(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2の計測装置では、圧力センサとして、円板状ピエゾ素子の片面に半球状のシリコンゴム製押圧部材を貼り合わせたものを用いている。しかし、このようなセンサは、衣服に比べて剛性が高く、そのようなセンサが取り付けられた衣服は着用者に異物感を感じさせる問題がある。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、衣服の素材として常用される織物を圧力センサとして機能させることにより、衣服に感圧機能を持たせても、衣服の着用者に異物感を感じさせないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の体圧計測ウェアは、導電性を備える導電糸を、経糸と緯糸とした導電性織物を備え、この導電性織物は、その厚さ方向に対向配置された前記経糸と緯糸とが、厚さ方向に加えられる圧力を受けたとき、前記対向配置された経糸と緯糸との間隔が変化する状態で構成されており、体の表面に外部から加えられる圧力を計測される被検体が着用可能な衣服が前記導電性織物を用いて形成されて成り、前記対向配置された経糸と緯糸との間の静電容量の変化に基づいて、前記衣服を介して被検体に加えられる圧力を検出する。
【0008】
第1発明において、衣服は、裁断された導電性織物を組み合わせて形成することができる。また、衣服は、非導電性の布により形成され、その布の一部に前記導電性織物が取り付けられて形成することができる。なお、本発明において衣服の形態は問わない。
【0009】
第1発明において、導電性織物は、導電糸を経糸と緯糸として平織された1枚の織物により構成することができる。また、導電性織物は、絶縁糸を経糸とし、導電糸を緯糸として平織された1枚の第1織物と、導電糸を経糸とし、絶縁糸を緯糸として平織された1枚の第2織物とを、両織物の導電糸同士が互いに交叉するように面合せに重ね合わせて一体化されたものにより構成することができる。更に、導電性織物は、導電糸を経糸と緯糸として平織された2枚の織物を、面合せに重ね合わせて一体化されたものにより構成することができる。更にまた、導電性織物は、その他の構成を採用することもできる。なお、導電糸には、それに平行して絶縁糸を適宜混ぜることができる。
【0010】
第1発明によれば、導電性織物の厚さ方向に対向配置された経糸と緯糸との間の静電容量を計測することにより、導電性織物を用いて形成された衣服を着た被検体の体の表面に加えられる圧力を計測することができる。衣服上の各部位に加えられる圧力は、その部位に対応する経糸と緯糸の静電容量変化を検出することにより、その部位を特定して計測することができる。導電性織物は、導電糸を経糸と緯糸として含むが、衣服の素材として常用される織物と変わらない風合いと柔軟性を備える。そのため、第1発明によれば、衣服に圧力機能を持たせても、衣服の着用者に異物感を感じさせないようにすることができる。
【0011】
第2発明の体圧計測ウェアは、上記第1発明において、前記導電性織物は、前記衣服を着た被検体の前記圧力を計測されるべき部位に設けられており、前記衣服におけるその他の部位は、被検体の自由な動きを容易にする伸縮構造を備える。
【0012】
第2発明において、伸縮構造は、布自体が伸縮する構造を備えた伸縮素材を使用して構成することができる。例えば、ストレッチ織物、ニット素材等を用いることができる。また、伸縮構造は、プリーツを備える構成としてもよい。
【0013】
第2発明によれば、圧力を計測されるべき部位以外の部位に伸縮構造を備える。そのため、被検体の体の動きに応じて伸縮構造が伸縮動作を行う。従って、導電性織物を備えた衣服が被検体の体の動きを妨げないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態における上衣の後身頃を示す図である。
【
図2】第1実施形態におけるパンツの前身頃を示す図である。
【
図3】第1実施形態におけるパンツの後身頃を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態における上衣の前身頃を示す図である。
【
図5】第2実施形態における上衣の後身頃を示す図である。
【
図6】第2実施形態におけるパンツの前身頃を示す図である。
【
図7】第2実施形態におけるパンツの後身頃を示す図である。
【
図8】本発明の第3実施形態における上衣の前身頃を示す図である。
【
図9】第3実施形態における上衣の後身頃を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態における上衣の前身頃を示す図である。
【
図11】第4実施形態における上衣の後身頃を示す図である。
【
図12】第4実施形態におけるパンツの前身頃を示す図である。
【
図13】第4実施形態におけるパンツの後身頃を示す図である。
【
図14】各実施形態における導電性織物の第1例の構造を説明する図である。
【
図15】上記第1例の導電性織物を使用した圧力センサとしての構成を説明する図である。
【
図16】各実施形態における導電性織物の第2例の構造を説明する図である。
【
図17】上記第2例の導電性織物の組立状態を示す平面説明図である。
【
図18】各実施形態における導電性織物の第3例の構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜3は本発明の第1実施形態を示す。この実施形態は、体圧を計測される被検体としての被介護者が着用する衣服100を長袖のブラウス型とした例を示す。この場合、衣服100は上衣(
図1参照)とパンツ(
図2、3参照)とより成り、どちらも全体が伸縮素材であるニット材80にて形成されている。そして、被介護者の体において外部から加えられる圧力を計測すべき部位に対応して圧力センサとしての導電性織物10が配置されて縫製され、ニット材80と一体化されている。導電性織物10が配置された部位は、ニット材80上に導電性織物10が重ねられた構成としてもよいし、導電性織物10に対応する部位のニット材80は除去し導電性織物10のみの構成とされてもよい。
【0016】
上衣において、導電性織物10は、
図1のように、被介護者の背中上部の左右に対応する部位10aと、腰から臀部にかけての左右に対応する部位10bにそれぞれ設けられている。また、被介護者の左右の肘に対応する部位10cにも設けられている。各導電性織物10は、後述のように複数の導電糸を含んで構成されており、各導電糸は、各導電性織物10毎にまとめられて肩口に設けられた検出回路30aに電気接続されている。検出回路30aの設置場所は、被介護者の動作に影響を与えない場所として肩口が選択されているが、同様の趣旨で他の場所を選択することもできる。検出回路30aの設置方法としては、例えば、肩上部にポケットを設けて収納することができる。このとき、回路を衝撃から保護するため、綿や不織布をポケットに取り付けてもよい。また、ボタンなどに回路を埋め込むこともできる。
【0017】
導電性織物10と検出回路30aとの電気接続は、導電性織物10に含まれる導電糸と同様の導電糸90によって構成され、ニット材80表面に縫製又は接着して固定されている。ニット材80は伸縮素材であるのに対し、導電糸90は伸縮性を備えないため、導電糸90はニット材80が伸縮するのを妨げないように余長を持って固定されている。例えば、導電糸90をジグザグ状に配置して、ニット材80の伸縮時に導電糸90のジグザグ部分の角度が変化することによって、ニット材80が伸縮するのを妨げないようにすることができる。
【0018】
また、配線用の糸(導電糸90)は、糸状のゴムなどの伸縮素材に銀メッキ糸などの導電性繊維を巻きつけた糸を用いることができる。配線手段としては、ミシンによる本縫い、偏平縫い、千鳥縫いなどによる縫製や刺繍、更に、熱溶着、粘着剤や接着剤による接着を用いることができる。固定方法や縫い方はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0019】
パンツにおいて、導電性織物10は、
図2のように、被介護者の左右の膝及びその周辺に対応する部位10dにそれぞれ設けられている。また、
図3のように、被介護者の臀部の左右に対応する部位10eと、左右の大腿部の裏側に対応する部位10fと、左右の脹脛に対応する部位10gにも設けられている。各導電性織物10の構造、並びに検出回路30bへの電気接続の構造は、上衣の場合と同様であり、パンツの場合の検出回路30bは、腰ベルト部分に設けられている。検出回路30bの設置場所は、被介護者の動作に影響を与えない場所として腰ベルト部分が選択されており、同様の趣旨で他の場所を選択することもできる。
【0020】
上衣及びパンツの各検出回路30a、30bにおける検出結果は、各検出回路30a、30bに設けられたメモリ(不図示)に記録されるようにされている。メモリの記録内容は、適宜取り出してパソコン、スマートフォン、タブレット端末等の解析装置(不図示)に取り込んで被介護者の体の表面に加えられた圧力の状態が解析される。各検出回路30a、30bにおける検出結果は、メモリに記録するのに代えて、ブルーツース(登録商標)等の無線通信により解析装置に直接送信するようにしてもよい。
【0021】
図4〜7は本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、被介護者が着用する衣服100を比較的体にフィットし易い半袖のアンダーウェア型とした点である。また、上衣における導電性織物10の配置も変更されている。具体的には、第2実施形態において、上衣の導電性織物10は、
図4のように、被介護者の胸から下腹部にかけての広範囲の部位10hに設けられている。また、
図5のように、被介護者の背中から腰、臀部にかけての広範囲の部位10iに設けられている。第2実施形態におけるその他の構成は、第1実施形態の場合と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0022】
図8、9は本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態が第2実施形態に対して特徴とする点は、上衣における導電性織物10の配置を変更した点である。具体的には、第3実施形態において、上衣の導電性織物10は、
図8のように、被介護者の胸の左右に対応する部位10jと、腹部の左右に対応する部位10kにそれぞれ設けられている。また、
図9のように、被介護者の背中から腰にかけての左右に対応する部位10lと、腰から臀部にかけての左右に対応する部位10mに設けられている。第3実施形態におけるその他の構成は、第2実施形態の場合と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0023】
図10〜13は本発明の第4実施形態を示す。第4実施形態が第2実施形態(
図4〜7参照)に対して特徴とする点は、被介護者が着用する上衣を長袖とした点である。また、上衣及びパンツにおける導電性織物10の配置も変更されている。具体的には、第4実施形態において、上衣の導電性織物10は、
図10、11のように、被介護者の左右の両肩から各上腕部にかけての部位10nと、左右の肩甲骨周辺の部位10pと、左右の両脇腹から腰部両側にかけての部位10oと、左右の肘に対応する部位10cとにそれぞれ設けられている。
【0024】
パンツの導電性織物10は、
図12、13のように、被介護者の腰部の左右両側から臀部の左右両側及び腰部の背面側にかけての部位10qと、左右両側の膝から脛周辺にかけての部位10rとに設けられている。第4実施形態におけるその他の構成は、第2実施形態の場合と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0025】
上記衣服100は、通常の縫製の手順によって次のように構成できる。即ち、(1)生地の裁断、(2)縫製、(3)配線の取り付け、(4)センサと配線の接続、(5)配線と回路の接続。なお、必要に応じて配線部をラバーシートや高分子フィルムなどで被覆して外力からの保護を図るようにしてもよい。また、衣服100は、上衣とパンツに分けた構成ではなく、つなぎタイプであってもよい。
【0026】
次に導電性織物10の構成例を説明する。
【0027】
図14、15は導電性織物10の第1例を示す。第1例の導電性織物10は、第1織物20と第2織物22とを面合せに重ね合わせて絶縁糸(不図示)により結合して一体化されている。第1織物20は、絶縁糸を経糸とし、導電糸及び絶縁糸を緯糸として平織されている。第2織物22は、導電糸及び絶縁糸を経糸とし、絶縁糸を緯糸として平織されている。ここで、第1織物20の緯糸、及び第2織物22の経糸は、複数本の導電糸を平行に並べた導電糸域20a、22aと、複数本の絶縁糸を平行に並べた絶縁糸域20b、22bとが、平行に交互に並べられて構成されている。
【0028】
図示を省略したが、導電糸は、導電性繊維の芯糸を絶縁性の鞘糸で被って構成されている。具体的には、導電糸として、芯糸に日本蚕毛染色製のサンダーロン糸(167T/60、2本撚り)、鞘糸にポリエステル糸(150T/48)を使用したカバリング糸を使用している。そして、絶縁糸としては、ポリエステル糸(縦糸20/2、横糸60/2)を使用している。
【0029】
なお、絶縁糸については、ナイロン、レーヨン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等の合成繊維を用いても良く、天然繊維のウールを用いても良い。また、導電糸の芯糸については、銅、アルミ、鉄、ステンレス、ニクロム、金、銀、チタンニッケル合金等の金属繊維、PAN系、ピッチ系の炭素繊維を用いても良い。若しくは、絶縁糸に使用するポリエステル、ナイロン、レーヨン等の樹脂に導電成分としてカーボン、グラファイト、カーボンナノチューブ等を混練後に紡糸した糸を用いることもできる。更には、絶縁糸の表面に導電成分として銅、アルミ、銀、金等を金属メッキ手法により被覆した糸を用いることもできる。
【0030】
第1織物20と第2織物22とが一体化された状態では、
図15のように、第1織物20と第2織物22の各導電糸域20a、22aが互いに交叉して織物の厚さ方向に重なっている。このように各導電糸域20a、22aが互いに交叉した領域(以下、セルという)24は、織物の厚さ方向に対向する導電糸がそれぞれ電極となって電気的にはコンデンサを構成する。両織物20、22は、セル24以外の領域において一般的な絶縁糸で結束されて結合されている。そのため、導電性織物10上に市松模様に形成される各セル24は、織物の厚さ方向の圧力を受けると、互いに対向する導電糸域20a、22a同士の間隔が変化してコンデンサとしての静電容量が変化することになる。
【0031】
各セル24の静電容量の変化を検出して、導電性織物10に加えられる圧力を計測するため、
図15のように、第2織物22の各導電糸域22a内の各導電糸には、互いに異なる周期信号を印加する発振器40、42、44がそれぞれ接続されている。また、第1織物20の各導電糸域20a内の各導電糸には、各導電糸からの信号を分離した状態で取り出すマルチプレクサ32が接続されている。マルチプレクサ32には、各導電糸から取り出した信号と発振器40、42、44から印加した周期信号との信号差を検出する信号差検出回路34が接続されている。そして信号差検出回路34は、周期信号を基準信号として取り込むために、各発振器40、42、44に接続されるとともに、加圧されたセル24を識別するための信号処理回路36に接続されている。なお、第1織物20の各導電糸域20a内の各導電糸とマルチプレクサ32との間にチャージポンプを設置し、信号を増幅して検出してもよい。
【0032】
いずれかのセル24が加圧されて、そのセル24の静電容量が変化すると、そのセル24に印加されている周期信号の位相及び振幅が変化する。そこで、信号差検出回路34において、セル24から取り出した周期信号の位相あるいは振幅の、印加信号との差を調べることで静電容量の変化を生じたセル24を知ることができる。信号処理回路36では、信号差検出回路34からの出力に基づいて、導電性織物10上で圧力を加えられた位置を特定することができる。なお、周期信号として矩形波を用い、その振幅の変化により静電容量の変化したセル24を検出してもよい。
【0033】
図16、17は導電性織物の第2例を示す。第2例の導電性織物50が第1例の導電性織物10に対して相違する点は、第1織物60と第2織物62は互いに同一構成で、各織物60、62において各導電糸域60a、60c並びに62a、62cが互いに交叉した領域64並びに66が形成されている点である。第2例の導電性織物50におけるその他の構成は、第1例の導電性織物10の場合と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0034】
第2例の導電性織物50においては、第1織物60と第2織物62とが重ね合わされるとき、各導電糸域60a、60c並びに62a、62cの互いに交叉した領域64と領域66とが織物の厚さ方向に対向されている。そのため、その部分がセルとなり、コンデンサが構成される。なお、
図16において、60b及び60d、並びに62b及び62dは導電性織物50の絶縁糸域を示す。
【0035】
図18は導電性織物の第3例を示す。第3例の導電性織物70が第2例の導電性織物50に対して相違する点は、第2例の導電性織物50における第1織物60、第2織物62と同一構造の織物一枚のみで、導電性織物70が形成されている点である。第3例の導電性織物70におけるその他の構成は、第2例の導電性織物50の場合と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0036】
従って、第3例の導電性織物70では、一枚の織物における経糸の導電糸域70aと緯糸の導電糸域70cとが互いに交叉する領域74においてコンデンサが構成されている。ここでは、経糸の導電糸と緯糸の導電糸とがそれぞれコンデンサの電極とされる。なお、
図18において、70b及び70dは導電性織物70の絶縁糸域を示す。
【0037】
以上の各実施形態によれば、導電性織物10、50、70の厚さ方向に対向配置された経糸と緯糸との間の静電容量を計測することにより、導電性織物10、50、70を用いて形成された衣服100を着た被検体の体の表面に加えられる圧力を計測することができる。衣服100上の各部位に加えられる圧力は、その部位に対応する経糸と緯糸の静電容量変化を検出することにより、その部位を特定して計測することができる。導電性織物10、50、70は、導電糸を経糸と緯糸として含むが、衣服100の素材として常用される織物と変わらない風合いと柔軟性を備える。そのため、各実施形態によれば、衣服100に感圧機能を持たせても、衣服100の着用者の体の動きを妨げないようにすることができ、しかも、衣服100の着用者に異物感を感じさせないようにすることができる。
【0038】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のような変形例が考えられる。
【0039】
1.導電性織物10、50、70としては、各種構造の織物を採用でき、織物の織り方についても、平織に限らず、綾織、朱子織など各種のものが採用できる。
【0040】
2.第1例及び第2例の導電性織物50、70では、織物が2枚重ねられた2重織としたが、3重織、4重織のような多重織とすることもできる。
【0041】
3.導電性織物における導電糸域の幅は、第1織物と第2織物とで異なったものでもよい。
【0042】
4.第2例の導電性織物50、70では、第1織物は導電糸域と絶縁糸域とが格子状を成し、第2織物は絶縁糸域に対する導電糸域がボーダー柄、若しくはストライプ柄を成すものとされてもよい。