを用いている。
【0130】
標本が存在しない場合(あるいは、標本の表面が平坦な場合)、ずれ量Δは0である。この場合、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図10Bの(A)のようになる。よって、矢印Aで示すように、光束の量Iは1になる。
【0131】
次に、標本が存在する場合、ずれ量Δは0でない。ここで、標本の表面の傾斜が小さいと、瞳投影レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図10Bの(B)のようになる。しかしながら、
図10Bの(A)と
図10Bの(B)とでは、遮光部の像の位置は瞳投影レンズの瞳内において異なっているものの、どちらも、瞳投影レンズの瞳の外縁の内側に遮光部の像が位置している。そのため、矢印Bで示すように、光束の量Iは1になる。
【0132】
一方、標本の表面の傾斜が大きいと、瞳投影レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図10Bの(C)のようになる。この場合、遮光部の像の一部が瞳投影レンズの瞳の外側に位置する状態になる。そのため、矢印Cで示すように、光束の量Iは1よりも大きくなる。
【0133】
このように、本実施形態の標本観察装置では、矢印Bから矢印Cまでの間で、ずれ量Δの変化に応じて光束の量Iが変化する。そのため、本実施形態の標本観察装置によれば、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0134】
なお、「瞳投影レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成される」には、
図10Bの(B)で示すように、瞳投影レンズの瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が全部含まれる場合のみならず、
図10Bの(C)で示すように、透過部の内縁の像が一部含まれる場合も含まれる。
【0135】
本実施形態の標本観察装置では、光源と走査手段の間に、光束径を変化させる光学素子を配置されていることが好ましい。
【0136】
本実施形態の別の標本観察装置について説明する。
図11は、本実施形態の別の標本観察装置を示す図である。
図1と同じ構成には、
図1と同じ番号を付し、説明は省略する。
【0137】
標本観察装置70は、光源ユニット71と、光束径変更部材72と、を有する。標本観察装置70では、検出光学系4が光学部材15を有している。光学部材15は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有する開口部材である。
【0138】
標本観察装置70では、透過部の内縁と透過部の外縁との間に、照明光学系の瞳の外縁の像が形成される。よって、標本における形状の変化を、照明光学系の瞳の像のずれの変化に変換することができる。
【0139】
照明光は、照明光学系の瞳を通過する。以下の説明では、照明光学系の瞳の外縁を、照明光束の外縁に置き換えて説明する。標本における形状の変化が、照明光学系の瞳の像のずれの変化に変換されるためには、透過部の内縁と透過部の外縁との間に、照明光束の外縁の像が形成されれば良いことになる。
【0140】
標本観察装置70では、顕微鏡光学系が用いられている。よって、対物レンズ8として、乾燥系の顕微鏡対物レンズや、液浸系の顕微鏡対物レンズが用いられる。乾燥系の顕微鏡対物レンズが用いられた状態を第1の状態とし、液浸系の顕微鏡対物レンズが用いられた状態を第2の状態とする。
【0141】
第1の状態で、透過部の内縁と透過部の外縁との間に、照明光束の外縁の像が形成されているとする。第1の状態から第2の状態に変更すると、対物レンズ8が、乾燥系の顕微鏡対物レンズから液浸系の顕微鏡対物レンズに変わる。
【0142】
通常、液浸系の顕微鏡対物レンズの開口数は、乾燥系の顕微鏡対物レンズの開口数よりも大きい。そのため、光源ユニット71から出射する照明光束の径が、第1の状態における光束径のままだと、第2の状態では、照明光学系の瞳の外縁の像は、透過部の内縁と透過部の外縁との間に形成されなくなる。その結果、第2の状態では、標本における形状の変化を、照明光学系の瞳の像のずれの変化に変換することが困難になる。
【0143】
標本観察装置70では、光源ユニット71から光線分離手段10までの間の光路において、光束径変更部材72の光路への挿入が可能になっている。光束径変更部材72は、開口部を有する。開口部の大きさは、第1の状態において光源ユニット71から出射する照明光束の径よりも小さく設定されている。
【0144】
第1の状態から第2の状態への変更に伴い、光束径変更部材72を光路中に挿入する。これにより、光源ユニット71から出射する照明光束の径を、第1の状態における照明光束の径よりも小さくすることができる。これにより、第2の状態でも、照明光学系の瞳の外縁の像は、透過部の内縁と透過部の外縁との間に形成される。その結果、第2の状態でも、標本における形状の変化を、照明光学系の瞳の像のずれの変化に変換することが可能になる。
【0145】
以上、対物レンズ8が、乾燥系の顕微鏡対物レンズから液浸系の顕微鏡対物レンズに変わった場合について説明したが、これに限られない。照明光学系の開口数の変更に合わせて、光源ユニット71から出射する照明光束の径が変化できれば良い。また、検出光学系の開口数の変更に合わせて、光源ユニット71から出射する照明光束の径が変化できれば良い。
【0146】
このように、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系の開口数や検出光学系の開口数が変化しても、標本における形状の変化が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0147】
開口部材の変形例について説明する。
図12Aは透過部の透過率が連続的に変化している開口部材を示す図、
図12Bはずれ量Δと瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量Iとの関係を示すグラフである。
【0148】
図12Aに示すように、開口部材80は、遮光部81と、遮光部82と、透過部83とを有する。遮光部81、82及び透過部83は透明な部材、例えば、ガラス板で構成されている。遮光部81と82は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
図12Bに示すように、遮光部81の透過率と、遮光部82の透過率は、共に0%である。
【0149】
透過部83では、透過率が連続的に変化している。そのために、透過部83には、例えば、透過率が連続的に変化する反射膜(吸収膜)が形成されている。ここで、透過率が変化する方向は、中心から周辺(遮光部81側から遮光部82側)に向かう方向である。また、透過率は、中心から周辺に向かって、透過率が徐々に大きくなるように変化している。
【0150】
遮光部81の形状は円で、遮光部82の形状は円環である。透過部83の形状は円環である。
【0151】
開口部材80では、円周84が透過部83の内縁に該当する。また、円周85が透過部83の外縁に該当する。円周84と円周85では、円周上の各点から照明光学系の光軸までの距離は同じである。よって、R
0は、照明光学系の光軸から円周84までの長さになる。R
1は、照明光学系の光軸から円周85までの長さになる。
【0152】
遮光部82は、対物レンズの瞳の像の外縁を含むように形成されている。そのため、透過部83は、対物レンズの瞳の像の外縁よりも内側に位置する。このとき、透過部83は、少なくとも条件式(1)を満足するように形成されている。よって、標本が無色透明であっても、コントラストが高い陰影像を得ることができる。また、陰影の発生方向が限定されない。
【0153】
更に、開口部材80では、透過部における透過率が場所によって異なる。そして、開口部材80は、条件式(3)を満足する開口部材である。したがって、このような開口部材を用いた本実施形態の観察装置によれば、ずれ量Δの増大に伴って、透過率の大きい領域が対物レンズの瞳の像の外側に移動するため、
図12Bに示すように、ずれ量Δが変化したときの光束の量Iの変化を大きくすることができる。その結果、高い感度で標本の表面の傾斜を検出することができる。すなわち、標本における細やかな形状の変化を、明暗の変化として検出することができる。
【0154】
本実施形態の標本観察装置では、透過部は、照明光学系の光軸に対して非対称に配置されていることが好ましい。
【0155】
このような透過部を持つ開口部材について説明する。開口部材の構成を、
図13A、
図13Bに示す。
図13Aは透過部の外側に遮光部が形成されている開口部材示す図、
図13Bは透過部の外側に遮光部が形成されていない開口部材を示す図である。なお、遮光部の代わりに減光部を用いても良い。
【0156】
まず、開口部材90について説明する。
図13Aに示すように、開口部材90は、遮光部90a1と、遮光部90a2と、透過部90bと、を有する。なお、
図13Aでは、説明上、遮光部90a1と遮光部90a2とを区別して描いている。しかしながら、両者を区別しなくても良い。よって、遮光部90a1と遮光部90a2は単一の部材で構成されていても良い。
【0157】
開口部材90では、遮光部90a1と遮光部90a2は不透明な部材、例えば、金属板で構成されている。この場合、透過部90bは金属板に形成された空隙(孔)である。あるいは、遮光部90a1、90a2及び透過部90bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。この場合、遮光部90a1と遮光部90a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部90bには何も塗布されていない。よって、透過部90bはガラス板そのものである。
【0158】
遮光部90a1は、照明光学系の光軸AX
iを含むように形成されている。遮光部90a1の形状は、第1の外縁90cと第2の外縁90dとで規定される。第1の外縁90cの両端は、第2の外縁90dを介して繋がっている。
図13Aでは、第1の外縁90cは円周の一部で、第2の外縁90dは直線である。第1の外縁90cと第2の外縁90dとで示されるように、遮光部90a1の形状は円の一部を切り取った形状で、いわゆるDカット状になっている。
【0159】
透過部90bの形状は、外縁90eと内縁90fとによって規定される。外縁90eの両端は、内縁90fを介して繋がっている。
図13Aでは、外縁90eは円周の一部で、内縁90fは直線である。外縁90eと内縁90fとで示されるように、透過部90bの形状は円の一部を切り取った形状で、弓状になっている。
【0160】
遮光部90a2の形状は円環である。遮光部90a2は必ずしも設ける必要はないが、遮光部90a1よりも外側に遮光部90a2を設けることで、外縁90eがより明確になる。これにより、開口部材90に入射させる光束の径を外縁90eより大きくしても、開口部材90に入射した光束は、透過部90bを通過する際に外縁90eによって制限を受ける。
【0161】
そのため、開口部材90から出射する光束の最大径は、外縁90eによって決まる径になる。その結果、次に述べる開口部材90’に比べると、開口部材90に入射させる光束の径を、外縁90eに対して高い精度で一致させる必要がない。
【0162】
次に、開口部材90’について説明する。
図13Bに示すように、開口部材90’は遮光部90’a1を有する。開口部材90’では、開口部材90と同様に、遮光部90’a1は不透明な部材、例えば、金属板で構成することができる。あるいは、遮光部90’a1は透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成しても良い。遮光部90’a1は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
【0163】
遮光部90’a1は、検出光学系の光軸AX
iを含むように形成されている。遮光部90’a1の形状は、第1の外縁90’cと第2の外縁90’dとで規定される。第1の外縁90’cの両端は、第2の外縁90’dを介して繋がっている。
図13Bでは、第1の外縁90’cは円周の一部で、第2の外縁90’dは直線である。第1の外縁90’cと第2の外縁90’dとで示されるように、遮光部90’a1の形状は円の一部を切り取った形状で、いわゆるDカット状になっている。
【0164】
透過部90’bの形状は、外縁90’eと内縁90’fとによって規定される。外縁90’eの両端は、内縁90’fを介して繋がっている。
図13Bでは、外縁90’eは円周の一部で、内縁90’fは直線である。外縁90’eと内縁90’fとで示されるように、透過部90’bの形状は円の一部を切り取った形状で、弓状になっている。
【0165】
以上のように、透過部90bと透過部90’bの形状は、いずれも、円の一部を切り取った形状になっている。そのため、透過部90bと透過部90’bは、いずれも、照明光学系の光軸AX
iに対して非対称に配置されているということができる。
【0166】
なお、開口部材90’を金属板で構成する場合、透過部90’bは物理的に存在しない。そのため、透過部90’bの外縁が物理的に存在しなくなる。また、開口部材90’を透明な部材で構成する場合、透明部材の形状を遮光部90’a1の形状と同じにすると、透過部90’bは物理的に存在しない。そのため、透過部90’bの外縁が物理的に存在しなくなる。
【0167】
一方、透明な部材の形状を円にすると、透過部90’bが物理的に存在する。この場合、透明部材の縁が透過部90’bの外縁になるので、透過部90’bの外縁が物理的に存在する。しかしながら、透過部90’bは透明であるので、光学的には、開口部材90’を金属板で構成した場合と実質的に同じである。よって、透明な部材の形状を円にした場合も、透過部90’bの外縁が物理的に存在しているとは言い難い。
【0168】
そこで、開口部材90’を用いる場合は、開口部材90に入射させる光束の径を、第1の外縁90’cと一致させるようにすれば良い。この場合、光束の最も外側が透過部90’bの外縁になる。また、透過部90’bの内縁は第2の外縁90’dと同じである。以上のことから、光束の最も外側と第2の外縁90’dとを用いて、透過部90’bの形状を規定することができる。
【0169】
上述のように、本実施形態の標本観察装置では、照明光学系と検出光学系の少なくとも一方に光学部材が配置されている。よって、開口部材90や開口部材90’は、検出光学系に配置されていても良い。この場合、透過部は、検出光学系の光軸に対して非対称に配置されていることになる。
【0170】
開口部材90や開口部材90’によって生じる作用について説明する。ここでは、検出光学系に光学部材が配置されている場合について説明する。前述の開口部材50’を用いた例では、瞳投影レンズの瞳の位置での様子を説明した。以下の説明では、対物レンズの瞳の位置での様子について説明する。
【0171】
対物レンズの瞳と開口部材の像との関係について説明する。なお、以下の説明では、
図13Aに示す開口部材90と同じ構造を持つ開口部材が用いられているものとする。
【0172】
開口部材90において、第2の外縁90dあるいは内縁90fは、遮光部90a1と透過部90bとを区切る境界である。ここで、この境界に対して垂直な軸を第1の軸とし、境界と平行な軸を第2の軸とする。
図13Aでは、第1の軸は紙面内の左右方向の軸で、第2の軸は紙面内の上下方向の軸になる。以下の説明では、第1の軸と第2の軸を用いて説明する。
【0173】
図14Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図14Bは対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図、
図14Cは対物レンズの瞳を通過する光束の様子を示す図である。
図14Aでは、標本は存在していない。標本が存在しない場合には、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合が含まれる。
【0174】
図15Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図15Bは対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図、
図15Cは対物レンズの瞳を通過する光束の様子を示す図である。
図15Aでは、標本の表面の傾斜は右肩上がり、すなわち、標本の表面は第1の軸の左側から右側に向かって高くなっている。
【0175】
図16Aは標本位置における光の屈折の様子を示す図、
図16Bは対物レンズの瞳と開口部材の像との関係を示す図、
図16Cは対物レンズの瞳を通過する光束の様子を示す図である。
図16Aでは、標本の表面の傾斜は右肩下がり、すなわち、標本の表面は第1の軸の左側から右側に向かって低くなっている。
【0176】
標本が存在する場合とは、標本の表面が傾斜している(非平坦になっている)場合である。よって、標本は存在するものの、その表面が平坦になっている場合は、標本が存在する場合に含まれない。
【0177】
標本が存在しない場合、
図14Aに示すように、保持部材55へ入射する光と保持部材55から出射する光とは、光の進行方向が同じになる。その結果、対物レンズの瞳位置に形成される開口部材の像100は、
図14Bに示すようになる。なお、符号103で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
【0178】
図14Bに示すように、透過部の像101の形状は弓状で、対物レンズの瞳103の形状は円である。ここで、透過部の像101は、対物レンズの瞳103の外縁の一部を含むように位置している。一方、遮光部の像102は、透過部の像101の領域を除いて対物レンズの瞳103全体を覆うように位置している。
【0179】
そして、透過部の内縁の像101aは、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。また、透過部の外縁の像101bは、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。このように、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像101aが形成され、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像101bが形成される。
【0180】
ここで、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側の光は、対物レンズの瞳103を通過しない(対物レンズ103から出射しない)。よって、対物レンズの瞳103を通過する光束の領域104は、
図14Cに示すように、透過部の内縁の像101aから対物レンズの瞳103の外縁までの間の領域になる。そして、この領域104全体の面積が、標本像の明るさに対応する。
【0181】
なお、透過部の内縁の像101aの両端は、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側に位置している。そのため、透過部の内縁の像101aは、全部が対物レンズの瞳103の外縁よりも内側に位置しているわけではない。しかしながら、透過部の内縁の像101aのほとんどは、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側に位置している。よって、このような状態であっても、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像101aが形成されているものとする。
【0182】
一方、標本が存在する場合、
図15Aや
図16Aに示すように、保持部材55へ入射する光と標本から出射する光とは、光の進行方向が異なる。
【0183】
図15Aでは、標本の表面は、第1の軸の左側から右側に向かって高くなっている。そして、標本から出射する光は光軸に近づく方向に屈折されている。その結果、対物レンズの瞳位置に形成される開口部材の像は、
図15Bに示すようになる。なお、
図15Bにおいても、符号103で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
【0184】
図15Bに示すように、透過部の像101の形状は弓状で、対物レンズの瞳103の形状は円である。ここで、透過部の像101は、対物レンズの瞳103の外縁の一部を含むように位置している。一方、遮光部の像102は、透過部の像101の領域を除いて対物レンズの瞳全体を覆うように位置している。
【0185】
そして、透過部の内縁の像101aは、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。また、透過部の外縁の像101bは、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。
【0186】
しかしながら、標本が存在しない場合に比べると、開口部材の像100は、対物レンズの瞳103に対して第1の軸に沿って左方向にずれている。そのため、
図15Cに示すように、透過部の内縁の像101aから対物レンズの瞳103の外縁までの間隔が、
図14Cに比べて狭くなっている。この場合、領域104の面積は、
図14Cにおける領域104の面積に比べて小さくなる。そのため、
図15Cにおける標本像の明るさは、
図14Cにおける標本像の明るさに比べて暗くなる。
【0187】
なお、標本の表面の傾斜が急になると、標本から出射する光は光軸に対して近づく。この場合、標本像の明るさは暗くなる。逆に、標本の表面の傾斜が緩やかになると、標本から出射する光は光軸に対して離れる。この場合、標本像の明るさは明るくなる。
【0188】
図16Aでは、標本の表面は、第1の軸の左側から右側に向かって低くなっている。そして、標本から出射する光は光軸から離れる方向に屈折されている。その結果、対物レンズの瞳位置に形成される開口部材の像は、
図16Bに示すようになる。なお、
図16Bにおいても、符号103で示す円(円周)は対物レンズの瞳の外縁で、円(円周)の内側が対物レンズの瞳になる。
【0189】
図16Bに示すように、透過部の像101の形状は弓状で、対物レンズの瞳103の形状は円である。ここで、透過部の像101は、対物レンズの瞳103の外縁の一部を含むように位置している。一方、遮光部の像102は、透過部の像101の領域を除いて対物レンズの瞳全体を覆うように位置している。
【0190】
そして、透過部の内縁の像101aは、対物レンズの瞳103の外縁よりも内側(光軸に近づく方向)に位置している。また、透過部の外縁の像101bは、対物レンズの瞳103の外縁よりも外側(光軸から離れる方向)に位置している。
【0191】
しかしながら、標本が存在しない場合に比べると、開口部材の像100は対物レンズの瞳103に対して第1の軸に沿って右方向にずれている。そのため、
図16Cに示すように、透過部の内縁の像101aから対物レンズの瞳103の外縁までの間隔が、
図14Cに比べて広くなっている。この場合、領域104の面積は、
図14Cにおける領域104の面積に比べて大きくなる。そのため、
図16Cにおける標本像の明るさは、
図14Cにおける標本像の明るさに比べて明るくなる。
【0192】
なお、標本の表面の傾斜が急になると、標本から出射する光は光軸から離れる。この場合、標本像の明るさは明るくなる。逆に、標本の表面の傾斜が緩やかになると、標本から出射する光は光軸に対して近づく。この場合、標本像の明るさは暗くなる。
【0193】
図17Aは、ずれ量Δ
H1と瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量Iの関係を示すグラフである。
図17Bは、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれを示す図である。ここで、ずれ量Δ
H1は、対物レンズの瞳に対する開口部材の像のずれ量であって、第1の軸に沿う方向におけるずれ量、光束の量Iは、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量である。
【0194】
図17Bでは、対物レンズの瞳に対して、(A)、(B)、(C)の順で、矢印の方向に開口部材の像が移動している。また、開口部材の像がずれる方向は第1の軸に沿う方向である。
【0195】
図17Aでは、L’0×β=0.8×RPL、L’1×β=1.1×RPLで、計算を行っている。ここで、
L’0は、照明光学系の光軸から所定の位置までの長さ、
L’1は、照明光学系の光軸から透過部の外縁までの長さであって、照明光学系の光軸と所定の位置とを結ぶ線上における長さ、
所定の位置は、透過部の内縁上の位置のうち、照明光学系の光軸からの長さが最小となる位置、
RPLは、瞳投影レンズの瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0196】
また、透過部の透過率は100%にしている。また、
図17Aにおいて、横軸の数値は、ずれ量Δ
H1を瞳投影レンズの瞳の半径RPLで規格化している。また、縦軸の数値は、ずれ量Δ
H1が0のときの面積、
S
0=RPL
2×θ−RPL×L’0×β×sinθ、ただしθ=cos
-1(L’0×β/RPL)
で規格化している。
【0197】
なお、面積Sは瞳投影レンズの瞳を通過する光束の範囲を示している。よって、面積Sは光束の量Iに置き換えることができる。そこで、
図17Aでは、縦軸の変数としてIを用いている。
【0198】
標本が存在しない場合(あるいは、標本の表面が平坦な場合)、ずれ量Δ
H1は0である。この場合、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図17Bの(B)のようになる。よって、光束の量Iは矢印Bで示す量になる。
【0199】
次に、標本が存在する場合、ずれ量Δ
H1は0でない。ここで、標本の表面が第1の軸の左側から右側に向かって高いと、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図17Bの(A)のようになる。この場合、透過部の像の領域のうち、対物レンズの瞳内に位置する領域は、ずれ量Δ
H1が0である場合に比べて少なくなる。そのため、光束の量Iは矢印Aで示す量になる。
【0200】
一方、標本の表面が第1の軸の左側から右側に向かって低いと、対物レンズの瞳と開口部材の像との関係は、
図17Bの(C)のようになる。この場合、透過部の像の領域のうち、対物レンズの瞳内に位置する領域は、ずれ量Δ
H1が0である場合に比べて多くなる。そのため、光束の量Iは矢印Cで示す量になる。
【0201】
このように、本実施形態の標本観察装置では、ずれ量Δ
H1の変化に応じて光束の量Iが変化する。そのため、本実施形態の標本観察装置によれば、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0202】
透過部が照明光学系の光軸に対して非対称に配置されている場合について説明した。透過部が検出光学系の光軸に対して非対称に配置されている場合でも、上述した作用効果が得られる。
【0203】
以上のように、本標本観察装置では、標本が存在する場合と標本が存在しない場合とで、標本像の明るさが異なる。更に、標本の表面の傾斜の方向や傾斜の緩急に応じて、標本像の明るさが変化する。
【0204】
これにより、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0205】
しかも、本実施形態の標本観察装置では、変調コントラスト法のように変調器を用いる必要がない。そのため、変調器に対する開口部材の位置調整が不要になる。その結果、開口部材の位置調整が簡素になる。更に、変調器を用いないことで、対物レンズは明視野観察法の対物レンズを使用できる。よって、同じ対物レンズで、様々な観察方法が手軽に行える。
【0206】
また、陰影の発生方向は、対物レンズの瞳に対する透過部の像の位置で決まるが、本実施形態の標本観察装置では、透過部の像の位置は自由に変えることができるので、陰影の発生方向を自由に変えることができる。
【0207】
本実施形態の標本観察装置では、透過部は、検出光学系の光軸に対して非対称に配置され、以下の条件式(5)を満たすことが好ましい。
L0<Rill×β<L1 (5)
ここで、
L0は、検出光学系の光軸から所定の位置までの長さ、
L1は、検出光学系の光軸から透過部の外縁までの長さであって、検出光学系の光軸と所定の位置とを結ぶ線上における長さ、
所定の位置は、透過部の内縁上の位置のうち、照明光学系の光軸からの長さが最小となる位置、
Rillは、照明光学系の瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0208】
透過部が照明光学系の光軸に対して非対称に配置されているので、標本像に陰影が発生する。そのため、立体感のある標本像が得られる。
【0209】
本実施形態の標本観察装置では、透過部は、検出光学系の光軸に対して非対称に配置され、以下の条件式(6)を満たすことが好ましい。
0.2<(Rill×β−L0)/(L1−Rill×β)<10 (6)
ここで、
L0は、検出光学系の光軸から所定の位置までの長さ、
L1は、検出光学系の光軸から透過部の外縁までの長さであって、検出光学系の光軸と所定の位置とを結ぶ線上における長さ、
所定の位置は、透過部の内縁上の位置のうち、照明光学系の光軸からの長さが最小となる位置、
Rillは、照明光学系の瞳の半径、
βは、瞳投影レンズの焦点距離を対物レンズの焦点距離で割った値、
である。
【0210】
透過部が照明光学系の光軸に対して非対称に配置されているいので、標本像に陰影が発生する。そのため、立体感のある標本像が得られる。
【0211】
条件式(6)を満足することで、開口部材の像が第1の軸に沿う方向にずれる場合に光量の変化量が、左方向にずれたときと右方向にずれたときとで略同じなる。すなわち、左方向にずれたときの光量変化と右方向にずれたときの光量変化とが対称になる。
【0212】
本実施形態の標本観察装置では、開口部材とは別の開口部材を有し、開口部材と別の開口部材とを移動させる移動機構を有することが好ましい。
【0213】
このようにすることで、透過部の像の大きさや位置を変化させることができる。すなわち、開口部材を異なる開口部材に変更することで、光軸から透過部の内縁までの長さや光軸から透過部の外縁までの長さを、自由に変化させることができる。そのため、標本に応じて、陰影が最も良く発生するような照明状態を作り出すことができる。
【0214】
さらに、位相差用対物レンズを使用する場合は以下の効果がある。照明開口に位相差観察用のリングスリットを用いれば位相差観察ができ、
図5Aや
図5Bに示す開口部材を用いることで、本実施形態の標本観察装置による観察ができる。つまり、対物レンズを交換することなく、本実施形態の標本観察装置による観察と位相差観察とができる。なお、微分干渉観察やホフマンモジュレーションコントラスト観察などの方法でも、同様に対物レンズを交換することなく、本実施形態の標本観察装置による観察とこれらの観察ができる。
【0215】
本実施形態の標本観察装置では、照明光学系が光学部材を有し、光学部材は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有する開口部材であって、開口部材は、所定の位置に、遮光部又は減光部が照明光学系の光軸を含むように配置され、所定の位置は、光源ユニットと走査手段との間の位置、又は照明光学系の瞳位置であり、透過部は、遮光部又は減光部の外縁よりも外側に位置し、検出光学系の瞳の外縁よりも内側に、透過部の内縁の像が形成され、検出光学系の瞳の外縁よりも外側に、透過部の外縁の像が形成されることが好ましい。
【0216】
本実施形態の別の標本観察装置について説明する。
図18は、本実施形態の別の標本観察装置を示す図である。
図1と同じ構成には、
図1と同じ番号を付し、説明は省略する。
【0217】
標本観察装置110は、光学部材111を有する。光学部材111は、遮光部又は減光部と、透過部と、を有する開口部材である。光学部材111として、例えば、上述の、開口部材50、開口部材50’、開口部材90、又は開口部材90’を用いることができる。
【0218】
光学部材111は、所定の位置に配置されている。所定の位置は、光源と走査手段との間の位置、又は照明光学系の瞳位置である。標本観察装置110では、光学部材111は、光源ユニット2と光走査ユニット9との間に配置されている。
【0219】
光学部材111は、遮光部又は減光部が照明光学系の光軸を含むように配置されている。そのため、光学部材111から出射する照明光の形状は、円環状になっている。
【0220】
光源ユニット2と光走査ユニット9との間の位置は、照明光学系3の瞳位置と共役な位置である。よって、光学部材111は、照明光学系3の瞳位置に配置されていると見なすことができる。また、照明光学系3の瞳位置は、検出光学系4の瞳の位置と共役である。よって、光学部材111の像が、検出光学系の瞳112に形成される。
【0221】
光学部材が照明光学系に配置されている場合については、既に説明した。すなわち、
図17Aに示すように、本実施形態の標本観察装置では、矢印Bから矢印Cまでの間で、ずれ量Δの変化に応じて光束の量Iが変化する。そのため、本実施形態の標本観察装置によれば、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0222】
本実施形態の標本観察装置では、光検出素子は、標本と共役な位置に配置されていることが好ましい。
【0223】
光検出素子を小型化することができる。
【0224】
図19は、照明光の光強度分布を示す図である。照明光120は、光強度が不均一に分布している照明光である。開口部材に入射する直前では、照明光120の形状は円である。
【0225】
照明光120では、光束の中央121と光束の周辺122とで光強度が異なる。中央121における光強度は、周辺122における光強度よりも小さい。また、光強度は、中央121から周辺122に向かって大きくなっている。そのため、標本の表面の傾斜による瞳投影レンズの瞳を通過する光束の変化を大きくすることができる。
【0226】
本実施形態の別の標本観察装置では、照明光学系と検出光学系の両方に、開口部材を配置している。ここで、照明光学系には照明側開口部材が配置され、検出光学系には検出側開口部材が配置されている。そして、照明側開口部材と検出側開口部材は、共に複数の透過部を有している。
【0227】
図20Aは照明側開口部材を示す図、
図20Bは検出側開口部材を示す図である。
照明側開口部材130は、
図20Aに示すように、遮光部130a1と透過部130bとを有する。更に、開口部材130は遮光部130a2を有する。
【0228】
遮光部130a1、130a2及び透過部130bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。遮光部130a1と130a2は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部130bには何も塗布されていない。よって、透過部130bはガラス板そのものである。
【0229】
遮光部130a1の形状は円である。一方、透過部130bの形状は帯状で、具体的には円環になっている。
【0230】
照明側開口部材130では、遮光部130a1が複数形成されている。そのため、透過部130bも複数生成されている。具体的には、4つの透過部130bが形成されている。そして、4つの透過部130bは、2次元状に配置されている。照明側開口部材130は、光学部材の位置に配置されている。
【0231】
一方、検出側開口部材140は、
図20Bに示すように、遮光部140aと透過部140bとを有する。遮光部140aと透過部140bは透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。
【0232】
遮光部140aは、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。一方、透過部140bには何も塗布されていない。よって、透過部140bはガラス板そのものである。
【0233】
透過部140bの外形は、透過部130bの外形と相似形になっている。具体的には、透過部130bの外形は円なので、透過部140bの外形も円になっている。
【0234】
検出側開口部材140では、透過部140bが複数形成されている。具体的には、4つの透過部140bが形成されている。そして、4つの透過部140bは、2次元状に配置されている。検出側開口部材140は、瞳投影レンズの瞳位置に配置されている。
【0235】
また、1つの透過部130bと1つの透過部140bは、対をなしている。そして、1対の透過部130bと透過部140bとは、互いの中心が共役になるように配置されている。
【0236】
例えば、照明側開口部材140の右上の透過部130bと、観察側開口部材140の左下の透過部140bとが対をなしている。また、左下の透過部140bの位置に、右上の透過部130bの像が形成されたとき、左下の透過部140bの中心と右上の透過部130bの像とは一致する。
【0237】
また、透過部140bの外縁よりも内側に、透過部130bの内縁の像が形成され、透過部140bの外縁よりも外側に、透過部130bの外縁の像が形成される。そのため、上述の作用効果が、1対の透過部130bと透過部140bを用いた場合にも同様に生じる。
【0238】
その結果、本実施形態の標本観察装置では、標本における形状の変化が、透過部の像のずれの変化に変換される。そして、透過部の像のずれの変化によって、瞳投影レンズの瞳を通過する光束の量に変化が生じる。すなわち、標本における形状の変化を明暗の変化として検出できる。その結果、標本が無色透明であっても、陰影のある標本像を得ることができる。
【0239】
更に、本実施形態の標本観察装置では、対物レンズの瞳の周辺を通過する光だけでなく、対物レンズの瞳の中心を通過する光も結像に寄与することになる。そのため、より明るい陰影像を得ることができる。
【0240】
図21は、別の開口部材の構成を示す図である。開口部材270は、第1の遮光部271、第2の遮光部272、第3の遮光部273、第1の透過部274及び第2の透過部275を有する。第3の遮光部273は、必ずしも必要ではない。
【0241】
開口部材270は、照明光学系と検出光学系のどちらに配置されても構わない。ここでは、検出光学系に開口部材270が配置されているものとする。
【0242】
開口部材270は、第1の遮光部271が検出光学系の光軸を含むように配置される。第1の透過部274は、第1の遮光部271の外縁よりも外側に位置し、第2の遮光部272は、第1の透過部274の外縁よりも外側に位置し、第2の透過部275は、第2の遮光部272の外縁よりも外側に位置している。
【0243】
第1の遮光部271、第2の遮光部272、第3の遮光部273、第1の透過部274及び第2の透過部275は透明な部材、例えば、ガラス板や樹脂板で構成されている。第1の遮光部271や、第2の遮光部272や第3の遮光部273は、例えば、遮光塗料をガラス板上に塗布することで形成されている。
【0244】
一方、第1の透過部274や第2の透過部275には何も塗布されていない。よって、第1の透過部274や第2の透過部275はガラス板そのものである。開口部材270は、
図5Bに示す開口部材50’の遮光部50’a1に第1の透過部274を設けたものになる。
【0245】
本実施形態の標本観察装置では、複数の対物レンズを使用することができる。例えば、観察目的に応じて、開口数が大きい対物レンズと開口数が小さい対物レンズを使い分ける。開口数が大きい対物レンズでは、開口数が小さい対物レンズに比べて、照明光の光束径が大きくなる。
【0246】
開口部材の透過部の数が一つで、透過部の位置や幅が、開口数が大きい対物レンズ用に設けられているとする。このような開口部材だと、開口数が大きい対物レンズを開口数が小さい対物レンズに交換したときに、透過部を結像光が通過しなくなる恐れがある。
【0247】
開口部材270では、2つの透過部、すなわち、第1の透過部274と第2の透過部275とが設けられている。第1の透過部274は、第2の透過部275の内側に位置している。よって、第1の透過部274を開口数が小さい対物レンズ用とし、第2の透過部275を開口数が大きい対物レンズ用にする。このようにすることで、開口部材数が1つであるにもかかわらず、異なる対物レンズによる無色透明な標本の像を取得できる。
【0248】
本実施形態の標本観察装置では、検出光学系に光学部材と拡散部材が配置され、拡散部材は、光学部材よりも光検出素子側で、光学部材の近傍に配置されていることが好ましい。
【0249】
倍率が小さい対物レンズでは、倍率が大きい対物レンズに比べて、観察視野が広くなる。そのため、観察視野の周辺からの結像光は、光軸に対して大きな角度で検出光学系に入射し、光学部材に到達する。光学部材の透過部を通過した結像光でも、光軸に対する光線の角度が大きくなっている。
【0250】
光学部材と光検出素子との間にレンズが配置されている場合、光軸に対する光線の角度が大きいと、結像光がレンズを通過しなくなる。この場合、結像光を光検出素子で検出することができなくなる。
【0251】
拡散部材が、光学部材よりも光検出素子側で、光学部材の近傍に配置されていると、光線は拡散部材によって様々な角度に拡散される。そのため、光学部材の透過部を通過した結像光の一部を、光検出素子で検出することができる。従って、倍率が小さい対物レンズを用いた場合、又は、観察視野が広い場合でも、無色透明な標本の像を取得することができる。
【0252】
本実施形態の標本観察装置で取得した標本の画像を示す。
図22Aは、本実施形態の標本観察装置で取得した標本の画像である。
図22Bは、位相差観察法で取得した標本の画像である。
【0253】
使用した対物レンズの倍率は10倍で、開口数は0.25である。レーザ光の波長は488nmである。標本は、iPS細胞である。
【0254】
図22Aに示すように、本実施形態の標本観察装置では、標本が厚みを有する細胞であっても、ハローの発生が少ない。よって、本実施形態の標本観察装置における画像では、コロニー表面の細かい凹凸構造がよく分かる。
【0255】
これに対して、位相差観察法における画像では、
図22Bに示すように、ハローが大きく発生している。そのため、コロニーの表面の構造が不鮮明になっている。