【文献】
KIRSTIN ANJA ZETTLITZ,ENGINEERED ANTIBODIES FOR THE THERAPY OF CANCER AND INFLAMMATORY DISEASES,[ONLINE],2012年,pp. 1-90,URL,http://elib.uni-stuttgart.de/bitstream/11682/2035/1/Diss_Kirstin_Zettlitz.pdf
【文献】
KONTERMANN, ROLAND E. et al.,A HUMANIZED TUMOR NECROSIS FACTOR RECEPTOR 1 (TNFR1)-SPECIFIC ANTAGONISTIC ANTIBODY FOR SELECTIVE INHIBITION OF TUMOR NECROSIS FACTOR (TNF) ACTION,JOURNAL OF IMMUNOTHERAPY,2008年 4月,Vol. 31,pp. 225-234,URL,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18317365
【文献】
RICHTER, FABIAN et al.,ANTAGONISTIC TNF RECEPTOR ONE-SPECIFIC ANTIBODY (ATROSAB): RECEPTOR BINDING AND IN VITRO BIOACTIVITY,PLOS ONE,2013年 8月19日,Vol. 8; e72156,pp. 1-13,URL,http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0072156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗原結合部分を通じてヒト腫瘍壊死因子受容体1(huTNFR1)を一価で認識するヒトまたはヒト化抗体構築物である、huTNFR1受容体の阻害剤であって、抗原結合部分が
−相補性決定領域(CDR)配列CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含む、重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに
−CDR配列CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含む、軽鎖可変(VL)ドメイン、および
ヒト化またはヒトフレームワーク配列
を含む、ここで:
a)CDRH1配列が配列番号1と同定され;
b)CDRH2配列が配列番号10と同定され、5位のXはSであり;
c)CDRH3配列が配列番号3と同定され;
d)CDRL1配列が配列番号4と同定され;
e)CDRL2配列が配列番号5と同定され;そして
f)CDRL3配列が配列番号11と同定される、
前記阻害剤。
抗体構築物が、Fab分子、scFv分子、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ハーフIgG1抗体、およびFvドメインからなる群より選択される抗体を含む、請求項1の阻害剤。
抗体構築物が、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルデンプン(HES化)、またはポリシアル酸(PSA)への連結によって修飾されている、請求項1の阻害剤。
抗腫瘍壊死因子(TNF)療法または非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬剤(DMARD)が必要とされる疾患に罹患しているヒト被験体を治療する際に使用するための、請求項1〜7のいずれかの阻害剤。
被験体が、抗TNF療法または非生物学的DMARD療法剤が適用される疾患に罹患しており、好ましくは第一選択治療として、あるいは抗TNFまたは非生物学的DMARD療法剤が失敗した場合の第二選択治療としての、請求項13の医薬。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
改善されたTNFR1阻害特性を持つ一方、生得的なTNF模倣アゴニスト活性によって引き起こされるいかなる副作用も回避する、改善された抗huTNFR1剤を提供することが目的であった。
【0015】
この目的は、特許請求される主題によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にしたがって、抗原結合部分を通じてhuTNFR1を一価で認識するヒトまたはヒト化抗体構築物である、TNF−huTNFR1受容体相互作用の阻害剤を提供する。
【0017】
特に、抗原結合部分は
−CDR配列CDRH1、CDRH2、およびCDRH2を含む、重鎖可変(VH)ドメイン、ならびに
−CDR配列CDRL1、CDRL2、およびCDRL2を含む、軽鎖可変(VL)ドメイン
を含む、ここで:
A
a)CDRH1配列が配列番号1と同定され;
b)CDRH2配列が配列番号10と同定され;
c)CDRH3配列が配列番号3と同定され;
d)CDRL1配列が配列番号4と同定され;
e)CDRL2配列が配列番号5と同定され;そして
f)CDRL3配列が配列番号11と同定される;
あるいは
B
a)CDRH1配列が配列番号1の機能的活性CDR変異体であり;そして/または
b)CDRH2配列が配列番号10の機能的活性CDR変異体であり;そして/または
c)CDRH3配列が配列番号3の機能的活性CDR変異体であり;そして/または
d)CDRL1配列が配列番号4の機能的活性CDR変異体であり;そして/または
e)CDRL2配列が配列番号5の機能的活性CDR変異体であり;そして/または
f)CDRL3配列が配列番号11の機能的活性CDR変異体である;
あるいは
ここで、機能的活性CDR変異体は、CDRH2の5位およびCDRL3の3位を除いて、いかなる位でも、それぞれのCDR配列に1または2の点突然変異より多くを含まない。
【0018】
態様Bの機能的活性CDR変異体は、態様Aの阻害剤の機能的活性変異体を決定し、ここで、CDRH2配列の機能的活性CDR変異体は、GまたはSのいずれかである5位のアミノ酸配列を特に含み;そしてCDRL3配列の機能的活性CDR変異体は、GまたはSのいずれかである3位のアミノ酸配列を特に含む。機能的活性CDR変異体は、本明細書にさらに記載するような、huTNFR1に結合する高アフィニティを特に決定する。特に、機能的活性変異体は、態様Aの阻害剤のアフィニティ成熟変異体であり、特に、CDR配列の1、2、3、4、5、または6が機能的活性CDR変異体であるものである。
【0019】
特に、本明細書記載の阻害剤は、驚くべきことに、IZI−06.1の改善型として以前操作されたscFvIG11に比較した際、改善された結合特性を示すことが明らかになった。
【0020】
特に、抗原結合部分は、5x10
−9M未満のK
Dおよび10
−3s
−1未満のk
оffで、huTNFR1に結合する。結合アフィニティおよび結合特性(会合および解離)は、特に、二価結合のアビディティ効果を実質的に排除した、一価結合を決定するための標準的試験において決定される。標準試験は、生理学的温度(約37℃、または37℃+/−1℃)での水晶振動子マイクロバランス(QCM)による測定に基づく。こうしたアフィニティ測定は、特に、Fab形式で実行される。したがって、抗体構築物がFab分子以外のいずれかである場合、抗原結合部位は特に、37℃でQCMによるアフィニティ測定のため、それぞれのFab分子内に導入される。これにより、アフィニティ測定に干渉しうるアビディティ効果と無関係に、一価結合剤のアフィニティ測定の結果の比較性が確実になる。特に好ましいQCMは、中程度の受容体密度で行われる。特に、huTNFR1に結合する抗体構築物のアフィニティを、37℃、および50〜100Hzの範囲内、例えば約50Hz、または50Hz+/−10Hz、または50Hz+/−5Hzの中程度の受容体密度で、QCMによってFab形式に関して決定する。QCMによる結合アフィニティの決定のための標準的試験を、以下の実施例セクションに記載する。
【0021】
特に、K
Dは4x10
−9M未満、または3x10
−9M未満、または2x10
−9M未満、または10
−9M未満、またはさらに10
−10M未満である。
特に、k
оffは10
−3、または5x10
−4s
−1未満、または10
−4s
−1未満、または10
−5s
−1未満である。
【0022】
特に、抗原結合部分は、少なくとも10
5M
−1s
−1のk
оnで、huTNFR1を認識する。
特定の側面にしたがって、阻害剤は、細胞に基づくアッセイにおいて、好ましくはKym−1細胞におけるTNFR1仲介性細胞死の阻害に関するアッセイによって、あるいはそれぞれHeLa細胞またはHT1080細胞からのIL−6またはIL−8放出の阻害に関するアッセイによって決定した際、TNF−huTNFR1受容体相互作用を直接阻害する。特に、Kym−1細胞におけるTNFR1仲介性細胞死の阻害に関するアッセイにおいて、IC
50値は、5.0x10
−9M未満である。特に、HeLa細胞からのIL−6放出の阻害に関するアッセイにおいて、IC
50値は、4.0x10
−8M未満であり、またはHT1080細胞からのIL−8放出の阻害に関するアッセイにおいて、IC
50値は、2.0x10
−8M未満である。
【0023】
一価相互作用のため、抗体構築物のTNF模倣アゴニスト潜在能力は、特に排除されている一方、TNFR1への結合の増加したアフィニティ、特に低いオフ速度が、TNFR1依存性TNF反応の優れた阻害を提供する。
【0024】
さらなる特異的な側面にしたがって、阻害剤は、細胞に基づくアッセイにおいて、好ましくはKym−1細胞におけるTNFR1仲介性細胞死の阻害に関するアッセイによって、あるいはHeLa細胞および/またはHT1080細胞からのIL−6またはIL−8放出の阻害に関するアッセイによって決定した際、リンホトキシン・アルファとのhuTNFR1−受容体相互作用を直接阻害する。
【0025】
特に、抗原結合部分は、一価結合部位を形成する1またはそれより多いFvドメインを含むかまたは該ドメインからなる。特異的側面にしたがって、Fvドメインは、どちらもドメインのベータシート構造の相互作用を通じて互いに関連している、VHおよびVLドメインである。
【0026】
1つの側面にしたがって、抗原結合部分は、huTNFR1の膜遠位CRD1およびCDR2のサブドメインA1を含むエピトープを特異的に認識する。
特異的結合エピトープは、huTNFR1のN末端領域中のアミノ酸1〜115によって示される。
【0027】
特定の態様にしたがって、抗体構築物は、本明細書にさらに記載するように、H398抗体によって認識されるようなエピトープと同じエピトープであるかまたはこれと重複しているエピトープに、特異的に結合する。特に、抗体構築物は、huTNFR1に競合的に結合するように、そのエピトープへのH398抗体結合に干渉する。
【0028】
特に、抗体構築物は、アフィニティ成熟されたヒト化H398抗体の少なくともVHドメインおよび場合によってFvドメイン(VLと会合しているかまたは結合しているVHとして)を含む。特に、H398抗体およびヒト化ATROSAB抗体(本明細書にさらに記載するようなもの)は、以下:
配列番号1:H398 CDRH1
配列番号2:H398 CDRH2
配列番号3:H398 CDRH3
配列番号4:H398 CDRL1
配列番号5:H398 CDRL2
配列番号6:H398 CDRL3
を含むかまたはこれらからなるCDR配列によって特徴付けられる。
【0029】
特に、抗体構築物は、VHおよびVLドメインを含み、VHおよびVLドメインの少なくとも1つが相補性決定領域(CDR)配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む親ドメインのアフィニティ成熟機能的変異体であり、
a)親VHドメインは、CDR配列:配列番号1(CDRH1)、配列番号2(CDRH2)、および配列番号3(CDRH3)によって特徴付けられ;そして
b)親VLドメインは、CDR配列:配列番号4(CDRL1)、配列番号5(CDRL2)、および配列番号6(CDRL3)によって特徴付けられ;
CDR配列はKabat番号付けスキームにしたがっている。
【0030】
特に、少なくとも1つの点突然変異は、配列番号2(CDRH2)および/または配列番号6(CDRL3)のいずれかにおけるものであり、好ましくはCDRH2配列は配列番号7であり、そしてCDRL3配列は配列番号8である。
【0031】
特に、1または2の点突然変異をCDR配列のいずれかに導入して、機能的活性CDR変異体を産生することも可能である。特に、機能的活性CDR変異体は、親ドメインのCDR配列のいずれかに比較した際、少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも85%、または少なくとも90%、またはCDR配列あたり1つのみの点突然変異を有し、好ましくは、CDR配列は、CDRH2またはCDRL3配列のいずれかである。
【0032】
特に、抗体構築物は、アフィニティ成熟目的のためのVHおよびVL配列を含む、ATROSABと称されるヒト化抗体のアフィニティ成熟配列を含む。ATROSABは、以下のVHおよびVL配列:
配列番号22:ATROSAB VH
配列番号23:ATROSAB VL
によって特に特徴付けられる。
【0033】
特に、抗原結合部分は
A
グループメンバーi)〜ii)からなる群より選択されるもの、ここで
i)
a)配列番号1によって同定されるCDRH1配列;
b)配列番号10によって同定されるCDRH2配列、式中、5位のXはSである;
c)配列番号3によって同定されるCDRH3配列;
d)配列番号4によって同定されるCDRL1配列;
e)配列番号5によって同定されるCDRL2配列;および
f)配列番号11によって同定されるCDRL3配列、式中、3位のXはGである
を含む抗原結合部分であるもの;
ならびに
ii)
a)配列番号1によって同定されるCDRH1配列;
b)配列番号10によって同定されるCDRH2配列、式中、5位のXはSである;
c)配列番号3によって同定されるCDRH3配列;
d)配列番号4によって同定されるCDRL1配列;
e)配列番号5によって同定されるCDRL2配列;および
f)配列番号11によって同定されるCDRL3配列、式中、3位のXはSである
を含む抗原結合部分であるもの;
あるいは
B
Aのグループメンバーいずれかである親抗原結合部分の機能的活性変異体である、抗原結合部分
である。
【0034】
特に、機能的活性変異体は
a)CDRH2の5位およびCDRL3の3位以外の任意の位でのそれぞれのCDR配列における1または2の点突然変異より多くを含まない、親抗体のCDR配列いずれかの、少なくとも1つの機能的活性CDR変異体;および/または
b)VHまたはVL配列のいずれかのフレームワーク領域における少なくとも1つの点突然変異
を含む。
【0035】
機能的活性CDR変異体は、特に、5位のアミノ酸配列がGまたはSのいずれかであるCDRH2配列;および3位のアミノ酸配列がGまたはSのいずれかであるCDRL3配列によって特徴付けられる。機能的活性CDR変異体は、特に、本明細書にさらに記載するようなhuTNFR1に結合する高アフィニティによって特徴付けられる。
【0036】
特に、1またはそれより多い点突然変異が、機能的活性FR変異体を産生するために、FR配列、特にヒトまたはヒト化FR配列のいずれかに導入されることも可能である。
特に、VHまたはVL配列のいずれかの機能的活性FR1変異体には、親FR1配列に比較した際に、少なくとも40%、または少なくとも45%の配列同一性、または少なくとも50%の配列同一性、または少なくとも60%の配列同一性、または少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を持つ変異体配列を得るために、1またはそれより多い、例えばいくつかの点突然変異、例えば、最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15の点突然変異が含まれる。
【0037】
特に、VHまたはVL配列のいずれかの機能的活性FR2変異体には、親FR2配列に比較した際に、少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を持つ変異体配列を得るために、1またはそれより多い、例えばいくつかの点突然変異、例えば、最大2、3、4、または5の点突然変異が含まれる。
【0038】
特に、VHまたはVL配列のいずれかの機能的活性FR3変異体には、親FR3配列に比較した際に、少なくとも50%の配列同一性、または少なくとも60%の配列同一性、または少なくとも70%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を持つ変異体配列を得るために、1またはそれより多い、例えばいくつかの点突然変異、例えば、最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15の点突然変異が含まれる。
【0039】
特に、VHまたはVL配列のいずれかの機能的活性FR4変異体には、親FR4配列に比較した際に、少なくとも70%、または少なくとも80%の配列同一性、または少なくとも90%の配列同一性を持つ変異体配列を得るために、1またはそれより多い、例えばいくつかの点突然変異、例えば、最大2、3、4、または5の点突然変異が含まれる。
【0040】
特定の態様にしたがって、抗体構築物は、Fab分子、scFv分子、単一可変ドメイン、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ハーフIgG1抗体、およびFvドメイン、または前述のいずれかの機能的活性誘導体からなる群より選択され、好ましくは、抗体構築物は、親水性ポリマー、例えばPEGにカップリングされ、そして/またはポリペプチド、例えばヒト(またはマウス)血清アルブミン、トランスフェリン、アルブミン結合ドメインまたはペプチド、Ig結合ドメインまたはペプチド、PEG模倣ポリペプチド伸長、抗体Fc断片、(ホモ二量体化よりも)好ましいヘテロ二量体化を可能にする突然変異を所持する抗体Fc断片、あるいは前述のポリペプチドいずれかの機能的変異体に融合している。
【0041】
特に、抗体構築物は、抗体Fc断片に融合したFab、scFv、dsFv、またはFvドメインのいずれかであり、FcがCH2およびCH3ドメインのヘテロ二量体からなり、CH2および/またはCH3ドメインがホモ二量体化よりも優先的なヘテロ二量体化を可能にする1またはそれより多い点突然変異を所持する。特に、FcにおけるCH3ドメインの一方または両方が、CH3/CH3ドメインのヘテロ二量体を含有するFcを得るように、アミノ酸構造を変化させるように修飾されている。
【0042】
特に、抗体構築物は、なお抗体構築物の一価結合構造を維持しつつ、さらなる抗体ドメインを含みまたは含まず、抗体Fc領域または断片に融合したFvドメインを含む。特定の例は、Fcまたは修飾Fcに融合したFab部分またはFv部分を指す。
【0043】
特定の態様は、CH2−CH3ドメインが、1またはそれより多い「ノブ・イントゥ・ホール(knobs−into−holes)」突然変異、例えば
CH3ベータ−シート表面を修飾し、一方のCH3ドメイン単量体上に存在し、T366Wである、「ノブ」突然変異
CH3ベータ−シート表面を修飾し、他方のCH3ドメイン単量体上に存在し、T366S、L368A、Y407Vからなる群より選択される、「ホール」突然変異
を通じてヘテロ二量体を形成する、ヒトIgG1Fcを含む。
【0044】
特に、抗体構築物は、エフェクター機能を下方調節する1またはそれより多い突然変異を含むFc領域を含む。特定の側面にしたがって、Fc領域はエフェクター機能を下方調節するように糖鎖操作(glycoengineer)されている。
【0045】
特に、抗体構築物は、例えば、E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330SおよびP331S、S228P、L234A、L235A、H268Q、A330S、P331S、V234A、G237A、P238S、H268A、V309Lからなる群より選択される1またはそれより多い突然変異を通じて、FcγRサイレンシングされたCH2およびCH3ドメインによって特徴付けられる(ヒトIgG1)Fc領域を含む。
【0046】
好ましい態様にしたがって、抗体構築物は、エフェクター機能を下方制御するように突然変異されたIgG1 Fc領域を含む。好ましくは、Fc領域は、E233P、L234V、L235A、ΔG236、A327G、A330SおよびP331S(Kabat EUインデックス番号付け)からなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を持つ重鎖を含む。好ましくは、前記突然変異の少なくとも2つ、より好ましくは6つの突然変異の少なくとも3つ、4つ、5つまたはすべてがヒトIgG1 Fc配列内に操作される。ヒトIgG1 Fc配列は、配列番号24として同定されるアミノ酸配列に特に含まれる。配列番号24は、ヒトIgG1 Fcおよびヒンジ領域の配列を同定する(野生型IgG1ヒンジ領域(配列番号35)に加えてCH2−CH3ドメイン)。
【0047】
特に、抗体構築物は、ヒト化またはヒトフレームワーク領域を含む。
特に、抗体構築物は、PEG化、HES化、またはPSA化されている。
特に、抗体構築物は、5.000〜150.000g/molの間の範囲の分子量のPEGでPEG化される。例示的な抗体構築物、例えばFabは、PEG 40.000でPEG化される。
【0048】
特に、抗体構築物は、ハーフ抗体(half antibody)IgG1であり、1つのみのFab部分、ヒンジ領域および1つのFc部分によって特徴付けられ、ここで、ヒンジ領域および/またはFc部分(特にヒトIgG1 Fc)は重鎖二量体化を回避するための1またはそれより多い突然変異(Guら(2015) PLoS One 10(1):e0116419)、例えば
−ヒンジ領域(配列番号35)における突然変異:C226S、C229S(EU番号付け)、および
−Fc部分における突然変異:P395A、F405R、Y407R、K409D(EU番号付け)
からなる群より選択される突然変異を含む。
【0049】
特に、抗体構築物は、Fv−Fc融合タンパク質であり、VHは第一のヒンジ領域を通じて第一のCH2−CH3ドメイン鎖に融合しており、そしてVLは第二のヒンジ領域を通じて第二のCH2−CH3ドメイン鎖に融合している。好ましくは、第一および第二のCH2−CH3ドメイン鎖は、例えば第一および第二のCH2−CH3ドメイン鎖の間の優先的なヘテロ二量体化を可能にし、それによって例えば上に示すような「ノブ・イントゥ・ホール」突然変異を通じた、Fcヘテロ二量体によって特徴付けられるFv−Fc調製物を得る、1またはそれより多い点突然変異において互いに異なる。さらに、第一および第二のヒンジ領域は、以下のように修飾されていることも可能である:GTDKTHTSPPCPAPPVAG(配列番号42)、GTDKTHTCPPSPAPPVAG(配列番号43)、またはGTDKTHTSPPSPAPPVAG(配列番号44)。
【0050】
特に、抗体構築物は、1またはそれより多いさらなる(人工的な)ドメイン間ジスルフィド結合によって特徴付けられる、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)である。こうしたジスルフィド結合は、VHおよびVLドメインを架橋するジスルフィド結合の架橋橋脚として使用可能な適切な位で、VHおよびVLドメインのいずれかに1またはそれより多いさらなるシステイン残基を導入することによって得られ、ジスルフィド結合は、システインを還元した際に得られる。特定の例にしたがって、ジスルフィド結合は、VHの以下の位およびVLの対応する位のいずれかでFv内に導入されることも可能である:VHの44CおよびVLの100C、VHの108CおよびVLの55C、VHの106CおよびVLの56C、またはVHの101CおよびVLの46C。
【0051】
特定の側面にしたがって、抗体構築物は、親Fvドメインに比較した際に、huTNFR1に結合する増加したアフィニティを持つFvドメインを含み、ここで親Fvドメインは配列番号12と同定される親VHドメインおよび配列番号16と同定される親VLドメインによって特徴付けられる。
【0052】
特に、VHおよびVLドメインの少なくとも1つは、CDRまたはフレームワーク(FR)配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む、親ドメインのアフィニティ成熟機能的変異体である。
【0053】
特に、
a)VHドメインは、配列番号13〜15、または配列番号13〜15のいずれかの機能的活性変異体からなる群より選択される配列を含むか、または該配列からなり;そして/または
b)VLドメインは、配列番号17〜19、または配列番号17〜19のいずれかの機能的活性変異体からなる群より選択される配列を含むか、または該配列からなる;または
c)a)またはb)の機能的変異体は、CDRまたはFR配列のいずれかにおいて、少なくとも1つの点突然変異を含む。特にa)またはb)の機能的活性変異体は
a)CDRH2の5位およびCDRL3の3位以外の任意の位でのCDR配列のいずれかにおける1または2の点突然変異;および/または
b)VHまたはVL配列のいずれかのフレームワーク領域における少なくとも1つの点突然変異
によって特徴付けられる。
【0054】
特に、阻害剤は、
A
i)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
ii)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
iii)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;
iv)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;
v)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
vi)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
vii)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
viii)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;
ix)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
グループメンバーi)〜ix)からなる群より選択されるもの
または
B
Aのグループメンバーi)〜ix)のいずれかのVHおよびVLドメインの組み合わせであって、VHドメインが配列番号13〜15のいずれかの機能的活性変異体であり、そして/またはVLドメインが配列番号17〜19のいずれかの機能的活性変異体である、前記組み合わせ
である、VHおよびVLドメインの組み合わせを含み、ここで、機能的活性変異体は
a)CDRH2の5位およびCDRL3の3位以外の任意の位でのCDR配列のいずれかにおける1または2の点突然変異;および/または
b)VHまたはVL配列のいずれかのフレームワーク領域における少なくとも1つの点突然変異
によって特徴付けられる。
【0055】
機能的活性変異体は、CDR配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む機能的活性CDR変異体、および/またはFR配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む機能的活性変異体であることも可能である。しかし、機能的活性CDR変異体は、特に、5位のアミノ酸配列がGまたはSのいずれかであるCDRH2配列;および3位のアミノ酸配列がGまたはSのいずれかであるCDRL3配列によって特徴付けられる。機能的活性CDR変異体は、特に、本明細書にさらに記載するように、huTNFR1に結合する高アフィニティによって特徴付けられる。
【0056】
特定の側面にしたがって、抗体構築物は、親抗体構築物に比較した際に、増加した熱安定性を有し、ここで抗体構築物は、VHまたはVL配列いずれかのフレームワーク領域に少なくとも1つの点突然変異を含む親Fvドメインの機能的変異体であるFvドメインを含み、好ましくはVHドメイン配列は、(親)IZI06.1 VH配列(配列番号20)の変異体であり、そして以下のアミノ酸(Kabat番号付け)のいずれかを含む:
a)FR1における1位:QまたはH;
b)CDRH2における
i)3位:YまたはV;
ii)5位:Y、T、またはS;
iii)6位:SまたはQ;
iv)8位:HまたはE;
v)10位:YまたはK;
vi)13位:EまたはD。
【0057】
さらに好ましい変異は、VL配列(配列番号21)に関し、そしてCDRL3(3位)にS91G点突然変異を含む。
特に、好ましい抗体構築物変異体または阻害剤の熱安定性は、動的光散乱法によって決定した際、少なくとも60℃、または少なくとも61℃、または少なくとも62℃、または少なくとも63℃、または少なくとも64℃、または少なくとも65℃である。
【0058】
本発明はさらに、本明細書記載の阻害剤および薬学的に許容されうるキャリアーを含む薬学的調製物を提供する。
阻害剤および抗体構築物のアンタゴニスト特性のため、薬学的調製物は、アゴニスト活性を生じる副作用を回避しつつ、高濃度の阻害剤を含むことも可能である。
【0059】
全長免疫グロブリン構造が存在しないため、該阻害剤は特に、減少した免疫原性を有することも可能であり、そして阻害剤、例えば抗薬剤抗体(ADA)の形成を伴わずに繰り返し使用可能である。
【0060】
驚くべきことに、例えば免疫グロブリンまたは抗体免疫療法に対する抗体を発展させているADAが発展した患者を治療するために、該阻害剤を使用可能であることがわかってきている。先行技術において、ADAは細胞表面上のTNFR1に結合した際に抗体を架橋し、それによってTNFR1シグナル伝達をアゴナイズするため、こうしたADAの存在は、特に、TNFR1に対して向けられる抗体を用いたさらなる免疫療法を排除するであろう。しかし、本明細書記載の阻害剤は、驚くべきことに、ADAの存在下であってさえ、TNFR1シグナル伝達をアゴナイズしない。
【0061】
特に、ADA、例えば抗huTNFR1抗体またはIgG構造いずれかに対するADAを発展させている被験体に、該薬学的調製物を投与することも可能である。
特に、該調製物は、非経口使用のために、好ましくは静脈内または皮下投与による使用のために配合されている。
【0062】
本発明は、抗体構築物を発現するために組換え哺乳動物発現系を使用する、本明細書記載のhuTNFR1阻害剤を産生する方法をさらに提供する。
特に、異なる起源の細胞株、例えばヒト、例えばHEKまたはPER.C6;ハムスター、例えばCHOまたはBHK;サル、例えばCOS−1またはCOS−7;マウス、例えばC127、SP2/0またはNS0;あるいは酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはピキア・パストリス(Pichia pastoris)を含む、真核または哺乳動物細胞株である、産生細胞株を用いる。
【0063】
特に、CHO産生細胞株を使用する。
別の原核産生細胞株には、例えば大腸菌(Escherichia coli)が含まれる。
【0064】
本発明はさらに、医学的使用のための、特に抗TNF療法の必要があるヒト被験体を治療する際に使用するための阻害剤をさらに提供する。
したがって、本発明は、本明細書記載の阻害剤の有効量を投与することによる、抗TNF療法の必要があるヒト被験体を治療する方法をさらに提供する。
【0065】
特に、TNFR1特異的阻害剤は、抗TNF療法剤での治療の代替法として、TNFR1を架橋不能なTNFアンタゴニストとして用いられる。こうしたTNFアンタゴニストはまた、生物学的TNFアンタゴニストとも見なされ、典型的には、関節、皮膚および腸の慢性非感染性炎症の病因形成において、TNFR1仲介性TNF機能の生物学的関連性が立証されている場合の療法的使用のために提供される。
【0066】
療法抗体または天然存在抗体によって誘導される薬剤特異的抗体(ADA)はまた、薬剤が結合したTNFR1を架橋し、そしてTNFR1シグナル伝達を活性化する潜在能力を有するため、望ましくないアゴニスト活性を導く可能性もある。したがって、好ましい抗体構築物は、ホモ二量体形成Fc領域を欠くかまたはFc領域を欠き、例えばFabまたはscFv形式であり、そしてそれぞれの薬学的組成物は、架橋および炎症プロセスへの増加した刺激活性を生じる可能性がより低い。
【0067】
特定の態様にしたがって、阻害剤を被験体に反復投与する。
本明細書記載の阻害剤または抗体は、低い免疫原潜在能力を有し、そして抗体に対する望ましくない免疫反応を誘導することなく、被験体を治療するために使用可能であることが望ましい。
【0068】
この目的に向けて、好ましい抗体構築物は、ヒト化またはヒト抗体配列からなり、そして例えばホモ二量体化Fc領域を欠くかまたはFc領域を欠き、例えばFabまたはscFv形式である。それぞれの薬学的組成物は、(例えば反復投与に際して)耐性の喪失を生じる可能性がより低く、それによって、療法剤の安全性および有効性プロファイルの両方を改善する。
【0069】
特定の態様は、以前の療法に用いられてきた療法抗体、特にFc領域を含む抗体に対する免疫反応または高レベルの抗体に苦しむ被験体の治療に関する。こうした患者は、好ましくは、ホモ二量体化Fc領域を欠くかまたはFc領域を欠く、本明細書記載の抗体構築物で治療される。
【0070】
特に、本明細書記載の阻害剤は、抗TNF療法または非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬剤(DMARD)が必要とされる疾患に罹患しているヒト被験体を治療する際の医学的使用のために提供される。特に、医学的使用は、抗TNF療法または非生物学的DMARDが必要とされる場合の、阻害剤の有効量を用いた第一選択治療を、あるいは抗TNFまたは非生物学的DMARD療法剤が失敗した際の第二選択の治療としての治療を含む。
【0071】
特に、被験体は
a)関節、皮膚および腸の急性または慢性炎症(感染性または非感染性);および/または
b)自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、若年性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病(Morbus Crohn)、多発性硬化症、うっ血性心不全、代謝性疾患、サイトカイン放出症候群、敗血症ショック、急性および慢性神経変性疾患、脳卒中、アルツハイマーおよびパーキンソン病、潰瘍性結腸炎、膵炎、COPD、急性劇症ウイルスまたは細菌感染、代謝性疾患、慢性神経変性疾患、原因病理学的仲介因子としてTNF/TNFR1を伴う遺伝病、周期熱症候群、ケルビズム症候群、および癌
に罹患している。
【0072】
特に、上記に列挙する疾患いずれかに関連する、炎症性疾患状態を治療する。特に上記のa)の疾患のいずれかおよびb)の疾患のいずれかに罹患している被験体を治療する。
特定の側面にしたがって、本発明は、本明細書記載の阻害剤をコードする単離核酸を提供する。特に、核酸は、該核酸と天然にはともに存在しない非コードまたはコード核酸配列、例えば異種プロモーターまたは制御配列を含む配列に、機能可能であるように連結されている。特に、核酸は人工核酸である。
【0073】
本発明は、本明細書に記載するような、阻害剤抗体の抗原結合部位またはVHおよび/またはVLを含む、ポリペプチドまたはタンパク質、またはタンパク質誘導体を含むかまたはこれらからなるタンパク質性構築物を発現するためのコード配列を、各々含む、発現カセットまたはプラスミドを含むベクターをさらに提供する。
【0074】
本発明は、本明細書に記載するような発現カセット、発現ベクターまたはプラスミドを含む宿主細胞をさらに提供する。
本発明は、前記抗体を産生する条件下で、宿主細胞を培養するかまたは維持する、本明細書に記載するような阻害剤を産生する方法をさらに提供する。
【0075】
特に好ましいのは、
−抗体軽鎖を発現するコード配列を取り込む発現ベクター;および
−抗体重鎖を発現するコード配列を取り込む発現ベクター
を含む宿主細胞、およびこうした宿主細胞を使用する産生法である。
【0076】
特定の側面にしたがって、本発明は、本明細書記載の核酸または発現ベクターを含む組換え宿主細胞をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本明細書で用いる命名法は、以下の意味を有するものとする:
VH CDR1=CDRH1
VH CDR2=CDRH2
VH CDR3=CDRH3
VL CDR1=CDRL1
VL CDR2=CDRL2
VL CDR3=CDRL3
別に示さない限り、本明細書において、CDR配列、特に図に列挙するようなCDR配列は、Kabatにしたがって番号付けられたもの、すなわちKabatの命名法にしたがって決定されたものとして言及する(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, U.S. Department of Health and Human Services. (1991)を参照されたい)。本発明および請求項の範囲はまた、同じ抗体およびCDRを含むが、CDR領域がIMGT系(The international ImMunoGeneTics, Lefrancら, 1999, Nucleic Acids Res. 27: 209−212)にしたがって定義されている場合、異なる番号付けおよび指定CDR領域を伴うことがよく理解される。
【0079】
発明の詳細な説明
本発明を記載する文脈において(特に以下の請求項の文脈において)、用語「a」および「an」および「the」ならびに類似の指示語の使用は、本明細書において別に示さない限りまたは文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと見なされるものとする。
【0080】
用語「含む」、「有する」、「含まれる」、および「含有する」は、別に明記されない限り、無制限の用語(すなわち「限定されるわけではないが、含む」)と見なされるものとする。本発明の目的のため、用語「からなる」は、用語「含む」の好ましい態様であると見なされる。本明細書において、今後、群が、少なくとも特定の数の態様を含むと定義される場合、好ましくは、これらの態様のみからなる群もまた含むことが意味される。
【0081】
本明細書において、「阻害剤」は、「抗体構築物」または「抗体」と記載される。本明細書においてまた、単純に「抗体」または「本発明の抗体」とも称される、用語「抗体構築物」は、huTNFR1ターゲットに一価で結合するよう操作された人工的構築物であるか、または天然存在抗体を断片に切断することによって得られた、非天然存在抗体を指すものとする。この目的に向け、用語「抗体」は、リンカー配列を含みまたは含まず、免疫グロブリンの重鎖および/または軽鎖の定常および/または可変ドメインと理解される、抗体ドメインからなるかまたは該ドメインを含む、ポリペプチドまたはタンパク質を含むと理解される。ポリペプチドは、ループ配列によって連結された抗体ドメイン構造の少なくとも2つのベータ鎖からなるベータ−バレル構造を含む場合、抗体ドメインと理解される。抗体ドメインは、天然構造であってもよいし、あるいは突然変異誘発または誘導体化によって、例えば抗原結合特性または任意の他の特性、例えば安定性もしくは機能特性、例えばFc受容体FcRnおよび/またはFcガンマ受容体への結合を修飾するように修飾されていてもよい。
【0082】
抗体構築物は、本明細書において、少なくとも1つの抗原結合部分を含み、抗体の1つの抗原結合のみがhuTNFR1ターゲットを認識する。したがって、huTNFR1受容体への抗体構築物の結合は、一価のみである。特に、抗原結合部分は、抗原結合部位または抗原結合部位を所持する抗体ドメインを含む。可変抗体ドメインはいずれも、単独でまたは組み合わせて、抗原結合部位を構築するために使用されることも可能である。特に、抗原結合部位は、CDR配列の組み合わせによって形成される。CDR配列のこうした組み合わせはまた、CDR結合部位、例えば1つの可変ドメインの3つのCDR配列、例えばCDRH1、CDRH2、およびCDRH3の組み合わせ、またはCDRL1、CDRL2、およびCDRL3の組み合わせ、またはそうでなければ2つの可変ドメインの6つのCDR配列、例えばCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3の組み合わせによって形成される抗原結合ポケットと理解される。あるいは、受容体に対する天然リガンドから得られたか、または人工的構築物である、抗原結合部位が使用可能である。
【0083】
特に、単一可変抗体ドメインのCDR結合部位を、抗原結合部位、例えば可変領域の重鎖および軽鎖のドメインの結合部位(例えばdAb、Fd、VL、Vカッパ、Vラムダ、VH、VHH)、または可変抗体ドメイン対、例えばVH/VL対の結合部位として用いることも可能である。
【0084】
したがって、CDR結合部位を含む抗体構築物は、単一可変抗体ドメイン、または可変結合ドメインの対を含むことも可能であり、そして場合によって他の可変ドメインであるが異なる抗原結合特異性を持つものをさらに含み、すなわち二重特異性または多重特異性抗体構築物であり、1つの抗原結合部位のみがhuTNFR1に向けられ、そして少なくとも1つの別の抗原結合部位がhuTNFR1とは異なるターゲットに向けられており、これは、本明細書にさらに記載されるような抗体構築物が、huTNFR1ターゲットに一価のみで結合するためである。場合によって、抗体構築物は、定常抗体ドメイン、または可変および/または定常抗体ドメインの組み合わせを、連結配列またはヒンジ領域を伴いまたは伴わずに、さらに含む。例示的な抗体構築物は、Fab、F(ab’)、(Fab)
2、scFv、Fv、または全長抗体である。
【0085】
例示的な一価、単一特異性結合剤は、Fab、scFv、Fv、ドメイン抗体、IgGハーフ抗体、または一価IgG、例えば完全軽鎖、1つの完全重鎖、および重鎖のホモ二量体化を回避するように、ノブ・イントゥ・ホール技術にしたがって産生可能であるFd(Fd=VH−CH1)を欠くさらなるFc鎖(または他の非対称Fc部分)からなる1アームIgGである。
【0086】
1つの価のみがTNFR1ターゲットを認識し、そしてもう一方の価は異なるターゲットを認識する、二価形式もまた使用可能である。したがって、1つの抗原結合部位のみがTNFR1受容体に向けられる限り、2またはそれより多い抗原結合部位を含む二重特異性またはオリゴ特異性構築物を使用することも可能である。
【0087】
用語「全長抗体」は、天然存在抗体単量体において一般的にみられるFcドメインの少なくとも大部分および他のドメインを含む、任意の二価抗体分子を指すよう用いられる。この句は、本明細書において、特定の抗体分子が抗体断片ではないことを強調するために用いられる。
【0088】
用語「Fv」は、本明細書において、例えばVH、VLまたはVH/VLの、CDR結合部位を取り込む、可変ドメインの領域と理解される。用語「Fv」は、したがって、特に、VH、VL、あるいはリンカーを伴いまたは伴わず、両可変ドメインのベータ−シート構造間の相互作用によって、VLドメインに会合したVHドメインである、VH/VLのいずれかに当てはまる。
【0089】
さらに、用語「抗体」には特に、異なるターゲット抗原に対して向けられる他の抗体を実質的に含まないか、または抗体ドメインの異なる構造配置を含む、単離型の抗体が含まれるものとする。しかし、単離抗体は、例えば少なくとも1つの他の抗体、例えば異なる特異性を有するモノクローナル抗体または抗体断片、あるいはさらなる療法的活性物質および/または補助剤の組み合わせと、単離抗体の組み合わせを含有する、組み合わせ調製物中に含まれることも可能である。
【0090】
用語「抗体」は、ヒト種を含む、ヒト、ネズミ、ウサギ、ヤギ、ラマ、ウシおよびウマを含む哺乳動物、あるいは雌鶏などの鳥類を含む、動物起源の抗体に適用されるものとし、この用語には、特に、動物起源の配列、例えばヒト配列に基づく組換え抗体が含まれるものとする。特に、該用語は、ヒト化またはヒト配列を含むかまたはこうした配列からなる抗体構築物に適用され、これは、抗体構築物が、ヒト被験体を治療する薬学的目的のために提供される場合に好ましい。
【0091】
いくつかの態様において、異なる種の起源の配列、例えばネズミおよびヒト起源の配列を含む、キメラ抗体を用いることも可能である。
用語「キメラ」は、抗体に関して用いた場合、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列各々の1つの部分が、特定の種由来のまたは特定のクラスに属する抗体における対応する配列と相同である一方、鎖の残りのセグメントが、別の種またはクラスにおける対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖両方の可変領域は、哺乳動物の1つの種由来の抗体の可変領域を模倣する一方、定常部分は、別の種由来の抗体の配列に相同である。例えば、可変領域は、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、非ヒト宿主生物由来の容易に入手可能なB細胞またはハイブリドーマを用いた、現在知られる供給源に由来することも可能である。
【0092】
用語「ヒト化」は、抗体に関して用いる場合、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有し、分子の残りの免疫グロブリン構造がヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメイン上に融合される完全可変ドメイン、または可変ドメインの適切なフレームワーク領域上に移植される相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含むことも可能である。抗原結合部位は、野生型であるか、あるいは例えば1またはそれより多いアミノ酸置換によって修飾される、好ましくはより緊密にヒト免疫グロブリンに似るように修飾されることも可能である。ヒト化抗体のいくつかの型は、すべてのCDR配列を保持する(例えばマウス抗体由来の6つすべてのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。他の型は、元来の抗体に関して改変されている1またはそれより多いCDRを有する。
【0093】
抗体が望ましい抗原に結合する限り、抗体のヒト化技術に関して限定はない。ヒト化の例には、限定なしに、相補性決定領域移植(CDR移植)(Jonesら 1986, Nature 321, 522−525)、特異性決定残基移植(SDR移植)(Kashmiriら, 2005, Methods 36, 25−34)、可変ドメインのリサーフェシング(Roguskaら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 969−973)、構造に基づく選択およびCDR移植によるヒト化(Hwangら, 2005, Methods 36, 35−42)、および脱免疫化戦略(Hellendomら, 2004, Cancer Cell International 4(補遺I), 20)が含まれる。
【0094】
本発明の特定の態様において、本明細書記載の抗体は、ヒト起源のアミノ酸配列および非ヒト起源、例えば齧歯類起源のアミノ酸配列を含有する、ヒト化抗体である。
好ましい態様において、本明細書記載の抗体は、例えば組換え核酸技術によって得られうるヒト化抗体由来のFc領域を含むことも可能である。これに関連して、抗体またはその少なくとも1つの断片は、huTNFR1との相互作用に対して負の影響がない限り、1またはそれより多い突然変異または変異、例えば付加、欠失または置換されたアミノ酸または核酸を含有することも可能である。さらに、抗体は、huTNFR1の相互作用に対して正の影響を有し、そして前記分子のアンタゴニスト活性を改善する、1またはそれより多い突然変異または変異、例えば付加、欠失または置換されたアミノ酸または核酸を含有することも可能である。特に、こうした突然変異変異体は、より優れたアフィニティおよび/またはより優れた阻害活性を有する。
【0095】
例えば、抗体は、ネズミ抗体H398と同じ結合特異性を有するが、ターゲットhuTNFR1に一価で結合する、ヒト化抗体であることも可能であり、そして好ましくは、H398抗体を親抗体として用いて、H398に由来する。好ましくは結合特異性は同じであるが、ヒト化または他の突然変異技術のため、細かい特異性は変化している可能性もある。
【0096】
マウス抗ヒトTNFR1モノクローナル抗体H398は、WO2008113515A2に示されるようなVHおよびVL配列によって特徴付けられる。ヒト化に際して、WO2008113515A2に示されるような配列によって特徴付けられる、ヒト化VHおよびVL配列が得られた(IZI−06.1 VH(配列番号20)、IZI−06.1 VL(配列番号21))。ヒト化抗体は、エフェクター機能を仲介することができず、そしてなおIZI−06.1 VHおよびIZI−06.1 VLのVHおよびVL配列によって特徴付けられる、修飾Fc領域を含有するIgG1分子(ATROSAB)に変換されている。WO2008113515A2の配列は、本明細書に援用される。
【0097】
CHO細胞において産生された精製ATROSABは、ヒトおよびアカゲザル(rhesus)TNFR1−Fc融合タンパク質、ならびに組換えTNFR1融合タンパク質でトランスフェクションされたマウス胚性線維芽細胞に、親マウス抗体H398と同一のアフィニティの強い結合を示した。キメラヒト/マウスTNFR1分子を用いて、ATROSABのエピトープは、最初のシステインリッチドメイン(CRD1)およびCRD2のA1サブドメインを含む、N末端領域(アミノ酸残基1〜70)にマッピングされた。in vitroで、ATROSABは、アポトーシス誘導、ならびにNFκB依存性遺伝子発現、例えばIL−6およびIL−8産生の活性化のような、典型的なTNF仲介性反応を有効に阻害した。
【0098】
H398またはATROSAB抗体は、高アビディティであるが、生理学的条件でQCMにより、Fab形式(例えば抗原結合部位がそれぞれのFab断片の形で提供される場合)に関して測定した際、中程度のアフィニティによって特徴付けられるため、TNFR1に対するアフィニティを増加させることによって、療法潜在能力を改善することが目的であった。しかし、ATROSABのアフィニティ成熟に際して、より高いアフィニティでTNFR1に結合する完全な二価誘導体は、非常にアゴニスト性であり、これは患者の治療に問題を課すことが判明した。
【0099】
本明細書記載の抗体は、一価でターゲットに結合し、そしてそれによって驚くべきことに、受容体からの抗体の解離が低い(低k
оff速度)場合であってさえ、高アフィニティでのアゴニスト活性のこうした問題を克服する。
【0100】
好ましくは、本明細書記載の抗体は、huTNFR1の少なくとも膜遠位CRD1およびCDR2のサブドメインA1を含むか、または本質的にこれらからなるエピトープに結合する特異性を有する。
【0101】
特定の態様において、本明細書記載の抗体は、huTNFR1への結合を与える、WO2008/113515A2に記載されるようなH398の相補性決定領域(CDR)、またはその部分の1またはそれより多くを含む。H398またはATROSABのCDRは、任意の組み合わせで存在可能であり、例えば2、3、4、5または6の前記CDRが存在可能である。さらに、抗体がヒトTNFR1に対する十分なアフィニティを示す限り、任意のCDRの多数のコピーまたは遺伝子変異体が、本明細書記載のhuTNFR1抗体に存在可能である。
【0102】
用語「ヒト」は、抗体に関して用いた際、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体が含まれると理解される。本明細書記載のヒト抗体には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばランダムまたは部位特異的突然変異誘発によってin vitroで、あるいはin vivoの体細胞突然変異によって導入された突然変異)が、例えばCDR中に、含まれることも可能である。ヒト抗体には、ヒト免疫グロブリンライブラリーから、あるいは1またはそれより多いヒト免疫グロブリンに関して遺伝子導入された動物から単離された抗体が含まれる。
【0103】
用語「抗体」には、特に、任意のクラスまたはサブクラスの抗体が含まれる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体は、抗体IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの主要なクラスに割り当てられることも可能であり、そしてこれらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられることも可能である。
【0104】
該用語はさらに、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、特に組換え抗体にもさらに適用され、該用語には、組換え手段によって調製されるか、発現されるか、生成されるかまたは単離されるすべての抗体および抗体構造が含まれ、例えば異なる起源、例えばネズミ、キメラ、ヒト化抗体またはハイブリドーマ由来抗体由来の遺伝子または配列を含む、動物、例えばヒトを含む哺乳動物から生じる抗体が含まれる。さらなる例は、抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、あるいは抗体または抗体ドメインの組換えコンビナトリアルライブラリーから単離される抗体、あるいは抗体遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む、任意の他の手段によって、調製されるか、発現されるか、生成されるかまたは単離される抗体を指す。
【0105】
用語「抗体」はまた、抗体誘導体、特に機能的活性誘導体も指すことが理解される。抗体誘導体は、1またはそれより多い抗体ドメインまたは抗体および/または融合タンパク質の任意の組み合わせであって、抗体の任意のドメインが、1またはそれより多い他のタンパク質または化学薬品、例えば他の抗体、例えばCDRループを含む結合構造、受容体ポリペプチドだけでなく、リガンド、足場タンパク質、酵素、毒素等の任意の位で融合しているかまたは連結されていることも可能である。抗体誘導体は、多様な化学技術、例えば共有カップリング、静電相互作用、ジスルフィド結合等によって、他の物質に会合するかまたは結合することによって得られうる。抗体に結合している他の物質は、脂質、炭水化物、核酸、有機および無機分子またはその任意の組み合わせ、例えばプロドラッグまたは薬剤であることも可能である。特定の態様は、親水性ポリマー、例えばPEGにカップリングした抗体構築物の機能的活性誘導体を得るための親水性ポリマーへの抗体の結合、および/またはポリペプチド、例えばヒト血清アルブミン、トランスフェリン、Ig結合ドメイン、PEG模倣ポリペプチド伸長、抗体Fc断片、または前述のポリペプチドのいずれかの機能的変異体への融合を指す。こうした機能的活性誘導体は、例えば、PEG化、HES化、またはPSA化抗体構築物である。こうした抗体構築物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG化)、グリコシル化PEG、ヒドロキシルエチルデンプン(HES化)、またはポリシアル酸(PSA)などの半減期延長部分への連結によって修飾される。特に、誘導体は、半減期延長部分の1またはそれより多い分子の共有結合によって産生される。
【0106】
特定の側面にしたがって、本明細書記載の抗体構築物は、ヒトIgG Fcの天然存在変異体(配列番号24)のいずれかに由来する、機能的活性Fc変異体を含む。
機能的活性Fc変異体は、上記配列を変化させることによって得られることが可能であり、そして抗体を安定化させるかまたは半減期延長を与える能力を含む、それぞれの配列によって示されるものと類似の生物学的活性を有することによって特徴付けられる。好ましいFc変異体は、本明細書記載の抗体において用いた際、Fcエフェクター機能を減少させる突然変異を含む。
【0107】
機能的活性誘導体は、特に、抗体自体の一次アミノ酸配列を改変しない融合または共有化学修飾によって産生される。誘導体は、例えば、循環半減期を延長するか、安定性を増加させるか、クリアランスを減少させるか、または免疫原性を改変することを含む、望ましい特性を有することも可能である。
【0108】
本発明の特定の態様において、huTNFR1抗体は、生物学的に許容されうる化合物との特異的相互作用を可能にするさらなるタグを含む。ヒトに投与した際に、huTNFR1へのhuTNFR1抗体の一価結合または免疫原性反応に、まったく負の影響がないか、許容されうる負の影響しかない限り、本発明において使用可能なタグには、特に制限はない。適切なタグの例には、Hisタグ、Mycタグ、FLAGタグ、Strepタグ、カルモジュリンタグ、GSTタグ、MBPタグ、およびSタグが含まれる。
【0109】
本明細書記載の抗体は、例えば有機分子、酵素標識、放射性標識、着色標識、蛍光標識、色素原標識、発光標識、ハプテン、ジゴキシゲニン、ビオチン、金属錯体、金属、コロイド性金およびその混合物からなる群より選択される、標識またはレポーター分子にコンジュゲート化されることも可能である。標識またはレポーター分子にコンジュゲート化された抗体を、例えばアッセイ系または診断法において、使用することも可能である。
【0110】
本明細書記載の抗体は、前記コンジュゲートの、例えば結合アッセイ(例えばELISA)および結合研究における単純な検出を可能にする、他の分子にコンジュゲート化されることも可能である。
【0111】
用語「抗体」はまた、親CDR配列の機能的活性CDR変異体を含む抗体、および親抗体の機能的活性変異体抗体を含む、抗体変異体も指すことが理解される。
特に、本明細書において、そのCDR配列によって、そして場合によってそのVHおよび/またはVL配列によって例示されるような抗体に由来する抗体が使用可能である。したがって、例示される抗体は、1またはそれより多いCDR領域またはCDR変異体が、機能的活性を維持しながら産生される誘導体を得るための親抗体として働くことも可能である。
【0112】
親抗体または抗体配列、例えば親CDRまたはFR配列由来の抗体は、本明細書において、特に、例えばin silicoまたは組換え操作あるいは化学誘導体化または合成によるその他のものによって得られる、親配列の突然変異体または変異体と理解される。
【0113】
特に、本明細書に記載するような抗体由来の抗体は、機能的に活性でありつつ、CDRまたはFR領域の少なくとも1つに、あるいはHCまたはLCの定常領域に、少なくとも1つの点突然変異を含む、CDR領域またはそのCDR変異体の少なくとも1またはそれより多く、例えば重鎖可変領域の少なくとも3のCDRおよび/または軽鎖可変領域の少なくとも3のCDRを含むことも可能である。
【0114】
用語「変異体」は、特に例えば当該技術分野において利用可能なアフィニティ成熟技術によって、例えば抗体安定性、エフェクター機能または半減期を操作するために定常ドメインにおいて、あるいは抗原結合特性を改善するために可変領域において、特に特定の抗体アミノ酸配列または領域内で、欠失させるか、交換するか、挿入を導入するか、あるいはアミノ酸配列を化学的に誘導体化するために、例えば突然変異誘発法によって得られる、抗体、例えば突然変異抗体または抗体の断片を指すものとする。既知の突然変異誘発法のいずれを使用してもよく、これには、望ましい位で、例えばランダム化技術によって得られる点突然変異が含まれる。いくつかの場合において、位はランダムに選択され、例えば可能なアミノ酸いずれか、または抗体配列をランダム化するために好ましいアミノ酸の選択を伴うかいずれかであってもよい。用語「突然変異誘発」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を改変するための当該技術分野に認識される任意の技術を指す。好ましいタイプの突然変異誘発には、エラープローンPCR突然変異誘発、飽和突然変異誘発、または他の部位特異的突然変異誘発が含まれる。
【0115】
用語「変異体」は、機能的活性変異体を特に含むものとする。
用語、CDR配列の「機能的活性変異体」は、本明細書において、「機能的活性CDR変異体」と理解され、そして抗体の「機能的活性変異体」は、本明細書において、「機能的活性抗体変異体」と理解される。機能的活性変異体は、1またはそれより多いアミノ酸の挿入、欠失または置換、あるいはアミノ酸配列における1またはそれより多いアミノ酸残基またはヌクレオチド配列内のヌクレオチド、あるいは配列の遠位のいずれかまたは両端での、例えばCDR配列におけるN末端および/またはC末端の1または2のアミノ酸での、および/または中央の1またはそれより多いアミノ酸(すなわちCDR配列の中央)での化学的誘導体化による、この配列(親抗体または親配列)の修飾から生じる配列を意味し、そしてこうした修飾は、この配列の活性に影響を及ぼさず、特にこれを損なわない。結合部位が、選択したターゲット抗原に特異性を有する場合、これは、変化させる、例えば特定のエピトープに対する細かい特異性、アフィニティ、アビディティ、K
onまたはK
off速度等が変化するように変化する可能性もあるが、抗体の機能的活性変異体は、なお、同じかまたはあらかじめ決定した結合特異性を有するであろう。例えば、アフィニティ成熟抗体は、機能的活性変異体抗体と特に理解される。したがって、アフィニティ成熟抗体における修飾CDR配列は、機能的活性CDR変異体と理解される。
【0116】
好ましい態様において、親抗体の機能的活性変異体は
a)分子の配列の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%、そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%を含む、抗体の生物学的活性断片であり;
b)少なくとも1つのアミノ酸置換、付加および/または欠失によって抗体に由来し、機能的活性変異体は、分子またはその部分に配列同一性を有し、例えば少なくとも50%の配列同一性、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%そして最も好ましくは少なくとも97%、98%または99%の配列同一性の抗体であり;そして/または
c)抗体またはその機能的活性変異体およびさらにポリペプチドまたはヌクレオチド配列に対して異種性である少なくとも1つのアミノ酸またはヌクレオチドからなる。
【0117】
本発明の1つの好ましい態様において、本明細書記載の抗体の機能的活性変異体は、上述の変異体と本質的に同一であるが、異なる種の相同配列に由来する点で、それぞれ、そのポリペプチドまたはヌクレオチド配列とは異なる。
【0118】
特に、本明細書に記載するような、機能的活性抗体構築物、変異体または誘導体は、TNFR1抗原結合に関して機能的に活性であり、特に、高アフィニティの結合(特にK
Dおよびk
off速度によって決定されるようなもの)を示し、そしてさらに、例えば細胞に基づくアッセイにおいて決定されるように、いかなる潜在的なアゴニスト性副作用も回避するよう考慮される。TNFR1仲介性細胞死の阻害を決定するための例示的アッセイは、Kym−1細胞を使用する。TNFまたはLTアルファ仲介性炎症反応を決定するためのさらなる例示的アッセイは、それぞれ、HeLa細胞またはHT1080細胞からのIL−6またはIL−8放出の阻害を決定する。こうしたアッセイは、実施例セクションに例示される。
【0119】
機能的活性変異体は、例えば親抗体の配列を変化させることによって得られることも可能であり、例えば図に列挙するような抗体いずれかと同じ結合部位を含むが、結合部位以外の抗体領域内に修飾を含むか、または親抗体から結合部位内の修飾によって得られるが、抗原結合を損なわず、そして好ましくは、TNFR1抗原に特異的にまたは選択的に、例えば高アフィニティでそして場合によって高会合および低解離によって抗原に結合する能力を含めて、親抗体と実質的に同じ生物学的活性を有するかまたはさらに改善された活性を有する。
【0120】
本明細書に記載するような抗体構築物の一次機能は、TNF−huTNFR1相互作用の阻害剤としての機能である。本明細書で理解されるような用語「阻害剤」は、TNFR1シグナル伝達の阻害または異なる機構によって、
a)in vitroおよび/またはin vivoでTNFR1シグナル伝達を調節し(例えば減少させるかまたは排除し);そして/または
b)in vitroおよび/またはin vivoでTNFR1仲介性細胞死を阻害し、そして/または
c)in vitroおよび/またはin vivoでTNF仲介性細胞性刺激が、炎症性サイトカインを放出することを阻害する
能力を有する物質である。こうした能力または機能は、特に、本発明にしたがって望ましい生物学的活性であると考慮される。特に、本明細書に記載するような阻害剤は、細胞表面上のTNFR1の1またはそれより多い分子に対する、TNFの1またはそれより多い分子の結合に干渉する。療法適用のため、理論によって束縛されることなく、本発明のTNF−huTNFR1相互作用阻害剤は、TNFの存在下でのhuTNFR1シグナル伝達、またはTNFの存在下でのhuTNFR1仲介性細胞死を阻害する能力、あるいはTNFの存在下で炎症性サイトカインを放出する細胞性刺激を阻害する能力を有することも可能である。根底にある機構とは関わりなく、炎症性障害または疾患の治療は、TNF−huTNFR1相互作用阻害剤の抗炎症活性によって進行可能である。TNF−huTNFR1タンパク質−タンパク質相互作用を下方調節するかまたは遮断することによって、炎症性疾患に対する効果を達成可能である。
【0121】
本明細書において、用語「シグナリング」および「シグナル伝達」は、特異的でそして連続した一連の分子を通じ、細胞表面受容体を介した、核中の遺伝子への細胞外刺激の伝達を伴い、刺激に対する特定の細胞性反応を生じる、生化学的プロセスを示す。
【0122】
huTNFR1相互作用の阻害は、ex vivoで細胞に基づくアッセイにおいて、またはin vivoで用量依存性方式で測定されるように、TNFR1シグナリングまたはシグナル伝達の影響の下方調節を導きうる。阻害剤または抗体構築物および変異体または誘導体の機能的活性は、ex vivoの細胞に基づくアッセイで決定されるように、in vivoでTNF−huTNFR1相互作用またはLTα−huTNFR1相互作用を阻害する、阻害性機能によって特に特徴付けられる。さらなるアッセイを使用して、TNF−TNFR1相互作用をアゴナイズするであろう、TNFR1受容体の架橋と関連する実質的な副作用を排除することも可能である。適切なアッセイは、それぞれ、炎症性サイトカインIL−6またはIL−8を産生する刺激活性の非存在下で、HeLaまたはHT1080細胞に対する抗体または変異体の活性を決定する。例示的な試験は、以下の実施例セクションに記載される。
【0123】
阻害は、典型的には、huTNFR1相互作用または活性の影響の、少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または最大レベルの減少を導く。本明細書記載の阻害剤または抗体を産生しそして特徴付けるための方法は、当該技術分野に周知である。好ましい態様において、抗体変異体は、huTNFR1発現細胞を使用した1またはそれより多い細胞に基づくアッセイ、あるいはin vivoアッセイを用いて、産生され、そしてあらかじめ定義された特性に関してスクリーニングされる。こうしたアッセイに関して、細胞が結合され、例えばTNFの存在下および非存在下で、アンタゴニストおよびアゴニスト活性を決定可能であるように、抗体は典型的には外因性に添加される。これらのアッセイは、典型的には、免疫グロブリンの機能に基づき;すなわち抗体がhuTNFR1に結合し、そして何らかの生化学的事象、例えば競合結合アッセイにおける前記細胞へのTNF結合の遮断、TNF/受容体結合阻害、TNFの存在下または非存在下でのサイトカイン発現の減少、特に炎症性インターロイキン、例えばIL−6またはIL−8、アポトーシス等を仲介する。
【0124】
こうしたアッセイは、しばしば、抗体に対する細胞の反応、例えば細胞生存、細胞死、細胞形態の変化、あるいは転写活性化、例えば天然遺伝子またはレポーター遺伝子の細胞発現の監視を伴う。いくつかのアッセイに関して、ターゲット細胞に加えて、さらなる細胞または構成要素、例えば血清補体、またはエフェクター細胞、例えば末梢血単球(PBMC)、NK細胞、マクロファージ等が添加される必要がありうる。こうしたさらなる細胞は、任意の生物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ウサギ、およびサル由来であることも可能である。
【0125】
細胞死または生存を監視するための方法は当該技術分野に知られ、そしてこれには、色素、免疫化学試薬、細胞化学試薬、および放射性試薬の使用が含まれる。例えば、カスパーゼ染色アッセイは、アポトーシスが測定されることを可能にし、そして放射性物質または蛍光色素、例えばアラマーブルーの取り込みまたは放出は、細胞増殖または活性化が監視されることを可能にする。
【0126】
転写活性化はまた、細胞に基づくアッセイにおいて機能をアッセイするための方法としても働きうる。この場合、上方制御されうる天然遺伝子または免疫グロブリンに関してアッセイすることによって、反応を監視することも可能であり、例えば、特定のインターロイキンの放出を測定することも可能であるし、あるいはレポーター構築物を通じて読み取ることも可能である。細胞に基づくアッセイはまた、本明細書記載の抗体の存在に対する反応として、細胞の形態学的変化の測定を伴うことも可能である。
【0127】
本明細書記載の抗体は、好ましくは、TNFアンタゴニスト活性のみを有し(特に検出可能なアゴニスト活性を持たず)、したがって、望ましくない炎症反応、アポトーシスおよび壊死、臓器不全および敗血症ショックを生じうる、循環中のTNFレベル増加によって引き起こされる炎症反応を減少させる。好ましい抗体は、例えば以下の実施例にさらに記載するような試験系によって、TNFまたはLTアルファを半最大飽和濃度で、好ましくは、それぞれ0.01〜0.1nMの範囲のTNFおよびLTアルファを使用した、細胞に基づくアッセイにおいて測定した際に、100nM未満、好ましくは20nM未満、より好ましくは10nM未満、最も好ましくは一桁のナノモル範囲またはそれ未満のIC
50に対応するアンタゴニスト活性を有する。
【0128】
潜在的なTNF模倣アゴニスト活性は、好ましくは、同じ細胞に基づくアッセイであるが、TNFを使用せず、例えば以下の実施例にさらに記載するような試験系によって、測定される。本明細書記載の抗体は、好ましくは、有意なアゴニスト活性を持たず、TNFの非存在下でのHeLaまたはHT1080細胞のインキュベーションが、サイトカインの誘導をまったくまたは最低限度でしか生じない、例えば抗体の少なくとも5nMまたはおよそ10nMの濃度で、0.5ng/ml未満のIL−6またはIL−8レベル上昇しか生じない。好ましくは、サイトカイン産生はまったくないか、あるいは最低限度または負であり、これは、10pg/10
5細胞未満の量によって決定可能である。好ましい例において、サイトカイン発現および放出は、18時間で2,5pg/100.000細胞未満である。好ましくは、したがって、アゴニスト活性は、基底レベル未満、または匹敵するTNF濃度の反応の2%未満、好ましくは同等のまたは最大のTNF反応の1%未満である。
【0129】
本明細書記載の抗体は、好ましくは、HeLaまたはHT1080細胞のインキュベーションが、TNFの非存在下で、匹敵するTNF濃度の反応の2%未満、好ましくは同等のTNF反応の1%未満のサイトカインの最低限度の誘導しか生じない場合、有意なアゴニスト活性を持たない。
【0130】
本明細書記載の例示的な抗体が、炎症性サイトカイン、例えばIL−6またはIL−8の発現または放出を誘発しないことが、特に立証されてきている。それによって、TNFR1に結合するアフィニティが高いにもかかわらず、望ましくない炎症状態または組織損傷を回避することが可能である。こうした副反応の減少は、慢性疾患を治療するための薬学的調製物を提供するために特に有用である。
【0131】
用語「実質的に同じ生物学的活性」は、本明細書において、匹敵するまたは親抗体に関して決定されるような活性と実質的に同じ活性である、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、例えば少なくとも100%、または少なくとも125%、または少なくとも150%、または少なくとも175%、または例えば最大200%、またはそれより高い活性によって示されるような活性を指す。
【0132】
本明細書に記載されるような好ましい抗体構築物は、huTNFR1抗原結合に関して機能的に活性であり、好ましくは5x10
−9M未満、または4x10
−9M未満、または3x10
−9M未満、または2x10
−9M未満、または10
−9M未満、または10
−10M未満のK
Dで、抗原に結合する高アフィニティを有する。特に、解離傾向が低く、10
−3s
−1未満、または5x10
−4s
−1未満、または10
−5s
−1未満のk
offである。特に、会合傾向が高く、少なくとも10
5M
−1s
−1、または10
6M
−1s
−1のk
onである。
【0133】
好ましい抗体変異体はなお、huTNFR1ターゲットを特異的に認識し、アフィニティは増加している可能性があり、そして/またはより低い解離および/またはより高い会合を伴い、ターゲットに有効に結合し、そしてより長い期間に渡って、抗原−抗体相互作用を維持する可能性がある。なお、K
D、k
off、および/またはk
on値の相違は、例えば抗体のアフィニティ成熟によって得られる、1、2、または3対数であることも可能である。
【0134】
抗体の結合アフィニティは、通常、抗原結合部位の半分が占有される、抗体の濃度に関して特徴付けられ、解離定数(KdまたはK
D)として知られるものである。通常、結合剤は、K
D<10
−8Mで高アフィニティ結合剤と見なされ、いくつかの場合、例えば療法目的のため、より高いアフィニティであり、例えばK
D<10
−9M、さらにより好ましくはK
D<10
−10Mである。
【0135】
さらに特に好ましい態様において、抗原結合アフィニティは、中程度のアフィニティ、例えば10
−7未満のK
Dである。中程度のアフィニティの結合剤が提供されることも可能であり、そしてこれは特に、本明細書記載の阻害剤として使用可能な望ましいアフィニティ特性を持つアフィニティ成熟変異体を操作するために用いられることも可能である。
【0136】
アフィニティ成熟は、ターゲット抗原に対するアフィニティが増加した抗体を産生するプロセスである。本明細書に開示する、本発明の多様な態様にしたがって、アフィニティ成熟抗体を生成するため、当該技術分野で利用可能なアフィニティ成熟ライブラリーを調製し、そして/または用いる1またはそれより多い方法のいずれかを使用することも可能である。例示的なこうしたアフィニティ成熟法および使用、例えばランダム突然変異誘発、細菌変異誘発系統継代培養、部位特異的突然変異誘発、突然変異ホットスポットターゲティング、簡潔突然変異誘発、抗体シャッフリング、軽鎖シャッフリング、重鎖シャッフリング、CDR1および/またはCDR1突然変異誘発、ならびに本明細書に開示する本発明の多様な態様にしたがって方法および使用を実行するために使用可能なアフィニティ成熟ライブラリーを産生し、そして用いる方法には、例えば:Wark & Hudson, 2006, Advanced Drug Delivery Reviews 58: 657−670に開示されるものが含まれる。
【0137】
アミノ酸突然変異誘発を含むか、または免疫グロブリン遺伝子セグメントにおける体細胞突然変異の結果としての抗体の構造的変化を含む、抗原に対する結合部位の変異体を産生し、そしてより高いアフィニティに関して選択する。アフィニティ成熟抗体は、親抗体よりも数対数倍優れたアフィニティを示すことも可能である。単一の親抗体をアフィニティ成熟に供することも可能である。あるいは、ターゲット抗原に対する類似の結合アフィニティを有する抗体のプールを、アフィニティ成熟単一抗体またはこうした抗体のアフィニティ成熟プールを得るための、親構造と見なすことも可能である。
【0138】
本明細書記載の抗体の好ましいアフィニティ成熟変異体は、結合のアフィニティに、少なくとも2倍の増加、好ましくは少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは少なくとも50倍、または好ましくは少なくとも100倍の増加を示す。中程度の結合アフィニティを有する抗体いずれかと、親分子のそれぞれのライブラリーを使用した選択キャンペーンの経過において、アフィニティ成熟を使用して、本明細書記載の抗体を得ることも可能である。あるいは、本明細書記載の抗体のアフィニティ成熟によって、アフィニティをさらにより増加させて、10
−10M未満、またはさらに10
−11M未満のK
Dに対応する高い値を得ることも可能である。
【0139】
特定の態様において、アフィニティELISAアッセイによって、結合アフィニティを決定する。特定の態様において、BIAcore ForteBioまたはMSDアッセイによって、結合アフィニティを決定する。特定の態様において、動力学的方法によって、結合アフィニティを決定する。特定の態様において、平衡/溶液法によって、結合アフィニティを決定する。特定の態様において、特に、生理的条件に似た(約37℃、約50Hzの密度)あらかじめ決定した条件での、標準水晶振動子マイクロバランス(QCM)測定によって、結合アフィニティを決定する。
【0140】
用語「機能的活性変異体」にはまた、天然存在アレル変異体、ならびに突然変異体または任意の他の非天然存在変異体も含まれる。当該技術分野に知られるように、アレル変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を本質的には改変しない、1またはそれより多いアミノ酸の置換、欠失、または付加を有すると特徴付けられる、(ポリ)ペプチドの代替型である。
【0141】
機能的活性変異体は、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列における配列改変によって、例えば1またはそれより多い点突然変異によって得られることが可能であり、配列改変は、本発明の組み合わせで用いた際に、改変されないポリペプチドまたはヌクレオチド配列の機能を保持するかまたは改善する。こうした配列改変には、限定されるわけではないが、(保存的)置換、付加、欠失、突然変異および挿入が含まれることも可能である。
【0142】
特定の機能的活性変異体は、CDR変異体を含む抗体構築物である。CDR変異体には、CDR領域中の少なくとも1つのアミノ酸が修飾されているアミノ酸配列が含まれ、前記修飾は、アミノ酸配列の化学的または部分的改変であることも可能であり、該修飾は、変異体が、未修飾配列の生物学的特性を保持することを可能にする。CDRアミノ酸配列の部分的改変は、1からいくつかのアミノ酸、例えば1または2、またはさらに多く、最大3、4または5のアミノ酸の欠失または置換によるか、あるいは1からいくつかのアミノ酸、例えば1または2、またはさらに多く、最大3、4または5のアミノ酸の付加または挿入によるか、あるいは1からいくつかのアミノ酸、例えば1または2、またはさらに多く、最大3、4または5のアミノ酸の化学的誘導体化、あるいはその組み合わせによることも可能である。アミノ酸残基の置換は、保存的置換、例えば1つの疎水性アミノ酸の別の疎水性アミノ酸に対する置換であることも可能である。
【0143】
保存的置換は、その側鎖および化学特性に関連するアミノ酸ファミリー内で行われるものである。こうしたファミリーの例は、塩基性側鎖、酸性側鎖、非極性脂肪族側鎖、非極性芳香族側鎖、非荷電極性側鎖、小側鎖、大側鎖等のアミノ酸である。
【0144】
点突然変異は、異なるアミノ酸に関する、1またはそれより多い単一の(非保存的)または2つ組のアミノ酸の置換または交換、欠失または挿入がある点で、非操作アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列の発現を生じる、ポリヌクレオチドの操作と特に理解される。
【0145】
フレームワーク領域のいくつかの点突然変異は、例えば組換え産生宿主細胞株による発現を改善することによって、製造可能性を増加させるであろう。いくつかの態様にはまた、例えば熱安定性によって決定されるような、in vivoおよび/またはin vitroの安定性を改善させる、フレームワーク領域中の点突然変異も含まれるであろう。例えば、VH配列は、抗体の熱安定性を実質的に増加させることが立証された、1またはそれより多い、いくつかの点突然変異を含むことも可能である。熱安定化変異体は、例えばIZI06.1のVHおよびVL配列(VH:配列番号20、VL:配列番号21)を含む抗体構築物の変異体であり、ここでVHドメイン配列は、(親)IZI06.1 VH配列(配列番号20)の変形であり、そして以下のアミノ酸(Kabat番号付け)のいずれかを含む:
a)FR1における1位:QまたはH;
b)CDRH2における
i)3位:YまたはV;
ii)5位:Y、T、またはS;
iii)6位:SまたはQ;
iv)8位:HまたはE;
v)10位:YまたはK;
vi)13位:EまたはD。
【0146】
さらに好ましい変異は、VL配列(配列番号21)に関し、そしてこれはCDRL3(3位)にS91G点突然変異を含む。
別の生殖系列配列をヒト化目的のために用いることも可能であり、これは、限定された数の点突然変異を含むさらなるFR変異体を導くことも可能であり、そしてこの変異体はやはり増加した熱安定性を有するであろう。
【0147】
熱安定性を決定するための例示的なアッセイを、以下の実施例セクションに提供する。
好ましい点突然変異は、同じ極性および/または電荷のアミノ酸の交換を指す。これに関連して、アミノ酸は、64の3つ組コドンにコードされる、20の天然存在アミノ酸を指す。これらの20のアミノ酸は、中性電荷、正電荷、および負電荷を有するものに分けられうる:
「
中性」アミノ酸を、それぞれの3文字および1文字コードおよび極性とともに、以下に示す:
アラニン:(Ala、A)非極性、中性;
アスパラギン:(Asn、N)極性、中性;
システイン:(Cys、C)非極性、中性;
グルタミン:(Gln、Q)極性、中性;
グリシン:(Gly、G)非極性、中性;
イソロイシン:(Ile、I)非極性、中性;
ロイシン:(Leu、L)非極性、中性;
メチオニン:(Met、M)非極性、中性;
フェニルアラニン:(Phe、F)非極性、中性;
プロリン:(Pro、P)非極性、中性;
セリン:(Ser、S)極性、中性;
スレオニン:(Thr、T)極性、中性;
トリプトファン:(Trp、W)非極性、中性;
チロシン:(Tyr、Y)極性、中性;
バリン:(Val、V)非極性、中性;および
ヒスチジン:(His、H)極性、正(10%)中性(90%)。
【0148】
「
正」荷電アミノ酸は以下の通りである:
アルギニン:(Arg、R)極性、正;および
リジン:(Lys、K)極性、正。
【0149】
「
負」荷電アミノ酸は以下の通りである:
アスパラギン酸:(Asp、D)極性、負;および
グルタミン酸:(Glu、E)極性、負。
【0150】
「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、本明細書記載の抗体配列および相同体に関して、配列を整列させ、そして必要であればギャップを導入して、最大パーセント配列同一性を達成した後、そして配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮せずに、特定のポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義される。当業者は、比較しようとする配列の全長に渡って、最大整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含めて、整列を測定するための適切なパラメータを決定することも可能である。
【0151】
抗体変異体は、機能性であり、そして機能的同等物として働きうる、例えば特定のターゲットに結合し、そして機能的特性を持つ、相同体、類似体、断片、特定のグリコシル化パターンを有する、例えば糖鎖操作によって産生された修飾または変異体を含むと特に理解される。
【0152】
本明細書記載の抗体は、Fcエフェクター機能を示してもまたは示さなくてもよい。作用様式は、Fcエフェクター機能を含まない抗体を中和することによって主に仲介されるが、Fcは、補体を補充し、そして免疫複合体の形成を通じて、ターゲット抗原、例えば毒素の、循環からの排除を補助することも可能である。
【0153】
特定の抗体は、活性Fc部分を回避することも可能であり、したがって、抗体のFc部分を含有しないかまたはFcガンマ受容体結合部位を含有しない抗体ドメインで構成されるか、あるいは例えばFcエフェクター機能を減少させる、特にADCCおよび/またはCDC活性を抑止するかまたは減少させる修飾によって、Fcエフェクター機能を欠く抗体ドメインを含むかいずれかであることも可能である。別の抗体を操作して、Fcエフェクター機能を増加させる、特にADCCおよび/またはCDC活性を増進する修飾を取り込むことも可能である。
【0154】
用語「Fc断片」または「Fc領域」には、本明細書において、特に、Fc受容体結合特性が不全である、例えば糖鎖操作されたFc領域を含む突然変異体または機能的活性変異体、あるいはエフェクター機能が下方制御されたおよび/または半減期が延長されたものが含まれるものとする。
【0155】
用語「エフェクター機能」は、本明細書において、抗体のFc領域に結合するエフェクターリガンドによって仲介される効果を意味するものとする。例示的なエフェクターリガンドは、Fc受容体、または免疫グロブリンに結合するFc受容体様分子である。Fc受容体は、免疫系の防御機能に貢献する、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、およびマスト細胞を含む、特定の細胞表面上に見られるタンパク質である。いくつかの異なるタイプのFc受容体があり、認識する抗体のタイプに基づいて分類される:最も一般的な抗体クラス、IgGに結合するものは、Fcガンマ受容体(FcγRまたはFcgR)と称される。FcγRファミリーには、いくつかのメンバー:FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32a)、FcγRIIB(CD32b)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)が含まれる。エフェクター分子の中には、補体タンパク質、例えばC1qもある。
【0156】
別のFc受容体、新生Fc受容体(FcRn)もまたIgGに結合し、そしてこの抗体の保存および半減期に関与する。本発明にしたがって、FcRnによって仲介される機能は下方調節されないことが好ましい。
【0157】
用語「下方調節」は、遺伝子または遺伝子群、あるいはポリペプチドによって仲介される影響の、遺伝子突然変異あるいは遺伝子発現または遺伝子発現産物、例えば核酸もしくはポリペプチド活性の下方制御による、特にリガンド、例えばエフェクターリガンドの結合の阻害を含めて、アフィニティ、アビディティまたは特異性のような結合特性の減少による、少なくとも部分的な減少を指すものとする。それによって、減少したADCCおよび/またはCDCを示す抗体を得ることも可能である。
【0158】
抗体依存性細胞仲介性細胞傷害性(ADCC)は、結合した抗体の定常領域を認識するFc受容体を含む細胞による、抗体でコーティングされたターゲット細胞の殺傷である。大部分のADCCは、Fc受容体FcγRIIIまたはCD16を表面上に有するNK細胞によって仲介される。典型的なアッセイは、新鮮に単離されたエフェクター細胞を添加する前に、連続希釈した抗体とインキュベーションした、ラモス細胞のようなターゲット細胞を使用する。ADCCアッセイは次いで、さらに数時間インキュベーションされ、そして%細胞傷害性を検出する。通常、ターゲット:エフェクター比は、約1:16であるが、1:1から最大1:50であることも可能である。
【0159】
補体依存性細胞傷害性(CDC)は、ターゲット細胞表面に結合した抗体が、補体を固定し、これが膜攻撃複合体の組み立てを生じて、ターゲット細胞膜に穴を開け、続いて細胞溶解が生じる、細胞殺傷機構である。一般的に用いられるCDCアッセイは、ADCC決定と同じ方法にしたがうが、エフェクター細胞の代わりに補体含有血清を用いる。
【0160】
本明細書記載の抗体は、エフェクター機能を仲介することができないFc領域を有し、好ましくはADCCおよびCDCアッセイのいずれかによって決定されるような下方調節された細胞傷害活性を有し、これは、好ましくは対照と比較した際に、細胞溶解の割合の有意な減少を提供するようなものである。絶対割合減少は、好ましくは10%より高く、より好ましくは20%より高く、さらにより好ましくは30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%より高い。最も好ましくは、抗体は、ADCCまたはCDC活性の少なくとも1つを本質的に含まず、例えば天然(非修飾)抗体に比較した際、典型的なADCCおよび/またはCDC活性の10%未満を有する。用語「本質的に含まない」はまた、本明細書において、標準アッセイにおいて測定した際、こうした活性を完全に欠く抗体変異体を指すものとする。
【0161】
Fc領域内の特定の点突然変異は、エフェクター機能を有効に下方調節することが当該技術分野において周知である。特に好ましい突然変異は、Fcガンマ受容体(FcgR)を通じた免疫補充の抑止を提供する、異なるFcgRに関するヒトIgG上の結合部位の領域において使用される。ヒトおよびネズミIgG上のFcgRに関する結合部位は、IgG残基233〜239で構成される下部ヒンジ領域に主にマッピングされる。さらなる広いセグメント、例えばGly316〜Lys338がヒトFcγRIに関して、Lys274〜Arg301およびTyr407〜Arg416がヒトFcγRIIIに関して決定された。ヒトFcガンマRIIIAとヒトIgG1 Fc断片の3.2Å結晶構造は、FcγRIIIAへの結合に関与するものとして、IgG1残基Leu234〜Ser239、Asp265〜Glu269、Asn297〜Thr299、およびAla327〜Ile332を示した。ヒトFcγR受容体(FcγRI、FCγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIA)に関するヒトIgG1の高解像度マッピングに言及する概説が、Shieldsら 2001, J. Biol. Chem. 276:6591−604に提供される。
【0162】
抗体またはFc領域は、特定の突然変異または発現系の選択によって、グリコシル化されるかまたはされず、あるいは特定のグリコシル化パターンを得るために糖鎖操作されることも可能である。
【0163】
用語「糖鎖操作」は、抗体配列またはFc領域に関して、糖鎖操作の結果として、修飾ADCCおよび/またはCDCを有するグリコシル化変異体を指すものとする。すべての抗体は、重鎖定常領域において保存された位で炭水化物構造を含有し、各アイソタイプは、N連結炭水化物構造の別個のアレイを所持し、これが多様にタンパク質組み立て、分泌または機能活性に影響を及ぼす。IgG1型抗体は、各CH2ドメインにおいて、Asn297で保存されたN連結グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に付着した2つの複合二分岐オリゴ糖は、CH2ドメインの間に包埋され、ポリペプチド主鎖と広範な接触を形成し、そしてその存在は、抗体が、抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を仲介するために必須である(Lifelyら, 1995, Glycobiology 5:813−822)。例えばN297を、例えばAに突然変異させることを通じたN297での、またはT299でのN−グリカンの除去は、典型的には、減少したADCCを伴う無グリコシル化Fcを生じる。
【0164】
抗体グリコシル化の大きな相違は、細胞株間で起こり、そしてさらに、異なる培養条件下で増殖させた所定の細胞株に関して、重要でない相違が見られる。細菌細胞における発現は、典型的には、無グリコシル化抗体を提供し、これは本質的に、ADCCおよび/またはCDC活性を含まない。二分GlcNAc形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼであるβ(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン制御発現を伴うCHO細胞は、改善されたADCC活性を有すると報告された(Umanaら, 1999, Nature Biotech. 17:176−180)。宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生中にグリコシル化に影響を及ぼす要因には、増殖様式、培地配合、培養密度、酸素添加、pH、精製スキーム等が含まれる。
【0165】
用語「抗原結合部位」または「結合部位」は、抗原結合に関与する抗体の部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および/または軽(「L」)鎖、またはその可変ドメインのN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。「超可変領域」と称される、重鎖および軽鎖のV領域内の3つの非常に多様なストレッチは、フレームワーク領域として知られるより保存された隣接ストレッチの間に挿入される。抗原結合部位は、結合したエピトープまたは抗原の三次元表面に相補的である表面を提供し、そして超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。CDRに取り込まれる結合部位はまた、本明細書において、また、「CDR結合部位」とも称される。
【0166】
用語「抗原」は、本明細書において、用語「ターゲット」または「ターゲット抗原」と交換可能に用いられ、抗体結合部位によって認識される、全ターゲット分子またはこうした分子の断片を指すものとする。特に、抗原の下位構造、例えばポリペプチドまたは炭水化物構造は、一般的に「エピトープ」、例えばB細胞エピトープまたはT細胞エピトープと称され、免疫学的に適切であり、こうした結合部位によって認識されうる。huTNFR1抗原は、大部分のヒト細胞表面上の単量体または多量体サイトカイン受容体として、三量体TNFまたはLTαに特異的に結合可能な受容体構造を含む抗原である。
【0167】
用語「huTNFR1」は、本明細書において、大部分のヒト細胞上に遍在性に発現されているTNFのCD120a TNFR1(p55/60、TNFRSF1A腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー1A[ホモ・サピエンス(Homo sapiens)(ヒト)])受容体を指すものとする。
【0168】
用語「エピトープ」は、本明細書において、特に、抗体の結合部位に対する特異的結合パートナーまたは特異的結合パートナーの一部を完全に構成しうる分子構造を指す。エピトープは、炭水化物、ペプチド性構造、脂肪酸、有機、生化学的または無機物質またはその誘導体、およびそれらの任意の組み合わせのいずれで構成されることも可能である。エピトープが、ペプチド性構造、例えばペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質で構成される場合、これは通常、少なくとも3アミノ酸、好ましくは5〜40アミノ酸、そしてより好ましくは約10〜20アミノ酸の間のアミノ酸を含むであろう。エピトープは直鎖またはコンホメーションエピトープのいずれであることも可能である。直鎖エピトープは、ポリペプチドの一次配列または炭水化物鎖の単一セグメントで構成される。直鎖エピトープは、連続または重複であることも可能である。
【0169】
コンホメーションエピトープは、三次構造を形成するためにポリペプチドをフォールディングすることによって近づけられた、アミノ酸または炭水化物で構成され、そしてアミノ酸は、直鎖配列においては、互いに必ずしも隣接していない。特に、そしてポリペプチド抗原に関して、コンホメーションまたは不連続エピトープは、一次配列においては分離されているが、ポリペプチドが天然タンパク質/抗原にフォールディングした際に、分子表面上の一貫した構造に組み立てられる、2またはそれより多い別個のアミノ酸残基の存在によって特徴付けられる。
【0170】
本明細書において、用語「エピトープ」は、特に、少なくともhuTNFR1の膜遠位CRD1およびCDR2のサブドメインA1を含むかまたはこれらから本質的になるエピトープである、ATROSABによって認識されるエピトープを指す。
【0171】
用語「発現」は、以下のように理解される。発現産物、例えば本明細書に記載するような抗体の所望のコード配列、および制御配列、例えばプロモーターを、機能可能であるように連結されて含有する核酸分子を、発現目的のために用いることも可能である。これらの配列で形質転換またはトランスフェクションされた宿主は、コードされるタンパク質を産生可能である。形質転換を達成するため、発現系はベクター中に含まれることも可能であり;しかしまた、適切なDNAが宿主染色体に組み込まれることも可能である。特に、該用語は、宿主細胞、および例えばベクターに所持され、そして宿主細胞内に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のための、適切な条件下での適合するベクターを指す。
【0172】
コードDNAは、特定のポリペプチドまたはタンパク質、例えば抗体の特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列である。プロモーターDNAは、コードDNAの発現を開始するか、制御するか、または別の方式で仲介するかまたは調節するDNA配列である。プロモーターDNAおよびコードDNAは、同じ遺伝子に由来してもよいし、または異なる遺伝子に由来してもよく、そして同じまたは異なる生物に由来することも可能である。組換えクローニングベクターには、しばしば、クローニングまたは発現のための1またはそれより多い複製系、宿主における選択のための1またはそれより多いマーカー、例えば抗生物質耐性、および1またはそれより多い発現カセットが含まれるであろう。
【0173】
「ベクター」は、本明細書において、適切な宿主生物における、クローニングされた組換えヌクレオチド配列の、すなわち組換え遺伝子の転写、およびそのmRNAの翻訳に必要なDNA配列と定義される。
【0174】
「発現カセット」は、定義される制限部位で、ベクター内に挿入可能な発現産物をコードする、DNAコード配列またはDNAセグメントを指す。カセット制限部位は、適切な読み枠でのカセットの挿入を確実にするよう設計される。一般に、外来DNAは、ベクターDNAの1またはそれより多い制限部位で挿入され、そして次いで、ベクターによって、伝達性のベクターDNAとともに、宿主細胞内に運ばれる。挿入されたまたは付加されたDNAを有するDNA、例えば発現ベクターのセグメントまたは配列もまた、「DNA構築物」と称されることも可能である。
【0175】
発現ベクターは、発現カセットを含み、そしてさらに、通常、宿主細胞またはゲノム組込み部位における自律複製起点、1またはそれより多い選択可能マーカー(例えばアミノ酸合成遺伝子、あるいはゼオシン、カナマイシン、G418またはハイグロマイシンなどの抗生物質に対する耐性を与える遺伝子)、いくつかの制限酵素切断部位、適切なプロモーター配列および転写ターミネーターを含み、これらの構成要素はともに機能可能であるように連結されている。用語「ベクター」には、本明細書において、自律複製ヌクレオチド配列ならびにゲノム組込みヌクレオチド配列が含まれる。一般的なタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは一般的に、さらなる(外来)DNAを容易に受け入れ可能であり、そして適切な宿主細胞内に容易に導入可能である、二本鎖DNAの自己充足分子である。プラスミドベクターは、しばしば、コードDNAおよびプロモーターDNAを含有し、そして外来DNAを挿入するために適した1またはそれより多い制限部位を有する。特に、用語「ベクター」または「プラスミド」は、宿主を形質転換し、そして導入された配列の発現(例えば転写および翻訳)を促進するように、DNAまたはRNA配列(例えば外来遺伝子)が宿主細胞内に導入されうるビヒクルを指す。
【0176】
用語「宿主細胞」は、本明細書において、本明細書に記載するような抗体などの特定の組換えタンパク質を産生するように形質転換された初代対象細胞、およびその子孫いずれかを指すものとする。すべての子孫が親細胞に正確に同一ではない(意図的なまたは不測の突然変異あるいは環境の相違による)が、こうした改変された子孫は、子孫が元来の形質転換された細胞のものと同じ機能性を保持する限り、これらの用語に含まれることを理解しなければならない。用語「宿主細胞株」は、組換え抗体などの組換えポリペプチドを産生するために、組換え遺伝子を発現するために用いられるような宿主細胞の細胞株を指す。用語「細胞株」は、本明細書において、長期間にわたって、増殖する能力を獲得している、特定の細胞タイプの樹立されたクローンを指す。こうした宿主細胞または宿主細胞株は、細胞培養に維持され、そして/または培養されて組換えポリペプチドを産生することも可能である。
【0177】
用語「単離された」または「単離」は、核酸、抗体または他の化合物に関して本明細書において用いられる際、「実質的に純粋な」形で存在するように、天然に関連している環境から十分に分離されている、こうした化合物を指すものとする。「単離された」は、必ずしも、他の化合物または物質を含む人工的または合成混合物、あるいは基本的な活性に干渉せず、そして例えば不完全な精製のために存在する可能性もある不純物の存在の排除を意味しない。特に、本発明の単離された核酸分子はまた、天然存在でない、例えばコドン最適化核酸またはcDNA、あるいは化学合成されたものも含むよう意味される。
【0178】
同様に、本明細書にさらに記載するような単離抗体は、例えば、組み合わせが天然には起こらない別の抗体または活性剤との組み合わせ調製物において提供されるような、あるいは天然存在抗体の誘導体または変異体、あるいは天然存在抗体の最適化またはアフィニティ成熟変異体、あるいは抗体の安定性を改善するために操作されたフレームワーク領域を含む抗体として、特に非天然存在のものである。こうした最適化または操作によって、抗体は、天然の抗体の背景においては見られないであろう、1またはそれより多い合成構造または配列または特性を含む。
【0179】
本明細書記載の核酸に関連して、用語「単離核酸」がときに用いられる。この用語は、DNAに適用された場合、由来した生物の天然存在ゲノムにおいて、すぐ近接している配列から分離されたDNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、ベクター内に挿入されたDNA分子、例えばプラスミドまたはウイルスベクター、あるいは原核または真核細胞または宿主生物のゲノムDNA内に組み込まれたDNA分子を含むことも可能である。RNAに適用された場合、用語「単離核酸」は、主に、上に定義するような単離DNA分子にコードされるRNA分子を指す。あるいは、該用語は、天然状態で(すなわち細胞または組織において)関連している他の核酸から十分に分離されているRNA分子を指すことも可能である。「単離核酸」(DNAまたはRNAいずれか)は、さらに、生物学的または合成手段によって直接産生され、そしてその産生中に存在する他の構成要素から分離されている分子を示すことも可能である。
【0180】
ポリペプチドまたはタンパク質、例えば本明細書記載の単離抗体に関して、用語「単離された」は、天然環境において、または調製が、in vitroまたはin vivoで実施された組換えDNA技術による場合は、調製された環境(例えば細胞培養)において、これらとともに見られる他の化合物などの、天然に関連している物質を含まないかまたは実質的に含まない化合物を特に指すものとする。単離化合物は、希釈剤またはアジュバントとともに配合されていることも可能であり、そしてなお、実質的な目的のためには、単離されており、例えばポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、診断または療法で用いた際に、薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤と混合されることも可能である。
【0181】
用語「組換え」は、本明細書において、「遺伝子操作によって調製されている、またはその結果」を意味するものとする。組換え宿主は、特に、発現ベクターまたはクローニングベクターを含むか、あるいは特に宿主に対して外来であるヌクレオチド配列を使用して、組換え核酸配列を含有するよう遺伝子操作されている。組換えタンパク質は、宿主において、それぞれの組換え核酸を発現することによって産生される。
【0182】
本明細書にさらに記載する抗体構築物は、組換え抗体であることも可能である。この目的に向けて、用語「組換え抗体」には、本明細書において、組換え手段によって調製され、発現され、生成されるかまたは単離された抗体、例えば(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関して遺伝子導入されたか、または染色体導入された動物(例えばマウス)またはそこから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するよう形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーまたは抗体の抗原結合配列のライブラリーから単離された抗体、および(d)他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを伴う、任意の他の手段によって調製されたか、発現されたか、生成されたかまたは単離された抗体が含まれる。こうした組換え抗体は、例えば抗体成熟中に起こる再編成および突然変異を含むように操作された抗体を含む。本発明にしたがって、当該技術分野の技術範囲内である、慣用的な分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用可能である。こうした技術は、文献に詳細に説明されている。例えば、Maniatis, Fritsch & Sambrook, ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor, (1982)を参照されたい。
【0183】
本明細書記載の抗体は、好ましくは、宿主細胞を使用した組換え発現系によって、例えば大腸菌の周辺質空間における発現によって、あるいは真核発現系、例えば酵母または哺乳動物における分泌タンパク質としての発現によって、例えばCHO、HEKまたはヒト産生宿主細胞株によって、産生される組換えタンパク質として提供される。
【0184】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体産生に最も一般的に用いられてきている。適切なグリコシル化パターンを提供することに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定で非常に産生性であるクローン細胞株の一貫した生成を可能にする。これらは、血清不含培地を用いて、単純なバイオリアクターにおいて高密度に培養可能であり、そして安全でそして再現可能なバイオプロセスの発展を可能にしうる。
【0185】
樹立され、適応し、そして血清不含条件下で、そして場合によって、動物起源のいかなるタンパク質/ペプチドも含まない培地中で完全に培養される宿主細胞が、最も好ましい。
【0186】
「特異的」結合、認識またはターゲティングは、本明細書において、結合剤、例えば抗体または抗原結合部分が、分子の異種集団において、ターゲット抗原またはそれぞれのエピトープに関して、認識可能なアフィニティを示すことを意味する。したがって、示す条件下で(例えばイムノアッセイ)、結合剤は、ターゲット抗原に特異的に結合し、そして試料中に存在する他の分子に、有意な量では結合しない。特異的結合は、結合が、選択するように、ターゲット同一性、高、中または低結合アフィニティまたはアビディティに関して選択性であることを意味する。選択的結合は、通常、結合定数または結合動力学が、別のターゲットに比較した際、少なくとも10倍異なる(少なくとも1対数の相違と理解される)場合に達成され、好ましくは相違は少なくとも100倍(少なくとも2対数の相違と理解される)、そしてより好ましくは、少なくとも1000倍(少なくとも3対数の相違と理解される)異なる。示差結合は、イムノアッセイ、好ましくはイムノブロッティング、ELISAまたは他の免疫学的方法によって決定可能である。特定のターゲットに関する抗体分子の特異性は、例えばHarlowら, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1988に記載されるように、競合アッセイによって決定可能である。選択的結合は、当該技術分野に知られる組換え抗体最適化法によって操作されるかまたは改善されることも可能である。例えば、本明細書記載の免疫グロブリン鎖の可変領域の特定の領域を、軽鎖シャッフリング、目標地(destinational)突然変異誘発、CDR融合(amalgamation)、ならびに選択したCDRおよび/またはフレームワーク領域の定方向突然変異誘発を含む、1またはそれより多い最適化戦略に供することも可能である。
【0187】
本明細書記載の阻害剤は、特に、TNFR1ターゲットに結合する特異的CDR配列(配列番号1〜6またはその機能的CDR変異体)によって決定されるものと同じ特異性、または同じ抗原結合部位を有するか、あるいはH398またはATROSABと同じエピトープまたは重複エピトープに結合する抗体を含む。
【0188】
用語「同じ特異性を有する」、「同じ結合部位を有する」または「同じエピトープに結合する」の使用は、同等のモノクローナル抗体が、同じかまたは本質的に同じ、すなわち類似の免疫反応(結合)特性を示し、そしてあらかじめ選択したターゲット結合配列への結合に関して競合することを示す。特定のターゲットに対する抗体分子の相対特異性は、例えばHarlowら, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー, 1988に記載されるように、競合アッセイによって、相対的に決定することも可能である。
【0189】
本明細書において、競合は、競合ELISA分析によって、またはForteBio分析によって決定した際、約30%より大きい相対阻害を意味する。特定の背景において、例えば競合分析を用いて、抗原結合の意図する機能を伴って設計される新規抗体に関して選択するかまたはスクリーニングするために競合分析を用いる場合の競合の適切なレベルの基準として、相対阻害のより高い閾値を設定することが望ましい可能性もある。したがって、例えば、抗体が十分に競合性であると見なされる前に、少なくとも40%の相対阻害を検出する、または少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはさらに少なくとも100%の相対阻害が検出されるように、競合結合に関する基準を設定することも可能である。
【0190】
用語「被験体」は、本明細書において、温血哺乳動物、特にヒトまたは非ヒト動物を指すものとする。特に、本明細書記載の医学的使用または治療のそれぞれの方法は、炎症に関連する疾患状態の予防または治療が必要な被験体に適用される。被験体は、初期段階または後期段階疾患を含む、炎症性疾患のリスクがあるかまたはこうした疾患に罹患している患者であることも可能である。用語「患者」には、予防的または療法的治療のいずれかを受けているヒトおよび他の哺乳動物被験体が含まれる。用語「治療」は、したがって、予防的および療法的治療の両方を含むと意味される。
【0191】
被験体は、例えば、炎症性疾患状態の予防または療法のために治療される。特に、急性または慢性炎症性疾患のリスクがあるか、あるいはこうした疾患または疾患再発を発展させている被験体、あるいはこうした炎症性疾患に罹患している被験体が治療される。
【0192】
特に、用語「療法」は、疾患を治癒させるかまたは疾患症状を減少させるための投与を含むよう意図される、療法的手段を指す。
特に、用語「予防」は、疾患発生のリスク、または疾患再発を減少させるよう意図される、防御手段を指す。
【0193】
本明細書記載の阻害剤は、TNF−TNFR1相互作用を阻害することによって、特に、細胞生存を制御し、TNFRのシグナル伝達経路下流の活性化を防止し、それによって、免疫細胞において開始されるであろう炎症促進性プログラムを最小限にし、そして自己免疫および炎症性疾患の病因を減少させることも可能である。阻害剤を用いて、TNFリガンドとのTNFR1相互作用を防止すると、病原性細胞集団の拡大および生存が減少し、そして炎症促進性サイトカインの産生が減少し、そしてTNF仲介性炎症が軽減されるであろう。自己免疫疾患の背景において、TNF−TNFR相互作用は、主に、免疫反応中に起こる。特定の免疫細胞タイプの機能が、TNF−TNFR相互作用によって調節され、そして本明細書に記載するような阻害剤によって制御可能である。
【0194】
炎症性疾患の中には、抗TNF療法剤が指示されるものがある。したがって、本明細書記載の阻害剤または抗体は、慣用的な抗TNF療法剤の代替物として用いられる。
特に、本明細書記載の薬学的組成物は、以下の疾患またはそれに関連する炎症性状態(または炎症性疾患)のいずれかを治療するために適しており、これらの疾患は、自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、若年性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、多発性硬化症、うっ血性心不全、代謝性疾患、サイトカイン放出症候群、敗血症ショック、脳卒中、アルツハイマーおよびパーキンソン病を含む急性および慢性神経変性疾患からなる群より選択される。さらなる適切な適応症には、潰瘍性結腸炎、膵炎、COPD、および他の慢性炎症性および/または自己免疫疾患、急性劇症ウイルスまたは細菌感染、代謝性疾患、慢性神経変性疾患、原因病理学的仲介因子としてTNF/TNFR1を伴う遺伝病、好ましくは周期熱症候群およびケルビズム症候群より選択されるもの、ならびに癌からなる群より選択される。
【0195】
用語「療法的有効量」は、本明細書において、用語、化合物、例えば本明細書記載の抗体の「有効量」または「十分な量」のいずれかと交換可能に用いられ、被験体に投与した際に、臨床的結果を含む有益なまたは望ましい結果を達成するために十分な量または活性であり、そしてこうしたものとして、有効量またはその同義語は、適用される背景に応じる。
【0196】
有効量は、こうした疾患または障害を治療するか、防止するかまたは阻害するために十分な化合物の量を意味するよう意図される。疾患の背景において、本明細書に記載するような抗体の療法的有効量は、TNF−TNFR1相互作用の阻害から利益を得る、疾患または状態を治療し、調節し、減弱し、逆転させ、または影響を及ぼすために特に用いられる。
【0197】
こうした有効量に対応するであろう化合物の量は、多様な要因、例えば所定の薬剤または化合物、薬学的配合物、投与経路、疾患または障害のタイプ、治療される被験体または宿主の同一性等の多様な要因に応じるであろうが、にもかかわらず、当業者によってルーチンに決定可能である。
【0198】
本明細書記載の好ましい薬学的組成物は、上に定義されるようなhuTNFR1抗体の療法的有効量、ならびに場合によって、薬学的に許容されうるキャリアー、薬学的に許容されうる塩、補助剤、安定化剤、希釈剤および溶媒、またはその任意の組み合わせからなる群より選択される1またはそれより多いさらなる構成要素を含む。
【0199】
本発明にしたがって、患者を治療する方法は、その必要がある患者に、上に定義するhuTNFR1抗体の療法的有効量を投与する工程を含む。療法的有効量は、典型的には、0.5〜500mg、好ましくは1〜400mg、さらにより好ましくは最大300mg、最大200mg、最大100mgまたは最大10mgの範囲であるが、例えば急性疾患状態を治療するためには、より高い用量が示されうる。
【0200】
1つの態様において、本明細書記載の抗体は、患者に投与する唯一の療法的活性剤である。あるいは、本明細書記載の抗体は、限定されるわけではないが、TNFアンタゴニスト、抗炎症剤、サイトカイン、増殖因子、または他の療法剤を含む、1またはそれより多い他の療法剤と組み合わせて投与される。TNFR1−アンタゴニスト抗体は、1またはそれより多い他の療法措置と、好ましくは抗TNF療法剤、例えば抗TNF抗体と、同時にまたは連続して投与されることも可能である。本明細書記載の抗体は、好ましくは、第一選択治療として、あるいは抗TNF療法剤が、急性または慢性治療のいずれかとして有効でなかった場合に、第二選択療法として、患者に投与される。特に好ましい医学的使用は、慢性疾患を治療するためのものである。
【0201】
さらに、本明細書記載の抗体の療法的有効量での被験体の治療または防止措置は、単回投与からなることも可能であるし、または一連の適用を含むことも可能である。例えば、抗体は、少なくとも年1回、少なくとも半年に1回または少なくとも月1回、投与されることも可能である。しかし、別の態様において、所定の治療に関して、週あたり約1回からほぼ毎日の投与までを、被験体に投与することも可能である。治療期間の長さは、多様な要因、例えば疾患の重症度、急性または慢性疾患いずれか、患者の年齢、濃度および抗体形式の活性に応じる。治療または予防のために用いられる有効投薬量は、特定の治療または予防措置の経過に渡って、増加するかまたは減少することも可能であることもまた、認識されるであろう。投薬量の変化は、当該技術分野に知られる標準的診断アッセイによって生じ、そして明らかになりうる。いくつかの例において、長期投与が必要である可能性もある。
【0202】
所望の結合特性を持つ抗体がひとたび同定されたら、抗体断片を含むこうした抗体を、例えばハイブリドーマ技術または組換えDNA技術を含む、当該技術分野に周知の方法によって産生することも可能である。
【0203】
組換えモノクローナル抗体は、例えば、必要とされる抗体鎖をコードするDNAを単離し、そして抗体配列をコードするヌクレオチド配列を含む、周知の組換え発現ベクター、例えば本明細書記載のプラスミドまたは発現カセットを用いて、発現のためにコード配列で組換え宿主細胞をトランスフェクションすることによって、産生可能である。組換え宿主細胞は、上述のものなどの原核および真核細胞であることも可能である。
【0204】
特定の側面にしたがって、ヌクレオチド配列を遺伝子操作に用いて、抗体をヒト化するか、あるいは抗体のアフィニティ、または他の特性を改善することも可能である。例えば、抗体をヒトにおける臨床試験および治療に用いる場合、定常領域がヒト定常領域により緊密に似るように操作して、免疫反応を回避することも可能である。ターゲットに対するより高いアフィニティを得るために、抗体配列を遺伝子操作することが望ましい可能性もある。1またはそれより多いポリヌクレオチド変化を抗体に行い、そしてなおターゲット抗原に対する結合能を維持することも可能であることが、当業者には明らかであろう。
【0205】
多様な手段による抗体分子の産生は、一般的によく理解される。米国特許6331415(Cabillyら)は、例えば、重鎖および軽鎖が単一ベクターから、または単一細胞中の2つの別個のベクターから、同時に発現される、抗体の組換え産生法を記載する。Wibbenmeyerら(1999, Biochim Biophys Acta 1430:191−202)ならびにLeeおよびKwak(2003, J. Biotechnology 101:189−198)は、宿主細胞の別個の培養において発現されたプラスミドを用いた、別個に産生された重鎖および軽鎖からのモノクローナル抗体の産生を記載する。抗体産生に適切な、多様な他の技術が、例えばHarlowら, ANTIBODIES: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1988)に提供される。
【0206】
特定の側面にしたがって、本明細書記載の抗体を配列決定し、そして次いで、ポリヌクレオチド配列を、発現または増殖のため、ベクター内にクローニングすることも可能である。抗体をコードする配列を、宿主細胞中のベクター中で維持することも可能であり、そして次いで、宿主細胞を拡大し、そして将来の使用のために凍結することも可能である。細胞培養中の組換えモノクローナル抗体の産生を、当該技術分野に知られる手段によって、B細胞からの抗体遺伝子のクローニングを通じて、実行することも可能である。
【0207】
別の側面において、本発明は、本明細書記載の組換え抗体の産生のためのコード配列を含む単離核酸を提供する。
核酸をコードする抗体は、任意の適切な特性を有することも可能であり、そして任意の適切な特徴またはその組み合わせを含むことも可能である。したがって、例えば、DNA、RNA、またはそのハイブリッドの形の抗体コード核酸には、非天然存在塩基および修飾主鎖、例えば核酸の安定性を促進するホスホロチオエート主鎖、またはその両方が含まれることも可能である。好ましくは、核酸は、コドン最適化配列であることも可能である。核酸は、好適には、ターゲット宿主細胞(単数または複数)における所望の核酸、複製および/または選択を促進する特徴を含む、本明細書記載の発現カセット、ベクターまたはプラスミドに取り込まれることも可能である。こうした特徴の例には、複製起点構成要素、選択遺伝子構成要素、プロモーター構成要素、エンハンサー要素構成要素、ポリアデニル化配列構成要素、終結構成要素等が含まれ、これらの多くの適切な例が知られる。
【0208】
本開示はさらに、本明細書記載のヌクレオチド配列の1またはそれより多くを含む、組換えDNA構築物を提供する。これらの組換え構築物は、ベクター、例えばプラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターと関連して用いられ、ベクター内に任意の開示する抗体をコードするDNA分子を挿入する。
【0209】
培養中の細胞株によって、抗体分子を産生する任意の方法を用いて、例えば組換え真核(哺乳動物または昆虫)または原核(細菌)宿主細胞を培養して、モノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体を調製するための適切な方法の例には、Koehler & Milstein(1975, Nature 256:495−497)のハイブリドーマ法およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, 1984, J. Immunol. 133:3001;およびBrodeurら, 1987, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, (Marcel Dekker, Inc., New York), pp. 51−63)が含まれる。
【0210】
ハイブリドーマ法を使用して、本明細書記載の抗体を同定するかまたは得ることも可能である。こうした方法において、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えばハムスターを免疫して、免疫に用いたタンパク質に特異的に結合するであろう抗体を産生するかまたは産生可能であるリンパ球を誘発する。あるいは、in vitroでリンパ球を免疫することも可能である。次いで、適切な融合剤、例えばポリエチレングリコールを用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。
【0211】
ハイブリドーマ細胞を増殖させる培地を、抗原に対して向けられるモノクローナル抗体の産生に関してアッセイする。好ましくは、免疫沈降によって、あるいはin vitro結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性を決定する。
【0212】
次いで、ターゲット抗原の特異的結合、および例えば異なる診断または療法目的のため、抗体の操作に関してさらに試験するため、モノクローナル抗体(mAb)をハイブリドーマ上清から精製することも可能である。
【0213】
huTNFR1特異的抗体は、いくつかの場合、huTNFR1抗原に対するスクリーニングを通じて現れる。示差結合クローンを単離する可能性を増加させるため、異なる抗原またはエピトープに対して進行性にスクリーニングすることによって、多数の選択圧が適用されるであろう。
【0214】
所望の選択結合特性を持つ抗体を同定するためのスクリーニング法は、抗体配列またはその抗原結合配列をディスプレイするライブラリーを用いて(例えばファージ、細菌、酵母または哺乳動物細胞;あるいは核酸情報をそれぞれの(ポリ)ペプチドに翻訳するin vitroディスプレイ系を用いて)、ディスプレイ技術によって行うことも可能である。例えば標準アッセイを用いて、ELISA、ウェスタンブロッティングまたはフローサイトメトリーでの表面染色に基づいて、反応性を評価することも可能である。
【0215】
抗体ライブラリー、例えばファージ、ファージミドまたは酵母ディスプレイ抗体ライブラリーから、抗体を選択するために、単離抗原(単数または複数)を用いることも可能である。
【0216】
本発明はさらに、本明細書に記載するような阻害剤または抗体、および薬学的に許容されうるキャリアーまたは賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。これらの薬学的組成物は、ボーラス注射または注入として、あるいは連続注入によって、本発明にしたがって投与されることも可能である。こうした投与手段を容易にするために適した薬学的キャリアーは、当該技術分野に周知である。
【0217】
薬学的に許容されうるキャリアーには、一般的に、本明細書記載の抗体または関連組成物または組み合わせに生理学的に適合する、あらゆる適切な溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等が含まれる。薬学的に許容されうるキャリアーのさらなる例には、滅菌水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0218】
1つのこうした側面において、抗体を、所望の投与経路に適した1またはそれより多いキャリアーと組み合わせることも可能であり、抗体を、例えばラクトース、スクロース、デンプン、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリジン、ポリビニルアルコールのいずれかと混合することも可能であり、そして場合によって、慣用的な投与のため、さらに錠剤化するか被包することも可能である。あるいは、抗体は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、エタノール、コーン油、ピーナツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントゴム、および/または多様な緩衝剤中に溶解されることも可能である。他のキャリアー、アジュバント、および投与様式が、薬学業に周知である。キャリアーには、徐放物質または時間遅延物質、例えば単独またはワックスを伴うモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル、あるいは当該技術分野に周知の他の物質が含まれることも可能である。
【0219】
さらなる薬学的に許容されうるキャリアーが当該技術分野に知られ、そしてこれらは、例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESに記載される。液体配合物は、溶液、エマルジョンまたは懸濁物であることも可能であり、そしてこれらには、賦形剤、例えば懸濁剤、可溶化剤、界面活性剤、保存剤およびキレート剤が含まれることも可能である。
【0220】
本明細書記載の阻害剤または抗体および1またはそれより多い療法的活性剤が配合されている、薬学的組成物が意図される。本明細書記載の抗体の安定配合物は、望ましい純度を有する前記抗体を、最適な薬学的に許容されうるキャリアー、賦形剤または安定化剤と、凍結乾燥配合物または水溶液の形で、混合することによって、貯蔵用に調製される。in vivo投与に用いられる配合物は無菌である。これは、滅菌ろ過膜を通じたろ過または他の方法によって、容易に達成される。本明細書に開示する抗体および他の療法活性剤はまた、免疫リポソームとして配合され、そして/またはマイクロカプセル中に封入されることも可能である。
【0221】
本明細書記載の阻害剤または抗体を含む、薬学的組成物の投与は、経口、皮下、静脈内、鼻内、耳内、経皮、粘膜、局所、例えばジェル、軟膏、クリーム等で、腹腔内、筋内、肺内、例えば吸入可能技術または肺送達系を使用して、膣内、非経口、直腸、または眼内を含む多様な方法で行われることも可能である。
【0222】
非経口投与のために用いられるような例示的な配合物には、例えば無菌溶液、エマルジョンまたは懸濁物としての、皮下、筋内または静脈内注射に適したものが含まれる。
1つの態様において、本明細書記載の抗体は、疾患修飾または防止単一療法として、被験体に投与される唯一の療法的活性剤である。
【0223】
別の態様において、本明細書記載の抗体は、例えば混合物または部分のキットにおいて、疾患修飾または防止併用療法などの療法または予防を必要とする被験体を治療するためのさらなる活性物質と組み合わされる。
【0224】
1またはそれより多い他の療法または予防剤との組み合わせには、標準治療、例えば抗生物質、炎症のステロイドおよび非ステロイド阻害剤、例えばメトトレキセートおよび/またはパラセタモールおよび/または他の抗体に基づく療法が含まれることも可能である。組み合わせは特に、原発性疾患を治療するために用いられる剤を含むことも可能であり、この場合、炎症プロセスが、続発性の炎症性疾患状態を導く。原発性疾患は、例えば癌であり、そして組み合わせには、例えば抗増殖性化学療法剤および/または細胞分裂停止剤が含まれるであろう。
【0225】
併用療法において、抗体を混合物として、あるいは1またはそれより多い他の療法措置に付随して、例えば付随療法の前、それと同時、またはその後に、投与することも可能である。
【0226】
本明細書記載の抗体またはそれぞれの薬学的調製物の生物学的特性は、細胞、組織、および全生物実験において、ex vivoで特徴付け可能である。当該技術分野に知られるように、薬剤はしばしば、疾患または疾患モデルに対する治療のための薬剤有効性を測定するため、あるいは薬剤の薬物動態学、薬力学、毒性、および他の特性を測定するため、限定されるわけではないが、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタおよびサルを含む動物において、in vivoで試験される。動物は、疾患モデルとして言及される可能性もある。療法剤はしばしば、限定されるわけではないが、ヌードマウス、SCIDマウス、異種移植片マウス、およびトランスジェニックマウス(ノックインおよびノックアウトを含む)を含むマウスにおいて試験される。こうした実験は、適切な半減期、エフェクター機能、阻害剤活性および/または受動免疫療法に際しての免疫反応を伴う療法剤または予防剤として用いようとする抗体の潜在能力の決定のため、意味があるデータを提供可能である。任意の生物、好ましくは哺乳動物が、試験に使用可能である。例えば、ヒトに対する遺伝的類似性のため、霊長類、サルが、適切な療法モデルである可能性があり、そしてしたがって、対象の剤または組成物の有効性、毒性、薬物動態学、薬力学、半減期、または他の特性を試験するために使用可能である。薬剤としての認可のため、ヒトにおける試験が最終的には必要であり、そしてしたがって、もちろん、これらの実験が意図される。したがって、本明細書記載の抗体およびそれぞれの薬学的組成物が、ヒトにおいて試験されて、その療法的または予防的有効性、毒性、免疫原性、薬物動態学、および/または他の臨床特性を決定することも可能である。
【0227】
本発明にしたがって、アゴニスト性交差反応性を持たない、ヒトTNFR1をターゲティングする抗体構築物が産生された。TNFR1の選択的阻害は、TNFの炎症促進活性または炎症反応を中和する機会を提供する。特に、驚くべきことに、対応する二価抗体の望ましくない副作用を回避するだけでなく、より驚くべきことに、慢性疾患治療スケジュールには典型的である反復投薬の経過中に、潜在的に発展する抗ヒトIg抗体(ADA)による架橋に際して、アゴニストに変換されない、一価高アフィニティ結合剤を提供する。
【0228】
WO2012035141A1にしたがって調製されたATROSABと称される抗TNFR1抗体は、哺乳動物細胞で産生されたヒト化抗体であり、そして親マウスH398IgGと類似の結合および中和挙動を示した。該抗体は、こうした全長抗体で予期されてきたアゴニスト活性は示さなかった。
【0229】
しかし、ATROSAB抗体は、驚くべきことに、増加したアフィニティの変異体が産生されると直ちにアゴニスト活性を有することがわかった。したがって、アフィニティ成熟は、望ましくない副作用を減少させるために、原則として回避された。本発明は、ここで、huTNFR1受容体に一価で結合する抗体構築物が、アフィニティを10
−8M未満のK
Dまで増加しても、そして特にk
оffが実質的に低下しても、こうしたアゴニスト活性を示さないという驚くべき知見に基づく。
【0230】
本明細書記載の阻害剤は、強力なTNFR1選択的アンタゴニストであり、そして抗TNF療法剤が必要とされるか、あるいは抗TNF療法剤が失敗するかまたは疾患進行をさらに悪化させる場合に、疾患の新規療法オプションを可能にし、こうした疾患には、多発性硬化症、うっ血性心不全、代謝性疾患(II型糖尿病)、サイトカイン放出症候群、敗血症ショック、急性(脳卒中)および慢性(アルツハイマーおよびパーキンソン病)神経変性疾患が含まれる。阻害剤は、抗TNF治療に臨床的に反応することがすでに知られている疾患において、特に有用な療法代替物である可能性もあり、そして特に、TNFR1の特異的遮断およびTNFR2機能の維持が有望な療法アプローチであるようである疾患において当てはまる。
【0231】
以下の定義の主題は、本発明の態様であるとみなされる:
1. 37℃で水晶振動子マイクロバランス(QCM)により、Fab形式に関して決定した際、5x10
−9M未満のK
Dおよび10
−3s
−1未満のk
оffで、抗原結合部分を通じてhuTNFR1を一価で認識するヒトまたはヒト化抗体構築物である、huTNFR1受容体の阻害剤。
【0232】
2. 細胞に基づくアッセイにおいて、好ましくはKym−1細胞におけるTNFR1仲介性細胞死の阻害に関するアッセイによって決定した際、5.0x10
−9未満のIC
50値で、あるいはHeLa細胞からのIL−6放出の阻害に関するアッセイによって、4.0x10
−8未満のIC
50値で、またはHT1080細胞からのIL−8放出の阻害に関するアッセイによって、2.0x10
−8未満のIC
50値で、TNF−huTNFR1受容体相互作用またはリンホトキシンアルファとhuTNFR1受容体の相互作用を直接阻害する、定義1の阻害剤。
【0233】
3. 抗原結合部分がVHおよびVLドメインを含み、VHおよびVLドメインの少なくとも1つが、相補性決定領域(CDR)配列いずれかにおいて、少なくとも1つの点突然変異を含む親ドメインのアフィニティ成熟機能的変異体であり、ここで
a)親VHドメインが、CDR配列:配列番号1(CDRH1)、配列番号2(CDRH2)、および配列番号3(CDRH3)によって特徴付けられ;そして
b)親VLドメインが、CDR配列:配列番号4(CDRL1)、配列番号5(CDRL2)、および配列番号6(CDRL3)によって特徴付けられ;
CDR配列はKabat番号付けスキームにしたがっている
定義1または2の阻害剤。
【0234】
4. 少なくとも1つの点突然変異が、配列番号2(CDRH2)および/または配列番号6(CDRL3)のいずれかにおけるものであり、好ましくはCDRH2配列が配列番号7であり、そしてCDRL3配列が配列番号8である、定義3の阻害剤。
【0235】
5. 抗原結合部分が
A
グループメンバーi)〜ii)からなる群より選択されるもの
i)
a)配列番号1によって同定されるCDRH1配列;
b)配列番号10によって同定されるCDRH2配列;
c)配列番号3によって同定されるCDRH3配列;
d)配列番号4によって同定されるCDRL1配列;
e)配列番号5によって同定されるCDRL2配列;および
f)配列番号11によって同定されるCDRL3配列;
を含む抗原結合部分
ならびに
ii)
a)配列番号1によって同定されるCDRH1配列;
b)配列番号10によって同定されるCDRH2配列;
c)配列番号3によって同定されるCDRH3配列;
d)配列番号4によって同定されるCDRL1配列;
e)配列番号5によって同定されるCDRL2配列;および
f)配列番号6によって同定されるCDRL3配列;
を含む抗原結合部分
または
B
Aのグループメンバーいずれかである親抗原結合部分の機能的活性変異体である抗原結合部分
である、定義4または5の阻害剤。
【0236】
6. 機能的活性変異体が
a)親抗体のCDR配列のいずれかの少なくとも1つの機能的活性CDR変異体;および/または
b)VHまたはVL配列のいずれかのフレームワーク領域における少なくとも1つの点突然変異
を含む、定義5の阻害剤。
【0237】
7. 抗体構築物が、Fab分子、scFv分子、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ハーフIgG1抗体、およびFvドメイン、または前述のいずれかの機能的活性誘導体からなる群より選択され、好ましくは、抗体構築物が、親水性ポリマー、例えばPEGにカップリングされ、そして/またはポリペプチド、例えばヒト血清アルブミン、トランスフェリン、アルブミン結合ドメインまたはペプチド、Ig結合ドメイン、PEG模倣ポリペプチド伸長、抗体Fc断片、好ましいヘテロ二量体化を可能にする突然変異を所持する抗体Fc断片、あるいは前述のポリペプチドいずれかの機能的変異体に融合している、定義1〜6のいずれかの阻害剤。
【0238】
8. 抗体構築物が、Fab、scFv、dsFv、またはFvドメインのいずれかであり、抗体Fc断片に融合しており、FcがCH2およびCH3ドメインのヘテロ二量体からなり、CH2および/またはCH3ドメインがホモ二量体化よりも優先的なヘテロ二量体化を可能にする1またはそれより多い点突然変異を所持する、定義7の阻害剤。
【0239】
9. 抗体構築物がPEG化、HES化、またはPSA化されている、定義1〜8のいずれかの阻害剤。
10. 抗体構築物が、親Fvドメインに比較した際に、huTNFR1に結合する増加したアフィニティを持つFvドメインを含み、親Fvドメインが配列番号12と同定される親VHドメインおよび配列番号16と同定される親VLドメインによって特徴付けられる、定義1〜9のいずれかの阻害剤。
【0240】
11. VHおよびVLドメインの少なくとも1つが、CDRまたはフレームワーク(FR)配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む、親ドメインのアフィニティ成熟機能的変異体である、定義10の阻害剤。
【0241】
12.
a)VHドメインが、配列番号12〜15からなる群より選択される配列を含むか、または該配列からなるか;
b)VLドメインが、配列番号16〜19からなる群より選択される配列を含むか、または該配列からなるか;あるいは
c)少なくとも1つのFvドメインが、a)またはb)のいずれかの機能的活性変異体を含み、機能的活性変異体が、CDRまたはFR配列のいずれかに少なくとも1つの点突然変異を含む
定義11の阻害剤。
【0242】
13.
FvドメインがVHおよびVLドメインの組み合わせであり、
A
i)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
ii)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
iii)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;
iv)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;
v)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
vi)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号18を含むかまたは配列番号18からなる;
vii)VHが配列番号14を含むかまたは配列番号14からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
viii)VHが配列番号13を含むかまたは配列番号13からなり、そして
VLが配列番号19を含むかまたは配列番号19からなる;そして
ix)VHが配列番号15を含むかまたは配列番号15からなり、そして
VLが配列番号17を含むかまたは配列番号17からなる;
グループメンバーi)〜ix)からなる群より選択されるもの
または
B
FvドメインがVHおよびVLドメインの組み合わせであり、VHおよびVLドメインのいずれかが、Aのグループメンバーのいずれかの親ドメインの機能的活性変異体であるもの
である、定義10〜12のいずれかの阻害剤。
【0243】
14. 抗体構築物が、動的光散乱法によって決定した際、少なくとも60℃、または少なくとも61℃、または少なくとも62℃、または少なくとも63℃、または少なくとも64℃、または少なくとも65℃の増加した熱安定性を有する、ここで、抗体構築物が、VHまたはVL配列のいずれかのフレームワーク領域において、少なくとも1つの点突然変異を含む親Fvドメインの機能的変異体であるFvドメインを含む、定義10〜13のいずれかの阻害剤。
【0244】
15. 定義1〜14のいずれかの阻害剤および薬学的に許容されうるキャリアーを含む薬学的調製物。
16. 非経口使用、好ましくは静脈内または皮下投与による使用のために配合されている、定義15の調製物。
【0245】
17. 抗体構築物を発現するために組換え哺乳動物発現系を使用する、定義1〜14のいずれかの阻害剤を産生する方法。
18. CHO産生細胞株を使用する、定義17記載の方法。
【0246】
19. 抗TNF療法の必要があるヒト被験体を治療する際に使用するための、定義1〜14のいずれかの阻害剤。
20. 阻害剤を被験体に反復投与する、定義19記載の使用のための阻害剤。
【0247】
21. 被験体が抗DMARDまたは抗薬剤抗体を発展させている、定義19または20記載の使用のための阻害剤。
22. 抗TNF療法または非生物学的DMARD療法剤が必要とされる場合の第一選択治療として、あるいは抗TNFまたは非生物学的DMARD療法剤が失敗した場合の第二選択治療としての、定義19〜21のいずれか記載の使用のための阻害剤。
【0248】
23. 定義20〜22のいずれか記載の使用のための阻害剤であって、被験体が
a)関節、皮膚および腸の急性または慢性炎症;および/または
b)自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節炎、若年性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、多発性硬化症、うっ血性心不全、代謝性疾患、サイトカイン放出症候群、敗血症ショック、急性および慢性神経変性疾患、脳卒中、アルツハイマーおよびパーキンソン病、潰瘍性結腸炎、膵炎、COPD、急性劇症ウイルスまたは細菌感染、代謝性疾患、慢性神経変性疾患、原因病理学的仲介因子としてTNF/TNFR1を伴う遺伝病、周期熱症候群、ケルビズム症候群、および癌
に罹患している、前記阻害剤。
【0249】
本発明は、限定されることなく、以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0250】
実施例1:ATROSABおよびH398の結合および生物活性
ATROSAB(WO2012035141にしたがって産生した全長抗体)およびその親マウス抗体H398(WO2008113515A2に記載されるようなもの)は、それぞれ、標準ELISAにおける0.25nMおよび0.15nMのEC
50値で、ヒトTNFR1に類似の結合活性を示す(
図1a)。さらに、高受容体密度の条件下で、QCM技術によって、ATROSABに関する0.35nMおよびH398の場合の0.23nMの類似のアフィニティ(K
D値)が決定された(
図1bおよびc)。
【0251】
ELISAおよびQCMにおける類似の結合にもかかわらず、H398はATROSABに比較して、HT1080細胞からのTNFまたはLT誘導性IL−8放出の10〜12倍強い阻害を示した(
図2)。ELISAおよびQCM測定(高密度チップ上で実施)の両方において、受容体はIL−8放出アッセイにおけるHT1080細胞のin vitro状況と比較して、過剰提示されていることを考慮して、より低い受容体密度のチップを用いて、QCM測定を反復することが決定された。
図3に示すように、ATROSABに関しては4.5nMのK
D値が得られ、そしてH398に関しては、1.6nMのK
D値が得られた(表1もまた参照されたい)。興味深いことにATROSABおよびH398のK
D値は2.8の係数で異なるが、ATROSABの会合速度(k
оn)は、H398のk
оnより2.6倍速く、そしてH398の解離速度(k
оff)は、ATROSABの解離より約7.6倍遅かった(
図3、表1)。したがって、受容体結合に関するTNFまたはLTと競合して、ATROSAB(より迅速なオン速度)は、未結合受容体をより迅速に占有し、そしてH398(より遅いオフ速度)は占有した受容体をより長く遮断する。
【0252】
標準的IL−8放出アッセイ(以下を参照されたい)のセッティングにおいて、受容体が連続内在化の根底にあり、そして内在化された受容体はなおシグナル伝達を仲介することを考慮すると、受容体により長く結合したままである(より遅いオフ速度の)抗体は、より強い阻害剤である可能性が高い。ELISAにおける、ATROSABおよびH398のヒトTNFR1−Fcへの結合が、pH5.4、pH6.4、pH7.4およびpH8.4で行った実験において互いの間で有意に異ならなかったため、エンドソーム区画中の酸性化条件によるpH依存性効果は、排除可能であった(データ未提示)。したがって、ATROSABの「オフ速度成熟」変異体の発展に努力を注ぐことが決定された。
【0253】
表1.ATROSABおよびH398の結合および生物活性
【0254】
【表1】
【0255】
実施例2:ファージディスプレイ、パート1−部位特異的突然変異誘発および平衡選択
以前の研究(Kirstin Zettlitz、2010の博士論文)において、ATROSABは、個々にランダム化されたCDRH1、CDRH2、CDRL1、およびCDRL2のファージディスプレイライブラリーを用いて、アフィニティ成熟に供された。これらのCDR内で、抗原結合部位において、IZI06.1のモデル構造で曝露されると同定された位をランダム化した。ストレプトアビジン・コーティング磁気Dynabeadsと組み合わせて、可溶性ビオチン化huTNFR1−Fcを用いて、平衡条件下で、選択を行った。選択条件を表2に提示する。4つのCDRすべてに関して、好ましい残基が同定されたが、CDRH2の突然変異のみ(表3)が、TNFR1結合にある程度の改善を示すことが見いだされた。scFvIG11が6周期から単離され、そしてQCMによって決定した際、scFvIZI06.1(ATROSAB)に比較して、2倍高いK
DでTNFR1−Fcに結合することが明らかになった。scFvIZI06.1(7.6x10
−4s
−1)に比較して、ほぼ3倍減少した2.6x10
−4s
−1のオフ速度定数k
оffを有し、これは抗体−受容体複合体からの抗体のより緩慢な解離を示すため、scFvIG11をさらなる実験のために選択した。scFvIZI06.1およびscFvIG11の配列整列を
図4に示す。
【0256】
表2. ビオチン化抗原を用いた平衡選択のための条件
【0257】
【表2】
【0258】
表3: 部位特異的突然変異誘発のための位、ライブラリーL2a
【0259】
【表3】
【0260】
実施例3:ファージディスプレイ、パート2−ランダム突然変異誘発および競合選択
scFvIG11(6.2x10
5コロニー形成単位)のVHおよびVLを含む全配列のエラープローンPCRによって、以下の選択実験のために用いるライブラリーを生成した。10の分析した単一クローンは、キロ塩基対あたり7.5の突然変異の全体の突然変異誘発率(7.5/kbp)を示した。全scFv配列の25%を含む(729bpのうち180bp)CDR内で、55の突然変異のうち15が観察され(27%)、かなり同等の突然変異分布が示された。
【0261】
アフィニティ成熟クローンscFvT12Bの選択
ヒトTNFR1に対するパニングの前に、ヒトTNFR2を用いた負の選択周期を行って、選択プロセス中の受容体選択性を保持した。イムノチューブに固定されたヒトTNFR1−Fcを使用して、改善された結合挙動を有するディスプレイscFv断片を選択した。各周期後に、ポリクローナルファージELISAによって、選択プールの総結合変化を記録し、これは3回の選択周期後、約2倍の改善を示した(
図5a、選択条件を表4に概説する)。
【0262】
表4.選択条件
【0263】
【表4】
【0264】
*溶液中の非標識ヒトTNFR1を、DynaBeads上でのおよびイムノチューブ中での選択の両方に関して、競合に用いた。
ELISAにおいてヒトTNFR1への最強の結合を示す候補ファージ(表5)を、可溶性scFv断片として発現し、そして中程度の受容体密度を持つセンサーチップを用いて、QCMによる動力学的分析に供した。クローンscFvT12Bは、受容体から最も緩慢な放出を示し、これは最低のk
оff値によって示された(
図5b、表5)。
【0265】
表5. scFvIZI06.1に比較した、ファージ候補、ディスプレイライブラリーEP03の相対EC
50およびk
оff値
【0266】
【表5】
【0267】
総合すると、scFvT12Bは、受容体遮断改善のための重要な特質と推定される、QCMオフ速度スクリーニングの最適な結合特性を示した。scFvT12BのDNA配列を、scFvIG11と比較して3つの位で変化させた。重鎖可変ドメイン(VH)のCDRH2のQ1HおよびT53Sならびに軽鎖可変ドメイン(VL、
図4)のCDRL3のS91G。
【0268】
scFvT12Bの特徴付け
可溶性抗体断片scFvT12B、scFvIZI06.1およびscFvIG11を、大腸菌TG1の周辺質において産生し、そしてSDS−PAGEによって適切な発現を確認すると、精製試料の重大でない混入が観察可能であった(
図6a)。ヒトTNFR1への濃度依存性結合がELISAにおいて示され、scFvIZI06.1、scFvIG11およびscFvT12Bに関して、それぞれ、3.8nM、2.6nMおよび2.0nMのEC
50値が明らかになった(
図6b、表6)。したがって、scFvT12Bは、scFvIG11に比較して、適用条件下で1.3倍の改善された結合を示した。QCMによって決定した際、K
D値は、scFvIZI06.1に関して28.9nM、scFvIG11に関して24.9、そしてscFvT12Bに関して6.0であり、これはscFvIG11に比較してscFvT12Bの4.1倍改善された結合に相当した(
図6c、表6)。アフィニティ変化は、改善された会合(2.1倍増加したk
оn)および解離速度定数(2.0倍減少したk
оff、表6)から生じた。最終的に、scFvT12Bは、scFvIZI06.1およびscFvIG11に比較して、改善されたアンタゴニスト活性で、in vitroのTNF誘導性インターロイキン−8放出を遮断した(
図6d)。適用したscFvが高濃度になるとシグナルが増加するため、得られたデータは、標準阻害曲線に収束不能であった。しかし、半最大阻害のおよその濃度は、scFvIG11に比較してscFvT12BによるヒトTNFR1の約7倍強い遮断を反映した(表6)。
【0269】
表6. scFvIZI06.1およびscFvIG11に比較したscFvT12Bの特徴付け。改善を、scFvIG11の値に関する係数として示す。
【0270】
【表6】
【0271】
*最後の1〜2データポイントの排除に際して、得たIL−8データの評価から生じる、およそのIC
50値。
実施例3:H398の反復ヒト化
上述のように、H398は、ATROSABに比較してTNF仲介性細胞反応をより有効に遮断することが立証され(Zettlitzら、2010)、したがって、scFvIZI06.1(ATROSAB)を生じるヒト化プロセスが反復された。別のヒト生殖系列遺伝子を同定するため、配列同一性よりもヒトらしさ(humanness)を優先し、そしてscFvH398に対してむしろ低い相同性のクローンを、VHおよびVLの反復ヒト化に用いた。より高い値の正のzスコアによって示されるような(表7)、広範なヒトらしさのため、3−11
*01および1−39
*02と称される遺伝子を選択した(AbhinandanおよびMartin 2007)。ネズミ抗体H398のCDR配列を、選択した生殖系列配列のフレームワークにトランスファーし、抗体断片scFvFRK13を生じた。自動生成SDRテンプレート(著作権1995、Andrew C.R. Martin、UCL)を用いた新規生成scFvの規範構造の分析によって、H71およびL2の位で、非典型的なアミノ酸が示された。したがって、ATROSABの生成に用いるアミノ酸によって、これらの残基を置換した(VH:R71A、VL:I2V)。scFvIZI06.1に比較した、アミノ酸置換の前(scFvFRK13.1)および置換後(scFvFRK13.2)のヒト化scFvの重鎖および軽鎖のアミノ酸配列中の変化を、
図7の整列中に概説する。
【0272】
表7. H398のヒト化
【0273】
【表7】
【0274】
*ヒト化IZI06.1(ATROSAB scFv)に用いた生殖系列遺伝子
scFvFRK13の発現および特徴付け
scFvFRK13.1およびscFvFRK13.2に加えて、その重鎖および軽鎖可変ドメインの組み合わせ、ならびにscFvT12Bの重鎖または軽鎖との組み合わせをクローニングし、そして産生した(
図8)。scFv断片を還元条件下でのSDS−PAGEで分析し、scFvFRK13.5およびscFvFRK13.7に関してのみ、完全な発現およびきれいな精製が示された(
図8b)。すべての他の構築物に関しては、より高いおよびより低い分子量のバンドが観察され、タンパク質試料または分解産物の混入が示された。さらに、scFvFRK13.5およびscFvFRK13.7のみが、サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、計算分子量に対応する、きれいなピークを示した(
図8c)。より短い保持時間のより低いシグナルがどちらのタンパク質に関しても検出され、これはおそらく、二量体scFvまたはより高い次元の凝集物の存在を示すと考えられる。これらの知見は、新規ヒト化VHドメインが、不安定なscFv分子を生じることを示す。
【0275】
scFvFRK13.1〜13.8の受容体結合を、対照タンパク質としてscFv抗体T12BおよびIZI06.1を用いて、ELISAにおいてさらに分析した(
図9a)。scFvFRK13.5、scFvFRK13.7およびscFvT12Bは、およそ1nMの匹敵するEC
50値でヒトTNFR1に結合したが(表8)、残りのscFvセットは100nMを超える濃度でのみ弱い結合を示した。同様に、scFvFRK13.5、scFvFRK13.7およびscFvT12Bは、およそ300nMのIC
50値で、HT1080細胞からのTNF誘導性IL−8放出を阻害した。対照タンパク質scFvIZI06.1は、932nMのIC
50値でTNFR1遮断を示した(
図9b、表8)。さらに、動的光散乱法によって、熱安定性を調べた。scFvFRK13.5およびscFvFRK13.7は、それぞれ、scFvIZI06.1およびscFvT12Bの59℃および55℃に比較して、63℃および65℃の融解温度を示した(
図10)。注目すべきことに、scFvIZI06.1は、より低い温度で、すでに、平均カウント速度の増加を示し、タンパク質構造の部分的脱安定化が示された。対照的に、scFvT12B、scFvFKR13.5およびscFvFRK13.7のシグナルは、融点未満ではほぼ一定しており、より低い温度範囲での改善された安定性もまた明らかになった。
【0276】
表8.ヒト化scFvH398抗体断片の特徴付け
【0277】
【表8】
【0278】
要約すると、新規ヒト化VHドメインを含有するscFv抗体は、適切には発現されず、そしてヒトTNFR1への結合が破壊されているようであった。scFvT12Bの再ヒト化VLドメインおよびVHドメインを含有するscFvFRK13.7を十分な純度で発現させ、そして該抗体は、「オフ速度成熟」一本鎖Fv抗体scFvT12Bと比較して、同等に強く、huTNFR1−Fcに結合した。さらに、scFvFRK13.7は、改善された熱安定性を明らかにした。
【0279】
実施例4: IgGおよびFab断片へのscFvFRK13.7の変換
scFvFRK13.7の重鎖および軽鎖可変ドメインを、標準的クローニングおよびPCR技術によって、ATROSAB IgGおよびATROSAB Fabのバックグラウンド内に導入した。IgG−FRK13.7およびFab−FRK13.7は、以下において、それぞれIgG13.7およびFab13.7と称される。HEK293T細胞においてタンパク質を一過性に産生し、そしてプロテインA(IgG13.7)または抗体(Fab13.7)アフィニティクロマトグラフィによって精製した。より高い分子量の小さいピークがあったため、IgG13.7をさらなる調製用SEC(FPLC)に供した。還元(
図11a)および非還元条件(
図11c)下で、SDS−PAGEによって、ならびにサイズ排除クロマトグラフィ(SEC、
図11c)によって、発現およびタンパク質完全性を監視した。ATROSABおよびFabATROSAB(FabATR)をすべての実験で対照として用いた。4つのタンパク質はすべて、電気泳動中、計算分子量と相関するバンドを示した。同様に、ゲルろ過において観察される吸収ピークは、均質なタンパク質調製を確認し、見かけの分子量すべてが予期されるサイズと一致した。Fab13.7およびIgG13.7は、ヒトTNFR2およびマウスTNF受容体両方と比較して、ELISAにおいてヒトTNFR1に対するその特異性を保持した(
図12)。
【0280】
ヒトTNFR1へのFRK13.7抗体の結合
IgG13.7およびFab13.7は、ELISAにおいて、Fab13.7に関しては1.4nM、ならびにIgG13.7の場合は0.76nMのEC
50値で、ヒトTNFR1−Fcに結合した。対照タンパク質ATROSABおよびFabATRは、より高いEC
50値によって示されるように、IgG13.7およびFab13.7に比較して、それぞれ、1.4倍および8.7倍弱い結合を示した(
図13)。
【0281】
さらに、中程度の(86Hz)または高い(184Hz)受容体密度のセンサーチップを用いて、水晶振動子マイクロバランスによって、結合動力学の評価を行った。対照抗体ATROSABは、中程度の受容体密度のヒトTNFR1−Fcと、それぞれ0.38nMおよび78nMのK
D値によって示されるように、高アフィニティまたは低アフィニティのいずれかの比率で構成される、明らかな二相性の相互作用を示した(
図14a、表9)。対照的に、IgG13.7は、1対2結合分析において、1.77x10
−4〜9.30x10
−4の範囲のk
оff値を示し(データ未提示)、その結果、解離タンパク質の量が非常に少なく、そしてしたがって、一価および二価結合および解離下位集団間で相違がほとんど検出不能であった。したがって、IgG13.7を高密度チップ上で試験し、ここで、二価相互作用が明らかに優勢であり、そして結合シグナルに対する一価相互作用の寄与は大部分無視可能であり、1対1分析における評価が可能になった。0.11nMの決定されたK
D値は、二価結合状況を考慮すると、ATROSABに比較して、3.5倍の改善を反映した(
図14c)。一価対照タンパク質FabATRは、検出期間(5分間)中に中程度の受容体密度のチップから、ほぼ完全に解離し、1.5x10
−2s
−1の解離速度定数(k
оff)および30nMのK
D値が明らかになった(
図14b)。対照的に、抗体受容体複合体からのFab13.7の解離は、7.3x10
−4s
−1のk
оff値によって示されるように、かなりより緩慢であり、一方、会合速度定数(k
оn)は、FabATRに比較してほぼ同一であった。これは、1.6nMのK
D値を持つヒトTNFR1に対して、Fab13.7の19倍強いアフィニティを生じた(
図14d、表9)。
【0282】
表9. IgG13.7およびFab13.7のアフィニティ決定
【0283】
【表9】
【0284】
したがって、ATROSABの一価抗体構築物(FabATR)は、Fab13.7に比較した際、huTNFR1に対するはるかに劣った結合剤であることが立証された。huTNFR1に対するscFv IZI−06.1結合のアフィニティは、scFvアフィニティをFab形式で測定すると、FabATRと同様である。scFv IZI−06.1の先行技術の測定は、より優れた結果を示すことが可能である(二量体化scFv分子のアビディティ効果のため)が、結合(Fab形式)のアフィニティは、はるかに劣っており、そしてFabATRと同等である。
【0285】
scFvFRK13.7由来タンパク質のin vitro生物活性および薬物動態学
それ自体はアンタゴニスト性である抗体ATROSABに対する、アフィニティ成熟および再ヒト化の影響を調べるため、scFvFRK13.7由来IgGおよびFabが、HT1080およびHeLa細胞から、それぞれ、インターロイキン−8および−6の放出を誘導する潜在能力を試験した。対照として含まれるATROSABは、IL−8の場合にのみ、記載する最低限の受容体活性化を示し(Richterら 2013)、実行したIL−6放出実験においては、細胞バックグラウンドを超える刺激は観察されなかった(
図15bおよびc)。一価対照タンパク質FabATRは、それぞれの細胞タイプから、IL−8もまたIL−6放出も刺激しなかった。これと一致して、未処理細胞に比較して、Fab13.7によって誘導されるインターロイキン放出増加は観察されなかった。しかし、IgG13.7は、IL−8およびIL−6の放出を明らかに刺激し、33nM TNFの影響と比較して、20%〜87%のインターロイキンレベルを生じ、これは以前の実験において、TNFによって刺激される最大の反応に近かった。
【0286】
興味深いことに、0.1nM TNFによって誘発されたHT1080細胞からのIL−8放出は、それぞれ、118nMおよび151nMの匹敵するIC
50値でATROSABおよびFabATRによって阻害された(
図16a)。同様に、ATROSABおよびFabATRは、0.1nM TNFによって引き起こされるHeLa細胞からのIL−6放出の同等に強い阻害を明らかにした(
図16b、表10)。そのアゴニスト性活性のため、IgG13.7の半最大阻害(IC
50)の濃度は決定されなかった。対照的に、Fab13.7は、それぞれ18.7nMおよび31.4nMのIC
50値で、用量依存方式で、0.1nM TNFに反応してIL−8およびIL−6放出を阻害し、全長IgG ATROSABに比較して、5.8倍〜6.2倍、改善されたTNF中和を明らかにした。
【0287】
さらに、scFvFRK13.7から生じた全長IgGおよびFab断片が、Kym−1細胞におけるTNFR1仲介性細胞死を促進するかまたは阻害する潜在能力を調べた。対照タンパク質ATROSABおよびFabATRと一致して、Fab13.7による刺激は、いかなる検出可能な細胞傷害性も導かなかった(
図17a)。一方、IgG13.7は、33nMで用いられる陽性対照TNFと同等に、広範囲の濃度で、Kym−1細胞のほぼ100%を根絶した。非アゴニスト性Fab13.7の阻害能を調べるため、Kym−1細胞を0.01nM TNFとインキュベーションすると、1回の処理で、細胞のほぼ90%が死んだ。Fab13.7および対照タンパク質ATROSABおよびFabATRは、それぞれ4.7nM、24nMおよび37nMのIC
50値で、TNF仲介性細胞死を阻害し、インターロイキン放出アッセイの観察を裏付けた(
図17b、表10)。
【0288】
表10. ATROSABおよびFRK13.7抗体の生物活性
【0289】
【表10】
【0290】
薬剤特異的抗体の存在下で、Fab13.7の潜在的なアゴニスト活性のリスクを評価するため、ヤギから単離したポリクローナル抗ヒトFab血清と組み合わせて、HT1080細胞に対するFab13.7の生物活性を試験した。標準的結合ELISAにおいて、Fab13.7へのヒトFab特異的ヤギ血清の結合を示すことが可能であった(
図18a)が、IL−8放出アッセイにおいて、64μg/mlの血清とともに、Fab13.7の細胞バックグラウンドより高い刺激活性の増加は検出されなかった(
図18b)。しかし、ATROSABは、抗ヒトFab血清との同時処理に反応して、IL−8の明らかに増加した誘導を示した(
図18b)。抗ヒトFc抗体とともに、ATROSABを用いた以前の実験(未公表、データ未提示)において、類似の結果が得られた。
【0291】
ヒト対応物によって置換されたTNFR1細胞外ドメインを有するトランスジェニックC57BL/6Jマウスを用いて、FabATRおよびFab13.7の薬物動態学的特性を分析した(
図19)。およそ0.25時間の初期半減期は、体内の迅速な分布を示した。Fab断片はどちらも、FabATRに関しては1.7時間、そしてFab13.7の場合は1.56時間の最終半減期によって、血液から迅速に除去された。これらの結果は、ATROSABのFab断片に比較して、進化したTNFR1アンタゴニスト性Fab13.7の不変の薬物動態学的プロファイルを明らかにした。データの要約を表11に示す。
【0292】
表11. FabATRおよびFab13.7の薬物動態学的分析
【0293】
【表11】
【0294】
実施例5: Fab13.7のPEG化誘導体
in vivoのFab13.7のかなり短い循環時間を回避するため、一方で、流体力学半径を増加させ、そして他方でFcRn仲介性薬剤リサイクリングを可能にすることを意図する、いくつかの戦略が研究の対象となった。
【0295】
まず、Fab13.7(Fd:配列番号25、軽鎖:配列番号26)を、記載されるように(Choyら 2002)、重鎖定常ドメイン1(CH1)で修飾した。簡潔には、最初のシステイン残基を含み、2つのアラニン残基が続く、IgG1ヒンジ領域の天然存在アミノ酸配列部分を、CH1ドメインに、C末端で付加し(・・・DKTHTCAA(配列番号34)、
図20a、配列番号27、軽鎖、Fab13.7を参照されたい、配列番号26)、Fab13.7’を生じた。新規導入システイン残基の潜在的に形成されるジスルフィド連結を減少させるため、0.625mM TCEPを用いて、PEG
40.000をFab13.7’にコンジュゲート化した(
図20b)。こうして生成されたFab13.7
PEGは、ELISAにおいて、非修飾Fab13.7と比較した際、2.6倍増加したEC
50値で、固定されたヒトTNFR1−Fc融合タンパク質に結合した(
図20c、表12)。Fab13.7
PEGは、HT1080細胞を用いたIL−8放出アッセイにおいて決定されるように、in vitroで、TNFR1の有意な活性化は示さなかった(
図20d)。同じアッセイ条件下で、Fab13.7
PEGは、Fab13.7と比較した際、4.9倍より高いIC
50値で、0.1nM可溶性TNFによって誘導される、HT1080細胞からのIL−8放出を阻害した(
図20e、表12)。PEG
40.000でのFab13.7の修飾は、改善されたin vivo薬物動態学的プロファイルを生じた。Fab13.7に比較して、初期および終期半減期および曲線下面積は、それぞれ、3.8、18.0および22.2の係数で増加した(
図20f、表12)。
【0296】
表12.一価Fab13.7変異体の生物活性
【0297】
【表12】
【0298】
*異なる単一実験において、多様な値が検出された
実施例6: Fab13.7 MSA融合タンパク質
別のアプローチにおいて、Fab13.7を、12アミノ酸リンカーによって連結して、マウス血清アルブミン(MSA)に遺伝子融合させた(
図21a、Fd−MSA:配列番号28、軽鎖、Fab13.7を参照されたい、配列番号26)。こうして生成されたFab13.7−MSAは、非還元条件下のSDS−PAGEにおいて、1つの単一バンドを示し、これは114kDaの計算分子量に対応した(
図21b)。還元条件下で、2つのバンドが観察され、これは、MSA部分に融合した、解離軽鎖およびFd断片に相当した。サイズ排除クロマトグラフィによって、タンパク質構造の完全性および凝集またはオリゴマー化タンパク質分画の非存在が確認された(
図20c)。Fab13.7−MSAは、ELISAにおいて、非修飾Fab13.7に比較した際、1.7倍増加したEC
50値で、固定されたヒトTNFR1−Fc融合タンパク質に結合し(
図21d、表12)、そしてHT1080細胞を用いたIL−8放出アッセイにおいて決定した際、in vitroでTNFR1の有意な活性化は示さなかった(
図21e)。同じアッセイ条件下で、Fab13.7−MSAは、Fab13.7に比較した際、1.9倍より高いIC
50値で、0.1nM可溶性TNFによって誘導された、HT1080細胞からのIL−8放出を阻害した(
図21f、表12)。MSAへのFab13.7の融合は、改善されたin vivo薬物動態学的プロファイルを生じた。Fab13.7に比較して、初期および終期半減期、ならびに曲線下面積は、それぞれ、7.8、4.3および21.3の係数で増加した(
図21g、表12)。
【0299】
実施例7: IgG−13.7ハーフ抗体
損なわれていない(intact)Fab13.7部分を、そして加えて、CH2−CH3遷移に位置するFcRn結合部位を含有する一価IgG分子を生成するため、重鎖二量体化を回避するために、IgG1ヒンジ領域およびFc部分のアミノ酸組成を変化させた(
図22a、重鎖IgG13.7
ハーフ:配列番号29、軽鎖、Fab13.7を参照されたい、配列番号26)。簡潔には、鎖間ジスルフィド連結の形成を妨害するため、ヒンジ領域の2つのシステインをセリンによって置換した(C224S、C227S)。ホモマーCH3−CH3相互作用を妨害する意図で、CH3ドメイン内に、4つのさらなる突然変異を導入した(P393A、F403R、Y405R、K407D)(Guら、2015もまた参照されたい、配列番号29、軽鎖、Fab13.7を参照されたい、配列番号26)。こうして生成されたIgG13.7
ハーフは、非還元条件下のSDS−PAGEにおいて、73kDaの計算分子量に対応する、1つの単一バンドを示した(
図22b)。還元条件下で、重鎖および軽鎖に相当する、2つのバンドが観察された。サイズ排除クロマトグラフィによって、タンパク質構造の完全性および凝集またはオリゴマー化タンパク質分画の非存在が確認された(
図21c)。IgG13.7
ハーフは、ELISAにおいて、非修飾Fab13.7に比較した際、1.9倍増加したEC
50値で、固定されたヒトTNFR1−Fc融合タンパク質に結合し(
図22d、表12)、そしてHT1080細胞を用いたIL−8放出アッセイにおいて決定した際、in vitroでTNFR1の有意な活性化は示さなかった(
図22e)。同じアッセイ条件下で、IgG13.7
ハーフは、Fab13.7に比較した際、1.8倍より高いIC
50値で、0.1nM可溶性TNFによって誘導された、HT1080細胞からのIL−8放出を阻害した(
図22f、表12)。単量体Fc部分へのFab13.7の融合は、改善されたin vivo薬物動態学的プロファイルを生じた。Fab13.7に比較して、IgG13.7
ハーフの初期および終期半減期、ならびに曲線下面積は、それぞれ、3.7、2.3および4.5の係数で増加した(
図22g、表12)。
【0300】
実施例8:一価Fab13.7−Fc融合タンパク質
IgG13.7
ハーフの場合の薬物動態学的特性の限定された改善を克服するため、Fab13.7のFdおよび軽鎖をどちらも、「ノブ・イントゥ・ホール」修飾を適用して、ヘテロ二量体化を助長するさらなる突然変異を含有するFcγRサイレンシングCH2およびCH3ドメインからなるタンパク質部分に融合させた(
図23a、Merchantら 2013、Fd13.7−Fc
ホール:配列番号30、LC13.7−Fc
ノブ:配列番号31)。簡潔には、Fcγ受容体への結合を抑制すると報告された、CH1、ヒンジ領域およびCH2における突然変異(Armourら 1999、Richterら 2013、Shieldsら 2001、Zettlitzら 2010)、ならびにヒンジ領域における上記のシステインからセリンへの変化に加えて、突然変異T366S、L368AおよびY407Vを、Fd断片に連結されたCH3ドメインに導入する一方、Fab13.7軽鎖に連結したCH3ドメインの単一のスレオニン残基をトリプトファン(T366W)に変化させた。それによって生成されたFab13.7−Fc
kih0DS(ノブ・イントゥ・ホール[kih]駆動ヘテロ二量体化を含み、そしてヒンジ領域中のジスルフィド結合を持たない[0DS]Fc部分に連結されたFab13.7)は、非還元条件下のSDS−PAGEにおいて、全タンパク質に関する98kDaの計算分子量に対応する、1つの単一バンドを示した(
図23b)。還元条件下で、重鎖および軽鎖に相当する、2つのバンドが観察された。サイズ排除クロマトグラフィによって、タンパク質構造の完全性および凝集またはオリゴマー化タンパク質分画の非存在が確認された(
図23c)。Fab13.7−Fc
kih0DSは、ELISAにおいて、非修飾Fab13.7に比較した際、類似の活性で、固定されたヒトTNFR1−Fc融合タンパク質に結合し(
図23d、表12)、そしてHT1080細胞を用いたIL−8放出アッセイにおいて決定した際、in vitroでTNFR1の有意な活性化は示さなかった(
図23e)。同じアッセイ条件下で、Fab13.7−Fc
kih0DSは、Fab13.7に比較した際、2.3倍より高いIC
50値で、0.1nM可溶性TNFによって誘導された、HT1080細胞からのIL−8放出を阻害した(
図23f、表12)。ヘテロ二量体Fc部分へのFab13.7の融合は、改善されたin vivo薬物動態学的プロファイルを生じた。Fab13.7に比較して、Fab13.7−Fc
kih0DSの初期および終期半減期、ならびに曲線下面積は、それぞれ、7.0、8.9および21.3の係数で増加した(
図23g、表12)。
【0301】
実施例9:一価Fv13.7−Fc融合タンパク質
別の形式において、Fv13.7の可変ドメイン(VH、VL)を別個に、Fab13.7−Fc
kih0DSに関して記載するように、Fc鎖のヒンジ領域(VH−ヒンジ−Fc(ノブ)、VL−ヒンジ−Fc(ホール))に融合させた(
図24a、VH13.7−Fc
ホール:配列番号32、VL13.7−Fc
ノブ:配列番号33)。それによって生成されたFv13.7−Fc
kih0DSは、還元および非還元条件下のSDS−PAGEにおいて、類似の分子量である両方の個々のポリペプチド鎖に相当する、1つの単一バンドを示し、全タンパク質に関する98kDaの計算MWを生じた(
図24b)。サイズ排除クロマトグラフィによって、タンパク質構造の完全性および凝集またはオリゴマー化タンパク質分画の非存在が確認された(
図24c)。Fv13.7−Fc
kih0DSは、ELISAにおいて、非修飾Fab13.7に比較した際、わずかに増加した活性で、固定されたヒトTNFR1−Fc融合タンパク質に結合し(
図24d、表12)、そしてHT1080細胞を用いたIL−8放出アッセイにおいて決定した際、in vitroでTNFR1の有意な活性化は示さなかった(
図24e)。同じアッセイ条件下で、Fv13.7−Fc
kih0DSは、Fab13.7に比較した際、類似のIC
50値で、0.1nM可溶性TNFによって誘導された、HT1080細胞からのIL−8放出を阻害した(
図24f、表12)。ヘテロ二量体Fc部分へのFv13.7の融合は、改善されたin vivo薬物動態学的プロファイルを生じた。Fab13.7に比較して、Fv13.7−Fc
kih0DSの初期および終期半減期、ならびに曲線下面積は、それぞれ、4.1、10.5および15.4の係数で増加した(
図24g、表12)。
【0302】
本データは、抗体受容体複合体のかなりより緩慢な解離から生じる、ATROSABおよびFabATRに比較した、Fab13.7の改善されたアンタゴニスト強度を立証した。インターロイキン放出および細胞傷害性アッセイにおいて、ATROSABおよびFabATRに関して、類似のIC
50値が観察されたため、2ではなく1つのみの受容体結合部位の存在は、TNF仲介性TNFR1活性化を阻害する能力を減少させないようである。対照的に、ヒトTNFR1の第二の結合部位の非存在は、IgG13.7の場合に観察されるアゴニスト性強度を排除した。さらに、単独で、あるいは抗体仲介性架橋による二価または多価の回復を意図した、ヒトFabに特異的なポリクローナルヤギ血清の存在下で、Fab13.7のアゴニスト活性は検出不能であった。これはおそらく、in vivo状況下で、抗薬剤免疫反応の場合であっても、炎症関連副作用のリスクが減少していることを示しうる。最後に、減少したサイズおよびFcRn仲介性薬剤リサイクリングの欠如のため、Fab13.7は、全IgG分子と比較して、血中でかなり短い循環時間を示す。半減期延長戦略の実行はこの欠点を克服することを可能にし、将来の臨床適用に関する、ヒト体内での長い循環の必要性を満たすためにFab13.7が成功裡に修飾される潜在能力が強調された。
【0303】
実施例10:標準アッセイの特定の材料および方法
材料
セイヨウワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化抗マウスIgG(Fc特異的)抗体、HRPコンジュゲート化抗ヒトIgG(全分子、Fc特異的、Fab特異的)抗体を、それぞれ、Sigma(ドイツ・タウフキルヘン)から購入した。scFv抗体のHisタグをターゲティングするHRPコンジュゲート化抗体をSanta Cruz Biotechnology(米国サンタクルーズ)から購入した。ヒト横紋筋肉腫細胞株Kym−1を、RPMI 1640培地、10%FCS、2mM L−グルタミン中で増殖させ、そしてHT1080wt細胞およびHeLa細胞をRPMI 1640培地、5%FCS、2mM L−グルタミン中で増殖させた。ヒトTNFR2−Fc融合タンパク質(Mohlerら 1993, The Journal of Immunology 151. Jg., Nr. 3, S. 1548−1561)。化学薬品をRoth(ドイツ・カールスルーエ)より購入し、一方、酵素(クローニングおよびPCR)および補充試薬をThermoFisher(ドイツ・ミュンヘン)より購入した。消耗品のいかなる異なる供給源も、以下に明らかに記述する。
【0304】
TNFR1−Fc融合タンパク質の発現
ヒトTNFR1(aa29〜211)、マウスTNFR1(aa30〜212)、およびマウスTNFR2(aa23〜258)の細胞外領域をコードするDNAは、UniProtKB(Swiss−Prot)エントリーP19438(ヒト(Homo sapiens)TNFR1)、P20333(ヒト(Homo sapiens)TNFR2)、およびP25119(マウス(Mus musculus)TNFR2)の配列情報を用い、個々のドメイン間に適切な制限部位を導入し、そしてpSecTagL1−Fc(pSecTag−FcHis(Mullerら J. Immunol. Methods (2008) 339(1): 90−8)より修飾)内にクローニングして、合成的に産生された。HEK293細胞を、リポフェクタミン(Invitrogen、ドイツ・カールスルーエ)を用いてプラスミドDNAでトランスフェクションし、そして安定トランスフェクションクローンを、記載されるように、ゼオシンの存在下で選択した(Mullerら J. Biol. Chem (2007) 282(17):12650−60)。RPMI、5%FCS、2mM L−グルタミン中で、細胞を90%集密まで拡大した。タンパク質産生のため、Opti−MEM I(Invitrogen、ドイツ・カールスルーエ)で培地を置換し、そして上清を3〜4日ごとに収集した。以下に記載するように、細胞培養上清からタンパク質を精製した。
【0305】
大腸菌TG1の周辺質におけるscFv抗体断片の発現
発現プラスミドを含有する大腸菌TG1の出発培養を、20ml 2xTY(100μg/mlアンピシリン、1%グルコース)中、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、1リットル2xTY(100μg/mlアンピシリン、0.1%グルコース)に10mlの一晩培養物を接種し、そして37℃で0.8〜1.0のOD[600nm]に到達するまで、振盪しながらインキュベーションした。1ml IPTG(最終濃度1mM)の添加に続いて、培養を室温でさらに3〜4時間インキュベーションした。4500
*gの遠心分離によって、細菌を採取し、そしてペレットをPPB中で、50mlの最終体積に再懸濁した。周辺質から抗体断片を放出させるため、0.25mlのリゾチーム(ddH2O中10mg/ml)を添加し、そして懸濁物をその後、氷上で30分間インキュベーションした。次の遠心分離工程(10,000
*g、10分間、4℃)前に、0.5mlの1M MgSO4を添加することによって、残ったスフェロブラストを安定化した。上清を、PBSに対して4℃で一晩透析した。以下に記載するように、さらなる遠心分離工程(1000
*g、15分間、4℃)後、透析した溶液から抗体断片を精製した。
【0306】
一過性トランスフェクション後のIgG13.7およびFab3.7の発現
5つの175cm
2ボトルが70〜90%集密に到達するまで、HEK293細胞を培養した。100μgのベクターDNAおよび250μlリポフェクタミンをまず、各々7mlのOpti−MEMと個々に混合し、そして次いでともに混合し、そしてRTで30分間インキュベーションした。Opti−MEMを用いて、25mlの体積までトランスフェクション混合物を調節し、各ボトルの培地を5mlのトランスフェクション溶液で置換し、そして細胞を37℃、5%CO2で4〜6時間インキュベーションした。トランスフェクション培地を50ml Opti−MEMによって置換することで産生を開始し、この培地を2日ごとに、少なくとも1リットルが収集されるまで置換した。上清を以下のように滅菌ろ過し、そして精製した。
【0307】
タンパク質精製−固定金属アフィニティクロマトグラフィ(IMAC)
滅菌ろ過した組織培養上清または透析した周辺質抽出物を、Ni−NTA(Ni−NTAアガロース、64−17−5、Macherey−Nagel、ドイツ・デューレン)とともに、回転させながら4℃で一晩インキュベーションした。精製樹脂を収集するため、ビーズを含有する上清を、Poly−Prep(登録商標)クロマトグラフィカラムに引力流動または中程度の真空圧によって装填した。20mMイミダゾールを含有するIMAC緩衝剤を用いて、同時に行うブラッドフォード試験(96ウェルマイクロタイタープレート中で混合される、90μlブラッドフォード試薬(500−0006、BIO−RAD、ドイツ・ミュンヘン)+10μl試料)によって、フロースルー中にタンパク質がほぼ検出されなくなるまで、洗浄を行った。IMAC緩衝剤中の250mMのイミダゾールで樹脂からタンパク質を溶出させ、そして500μlの分画を収集した。タンパク質含有分画(記載するように、ブラッドフォード迅速試験によって決定)をプールし、そしてPBSに対して透析した。
【0308】
タンパク質精製−抗体およびプロテインAアフィニティクロマトグラフィ
TOYOPEARL(登録商標)AFrProtein A−650F(プロテインA樹脂、22805、Tosoh、ドイツ・シュトゥットガルト)またはHiTrap KappaSelect(アガロースマトリックスにコンジュゲート化されたカッパ鎖選択的抗体断片、17−5458−12、GE Healthcare、英国チャルフォント・セント・ジャイルズ)樹脂のいずれかを用いて、IMACに関して記載されるように、方法を正確に行った。PBSを用いて洗浄を行い、そして100mMグリシン、pH2〜3で、樹脂からタンパク質を溶出させた。溶出した分画を直接プールし、そしてPBSに対して直ちに透析した。
【0309】
調製用サイズ排除クロマトグラフィ
調製物中に凝集したかまたは多量体として集合したタンパク質がある場合、Aekta精製装置を用いて、さらなるサイズ排除工程を行った。液相としてPBSを用い、0.5ml/分の流速で、Superdex200 10/300GLカラム上で、タンパク質を分離した。200μlの分画を収集し、そして試料を含有するピークをさらなる実験のためにプールした。
【0310】
タンパク質特徴付け−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)
Laemmli 1970に厳密にしたがって、3μgのタンパク質調製物、ならびにスタッキングおよび分離ゲルの示す割合を用いて、SDS−PAGEを行った。
【0311】
タンパク質特徴付け−サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)
流体力学半径を決定するため、Phenomenex Yarra SEC−2000カラム(300x7.8mm、0.5ml/分の流速)と組み合わせてWaters 2695 HPLCを用いて、30μgの精製タンパク質試料を分析した。可動相は0.1M Na2HPO4/NaH2PO4、0.1M Na2SO4、pH6.7であった。以下の標準タンパク質を用いた:チログロブリン(669kDa)、アポフェリン(443kDa)、アルコールデヒドロゲナーゼ(150kDa)、BSA(66kDa)、カルボニックアンヒドラーゼ(29kDa)、FLAGペプチド(1kDa)。
【0312】
タンパク質特徴付け−動的光散乱法による熱安定性
増加する温度に対する安定性を、ZetaSizer Nano ZS(Malvern、ドイツ・ヘレンバーグ)を用いた動的光散乱法によって測定した。およそ100μgの精製タンパク質試料をPBSの使用によって総体積1mlに調節し、そして水晶キュベットに適用した。秒あたりのキロカウント(kcps)を測定し、これは溶液中の変性タンパク質粒子のサイズを示し、このサイズは、タンパク質が加熱に際して凝集する間、増加する。温度を段階的に35℃から80℃(1℃間隔、各測定前に2分間平衡)まで、段階的に増加させた。
【0313】
酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)
マイクロタイタープレートを100μlの示すタンパク質(PBS中、1μg/ml、表3.3を参照されたい)でコーティングし、そして4℃で一晩インキュベーションした。残った結合部位を2%MPBS(PBS中のスキムミルク、ウェルあたり200μl)で室温で2時間ブロッキングし、そして続いてPBSで2回洗浄した。2%MPBS中で希釈した試料100μlを、室温で1時間インキュベーションした後、2%MPBS中、HRPコンジュゲート化検出抗体100μlを伴う、最後のインキュベーション工程を行った。競合実験の場合、どちらの分析タンパク質試料も、個々に(例えば滴定するかまたは単一濃度に希釈するかいずれかで)調製し、そしてプレートに適用する前に混合した。結合したタンパク質を、100μl TMB基質溶液で検出し、HRP反応を50μl 1M H2SO4の添加によって停止し、そしてInfiniteマイクロタイタープレート読み取り装置(TECAN、スイス・メンネドルフ)を用いて450nmの波長で吸光度を測定した。各インキュベーション工程の間で、そして検出の前に、プレートをPBSTで3回そしてPBSで2回洗浄した。
【0314】
水晶振動子マイクロバランスを用いたアフィニティ測定
タンパク質−タンパク質相互作用におけるリアルタイム結合動力学を、水晶振動子マイクロバランス測定(A−100 C−FastまたはCell−200 C−Fast、Attana、スウェーデン・ストックホルム)によって決定した。結合パートナーの一方(リガンド、例えばTNFR1−Fc)を、異なる密度で(以前公表された結果を確認するための飽和条件の場合はほぼ200Hz、および細胞表面の状況により類似した、より低い受容体密度の条件を確立するためには、50〜100Hz、特に約50Hz)、製造者のプロトコルにしたがって、カルボキシルセンサーチップ上に化学的に固定した。pH7.4のPBST(PBS、0.1%Tween20)で希釈した試料(分析物)を用い、25μl/分の流速、37℃で、結合実験を行った。25μlの5mM NaOHまたは20mMグリシン、pH2.0でチップを再生した。3回目の測定ごとに、流動緩衝液注入を測定し、これを結合曲線から減じた。特定のデバイスに関してAttanaによって提供されるソフトウェアを用いてデータを収集し、そしてAttache Office Evaluationソフトウェア(Attana、スウェーデン・ストックホルム)およびTraceDrawe(ridgview instruments、スウェーデン・バンジ)によって分析した。
【0315】
Kym−1細胞傷害性アッセイ
Kym−1細胞(ウェルあたり1x10
4)を96ウェルマイクロタイタープレートに植え付け、そして37℃および5%CO
2で一晩インキュベーションした。RPMI 1640+10%FCS中でタンパク質を希釈した。2つのタンパク質種を競合実験においてともに用いる場合、両方の試料を個々に調製し(滴定するかまたは単一濃度に希釈するかいずれかで)、そしてプレートに適用する前に混合した。プレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベーションした後、上清を廃棄し、そして50μlクリスタルバイオレット溶液を細胞に添加した。続いて、プレートをddH
2O中で20回洗浄し、そして乾燥させた。染色溶液中に含有されるメタノールによって固定された、生存および接着細胞から生じる残りのバイオレット色素を、100μlメタノールを添加し、RTで10分間振盪することによって溶解した。Infiniteマイクロタイタープレート読み取り装置(Tecan、スイス・メンネドルフ)を用いて、プレートを測定した。
【0316】
インターロイキン放出アッセイ
ウェルあたり2x10
4 HeLaまたはHT1080細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに植え付け、そして100μlのRMPI 1640+5%FCS中で一晩増殖させた。翌日、連続して産生されるサイトカインを除去するため、上清を交換した。RPMI 1640+5%FSC中の試料の希釈シリーズとともに、細胞を37℃、5%CO
2でインキュベーションした。競合実験の場合、分析したタンパク質試料をどちらも、個々に調製し(滴定するかまたは単一濃度に希釈するかいずれかで)、そしてプレートに適用する前に混合した。非刺激細胞は対照として働いた。16〜20時間後、プレートを500gで5分間遠心分離し、そして製造者のプロトコルにしたがって実行するELISAによって、細胞上清を直接分析した。上清をRPMI 1640(FCS不含)中で希釈し、そして抗体を試薬希釈剤(0.1%BSA、0.05%Tween20、20mM TRIS、150mM NaCl、pH7.5)中で希釈した。コーティングしたマイクロタイタープレートを、PBS中の2%BSA(ウシ血清アルブミン)を用いてブロッキングし、そしてELISAに関して上述するように、洗浄ならびに検出および測定を行った。細胞培養上清中のIL−6およびIL−8の検出のためのサンドイッチELISAキットを、ImmunoTools(ドイツ・フリーゾイテ)から購入した。
【0317】
薬物動態学
特定のマウス遺伝子の遺伝子座にヒトTNFR−1の細胞外ドメインの遺伝子を所持するトランスジェニックC57BL/6Jマウス(C57BL/6J−huTNFRSF1Aecdtm1UEG/izi)に、12〜25μgの分析タンパク質を静脈内注射した。非改変遺伝的バックグラウンドのC57BL/6Jは対照として働いた。3分、30分、1時間、3時間、および6時間後、ならびに3日および7日後に血液試料を収集し、そして直ちに氷上でインキュベーションした。遠心分離によって血清を分離し(13.000g、4℃、10分間)、そして−20℃で保存した。上述のような結合ELISAによって、血清中の残りのタンパク質を検出した。データを3分の値の割合として示した。あるいは、注射時点のELISAシグナルを、得た曲線から内挿し、そして注射用量およびマウスの平均血液体積に基づいて、初期in vivo濃度に設定し、測定時点での示す濃度を生じた。
【0318】
ファージディスプレイ−アクセプターベクターpHENIS_scFvIG11−fsSTOPのクローニング
scFvIG11をコードするDNA配列を、プライマーNcoI_VHIZI06.1_backおよびBstZ17I_fsSTOP_ BssHII_forを用いて、テンプレートpHENIS−scFvL2a_huBR6_IG11(Zettlitz 2010b)から、PCR(上述)によって増幅した。停止コドンと組み合わせてフレームシフトを含有する、得たDNA断片を、NcoIおよびBstZ17Iで消化した後、再び、pHENISscFvL2a_huBR6_IG11に挿入して、アクセプターベクター、pHENIS_scFvIG11−fsSTOPを生じた。
【0319】
ファージディスプレイ−選択ライブラリーEP03の生成
scFvT12Bを生じるscFvIG11のアフィニティ成熟のための選択ライブラリーEP03は、製造者のプロトコルにしたがって、GeneMorph IIランダム突然変異誘発キット(200550、Agilent Technologies、米国カリフォルニア州サンタクララ)を用いて、エラープローンPCRによって生成された。テンプレートDNA pHENIS−scFvLib2a_huBR6_IG11を、プライマーLMB2およびfdSeq1の使用によって増幅した。突然変異の中程度の発生率を生じることを意図し、0.1μgテンプレートDNAを30周期のPCR反応で用いた。生じたPCR産物を、酵素NcoIおよびNotIによって消化した後、アクセプターベクターpHENIS_scFvIG11_ fsSTOPにクローニングした。16℃で一晩、連結を行った。翌日、連結混合物体積(LMV)の1/10の3M NaAc pH5.2、5μlグリコーゲン(20μg/μl)および2.7 LMVの100%エタノールを添加することによって、連結されたDNAを沈殿させた。−80℃で1時間インキュベーションした後、DNAを遠心分離し(13.000
*g、RT、5分間)、そして風乾したペレットを40μl ddH2Oに再懸濁し、そして2〜4μlアリコット中で、−20℃で再び凍結した。3.18.3.エレクトロコンピテント大腸菌TG1の調製。SOB培地(1%グルコースを含有)中の大腸菌TG1の一晩培養5mlを500mlの新鮮なSOBにトランスファーすることで、培養を接種してそして0.5〜1.0のOD[600nm]に到達するまで増殖させた。細胞を続いて氷上で少なくとも15分間冷却し、そして遠心分離によって採取した(2000
*g、4℃、15分間)。細胞ペレットを200mlの氷冷ddH2O(まず20mlを用い、再懸濁後、さらに180mlを添加した)に穏やかに再懸濁した。遠心分離/再懸濁周期を、正確に上述するように2回目に繰り返し、次いで、再懸濁された細胞を氷上に30分間維持し、そして再び遠心分離した(2000
*g、4℃、15分間)。10%グリセロール50ml中に細菌を再懸濁し、氷上でさらに30分間インキュベーションし、そして再び、遠心分離によって収集した(1500
*g、4℃、15分間)。生じたペレットを500〜1000μlの最終体積に再懸濁し、氷上で維持し、そしてエレクトロポレーションに直接用いた。
【0320】
ファージディスプレイ−大腸菌TG1のエレクトロポレーション
エレクトロコンピテント大腸菌TG1(StrataGen、米国ワシントン州カークランド)を新鮮に調製し、そして40μlの細胞懸濁物を、連結DNAの凍結アリコットと混合した。氷上で1分間インキュベーションした後、DNA細菌混合物を、エレクトロポレーションキュベット(BIO−RAD、ドイツ・ミュンヘン)に移し、そして直ちにエレクトロポレーションした(17kV/cm、200Ω、25μF、GenePulser(登録商標)XCell、BIO−RAD、ドイツ・ミュンヘン)。続いて、キュベットを1mlのLBでフラッシュすることによって、形質転換細胞をレスキューし、培養チューブにトランスファーし、そして振盪しながら37℃で1時間インキュベーションした後、LBamp寒天プレート上にプレーティングした。対照目的のため、10μl、1μlおよび0.1μlの形質転換試料を、LBamp寒天プレート上に別個にプレーティングし、同時に、コンピテント細胞と混合した、2μl ddH2Oまたは1μl pUC DNA(0.1ng/μl)いずれかを含有するエレクトロポレーション試料2.5μlをプレーティングした。
【0321】
ファージディスプレイ−ヘルパーファージの調製
最少プレート上に新鮮にストリークした細菌から出発した一晩培養由来の大腸菌TGを用いて、500ml 2xTY培地に接種した(OD[600nm]0.05〜0.07)。0.4〜0.5のOD[600nm]で、1ml VSC M13ヘルパーファージ(StrataGen、米国ワシントン州カークランド)を添加し、そして培養を振盪せずに37℃で30分間インキュベーションし、そしてさらに37℃で30分間、振盪しながらインキュベーションした。続いて、カナマイシンを30μg/mlの最終濃度まで添加し、そして培養を、振盪しながら30℃で一晩インキュベーションした。最後に、遠心分離(4000
*g、45分間、RT)によって細菌を分離し、そしてファージを含有する上清を、1mlアリコット中、−20℃で保存した。
【0322】
ファージディスプレイ−ファージレスキューおよび沈殿
LB寒天プレートから形質転換細菌を収集し、そして50ml 2xTY(2%グルコース、100μg/mlアンピシリン)を0.05〜0.07の出発OD[500nm]まで接種した。37℃で振盪インキュベーションした後、培養が0.4〜0.5のOD[600nm]に到達したら、1mlのVSC M13ヘルパーファージを添加し、そして培養を、37℃で、最初は振盪せず(30分間)、そして次いで振盪しながら(30分間)インキュベーションした。続いて、遠心分離(4000
*g、RT、15分間)によって細菌を採取し、100μg/mlアンピシリンおよび30μg/mlカナマイシンを含有する50ml新鮮2xTY中に再懸濁し、そして振盪しながら30℃で一晩インキュベーションした。翌日、細菌を遠心分離(4000
*g、RT、30分間)し、そして10mlの20%PEG6000を40mlの上清に添加し、穏やかに混合し、そして4℃で1時間回転させた。遠心分離(4000
*g、RT、30分間)後、沈殿したファージを1ml PBS中に溶解し、そして13.000
*gおよびRTで10分間、再び遠心分離した。増幅したファージを含有する細菌不含上清を選択のために直ちに用いた(または後の使用のために4℃で保存した)。
【0323】
ファージディスプレイ−イムノチューブ選択
イムノチューブを、各選択周期とともに減少する濃度でヒトTNFR1−FcまたはヒトTNFR2−Fcでコーティングした(周期1:1および0.1μg/ml、周期2:0.1および0.01μg/ml等;huTNFR2は、常に2μg/mlを用いてコーティングされた)。チューブを2%MPBSでブロッキングした。1または10μlの沈殿したファージを1mlの2%MPBSに添加し、そしてヒトTNFR2−Fcコーティングチューブ中でインキュベーションして、交差反応ファージを除去した。この負の選択は、もっぱら、最初の選択周期の前に行った。RTで1時間インキュベーションした後、上清をヒトTNFR1−Fcでコーティングしたイムノチューブに移し、そしてさらに1時間インキュベーションした。迅速に解離するファージを捕捉し、そして固定された受容体へのその結合を妨害するため、周期2から、可溶性ヒトTNFR1−Fcを最終濃度5μg/mlで添加した。続いて、上清を廃棄し、そしてチューブをPBST(0.1%Tween20)で10回、そしてPBSで10回洗浄した。7分間インキュベーションすると、1mlの100mM TEA(トリエチルアミン)でファージが溶出した。500μlの1M TrisHCl緩衝剤(pH7.5)を用いて、溶出したファージを直ちに中和し、そして8.5mlの初期対数期大腸菌TG1に添加した。形質導入のため、上述のようにインキュベーションを行った(37℃、静置、30分;37℃、振盪、30分)。遠心分離(4000
*g、RT、10分間)によって細菌を分離し、そしてLBampプレートにプレーティングした。
【0324】
ファージディスプレイ−受容体−Fc融合タンパク質のビオチン化
タンパク質試料を20倍モル過剰のスルホ−NHS−SS−ビオチン(Pierce、米国ロックフォード)と混合し、そしてRTで2時間インキュベーションして、ヒトTNFR1−FcおよびヒトTNFR2−Fcをビオチン化した。PBSに対して4℃で一晩透析することによって、残りの未結合スルホ−NHS−SS−ビオチンを試料から除去した。固定TNFに対する標準的結合ELISAにおいてTNFR1−FcおよびTNFR2−Fcのビオチン化成功を試験した。ポリHRP−Strepによって、結合した受容体−Fc融合タンパク質を検出した。上述のようにELISAを行った。
【0325】
ファージディスプレイ−磁気Dynabeads上での平衡選択
交差反応様式でヒトTNFR2または融合Fc部分に結合しているファージを除去するため、1μlまたは10μlの沈殿したファージを、0.1μMヒトTNFR2−Fcを含有する1mlの2%MPBSに添加して、そして回転させながら、RTで1時間インキュベーションした。続いて、50μlの磁気ストレプトアビジンコーティングDynabeadsを選択混合物に添加し、そしてさらに5分間回転させた。次いで、2ml反応チューブを磁気デバイス(DYNAL(登録商標)MPC(登録商標)−S、Life Technologies、米国カリフォルニア州カールスバッド)に入れることによってビーズを分離し、選択混合物を新規2ml反応チューブに移し、そしてヒトTNFR1−Fcを選択混合物に添加した(周期1:10nM/1nM、周期2:1nM/0.1nM、周期3:0.1nM/0.01nM)。RTでインキュベーションした後(回転しながら1時間)、10μl Dynabeadsを選択混合物に添加し、そしてヒトTNFR2−Fcとの負の選択周期に関して記載したようにインキュベーションし、そして分離した。上清を廃棄し、そして1mlの10mM DTT(ジチオスレイトール)をビーズに添加して、結合したファージを抗原から遊離させた。イムノチューブ選択に関して記載したように、形質導入を行った。
【0326】
ファージディスプレイ―ポリクローナルファージELISA
ポリクローナルファージELISAによって、ファージプールのすべての結合における変化を試験した。ELISA選択において実験法を記載し、ここでファージディスプレイ選択に供した抗原をコーティングに用いた。10μlの沈殿したファージを、90μlの2%MPBSと混合し、マイクロタイタープレートに適用し、そして抗M13−HRP抗体(27942101、GE Healthcare、英国チャルフォント・セント・ジャイルズ)を用いて、結合したファージを検出した。
【0327】
ファージディスプレイ―ファージディスプレイ選択のスクリーニング
1〜4のマイクロタイタープレートのウェルあたり、100μlの2xTY LBampに、最終選択周期の形質導入後、プレートからピックした単一クローン(100〜400コロニー)を接種し、そして振盪しながら37℃でインキュベーションした。濁りが見えるようになったら、25μlのVCS M13ヘルパーファージ含有LB(マイクロタイタープレートあたり1ml)を添加し、そして記載するように形質導入のためにインキュベーションした。続いて、240μg/mlカナマイシン(最終濃度30μg/ml)を含有する25μl LBをマイクロタイタープレートに添加し、そしてプレートを30℃で振盪しながら一晩インキュベーションした。翌日、遠心分離(500
*g、RT、5分間)によって細菌を分離し、そして上清を1:1で2%MPBSと混合し、そしてポリクローナルファージELISAにおいて記載されるようなELISAによって、1点測定または滴定のいずれかで分析した。
【0328】
ファージディスプレイ―ファージを含有する細菌培養上清のオフ速度スクリーニング
scFv所持ファージの解離速度定数を、QCM技術を用いたオフ速度スクリーニングによって決定した。記載するプロトコルと類似のファージレスキューを行ったが、5ml LB培養にスケールダウンした。100μlの一晩培養(または精製scFv調製物)を接種に用いて、そして培養が可視の濁りを示したら、VSC M13ヘルパーファージを添加した。上述のように、続く工程を行った。沈殿を伴わずに、ファージを含有する上清を、PBST(0.1%Tween20)中で1:2に希釈し、そして48Hzの中程度の密度でhuTNFR1−Fcを固定したセンサーチップに適用した。流動緩衝液もまた、緩衝効果を最小限にするため、LBと1:1で混合した。Attacheオフィスソフトウェア(Attana、スウェーデン・ストックホルム)を用いて、3つの測定値の平均値を分析した。
【0329】
ポリエチレングリコールへのFab13.7のカップリング
システイン修飾Fab13.7(Fab13.7’)をメトキシ−PEG40kDa2マレイミド(mPEG−Mal)にカップリングした。前日に、TCEP(Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィン、最終濃度5mM)を添加し、そして室温で2時間インキュベーションすることによって、タンパク質を還元した。次いで、D−Tube
TM透析装置ミニ(6〜8kDaのMWカットオフ)において、窒素飽和1xNellis緩衝液(10mM Na2HPO4/NaH2PO4緩衝液、0.2mM EDTA、30mM NaCl、pH6.7)に対して、磁気撹拌装置を用いて、4℃で一晩透析することによって、TCEPを除去した。還元Fab13.7’をmPEG−Malと、1:10(タンパク質:mPEG−Mal)のモル比で混合し、そして室温で1時間インキュベーションした。Fab13.7’の再酸化を回避するため、インキュベーションに窒素を上層した。最後に、L−システイン(最終濃度100μM)を室温で10分間添加することによって、未結合および反応性マレイミド基を反応停止した。
【0330】
参考文献
【0331】
【化1】