特許第6784834号(P6784834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784834
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】整髪剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20201102BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20201102BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20201102BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   A61K8/25
   A61K8/29
   A61K8/81
   A61K8/86
   A61Q5/06
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-515140(P2019-515140)
(86)(22)【出願日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2018010101
(87)【国際公開番号】WO2018198563
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-88806(P2017-88806)
(32)【優先日】2017年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-88807(P2017-88807)
(32)【優先日】2017年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 範子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳和
(72)【発明者】
【氏名】森野 修
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−019728(JP,A)
【文献】 特開2016−216403(JP,A)
【文献】 特開2011−251930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、下記成分(D)、及び下記成分(E)を含有する整髪剤組成物であり、前記整髪剤組成物100質量%に対する、前記成分(A)の含有量が0.5〜5.0質量%、下記成分(B1)と下記成分(B2)の合計の含有量が3.0〜25.0質量%、前記成分(C)の含有量が0.6〜1.5質量%、前記成分(D)の含有量が0.05〜1.5質量%であり、前記成分(B1)と前記成分(B2)の合計の含有量に対する前記成分(B1)の含有量の質量割合[(B1)/{(B1)+(B2)}]が0.1〜0.9である、整髪剤組成物(但し、トリメチルグリシン及び/又はポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルを含むものを除く)
成分(A):シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体
成分(B):下記成分(B1)及び下記成分(B2)を含むポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(B1):オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(B2):オキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(C):(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー
成分(D):カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分(E):水
【請求項2】
前記成分(B)が下記成分(B3)を含む、請求項1に記載の整髪剤組成物。
成分(B3):オキシエチレンの平均付加モル数5以上45未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
【請求項3】
下記成分(F)を含み、前記整髪剤組成物100質量%に対する、前記成分(F)の含有量が0.1〜7.0質量%である、請求項1又は2に記載の整髪剤組成物。
成分(F):皮膜形成ポリマー
【請求項4】
ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールを含まないか、又は、前記整髪剤組成物100質量%に対する、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールの合計の含有量が5質量%未満である、請求項1〜のいずれか1項に記載の整髪剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を整える整髪剤に用いられる整髪剤組成物に関する。本願は、2017年4月27日に、日本に出願した特願2017−088806号及び特願2017−088807号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を整えるために用いられる整髪剤組成物の発揮し得る整髪特性には様々なものがあり、例えば、毛髪同士をまとめて毛束をつくる特性、毛髪をくせ付けて毛髪の流れを作り髪型を作る特性(アレンジ力)、毛髪を固める特性、毛髪を立ち上げる特性、髪型を長時間保持する特性、毛髪につや(艶)を付与する特性、毛髪同士の滑りを良くしてさらさら感を付与する特性等が挙げられる。整髪剤は、目的とするヘアスタイルや、対象とする髪質等に応じて、上記の特性のうちの一つ又は複数を発揮するように設計されている。また、整髪剤組成物の性状や剤型としても、液状、ワックス状、ジェル状、グリース状等の種々のものがあり、それぞれ、異なる使用性、使用感や整髪特性を有している。
【0003】
具体的な整髪剤組成物としては、例えば、毛髪セット成分としてロウを用いたワックス状の整髪剤組成物が知られている。このようなワックス状の整髪剤組成物は、毛髪の立ち上げやすさや毛束のくせ付けのしやすさ(アレンジ力)に優れる。その反面、塗布時にべたつく傾向があり、洗い落ち性に劣る。
【0004】
また、例えば、毛髪セット成分として皮膜形成ポリマーを用い、カルボキシビニルポリマー等のゲル化剤を配合したジェル状の整髪剤組成物が知られている(例えば、特許文献1等)。このようなジェル状の整髪剤組成物は、ある程度の粘度を有していることから、チューブ容器等から手にとって使用する際に垂れ落ちにくく、取扱い性に優れている。加えて、毛髪へ塗布する際ののびも良好であり、塗布性にも優れている。また、ジェル状の整髪剤組成物は、配合されている皮膜形成ポリマーの作用により、毛髪の表面に皮膜を形成するため、毛髪を固める特性や髪型を長時間保持する特性にも優れる。その反面、アレンジ力が低く毛髪の流れをつくることが困難であり、皮膜が形成されることにより、自然な仕上がりとならないという点で劣る。
【0005】
また、毛髪につやを付与する特性や、くせ付けのしやすさに優れる整髪剤組成物として、グリース状の整髪剤組成物(所謂、ヘアグリースやウォーターグリース)が知られている(例えば、特許文献2等)。グリース状の整髪剤組成物は、水と比較的多量の親水性ノニオン界面活性剤を含み、ジェル状の整髪剤組成物よりも固く、流動性のない又は流動性の極めて小さい性状を有している。このため、ジャー容器等に充填して、容器から指で適量をとる等して使用することができ取扱い性にも優れ、塗布時にはのびもよく塗布性にも優れており、すなわち操作性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−87448号公報
【特許文献2】特開2009−286750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のグリース状の整髪剤組成物により整髪された髪型は、毛髪が根元から頭部の形状に沿って押さえつけられたようなものとなっており、毛髪は、毛束を形成せず、面状となっていた。また、つや等の光沢感が強いものであった。このように、従来のグリース状の整髪剤組成物は、自然な仕上がりの髪型を求めるものではなかった。これに対して、近年、グリース状整髪剤組成物の性状、アレンジ力や操作性を有しながら、自然な仕上がりとなるように整髪可能な整髪剤組成物が求められるようになってきた。
【0008】
従って、本発明の目的は、整髪時の操作性に優れ、細かな毛束を形成することができ、毛束をくせ付ける特性(アレンジ力)や毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性に優れ、尚且つ、整髪後の光沢感が抑制される整髪剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体、成分(B):下記成分(B1)及び下記成分(B2)を含むポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(成分(B1):オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、成分(B2):オキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)、成分(C):(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを用いて得られるポリマー、成分(D):カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー、並びに成分(E):水を含有し、成分(A)の含有量、成分(B1)と成分(B2)の合計の含有量、成分(C)の含有量、成分(D)の含有量、及び成分(B1)と成分(B2)の合計の含有量に対する成分(B1)の含有量の質量割合がそれぞれ特定の範囲内である整髪剤組成物とすることにより、細かな毛束を形成することができ、アレンジ力、毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性に優れ、整髪後の光沢感が抑制され、且つ操作性に優れる整髪剤組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、下記成分(D)、及び下記成分(E)を含有する整髪剤組成物であり、上記整髪剤組成物100質量%に対する、上記成分(A)の含有量が0.5〜5.0質量%、下記成分(B1)と下記成分(B2)の合計の含有量が3.0〜25.0質量%、上記成分(C)の含有量が0.1〜1.5質量%、上記成分(D)の含有量が0.05〜1.5質量%であり、上記成分(B1)と上記成分(B2)の合計の含有量に対する上記成分(B1)の含有量の質量割合[(B1)/{(B1)+(B2)}]が0.1〜0.9である、整髪剤組成物を提供する。
成分(A):シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体
成分(B):下記成分(B1)及び下記成分(B2)を含むポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(B1):オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(B2):オキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
成分(C):(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを用いて得られるポリマー
成分(D):カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分(E):水
【0011】
上記成分(B)は、下記成分(B3)を含むことが好ましい。
成分(B3):オキシエチレンの平均付加モル数5以上45未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
【0012】
上記成分(C)は、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマーであることが好ましい。
【0013】
本発明の整髪剤組成物は、下記成分(F)を含み、上記整髪剤組成物100質量%に対する、上記成分(F)の含有量が0.1〜7.0質量%であってもよい。
成分(F):皮膜形成ポリマー
【0014】
本発明の整髪剤組成物は、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールを含まないか、又は、整髪剤組成物100質量%に対する、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びプロピレングリコールの合計の含有量が5質量%未満であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の整髪剤組成物は、細かな毛束を形成することができ、毛束の向きを自在に曲げてくせ付ける特性(アレンジ力)や毛束を根元から立ち上げる特性に優れる。このため、本発明の整髪剤組成物によれば、従来のグリース状整髪剤組成物では不可能であった、毛束を根元から立ち上げつつ充分にくせ付けされた髪型を形成することができる。且つ整髪後の光沢感が抑制される。このため、本発明の整髪剤組成物によれば、充分にくせ付けされていながら従来のグリース状の整髪剤組成物と比較してより自然な仕上がりとなる髪型を形成することができる。また、整髪後は、髪型を長時間保持する特性に優れる。さらに、操作性に優れ、ジャー容器等に充填して、垂れ落ちずに容器から指で適量をとる等して使用することができ取扱い性に優れ、また毛髪へ塗布する際ののびも良好であり塗布性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の整髪剤組成物は、シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを用いて得られるポリマー;カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマー;並びに水を少なくとも含む。また、上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びオキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を少なくとも含む。
【0017】
なお、本明細書において、上記シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体を「成分(A)」と称する場合がある。また、上記オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を「成分(B1)」、上記オキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を「成分(B2)」とそれぞれ称する場合があり、上記成分(B1)及び上記成分(B2)を含むポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を「成分(B)」と称する場合がある。また、上記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを用いて得られるポリマーを、「成分(C)」と称する場合がある。また、上記カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを「成分(D)」と称する場合がある。また、上記水を「成分(E)」と称する場合がある。
【0018】
すなわち、本発明の整髪剤組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び成分(E)を少なくとも含有する。本発明の整髪剤組成物は、上記成分(A)〜(E)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の整髪剤組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び、成分(A)〜(E)以外の成分等の各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0019】
[成分(A)]
上記成分(A)は、シリカ、タルク、酸化チタン、及びマイカからなる群より選択される1以上の粉体である。成分(A)を用いることにより、整髪後の光沢感を抑制し、さらに、毛髪同士が過度に接着することを抑制し、毛髪同士を適度にばらけさせることにより、細かな毛束を形成することを可能としている。加えて、毛髪のべたつきを抑制し、洗い落ち性を向上させる。上記成分(A)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0020】
上記シリカとしては、公知乃至慣用のシリカ(無水ケイ酸)を用いることができる。上記シリカは、疎水化処理されていない無水ケイ酸(親水性のシリカ)であってもよいし、疎水化無水ケイ酸であってもよい。また、上記シリカは、アミノ酸、エステル、又はレシチン等で表面処理されたシリカであってもよい。また、上記シリカは、所謂、易崩壊性シリカ粒子であってもよい。上記シリカは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0021】
上記疎水化無水ケイ酸は、無水ケイ酸(例えば、未処理の無水ケイ酸)が疎水化処理された物質である。疎水化処理に用いられる処理剤としては、有機シリル化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。上記有機シリル化合物としては、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、長鎖アルキルトリクロロシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、ヘキシルトリアルコキシシラン、長鎖アルキルトリアルコキシシラン、メタクリルシラン、フルオロアルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラン等が挙げられる。上記シリコーン化合物としては、ジメチルポリシロキサン(シリコーンオイル)、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。上記疎水化処理の方法として、公知の方法を採用可能である。上記疎水化処理の方法としては、液相法、気相法、オートクレーブ法等が挙げられる。
【0022】
上記疎水化無水ケイ酸の好ましい例としては、ジメチルシロキシ化無水ケイ酸、トリメチルシロキシ化無水ケイ酸、オクチルシロキシ化無水ケイ酸、シリコーンオイル処理無水ケイ酸、メタクリルシロキシ化無水ケイ酸等が挙げられる。
【0023】
上記易崩壊性シリカ粒子は、複数のシリカ一次粒子が集合して形成された粒子である。上記シリカ一次粒子としては、特に限定されないが、例えば、球状シリカ粒子、鱗片状シリカ粒子、不定形シリカ粒子等が挙げられる。上記シリカ一次粒子の平均粒径は、特に限定されない。
【0024】
また、上記易崩壊性シリカ粒子は、シリカ以外の成分を内包していてもよい。上記シリカ以外の成分(以下、「内包成分」と称する場合がある)としては、特に限定されないが、例えば、界面活性剤、多価アルコール、高級アルコール、糖アルコール、シリコーン油、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、植物抽出エキス、染料、顔料、香料、保湿剤、ビタミン類、アミノ酸類、清涼剤等が挙げられる。これらの成分の中でも、アミノ酸類、シリコーン油、ビタミン類が好ましい。上記アミノ酸類としては、特に限定されないが、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa(例えば、旭化成株式会社製、商品名「ペリセア」)、トリメチルグリシン、グルタミン酸等が挙げられる。上記易崩壊性シリカ粒子が上記内包成分を内包することにより、整髪時に上記易崩壊性シリカ粒子が崩壊すると内包成分が放出され、内包成分の種類に応じた効果が発揮される。例えば、上記易崩壊性シリカ粒子がアミノ酸類を内包することにより、毛髪のダメージケア機能が発揮される。上記易崩壊性シリカ粒子の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0025】
上記シリカの吸油量は、100mL/100g以上が好ましく、より好ましくは150mL/100g以上、さらに好ましくは200mL/100g以上である。また、上記シリカの吸油量は、1000mL/100g以下が好ましく、より好ましくは800mL/100g以下、さらに好ましくは700mL/100g以下である。なお、本明細書において、吸油量は、JIS K5101に記載の方法に準拠して測定される。
【0026】
上記シリカの平均粒径(平均一次粒径)は、0.1nm以上が好ましく、より好ましくは5nm以上である。また、上記シリカの平均粒径は、10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下である。本明細書において、成分(A)の平均粒径は、体積平均粒径であり、レーザー回折法による粒度分布測定装置を用いて測定可能である。上記粒度分布測定装置としては、株式会社堀場製作所製「LA−920」等が挙げられる。
【0027】
上記シリカは市販品を用いることもできる。無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「SILICA PEARL P−4M」、商品名「SILICA PEARL 20CG」(以上、日揮触媒化成株式会社製)、商品名「SILICA MICRO BEAD P−1500」(触媒化成工業株式会社製)、商品名「サイリシア 320」、商品名「サイリシア 310P」、商品名「サイリシア 250」、商品名「サイリシア 250N」、商品名「サイリシア 350」、商品名「サイリシア 370」、商品名「サイリシア 380」、商品名「サイリシア 420」、商品名「サイリシア 430」、商品名「サイリシア 440」、商品名「サイリシア 450」、商品名「サイリシア
470」(以上、富士シリシア化学株式会社製)、商品名「AEROSIL 50」、商品名「AEROSIL 90G」、商品名「AEROSIL 130」、商品名「AEROSIL 150」、商品名「AEROSIL 200」、商品名「AEROSIL 300」、商品名「AEROSIL 380」、商品名「AEROSIL 200V」、商品名「AEROSIL OX50」(以上、日本アエロジル株式会社製)、商品名「サンスフェア H−31」、商品名「サンスフェア H−51」、商品名「サンスフェア H−121」、商品名「サンスフェア H−201」、商品名「サンスフェア H−32」、商品名「サンスフェア H−52」、商品名「サンスフェア H−122」、商品名「サンスフェア H−33」、商品名「サンスフェア H−53」(以上、AGCエスアイテック株式会社製)等が挙げられる。ジメチルシロキシ化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「AEROSIL R972」、商品名「AEROSIL R974」、商品名「AEROSIL R9200」(以上、日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。トリメチルシロキシ化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「AEROSIL RX200」、商品名「AEROSIL R8200」、商品名「AEROSIL RX300」、商品名「AEROSIL R812S」(以上、日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。オクチルシロキシ化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「AEROSIL R805」(日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。シリコーンオイル処理無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「AEROSIL R202」、商品名「AEROSIL RY200」、商品名「AEROSIL RY200S」、商品名「AEROSIL RY300」(以上、日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。メタクリルシロキシ化無水ケイ酸の市販品としては、例えば、商品名「AEROSIL R711」(日本アエロジル株式会社製)等が挙げられる。上記易崩壊性シリカの市販品としては、例えば、商品名「シリカビーズ SB−705」(三好化成株式会社製)、商品名「ゴッドボール SF−16C」、商品名「ゴッドボール AF−6C」、商品名「ゴッドボール AF−16C」(鈴木油脂工業株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
上記タルクは、INCI名「TALK」で表される。上記タルクの吸油量は、特に限定されないが、18〜50mL/100gが好ましい。また、上記タルクの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜25μmが好ましい。上記タルクは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上記タルクの市販品としては、例えば、商品名「クラウンタルクPP」(松村産業株式会社製)等が挙げられる。
【0029】
上記酸化チタンは、INCI名「TITANIUM DIOXIDE」で表される。上記酸化チタンは、特に限定されず、例えば、微粒子酸化チタンであってもよく、顔料チタンであってもよい。上記酸化チタンは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上記酸化チタンの市販品としては、例えば、商品名「TTO−55(A)」、商品名「CR−50」(以上、石原産業株式会社製)等が挙げられる。
【0030】
上記マイカは、INCI名「MICA」で表される。上記マイカの吸油量は、特に限定されないが、50〜150mL/100gが好ましい。また、上記マイカの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜50μmが好ましい。上記マイカは、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。上記マイカの市販品としては、例えば、商品名「PDM−8W」(トピー工業株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の整髪剤組成物中の成分(A)の含有量は、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、0.5〜5.0質量%であり、好ましくは0.8〜4.0質量%である。上記含有量が上記範囲内であることにより、成分(A)を用いることによる効果が充分に得られ、整髪後の光沢感を抑制し、且つ細かな毛束を形成することを可能としている。上記成分(A)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(A)の合計の含有量である。
【0032】
上記成分(A)の中でも、手触りがより一層良好となり、白浮き(粉体が毛髪上で白く見える現状)がより一層抑制される観点から、シリカが好ましい。本発明の整髪剤組成物中のシリカの含有量は、特に限定されないが、0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.8〜4.0質量%である。
【0033】
[成分(B)]
成分(B)は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、成分(B1)(オキシエチレンの平均付加モル数45〜65のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)及び成分(B2)(オキシエチレンの平均付加モル数75〜125のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)を含む。本発明の整髪剤組成物は、このような成分(B)を含むことにより、充分なアレンジ力や毛髪を根元から立ち上げる特性を有し、細かな毛束が形成可能であり、且つ、髪型を長時間保持する特性を有する。具体的には、成分(B1)の配合により整髪剤組成物にある程度のかたさと粘着性を付与し、毛髪同士をまとめて毛束を形成しやすくし、さらにアレンジ力や毛髪を根元から立ち上げる特性を向上させる。また、成分(B2)の配合により整髪剤組成物にかたさを付与し、整髪後の髪型を長時間保持する特性を向上させる。さらに、成分(B)と成分(C)との併用により、疎水基相互作用により凝集力が高くなるためと考えられるが、整髪剤組成物を容器から掻き取った後に、経時で容器内の整髪剤組成物表面が自然に平滑となり掻き取り痕が修復されるため、審美性に優れる。
【0034】
成分(B)は、成分(B1)及び成分(B2)以外に、オキシエチレンの平均付加モル数5以上45未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むことが好ましい。なお、本明細書において、上記オキシエチレンの平均付加モル数5以上45未満のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を「成分(B3)」と称する場合がある。本発明の整髪剤組成物が成分(B)として成分(B1)及び成分(B2)に加えて成分(B3)を含むと、くせ付けのしやすさ及び細かな毛束の形成性により優れる。なお、上記成分(B1)〜成分(B3)は、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0035】
上記成分(B1)におけるオキシエチレンの平均付加モル数は、整髪剤組成物に適度なかたさと粘着性を付与する観点から、45〜65であり、好ましくは50〜60である。また、上記成分(B2)におけるオキシエチレンの平均付加モル数は、整髪剤組成物にかたさを付与する観点から、75〜125であり、好ましくは80〜120である。また、上記成分(B3)におけるオキシエチレンの平均付加モル数は、5以上45未満であり、好ましくは10〜40である。
【0036】
成分(B1)の市販品としては、例えば、商品名「ブラウノン RCW−50」、商品名「ブラウノン RCW−60」(以上、青木油脂工業株式会社製)、商品名「EMALEX HC−50」、商品名「EMALEX HC−60」、商品名「EMALEX RWIS−150」、商品名「EMALEX RWIS−350」、商品名「EMALEX
RWIS−360」(以上、日本エマルジョン株式会社製)等が挙げられる。
【0037】
成分(B2)の市販品としては、例えば、商品名「ブラウノン RCW−80」、商品名「ブラウノン RCW−100」、商品名「ブラウノン CW−100」(以上、青木油脂工業株式会社製)、商品名「EMALEX HC−80」、商品名「EMALEX HC−100」(以上、日本エマルジョン株式会社製)等が挙げられる。
【0038】
成分(B3)の市販品としては、例えば、商品名「ブラウノン RCW−20」、商品名「ブラウノン RCW−40」、商品名「ブラウノン CW−10」、商品名「ブラウノン CW−25」、商品名「ブラウノン CW−40」(以上、青木油脂工業株式会社製)、商品名「EMALEX HC−5」、商品名「EMALEX HC−7」、商品名「EMALEX HC−10」、商品名「EMALEX HC−20」、商品名「EMALEX HC−30」、商品名「EMALEX HC−40」、商品名「EMALEX RWIS−105」、商品名「EMALEX RWIS−105EX」、商品名「EMALEX RWIS−110」、商品名「EMALEX RWIS−110EX」、商品名「EMALEX RWIS−115」、商品名「EMALEX RWIS−115EX」、商品名「EMALEX RWIS−120」、商品名「EMALEX RWIS−130」、商品名「EMALEX RWIS−140」、商品名「EMALEX RWIS−305」、商品名「EMALEX RWIS−310」、商品名「EMALEX RWIS−315」、商品名「EMALEX RWIS−315EX」、商品名「EMALEX
RWIS−320」、商品名「EMALEX RWIS−320EX」、商品名「EMALEX RWIS−330」、商品名「EMALEX RWIS−340」(以上、日本エマルジョン株式会社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明の整髪剤組成物において、上記成分(B1)と上記成分(B2)の合計の含有量に対する上記成分(B1)の含有量の質量割合[(B1)/{(B1)+(B2)}]は、0.1〜0.9であり、好ましくは0.2〜0.8である。上記質量割合が上記範囲内であることにより、くせ付けのしやすさ(アレンジ力)、毛束を根元から立ち上げる特性、細かな毛束の形成性、及び髪型を長時間保持する特性の全てに優れる。髪型を長時間保持する特性をより一層向上させる観点からは、[(B1)/{(B1)+(B2)}]は、より好ましくは0.25〜0.5である。なお、本明細書において、上記成分(B1)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(B1)の合計の含有量であり、上記成分(B2)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(B2)の合計の含有量である。
【0040】
成分(B)中の成分(B1)と成分(B2)の合計の含有量は、特に限定されないが、成分(B)100質量%に対して、50.0質量%以上(例えば50.0〜100質量%)が好ましく、より好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは80.0質量%以上である。上記含有量が50.0質量%以上であると、成分(B1)及び成分(B2)を用いることによる効果が充分に得られ、特に、毛束を根元から立ち上げる特性、細かな毛束の形成性、及び髪型を長時間保持する特性が向上する。
【0041】
本発明の整髪剤組成物中の成分(B1)及び成分(B2)の合計の含有量は、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、3.0〜25.0質量%であり、好ましくは5.0〜20.0質量%、より好ましくは6.0〜15.0質量%である。上記含有量が上記範囲内であることにより、くせ付けのしやすさ、毛束を根元から立ち上げる特性、細かな毛束の形成性、及び髪型を長時間保持する特性の全てに優れる。
【0042】
本発明の整髪剤組成物中の成分(B3)の含有量は、特に限定されないが、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.8〜5.0質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、毛髪の艶や重さを抑えながら、アレンジ力をより一層向上させることができる。また、整髪剤組成物がかたくなり過ぎることを抑え、操作性をより一層向上させることができる。
【0043】
本発明の整髪剤組成物中の成分(B)の含有量は、特に限定されないが、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、3.0〜30.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0〜25.0質量%、より好ましくは6.0〜20.0質量%である。上記含有量が上記範囲内であると、くせ付けのしやすさ、毛束を根元から立ち上げる特性、細かな毛束の形成性、及び髪型を長時間保持する特性の全てにより優れる。上記成分(B)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(B)の合計の含有量である。
【0044】
[成分(C)]
上記成分(C)は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを、必須のモノマー成分として用いて得られるポリマーである。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味し、すなわち、「アクリル」及び「メタクリル」のうちの両方又はいずれか一方を意味する。成分(C)は整髪剤組成物を増粘させる効果を有する。さらに、成分(B)と成分(C)とを併用することにより、整髪剤組成物の弾性が高まり、せん断下での粘度低下が抑えられるため、整髪剤組成物を容器から掻き取る際などに、掻き取りやすく(指どれがよく)、整髪剤組成物を容器から指で適量とって使用することが容易となり取扱い性に優れ、整髪剤組成物の操作性に優れる。また、整髪剤組成物を容器から取り出した後経時で容器内の整髪剤組成物表面が自然に平滑となり、審美性に優れる。加えて、成分(C)の使用により、整髪剤組成物の髪型を長時間保持する特性がより一層向上する。成分(C)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0045】
成分(C)のポリマーを得るために用いられるモノマー成分は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれた少なくとも1のモノマー成分[モノマー成分(c1)]と、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル[モノマー成分(c2)]とを少なくとも含む。さらに、その他のモノマー成分を含んでいてもよい。すなわち、成分(C)は、モノマー成分(c1)に由来する構成単位とモノマー成分(c2)に由来する構成単位とを少なくとも含むポリマーである。モノマー成分(c1)及びモノマー成分(c2)としては、それぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0046】
成分(C)としては、特に限定されないが、INCI名(International
Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.72)で「ACRYLATES/STEARETH−20 METHACRYLATE COPOLYMER((アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー)」と表記される化合物;INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.73)で「ACRYLATES/STEARETH−20 METHACRYLATE CROSSPOLYMER((アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマー)」と表記される化合物;INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.62)で「ACRYLATES/BEHENETH−25 METHACRYLATE COPOLYMER((アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー)」と表記される化合物等が好ましい。
【0047】
中でも、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマーが好ましい。成分(C)として(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマーを用いると、整髪剤組成物の曳糸性が小さくなり、操作性がより向上する。(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマーの市販品としては、例えば、商品名「アキュリン28」(ダウケミカル社製)が挙げられる。
【0048】
成分(C)は、特に限定されないが、塩基性物質で中和されているか、又は塩基性物質で中和して用いられることが好ましい。上記塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミンやモノエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、アルギニン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。また、上記塩基性物質の添加量は、充分に中和された成分(C)となる量であるか、又は成分(C)を中和するのに充分な量であり、成分(C)及び上記塩基性物質の種類や成分(C)の使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0049】
本発明の整髪剤組成物中の成分(C)の含有量は、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、0.1〜1.5質量%であり、好ましくは0.3〜1.2質量%である。上記含有量が上記範囲内であることにより髪型を長時間保持する特性及び操作性に優れる。さらに洗い落ち性が向上する。上記成分(C)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(C)の合計の含有量である。
【0050】
[成分(D)]
上記成分(D)は、カルボキシビニルポリマー及び/又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーであり、すなわち、カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーのうちの、両方又はいずれか一方である。成分(D)は、主として、系を増粘させる効果を有する。成分(D)は整髪剤組成物を増粘させる効果を有する。さらに、成分(D)を成分(C)と併用することにより、整髪剤組成物の弾性が過度に高くなることによる容器からの掻き取り性の悪化が抑制され、整髪剤組成物を容器から指で適量とって使用することが容易となり、取扱い性が向上し、整髪剤組成物の操作性が向上する。また、成分(C)と成分(D)とを併用することにより、塗布時のべたつきを抑え、洗い流し性を良好に保ったまま、十分な増粘が可能となる。加えて、成分(D)を用いて増粘することにより、整髪剤組成物の塗布時ののびが良好となり、塗布性が向上するため好ましい。成分(D)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0051】
上記カルボキシビニルポリマーとは主としてアクリル酸の重合体であり、上記アルキル変性カルボキシビニルポリマーとは主としてアクリル酸とメタクリル酸アルキル(例えば、総炭素数が10〜30(C10〜C30))の共重合体である。上記カルボキシビニルポリマーとしては、特に限定されないが、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.582〜583)で「CARBOMER(カルボマー)」と表記される化合物が挙げられる。上記アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、特に限定されないが、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.63〜64)で「ACRYLATES/C10−30 ALKYL ACRYLATE CROSSPOLYMER((アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー)」と表記される化合物が挙げられる。
【0052】
上記カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、商品名「カーボポール934」、商品名「カーボポール940」、商品名「カーボポール941」、商品名「カーボポール980」、商品名「カーボポール981」、商品名「カーボポール1342」、商品名「カーボポール2984」、商品名「カーボポールUltrez 10」、商品名「カーボポールETD 2050」(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、商品名「AQUPEC HV−501」、商品名「AQUPEC HV−504」、商品名「AQUPEC HV−505」、商品名「ハイビスワコー104」、商品名「ハイビスワコー105」(以上、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。上記アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、商品名「PEMULEN TR−1」、商品名「PEMULEN TR−2」、商品名「カーボポールETD 2020」、商品名「カーボポールULTREZ 20」、商品名「カーボポールULTREZ 21」(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
成分(D)は、特に限定されないが、塩基性物質で中和されているか、又は塩基性物質で中和して用いられることが好ましい。上記塩基性物質としては、例えば、トリエタノールアミンやモノエタノールアミン等のアルカノールアミン類、アンモニア、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、アルギニン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。また、上記塩基性物質の添加量は、充分に中和された成分(D)となる量であるか、又は成分(D)を中和するのに充分な量であり、成分(D)及び上記塩基性物質の種類や成分(D)の使用量に応じて適宜配合すればよい。
【0054】
本発明の整髪剤組成物中の成分(D)の含有量は、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、0.05〜1.5質量%であり、好ましくは0.2〜0.8質量%である。上記含有量が上記範囲内であることにより、整髪剤組成物の粘弾性が適切な範囲に調節され、操作性が向上する。上記成分(D)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(D)の合計の含有量である。
【0055】
[成分(E)]
成分(E)は水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。成分(E)は、本発明の整髪剤組成物を、グリース状等の水性の整髪剤組成物として、油性感がなくさっぱりした感触とし、のびのよさを向上させ塗布性を向上させる効果を有する。本発明の整髪剤組成物中の成分(E)の含有量は、特に限定されないが、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、40.0〜95.0質量%が好ましく、より好ましくは50.0〜85.0質量%である。
【0056】
[成分(F)]
本発明の整髪剤用組成物は、さらに、皮膜形成ポリマー(「成分(F)」と称する場合がある)を含有していてもよい。成分(F)は、例えば、頭髪に塗布した後に、頭髪に皮膜を形成することができるポリマーである。成分(F)を含有する場合、毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性により優れるため好ましい。成分(F)としては、特に限定されないが、例えば、アニオン性皮膜形成ポリマー、カチオン性皮膜形成ポリマー、両性皮膜形成ポリマー、ノニオン性皮膜形成ポリマー等が挙げられる。なお、本明細書において、成分(F)には、成分(C)に相当するポリマー及び成分(D)に相当するポリマーは含まれないものとする。成分(F)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
上記アニオン性皮膜形成ポリマーとしては、例えば、アクリル樹脂アルカノールアミン、メチルビニルエーテル/マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/ネオデカン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/マレイン酸モノブチルエステル/イソボルニルアクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/アルキルアクリルアミド共重合体、ポリビニルピロリドン/アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、(スチレン/アクリル酸アルキル)共重合体、(スチレン/アクリル酸アミド)共重合体、アクリル酸アルキルエステル/メタクリル酸アルキルエステル/ジアセトンアクリルアミド/メタクリル酸共重合体、ウレタン−アクリル系共重合体、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0058】
上記カチオン性皮膜形成ポリマーとしては、例えば、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、塩化О−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、塩化メチルビニルイミダゾリウム・ビニルピロリドン共重合体、(ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド/ラウリルジメチルアミノプロピルメタクリルアミド)共重合体等が挙げられる。
【0059】
上記両性皮膜形成ポリマーとしては、例えば、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体[(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー]、アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル/アクリル酸オクチルアミド共重合体、ジアルキルアミノエチルメタクリレート/メタクリル酸アルキルエステル共重合体のモノクロル酢酸両性化物、(イソブチレン/ジエチルアミノプロピルマレイミド/マレイン酸)共重合体等が挙げられる。
【0060】
上記ノニオン性皮膜形成ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体[(ビニルピロリドン/VA)コポリマー]、ビニルピロリドン/メタクリルアミド/ビニルイミダゾール共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸エチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルカプロラクタム、ジメチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル共重合体[(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー]等が挙げられる。
【0061】
上記の中でも、毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性により優れる観点から、ノニオン性皮膜形成ポリマーが好ましい。中でも、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーがより好ましい。上記(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーは、アクリル酸ヒドロキシエチルに由来する構成単位とアクリル酸メトキシエチルに由来する構成単位とが必須の構成単位である共重合体である。上記(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーは、例えば、INCI名:HYDROXYETHYL ACRYLATE/METHOXYETHYL ACRYLATE COPOLYMERで表示される化合物である。上記(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマーの市販品としては、商品名「プラスサイズ L−2200」(互応化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
本発明の整髪剤組成物が成分(F)を含有する場合、本発明の整髪剤組成物100質量%中の成分(F)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜7.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5.0質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性により優れる。また、7.0質量%以下であると、操作性や再整髪性が向上する。上記成分(F)の含有量は、本発明の整髪剤組成物中の全ての成分(F)の合計の含有量である。
【0063】
[その他の成分]
本発明の整髪剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、成分(A)〜(F)以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、成分(B)以外の界面活性剤(成分(B)以外のノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤);エタノール等の低級アルコール;多価アルコール、高級アルコール、シリコーン油、エステル油、ロウ、植物油、炭化水素ワックス、炭化水素油、油脂、高級脂肪酸等の油性成分;成分(C)及び成分(D)以外の増粘剤(ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム等);香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;金属イオン封鎖剤;成分(A)以外の粉体;色素;顔料;染料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;pH調整剤;防腐剤;溶剤;酸;アルカリ等が挙げられる。
【0064】
本発明の整髪剤組成物は、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールを実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、本発明の整髪剤組成物は、ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールを含まないか、又は、本発明の整髪剤組成物中のジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールの合計の含有量が、本発明の整髪剤組成物100質量%に対して、5.0質量%未満であることが好ましい。本発明の整髪剤組成物中のジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールの合計の含有量は、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。ジグリセリン、ポリグリセリン、及びジプロピレングリコールを実質的に含まない場合、整髪後の光沢感及びべたつきがより一層抑制される。
【0065】
本発明の整髪剤組成物は、手に取って毛髪に塗布する場合に手からの垂れ落ちが生じにくく取扱い性に優れる観点から、粘度(25℃)が5000mPa・s以上であることが好ましい。上記「粘度(25℃)」は、例えば、ブルックフィールド型回転粘度計を用いて25℃で測定することができる。
【0066】
また、本発明の整髪剤組成物の稠度(25℃)は、容器から指ですくい取る場合に容易にすくい取れ取扱い性に優れる観点から、50gf以下が好ましく、より好ましくは30gf以下である。上記「稠度(25℃)」は、例えば、17φ平型アダプターを備えた稠度計を用いて、25℃、スピード60mm/分、及びストローク20mmの条件で測定することができる。上記稠度計としては、株式会社サン科学製の「RHEO METER」等が挙げられる。
【0067】
本発明の整髪剤組成物の性状としては、手に取って毛髪に塗布する場合に手からの垂れ落ちが生じにくく取扱い性に優れる観点から、ジェル状、グリース状が好ましく、ジャー容器等に充填して、容器から指で適量をとる等して使用することができる観点から、グリース状が特に好ましい。すなわち、本発明の整髪剤組成物は、ジェル状整髪剤組成物、グリース状整髪剤組成物(ヘアグリース、ウォーターグリース、水溶性ポマード等と称される)であることが好ましく、特に好ましくはグリース状整髪剤組成物である。
【0068】
本発明の整髪剤組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分をディスパーミキサー、パドルミキサー等で攪拌し均一化する方法等により製造することができる。
【0069】
本発明の整髪剤組成物は、特に限定されないが、例えば、容器に充填された形態で用いることができる。上記容器としては、ボトル容器、ジャー容器、チューブ容器等が挙げられる。特に限定されないが、取扱い性の観点から、本発明の整髪剤組成物がジェル状である場合にはボトル容器、チューブ容器、又はジャー容器が好ましく、本発明の整髪剤組成物がグリース状である場合にはジャー容器が好ましい。
【0070】
本発明の整髪剤組成物は、成分(E)を含む水性の整髪剤組成物であり、塗布性に優れる。そして、主な整髪成分として、成分(B)として成分(B1)及び成分(B2)を用いる。成分(B1)の配合により、充分なくせ付けが可能でありながら、毛束を根元から立ち上げる特性を有し、さらに成分(B2)の配合により、整髪後の髪型を長時間保持する特性を有する。また、本発明の整髪剤組成物は、増粘剤として、成分(C)と成分(D)を組み合わせて用いる。成分(C)は整髪剤組成物を増粘するとともに、成分(B)との相互作用によるものと考えられるが、整髪剤組成物の弾性を高め、せん断下での粘度低下を抑制することができる。しかし、成分(C)のみで十分な増粘効果を得ようとすると、べたつきが増加したり、洗い落ち性が悪くなったり、整髪剤組成物の弾性が高くなり過ぎることにより、容器からの指どれが低下する等操作性が低下したりする問題が生じる。このため、本発明においては、さらに増粘成分である成分(D)を併用することにより、成分(C)による弾性の過度の増加を抑えながら、整髪剤組成物を適度に増粘させている。これにより、整髪剤組成物を容器から指で適量とって使用することが容易となり、また、整髪剤組成物の塗布時の塗布性に優れ、操作性に優れる。さらに、べたつきが抑制され、洗い落ち性が向上する。そして、さらに成分(A)を配合することにより、毛髪同士の接着を適度にばらけさせることで、粘着性を有しながらある程度のかたさも有する成分(B1)との相乗効果により、適度に細かな毛束が形成可能となり、また、光沢感を抑制している。加えて、主に成分(C)による毛髪のべたつきを抑制し、洗い落ち性も向上する。
【0071】
さらに、通常、整髪剤組成物を容器から指でとった際にはその跡が整髪剤組成物表面に残るが、本発明の整髪剤組成物は、上記構成を有することにより、その後経時で跡が消失し、容器内の整髪剤組成物表面が自然に平滑となり、審美性に優れる。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の配合量における「−」は、その成分を配合していないことを示す。
【0073】
実施例1〜19、比較例1〜7
表に記した各成分(成分(A)〜(F)、及びその他の成分)を用い、実施例及び比較例の各試料を常法に準じて整髪剤組成物を調製し、下記評価を行った。結果をそれぞれ表に示した。
【0074】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各整髪剤組成物について以下の通り評価した。
【0075】
[試験例1:取扱い性(整髪剤組成物の取れやすさ)の評価]
各実施例及び各比較例で得られた整髪剤組成物50gをジャー容器(容量50mL)に入れ、整髪剤組成物を指で掻き取った際のとれやすさを評価し、「取扱い性」を下記の評価基準に従って評価した。評価結果を表に記載した。
<取扱い性の評価基準>
○(良好):容易に十分な量の整髪剤組成物を掻き取ることができた。
×(不良):指に十分な量が付着しなかった。
【0076】
[整髪剤組成物を用いた整髪]
次いで、各実施例及び各比較例で得られた整髪剤組成物約2gを掌にとり、掌上でのばした後、ウィッグ(株式会社ビューラックス製、商品名「スタッフス カットウィッグ」)に塗布した。塗布は、ウィッグの左右いずれかの半分に対して行った。その後、手櫛で整髪を行い、ウィッグの毛髪をウィッグの形状に沿って後頭部方向へ軽く流すように整髪した。なお、塗布の際は各実施例及び各比較例で得られた整髪剤組成物すべてにおいてのびがよく塗布性に優れていた。
【0077】
[試験例2:アレンジ力(毛髪をくせ付ける力)の評価]
上記整髪直後のウィッグの整髪状態を目視観察し、「アレンジ力」を評価した。その結果、比較例4以外の各実施例及び各比較例で得られた整髪剤組成物を用いて整髪した場合には、毛髪が後頭部方向に流れるように整髪されていた(アレンジ力:良好)。一方、比較例4で得られた整髪剤組成物を用いて整髪した場合には、毛髪を後頭部方向にくせ付けることができなかった(アレンジ力:不良)。
【0078】
[試験例3:毛束を根元から立ち上げる特性の評価]
上記整髪直後のウィッグの前頭部の整髪状態を目視観察し、「毛束を根元から立ち上げる特性」を下記評価基準に従い評価した。評価結果を表に記載した。
<毛束を根元から立ち上げる特性の評価基準>
○(良好):毛束が根元から十分に立ち上がっており、毛髪全体のボリューム感が優れていた。
△(実用可能):毛束が根元から立ち上がっているものの、立ち上がりが小さく、毛髪全体のボリューム感がやや劣っていた。
×(不良):毛束の根元が浮いておらず、毛束が全く立ちあがっていなかった。毛髪全体のボリューム感がなかった。
【0079】
[試験例4:細かな毛束のつくりやすさの評価]
上記整髪直後のウィッグの整髪状態を目視観察し、「毛束のつくりやすさ」を下記評価基準に従い評価した。評価結果を表に記載した。
<毛束のつくりやすさの評価基準>
○(良好):毛髪同士の接着が緩く、密度の低い、緩い毛束を形成している。
△(実用可能):毛髪同士が接着して、密な細かい毛束を形成している。
×(不良):毛束同士がくっついて面状となっている
【0080】
[試験例5:光沢感(不自然な光沢のなさ)の評価]
上記整髪直後のウィッグの整髪状態を目視観察し、「光沢感(不自然な光沢のなさ)」を下記評価基準に従い評価した。評価結果を表に記載した。
<光沢感の評価基準>
○(良好):不自然な光沢がなく、整髪前の毛髪と近い光沢であった。
△(実用可能):やや光沢が感じられるものの、不自然な光沢ではなかった。
×(不良):濡れた髪のような不自然な光沢があった。
【0081】
[試験例6:髪型を長時間保持する特性の評価]
上記整髪後6時間経過後のウィッグの整髪状態を目視観察し、「髪型を長時間保持する特性」を下記評価基準に従い評価した。評価結果を表に記載した。
<髪型を長時間保持する特性の評価基準>
○(良好):6時間経過後も整髪された髪型を維持していた。
△(実用可能):6時間経過後に髪型がやや崩れているものの、概ね髪型を維持していた。
×(不良):6時間経過後も髪型が完全に崩れており、髪型を維持していなかった。
なお、アレンジ力がなく、毛髪のくせ付けができなかった比較例4については、評価を行わなかった。
【0082】
[試験例7:べたつきの評価]
上記整髪直後のウィッグを手で触り、べたつきの有無を評価した。その結果、実施例で得られた整髪剤組成物を用いて整髪したウィッグはいずれもべたつきが感じられなかった。
【0083】
[試験例8:洗い落ち性の評価]
上記整髪直後に手についた整髪剤組成物を流水で洗い流した際の洗い落ち性の度合、並びに、整髪後6時間経過後のウィッグを洗い流した際の洗い落ち性の度合を評価した。その結果、実施例で得られた整髪剤組成物は、いずれも洗い落ち性に優れていた。
【0084】
[試験例9:表面外観の評価]
試験例1において、ジャー容器から整髪剤組成物を指で掻き取った後、30分経過後のジャー容器内の整髪剤組成物表面を観察した。その結果、実施例で得られた整髪剤組成物の表面は、指の掻き取り痕がほぼ又は完全に消失しており、平滑な表面となっていた。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
本発明の整髪剤組成物(実施例)は、毛束を根元から立ち上げる特性及び髪型を長時間保持する特性に優れ、細かな毛束を形成することができ、整髪後の光沢感が抑制されており、アレンジ力に優れ充分にくせ付けされていながら自然な仕上がりとなる髪型とすることができた。また、取扱い性に優れ、さらに毛髪への塗布性も良好であり、操作性に優れていた。これに対し、成分(A)を配合しない場合(比較例1)、細かな毛束を形成することができず、整髪した毛髪が面状となっていた。また整髪後に不自然な光沢感もあり、髪型を長時間保持する特性にも劣っていた。また、成分(C)を配合しない場合(比較例2)、整髪剤組成物の粘度が低く、ジャー容器から十分な量の整髪剤組成物を掻き取りにくく取扱い性に劣っていた。また、成分(D)を配合しない場合(比較例3)、整髪剤組成物の粘度が低く、ジャー容器から十分な量の整髪剤組成物を掻き取りにくく取扱い性に劣っていた。また、成分(B)を配合しない場合(比較例4)、せん断下で整髪剤組成物の粘度が低下するため、ジャー容器から十分な量の整髪剤組成物を掻き取りにくく取扱い性に劣っていた。また、整髪の際に毛髪を十分にくせ付けることができず、アレンジ力及び毛束を根元から立ち上げる特性に劣っていた。また、成分(B1)と成分(B2)の合計の含有量が3.0質量%よりも少ない場合(比較例5)、毛髪がウィッグの形状に沿って撫で付けられたように整髪され、毛束を根元から立ち上げる特性に劣り、細かな毛束を形成することができず、また整髪後の光沢感もあった。比較例5のように成分(B1)にかえて成分(B3)を多量に用いる場合、成分(B3)にかたさが不足するためと推定されるが、毛髪が十分にばらけず、細かな毛束を形成せず、毛髪全体が重い感触となる。また、成分(B1)を配合しない場合(比較例6)、毛髪を十分に立ち上げることができなかった。また、成分(B1)を配合しない場合(比較例6)及び成分(B2)を配合しない場合(比較例7)、髪型を長時間保持する特性に劣っていた。
【0088】
表に記載の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0089】
<成分(A)>
シリカ:商品名「Silica pearl P−4M」(日揮触媒化成株式会社製)
マイカ:商品名「PDM−8W」(トピー工業株式会社製)
タルク:商品名「クラウンタルクPP」(松村産業株式会社製)
酸化チタン:商品名「CR−50」(石原産業株式会社製)
<成分(B1)>
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油:商品名「ブラウノンRCW−50」(青木油脂工業株式会社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−50水添ヒマシ油)、オキシエチレンの平均付加モル数:50
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油:商品名「ブラウノンRCW−60」(青木油脂工業株式会社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−60水添ヒマシ油)、オキシエチレンの平均付加モル数:60
<成分(B2)>
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油:商品名「ブラウノンRCW−100」(青木油脂工業株式会社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−100水添ヒマシ油)、オキシエチレンの平均付加モル数:100
<成分(B3)>
ポリオキシエチレン(20E.O.)硬化ヒマシ油:商品名「ブラウノンRCW−20」(青木油脂工業株式会社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−20水添ヒマシ油)、オキシエチレンの平均付加モル数:20
ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油:商品名「ブラウノンRCW−40」(青木油脂工業株式会社製)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(PEG−40水添ヒマシ油)、オキシエチレンの平均付加モル数:40
<成分(C)>
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー:商品名「アキュリンTM
28」(ダウケミカル社製)
<成分(D)>
カルボキシビニルポリマー:商品名「カーボポール980」(日本ルーブリゾール株式会社製)
アルキル変性カルボキシビニルポリマー:商品名「カーボポールETD 2020」(日本ルーブリゾール株式会社製)、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー
<成分(F)>
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー:商品名「プラスサイズL−2200」(互応化学工業株式会社製)
(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー:商品名「プラスサイズL−6345U」(互応化学工業株式会社製)、アクリル樹脂アルカノールアミン液
<その他の成分>
ジグリセリン:商品名「ジグリセリンS」(阪本薬品工業株式会社製)
【0090】
さらに、以下に、本発明の整髪剤組成物の処方例を示す。
【0091】
(処方例1:ヘアグリース)
シリカ 3.0質量%
ポリオキシエチレン(20E.O.)硬化ヒマシ油 1.0質量%
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 4.0質量%
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油 7.0質量%
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー 0.6質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
2.0質量%
(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー
0.5質量%
トリエタノールアミン 1.0質量%
酢酸トコフェール 0.05質量%
エデト酸二ナトリウム 0.05質量%
フィチン酸 0.05質量%
亜硫酸ナトリウム 0.02質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01質量%
エタノール 5.0質量%
香料 適量
精製水 残量
【0092】
(処方例2:ヘアグリース)
シリカ 1.0質量%
タルク 0.5質量%
ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 2.0質量%
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 6.0質量%
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油 3.0質量%
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー 0.4質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
1.5質量%
トリエタノールアミン 0.8質量%
酢酸トコフェール 0.05質量%
エデト酸二ナトリウム 0.05質量%
加水分解コラーゲン 0.1質量%
エタノール 10.0質量%
香料 適量
精製水 残量
【0093】
(処方例3:ヘアグリース)
マイカ 1.0質量%
酸化チタン 0.5質量%
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 5.0質量%
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油 5.0質量%
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー 0.6質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
2.0質量%
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C1−18)/アルキル(C1−8)アクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシエチル)コポリマーAMP
0.3質量%
トリエタノールアミン 1.0質量%
酢酸トコフェール 0.05質量%
エデト酸二ナトリウム 0.05質量%
フィチン酸 0.05質量%
亜硫酸ナトリウム 0.02質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01質量%
エタノール 5.0質量%
香料 適量
精製水 残量
【0094】
(処方例4:ヘアグリース)
シリカ 2.0質量%
ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 2.0質量%
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 4.0質量%
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油 4.0質量%
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー 0.8質量%
カルボキシビニルポリマー 0.3質量%
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリル酸メトキシエチル)コポリマー
1.5質量%
(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマー
0.5質量%
トリエタノールアミン 1.1質量%
エデト酸二ナトリウム 0.05質量%
フィチン酸 0.05質量%
亜硫酸ナトリウム 0.02質量%
ダイズエキス 0.01質量%
エタノール 5.0質量%
香料 適量
精製水 残量
【0095】
(処方例5:ヘアグリース)
シリカ 2.0質量%
ポリオキシエチレン(40E.O.)硬化ヒマシ油 2.0質量%
ポリオキシエチレン(50E.O.)硬化ヒマシ油 4.0質量%
ポリオキシエチレン(100E.O.)硬化ヒマシ油 4.0質量%
(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー 0.8質量%
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー
0.4質量%
トリエタノールアミン 1.2質量%
エデト酸二ナトリウム 0.05質量%
酢酸トコフェロール 0.1質量%
トリメチルグリシン 2.0質量%
香料 適量
精製水 残量
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、毛髪を整える整髪剤に用いられる整髪剤組成物に関する。本発明の整髪剤組成物は、ジェル状整髪剤組成物、グリース状整髪剤組成物(ヘアグリース、ウォーターグリース、水溶性ポマード等と称される)であることが好ましく、特に好ましくはグリース状整髪剤組成物である。