【文献】
PPEとは? [online],日本,旭化成ケミカルズ株式会社,2020年 7月30日,[2020年7月30日検索],インターネット,,URL,https://www.akchem.com/enpla/tec/pdf/whatIsPPE_jp_2.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0010】
〔マスターバッチ組成物〕
本実施形態のマスターバッチ組成物は、
ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、カルボキシル基及びカルボキシル基から誘導される基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)と、
少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)とを含むブロック共重合体の非水素添加物(B−0)、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)とを含むブロック共重合体の水素添加物(B−I)、及び、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック(b3)と、を含むブロック共重合体の水素添加物(B−II)、からなる群より選択される、少なくとも一種のブロック共重合体(B)と、
を、含むマスターバッチ組成物であって、
前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、
前記(A−1)と前記(A−2)と前記(B)との合計100質量部に対して、前記(A−1)と前記(A−2)とを合わせて10質量部以上90質量部以下含み、前記(B)を10質量部以上90質量部以下含む。
【0011】
本実施形態のマスターバッチ組成物は、熱可塑性エラストマー、軟質系熱可塑性ポリマー、ゴム、アスファルト、シーラント、接着剤、ホットメルト接着剤、粘着剤、塗料、等の各種媒体に対して、ポリフェニレンエーテルを均一分散及び相溶させることにより、前記媒体に耐熱老化性を付与する目的において使用されるものである。ここでいう耐熱老化性とは、50℃以上200℃以下の高温環境下において一定時間熱エージングした前記媒体の、熱エージング前の前記媒体に対する、各種物性の保持率を意味する。
【0012】
前記熱可塑性エラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の非水素添加物;少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物;少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物;及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物と少なくとも1種の共役ジエン化合物とのランダム共重合体の非水素添加物からなる群より選択される、1種又は2種以上である熱可塑性エラストマー(E)が挙げられる。
【0013】
軟質系熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、及びポリ塩化ビニル系からなる群より選択される1種以上の軟質系熱可塑性ポリマーが挙げられる。
ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、等が挙げられる。
アスファルトとしては、例えば、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、等の石油アスファルト、レイクアスファルト、ロックアスファルト、等の天然アスファルトが挙げられる。
シーラントとしては、例えば、熱可塑性エラストマー系シーラント、EVA(エチレン−酢酸ビニル)系シーラント、シリコーン系シーラント、ウレタン系シーラント、等が挙げられる。
接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、等が挙げられる。
ホットメルト接着剤としては、EVA系接着剤、ゴム系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)系接着剤、等が挙げられる。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、等が挙げられる。
塗料としては、例えば、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、エポキシ系塗料、等が挙げられる。
【0014】
本実施形態のマスターバッチ組成物を用いて、上述した各種媒体、すなわち熱可塑性エラストマー等に対して、ポリフェニレンエーテルを均一分散及び相溶させる方法については、以下に限定されないが、例えば、熱可塑性エラストマー等の各種媒体と、前記本実施形態のマスターバッチ組成物とを、二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール混練機、高速攪拌機、等の混練機を適宜用いて、機械的に混練する方法が挙げられる。
このときの混練温度は、上記媒体の熱劣化を防止する観点から、350℃未満が好ましく、250℃未満がより好ましく、200℃未満がさらに好ましい。
なお、ポリフェニレンエーテルが「均一分散」している状態とは、50μm以上の粒子径を有するポリフェニレンエーテル凝集体を、全ポリフェニレンエーテルの5体積%未満含む状態をさす。
また、ポリフェニレンエーテルが「相溶」している状態とは、ポリフェニレンエーテルの平均分散粒子径が5μm未満である状態をさす。
【0015】
上述した各種媒体に対するポリフェニレンエーテルの「均一分散」及び「相溶」の状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて確認することができる。
前記媒体として熱可塑性エラストマーを用いる場合の、ポリフェニレンエーテルの「均一分散」及び「相溶」の状態の確認について具体的に説明する。
本実施形態のマスターバッチ組成物と、媒体として熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物から長さ10mm×幅5mm×厚み3〜4mmの染色用試験片を切り出し、ウルトラミクロトームにて染色用試験片の端に切片切り出し用の平面を作製する。
媒体としての熱可塑性エラストマーとして、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の非水素添加物、及び/又は、少なくとも1種のビニル芳香族化合物と少なくとも1種の共役ジエン化合物とのランダム共重合体の非水素添加物、が含まれる場合、耐熱容器に入れた2質量%四塩化オスミウム水溶液に上記の染色用試験片を漬け、ウォーターバスで80℃×30分湯せんした後引き上げ、常温になるまで冷却後耐熱容器から取り出し、水洗、乾燥を行う。
この染色操作により、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の非水素添加物、及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物と少なくとも1種の共役ジエン化合物とのランダム共重合体の非水素添加物が染色され、TEM観察時に黒色に観察される。
媒体としての熱可塑性エラストマーとして、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、及び/又は、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、が含まれる場合、ウルトラミクロトームに水を入れたダイヤモンドナイフを取り付け、染色用試験片の切片切り出し用の平面から厚み85nmの薄膜を水の上に切り出し、TEM観察用Cuメッシュですくう。この薄膜が載ったCuメッシュをステンレス網の上に並べておく。別個にガラスデシケーター中のシャーレに三塩化ルテニウムn水和物0.1gと精製水1mLを入れ溶解させた後、次亜塩素酸ナトリウム溶液5mLを添加してすぐに薄膜が載ったCuメッシュが載ったステンレス網を載せ、ガラスデシケーターの蓋をして4分静置した後、Cuメッシュを取り出す。この染色操作により、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、及び少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、が染色され、TEM観察時に黒色に観察される。
【0016】
上述した染色法を用いることで、熱可塑性エラストマーを黒色相として、ポリフェニレンエーテルを白色相として、TEM観察することができる。
さらに、このTEM像写真を、市販の画像解析ソフトを用いて画像解析することにより、全ポリフェニレンエーテルに対する50μm以上の粒子径を有するポリフェニレンエーテル凝集体の面積分率、及び、ポリフェニレンエーテルの平均分散粒子径を求めることができる。なお、ここでは、全ポリフェニレンエーテルに対する50μm以上の粒子径を有するポリフェニレンエーテル凝集体の面積分率は、全ポリフェニレンエーテルに対する50μm以上の粒子径を有するポリフェニレンエーテル凝集体の体積分率と同等とみなす。
以上の操作により、媒体としての熱可塑性エラストマーに対するポリフェニレンエーテルの「均一分散」及び「相溶」の状態を確認することができる。
【0017】
上記においては、媒体として熱可塑性エラストマーを用いた場合の、ポリフェニレンエーテルの「均一分散」及び「相溶」の状態の確認について説明したが、媒体として、その他の材料を用いた場合については、例えば、光学顕微鏡、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、等を適宜用いて観察することにより、ポリフェニレンエーテルの「均一分散」及び「相溶」の状態を確認することができる。
【0018】
(ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び、カルボキシル基及びカルボキシル基から誘導される基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2))
本実施形態のマスターバッチ組成物は、ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、カルボキシル基及びカルボキシル基から誘導される基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)(以下、(A−1)成分、(A−1)、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)、(A−2)成分、(A−2)と記載する場合がある。)を含有する。
本実施形態のマスターバッチ組成物に用いられる、ポリフェニレンエーテル(A−1)は、以下に限定されないが、例えば、下記式(1)で表される単位構造からなる単独重合体、及び/又は、下記式(1)で表される単位構造を含む共重合体が挙げられる。
【0020】
式(1)中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜7の第1級のアルキル基、炭素原子数1〜7の第2級のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、及び、少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
【0021】
本実施形態のマスターバッチ組成物に用いられるポリフェニレンエーテル(A−1)としては、公知のものを用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等の単独重合体;2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール等の他のフェノール類との共重合物等の共重合体;が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル(A−1)としては、特に、入手のし易さの観点、並びに、熱可塑性エラストマー等の各種媒体への均一分散性及び相溶性の観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
前記ポリフェニレンエーテルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ポリフェニレンエーテル(A−1)は、公知の方法により製造することができる。
ポリフェニレンエーテル(A−1)の製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、Hayによる米国特許第3306874号明細書に記載の第一銅塩とアミンとの混合物を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法や、米国特許第3306875号明細書、米国特許第3257357号明細書、米国特許第3257358号明細書、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、及び特開昭63−152628号公報等に記載されるその他の方法等が挙げられる。
【0023】
本実施形態のマスターバッチ組成物に含有される、カルボキシル基及びカルボキシル基から誘導される基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)は、前記ポリフェニレンエーテル(A−1)と、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(G)と、を反応させることによって得られる。
ポリフェニレンエーテル(A−1)に対する、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(G)の付加量としては、ポリフェニレンエーテル(A−1)100質量%に対して、0.01〜10質量%であることが好ましい。反応の条件としては、以下に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃の温度下で行う条件等が挙げられる。
【0024】
不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(G)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、アコニット酸、イタコン酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、クロロマレイン酸、等の不飽和ジカルボン酸類;無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、無水アコニット酸、無水イタコン酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、クロロマレイン酸無水物、等の不飽和ジカルボン酸無水物類;マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、等の不飽和ジカルボン酸の半エステル及びエステル類;が挙げられる。中でも、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸が好ましく、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)を含むことにより、本実施形態のマスターバッチ組成物の臭気を低減することができる。
本実施形態のマスターバッチ組成物において、ポリフェニレンエーテルに対して官能基変性を行う方法としては、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)が好適に得られる方法であれば特に限定されるものではない。
具体的な方法としては、以下が例示される。すなわち、
(i)事前に、ポリフェニレンエーテル(A−1)と、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(G)と、を反応させることにより、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)を得ておき、その後、これを用いて、他の成分と混合し、マスターバッチ組成物を製造する方法;
(ii)マスターバッチ組成物の製造時、系中にて、ポリフェニレンエーテル(A−1)と、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(G)と、を反応させることにより、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)を得ると同時に、マスターバッチ組成物を製造する方法;
が、挙げられる。
【0026】
本実施形態のマスターバッチ組成物に含まれるポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は10,000以上50,000以下である。
すなわち、本実施形態のマスターバッチ組成物に含まれる、ポリフェニレンエーテル成分全体の重量平均分子量が、10,000以上50,000以下である。
前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が10,000以上であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物が、耐熱老化性に優れたものとなる。当該耐熱老化性の向上の観点から、前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は15,000以上が好ましく、より好ましくは20,000以上である。
一方、前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が50,000以下であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物の造粒安定性が良好となる。当該造粒安定性の向上の観点から、前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量は45,000以下が好ましく、より好ましくは40,000以下である。
なお、ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置を用いた測定により得られる。
具体的なGPCの測定条件としては、昭和電工(株)製GPC System21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0mL/min、サンプル濃度:ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液)を用いて、標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)の検量線を作成するという、測定条件が挙げられる。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmを、それぞれ選択できる。
【0027】
本実施形態のマスターバッチ組成物は、前記(A−1)と前記(A−2)と前記(B)との合計100質量部に対して、前記(A−1)と前記(A−2)とを合わせて10質量部以上90質量部以下含む。
前記(A−1)及び前記(A−2)が合わせて10質量部以上であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の媒体とを含む樹脂組成物は、耐熱老化性に優れたものとなる。一方、前記(A−1)及び前記(A−2)が合わせて90質量部以下であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の媒体とを含む樹脂組成物中において、前記(A−1)及び前記(A−2)が均一分散する。
前記(A−1)及び前記(A−2)の合計量の好ましい範囲としては15質量部以上85質量部以下であり、さらに好ましい範囲としては20質量部以上80質量部以下であり、さらにより好ましい範囲としては20質量部以上50質量部以下である。
【0028】
(ブロック共重合体(B))
本実施形態のマスターバッチ組成物は、
少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)とを含むブロック共重合体の非水素添加物(B−0)、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)とを含むブロック共重合体の水素添加物(B−I)、及び、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック(b3)と、を含むブロック共重合体の水素添加物(B−II)、
からなる群より選択される、少なくとも一種のブロック共重合体(B)(以下、ブロック共重合体(B)、(B)成分、(B)と記載する場合がある。)を、含有する。
【0029】
<少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)とを含むブロック共重合体の非水素添加物(B−0)>
本実施形態のマスターバッチ組成物に用いられる、ブロック共重合体(B−0)の構造としては、特に限定されず、例えば、式(b1)−(b2)で表されるジブロック共重合体;式(b1)−(b2)−(b1)で表されるトリブロック共重合体;式(b1)−(b2)−(b1)−(b2)、式(b1)−(b2)−(b1)−(b2)−(b1)、式{(b1)−(b2)−}
nX等で表されるマルチブロック共重合体が挙げられる。
ここで、式中のnは2以上6以下の整数であり、Xはカップリング剤の反応残基である。
本実施形態において、ブロック共重合体(B−0)は、単一構造でもよく、複数種類の構造を任意の割合で含む混合物でもよい。
【0030】
ビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)に用いられるビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。
これらビニル芳香族化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)に用いられる共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。
これら共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本実施形態において、共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)のミクロ構造(cis、trans、ビニルの比率)は、特に限定されず、任意に選ぶことができる。
共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)において、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計(以下、「全ビニル結合量」ともいう。)は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、2%以上80%以下であることが好ましく、5%以上60%以下であることがより好ましい。
なお、全ビニル結合量とは、非水素添加の共役ジエン化合物単位における、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計の、1,2−ビニル結合量と、3,4−ビニル結合量と、1,4−共役結合量との合計に対する割合を指す。全ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定し算出することができる。
【0033】
本実施形態において、ブロック共重合体(B−0)の重量平均分子量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。
一方、本実施形態のマスターバッチ組成物の造粒安定性の観点から、500,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、GPCによりスチレン換算分子量として求めることができる。
【0034】
ブロック共重合体(B−0)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)の含有量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、25質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。
なお、ブロック共重合体(B−0)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)の含有量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムを触媒として未水素添加の共重合体をtert−ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I. M. Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法。)により得た、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量から、下記式に基づきビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)の含有量を求めることができる。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量[質量%]=(未水素添加の共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量/未水素添加の共重合体の質量)×100
【0035】
ブロック共重合体(B−0)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
n−ブチルリチウムを重合触媒とし、シクロヘキサン溶媒中で、テトラヒドロフランを全ビニル結合量調節剤として、例えば、スチレンと1,3−ブタジエンとをアニオンリビング重合することにより、所定のスチレンブロック含有量と重量平均分子量とを有するブロック共重合体を合成することができる。なお、ポリマー構造はモノマーの仕込み量を、分子量は触媒量を、各々調整することにより制御することができる。
【0036】
<ブロック共重合体の水素添加物(B−I)>
本実施形態のマスターバッチ組成物で用いられる、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)とを含むブロック共重合体の水素添加物(B−I)(水添ブロック共重合体(B−I))の構造としては、特に限定されず、例えば、式(b1’)−(b2’)で表されるジブロック共重合体;式(b1’)−(b2’)−(b1’)で表されるトリブロック共重合体;式(b1’)−(b2’)−(b1’)−(b2’)、式(b1’)−(b2’)−(b1’)−(b2’)−(b1’)、式{(b1’)−(b2’)−}
nX等で表されるマルチブロック共重合体が挙げられる。
ここで、式中のnは2以上6以下の整数であり、Xはカップリング剤の反応残基である。
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−I)は、単一構造でもよく、複数種類の構造を任意の割合で含む混合物でもよい。
【0037】
ビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)に用いられるビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。
これらビニル芳香族化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)に用いられる共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。
これら共役ジエン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本実施形態において、共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)のミクロ構造(cis、trans、ビニルの比率)は、特に限定されず、任意に選ぶことができる。
共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)において、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計(以下、「全ビニル結合量」ともいう。)は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、2%以上80%以下であることが好ましく、5%以上60%以下であることがより好ましい。
なお、全ビニル結合量とは、未水素添加の共役ジエン化合物単位における、1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量との合計の、1,2−ビニル結合量と、3,4−ビニル結合量と、1,4−共役結合量との合計に対する割合を指す。全ビニル結合量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定し算出することができる。
【0040】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−I)の重量平均分子量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。
一方、本実施形態のマスターバッチ組成物の造粒安定性の観点から、500,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましい。なお、ここでいう重量平均分子量は、GPCによりスチレン換算分子量として求めることができる。
【0041】
水添ブロック共重合体(B−I)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)の含有量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、25質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。
なお、水添ブロック共重合体(B−I)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)の含有量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムを触媒として未水素添加の共重合体をtert−ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I. M. Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法。)により得た、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量から、下記式に基づきビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)の含有量を求めることができる。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量[質量%]=(未水素添加の共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量/未水素添加の共重合体の質量)×100
【0042】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−I)中のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)における芳香族二重結合の水素添加率は、特に限定されないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0043】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−I)中の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)における脂肪族二重結合の水素添加率は、50%以上100%以下が好ましく、80%以上100%以下がより好ましく、90%以上100%以下がさらに好ましい。水素添加率が50%以上であれば、マスターバッチ組成物の造粒安定性に優れる。
【0044】
なお、水添ブロック共重合体(B−I)中の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)における脂肪族二重結合の水素添加率は、前記(B−I)、及び、前記(B−I)の未水素添加物を、核磁気共鳴装置(NMR)に供することで、測定し算出することができる。
【0045】
水添ブロック共重合体(B−I)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
n−ブチルリチウムを重合触媒とし、シクロヘキサン溶媒中で、テトラヒドロフランを全ビニル結合量調節剤として、例えば、スチレンと1,3−ブタジエンとをアニオンリビング重合することにより、所定のスチレンブロック含有量と重量平均分子量とを有するブロック共重合体を合成する。なお、ポリマー構造はモノマーの仕込み量を、分子量は触媒量を、変化させることにより制御することができる。
引続き、上記のブロック共重合体の水素添加は、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライドとn−ブチルリチウムとを水添触媒として、水素圧5kg/cm
2、温度50℃で2時間水素添加を行う(例えば特開昭59−133203号公報に記載)。この方法では、1,3−ブタジエン重合体ブロック中の脂肪族二重結合の99%以上は水素添加され、スチレン重合体ブロック中の芳香族二重結合はほとんど水素添加されずに残すことができる。
【0046】
<ブロック共重合体の水素添加物(B−II)>
本実施形態のマスターバッチ組成物に用いられる、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック(b3)とを含むブロック共重合体の水素添加物(B−II)(水添ブロック共重合体(B−II))の構造としては、特に限定されず、例えば、式(b1’’)−(b3)で表されるジブロック共重合体、式(b1’’)−(b3)−(b1’’)で表されるトリブロック共重合体、式(b1’’)−(b3)−(b1’’)−(b3)、式(b1’’)−(b3)−(b1’’)−(b3)−(b1’’)、式{(b1’’)−(b3)−}
nX等で表されるマルチブロック共重合体が挙げられる。
ここで、式中のnは2以上6以下の整数であり、Xはカップリング剤の反応残基である。
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−II)は、単一構造でもよく、複数種類の構造を任意の割合で含む混合物でもよい。
【0047】
前記ブロック(b1’’)、及び、前記ブロック(b3)中に用いられるビニル芳香族化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−、及びp−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。
これらビニル芳香族化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ブロック(b3)中に用いられる共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。
これらの中でも、重合性及び物性の観点から、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。
これら共役ジエン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本実施形態において、ブロック(b3)中の共役ジエン化合物単位のミクロ構造(cis、trans、ビニルの比率)は、特に限定されず、任意に選ぶことができる。
ブロック(b3)中の共役ジエン化合物単位の全ビニル結合量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、2%以上80%以下であることが好ましく、5%以上60%以下であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態のマスターバッチ組成物に用いる水添ブロック共重合体(B−II)の重量平均分子量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。一方、マスターバッチ組成物の造粒安定性の観点から、500,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましい。
なお、ここでいう重量平均分子量は、GPCによりスチレン換算分子量として求めることができる。
【0051】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−II)中のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)の含有量は、5質量%以上60質量%以下が好ましく、8質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下がさらに好ましい。
なお、水添ブロック共重合体(B−II)におけるビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)の含有量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムを触媒として未水素添加の共重合体をtert−ブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I. M. Kolthoff,et al.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法。)により得た、ビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量から、下記式に基づきビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量を求めることができる。
ビニル芳香族化合物重合体ブロックの含有量[質量%]=(未水素添加の共重合体中のビニル芳香族化合物重合体ブロックの質量/未水素添加の共重合体の質量)×100
【0052】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−II)中の芳香族化合物単位の総量は、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、20質量%以上70質量%以下が好ましく、25質量%以上65質量%以下がより好ましく、30質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−II)中の芳香族二重結合の水素添加率は、特に限定されないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。
本実施形態において、水添ブロック共重合体(B−II)中の、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック(b3)における脂肪族二重結合の水素添加率は、50%以上100%以下が好ましく、80%以上100%以下がより好ましく、90%以上100%以下がさらに好ましい。(b3)における脂肪族二重結合の水素添加率が50%以上であれば、マスターバッチ組成物の造粒安定性に優れる。
なお、前記水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)に供することで、測定し、算出することができる。
【0054】
水添ブロック共重合体(B−II)の製造方法としては、特に限定されることなく、公知の方法を用いることができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
n−ブチルリチウムを重合触媒とし、シクロヘキサン溶媒中で、テトラヒドロフランを全ビニル結合量調節剤、及び、ランダム共重合性調整剤として、例えば、スチレンと1,3−ブタジエンとをアニオンリビング重合することにより、所定のスチレンブロック含有量と重量平均分子量とを有するブロック共重合体を合成する。なお、ポリマー構造はモノマーの仕込み量を、分子量は触媒量を、変化させることにより制御することができる。引続き、上記のブロック共重合体の水素添加は、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライドとn−ブチルリチウムとを水添触媒として、水素圧5kg/cm
2、温度50℃で2時間水素添加を行うことにより、1,3−ブタジエン重合体ブロック中の脂肪族二重結合の99%以上は水素添加され、スチレン重合体ブロック中の芳香族二重結合はほとんど水素添加されずに残すことができる。
【0055】
本実施形態のマスターバッチ組成物は、前記(A−1)と前記(A−2)と前記(B)との合計100質量部に対して、前記(B)を10質量部以上90質量部以下含む。
前記(B)が10質量部以上であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物中において、前記(A−1)及び前記(A−2)が均一に分散する。一方、前記(B)が90質量部以下であることで、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物は、耐熱老化性に優れたものとなる。
前記(B)の含有量の好ましい範囲としては15質量部以上85質量部以下であり、さらに好ましい範囲としては20質量部以上80質量部以下であり、さらにより好ましい範囲としては50質量部以上80質量部以下である。
【0056】
(海島構造のモルフォロジー)
本実施形態のマスターバッチ組成物は、ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)により構成される島相(非連続相)と、ブロック共重合体(B)により構成される海相(連続相)と、を含む海島構造のモルフォロジーを有することが、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物中の、ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)の均一分散性及び相溶性を向上させる観点から好ましい。
【0057】
特に、前記モルフォロジーにおいて、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物中の、ポリフェニレンエーテル(A−1)及び/又は官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)の熱可塑性エラストマー等の各種媒体との相溶性を向上させる観点から、島相の平均直径は5μm未満であることが好ましく、1μm未満であることがより好ましく、500nm未満であることがさらに好ましい。
モルフォロジーにおける島相の平均直径は、混練機の選定、混練温度、混練時間、及び比エネルギー等の混練条件の設定、並びに、相溶化剤の添加、ポリフェニレンエーテル(A−1)及び官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)の重量平均分子量の調整、及びブロック共重合体(B)のビニル芳香族化合物ユニット含有量の調整等により、上記数値範囲に制御することができる。
具体的には、混練機として二軸押出機を用いると島相の平均直径を小さくすることができる。また、混練温度を高く、混練時間を長く、比エネルギーを大きくするほど島相の平均直径を小さくすることができる。また、相溶化剤を添加することで島相の平均直径を小さくすることができ、ポリフェニレンエーテル(A−1)及び官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)の重量平均分子量を小さくすることで島相の平均直径を小さくすることができ、ブロック共重合体(B)のビニル芳香族化合物ユニット含有量を多くすることで島相の平均直径を小さくすることができる。
なお、前記モルフォロジーは透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認することができる。
具体的には、マスターバッチ組成物そのもの、又はマスターバッチ組成物のみからなる成形片を、ウルトラミクロトームを用いて切り出し、超薄切片を形成するための平面を作製する。続いて、耐熱容器に入れた2質量%四塩化オスミウム水溶液に漬け、ウォーターバスで80℃×30分湯せんした後引き上げ、常温になるまで冷却後耐熱容器から取り出し、水洗、乾燥を行う。この染色操作により、ブロック共重合体(B−0)が染色され、TEM観察時、黒色で観察される。続いて、ウルトラミクロトームを用いて、超薄切片を作製するための平面から厚み85nmの薄膜を切り出し、これをTEM観察する。
上述した染色法により、ポリフェニレンエーテル(A−1)及び/又は官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)は白色、ブロック共重合体(B−0)は黒色で観察され、モルフォロジーを確認することができる。
また、マスターバッチ組成物そのもの、又はマスターバッチ組成物のみからなる成形片を、ウルトラミクロトームを用いて切り出し、厚み85nmの超薄切片を得る。超薄切片をTEM観察用Cuメッシュ上にすくい、薄膜が載ったCuメッシュをステンレス網の上に並べておく。別個にガラスデシケーター中のシャーレに三塩化ルテニウムn水和物0.1gと精製水1mLを入れ溶解させた後、次亜塩素酸ナトリウム溶液5mLを添加してすぐに薄膜が載ったCuメッシュが載ったステンレス網を載せ、ガラスデシケーターの蓋をして4分静置した後、Cuメッシュを取り出す。この染色操作により、ブロック共重合体(B−I)及びブロック共重合体(B−II)が染色され、TEM観察時に黒色に観察される。
海島構造における島相の平均直径は、このTEM像写真を市販の画像解析ソフトを用いて画像解析することにより容易に求めることができる。
【0058】
(酸化防止剤(C))
本実施形態のマスターバッチ組成物は、マスターバッチ組成物の造粒安定性を向上させる観点、及び、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、ポリフェニレンエーテル(A−1)と官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、酸化防止剤(C)を0.1質量部以上20質量部以下含むことが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下含むことがより好ましく、1質量部以上5質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0059】
酸化防止剤(C)としては、以下に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール(BASF社製IRGANOX565)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製IRGANOX1010、(株)ADEKA製アデカスタブAO−60)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(BASF社製IRGANOX1330)、3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル(BASF社製IRGANOX1076、(株)ADEKA製アデカスタブAO−50)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製IRGAFOS168、(株)ADEKA製アデカスタブ2112)、3,9−ビス(オクタデシルオキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン((株)ADEKA製アデカスタブPEP−8)、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン((株)ADEKA製アデカスタブPEP−36)、リン酸=2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)=2−エチルヘキシル((株)ADEKA製アデカスタブHP−10)、3,3’−チオビスプロパン酸ジオクタデシル(BASF社製IRGANOX PS802FD)、N,N−ジオクタデシルヒドロキシルアミン(BASF社製IRGASTAB FS042)等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
(滑剤(D))
本実施形態のマスターバッチ組成物は、マスターバッチ組成物の造粒安定性を向上させる観点、及び、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマー等の各種媒体とを含む樹脂組成物の耐熱老化性を向上させる観点から、ポリフェニレンエーテル(A−1)と官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)とブロック共重合体(B)との合計100質量部に対して、滑剤(D)を0.1質量部以上40質量部以下含むことが好ましく、1質量部以上35質量部以下含むことがより好ましく、10質量部以上30質量部以下含むことがさらに好ましい。
【0061】
滑剤(D)としては、以下に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸ステアリル、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸エステル系滑剤、ジステアリン酸マグネシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジステアリン酸亜鉛、モンタン酸カルシウム、等の脂肪酸金属塩系滑剤が挙げられる。
【0062】
(その他の成分)
本実施形態のマスターバッチ組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A−1)、(A−2)、及び、(B)〜(D)成分以外に、さらにその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、染顔料、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、相溶化剤等が挙げられる。
【0063】
(マスターバッチ組成物の製造方法)
本実施形態のマスターバッチ組成物の製造方法は、特に限定されることなく、公知の方法を適用することができる。
例えば、二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール混練機等の混練機を用いた溶融混練によって製造することができる。
生産性の観点から、二軸押出機による溶融混練が好ましい。混練温度は、溶融粘度と分解温度を考慮して好ましい温度に設定することができ、目安としては200℃以上360℃以下であり、好ましくは230℃以上330℃以下である。
【0064】
(マスターバッチ組成物の形状)
本実施形態のマスターバッチ組成物は、ハンドリング性の観点から、ペレット、グラニュー、及び、粉体からなる群より選択されるいずれかの形状を有することが好ましく、ペレット及びグラニューがより好ましい。
ペレット形状であるときの径φは、特に限定されないが、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物中において、前記(A−1)及び前記(A−2)の均一分散性を向上させる観点から、1mm以上5mm以下の範囲であることが好ましい。
また、ペレット長L/ペレット径φは、特に限定されないが、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物等の各種媒体中において、前記(A−1)及び前記(A−2)の均一分散性を向上させる観点から0.1以上5以下の範囲であることが好ましい。
ペレットの製造方法は、特に限定されることなく、公知の方法を適用できる。例えば、前記二軸押出機のダイヘッドより押出されるストランドを水冷した後に連続切断する方法;前記二軸押出機のダイヘッドより押出されるストランドをコンベア上で空冷した後に連続切断する方法;前記二軸押出機のダイヘッドより押出されるストランドを連続切断した後に水冷する方法;等が挙げられる。
グラニューの平均粒子径は、特に限定されないが、本実施形態のマスターバッチ組成物と熱可塑性エラストマーとを含む樹脂組成物中において、前記(A−1)及び前記(A−2)の均一分散性を向上させる観点から100μm以上1mm以下の範囲であることが好ましい。グラニュー及び粉体の製造方法は、特に限定されることなく、公知の方法を適用でき、例えば、上記で得られるペレットを粉砕する方法等が挙げられる。
【0065】
本実施形態のマスターバッチ組成物は、ポリフェニレンエーテルマスターバッチ組成物として使用できる。ポリフェニレンエーテルマスターバッチ組成物とは、媒体にポリフェニレンエーテルを添加するためのマスターバッチ組成物であり、本実施形態のマスターバッチ組成物により、十分な分子量を有するポリフェニレンエーテルを、簡便な工程かつ温和な混練条件下で均一分散及び相溶させることができる効果が得られる。
【0066】
本実施形態のマスターバッチ組成物は、改質剤として用いることができる。改質剤とは、媒体の物性、特に耐熱老化性を改善するために添加される成分であり、本実施形態のマスターバッチ組成物により、耐熱老化性に優れる樹脂組成物が得られるという効果が得られる。
【0067】
次に、本実施形態の樹脂組成物、及び、その製造方法について説明する。
【0068】
〔樹脂組成物〕
本実施形態の樹脂組成物は、
ポリフェニレンエーテル(A−1)、及び/又は、カルボキシル基及びカルボキシル基から誘導される基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)と、
少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2)とを含むブロック共重合体の非水素添加物(B−0)、
少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’)と少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロック(b2’)とを含むブロック共重合体の水素添加物(B−I)、及び、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロック(b1’’)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロック(b3)と、を含むブロック共重合体の水素添加物(B−II)からなる群より選択される、少なくとも一種のブロック共重合体(B)と、
熱可塑性エラストマー、軟質系熱可塑性ポリマー、ゴム、アスファルト、シーラント、接着剤、ホットメルト接着剤、粘着剤、及び塗料からなる群より選択される、少なくとも一種の媒体と、
を、含む。
前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、
かつ、前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの平均分散粒子径が5μm未満である。
このように、熱可塑性エラストマー等の媒体中に、十分な分子量を有するポリフェニレンエーテルが相溶している構造により、本実施形態の樹脂組成物は優れた耐熱老化性を示す。
前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの平均分散粒子径の好ましい範囲は1μm未満であり、より好ましくは500nm未満である。
【0069】
前記軟質系熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、及びポリ塩化ビニル系からなる群より選ばれる1種以上の軟質系熱可塑性ポリマーを用いることができる。
【0070】
前記媒体としての熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の非水素添加物、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物と少なくとも1種の共役ジエン化合物とのランダム共重合体の非水素添加物からなる群より選択される1種又は2種以上である、熱可塑性エラストマー(E)を用いることができる。
【0071】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の樹脂組成物の製造方法は、本実施形態のマスターバッチ組成物と、上述した各種媒体とを、
250℃未満の温度条件下で機械的に混練する工程を含む。
このように、本実施形態のマスターバッチ組成物を用いることにより、250℃未満の比較的温和な混練条件下であっても、媒体中に、十分な分子量を有するポリフェニレンエーテルを相溶させることができ、しかも、混練による媒体の熱劣化を抑制することができる。
好ましい混練温度は200℃未満であり、より好ましくは180℃未満であり、さらに好ましくは160℃未満である。
前記機械的に混練する工程とは、以下に限定されるものではないが、例えば、二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール混練機、高速攪拌機等の混練機により混練する工程が挙げられる。
【0072】
前記媒体としては、熱可塑性エラストマー、軟質系熱可塑性ポリマー、ゴム、アスファルト、シーラント、接着剤、ホットメルト接着剤、粘着剤、及び塗料からなる群より選択される少なくともいずれかの媒体を用いることができる。
【0073】
前記軟質系熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、及びポリ塩化ビニル系からなる群より選択される1種以上の軟質系熱可塑性ポリマーを用いることができる。
【0074】
また、前記媒体としての熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の非水素添加物、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、少なくとも1個のビニル芳香族化合物重合体ブロックと少なくとも1個の共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックとを含むブロック共重合体の水素添加物、及び少なくとも1種のビニル芳香族化合物と少なくとも1種の共役ジエン化合物とのランダム共重合体の非水素添加物からなる群より選択される1種又は2種以上である、熱可塑性エラストマー(E)を用いることができる。
【0075】
前記混練する工程後の、前記(A−1)及び/又は前記(A−2)よりなるポリフェニレンエーテルの平均分散粒子径が5μm未満であることが好ましく、1μm未満であることがより好ましく、500nm未満であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものでない。
【0077】
後述する製造例のマスターバッチ組成物に用いた原材料を以下に示す。
〔(A−1)成分〕
(A−1−1):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、重量平均分子量20,000のポリフェニレンエーテルパウダー
(A−1−2):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、重量平均分子量3,000のポリフェニレンエーテルパウダー
(A−1−3):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、重量均分子量35,000のポリフェニレンエーテルパウダー
(A−1−4):2,6−キシレノールを酸化重合して得た、重量平均分子量55,000のポリフェニレンエーテルパウダー
【0078】
〔(A−2)成分〕
(A−2−1):ポリフェニレンエーテルパウダー100質量部と無水マレイン酸(日本油脂(株)製、クリスタルMAN)2質量部とを二軸押出機を用いて溶融混練することによって得た、重量平均分子量35,000の官能基変性ポリフェニレンエーテル。
無水マレイン酸付加量は、IR測定により、ポリフェニレンエーテル100質量%に対して0.5質量%と算出された。
【0079】
〔(B)成分〕
(B1):スチレンと1,3−ブタジエンとをアニオンリビング重合することにより、(スチレン重合体ブロック)−(1,3−ブタジエン重合体ブロック)−(スチレン重合体ブロック)―(1,3−ブタジエン重合体ブロック)で表されるテトラブロック共重合体を得た。
このとき、全ビニル結合量は10%、スチレンブロック含有量は40質量%、重量平均分子量は100,000であった。
(B2):スチレンと1,3−ブタジエンとをアニオンリビング重合することにより、(スチレン重合体ブロック)−(1,3−ブタジエン重合体ブロック)−(スチレン重合体ブロック)で表されるトリブロック共重合体を得た。
このとき、全ビニル結合量は10%、スチレンブロック含有量は30質量%、重量平均分子量は200,000であった。
【0080】
〔(C)成分〕
(C1):トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(BASF社製、IRGAFOS168)
【0081】
〔(D)成分〕
(D1):エチレンビスステアリン酸アミド(花王(株)製、カオーワックスEB−FF)
【0082】
〔製造例1〕 マスターバッチ組成物(MB1)
二軸押出機((株)池貝製、PCM−30)を用い、表1に示す原料と組成構成で、シリンダー温度を250℃に設定し、スクリュー回転数を150rpmとし、吐出量を毎時7kgとして、溶融混練した。
このとき、シリンダーブロックに開口部(ベント)を設け、減圧度0.09MPaで減圧吸引することにより、残存揮発分の除去を行った。
ダイヘッドより押出されるストランドを水冷後、連続切断し、ペレット形状(ペレット径φ4mm、ペレット長L4mm)のマスターバッチ組成物(MB1)を得た。
【0083】
〔製造例2〕 マスターバッチ組成物(MB2)
表1に示す原料と組成構成にて、前記〔製造例1〕と同様の操作により、ペレット(ペレット径φ4mm、ペレット長L4mm)を得た後、当該ペレットを、粉砕機を用いて粉砕することにより、グラニュー形状(平均粒子径500μm)を有するマスターバッチ組成物(MB2)を得た。
【0084】
〔製造例3〜6及び12〕、〔比較製造例7〜10〕 マスターバッチ組成物(MB3)〜(MB10)及び(MB12)
表1に示す原料と組成構成にて、前記〔製造例1〕と同様の操作により、ペレット形状(ペレット径φ4mm、ペレット長L4mm)を有するマスターバッチ組成物(MB3)〜(MB10)及び(MB12)を得た。
【0085】
〔比較製造例11〕 マスターバッチ組成物(MB11)
表1に示す原料と組成構成にて、前記〔製造例1〕と同様の操作を行ったが、ストランド切れが頻繁に発生し、ペレット形状のマスターバッチ組成物(MB11)を得ることができなかった。
【0086】
〔マスターバッチ組成物の特性〕
(マスターバッチ組成物の造粒安定性)
マスターバッチ組成物(MB1)〜(MB12)の造粒安定性を下記の評価基準に基づいて評価した。
−評価基準−
◎: 押出工程中、ストランド切れが全く発生せず、ストランド表面が滑らかであった。
○: 押出工程中、ストランド切れが全く発生しないが、ストランド表面が荒れていた。
△: 押出工程中、ストランド切れが10分間に1〜2回の頻度で発生した。
×: 押出工程中、ストランド切れが頻繁に発生した。
【0087】
(マスターバッチ組成物のモルフォロジー)
マスターバッチ組成物(MB1)〜(MB10)及び(MB12)のモルフォロジーを、下記の手順にしたがって評価した。
ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、ライカEM UC7)を用いて、ペレット形状を有するマスターバッチ組成物(MB1)、(MB3)〜(MB10)及び(MB12)を凍結切削し、超薄切片を作成するための平面を作製した。
続いて、耐熱容器に入れた2質量%四塩化オスミウム水溶液に漬け、ウォーターバスで80℃×30分湯せんした後引き上げ、常温になるまで冷却後耐熱容器から取り出し、水洗、乾燥を行った。
続いて、ウルトラミクロトームを用いて、超薄切片を作製するための平面から厚み85nmの薄膜を凍結切削し、超薄切片を得た。得られた超薄切片を、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、HT7700)を用いて観察した。
得られたTEM写真の白色部分をポリフェニレンエーテル(A−1)及び官能基変性ポリフェニレンエーテル(A−2)(以下の本明細書中の記載、及び下記表1において、前記(A−1)と前記(A−2)とをまとめて、ポリフェニレンエーテル(A)と記載する場合がある。)、黒色部分をブロック共重合体(B)として、海島構造を決定した。
さらに、海島構造における島の平均直径を、このTEM像写真を市販の画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング(株)製、A像くん(商品名))を用いて画像解析することにより求めた。
グラニュー形状を有するマスターバッチ組成物(MB2)については、粉砕前のペレットを、上述の手順に従い、染色、切削、TEM観察、及び、画像解析に供した。
【0088】
(マスターバッチ組成物の臭気評価)
マスターバッチ組成物(MB1)〜(MB10)及び(MB12)の臭気を下記の評価基準に基づいて評価した。
−評価基準−
1: 臭気はほとんど感じられなかった。
2: 臭気がいくらか感じられた。
3: 臭気がはっきりと感じられた。
【0089】
表1に、マスターバッチ組成物の原料と組成構成、マスターバッチ組成物の造粒安定性、及び、マスターバッチ組成物のモルフォロジーを示す。
表1中「−」は、製造例3、比較製造例10は、島相が(B)成分により形成されたため、平均直径の測定を行わず、比較製造例11は、マスターバッチ組成物を得ることができなかったため、平均直径の測定を行わなかったことを意味する。
【0090】
【表1】
【0091】
次に、上述した〔製造例1〜6及び12〕、〔比較製造例7〜10〕のマスターバッチ組成物と、熱可塑性エラストマーを用いて、樹脂組成物を製造し、特性の評価を行った。
【0092】
〔実施例1〕〜〔実施例7〕、〔比較例1〕〜〔比較例4〕
上記で得られたマスターバッチ組成物(MB1)〜(MB10)及び(MB12)と、熱可塑性エラストマー(E)として前記ブロック共重合体(B1)とを、マスターバッチ組成物:ブロック共重合体=20:80(質量比)の組成構成にて、温度130℃でロール混練後、圧縮成型機を用い、温度160℃、荷重80kgf/cm
2の条件下で5分間プレスし、ISO37規格に準拠した、厚み2mmのダンベル状タイプ1A試験片を作製した。
【0093】
〔比較例5〕
ポリフェニレンエーテルパウダー(A−1−1)と、熱可塑性エラストマー(E)として前記ブロック共重合体(B1)とを、ポリフェニレンエーテル:ブロック共重合体=20:80(質量比)の組成構成にて、前記〔実施例1〕と同様の手順により、厚み2mmのダンベル状タイプ1A試験片を作製した。
【0094】
〔比較例6〕
ポリフェニレンエーテルパウダー(A−1−2)と、熱可塑性エラストマー(E)として前記ブロック共重合体(B1)とを、ポリフェニレンエーテル:ブロック共重合体=20:80(質量比)の組成構成にて、前記〔実施例1〕と同様の手順により、厚み2mmのダンベル状タイプ1A試験片を作製した。
【0095】
〔樹脂組成物の特性〕
(マスターバッチ組成物を混練した樹脂組成物の耐熱老化性)
上記で得られたダンベル状試験片を、120℃環境下12時間熱エージングしたサンプルと、熱エージングしていないサンプルとについて、ISO37規格に準拠して、引張速度500mm/分の条件にて、引張試験を行い、引張強さを測定した。
下記式により引張強さ保持率を算出し、下記の評価基準に基づいて耐熱老化性を評価した。
引張強さ保持率[%]={熱エージングしたサンプルの引張強さ[MPa]/熱エージングしていないサンプルの引張強さ[MPa]}×100
−評価基準−
◎: 120℃環境下12時間経過後の引張強さ保持率が、95%以上
○: 120℃環境下12時間経過後の引張強さ保持率が、90%以上95%未満
△: 120℃環境下12時間経過後の引張強さ保持率が、80%以上90%未満
×: 120℃環境下12時間経過後の引張強さ保持率が、80%未満
【0096】
(マスターバッチ組成物を混練した樹脂組成物中のポリフェニレンエーテル(A)の均一分散性及び相溶性)
上記で得られたダンベル状試験片のモルフォロジーを、下記の手順にしたがって評価した。
ウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ社製、ライカEM UC7)を用いて、ダンベル試験片を凍結切削し、超薄切片を作成するための平面を作製した。
続いて、耐熱容器に入れた2質量%四塩化オスミウム水溶液に漬け、ウォーターバスで80℃×30分湯せんした後引き上げ、常温になるまで冷却後耐熱容器から取り出し、水洗、乾燥を行った。
続いて、ウルトラミクロトームを用いて、超薄切片を作製するための平面から厚み85nmの薄膜を凍結切削し、超薄切片を得た。
得られた超薄切片を、透過型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、HT7700)を用いて観察した。
得られたTEM写真の白色部分をポリフェニレンエーテル(A)、黒色部分を熱可塑性エラストマーとして、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング(株)製、A像くん(商品名))を用いて画像解析することにより、白色部分の面積のヒストグラムを求め、均一分散性及び相溶性を下記の評価基準に基づいて評価した。
<均一分散性>
○:50μm以上の径を有するポリフェニレンエーテル(A)凝集体を、全ポリフェニレンエーテル(A)の面積の5%未満含む。
×:50μm以上の径を有するポリフェニレンエーテル(A)凝集体を、全ポリフェニレンエーテル(A)の面積の5%以上含む。
<相溶性>
◎:全ポリフェニレンエーテル(A)の平均分散粒子径が500nm未満である。
○:全ポリフェニレンエーテル(A)の平均分散粒子径が500nm以上1μm未満である。
△:全ポリフェニレンエーテル(A)の平均分散粒子径が1μm以上5μm未満である。
×:全ポリフェニレンエーテル(A)の平均分散粒子径が5μm以上である。
表2に評価結果を示す。
【0097】
【表2】
【0098】
本出願は、2017年6月14日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2017−116679、特願2017−116686)、2017年12月20日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2017−243649、特願2017−243662)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。