(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料において、耐水性および耐油性がともに優れた製品が開発され、化粧持ちが著しく向上している。そのため、メイクアップ化粧料による化粧を落とすに当たっては、メイク(肌上の化粧膜)とのなじみがよく、角質や皮脂などの汚れを除去する性能(汚れ落ち性)に優れた油性クレンジング化粧料が用いられている。油性クレンジング化粧料の具体例としては、クレンジングオイル、ゲル状クレンジング剤、クレンジングクリームなどがあるが、そのうちでも、常温で固形状の油性クレンジング化粧料は、使用時の垂れ落ちがなく、メイクとなじませる際のマッサージがしやすいという特長を有しており、その開発が鋭意進められている。
【0003】
特許文献1には、(a)融点が30〜60℃のワックスと、(b)融点が61〜110℃のワックスと、(c)常温で液状の油分と、(d)粉体成分とを配合することにより、肌の汚れの除去や毛穴に詰まった汚れや黒ずみの除去などの性能に優れたスティック状のクレンジング化粧料が得られることが開示されている。しかし、特許文献1には、肌の汚れの除去性能が評価されているに止まり、メイクアップ化粧料によるメイクをクレンジングすることについては何も開示していない。また、このクレンジング化粧料を水やぬるま湯で洗い流すことについても開示がない。
【0004】
特許文献2には、高融点の固形油、液状油及び非イオン性界面活性剤を併用する油性固形クレンジング化粧料は、使用時にたれ落ちることがなく、滑らかでソフトな使用感を有し、汚れとのなじみ易さと洗い流し後のさっぱり感に優れていることが開示されている。また、特許文献3には、高融点の炭化水素油、エステル油を必須成分として含む液状油、及びHLB値が5〜13のノニオン性界面活性剤を含有する固形状油性クレンジング化粧料は、メイクとのなじみがよく、クレンジング効果に優れ、洗浄後のさっぱり感などの使用感にも優れていることが開示されている。
【0005】
しかしながら、油性固形クレンジング化粧料は、固形油を含む油性剤型であるため洗浄後のさっぱり感においては未だ満足できるものではなく、また、クレンジング性(メイクの落としやすさ)についてもさらなる向上が望まれている。
【0006】
一方、特許文献4には、エチレンプロピレンコポリマーを固形油分として含み、特定のエステル油と煙霧状シリカを含有する油性固形化粧料が開示されており、化粧持ちが良好で、ツヤや使用感に優れていることが開示されている。しかし、その油性固形化粧料はアイクリーム、口紅、リップグロスなどに用いられるものであって、クレンジング剤として使用することについてはなにも開示していない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A:固形油分)
本発明において(A)成分の固形油分は常温(25℃)で固体の油であり、その融点は50〜120℃、好ましくは55℃〜105℃、より好ましくは60〜100℃である。固形油分の融点は、医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定することができる。融点が過度に低い場合は、(B)成分の液状油を均一に固化させることができず、また、油性固形クレンジング化粧料の輸送時や携帯時に振動や衝撃で液状化したり、保形性が悪く固形の形状を維持することができない。逆に、融点が過度に高い場合は、組成物が硬くなりクレンジング化粧料として使用する際に指取れが悪くなるとともに、溶融させる際に高温での操作が必要になるため(B)成分および(C)成分の酸化劣化を引き起こしやすくなる。
【0013】
かかる固形油分としては、具体的には、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン−プロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、オゾケライト、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックスや、モクロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ミツロウ(ビーズワックス)、水添ホホバ油、硬化油、高級アルコール、シリコーンワックス等が挙げられる。
【0014】
これら固形油分の市販品としては、パラフィンワックスである日本精鑞社製のパラフィンワックス135、パラフィンワックス140、パラフィンワックス150、HNP−11;マイクロクリスタリンワックスである日本精鑞社製のHNP−9、Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1070、Hi−Mic−1080、Hi−Mic−1090、HNP−0190、Sonneborn社製のMultiwax W−445;ポリエチレンワックスであるNEW PHASE TECHNOLOGIES社のPERFORMALENE 400、PERFORMALENE 500、PERFORMALENE 655;合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス)であるCIREBELLE社のCIREBELLE 108、CIREBELLE 305;キャンデリラワックスであるセラリカNODA社の精製キャンデリラワックスNO.1、キャンデリラNC1630、横関油脂工業社の精製キャンデリラワックスCG−7、精製キャンデリラワックスSR−3、日本ナチュラルプロダクツ社の精製キャンデリラワックスCG−7、精製キャンデリラワックスSR−3、日本ナチュラルプロダクツ社の高融点キャンデリラワックスFR100等が挙げられる。
【0015】
油性固形クレンジング化粧料は、口紅などのメイクアップ化粧料における油性固形化粧料とは大容量であるという点で大きく異なり、所定の容器に充填する工程において長時間にわたって組成物を溶融状態に維持することが必要である。そのため、固形油分としては、加熱時の酸化に対する安定性に優れたワックスが好ましく、具体的には炭化水素ワックス、とくにポリエチレンワックスおよびフィッシャートロプシュワックスが好ましく使用される。
【0016】
上記(A)成分は単一の化合物を選択して使用してもよいし、また、二種以上の化合物を適宜組み合わせて用いることもできる。(A)成分の含有量は、油性固形化粧料全体に対して1〜30質量%であり、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。(A)成分が過度に少ないと保形性が十分ではなくなるとともに、軟らかすぎて、マッサージ効果が低下する。逆に、過度に多い場合には指取れが悪く、また、使用する際に伸びが悪くマッサージもしにくくなる。剤型がスティック状の油性固形クレンジング化粧料を製造するに当たっては、(A)成分の配合量を化粧料全体に対し5〜30質量%にすることが好ましく、それによって特に良好な保形性を得ることができる。
【0017】
(B:液状油分)
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、肌上のメイクとのなじみ易さや、肌に塗布する際の伸ばし易さの観点から(B)液状油分が用いられる。ここで「液状油分」とは、常温(25℃)で流動性を有する油分及び融点50℃未満の半固形油分を意味し、沸点が260℃未満の揮発性油分も含まれる。
【0018】
本発明で用いられる(B)液状油分は、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、動物油、植物油、合成油のいずれであってもよい。液状油分の具体例としては、トリエチルヘキサノイン、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、ダイマー酸とダイマージオールとのオリゴマーエステル、テトライソステアリン酸ペンタエリトリット、テトライソステアリン酸ジグリセリル、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油等のエステル類; 揮発性イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、重質流動イソパラフィン、流動パラフィン、α − オレフィンオリゴマー、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類; オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類; イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類; オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類; 低重合度ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルトリメチコン、カプリリルトリメチコン、架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン油類; パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類; ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられる。
【0019】
(B)液状油分の含有量は、油性固形化粧料全体に対して50〜
95質量%であることが必要であり、好ましくは55〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%である。(B)成分が過度に少ないとメイクとのなじみが悪くなり、また、伸びが低下してマッサージもし難くなる。逆に、(B)成分が過度に多い場合は、保形性が悪くなりマッサージ効果も低下する。
【0020】
(C:界面活性剤)
本発明においては、(C)成分としてHLB値が5〜13の範囲にある非イオン性界面活性剤が用いられる。ここで「HLB値が5〜13の範囲にある非イオン性界面活性剤」とは、HLB値が5〜13の範囲にある1種の非イオン性界面活性剤であるか、その範囲のHLB値を有する複数の非イオン性界面活性剤の組合せであるか、またはHLB値が異なる2種以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせた結果としてその加重平均のHLB値が5〜13の範囲になる複数の非イオン性界面活性剤の組合せであることを意味する。
【0021】
なお、HLBとは親水性と親油性のバランスを0〜20までの値で示す指標であり、0に近づくほど親油性が高く、20に近づくほど親水性が高いことを示している。HLB値の算出法としては種々の計算法が知られている他、製造元から提供されるカタログなどにその値が記載されている。本明細書においては、非イオン性界面活性剤のHLB値は、非イオン性界面活性剤が市販品である場合には、メーカーカタログ記載のHLB値を採用しており、また、市販品ではない場合には、「界面活性剤便覧」第307頁(産業図書株式会社出版、1960年発行)に記載されているグリフィン(Griffin)の方法(HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量)により算出した数値を採用している。
【0022】
非イオン性界面活性剤のHLB値が5未満の場合は、肌の上でメイクをクレンジング化粧料になじませた後に水またはぬるま湯で洗い流そうとしても、水とのなじみが悪いためにきれいに洗い流すことができず、洗い流し後のさっぱり感が得られない。逆に、HLB値が13を越える場合には、疎水性のメイクをクレンジング化粧料になじませることができず、メイク落ちが不十分となる。なかでも、HLB値が6〜11の範囲にあると、メイク落ちおよび洗い流しやすさが良好である。(C)成分の非イオン性界面活性剤は、固体状、液状のいずれでもよいが、25℃で液状の非イオン性界面活性剤を使用するとメイク落ち及び洗い流しやすさの点でより優れた性能が得られる。
【0023】
(C)成分として用いるHLB値が5〜13の非イオン性界面活性剤、及び組み合わせて用いることによりHLB値が上記範囲に入る非イオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ポリグリセリル−4、オレイン酸ポリグリセリル−2、イソステアリン酸ポリグリセリル−2、ジステアリン酸ポリグリセリル−10などのポリグリセリン脂肪酸エステル; PEG−10水添ヒマシ油、PEG−20水添ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油; ステアリン酸PEG−2、ステアリン酸PEG−5などのポリオキシエチレン脂肪酸エステル; セテス−2、オレス−3、ステアレス−6などのポリオキシエチレンアルキルエーテル; ステアリン酸ステアレス−6、イソステアリン酸ラウレス−8、ステアリン酸ステアレス−12などの脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル; イソステアリン酸PEG−3グリセリル、トリステアリン酸PEG−15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG−5グリセリル、トリイソステアリン酸PEG−10グリセリル、トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル、トリステアリン酸PEG−20グリセリルなどのポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル; イソステアリン酸PEG−15水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG−20水添ヒマシ油などの脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;などが挙げられる。その他にもソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーと長鎖アルコールとのエーテル、ポリブチレングリコールポリグリセリンコポリマーと長鎖アルコールのエーテルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルが、メイク落ち及び洗い流しやすさの観点から好ましく用いられる。
【0024】
(C)成分として用いる非イオン性界面活性剤が分子中に脂肪酸残基を有する場合、その脂肪酸残基としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などのような炭素数10〜22の高級脂肪酸の残基であることが好ましく、中でも非イオン性界面活性剤の性状が液状となり、耐酸化安定性に優れる分岐高級脂肪酸の残基であることが好ましく、特にイソステアリン酸残基が好ましい。
【0025】
(C)成分として用いる液状の非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、エマレックスRWIS−320(トリイソステアリン酸PEG−20水添ヒマシ油;日本エマルジョン社製;HLB 6) 、エマレックスGWIS−305( トリイソステアリン酸PEG−5グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB 3)、ユニオックスGT-20IS(トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル;日油社製;HLB 10.4)等があり、また、25℃で固体状の市販品としては、例えば、エマレックスGWS−320(トリステアリン酸PEG−20グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB8)、エマレックスSWS−12(ステアリン酸ステアレス−12;日本エマルジョン社製;HLB8)、エマレックス608(ステアレス−8;日本エマルジョン社製;HLB 9)等がある。
【0026】
(C)成分の使用量は、全組成中に3〜40質量%、好ましくは4〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、とくに好ましくは7〜25質量%である。この量が過度に少ない場合はメイク落ち及び洗い流しやすさが低下し、過度に多い場合は皮膚への刺激が懸念される。
【0027】
(D:粉体状モロッコ溶岩クレイ)
本発明においては、上記(A)〜(C)成分に加えて、粉体成分として(D)粉体状モロッコ溶岩クレイが用いられる。モロッコ溶岩クレイは、モロッコで産出されるスメクタイトに分類される粘土であり、その体積平均粒子径は、通常、10〜30μmであり、薄い暗緑色を呈する物質である。モロッコ溶岩クレイは、古くから泥パック等のクレイセラピーに用いられる素材として知られており、肌の汚れに対する高い吸着力と成分中に含まれるミネラル分の肌に対する効果が期待されている。かかるモロッコ溶岩クレイは、ガッスールMの商品名でガッスール ジャパン・ジャミーラ社から市販されている。
【0028】
(D)成分の配合量は、全化粧料に対して0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。この範囲で(D)成分を含むと、メイク落ちとマッサージ効果が改善され、且つ、洗い流し後のさっぱり感が向上する。また、本発明のおいては、粉体成分としてモロッコ溶岩クレイを単独で使用してもよいが、所望によりモロッコ溶岩クレイの一部を他の粉体で代替することもできる。
【0029】
(D)成分の一部を代替可能な他の粉体は、通常、化粧料に配合されるものであればとくに限定されるものではなく、体積平均粒子径として1〜200μmを有するものであれば、その材質(有機、無機等)、形状(球状、針状、板状等)や粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わずいずれのものも使用することができる。なかでも、粉体が多孔質であったり、比表面積が大きいものはメイク汚れを吸着する性能に優れているので、好ましく用いられる。ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置(例えば堀場製作所製LA−950)を用い、且つ、95容量%のエタノールを溶媒として5分間超音波分散処理した試料を用いて測定されるものであり、1次粒子径を指すものではない。なお、超音波分散処理は、超音波洗浄機W−113(本多電子社製)を用いて振動数28kHzで行われる。
【0030】
そのような他の粉体としては、たとえば、タルク、白雲母、合成雲母、金雲母、合成フッ素金雲母、セリサイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、天然クレイ、海泥、活性白土等の粘土鉱物; ケイ酸、無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、ヒドロキシアパタイト等の無機酸化物または塩; シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、シルク粉末、PMMA粉末、スターチ、ポリエチレン粉末、ラウロイルリシン、金属セッケン、植物粉末(アンズ核粒、クルミ核粒、グルコマンナン粉体等)等の有機粉体; 活性炭、薬用炭、竹炭等の炭粉体;およびこれらの複合体や造粒物を例示することができる。
【0031】
これらの中でも粘土鉱物、炭粉末が、メイク落ち、洗い流し後のさっぱり感に優れ、好ましく用いられる。粘土鉱物である天然クレイ及び海泥は、カオリン、モンモリロナイト、マイカ等の混合物で、産出地や種類、色毎に効能が標榜されているものがあり、クレイセラピーにも用いられることから、使用者の満足感をより高めることができる。このような天然クレイおよび海泥の具体例としては、タナクラクレイ、パラオ白泥、ブラジル産のSparclay(商品名)およびTersil(商品名)、フランス産のClargile(商品名)等を挙げることができる。
【0032】
(D)成分の一部を他の粉体で置換する場合、全粉体成分中の(D)成分の割合は30質量%以上、好ましくは40〜95質量%、さらに好ましくは50〜90質量%である。モロッコ溶岩クレイの一部を他の粉体で置換すること、すなわち、モロッコ溶岩クレイと他の粉体を併用するにより、メイク落ちやさっぱり感の度合いを適宜調整することができ、とくに産地や種類毎に様々な効果が標ぼうされている天然クレイなどの粘土鉱物を併用する場合には、モロッコ溶岩クレイに期待される肌への効果に加えて、他の粘土鉱物由来の特性を得ることができる。
【0033】
本発明においては、さらに(E)成分として煙霧状シリカを含有する。固形油分を含む配合物でクレンジング化粧料を製造するには、均一に混合された溶融状態にある配合物を所定の容器に充填した後、冷却して固化する工程が必要である。(D)成分のモロッコ溶岩クレイを含む配合物の場合、容器に充填された配合物が速やかに固化すれば粉体の分散状態を均一に保つことができる。たとえば、口紅のようなメイクアップ化粧料は、一般的に製品の重量が数グラムであるため充填から固化までが極めて短時間であり、配合物中に含まれているモロッコ溶岩クレイの分散性が損なわれるリスクは少ない。しかし、クレンジング化粧料の場合は、製品当たりの重量が100グラム程度またはそれを超えるものが一般的であるため、配合物を充填した容器を外側から冷風等で冷却しても固化までの所要時間が長く、その間にモロッコ溶岩クレイの沈降を起こすことがある。粉体成分が沈降すると、粉体成分の分散が不均一になり、化粧料の上下方向に粉体成分の含有率の偏りが発生する。その結果として、化粧料の外観が損なわれるとともに、品質の安定性も損なわれることになる。
【0034】
(E)成分の配合量は、全化粧料に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。また、(D)成分のモロッコ溶岩クレイに対する(E)成分の質量比〔(E)/(D)〕は、0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5である。(E)成分の配合量が上記の範囲であると、化粧材中に含まれる(D)成分の分散状態が向上し、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができる。
【0035】
(E)成分の煙霧状シリカはフュームドシリカとも称される微細な非晶質のシリカであり、外観はふわふわとした軽い白色の粉末である。煙霧状シリカは、例えば、四塩化ケイ素のような原料を酸水素炎中で高温加水分解して得ることができる。煙霧状シリカの比表面積は、好ましくは30m2/g以上であり、さらに好ましくは50〜400m2/gであり、とくに好ましくは、100〜400m2/gである。比表面積が過度に小さい場合は、クレンジング化粧料の製造工程において配合物を溶融充填する際に(D)成分の沈降を効果的に抑制することができない。
【0036】
また、これらの煙霧状シリカの一次粒子径は50nm以下が好ましく、20nm以下が特に好ましい。一次粒子径は、電子顕微鏡写真により測定した3,000〜5,000個の粒子の平均値として求めることができる。(E)成分は親水性を示す未処理の煙霧状シリカであっても、疎水化処理を施した煙霧状シリカであってもよい。疎水化処理の具体例としてはジメチルジクロロシラン処理、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、ジメチルシリコーンオイル処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。これらの煙霧状シリカのなかでも、洗い流しやすさの観点から未処理のものが好ましく用いられる。
【0037】
(E)成分の市販品としては、未処理の煙霧状シリカとしてAEROSIL 50、AEROSIL 130、AEROSIL 200、AEROSIL 200V、AEROSIL 200CF、AEROSIL 200FAD、AEROSIL 300、AEROSIL 300CF、AEROSIL 380、AEROSIL 380S(以上、日本アエロジル社製)等;疎水化処理したものとして、AEROSIL R972、AEROSIL R972V、AEROSIL R972CF、AEROSIL R974、AEROSIL R976S、AEROSIL RX200、AEROSIL RX300、AEROSIL RY200、AEROSIL R202、AEROSIL R805、AEROSIL R812、AEROSIL RA200H(以上、日本アエロジル社製)、CAB−O−SIL TS530(キャボット社製)等が挙げられる。
【0038】
本発明の油性固形クレンジング化粧料においては、(F)成分として少量の水を含んでいてもよい。水の含有量は化粧料全体の5質量%以下であることが好ましく、その範囲であれば(C)成分の非イオン性界面活性剤と水とが可溶化状態、すなわち、分散媒として油性成分が存在し、(C)成分と水が逆ミセルとなった状態を形成する。その結果、(C)成分の非イオン性界面活性剤が(A)成分および(B)成分で形成する油剤に溶解し易くなり、長期間の保存においても(C)成分の分離や析出が起こらず、保存安定性が向上する。とくに、水の含有量が0.1〜3質量%のときに、その効果は顕著である。
【0039】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、(D)成分以外の粉体、染料、油性ゲル化剤、油溶性樹脂、多価アルコール類、低級アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、各種エキス等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0040】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、常温(25℃)、常圧(1気圧)で流動性を示さないものであり、その形状はとくに限定されない。形状の具体例としては、スティック状、棒状、板状、容器への流し込み成形したものなどが挙げられる。これら各種のクレンジング化粧料は、常法にしたがって調製することができる。たとえば、全原料を融点以上に加熱し、均一に混合した後、溶融状態のままジャー容器などの所定の容器や金皿または樹脂皿などに流し込み、冷却または放冷し、油性固形クレンジング化粧料とすることができる。また、スティック容器に充填してスティック状とすることができる。
【0041】
本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイク落としの機能に加えて、マッサージ化粧料に求められる特性、すなわち、適度な粘性と滑り性および滑り性の持続性を備えている。そのため、本発明の油性固形クレンジング化粧料とは別に、マッサージ化粧料としても使用することができる。本発明の油性固形クレンジング化粧料を使用するに際しては、メイクに化粧料をなじませた後、水またはぬるま湯で洗い流すことによってメイクを除去することができる。そのため、従来の油性固形クレンジング化粧料を使用する際には、使用後に必要と考えられていたセッケンなどの洗顔料による洗顔操作を省くことが可能である。もちろん、メイクをしていない皮膚に蓄積した皮脂などの汚れを除去するクレンジング剤として使用することもできる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する質量%である。
また、以下の実施例および比較例における本発明の油性固形クレンジング化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
【0043】
(メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感)
化粧経験のある女性評価パネル10名が市販のパウダーファンデーション(セザンヌ化粧品社製、セザンヌ UVファンデーションEX プラス)を肌に塗布した後、評価用のサンプルでクレンジングを行い、各項目について下記(1)に示す評価基準に基づき1〜5点の5段階で評点を付けた。評価者10名の評点の平均値を算出し、下記(2)に示す4段階判定基準によりクレンジング化粧料としての性能を判定した。
【0044】
(1)評価基準
5点:良い
4点:やや良い
3点:どちらとも言えない
2点:やや悪い
1点:悪い
【0045】
(2)4段階判定基準
◎:平均点が4〜5点
○:平均点が3点以上、4点未満
△:平均点が2点以上、3点未満
×:平均点が2点未満
【0046】
(粉体の沈降の状態)
評価用のサンプル150gを80℃で溶解し、70℃の温度になったところで、内容量250mLの紙コップに流し込み、室温(25℃)で1時間放冷固化後、内容物を紙コップごとカッターナイフで垂直に切断し、その断面を観察し、粉体の沈降状態および色別れの有無について、下記の評価基準にしたがって評価した。
【0047】
(評価基準)
◎:粉体が均一に分散しており沈降がみられない。
○:断面の上から1/5以上の層で粉体が少ない部分がある。
△:断面の上から1/5以上の層では粉体が観察されない。
×:断面の上から1/3以上の層では粉体が観察されない。
【0048】
(色別れの状態)
◎:全面にわたって色調が同じであり、色別れが観察されない。
○:断面の上から1/5以上の層でやや色調が異なる部分が観察される。
△:断面の上から1/5以上の層では色調が異なる部分が観察される。
×:断面の上から1/3以上の層では色調が異なる部分が観察される。
【0049】
実施例1〜2及び比較例1〜3
(油性固形クレンジング化粧料)
表1に示す処方の油性固形クレンジング化粧料を下記の製造手順に従って調製した。これらの処方においては、(C)成分としてHLB値が異なる2種の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用しており、その組み合わせの加重平均によるHLB値は8.6であった。得られた油性固形クレンジング化粧料について、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感、粉体の沈降の状態および色別れの状態を上記の方法により評価した。評価結果は表1に示すとおりである。
【0050】
(製造手順)
(1)表1に示す1〜7の成分を約90℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で調製した混合液に、8〜13の成分を添加し、90℃で均一に混合する。
(3)上記(2)で調製した混合液を、溶融状態のまま70℃でジャー容器に充填した後、放冷して油性固形クレンジング化粧料とする。
【0051】
【0052】
※1:商品名 PERFORMALENE500(ニューフェーズテクノロジー社)
※2:商品名 ユニオックスGT20−IS(日油社)
※3:商品名 エマレックスGWIS−305(日本エマルジョン社)
※4:商品名 レオパールKL2(千葉製粉社製)
※5:商品名 ガッスールM(ガッスール ジャパン・ジャミーラ社製、色調:暗緑色、体積平均粒子径:20μm
※6:商品名 カオリンJP−100(竹原化学工業社製、色調:白色、体積平均粒子径:11μm)
※7:商品名 AEROSIL 200(日本アエロジル社製)
※8:商品名 AEROSIL RY200(日本アエロジル社製)
【0053】
表1の結果から、本発明の油性固形クレンジング化粧料は、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感といったクレンジング化粧料としての性能に優れるとともに、粉体の沈降、色別れがないことから品質的に優れるものであることがわかった(実施例1および2)。とくに、(E)成分の煙霧状シリカとして親水性の未処理のシリカを配合した化粧料は、洗い流しやすさと洗い流し後のさっぱり感が一段と良好であった。これに対し、(D)成分のモロッコ溶岩クレイを含まない場合は、メイク落ち、さっぱり感の性能が不足し(比較例1)、(E)成分の煙霧状シリカを含まない場合は、粉体の沈降が顕著で均一な製品とすることができなかった(比較例2)。また、煙霧状シリカの代わりに油相増粘剤として公知のパルミチン酸デキストリンを用いる場合には、粉体の沈降防止が不十分であり、洗い流しやすさ、さっぱり感にも劣るものであった(比較例3)。
【0054】
実施例3〜4
(油性固形クレンジング化粧料)
表2に示す処方の油性固形クレンジング化粧料を下記の製造手順に従って調製し、メイク落ちの良さ、洗い流しやすさ、洗い流し後のさっぱり感、粉体の沈降の状態、色別れの状況について上記の方法により評価を行った。評価結果は表2に示すとおりである。
【0055】
(製造手順)
(1)表2に示す1〜6の成分を約90℃に加熱し、均一に混合する。
(2)上記(1)で調製した混合液に、7〜12の成分を添加し、90℃で均一に混合する。
(3)上記(2)で調製した混合液を、溶融状態のまま70℃でジャー容器に充填した後、放冷して油性固形クレンジング化粧料とする。
【0056】
【表2】
【0057】
※9:商品名 SPARCLAY SDR(Terramatter社製、色調:ダークレッド、体積平均粒子径:16μm)
【0058】
表2の結果から、本発明の油性固形クレンジング化粧料は、クレンジング性能に優れるとともに、粉体の沈降がなく品質的に優れていることがわかる。また、モロッコ溶岩クレイと色調の鮮やかな天然クレイを組み合わせて使用する場合でも、色別れのない商品価値の高い油性固形クレンジング化粧料が得られることがわかる(実施例4)。