(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの幅を拡大する前記工程よりも前に、前記第1トレンチと前記第2トレンチの側面にp型不純物を注入することによって、前記第1トレンチの側面に沿って伸びている第1接続p型領域と前記第2トレンチの側面に沿って伸びている第2接続p型領域を形成する工程と、
前記第1トレンチと前記第2トレンチの底面にp型不純物を注入することによって、前記第1トレンチの底面に露出する第1底部p型領域と前記第2トレンチの底面に露出する第2底部p型領域を形成する工程、
をさらに有しており、
前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの幅を拡大する前記工程では、前記エッチング領域内の前記第1接続p型領域と前記第2接続p型領域をエッチングにより除去し、
製造される前記スイッチング素子において、
前記ボディ領域と前記下部n型領域が、前記幅広部から前記幅狭部まで伸びており、
前記第1接続p型領域が、前記幅広部内で前記ボディ領域と前記第1底部p型領域の間を接続しており、
前記第2接続p型領域が、前記幅広部内で前記ボディ領域と前記第2底部p型領域の間を接続している、
ことを特徴とする請求項3の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜3に示す実施形態のスイッチング素子10は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。スイッチング素子10は、半導体基板12と、電極、絶縁層等を備えている。なお、
図1では、図の見易さのため、半導体基板12の上面12a上の電極、絶縁層の図示を省略している。以下では、半導体基板12の上面12aと平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行でx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12は、SiC(炭化シリコン)を主材料とするSiC基板である。
【0013】
半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ22が設けられている。
図1に示すように、各トレンチ22は、上面12aにおいてy方向に長く伸びている。複数のトレンチ22は、x方向に間隔を開けて配列されている。各トレンチ22は、x方向における幅が狭い部分22aと、x方向における幅が広い部分22bを有している。各トレンチ22において、幅が狭い部分22aと幅が広い部分22bとがy方向に沿って交互に配置されている。
図2に示すように、幅が狭い部分22aでは、トレンチ22の上端から下端までトレンチ22の幅が狭い。
図3に示すように、幅が広い部分22bでは、トレンチ22の上端から下端までトレンチ22の幅が広い。
図1に示すように、トレンチ22の間で、幅が狭い部分22a同士のy方向の位置が略一致しており、幅が広い部分22b同士のy方向の位置が略一致している。このため、各トレンチ22の幅が狭い部分22a同士の間の間隔が広く、各トレンチ22の幅が広い部分22b同士の間の間隔が狭い。以下では、隣接するトレンチ22の間の間隔が広い部分(トレンチ22の幅が狭い部分22aに挟まれた部分)の半導体層を、幅広部20aという。また、以下では、隣接するトレンチ22の間の間隔が狭い部分(トレンチ22の幅が広い部分22bに挟まれた部分)の半導体層を、幅狭部20bという。各トレンチ22の間において、複数の幅広部20aと複数の幅狭部20bが、y方向(すなわち、各トレンチ22の長手方向)に沿って交互に配置されている。
【0014】
図2、3に示すように、各トレンチ22の内面は、ゲート絶縁層24によって覆われている。ゲート絶縁層24は、底部絶縁層24aと側面絶縁層24bを有している。底部絶縁層24aは、トレンチ22の底部に設けられている。底部絶縁層24aは、トレンチ22の底面と、その底面近傍のトレンチ22の側面を覆っている。側面絶縁層24bは、底部絶縁層24aよりも上側のトレンチ22の側面を覆っている。底部絶縁層24aの厚みは、側面絶縁層24bの厚みよりも厚い。各トレンチ22内には、ゲート電極26が配置されている。各ゲート電極26は、ゲート絶縁層24によって半導体基板12から絶縁されている。側面絶縁層24bの厚みは、位置によらず略一定である。このため、ゲート電極26の幅は、トレンチ22の幅が広い部分22b内で、トレンチ22の幅が狭い部分22a内よりも広い。
【0015】
図2、3に示すように、半導体基板12の上面12aには、層間絶縁層28が配置されている。層間絶縁層28は、各ゲート電極26の上面を覆っている。また、層間絶縁層28は、幅狭部20b内の半導体基板12の上面12a全体を覆っている。幅広部20a上の層間絶縁層28には、コンタクトホール28aが設けられている。幅狭部20b上の層間絶縁層28には、コンタクトホール28aが設けられていない。
【0016】
図2、3に示すように、層間絶縁層28上に上部電極70が配置されている。上部電極70は、層間絶縁層28によって各ゲート電極26から絶縁されている。上部電極70は、コンタクトホール28a内で半導体基板12の上面12aに接している。
【0017】
半導体基板12の下面12bには、下部電極72が配置されている。下部電極72は、半導体基板12の下面12bに接している。
【0018】
図1〜3に示すように、半導体基板12の内部には、複数のソース領域30、複数のボディコンタクト領域31、複数のボディ領域32、ドリフト領域33、ドレイン領域34、複数の底部p型領域36及び複数の接続p型領域38が設けられている。
【0019】
ソース領域30、ボディコンタクト領域31、ボディ領域32及び接続p型領域38は、トレンチ22の間の各半導体層に設けられている。トレンチ22の間の各半導体層の構造は互いに等しいので、以下では、トレンチ22の間の1つの半導体層について、ソース領域30、ボディコンタクト領域31、ボディ領域32及び接続p型領域38の構造を説明する。
【0020】
図1に示すように、幅広部20a内に、一対の接続p型領域38が配置されている。接続p型領域38は、幅狭部20b内には配置されていない。
図2に示すように、接続p型領域38は、幅広部20aの両側のトレンチ22の側面に沿ってz方向に伸びている。各接続p型領域38は、トレンチ22の上端から下端まで伸びている。各接続p型領域38は、側面絶縁層24bと底部絶縁層24aに接している。
【0021】
ソース領域30は、n型不純物濃度が高いn型領域である。
図1に示すように、ソース領域30は、半導体基板12の上面12aに露出する範囲に配置されている。ソース領域30は、上面12aに露出する範囲において、幅広部20aと幅狭部20bに跨って分布している。
図3に示すように、ソース領域30は、幅狭部20b内で、幅狭部20bの両側の側面絶縁層24bに接している。
図2に示すようにソース領域30は、幅広部20a内で、コンタクトホール28a内の上部電極70に接している。ソース領域30は、上部電極70にオーミック接触している。
【0022】
ボディコンタクト領域31は、p型不純物濃度が高いp型領域である。
図1に示すように、ボディコンタクト領域31は、半導体基板12の上面12aに露出する範囲に配置されている。ボディコンタクト領域31は、幅広部20a内に配置されている。上面12aにおいて、ボディコンタクト領域31は、ソース領域30に囲まれている。
図2に示すように、ボディコンタクト領域31は、幅広部20a内で、コンタクトホール28a内の上部電極70に接している。ボディコンタクト領域31は、上部電極70にオーミック接触している。
【0023】
ボディ領域32は、ボディコンタクト領域31よりもp型不純物濃度が低いp型領域である。
図2、3に示すように、ボディ領域32は、幅広部20aと幅狭部20bに跨って分布している。幅狭部20b内では、ボディ領域32は、ソース領域30の下側に配置されている。幅狭部20b内では、ボディ領域32は、ソース領域30の下側で、幅狭部20bの両側の側面絶縁層24bに接している。幅広部20a内では、ボディ領域32は、ボディコンタクト領域31とソース領域30の下側に配置されている。幅広部20a内において、ボディ領域32は、各接続p型領域38に接している。
【0024】
次に、ボディ領域32よりも下側の半導体層について説明する。
図2、3に示すように、各底部p型領域36は、対応するトレンチ22の底面に臨む範囲に配置されている。各底部p型領域36は、対応するトレンチ22の底面において、底部絶縁層24aに接している。各底部p型領域36は、対応するトレンチ22の底面に沿ってy方向に長く伸びている。各底部p型領域36は、対応するトレンチ22の底面全域で底部絶縁層24aに接している。各底部p型領域36は、その上部の接続p型領域38を介して、ボディ領域32に接続されている。
【0025】
ドリフト領域33は、ソース領域30よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。
図2、3に示すように、ドリフト領域33は、幅広部20aと幅狭部20bに跨って分布している。また、ドリフト領域33は、各トレンチ22の間の領域から各トレンチ22の下端よりも下側の領域まで分布している。ドリフト領域33は、幅広部20a及び幅狭部20bにおいて、ボディ領域32の下側に配置されている。ドリフト領域33は、ボディ領域32によって、ソース領域30から分離されている。幅狭部20b内のドリフト領域33は、ボディ領域32の下側で、幅狭部20bの両側の側面絶縁層24bに接している。幅広部20a内のドリフト領域33は、ボディ領域32の下側で、各接続p型領域38に接している。また、ドリフト領域33は、各底部p型領域36に接している。
【0026】
ドレイン領域34は、ドリフト領域33よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。
図2、3に示すように、ドレイン領域34は、ドリフト領域33の下側に配置されている。ドレイン領域34は、半導体基板12の下面12bに露出する範囲に配置されている。ドレイン領域34は、下部電極72にオーミック接触している。
【0027】
次に、スイッチング素子10の動作について説明する。スイッチング素子10の使用時には、スイッチング素子10と負荷(例えば、モータ)と電源が直列に接続される。スイッチング素子10と負荷の直列回路に対して、電源電圧(本実施形態では、約800V)が印加される。スイッチング素子10のドレイン側(下部電極72)がソース側(上部電極70)よりも高電位となる向きで、電源電圧が印加される。ゲート電極26にゲートオン電位(ゲート閾値よりも高い電位)を印加すると、幅狭部20b内で側面絶縁層24bに接する範囲のボディ領域32にチャネル(反転層)が形成され、スイッチング素子10がオンする。ゲート電極26にゲートオフ電位(ゲート閾値以下の電位)を印加すると、チャネルが消失し、スイッチング素子10がオフする。以下、スイッチング素子10の動作について、詳細に説明する。
【0028】
スイッチング素子10をターンオフさせる場合には、ゲート電極26の電位をゲートオン電位からゲートオフ電位に引き下げる。すると、チャネルが消失し、下部電極72の電位が上昇する。下部電極72の電位が上昇する過程において、ドレイン領域34及びドリフト領域33の電位が上昇する。ドリフト領域33の電位が上昇すると、ドリフト領域33と底部p型領域36の間の容量結合によって、底部p型領域36の電位が上昇しようとする。しかしながら、ドリフト領域33の電位が上昇する過程において、底部p型領域36から、接続p型領域38、ボディ領域32及びボディコンタクト領域31を介して、コンタクトホール28a内の上部電極70へホールが流れる。したがって、底部p型領域36の電位はボディ領域32の電位と略同電位に維持される。したがって、ドリフト領域33の電位が上昇すると、ボディ領域32、接続p型領域38及び底部p型領域36により構成されるp型領域とドリフト領域33との界面のpn接合に逆電圧が印加される。このため、このp型領域からドリフト領域33に空乏層が広がる。底部p型領域36からドリフト領域33に空乏層が広がることで、ゲート電極26の下端近傍のゲート絶縁層24に高い電界が印加されることが抑制される。
【0029】
スイッチング素子10をターンオンさせる場合には、ゲート電極26の電位をゲートオフ電位からゲートオン電位に引き上げる。すると、幅狭部20b内でゲート絶縁層24に接する範囲のボディ領域32にチャネルが形成される。チャネルによって、ソース領域30とドリフト領域33が接続される。すると、ドリフト領域33の電位が低下する。すると、ボディ領域32からドリフト領域33に広がっていた空乏層が収縮する。このため、電子が、コンタクトホール28a内の上部電極70から、ソース領域30、チャネル、ドリフト領域33及びドレイン領域34を介して下部電極72へ流れる。また、ドリフト領域33の電位が低下すると、ドリフト領域33と底部p型領域36の間の容量結合によって、底部p型領域36の電位が低下しようとする。しかしながら、ドリフト領域33の電位が低下する過程において、コンタクトホール28a内の上部電極70から、ボディコンタクト領域31、ボディ領域32及び接続p型領域38を介して底部p型領域36へホールが流れる。したがって、底部p型領域36の電位はボディ領域32の電位と略同電位に維持される。したがって、ドリフト領域33の電位が低下すると、底部p型領域36とドリフト領域33の間の電位差が小さくなり、底部p型領域36からドリフト領域33に広がっていた空乏層が収縮する。このため、ドリフト領域33内の電子が流れることが可能な領域が広くなる。したがって、ドリフト領域33の抵抗が低下し、上部電極70から下部電極72に向かって電子が流れ易くなる。このため、ドリフト領域33で生じる損失が抑制される。
【0030】
以上に説明したように、スイッチング素子10では、底部p型領域36が接続p型領域38によってボディ領域32に接続されているので、底部p型領域36からドリフト領域33に広がっていた空乏層が、スイッチング素子10がターンオンした後に短時間で収縮する。したがって、スイッチング素子10は、オンした直後におけるオン抵抗が低い。
【0031】
また、スイッチング素子10では、各トレンチ22の間に、幅広部20aと幅狭部20bが交互に配置されており、各幅広部20aの上部にコンタクトホール28aが設けられている。このため、各幅狭部20b内のソース領域30からコンタクトホール28aまでの各電流経路が短く、したがって、これらの各電流経路の抵抗が小さい。これによって、スイッチング素子10のオン抵抗が低減されている。
【0032】
また、スイッチング素子10のオフ状態において、ボディ領域32の下部のドリフト領域33内に電界が集中し、ドリフト領域33内でアバランシェ効果によってホールが発生する場合がある。スイッチング素子10では、各幅狭部20b内のボディ領域32からコンタクトホール28aまでの各電流経路が短く、したがって、これらの各電流経路の抵抗が小さい。このため、ドリフト領域33内でアバランシェ効果によって発生したホールが、ボディ領域32とボディコンタクト領域31を介してコンタクトホール28aへ流れ易い。このため、アバランシェ効果によって発生したホールがドリフト領域33内に滞留し難く、ドリフト領域33内でアバランシェ効果による過電流が生じ難い。したがって、このスイッチング素子10は、高いアバランシェ耐量を有する。
【0033】
また、スイッチング素子10では、幅狭部20b内のボディ領域32のx方向の幅が狭い。このため、スイッチング素子10がオンするときに、幅狭部20b内のボディ領域32の全体が空乏化される。このため、スイッチング素子10のゲート閾値が安定し易い。以下、
図4、5を用いて詳細に説明する。
図4は、実施形態のスイッチング素子10のオン状態における空乏層の分布を示している。
図4に示すように、オン状態において、幅狭部20b内の側面絶縁層24b近傍のボディ領域32にチャネル100が形成される。また、チャネル100に隣接する範囲に、側面絶縁層24bから伸びる空乏層102、104が広がっている。また、ソース領域30からボディ領域32へ空乏層106が広がっており、ドリフト領域33からボディ領域32へ空乏層108が広がっている。両側の側面絶縁層24bから伸びる空乏層102、104はボディ領域32の中央で繋がっており、このため、ボディ領域32の全域が空乏化されている。このため、ソース領域30及びドリフト領域33からの空乏層106、108の伸びが抑制される。特に、トレンチ22の間の間隔が狭いことで、ドリフト領域33とボディ領域32の界面のpn接合に印加される電界が抑制されるので、ドリフト領域33からボディ領域32への空乏層108の伸びが抑制される。
【0034】
これに対し、
図5は、比較例として、トレンチ22の間の間隔が広い場合(すなわち、ボディ領域32のx方向の幅が広い場合)を示している。
図5では、側面絶縁層24bから伸びる空乏層102、104が繋がっておらず、ボディ領域32の中央に非空乏化領域110が存在している。この場合、ソース領域30及びドリフト領域33からボディ領域32に空乏層106、108が広く伸びる。
図5のようにソース領域30及びドリフト領域33からボディ領域32に伸びる空乏層106、108の幅が広いと、これらの空乏層106、108内の固定電荷(アクセプタイオン)からの電界がスイッチング素子10のゲート閾値に大きく影響する。すなわち、チャネル長(側面絶縁層24bに接する範囲内のボディ領域32の厚み(すなわち、ソース領域30とドリフト領域33の間の距離))が短いと、空乏層106、108の範囲が空乏層102、104の範囲に対して相対的に大きくなり、ゲート閾値が低くなる。反対に、チャネル長が長いと、空乏層106、108の範囲が空乏層102、104の範囲に対して相対的に小さくなり、ゲート閾値が高くなる。このため、
図5の構成では、チャネル長がばらついたときに、ゲート閾値もばらつく。特に、SiC基板においては、チャネル長が1μm以下の場合に短チャネル効果が顕著に生じ、ゲート閾値のばらつきが大きくなる。
【0035】
これに対し、
図4に示す本実施形態の構成では、ボディ領域32の全域が空乏化されることで、ソース領域30及びドリフト領域33からの空乏層106、108の影響が抑制される。したがって、チャネル長がばらついても、ゲート閾値にばらつきが生じ難い。特に、チャネル長が1μm以下の場合にも、ゲート閾値のばらつきを抑制することができる。また、チャネル長を1μm以下とすることで、スイッチング素子10のオン抵抗を効果的に低減することができる。
【0036】
次に、実施形態のスイッチング素子10の製造方法について説明する。スイッチング素子10は、ドレイン領域34と同程度のn型不純物濃度を有するn型の半導体基板12(加工前の半導体基板12)から製造される。
図6〜17は、スイッチング素子10の製造過程における断面を示している。なお、
図6〜17において、左側の断面は
図2に相当する範囲の断面を示しており、右側の断面は
図3に相当する範囲の断面を示している。以下では、
図2に相当する範囲(幅広部20aを形成すべき範囲)を第1範囲111といい、
図3に相当する範囲(幅狭部20bを形成すべき範囲)を第2範囲112という。
【0037】
まず、エピタキシャル成長、イオン注入等によって、
図6に示すように、ドレイン領域34上に、ドリフト領域33、ボディ領域32、ソース領域30及びボディコンタクト領域31を形成する。なお、ボディコンタクト領域31は、第1範囲111内にのみ形成する。次に、
図7に示すように、半導体基板12の上面12a上に開口200aを有するマスク200を形成し、開口200a内の上面12aをエッチングする。これによって、トレンチ22を形成する。なお、この段階では、第1範囲111内と第2範囲112内とで、トレンチ22の幅は略等しい。
【0038】
次に、
図8に示すように、上面12aに対して傾斜した方向に沿って、トレンチ22の側面にp型不純物を注入する。これによって、接続p型領域38を形成する。ここでは、半導体基板12を、200℃〜500℃に加熱しながらp型不純物を注入する。また、ここでは、p型不純物を注入する方向を変更することで、トレンチ22の両側の側面に接続p型領域38を形成する。この段階では、第1範囲111と第2範囲112の両方に接続p型領域38が形成される。
【0039】
次に、
図9に示すように、マスク200の表面とトレンチ22の内部を覆うマスク210を形成する。次に、
図10に示すように、第2範囲112内のトレンチ22の内部のマスク210をエッチングにより除去する。第1範囲111の全域は、マスク210に覆われた状態に維持される。また、第2範囲112のマスク200の上面は、マスク210に覆われた状態に維持される。
【0040】
次に、
図11に示すように、等方性エッチングによって、第2範囲112内のトレンチ22の内面をエッチングする。これによって、第2範囲112内の接続p型領域38を除去する。また、これによって、第2範囲112内のトレンチ22の幅を拡大する。その結果、第2範囲112内に、トレンチ22の間の間隔が狭い幅狭部20bが形成される。第1範囲111内の半導体基板12は、マスク210に覆われているので、エッチングされない。このため、第1範囲111内では第2範囲112内よりも、トレンチ22の間の間隔が広い。すなわち、第1範囲111内のトレンチ22の間の領域が、幅広部20aとなる。その結果、
図1に示すように、トレンチ22の間に幅広部20aと幅狭部20bがy方向に沿って交互に配置された構造が形成される。
【0041】
次に、
図12に示すように、マスク210とマスク200をエッチングにより除去する。次に、
図13に示すように、半導体基板12の上面12aとトレンチ22の内面に、保護酸化膜220を成長させる。次に、
図14に示すように、各トレンチ22の底面にp型不純物を注入することによって、底部p型領域36を形成する。次に、
図15に示すように、保護酸化膜220を除去し、トレンチ22内にゲート絶縁層24とゲート電極26を形成する。
【0042】
次に、
図16に示すように、半導体基板12の上面12a上に、層間絶縁層28を形成する。層間絶縁層28は、上面12aの全域とゲート電極26の上面の全域を覆うように形成される。次に、
図17に示すように、層間絶縁層28の一部をエッチングすることによって、コンタクトホール28aを形成する。ここでは、幅広部20aを覆う部分の層間絶縁層28にコンタクトホール28aを形成する。幅広部20aの幅が広いので、幅広部20a上に比較的サイズが大きいコンタクトホール28aを形成することができる。したがって、コンタクトホール28aを高い形状精度で形成することができる。また、幅広部20aの幅が広いので、コンタクトホール28aとゲート電極26との間のクリアランスを比較的広く設けることができる。したがって、コンタクトホール28aの位置ずれが生じても、コンタクトホール28aがゲート電極26上に配置されることを防止することができる。このように、幅広部20aの幅が広いので、コンタクトホール28aを好適に形成することができる。
【0043】
その後、コンタクトホール28a内でボディコンタクト領域31及びソース領域30に接するように、上部電極70を形成する。次に、半導体基板12の下面12bに、下部電極72を形成する。以上の工程によって、
図1〜3に示すスイッチング素子10が完成する。
【0044】
以上に説明したように、実施形態の製造方法では、幅広部20aにコンタクトホール28aを形成するので、コンタクトホール28aを安定して形成することができる。
【0045】
また、この製造方法では、トレンチ22の側面全域にp型不純物を注入して接続p型領域38を形成し、その後、接続p型領域38を部分的にエッチングすることで、トレンチ22の側面の一部に接続p型領域38が存在する構造を形成する。別の方法として、トレンチ22の側面の一部にp型不純物を注入することでこの構造を得ることもできるが、この場合、トレンチ22の側面を部分的に覆うマスクが必要となる。このようにトレンチ22の側面を部分的に覆うようにパターニングされたマスクは、一般に、レジスト樹脂により形成される。レジスト樹脂をマスクとして用いる場合には、半導体基板12を加熱しながらイオン注入を行うことができない。したがって、この場合には、接続p型領域中に高密度に結晶欠陥が形成される。このように形成された結晶欠陥は、SiC基板においては、回復させることが難しい。これに対し、上記の実施形態では、トレンチ22の側面にp型不純物を注入するときにレジスト樹脂のマスクを用いないので、半導体基板12を加熱しながらイオン注入を実施することができる。したがって、結晶欠陥密度が低い接続p型領域38を形成することができる。このため、この方法によれば、リーク電流が少ないスイッチング素子10を製造することができる。
【0046】
また、この製造方法では、トレンチ22の側面をエッチングすることでトレンチ22の幅を広げ、幅を広げた部分がチャネル領域(チャネルが形成される領域)となる。トレンチ22の側面をエッチングすると、そのエッチングした部分で側面の凹凸が低減される。このため、チャネルが形成されたときに、チャネルの電子移動度が高くなる。このため、この方法によれば、よりオン抵抗が低いスイッチング素子10を製造することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、MOSFETについて説明したが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)に本明細書に開示の技術を適用してもよい。例えば、上述したスイッチング素子10において、下部電極72に対して接触する部分にp型のコレクタ領域を設けることで、IGBTを得ることができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、チャネルが形成されるときに幅狭部20b内のボディ領域32全体が空乏化されるように、幅狭部20bの幅が設定されていた。しかしながら、チャネルが形成されるときに、幅狭部20b内のボディ領域32の一部に非空乏化領域が残存してもよい。このような構成でも、幅狭部20bの幅が狭いことで、ゲート閾値のばらつきを抑制することができる。但し、チャネルが形成されるときに幅狭部20b内のボディ領域32全体が空乏化される方が、ゲート閾値のばらつきをより効果的に抑制することができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、トレンチ22の幅が変化することで、幅広部20aと幅狭部20bが設けられていた。しかしながら、トレンチ22が折れ曲がることで、幅広部20aと幅狭部20bが設けられていてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、ボディ領域32が幅狭部20bから幅広部20aまで伸びており、幅広部20a内でボディ領域32がボディコンタクト領域31に接続されていた。しかしながら、別の態様でボディ領域32がボディコンタクト領域31に接続されていてもよい。例えば、ボディコンタクト領域31が幅広部20aから幅狭部20bまで伸びており、幅狭部20b内でボディ領域32がボディコンタクト領域31に接続されていてもよい。この場合、ボディ領域32が幅広部20bまで伸びていなくてもよい。
【0051】
上述した実施形態の構成要素と、請求項の構成要素との関係について説明する。実施形態のボディ領域32を挟む一対のトレンチの一方は、請求項の第1トレンチの一例である。また、そのトレンチの内部及び周辺に設けられているゲート絶縁層、ゲート電極、底部p型領域及び接続p型領域は、請求項の第1ゲート絶縁層、第1ゲート電極、第1底部p型領域及び第1接続p型領域の一例である。実施形態のボディ領域32を挟む一対のトレンチの他方は、請求項の第2トレンチの一例である。また、そのトレンチの内部及び周辺に設けられているゲート絶縁層、ゲート電極、底部p型領域及び接続p型領域は、請求項の第2ゲート絶縁層、第2ゲート電極、第2底部p型領域及び第2接続p型領域の一例である。実施形態の上部電極は、請求項の第1電極の一例である。実施形態の下部電極は、請求項の第2電極の一例である。実施形態のソース領域は、請求項の上部n型領域の一例である。実施形態のドリフト領域及びドレイン領域は、請求項の下部n型領域の一例である。
【0052】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0053】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、ボディ領域と下部n型領域が、幅広部から幅狭部まで伸びていてもよい。半導体基板が、第1トレンチの底面で第1ゲート絶縁層に接している第1底部p型領域と、第2トレンチの底面で第2ゲート絶縁層に接している第2底部p型領域と、幅広部内で第1トレンチの側面に沿って伸びているとともにボディ領域と第1底部p型領域の間を接続している第1接続p型領域と、幅広部内で第2トレンチの側面に沿って伸びているとともにボディ領域と第2底部p型領域の間を接続している第2接続p型領域をさらに有していてもよい。
【0054】
この構造によれば、スイッチング素子がオフするときに、各底部p型領域から下部n型領域に伸びる空乏層によって、各トレンチの底部で各ゲート絶縁層に印加される電界が緩和される。また、スイッチング素子がオンするときに、各接続p型領域を介して各底部p型領域に電荷が供給されることで、各底部p型領域から下部n型領域に伸びていた空乏層が短時間で収縮する。したがって、下部n型領域の電流経路が広く、スイッチング素子のオン抵抗が低くなる。
【0055】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、半導体基板がSiC基板であり、第1ゲート絶縁層に接する範囲及び第2ゲート絶縁層に接する範囲において、上部n型領域と下部n型領域の間のボディ領域の厚みが1μm以下であってもよい。
【0056】
上記ボディ領域の厚みは、チャネル長に相当する。一般に、SiC基板では、チャネル長が1μm以下になると、短チャネル効果が顕著に現れ、ゲート閾値のばらつきが極めて大きくなる。しかしながら、本明細書に開示の構造では、チャネル長を1μm以下としてもゲート閾値のばらつきが抑制される。また、このようにチャネル長を短くすることで、スイッチング素子のオン抵抗を低減できる。
【0057】
また、本明細書では、スイッチング素子の製造方法を提供する。本明細書が開示する製造方法は、トレンチ形成工程と幅拡大工程を有する。前記トレンチ形成工程では、半導体基板の上面に、第1トレンチと、前記第1トレンチから間隔を開けて配置されている第2トレンチを形成する。前記幅拡大工程では、前記第1トレンチと前記第2トレンチの長手方向に沿ってエッチング領域と非エッチング領域とが交互に現れるように前記エッチング領域を設定し、前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの側面をエッチングすることによって、前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの幅を拡大する。前記幅拡大工程では、前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの間に、前記非エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの間に位置する幅広部よりも前記第1トレンチと前記第2トレンチの間の間隔が狭い幅狭部を形成する。前記製造方法により製造される前記スイッチング素子が、前記第1トレンチの内面を覆う第1ゲート絶縁層と、前記第2トレンチの内面を覆う第2ゲート絶縁層と、前記第1トレンチ内に配置されているとともに前記第1ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されている第1ゲート電極と、前記第2トレンチ内に配置されているとともに前記第2ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されている第2ゲート電極と、前記第1ゲート電極の上面と前記第2ゲート電極の上面と前記半導体基板の上面を覆うとともに前記幅広部上にコンタクトホールを有する層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に配置されているとともに前記コンタクトホール内で前記半導体基板に接する第1電極と、第2電極を有している。製造される前記スイッチング素子の前記半導体基板が、上部n型領域、ボディコンタクト領域、ボディ領域及び下部n型領域を有している。前記上部n型領域は、前記幅広部から前記幅狭部まで伸びており、前記幅狭部内で前記第1ゲート絶縁層と前記第2ゲート絶縁層に接しており、前記幅広部内で前記コンタクトホール内の前記第1電極に接している。前記ボディコンタクト領域は、前記幅広部内で前記コンタクトホール内の前記第1電極に接しているp型領域である。前記ボディ領域は、前記幅狭部内の前記上部n型領域の下側で前記第1ゲート絶縁層と前記第2ゲート絶縁層に接しており、前記ボディコンタクト領域に接続されており、前記ボディコンタクト領域よりもp型不純物濃度が低いp型領域である。前記下部n型領域は、前記幅狭部内の前記ボディ領域の下側で前記第1ゲート絶縁層と前記第2ゲート絶縁層に接しており、前記第2電極に接している。
【0058】
この製造方法によれば、製造されるスイッチング素子の間でゲート閾値のばらつきを抑制することができるとともに、各幅広部にコンタクトホールを好適に形成することができる。
【0059】
本明細書が開示する一例の製造方法は、前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの幅を拡大する前記工程よりも前に、前記第1トレンチと前記第2トレンチの側面にp型不純物を注入することによって、前記第1トレンチの側面に沿って伸びている第1接続p型領域と前記第2トレンチの側面に沿って伸びている第2接続p型領域を形成する工程と、前記第1トレンチと前記第2トレンチの底面にp型不純物を注入することによって、前記第1トレンチの底面に露出する第1底部p型領域と前記第2トレンチの底面に露出する第2底部p型領域を形成する工程をさらに有していてもよい。前記エッチング領域内の前記第1トレンチと前記第2トレンチの幅を拡大する前記工程では、前記エッチング領域内の前記第1接続p型領域と前記第2接続p型領域をエッチングにより除去してもよい。製造される前記スイッチング素子において、前記ボディ領域と前記下部n型領域が前記幅広部から前記幅狭部まで伸びており、前記第1接続p型領域が前記幅広部内で前記ボディ領域と前記第1底部p型領域の間を接続しており、前記第2接続p型領域が前記幅広部内で前記ボディ領域と前記第2底部p型領域の間を接続していてもよい。
【0060】
この製造方法では、各トレンチの側面にp型不純物を注入して形成した各接続p型領域を、その後にエッチング領域内において除去し、非エッチング領域内に残存させる。このようにして、各トレンチの側面に部分的に各接続p型領域を設けることができる。この方法では、トレンチの側面にp型不純物を注入するときにトレンチの側面を覆うマスクが不要であるので、マスクの耐熱性に制限されることなく、高温での不純物注入を行うことができる。このため、各接続p型領域に結晶欠陥が生じ難い。したがって、各接続領域を介して漏れ電流が生じることを抑制することができる。また、エッチング領域内において、トレンチの幅を拡大する工程と接続p型領域を除去する工程を同時に行うことができるので、効率的にスイッチング素子を製造することができる。
【0061】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記半導体基板がSiC基板であってもよい。また、製造される前記スイッチング素子において、前記第1ゲート絶縁層に接する範囲及び前記第2ゲート絶縁層に接する範囲において、前記上部n型領域と前記下部n型領域の間の前記ボディ領域の厚みが1μm以下であってもよい。
【0062】
この製造方法によれば、短チャネル効果によるゲート閾値のばらつきを抑制しながら、スイッチング素子のオン抵抗を低減することができる。
【0063】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。