(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784832
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】歯科用椅子および歯科用椅子フットスイッチ
(51)【国際特許分類】
A61G 15/00 20060101AFI20201102BHJP
A61G 15/04 20060101ALI20201102BHJP
A61G 15/06 20060101ALI20201102BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
A61G15/00 Z
A61G15/04
A61G15/06
A61C19/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-514043(P2019-514043)
(86)(22)【出願日】2018年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2018031398
(87)【国際公開番号】WO2020039585
(87)【国際公開日】20200227
【審査請求日】2019年3月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108672
【氏名又は名称】タカラベルモント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】堀脇 賢
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽平
【審査官】
小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−022512(JP,A)
【文献】
実開昭58−009136(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0172790(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 15/00
A61C 19/00
A61G 15/04
A61G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に設置される基台部と、
この基台部に連結されて設置面に向けて倒れ、または、起きる脚部と、
この脚部に連結されて前記脚部が倒れることで下降し、または、前記脚部が起きることで上昇する椅子部と、を有する歯科用椅子の状態を変化させる歯科用椅子フットスイッチであって、
倒れた前記脚部の周囲において前記基台部の一部に形成されると共に、前記基台部のうち、前記脚部が倒れる側である後方の端部に配置され、
前記椅子部の幅方向に向けて長手の本体部と、
当該本体部の長手方向に並べて配置された複数の操作部と、を有し、
前記本体部が、
前記基台部に対して着脱されるカバー部と、
このカバー部に覆われ、前記操作部と連動する前記歯科用椅子の動作を選択するための選択手段と、を有し、
前記操作部の少なくとも一つがジョイスティック式である、
ことを特徴とする歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項2】
設置面に設置される基台部と、
この基台部に連結されて設置面に向けて倒れ、または、起きる脚部と、
この脚部に連結されて前記脚部が倒れることで下降し、または、前記脚部が起きることで上昇する椅子部と、を有する歯科用椅子の状態を変化させる歯科用椅子フットスイッチであって、
倒れた前記脚部の周囲において前記基台部の一部に固定され、
前記椅子部の幅方向に向けて長手の本体部と、
当該本体部の長手方向に並べて配置された複数の操作部と、を有し、
前記本体部が、
前記基台部に対して着脱されるカバー部と、
このカバー部に覆われ、前記操作部と連動する前記歯科用椅子の動作を選択するための選択手段と、を有し、
前記操作部の少なくとも一つがジョイスティック式である、
ことを特徴とする歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項3】
前記基台部のうち、前記脚部が倒れる側である後方の端部に配置された、
ことを特徴とする請求項2に記載された歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項4】
前記操作部が、後方に向けて突出した、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項5】
設置面に設置される基台部と、
この基台部に連結されて設置面に向けて倒れ、または、起きる脚部と、
この脚部に連結されて前記脚部が倒れることで下降し、または、前記脚部が起きることで上昇する椅子部と、を有する歯科用椅子の状態を変化させる歯科用椅子フットスイッチであって、
倒れた前記脚部の周囲において前記基台部の一部に形成され、
前記椅子部の幅方向に向けて長手の本体部と、
当該本体部の長手方向に並べて配置された複数の操作部と、を有し、
前記本体部が、
前記基台部に対して着脱されるカバー部と、
このカバー部に覆われ、前記操作部と連動する前記歯科用椅子の動作を選択するための選択手段と、を有する、
ことを特徴とする歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項6】
前記操作部の少なくとも一つがジョイスティック式である、
ことを特徴とする請求項5に記載された歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項7】
前記基台部のうち、前記脚部が倒れる側である後方の端部に配置された、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載された歯科用椅子フットスイッチ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載された歯科用椅子フットスイッチを有する、
ことを特徴とする歯科用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科診療施設の歯科用椅子、および、この歯科用椅子に備えられる歯科用椅子フットスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯科医院などの歯科診療施設に備えられた歯科用椅子は、例えば、昇降する動作や、背もたれを倒す動作、または、起こす動作などを実行するための操作部を有している。操作部は、例えば、歯科用椅子の周囲に配置されたドクターテーブルやパネルに備えられている他、歯科医師や歯科衛生士など(以下、歯科医師や歯科衛生士を「施術者」と記す。)が足で操作することができるフットスイッチなどがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された歯科用椅子は、座部、背もたれ、レッグレストおよびフットレストの各部材が連結されたものであって、座部の下部に昇降装置が連結され、この昇降装置が、設置面に設置された基台に連結されている。フットスイッチは、施術者が施術中に操作し易い位置として、背もたれの背面側、かつ、昇降装置の後方において、基台に備えられている。
【0004】
下記特許文献2に記載された歯科用椅子は、座部とレッグレストとが一体で形成され、被施術者が予め脚を伸ばした姿勢で着座するものであるため、特許文献1に記載された歯科用椅子(以下、「垂直式歯科用椅子」と記す。)と同様の昇降装置で昇降させることはできない。すなわち、特許文献2に記載された歯科用椅子(以下、「リンク式歯科用椅子」と記す。)は、予め座部から伸びたレッグレストと倒れた背もたれとの重量のバランスをとる都合上、さらに、倒れた背もたれと設置面との間に、施術者が脚を入れる空間を確保する都合上、リンク機構などを用いて昇降させる必要がある。リンク機構は、歯科用椅子の下部に連結された脚部に備えられ、脚部は、設置面に設置された基台に連結されている。フットスイッチは別途用意された有線式であり、設置面の任意の位置に置かれている。
【0005】
上記したとおり、いずれの歯科用椅子も昇降するが、椅子の構造や昇降するための機構が異なることから、フットスイッチの配置や種類が、歯科用椅子ごとに異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−66081号公報
【特許文献2】特開2002−320627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
垂直式歯科用椅子は、垂直に昇降するため、この昇降装置と、基台に備えられたフットスイッチとが干渉することはない。一方で、リンク式歯科用椅子は、下降する際、脚部が設置面に向けて倒れるため、フットスイッチの配置として、垂直式歯科用椅子にあるような場所が存在しない。すなわち、リンク式歯科用椅子において、仮に、背もたれの背面側であって、脚部の周囲にフットスイッチが配置されたとすれば、設置面に向けて倒れる脚部とフットスイッチとが干渉する。したがって、一般的に、リンク式歯科用椅子は、有線式または無線式のフットスイッチが別途用意され、フットスイッチは、脚部と干渉しない位置に配置される。
【0008】
垂直式歯科用椅子のフットスイッチは、基台に備えられているため、様々な種類のものが採用される。例えば、ジョイスティック式であれば、操作スティックが水平に配置されることで、操作スティックの傾倒方向と垂直式歯科用椅子の昇降方向とが一致するため、施術者は、操作に基づく垂直式歯科用椅子の動作を観念し易い。すなわち、操作スティックを上向きに倒せば、垂直式歯科用椅子が上昇し、操作スティックを下向きに倒せば、垂直式歯科用椅子が下降する。一方で、リンク式歯科用椅子のフットスイッチは、別途用意されて設置面の任意の位置に置かれるため、ジョイスティック式は採用するべきではない。すなわち、仮に、ジョイスティック式のフットスイッチが設置面に置かれた場合、操作スティックが垂直に配置されるため、操作による操作スティックの傾倒に伴ってフットスイッチ自体が設置面に対して不本意に移動する場合がある。また、操作スティックの傾倒方向とリンク式歯科用椅子の昇降方向とが一致しないため、施術者は、操作に基づくリンク式歯科用椅子の動作を観念し難い。
【0009】
本開示は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、リンク機構によって昇降する歯科用椅子において操作しやすい歯科用椅子フットスイッチ、および、この歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、設置面に設置される基台部と、この基台部に連結されて設置面に向けて倒れ、または、起きる脚部と、この脚部に連結されて前記脚部が倒れることで下降し、または、前記脚部が起きることで上昇する椅子部と、を有する歯科用椅子の状態を変化させる歯科用椅子フットスイッチであって、倒れた前記脚部の周囲において前記基台部の一部に形成された、ことを特徴とする。
【0011】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、前記基台部のうち、前記脚部が倒れる側である後方の端部に配置された、ことを特徴とする。
【0012】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、前記椅子部の幅方向に向けて長手の本体部と、当該本体部の長手方向に並べて配置された複数の操作部と、を有し、前記操作部の少なくとも一つがジョイスティック式である、ことを特徴とする。
【0013】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、前記本体部が、前記基台部に対して着脱されるカバー部と、このカバー部に覆われ、前記操作部と連動する前記歯科用椅子の状態を選択するための選択手段と、を有する、ことを特徴とする。
【0014】
本開示に係る歯科用椅子は、上記した歯科用椅子フットスイッチを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、倒れた脚部の周囲において基台部の一部に形成されている。すなわち、歯科用椅子フットスイッチは、設置面に向けて倒れた状態の脚部と干渉しない位置に配置されているため、昇降する歯科用椅子と干渉しない。また、歯科用椅子フットスイッチは、基台部の一部に形成され、操作の際、歯科用フットスイッチ自身が不本意に移動することがないため、施術者が操作し易い種類のものを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子を有する歯科診療装置の斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子の外観が示された後面図である。
【
図2B】
図2Bは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子の外観が示された側面図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子の断面が示された歯科用椅子が最下方に配置された状態の側面断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子の断面が示された歯科用椅子が最上方に配置された状態の側面断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子が最上方に配置され、カバー部が外された状態の外観が示された斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチが備えられた歯科用椅子が最上方に配置され、カバー部が外された状態の外観が示された後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、基台部のうち、脚部が倒れる側である後方の端部に配置されている。この構成により、歯科用椅子フットスイッチは、歯科用椅子の背もたれ部の背面側の近傍に配置され、この位置は、施術中における施術者の脚が配置される位置と概ね一致する。したがって、施術者が操作し易い。
【0018】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、椅子部の幅方向に向けて長手の本体部と、当該本体部の長手方向に並べて配置された複数の操作部とを有している。すなわち、複数の操作部が、歯科用椅子の昇降の妨げとならない位置であって、かつ、施術者にとって操作しやすい位置に配置される。また、操作部ごとに様々な機能を連動させることができる。
【0019】
また、操作部の少なくとも一つがジョイスティック式である。この構成により、操作スティックの傾倒方向と歯科用椅子の昇降方向などとが一致するため、施術者は、操作に基づく歯科用椅子の動作を観念し易い。したがって、施術者は、施術中に目視せずに歯科用椅子フットスイッチを操作することができる。
【0020】
本開示に係る歯科用椅子フットスイッチは、本体部が、基台部に対して着脱されるカバー部と、このカバー部に覆われ、操作部と連動する歯科用椅子の状態を選択するための選択手段とを有している。この構成により、施術者や作業者は、カバー部を外すことで、容易に選択手段を操作することができる。
【0021】
本開示に係る歯科用椅子は、上記した歯科用椅子フットスイッチと同じ効果を生じさせることができる。
【0022】
以下は、本開示の実施形態に係る歯科用椅子フットスイッチ、および、この歯科用椅子フットスイッチを有する歯科用椅子の説明である。
図1は、歯科用椅子10を有する歯科診療装置1の外観が示されている。
図2A、
図2B、は、歯科用椅子10の外観が示され、
図3A、
図3Bは、歯科用椅子10の側面断面が示されている。
図24、
図4B、は、歯科用椅子10における歯科用フットスイッチ27の一態様が示されている。以下では、
図1に示されているとおり、歯科用椅子10の正面が前方、背面が後方、歯科用椅子10の幅方向である側方のうちの一方側が左方、他方側が右方、歯科用椅子10が昇降する方向が上方または下方である。
【0023】
図1に示されているとおり、歯科診療装置1は、患者である被施術者が横たわる歯科用椅子10と、被施術者が口内に含んだ水を吐き出すためのスピットン2と、被施術者の口元を照らすデンタルライト3と、種々のインスツルメント(図示省略。)が保持されるインスツルメント保持装置4と、このインスツルメント保持装置4と同様にインスツルメントを保持し、デンタルライト3やインスツルメントなどを制御するパネルが備えられたドクターテーブル5とを有している。スピットン2、デンタルライト3、インスツルメント保持装置4およびドクターテーブル5は、本体装置6に支持されている。この本体装置6は、歯科用椅子10の隣に設置されている。
【0024】
スピットン2はボウルであり、本体装置6の上に設置されている。デンタルライト3は、本体装置6に取り付けられた第一可動アーム7の先端に接続されている。インスツルメント保持装置4は、本体装置6に取り付けられた第二可動アーム8の先端に接続されている。ドクターテーブル5は、本体装置6に取り付けられた第三可動アーム9の先端に接続されている。各可動アーム7,8,9は、複数の関節を有している。そのため、デンタルライト3、インスツルメント保持装置4およびドクターテーブル5は、各可動アーム7,8,9を介して、自在に移動することができる。なお、インスツルメントは、例えば、タービン、マイクロモーター、エアモーター、スケーラー、シリンジなどである。
【0025】
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bに示されているとおり、歯科用椅子10は、設置面に設置される基台部11と、この基台部11に連結された脚部14と、この脚部14に連結された椅子部15と、この椅子部15を昇降させる昇降機構22と、歯科用椅子10の状態を変化させる際に操作される歯科用フットスイッチ27とを有している。
【0026】
椅子部15は、前方に向けて伸びた下半身載置部16と、この下半身載置部16の後方に配置された背もたれ部19と、この背もたれ部19の上端に連結されたヘッドレスト20と、下半身載置部16の側方に配置されたひじ掛け部21とを有している。下半身載置部16は、被施術者の臀部および大腿が載置される後方側載置部17と、被施術者の下腿が載置される前方側載置部18とが一体で形成されている。背もたれ部19は、下半身載置部16に対して倒れ、または、起きる。ヘッドレスト20は、背もたれ部19に対して倒れ、起き、昇降する。
【0027】
したがって、歯科用椅子10の動作は、昇降、傾倒および起伏であり、これらの動作に基づいて、歯科用椅子10は、椅子部15が下降して最下方に配置された状態、椅子部15が上昇して最上方に配置された状態、背もたれ部19が起きた状態、背もたれ部19が倒れた状態、ヘッドレスト20が起きた状態、ヘッドレスト20が倒れた状態、ヘッドレスト20が下降して最下方に配置された状態、ヘッドレスト20が上昇して最上方に配置された状態、各状態における最下方から最上方までの間の任意の位置に各部が配置された状態があり、各状態の組み合わせによって、歯科用椅子10は種々の状態に変化する。なお、ヘッドレスト20が作動しない歯科用椅子であれば、ヘッドレスト20の動作に基づいた歯科用椅子の状態は無い。
【0028】
さらに、歯科用椅子10の状態は、例えば、デンタルライト3の照度、インスツルメントの制御、スピットン2における出水などによっても変化する。
【0029】
基台部11は、平板状の板状基台部12と、この板状基台部12の前方上部に取り付けられた基台本体部13とを有している。板状基台部12は、前後に長手のほぼ長方形であり、内部に通線部(図示省略。)を有している。基台本体部13は、例えば、歯科用椅子10の状態を変化させるための駆動部を駆動させる電源部(図示省略。)や制御部(図示省略。)などが内蔵されている。
【0030】
脚部14は、基台部11を支点として設置面に向けて倒れ、または、起きて設置面から離れる構成であるため、このことによって、歯科用椅子10が昇降する。詳説すれば、脚部14は、昇降機構22を有し、この昇降機構22は、平行リンクと、この平行リンクを作動させる駆動部26とによって実現されている。平行リンクは、長手の駆動リンク部23と、長手の従動リンク部24と、椅子部15の下部に連結された椅子側リンク部25とから構成されている。駆動リンク部23および従動リンク部24は、一端が基台部11に連結され、他端が椅子側リンク部25に連結されている。駆動部26は、例えば油圧式、空圧式のピストンシリンダーであり、一端が基台部11に連結され、他端が駆動リンク部23に連結されている。
【0031】
ピストンシリンダーが伸長することで、駆動リンク部23と共に従動リンク部24が起き上がり、同時に椅子側リンク部25(椅子部15)が設置面から離れる。したがって、椅子部15が上昇する。脚部14が起きることで、椅子部15が上昇するため、椅子部15は、弧状の軌道に沿って前進しながら上昇する。ピストンシリンダーが収縮すると、駆動リンク部23と共に従動リンク部24が倒れ、同時に椅子側リンク部25(椅子部15)が設置面に近接する。したがって、椅子部15が下降する。椅子部15の軌道は、椅子部15が上昇する際と同じである。
【0032】
歯科用フットスイッチ27は、基台部11の後方端に配置され、板状基台部12の一部として構成されている。詳説すれば、歯科用フットスイッチ27は、椅子部15が最下方に下降して、倒れた状態の脚部14の後方に配置されている。換言すれば、歯科用フットスイッチ27は、脚部14および椅子部15と干渉しない位置に配置されている。
【0033】
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、
図4A、
図4Bに示されているとおり、歯科用フットスイッチ27は、幅方向に向けて長手で、かつ、後方に張り出して湾曲した本体部28と、この本体部28の長手方向に並べて配置された複数の操作部30a,30b,30cとを有している。本体部28は、基台部11の板状基台部12に対して着脱されるカバー部29と、このカバー部29に覆われて操作部30と連動する歯科用椅子10の状態を選択するための選択手段31とを有している。カバー部29は、板状基台部12から上方に隆起した形状であり、操作部30a,30b,30cの数に応じた複数の孔が、後面に形成されている。操作部30a,30b,30cは、例えばジョイスティック式である。操作部30a,30b,30cは棒状であり本体部28から後方に向けて、水平よりもわずかに上向きに突出し、かつ、互いが離れる方向に僅かに放射状に向いている。操作部30a,30b,30cは、上下左右に倒れる。なお、操作部の数、間隔、角度は任意である。
【0034】
選択手段31は、操作部30a,30b,30cと、歯科用椅子10の昇降、背もたれ部19の動作およびヘッドレスト20の動作と、を関連付けるものである。選択手段31は、例えば、回路基板、ディップスイッチ、配線を接続するコネクターなどであり、結線の変更、ディップスイッチの選択、配線の接続によって、操作部30a,30b,30cごとに、歯科用椅子10のどの動作と連動するかが設定される。例えば、第一の操作部30aに歯科用椅子10の昇降を連動させ、第二の操作部30bに背もたれ部19の動作を連動させ、第三の操作部30cにヘッドレスト20の動作を連動させる。この他、例えば、予め制御部に記録された歯科用椅子10の高さ、および、背もたれ部19の角度に基づいた状態への動作に第一の操作部30aを連動させ、直前の状態に歯科用椅子10を戻す動作に第二の操作部30bを連動させる。さらに、例えば、デンタルライト3の照度の調整に第一の操作部30aを連動させ、インスツルメントの制御に第二の操作部30bを連動させ、スピットン2の出水に第三の操作部30cを連動させる。なお、配線は、板状基台部12の通線部に通され、基台本体部13の制御部につながっている。
【0035】
上記のとおり、歯科用フットスイッチ27および歯科用椅子10が構成されている。次に、歯科用フットスイッチ27および歯科用椅子10の効果を説明する。
【0036】
歯科用フットスイッチ27は、歯科用椅子10における基台部11の後方端であって、椅子部15が最下方に下降して、倒れた状態の脚部14の後方に配置され、板状基台部12の一部として構成されている(
図2A、
図2B、参照。)。すなわち、歯科用フットスイッチ27は、脚部14および椅子部15と干渉しない位置に配置されている。したがって、いわゆるリンク式歯科用椅子であっても、椅子部15と歯科用フットスイッチ27とが干渉しない。
【0037】
また、歯科用フットスイッチ27は、板状基台部12の一部として構成され、操作の際、歯科用フットスイッチ27自身が不本意に移動することがないため、施術者が操作し易い種類の歯科用フットスイッチ27を選択することができる。
【0038】
例えば、操作部30a,30b,30cがジョイスティック式であれば、操作部30a,30b,30cの傾倒方向と、歯科用椅子10の動作の方向とが一致するため、施術者は、操作に基づく歯科用椅子10の動作を観念し易い。例えば、第一の操作部30aを上向きに倒せば、歯科用椅子10が上昇し、第一の操作部30aを下向きに倒せば、歯科用椅子10が下降する。また、第二の操作部30bを上向きに倒せば、背もたれ部19が起き、第二の操作部30bを下向きに倒せば、背もたれ部19が倒れる。また、第三の操作部30cを上向きに倒せば、ヘッドレスト20が起き、または、上昇し、第三の操作部30cを下向きに倒せば、ヘッドレスト20が倒れ、または、下降する。したがって、施術者は、施術中に目視せずに歯科用椅子フットスイッチ27を操作することができる。なお、操作部30a,30b,30cを左右側方に倒すことで、歯科用椅子10を作動させてもよい。
【0039】
また、歯科用フットスイッチ27は、基台部11の後方端に配置されているため、歯科用椅子10の背もたれ部19の背面側の近傍に配置され、この位置は、施術中における施術者の脚が配置される位置と概ね一致する。したがって、施術者が操作し易い。
【0040】
歯科用椅子フットスイッチ27は、幅方向に向けて長手の本体部28と、この本体部28の長手方向に並べて配置された複数の操作部30a,30b,30cとを有している(
図2A、
図2B、参照。)。すなわち、複数の操作部30a,30b,30cが、歯科用椅子10の昇降の妨げとならない位置であって、かつ、施術者にとって操作しやすい位置に配置される。また、施術者の好みに応じて、操作部30a,30b,30cごとに、歯科用椅子10の様々な動作を連動させることができる。
【0041】
歯科用椅子フットスイッチ27は、本体部28が、基台部11の板状基台部12に対して着脱されるカバー部29と、このカバー部29に覆われて操作部30と連動する歯科用椅子10の動作を選択するための選択手段31とを有している(
図3A、
図3B、
図4A、
図4B参照。)。この構成により、施術者や作業者は、カバー部29を外すことで、容易に選択手段31を操作することができ、操作部30a,30b,30cごとに、歯科用椅子10のどの動作と連動するかを、簡単な作業で設定することができる。
【0042】
歯科用椅子10は、上記した歯科用椅子フットスイッチ27と同じ効果を生じさせることができる。
【0043】
本開示の他の実施形態として、歯科用フットスイッチが、既存の歯科用椅子に後から取り付ける構成であってもよい。この場合、歯科用フットスイッチは、脚部および椅子部と干渉しない位置に配置される。また、他の実施形態として、操作部が側方に向けられていてもよく、また、歯科用フットスイッチが、基台部の側方に配置されていてもよい。ただし、施術者が移動する際の妨げにならないことを条件とする。また、他の実施形態として、歯科用フットスイッチは押圧式であってもよい。また、他の実施形態として、操作部は、少なくとも一つがジョイスティック式であり、他が、例えば、下に向かって押下する踏み込み式、ボリュームスイッチ式、押し続けることで歯科用椅子を動作させる押圧式、押すごとに歯科用椅子の作動および停止が切り替わるON/OFF式などであってもよい。
【0044】
以上、本開示の実施形態を詳述したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。そして本開示は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 歯科診療装置
2 スピットン
3 デンタルライト
4 インスツルメント保持装置
5 ドクターテーブル
6 本体装置
7 第一可動アーム
8 第二可動アーム
9 第三可動アーム
10 歯科用椅子
11 基台部
12 板状基台部
13 基台本体部
14 脚部
15 椅子部
16 下半身載置部
17 後方側載置部
18 前方側載置部
19 背もたれ部
20 ヘッドレスト
21 ひじ掛け部
22 昇降機構
23 駆動リンク部
24 従動リンク部
25 椅子側リンク部
26 駆動部
27 歯科用椅子フットスイッチ
28 本体部
29 カバー部
30a,30b,30c 操作部
31 選択手段