特許第6784932号(P6784932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6784932生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784932
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/329 20060101AFI20201109BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20201109BHJP
   C07D 405/06 20060101ALI20201109BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20201109BHJP
【FI】
   C08G65/329
   C08G65/333
   C07D405/06CSP
   A61K47/50
【請求項の数】20
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2016-65690(P2016-65690)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2016-194057(P2016-194057A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2019年3月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-70659(P2015-70659)
(32)【優先日】2015年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】粒崎 拓真
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕二
【審査官】 中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/027717(WO,A1)
【文献】 特開2014−208794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00− 67/04
A61K 47/50
C07D 405/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)または式(2)で示される、環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化85】

【化86】

(式(1)および式(2)中、
R1およびR6は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して電子吸引性もしくは電子供与性の置換基、または水素原子であり;
s=1または2、t=0または1、かつs+t=1または2であり;
P1は、エチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールであり;
P2は、エチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールであり;
wは、1〜8の整数であり; uは、1〜40の整数であり; vは、1〜4の整数であり;
X1は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基であり;および
Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して選択された2価のスペーサーである。)
【請求項2】
s=1かつt=0であり、R2およびR5は水素原子であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.30≦Σσ≦1.05である、請求項1に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項3】
s=1かつt=0であり、R2とR5との少なくとも一方が前記置換基であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−1.71≦Σσ≦0.88である、請求項1に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項4】
s=1かつt=1、またはs=2かつt=0であり、R2およびR5は水素原子であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.19≦Σσ≦0.57である、請求項1に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項5】
s=1かつt=1、またはs=2かつt=0であり、R2とR5との少なくとも一方が前記置換基であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.98≦Σσ≦0.48である、請求項1に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項6】
wが1である、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項7】
P1が、末端に炭化水素基または活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基(ただし、X1とは異なる官能基)を有する直鎖型のポリエチレングリコールである、請求項6に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項8】
P1が式(3)で示される、請求項7に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化87】

(式(3)中、
Yは炭素数1〜24の炭化水素基であり;
nは3〜2000の整数である。)
【請求項9】
P1が式(4)で示される、請求項7に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化88】

(式(4)中、
X2は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基であり、X1とX2は互いに異なる
Z4は2価のスペーサーであり;および
nは3〜2000の整数である。)
【請求項10】
P1が、末端に炭化水素基または活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基(ただし、X1と異なる官能基)を有する分岐型のポリエチレングリコールである、請求項6に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項11】
P1が式(5)で示される、請求項10に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化89】

(式(5)中、
Yは炭素数1〜24の炭化水素基であり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【請求項12】
P1が式(6)で示される、請求項10に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化90】

(式(6)中、
X2は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基であり、X1とX2は互いに異なる
Z4は2価のスペーサーであり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【請求項13】
wが2〜8である、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項14】
P1が式(7)で示される、請求項13に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化91】

(式(7)中、
X2は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される化学反応可能な官能基であり、X1とX2は互いに異なる
Z4は2価のスペーサーであり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【請求項15】
P1が、直鎖型または末端数3〜8の分岐型のポリエチレングリコールであり、P1を構成するポリエチレングリコールの全ての末端がそれぞれ、式(1)ではZ1、式(2)ではZ2に対して結合しており、wが前記ポリエチレングリコールの末端数に等しい、請求項13に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項16】
P1が、式(r)、式(s)、式(t)、式(u)および式(v)からなる群から選択される、請求項15に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化92】

(式中、nは3〜2000の整数である。
ここで、P1が式(r)で表される場合にはwが2であり、P1が式(s)で表される場合にはwが3であり、P1が式(t)で表される場合にはwが4であり、P1が式(u)で表される場合にはwが4であり、P1が式(v)で表される場合にはwが8である。)
【請求項17】
P2が式(8)で示される、請求項1〜16のいずれか一つの請求項に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化93】

(式(8)中、mは3〜2000の整数である。
ここで、式(1)および式(2)中、vは1である。)
【請求項18】
P2が式(9)で示される、請求項1〜16のいずれか一つの請求項に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化94】

(式(9)中、
mは3〜1000の整数であり;および
bは0または2である。
ここで、式(1)および式(2)中、vはb+2である。)
【請求項19】
Z1、Z2およびZ3が、それぞれ独立してエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である、請求項1〜18のいずれか一つの請求項に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【請求項20】
Z4が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である、請求項9、12または14に記載の生体機能性分子または薬物キャリアの化学修飾用生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコール鎖が加水分解可能なアセタールリンカーで連結され、生体内において、生体内からより効果的にクリアランスされ得る低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割される生分解性ポリエチレングリコール誘導体に関する。本明細書に記載されるポリエチレングリコール誘導体は、生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸および低分子薬物などの生体機能性分子、並びにリポソームやポリマーミセルなどの薬物キャリアの化学修飾に用いられる。
【背景技術】
【0002】
ドラッグデリバリーシステムにおいて、抗原性の低い親水性ポリマーであるポリエチレングリコールによる生体機能性分子や薬物キャリアの化学修飾は、これら薬物等の水溶解性およびバイオアベイラビリティーを増大させ、血中循環時間を延長させる有効な手法である。
一方で、これらポリエチレングリコール誘導体を結合させた薬物等が、ターゲットとする組織や部位に輸送されて薬効を発現した後、分子量の大きなポリエチレングリコールは、生体内からのクリアランスが不十分なために長期間体内に残留する場合がある。
【0003】
このような問題に対して、ポリエチレングリコール鎖を分解性のリンカーで連結し、生体内でこのリンカーを分解させることで、ポリエチレングリコール鎖を、生体内からより効果的にクリアランスされ得る低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割させるアプローチが行なわれている。その戦略の多くは、リンカーの分解に還元的環境や分解酵素の作用といった、生体内の環境を利用するものであり、その中の1つが生体内のpHを利用する手法である。
【0004】
生体内のpH環境下において、ポリエチレングリコール鎖を、生体内からより効果的にクリアランスされ得る低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割させることを目的として、ポリエチレングリコール鎖を加水分解可能なアセタールリンカーで連結した、分割型のポリエチレングリコール誘導体の合成例が報告されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、種々のアルデヒドまたはケトンから誘導されたアセタール基を介して、ポリエチレングリコール鎖が2本結合した複数のポリエチレングリコール誘導体が開示されている。ここでは、生体内でアセタール基が加水分解し、ポリエチレングリコール鎖が2本の低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割されることで、生体内からのクリアランスの速度が改善されるとの記載がある。しかし、アセタール基の加水分解速度の評価データは全く示されておらず、アセタール基周辺の構造と加水分解速度の関連性についての記載もない。
【0006】
このように、ポリエチレングリコール鎖が加水分解可能なアセタールリンカーで連結されたポリエチレングリコール誘導体の例はあるものの、アセタールリンカーの加水分解速度、即ちポリエチレングリコール鎖の分割速度が的確に制御されたポリエチレングリコール誘導体に関しては、今までその例は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/108463号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体内のpHは部位によって異なるが、各部位におけるpHの偏りは小さい。例えば、腫瘍組織周辺は通常の生理的環境のpH 7.4と比較して酸性環境であるが、pH 6.4〜6.9の弱酸性である。また、細胞内のエンドソーム内部やリソソーム内部はよりpHが低いものの、それぞれpH 5.5〜6.0とpH 4.5〜5.0であり、pHの偏りは小さい。したがって、ポリエチレングリコール鎖をアセタールリンカーで連結したポリエチレングリコール誘導体を薬物等に結合し、生体内の異なるpH環境下において薬効を発現させた後、これらの各部位においてポリエチレングリコール鎖を低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割させるためには、生体内の異なるpH環境下におけるアセタールリンカーの加水分解速度を的確に制御する必要がある。
【0009】
本発明の課題は、生体内の異なるpH環境下における加水分解速度が的確に制御可能なアセタールリンカーでポリエチレングリコール鎖が連結され、生体内での低分子量のポリエチレングリコール鎖への分割速度が的確に制御可能な生分解性ポリエチレングリコール誘導体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、生体内の異なるpH環境下における加水分解速度が的確に制御可能な環状ベンジリデンアセタールリンカーでポリエチレングリコール鎖が連結され、生体内での低分子量のポリエチレングリコール鎖への分割速度が的確に制御可能な生分解性ポリエチレングリコール誘導体を開発した。
【0011】
本発明の特徴は、複数のポリエチレングリコール鎖が、置換基を有する環状ベンジリデンアセタールリンカーを介して結合していることにある。環状ベンジリデンアセタールリンカーのベンゼン環上における置換基の種類および位置を適切に選択することで、アセタールリンカーの加水分解速度に影響を与えるアセタール基周辺の電子密度および立体障害の度合いを調節できる。この特長により、アセタールリンカーに所望の加水分解速度を付与することができ、当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体を結合させた薬物等がターゲットとする組織や細胞に輸送されて薬効を発現した後、これらの各部位のpH環境下において、任意の速度でポリエチレングリコール鎖を低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割させることが可能となる。
【0012】
即ち、本発明は以下のものである。
[1] 式(1)または式(2)で示される、環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化1】
【化2】
(式(1)および式(2)中、
R1およびR6は、それぞれ独立して水素原子または炭化水素基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して電子吸引性もしくは電子供与性の置換基、または水素原子であり;
s=1または2、t=0または1、かつs+t=1または2であり;
P1は、エチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールであり;
P2は、エチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールであり;
wは、P1が環状ベンジリデンアセタールと結合している価数であってあって、1〜8の整数であり;
uは、環状ベンジリデンアセタールとP2からなる構造単位が直列に結合している数であって、1〜40の整数であり;
vは、P2に結合しているX1の数であって、1〜4の整数であり;
X1は、化学反応可能な官能基であり;および
Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立して選択された2価のスペーサーである。)
【0013】
[2] s=1かつt=0であり、R2およびR5は水素原子であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.30≦Σσ≦1.05である、[1]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0014】
[3] s=1かつt=0であり、R2とR5との少なくとも一方が前記置換基であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−1.71≦Σσ≦0.88である、[1]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0015】
[4] s=1かつt=1、またはs=2かつt=0であり、R2およびR5は水素原子であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.19≦Σσ≦0.57である、[1]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0016】
[5] s=1かつt=1、またはs=2かつt=0であり、R2とR5との少なくとも一方が前記置換基であり、式(1)のR3、R4およびP1-Z1、または式(2)のR3、R4およびP2-Z1における置換基定数(σ)の合計(Σσ)が−0.98≦Σσ≦0.48である、[1]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0017】
[6] wが1である、[1]〜[5]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0018】
[7] P1が、末端に炭化水素基または化学反応可能な官能基を有する直鎖型のポリエチレングリコールである、[6]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0019】
[8] P1が式(3)で示される、[7]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化3】
(式(3)中、Yは炭素数1〜24の炭化水素基であり;
nは3〜2000の整数である。)
【0020】
[9] P1が式(4)で示される、[7]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化4】
(式(4)中、X2は、X1と異なる化学反応可能な官能基であり;
Z4は2価のスペーサーであり;および
nは3〜2000の整数である。)
【0021】
[10] P1が末端に炭化水素基またはX1と異なる化学反応可能な官能基を有する分岐型のポリエチレングリコールである、[6]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0022】
[11] P1が式(5)で示される、[10]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化5】
(式(5)中、Yは炭素数1〜24の炭化水素基であり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【0023】
[12] P1が式(6)で示される、[10]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化6】
(式(6)中、X2は、X1と異なる化学反応可能な官能基であり;
Z4は2価のスペーサーであり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【0024】
[13] wが2〜8である、[1]〜[5]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0025】
[14] P1が式(7)で示される、[13]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化7】
(式(7)中、X2は、X1と異なる化学反応可能な官能基であり;
Z4は2価のスペーサーであり;
nは3〜1000の整数であり;および
aは0または2である。)
【0026】
[15] P1が直鎖型または末端数3〜8の分岐型のポリエチレングリコールであり、P1を構成するポリエチレングリコールの全ての末端がそれぞれ、式(1)ではZ1、式(2)ではZ2に対して結合しており、wが前記ポリエチレングリコールの末端数に等しい、[13]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0027】
[16] P1が、式(r)、式(s)、式(t)、式(u)および式(v)からなる群から選択される、[15]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化8】
(式中、nは3〜2000の整数である。
ここで、P1が式(r)で表される場合にはwが2であり、P1が式(s)で表される場合にはwが3であり、P1が式(t)で表される場合にはwが4であり、P1が式(u)で表される場合にはwが4であり、P1が式(v)で表される場合にはwが8である。)
【0028】
[17] P2が式(8)で示される、[1]〜[16]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化9】
(式(8)中、mは3〜2000の整数である。ここで、式(1)および式(2)において、vは1である。)
【0029】
[18] P2が式(9)で示される、[1]〜[16]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【化10】
(式(9)中、mは3〜1000の整数であり;および
bは0または2である。ここで、式(1)および式(2)において、vはb+2である。)
【0030】
[19] X1が活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される、[1]〜[18]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0031】
[20] Z1、Z2およびZ3が、それぞれ独立してエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である、[1]〜[19]の生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0032】
[21] X2が活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基よりなる群から選択される、[9]、[12]または[14]のいずれかの生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【0033】
[22] Z4がエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である、[9]、[12]または[14]のいずれかの生分解性ポリエチレングリコール誘導体。
【発明の効果】
【0034】
本発明による環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体は、生体内の異なるpH環境下において環状ベンジリデンアセタールリンカーの加水分解速度を調節できる。したがって、当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体を結合させた薬物等がターゲットとする組織や細胞に輸送されて薬効を発現した後、これらの各部位のpH環境下において、任意の速度でポリエチレングリコール鎖を低分子量のポリエチレングリコール鎖に分割させることが可能である。これにより、従来ポリエチレングリコール修飾の欠点であった、分子量の大きなポリエチレングリコールが、生体内からのクリアランスが不十分なために長期間体内に残留する問題を、根本的に排除することができる。即ち、当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体を薬物等の化学修飾に使用することで、水溶解性、バイオアベイラビリティーの増大および血中循環時間の延長といったポリエチレングリコール修飾による利点は元より、薬物等が薬効を発現した後、ポリエチレングリコールが生体内からのクリアランスに優れるという利点も付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例に記載の式(35)、式(44)、式(45)、式(47)および式(48)の化合物を用いた、pD 5.5のMES 重水緩衝液中、37℃における加水分解試験の結果である。
図2】実施例に記載の式(35)、式(44)、式(45)、式(47)および式(48)の化合物を用いた、pD 7.4のHEPES重水緩衝液中、37℃における加水分解試験の結果である。
図3】実施例に記載の式(41)、式(54)、式(74)および式(76)の化合物を用いた、pD 5.5のMES重水緩衝液中、37℃における加水分解試験の結果である。
図4】実施例に記載の式(41)、式(54)、式(74)および式(76)の化合物を用いた、pD 7.4のHEPES重水緩衝液中、37℃における加水分解試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書で使用する用語「アセタール」とは、アルデヒド類から誘導されるアセタール構造およびケトン類から誘導されるアセタール構造、即ちケタール構造の両方を意味する。
【0037】
本発明の「環状アセタール」とは、式(1)、式(2)でs=1かつt=0である5員環の1,3-ジオキソラン構造、並びに式(1)、式(2)でs=1かつt=1、またはs=2かつt=0である6員環の1,3-ジオキサン構造の両方を意味する。
【0038】
本発明の式(1)、式(2)におけるR1およびR6は、水素原子または炭化水素基であり、炭化水素基の炭素数は10以下が好ましく、4以下が更に好ましい。具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、フェニル基およびベンジル基などが挙げられる。R1の好ましい実施形態としては水素原子またはメチル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0039】
本発明の式(1)、式(2)におけるベンゼン環は複数の置換基を有していてよい。ベンゼン環上における置換基の種類、位置および電子供与性と電子吸引性の度合いを適切に選択することで、環状アセタールリンカーの加水分解速度に影響を与えるアセタール基周辺の電子密度および立体障害の度合いを調節できる。これにより、環状アセタールリンカーに所望の加水分解速度を付与することができる。
【0040】
本明細書において、式(1)、式(2)におけるベンゼン環上の置換基は「置換基定数(σ)」を用いて説明しているが、これはベンゼン誘導体の反応速度または平衡に及ぼす置換基の影響を定量化したHammett則における置換基定数を意味する。しかし、公知のようにHammett則はパラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体のみに適用され、立体障害の影響を受けるオルト置換ベンゼン誘導体には適用できない。そこで、オルト置換ベンゼン誘導体の場合には、上記Hammett則を拡張したTaftの式における置換基定数を意味する。
【0041】
上記パラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体において、Hammett則は下記式(10)で表わされる。

log(k/k0)=ρσ (10)

(式中、kは、パラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体の任意の反応における速度定数または平衡定数であり、k0は、上記ベンゼン誘導体が上記置換基を有さない場合、即ち置換基が水素原子である場合の速度定数または平衡定数であり、ρは反応定数であり、σは置換基定数である。)
【0042】
上記式(10)における反応定数(ρ)は、反応の種類、温度、および溶媒等の反応条件によって定まる定数であり、これはHammettプロットの傾きから算出できる。本発明の環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する親水性ポリマー誘導体の酸加水分解反応においては、1,3-ジオキソラン構造の場合には、実施例に記載の式(35)、式(44)および式(45)の化合物について実施した加水分解試験の結果から、「ρ=−2.7」と算出される。また、1,3-ジオキサン構造の場合には、実施例に記載の式(47)および式(48)の化合物について実施した加水分解試験の結果から、「ρ=−4.8」と算出される。
【0043】
上記式(10)における置換基定数(σ)は、反応の種類に関係なく、置換基の種類と位置によってのみ定まる定数であり、置換基を有さない場合、即ち置換基が水素原子である場合は「0」である。本明細書で使用する用語「電子吸引性」とはσが正の値である場合を意味し、用語「電子供与性」とはσが負の値である場合を意味する。
【0044】
前述のように、Hammett則はパラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体のみに適用され、立体障害の影響を受けるオルト置換ベンゼン誘導体の場合には適用できない。そこで、そのような立体障害の影響を位置の因子、即ち置換基の位置定数(Es)として導入し、オルト置換ベンゼン誘導体の場合にも適用できるように、Hammett則を拡張したのがTaftの式である。Taftの式は下記式(11)で表わされる。

log(k/k0)=ρ*σ*+Es (11)

(式中、kは、パラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体の任意の反応における速度定数または平衡定数であり、k0は、上記ベンゼン誘導体が上記置換基を有さない場合、即ち置換基が水素原子である場合の速度定数または平衡定数であり、ρ*は反応定数であり、σ*は置換基定数であり、Esは置換基の位置定数である。)
【0045】
公知のように、パラ置換およびメタ置換ベンゼン誘導体の反応定数(ρ)とオルト置換ベンゼン誘導体の反応定数(ρ*)はほぼ等しいことから、本明細書ではρとρ*は同じものと定義する。また、オルト位の置換基定数(σ*)は、例えば「Charton, M. Can. J. Chem. 1960, 38 2493-2499」で述べられているように、パラ位の置換基定数に類似していることから、本明細書におけるオルト位の置換基定数は、相当するパラ位の置換基定数を適用する。
【0046】
パラ位およびメタ位における置換基定数(σ)は「Hansch, C.; Leo, A.; Taft, R. W. Chem. Rev. 1991, 91, 165-195」に記載されており、置換基定数(σ)が未知の置換基については「Hammett, L. P. Chem. Rev. 1935, 17(1),125-136」に記載の方法で測定し求めることができる。また、位置定数(Es)は「Unger, S. H.; Hansch, C. Prog. Phys. Org. Chem. 1976, 12, 91-118」に記載されている。ただし、本明細書で使用するEsは、水素原子を「0」と定義したものである。
【0047】
式(1)、式(2)において、ベンゼン環上に複数の置換基を有する場合、それらの置換基定数(σ)および位置定数(Es)には加成性が成り立つと定義し、σの合計を「Σσ」、Esの合計を「ΣEs」とそれぞれ表わす。
【0048】
Z1は環状ベンジリデンアセタールのベンゼン環に結合しており、P1-Z1、P2-Z1もベンゼン環の置換基である。P-Z1、P2-Z1の置換基定数は、P1とZ1、P2とZ1の組み合わせについて、それぞれ個別に測定し求めることができるが、実質的にP1-Z1、P2-Z1の置換基定数はベンゼン環との結合部近傍の構造に大きく影響を受けるため、それ以外の部分の影響は無視できるほど非常に小さい。したがって、P1-Z1、P2-Z1について個別に置換基定数を測定する代わりに、ベンゼン環との結合部近傍の構造に類似した構造の既知の置換基定数で代用することが可能である。
【0049】
本明細書におけるP1-Z1、P2-Z1の置換基定数は、P1-Z1、P2-Z1の主鎖の骨格原子をベンゼン環に結合した原子から数えて、3番目の原子に結合した2番目の原子以外の原子を水素原子で置き換えた構造の置換基定数で代用できると定義する。ただし、水素原子で置き換えるとカルボキシ基になる場合は、水素原子の代わりにメチル基で置き換えた構造の置換基定数で代用できると定義する。
【0050】
P1-Z1、P2-Z1におけるベンゼン環との結合部分の構造と代用する構造の具体例を以下に示す。P1-Z1、P2-Z1のベンゼン環との結合部分がエーテル結合である下記(r1)の場合は、下記(r2)の置換基定数を適用する。P1-Z1、P2-Z1のベンゼン環との結合部分がアミド結合である下記(r3)、(r5)の場合は、それぞれ下記(r4)、(r6)の置換基定数を適用する。P1-Z1、P2-Z1のベンゼン環との結合部分がウレタン結合である下記(r7)の場合は、下記(r8)の置換基定数を適用する。
【0051】
【化11】
【0052】
本発明の環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体の好適な加水分解速度は、pH 5.5、37℃の緩衝液中における加水分解半減期(t1/2)が1時間〜6ヶ月の範囲であり、より好ましくは1時間〜1ヶ月の範囲であり、更に好ましくは1時間〜24時間の範囲である。本明細書では、上記加水分解条件でt1/2が12時間である、実施例に記載の式(44)の化合物から導出される数値を用いて、1,3-ジオキソラン構造である場合の好適な置換基定数の合計(Σσ)の範囲を規定する。式(10)を用いて、式(44)の化合物についてのlog(k/k0)を算出すると、下記式(12)が得られる。ただし、前記に定義したとおり、式(44)の化合物におけるP1-Z1はエトキシ基(CH3CH2O-)で代用する。

log(k/k0)=−2.7×(0.34−0.24)=−0.27 (12)
【0053】
上記式(12)および式(10)を用いて、式(1)、式(2)のR2およびR5が水素原子である場合にt1/2が24時間であるときの速度定数をk’としてlog(k’/k0)を算出すると、下記式(13)が得られる。

log(k’/k)=log{(12/24)k/k}=−0.30

式を変形して

log(k’/k)=log[(k’/k0)/(k/k0)]=−0.30
log(k’/k0)−log(k/k0)=−0.30

上記式(12)を代入すると

log(k’/k0)−(−0.27)=−0.30
log(k’/k0)=−0.57 (13)

ここで、上記式(13)および式(10)を用いて置換基定数の合計(Σσ)を算出すると、下記式(14)が得られる。
log(k’/k0)=−2.7×Σσ=−0.57
Σσ=0.21 (14)
【0054】
同様に、式(1)、式(2)のR2およびR5が水素原子である場合にt1/2が1時間であるときの速度定数をk”としてlog(k”/k0)を算出すると、下記式(15)が得られる。

log(k”/k)=log(12k/k)=1.08

式を変形して

log(k”/k)=log[(k”/k0)/(k/k0)]=1.08
log(k”/k0)−log(k/k0)=1.08

上記式(12)を代入すると

log(k”/k0)−(−0.27)=1.08
log(k”/k0)=0.81 (15)

ここで、上記式(15)および式(10)を用いて置換基定数の合計(Σσ)を算出すると、下記式(16)が得られる。

log(k”/k0)=−2.7×Σσ=0.81
Σσ=−0.30 (16)
【0055】
式(14)および式(16)より、式(1)、式(2)が1,3-ジオキソラン構造で、R2およびR5が水素原子である場合、−0.30≦Σσ≦0.21であれば当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体のt1/2は1時間≦t1/2≦24時間である。同様に1時間≦t1/2≦1ヶ月および1時間≦t1/2≦6ヶ月におけるΣσの範囲をそれぞれ算出すると、1時間≦t1/2≦1ヶ月のときは−0.30≦Σσ≦0.76であり、1時間≦t1/2≦6ヶ月のときは−0.30≦Σσ≦1.05である。
【0056】
本発明で使用可能な置換基は、当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体の合成過程における環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物のアセタール化反応、環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物とポリエチレングリコール中間体のカップリング反応、ポリエチレングリコール中間体の末端官能基変換反応およびポリエチレングリコール中間体の連結反応、更には当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体と薬物等との結合形成反応を阻害しない置換基である。
【0057】
上記条件を満たすものであれば、電子吸引性の置換基または電子供与性の置換基のいずれでもよく、それぞれ単独もしくは組み合わせて使用してもよい。電子吸引性の置換基としては、炭素数2〜5のアシル基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜5のカルバモイル基、炭素数2〜5のアシルオキシ基、炭素数2〜5のアシルアミノ基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1〜4のアルキルスルファニル基、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、炭素数6〜10のアリールスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基およびシアノ基であり、好ましい例としてはアセチル基、メトキシカルボニル基、メチルカルバモイル基、アセトキシ基、アセトアミド基、メトキシカルボニルアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチルスルファニル基、フェニルスルホニル基、ニトロ基、トリフルオロメチル基およびシアノ基が挙げられる。電子供与性の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましい例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基およびt-ブチル基が挙げられる。メタ位では電子吸引性、パラ位およびオルト位では電子供与性である置換基としては、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基および炭素数6〜10のアリールオキシ基であり、好ましい例としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、フェニル基およびフェノキシ基が挙げられる。
【0058】
式(1)、式(2)が1,3-ジオキソラン構造で、R2とR5との少なくとも一方が水素原子以外の置換基である場合については、上記置換基で立体障害の影響が最も大きいフェニル基および最も小さいフッ素原子の位置定数(Es)を用いて、pH 5.5、37℃の緩衝液中におけるt1/2が1時間≦t1/2≦24時間、1時間≦t1/2≦1ヶ月、および1時間≦t1/2≦6ヶ月であるΣσの範囲をTaftの式(11)を用いてそれぞれ算出すると、1時間≦t1/2≦24時間のときは−1.71≦Σσ≦0.04であり、1時間≦t1/2≦1ヶ月のときは−1.71≦Σσ≦0.59であり、1時間≦t1/2≦6ヶ月のときは−1.71≦Σσ≦0.88である。
【0059】
式(1)、式(2)が1,3-ジオキソラン構造で、R2およびR5が水素原子である場合、例えば1時間≦t1/2≦24時間のときに−0.30≦Σσ≦0.21を満たす好ましい実施形態を以下に示す。ただし、ここに示す置換基はR3およびR4、並びに前述の定義にしたがってP1-Z1、P2-Z1の代わりに用いる構造を意味する。式(1)、式(2)のメタ位のうち1つがメトキシ基、エトキシ基またはアセトアミド基であり、より好ましくはエトキシ基またはアセトアミド基である。別の好ましい実施形態においては、式(1)、式(2)のパラ位がメトキシ基またはエトキシ基であり、かつメタ位の1つがフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子よりなる群から独立して選択される置換基であり、より好ましくはパラ位がエトキシ基であり、かつメタ位の1つがフッ素原子または塩素原子である。もう一つの好ましい実施形態においては、式(1)、式(2)のパラ位およびメタ位の1つがメトキシ基、エトキシ基またはアセトアミド基であり、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
【0060】
また、式(1)、式(2)が1,3-ジオキソラン構造で、R2とR5との少なくとも一方が水素原子以外の置換基である場合、例えば1時間≦t1/2≦24時間のときに−1.71≦Σσ≦0.04を満たす好ましい実施形態を以下に示す。ただし、ここに示す置換基はR3およびR4、並びに前述の定義にしたがってP1-Z1、P2-Z1の代わりに用いる構造を意味する。式(1)、式(2)のR2およびR5のうち一方がフッ素原子、メチル基またはエチル基であり、もう一方が水素原子であるときは、パラ位がエトキシ基またはアセトアミド基であり、より好ましくはエトキシ基である。式(1)、式(2)のR2およびR5のうち一方がメトキシ基であり、もう一方が水素原子であるときは、パラ位がメトキシメチル基またはアセトアミド基よりなる群から選択される置換基を有し、より好ましくはアセトアミド基である。
【0061】
更に、pH 5.5、37℃の緩衝液中における加水分解半減期(t1/2)が24時間である、実施例に記載の式(35)の化合物から導出される数値を用いて、式(1)、式(2)が1,3-ジオキサン構造である場合についても好適な置換基定数の合計(Σσ)の範囲を規定できる。
【0062】
式(1)、式(2)が1,3-ジオキサン構造で、R2およびR5が水素原子である場合、−0.19≦Σσ≦0.10であれば当該親水性ポリマー誘導体のt1/2は1時間≦t1/2≦24時間である。同様に1時間≦t1/2≦1ヶ月および1時間≦t1/2≦6ヶ月におけるΣσの範囲をそれぞれ算出すると、1時間≦t1/2≦1ヶ月のときは−0.19≦Σσ≦0.41であり、1時間≦t1/2≦6ヶ月のときは−0.19≦Σσ≦0.57である。
【0063】
また、式(1)、式(2)が1,3-ジオキサン構造で、R2とR5との少なくとも一方が水素原子以外の置換基である場合については、前記置換基で立体障害の影響が最も大きいフェニル基および最も小さいフッ素原子の位置定数(Es)を用いて、pH 5.5、37℃の緩衝液中におけるt1/2が1時間≦t1/2≦24時間、1時間≦t1/2≦1ヶ月、および1時間≦t1/2≦6ヶ月であるΣσの範囲をTaftの式(11)を用いてそれぞれ算出すると、1時間≦t1/2≦24時間のときは−0.98≦Σσ≦0.00であり、1時間≦t1/2≦1ヶ月のときは−0.98≦Σσ≦0.31であり、1時間≦t1/2≦6ヶ月のときは−0.98≦Σσ≦0.48である。
【0064】
このように、本発明の生分解性ポリエチレングリコール誘導体における環状ベンジリデンアセタールリンカーに所望の加水分解性を付与するための適切な置換基の種類および位置は、式(10)および式(11)を用いて上述の計算を行なうことで合理的に設定可能である。
【0065】
本発明の式(1)、式(2)におけるX1は、化学修飾の対象となる生理活性タンパク質、ペプチド、抗体、核酸および低分子薬物などの生体機能性分子、並びにリポソームやポリマーミセルなどの薬物キャリアに存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基であれば特に制限されない。例えば、「Harris, J. M. Poly(Ethylene Glycol)Chemistry; Plenum Press: New York, 1992」、「Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques, 2nd ed.; Academic Press: San Diego, CA, 2008」および「PEGylated Protein Drugs: Basic Science and Clinical Applications; Veronese, F. M., Ed.; Birkhauser: Basel, Switzerland, 2009」などに記載されている官能基が挙げられる。
【0066】
X1の好ましい例を挙げれば、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基である。
更に具体的には、生体機能性分子のアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基またはカルボキシ基であり、生体機能性分子のチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基またはビニル基であり、生体機能性分子のアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基、アミノ基、オキシアミノ基またはヒドラジド基であり、生体機能性分子のアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基またはアジド基であり、生体機能性分子のアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基はアルキニル基である。
【0067】
ここで「活性エステル」とは、式:−C(=O)−Lで表わされる活性化されたカルボキシ基を示し、Lは脱離基を示す。
Lで表わされる脱離基としては、スクシンイミジルオキシ基、フタルイミジルオキシ基、4-ニトロフェノキシ基、1-イミダゾリル基、ペンタフルオロフェノキシ基、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ基および7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ基などが挙げられる。「活性カーボネート」とは、式:−O−C(=O)−Lで表わされる活性化されたカーボネート基を示し、Lは上記と同様の脱離基を示す。
【0068】
本発明の好適な実施形態において、X1は群(I)、群(II)、群(III)、群(IV)または群(V)で示される基である。

群(I):生体機能性分子のアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)
群(II):生体機能性分子のチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)および(j)
群(III):生体機能性分子のアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(k)、(l)および(m)
群(IV):生体機能性分子のアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(k)、(l)、(m)および(n)
群(V):生体機能性分子のアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(j)
【0069】
【化12】
【0070】
式中、R7は水素原子またはスルホ基であり、スルホ基として具体的にはスルホン酸ナトリウムおよびスルホン酸カリウムが挙げられるが、好ましくは水素原子である。R8、R11は水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基およびペンチル基などが挙げられる。R9はハロゲン原子を含んでもよい炭素数1〜10の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、ビニル基、クロロエチル基、ブロモエチル基およびヨードエチル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基または2,2,2-トリフルオロエチル基である。R10は塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択されるハロゲン原子である。
【0071】
本発明の式(1)、式(2)におけるZ1は、環状ベンジリデンアセタール基のベンゼン環とポリエチレングリコール鎖との間の2価のスペーサーであり、Z2は環状ベンジリデンアセタール基の環状アセタールとポリエチレングリコール鎖との間の2価のスペーサーであり、Z3はX1とポリエチレングリコール鎖との間の2価のスペーサーである。これらは共有結合で構成され、環状ベンジリデンアセタール基よりも酸加水分解に対して安定であれば特に制限は無いが、好ましくはエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜24である。説明のためであって、制限するものではないが、アルキレン基の好ましい例としては、(z1)のような構造が挙げられる。エーテル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z2)または(z3)のような構造が挙げられる。エステル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z4)のような構造が挙げられる。カーボネート結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z5)のような構造が挙げられる。ウレタン結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z6)のような構造が挙げられる。アミド結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z7)のような構造が挙げられる。2級アミノ基を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z8)のような構造が挙げられる。好ましい実施形態において、pおよびqは独立して1〜12の整数である。ただし、Z1、Z2またはZ2の少なくとも一つが、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基であって、複数の同一構造単位が結合している場合における前記構造単位の数は2以下である。
【0072】
【化13】
【0073】
本発明の式(1)、式(2)におけるP1は、エチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールであり、P2はエチレングリコール単位の数が3以上の直鎖型または分岐型のポリエチレングリコールである。P1、P2を構成するエチレングリコール単位の数は、10以上が更に好ましく、20以上が特に好ましい。また、P1、P2を構成するエチレングリコール単位の数は、2000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましい。
【0074】
本明細書で使用する用語「ポリエチレングリコール」は、エチレンオキシドの重合で得られる分子量分布を有するポリエチレングリコール、並びに単一分子量のオリゴエチレングリコール類をカップリング反応で結合した単分散のポリエチレングリコールの両方を意味する。
【0075】
本発明の一態様では、式(1)、式(2)におけるwが1の生分解性ポリエチレングリコール誘導体を与える。
【0076】
この態様の好ましい実施形態では、式(1)、式(2)におけるP1は、末端に炭化水素基または化学反応可能な官能基を有する直鎖型のポリエチレングリコールである。
【0077】
P1が末端に炭化水素基を有する直鎖型のポリエチレングリコールである具体的な例は、式(3)で示される。
【化14】
【0078】
式中、nはポリエチレングリコール鎖1本あたりの繰り返しユニット数であり、分子量分布を有するポリエチレングリコールにおいては、化合物の数平均分子量(Mn)に基づいて、各種理論的な計算をすることにより算出することと定義する。
【0079】
式中、Yは炭素数1〜24の炭化水素基であり、具体的な例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トイコシル基、テトラコシル基、フェニル基、ベンジル基、クレジル基、ブチルフェニル基、ドデシルフェニル基およびトリチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜10(更に好ましくは炭素数1〜7)の炭化水素基、より好ましくはメチル基またはエチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
【0080】
P1が、化学反応可能な官能基を有する直鎖型のポリエチレングリコールである具体的な例は、式(4)で示される。
【化15】
【0081】
式中、X2は、X1と異なる化学反応可能な官能基であり、Z4は、官能基X2とポリエチレングリコール鎖との間の2価のスペーサーである。当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体は、X1とX2の2つの異なる化学反応可能な官能基を有しているため、例えばX1に薬物を結合させ、X2に標的指向性分子を結合させることで、標的指向性を有するポリエチレングリコール−薬物結合体を提供することができる。
【0082】
X2の好ましい例を挙げれば、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基およびアジド基である。
更に具体的には、生体機能性分子のアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基またはカルボキシ基であり、生体機能性分子のチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基またはビニル基であり、生体機能性分子のアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基、アミノ基、オキシアミノ基またはヒドラジド基であり、生体機能性分子のアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基またはアジド基であり、生体機能性分子のアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基はアルキニル基である。
【0083】
本発明の好適な実施形態において、X2は群(I)、群(II)、群(III)、群(IV)または群(V)で示される基である。

群(I):生体機能性分子のアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)
群(II):生体機能性分子のチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)および(j)
群(III):生体機能性分子のアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(k)、(l)および(m)
群(IV):生体機能性分子のアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(g)、(k)、(l)、(m)および(n)
群(V):生体機能性分子のアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基
下記の(j)
【0084】
【化16】
【0085】
式中、R7は水素原子またはスルホ基であり、スルホ基として具体的にはスルホン酸ナトリウムおよびスルホン酸カリウムが挙げられるが、好ましくは水素原子である。R8、R11は水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基およびペンチル基などが挙げられる。R9はハロゲン原子を含んでもよい炭素数1〜10の炭化水素基であり、具体的な炭化水素基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、4-メチルフェニル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、4-(トリフルオロメトキシ)フェニル基、ビニル基、クロロエチル基、ブロモエチル基およびヨードエチル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基、ビニル基、4-メチルフェニル基または2,2,2-トリフルオロエチル基である。R10は塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子からなる群より選択されるハロゲン原子である。
【0086】
X2はX1と異なっていることが必要であり、X1と X2の好ましい組み合わせとして、X1が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、X2はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1がアルデヒド基のときは、X2はマレイミド基、ビニルスルホン基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1がマレイミド基、ビニルスルホン基またはα-ハロアセチル基のときは、X2は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、X1がアルキニル基またはアジド基のときは、X2はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基およびオキシアミノ基から選択される基であり、X1がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、X2はアルキニル基、アジド基、チオール基またはカルボキシ基であり、X1がチオール基のときは、X2はアミノ基、オキシアミノ基、アジド基およびカルボキシ基から選択される基である。より好ましくは、X1が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、X2はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1がアルデヒド基のときは、X2はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、X1がマレイミド基またはα-ハロアセチル基のときは、X2は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、X1がアルキニル基またはアジド基のときは、X2はマレイミド基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基およびオキシアミノ基から選択される基であり、X1がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、X2はアルキニル基、アジド基またはチオール基であり、X1がチオール基のときは、X2はアミノ基、オキシアミノ基およびアジド基から選択される基である。
【0087】
Z4は共有結合で構成され、環状ベンジリデンアセタール基よりも酸加水分解に対して安定であれば特に制限は無いが、好ましくはエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜24である。説明のためであって、制限するものではないが、アルキレン基の好ましい例としては、(z1)のような構造が挙げられる。エーテル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z2)または(z3)のような構造が挙げられる。エステル結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z4)のような構造が挙げられる。カーボネート結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z5)のような構造が挙げられる。ウレタン結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z6)のような構造が挙げられる。アミド結合を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z7)のような構造が挙げられる。2級アミノ基を有するアルキレン基の好ましい例としては、(z8)のような構造が挙げられる。好ましい実施形態において、pおよびqは独立して1〜12の整数である。ただし、Z3が、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基であって、複数の同一構造単位が結合している場合における前記構造単位の数は2以下である。
【0088】
【化17】
【0089】
この態様のもう1つの好ましい実施形態では、式(1)、式(2)におけるP1は、末端に炭化水素基または化学反応可能な官能基を有する分岐型のポリエチレングリコールである。
【0090】
P1が末端に炭化水素基を有する分岐型のポリエチレングリコールである具体的な例は、式(5)で示される。
【化18】
【0091】
式中、Yは炭素数1〜24の前記炭化水素基であり、aは0または2である。
【0092】
aが0の場合は2本のポリエチレングリコール鎖を有し、aが2の場合は4本のポリエチレングリコール鎖を有する。一般にポリエチレングリコールによる生体関連物質の化学修飾では、必要以上にポリエチレングリコールとの結合点を導入すると生体関連物質の活性点を潰し、その機能を低下させるため、ポリエチレングリコールの分子量を大きくして効果を高める試みが行われている。しかし、分子量の増大にともなって粘度も増大するため、例えば注射製剤のような水溶液製剤での取り扱いが困難となる。当該ポリエチレングリコール誘導体は分岐型構造であるため、同一分子量の直鎖型のポリエチレングリコール誘導体と比較して粘度が低く、水溶液製剤などの用途で有用である。
【0093】
P1が末端に化学反応可能な官能基を有する分岐型のポリエチレングリコールである具体的な例は、式(6)で示される。
【化19】
【0094】
式中、X2はX1と異なる化学反応可能な前記官能基であり、Z4は前記2価のスペーサーであり、aは0または2である。
【0095】
P1が式(6)で示されるポリエチレングリコール誘導体は、式(1)、式(2)におけるvが1の場合、1つのX1と2つまたは4つのX2を有しており、例えばX1に薬物を結合させ、X2に標的指向性分子を結合させれば、高い標的指向性能を得ることができる。
本発明の別の一態様では、式(1)、式(2)におけるwが2〜8の生分解性ポリエチレングリコール誘導体を与える。
【0096】
この態様の好ましい実施形態では、式(1)、式(2)におけるP1は、式(7)で示される。
【化20】
【0097】
式中、X2はX1と異なる化学反応可能な前記官能基であり、Z4は前記2価のスペーサーであり、aは0または2である。
【0098】
抗体−薬物複合体(ADC)関連分野においては、薬物の運搬効率を上げるために抗体に対して複数の薬物を結合させることが好ましいが、抗体に複数の結合点を導入すると抗原との親和性の低下が問題となる。P1が式(7)で示されるポリエチレングリコール誘導体は、式(1)、式(2)におけるvが1の場合、2つまたは4つのX1と1つのX2を有しており、例えばガンを標的としたADCでX1に抗ガン剤を結合させ、X2に抗体を結合させれば、抗体との結合点を増加させずに、抗ガン剤の運搬効率を向上させることができる。
【0099】
この態様のもう1つの好ましい実施形態では、式(1)、式(2)におけるP1が末端数2〜8のポリエチレングリコールであり、P1を構成するポリエチレングリコールの全ての末端がそれぞれ、式(1)ではZ1、式(2)ではZ2に対して結合しており、wが前記ポリエチレングリコールの末端数に等しい。
【0100】
この実施形態の具体的な例は、式(1)、式(2)におけるP1が、式(r)、式(s)、式(t)、式(u)および式(v)からなる群から選択される。P1が式(r)で表される場合にはwが2であり、P1が式(s)で表される場合にはwが3であり、P1が式(t)で表される場合にはwが4であり、P1が式(u)で表される場合にはwが4であり、P1が式(v)で表される場合にはwが8である。
【化21】
【0101】
本発明の式(3)、式(4)および式(r)におけるnの好適な範囲は3〜2000の整数であり、より好ましくは20〜1000の整数であり、更に好ましくは40〜500の整数である。また、式(5)、式(6)、式(7)、式(s)、式(t)、式(u)および式(v)におけるnの好適な範囲は3〜1000の整数であり、好ましくは10〜500の整数であり、更に好ましくは20〜250の整数である。
【0102】
本発明の一態様では、式(1)、式(2)におけるP2は、式(8)で示される。ここで、式(1)、式(2)におけるvは1である。
【化22】
【0103】
式中、mはポリエチレングリコール鎖1本あたりの繰り返しユニット数であり、分子量分布を有するポリエチレングリコールにおいては、化合物の数平均分子量(Mn)に基づいて、各種理論的な計算をすることにより算出することと定義する。
【0104】
本発明の別の一態様では、式(1)、式(2)におけるP2は、式(9)で示される。
【化23】
【0105】
式中、bは0または2である。ここで、式(1)、式(2)におけるvはb+2である。
【0106】
本発明の式(8)におけるmの好適な範囲は3〜2000の整数であり、より好ましくは20〜1000の整数であり、更に好ましくは40〜500の整数である。また、式(9)におけるmの好適な範囲は3〜1000の整数であり、好ましくは10〜500の整数であり、更に好ましくは20〜250の整数である。
【0107】
本発明の生分解性ポリエチレングリコール誘導体は、P1からなるポリエチレングリコール中間体に対して、置換基を有する環状ベンジリデンアセタールリンカーを介して、P2からなるポリエチレングリコール中間体を連結することにより合成できる。この連結によって生じる結合は、反応に使用される官能基の組み合わせによって決定されるものであり、前記2価のスペーサーZ1およびZ2に含まれるエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基である。合成した当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体は、必要に応じて末端官能基を化学変換する。この官能基変換に用いられる反応は、従来公知の方法を用いることができるが、式(1)、式(2)の環状ベンジリデンアセタール基、前記2価のスペーサーZ1、Z2、Z3およびZ4に含まれる結合を分解しない条件を適切に選択しなければならない。なお、当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体の合成において、環状ベンジリデンアセタールリンカーを導入するための環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物は、P1からなるポリエチレングリコール中間体と結合させた後、P2からなるポリエチレングリコール中間体と結合させても、P2からなるポリエチレングリコール中間体と結合させた後、P1からなるポリエチレングリコール中間体と結合させてもいずれでもよい。当該生分解性ポリエチレングリコール誘導体を合成する典型的な例としては、以下のような工程が挙げられる。ここでは、式(1)で表される生分解性ポリエチレングリコール誘導体の合成方法を代表例として説明する。
【0108】
(A) 環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物
【化24】
(式中、R1は水素原子または炭化水素基であり;
R2、R3、R4およびR5は、それぞれ独立して電子吸引性もしくは電子供与性の置換基、または水素原子である。)
【0109】
【化25】
【0110】
化学反応可能な官能基であるヒドロキシ基を有する式(17)のカルボニル化合物、およびアミノ基がフタロイル基で保護されたフタルイミド基を有する式(18)の1,2-ジオール誘導体をトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、酸触媒存在下、反応させることで、環状ベンジリデンアセタール基を有する下記式(19)の化合物を得る。得られた化合物は、抽出、再結晶、吸着剤処理またはカラムクロマトグラフィーなどで精製してもよい。カルボニル化合物の代わりに、対応する低級アルコールのアセタール誘導体を使用することもできる。低級アルコールは好ましくは炭素数1〜5のアルコールであり、更に好ましくはメタノールまたはエタノールである。酸触媒は有機酸または無機酸のいずれでもよく、特に制限は無いが、具体的な例を挙げればp-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム、メタンスルホン酸、10-カンファースルホン酸、塩化水素、ヨウ素、塩化アンモニウム、シュウ酸および三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などである。
【0111】
【化26】
【0112】
ここで「保護基」とは、ある反応条件下で分子中の特定の化学反応可能な官能基の反応を防止または阻止する成分である。保護基は、保護される化学反応可能な官能基の種類、使用される条件および分子中の他の官能基もしくは保護基の存在により変化する。保護基の具体的な例は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば「Wuts, P. G. M.; Greene, T. W. Protective Groups in Organic Synthesis, 4th ed.; Wiley-Interscience: New York, 2007」に記載されている。また、保護基で保護された官能基は、それぞれの保護基に適した反応条件を用いて脱保護、すなわち化学反応させることで、元の官能基を再生させることができる。したがって、本明細書では、保護基で保護されており、各種反応によって脱保護が可能な官能基は「化学反応可能な官能基」に含む。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されている。
【0113】
式(17)の化合物の化学反応可能な官能基は、ヒドロキシ基以外の官能基も用いることができる。具体的な例としては、ヒドロキシアルキル基、アミノ基、アミノアルキル基、カルボキシ基およびカルボキシアルキル基などが挙げられる。また、上記官能基は、アセタール化反応の酸性条件で安定、かつ環状ベンジリデンアセタール基が分解する接触還元以外の反応条件で脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。保護される官能基と保護基の好ましい組み合わせとして、保護される官能基がヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基のときは、例えばシリル系保護基およびアシル系保護基が挙げられ、具体的にはt-ブチルジフェニルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、アセチル基およびピバロイル基などが挙げられる。保護される官能基がアミノ基またはアミノアルキル基のときは、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基および2-(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル基などが挙げられる。保護される官能基がカルボキシ基またはカルボキシアルキル基のときは、例えばアルキルエステル系保護基およびシリルエステル系保護基が挙げられ、具体的にはメチル基、9-フルオレニルメチル基およびt-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。具体的な保護基の種類および代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されており、それぞれの保護基に適した反応条件を選択し、親水性ポリマー中間体との反応前に脱保護を行うことができる。
【0114】
また、式(18)の化合物の1,2-ジオール部分を除く化学反応可能な官能基には、フタルイミド基以外の官能基も用いることができる。化学反応可能な官能基が保護基で保護された官能基である場合は、保護基はアセタール化反応の酸性条件で安定、かつベンジリデンアセタール基が分解する接触還元以外の反応条件で脱保護可能である必要がある。
保護される官能基と保護基の好ましい組み合わせとして、保護される官能基がアミノ基のときは、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基および2-(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、保護される官能基がヒドロキシ基のときは、例えばシリル系保護基およびアシル系保護基が挙げられ、具体的にはt-ブチルジフェニルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、アセチル基およびピバロイル基などが挙げられる。保護される官能基がカルボキシ基のときは、例えばアルキルエステル系保護基およびシリルエステル系保護基が挙げられ、具体的にはメチル基、9-フルオレニルメチル基およびt-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。保護される官能基がスルファニル基のときは、例えばチオエーテル系保護基、チオカーボネート系保護基およびジスルフィド系保護基が挙げられ、具体的にはS-2,4-ジニトロフェニル基、S-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびS-t-ブチルジスルフィド基などが挙げられる。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されており、それぞれの保護基に適した反応条件を選択することができる。ただし、化学反応可能な官能基が、保護基で保護されていなくてもアセタール化反応を阻害しない官能基の場合は、保護基を使用する必要は無い。
【0115】
(B) P1からなるポリエチレングリコール中間体
開始剤であるメタノールをトルエン中もしくは無溶媒で、金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウムまたは水素化カリウムなどのアルカリ条件下、エチレンオキシドをメタノールに対して3〜2000モル当量重合させ、式(20)のポリエチレングリコールを得る。開始剤としては炭素数1〜24の炭化水素基を有するアルコールが好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、フェノールおよびベンジルアルコールなどが挙げられる。当該ポリエチレングリコールは、化学反応可能な官能基であるヒドロキシ基を有するため、そのまま環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物との反応に用いることもできる。
【0116】
【化27】
【0117】
式(20)のポリエチレングリコールをトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジンまたは4-ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、塩化メタンスルホニルと反応させることで、式(21)のポリエチレングリコール中間体を得る。上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(20)のポリエチレングリコールの水酸基に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。得られた化合物は、抽出、再結晶、吸着剤処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィーまたは超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0118】
【化28】
【0119】
式(21)のポリエチレングリコール中間体における化学反応可能な官能基は他の官能基も用いることができる。化学反応可能な官能基の好ましい例としては、当該ポリエチレングリコール中間体と前記環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物の反応によって生じる結合が、式(1)の2価のスペーサーZ1に含まれるエーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、アミド結合、2級アミノ基もしくはこれらを含むアルキレン基、単結合またはアルキレン基となる官能基であり、具体的にはハロゲン原子、活性エステル、活性カーボネート、アルデヒド基、アミノ基、ヒドロキシ基およびカルボキシ基などが挙げられる。
【0120】
(C) 環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物とP1からなるポリエチレングリコール中間体の反応
式(19)のベンジリデンアセタールリンカー化合物と式(21)のポリエチレングリコール中間体をトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、t-ブトキシカリウムまたはヘキサメチルジシラザンナトリウムなどの有機塩基、もしくは炭酸カリウム、水酸化カリウムまたは水素化ナトリウムなどの無機塩基の存在下、反応させることで、式(22)の化合物を得る。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(21)のポリエチレングリコール中間体の化学反応可能な官能基に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。得られた化合物は、前述の精製手段にて精製してもよい。
【0121】
【化29】
【0122】
環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物の化学反応可能な官能基は、ポリエチレングリコール中間体との反応の前に官能基変換を行ってもよい。環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物とポリエチレングリコール中間体との反応の反応条件は、環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物の化学反応可能な官能基およびポリエチレングリコール中間体の化学反応可能な官能基の組み合わせによって決定されるものであり、従来公知の方法を用いることができるが、式(1)、式(2)の環状ベンジリデンアセタール基、前記2価のスペーサーZ1およびZ2に含まれる結合を分解しない条件を適切に選択する必要がある。
【0123】
式(22)の化合物を水、メタノールまたはエタノールなどのプロトン性溶媒、もしくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、エチレンジアミン、メチルヒドラジンまたはメチルアミンなどの塩基性有機化合物、もしくはヒドラジン、ヒドロキシアミンまたは水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物を用いて処理することで、フタルイミド基が脱保護されてアミノ基に変換された式(23)の化合物を得る。塩基性化合物の使用割合は、特に制限はないが、式(22)の化合物の化学反応可能な官能基に対して等モル以上が好ましい。また、塩基性化合物を溶媒として用いてもよい。得られた化合物は、前述の精製手段にて精製してもよい。
【0124】
【化30】
【0125】
(D) P2からなるポリエチレングリコール中間体
P2からなるポリエチレングリコール中間体は、ポリエチレングリコールの少なくとも2つの末端に化学反応可能な官能基を有しており、好ましい例を挙げれば、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基、ビニル基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基、アジド基およびヒドロキシ基である。更に具体的には、環状アセタールリンカーのアミノ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基またはカルボキシ基であり、環状アセタールリンカーのチオール基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、活性エステル基、活性カーボネート基、アルデヒド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、マレイミド基、ビニルスルホン基、アクリル基、スルホニルオキシ基、カルボキシ基、チオール基、ジチオピリジル基、α-ハロアセチル基、アルキニル基、アリル基またはビニル基であり、環状アセタールリンカーのアルデヒド基またはカルボキシ基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基、アミノ基、オキシアミノ基、ヒドラジド基またはヒドロキシ基であり、環状アセタールリンカーのアルキニル基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基は、チオール基またはアジド基であり、環状アセタールリンカーのアジド基と反応して共有結合を形成することが可能な官能基はアルキニル基である。
【0126】
P2からなるポリエチレングリコール中間体における化学反応可能な官能基は、同一でも異なっていてもよく、好ましくは2種類の異なる官能基の組み合わせである。
2種類の異なる官能基の好ましい組み合わせとして、一方が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、もう一方はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、一方がアルデヒド基のときは、もう一方はマレイミド基、ビニルスルホン基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、一方がマレイミド基、ビニルスルホン基またはα-ハロアセチル基のときは、もう一方は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、一方がアルキニル基またはアジド基のときは、もう一方はマレイミド基、ビニルスルホン基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、オキシアミノ基およびヒドロキシ基から選択される基であり、一方がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、もう一方はアルキニル基、アジド基、チオール基、ヒドロキシ基またはカルボキシ基であり、一方がチオール基またはヒドロキシ基のときは、もう一方はアミノ基、オキシアミノ基、アジド基およびカルボキシ基から選択される基である。より好ましくは、一方が活性エステル基または活性カーボネート基のときは、もう一方はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、一方がアルデヒド基のときは、もう一方はマレイミド基、α-ハロアセチル基、アルキニル基およびアジド基から選択される基であり、一方がマレイミド基またはα-ハロアセチル基のときは、もう一方は活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基から選択される基であり、一方がアルキニル基またはアジド基のときは、もう一方はマレイミド基、α-ハロアセチル基、活性エステル基、活性カーボネート基、アミノ基、オキシアミノ基およびヒドロキシ基から選択される基であり、一方がアミノ基またはオキシアミノ基のときは、もう一方はアルキニル基、アジド基、ヒドロキシ基またはチオール基であり、一方がチオール基またはヒドロキシ基のときは、もう一方はアミノ基、オキシアミノ基およびアジド基から選択される基である。
【0127】
また、P2からなるポリエチレングリコール中間体における化学反応可能な官能基のうち、環状アセタールリンカーと反応させる官能基以外の官能基は、環状アセタールリンカーとの反応の反応条件で安定、かつ環状ベンジリデンアセタール基が分解する接触還元以外の反応条件で脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。保護される官能基と保護基の好ましい組み合わせとして、保護される官能基がアミノ基のときは、例えばアシル系保護基およびカーバメート系保護基が挙げられ、具体的にはトリフルオロアセチル基、フタルイミド基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基および2-(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル基などが挙げられる。また、保護される官能基がヒドロキシ基のときは、例えばシリル系保護基およびアシル系保護基が挙げられ、具体的にはt-ブチルジフェニルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、アセチル基およびピバロイル基などが挙げられる。保護される官能基がカルボキシ基のときは、例えばアルキルエステル系保護基およびシリルエステル系保護基が挙げられ、具体的にはメチル基、9-フルオレニルメチル基およびt-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。保護される官能基がスルファニル基のときは、例えばチオエーテル系保護基、チオカーボネート系保護基およびジスルフィド系保護基が挙げられ、具体的にはS-2,4-ジニトロフェニル基、S-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびS-t-ブチルジスルフィド基などが挙げられる。保護基の代表的な脱保護条件は前述の文献に記載されており、それぞれの保護基に適した反応条件を選択することができる。ただし、化学反応可能な官能基が、保護基で保護されていなくても環状アセタールリンカーとの反応を阻害しない官能基の場合は、保護基を使用する必要は無い。
【0128】
ここでは、直鎖型のポリエチレングリコールの一方の末端にトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基、もう一方の末端に活性カーボネート基であるN-スクシンイミジルカーボネートを有する式(24)の化合物を用いて説明する。2種類の異なる官能基の組み合わせを有するポリエチレングリコールの好適な例は、例えばNOF Corporation (Tokyo, Japan; see www.nof.co.jp/english: Catalogue Ver.15).に記載されているが、それらに限定されない。
【0129】
【化31】
【0130】
(E) 環状ベンジリデンアセタールリンカーを有するP1からなるポリエチレングリコール中間体とP2からなるポリエチレングリコール中間体の反応
式(23)の化合物をトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジンまたは4-ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、式(24)の化合物と反応させることで、環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体である式(25)の化合物を得る。上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(23)の化合物の化学反応可能な官能基に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。
【0131】
【化32】
【0132】
P1からなるポリエチレングリコール中間体とP2からなるポリエチレングリコール中間体との反応の反応条件は、P1からなるポリエチレングリコール中間体の化学反応可能な官能基およびP2からなるポリエチレングリコール中間体の化学反応可能な官能基の組み合わせによって決定されるものであり、従来公知の方法を用いることができるが、式(1)、式(2)の環状ベンジリデンアセタール基、前記2価のスペーサーZ1、Z2およびZ3に含まれる結合を分解しない条件を適切に選択する必要がある。
【0133】
ここで得られた化合物は、抽出、再結晶、吸着剤処理、再沈殿、カラムクロマトグラフィーまたは超臨界抽出等の精製手段にて精製してもよい。
【0134】
吸着剤処理で精製する場合の吸着剤としては、アルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤が好ましい。具体的には酸化物中にアルミニウムとケイ素との一方または両方を含む酸化物であり、より具体的には酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との複合酸化物、酸化アルミニウムと他の金属との複合酸化物および二酸化ケイ素と他の金属との複合酸化物が挙げられる。ここで言う他の金属としては、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウムが挙げられる。
【0135】
上述の吸着精製において、酸性官能基を有する不純物を取り除くためには、酸性物質吸着能を有する吸着剤が好ましく、具体的な例を挙げれば、協和化学工業(株)製のキョーワードシリーズのキョーワード300(2.5MgO・Al2O3・0.7CO3・nH2O)、キョーワード500(Mg6Al2(OH)16(CO3)・4H2O)、キョーワード1000(Mg4.5Al2(OH)13(CO3)・3.5H2O)などが挙げられる。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0136】
また、上述の吸着精製において、塩基性官能基を有する不純物を取り除くためには塩基性物質吸着能を有する吸着剤が好ましく、具体的な例を挙げれば、キョーワード600(MgO・3SiO2・nH2O)、キョーワード700(Al2O3・9SiO2・nH2O)、キョーワード200B(Al2O3・2.0H2O)などの塩基性物質吸着能を有する吸着剤であり、好ましくはキョーワード700(Al2O3・9SiO2・nH2O)およびキョーワード200B(Al2O3・2.0H2O)である。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは他の吸着剤と組み合わせて使用してもよい。
【0137】
さらに、上述の吸着精製において、中和塩を取り除くためには塩吸着能の高い吸着剤が好ましく、具体的な例としては、キョーワード2000(4.5MgO・Al2O3)、キョーワード200B(Al2O3・2.0H2O)などが挙げられる。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0138】
(F) 環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体の末端官能基変換
式(25)の化合物を水、メタノールまたはエタノールなどのプロトン性溶媒、もしくはアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、エチレンジアミン、メチルヒドラジンまたはメチルアミンなどの塩基性有機化合物、もしくはヒドラジン、ヒドロキシアミン、炭酸カリウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物を用いて処理することで、トリフルオロアセチル基が脱保護されてアミノ基に変換された式(26)の化合物を得る。塩基性化合物の使用割合は、特に制限はないが、式(25)の化合物の化学反応可能な官能基に対して等モル以上が好ましい。また、塩基性化合物を溶媒として用いてもよい。得られた化合物は、前述の精製手段にて精製してもよい。
【0139】
【化33】
【0140】
更に、式(26)の化合物をトルエン、ベンゼン、キシレン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドなどの非プロトン性溶媒、もしくは無溶媒中、トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジンまたは4-ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、もしくは炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジルと反応させることで、末端にマレイミド基が導入された式(27)の化合物を得る。上記有機塩基、無機塩基は用いなくとも良い。有機塩基、無機塩基の使用割合は、特に制限はないが、式(26)の化合物の化学反応可能な官能基に対して等モル以上が好ましい。また、有機塩基を溶媒として用いてもよい。得られた化合物は、前述の精製手段にて精製してもよい。
【0141】
【化34】
【0142】
当該環状ベンジリデンアセタールリンカーを有する生分解性ポリエチレングリコール誘導体の末端官能基変換は、従来公知の方法を用いることができるが、式(1)、式(2)の環状ベンジリデンアセタール基、前記2価のスペーサーZ1、Z2およびZ3に含まれる結合を分解しない条件を適切に選択する必要がある。
【0143】
式(1)と式(2)は、P1とP2に対する環状ベンジリデンアセタールリンカーの結合の向きが反対であるが、環状ベンジリデンアセタールリンカーを導入するための環状ベンジリデンアセタールリンカー化合物は、P1からなるポリエチレングリコール中間体と結合させた後、P2からなるポリエチレングリコール中間体と結合させても、P2からなるポリエチレングリコール中間体と結合させた後、P1からなるポリエチレングリコール中間体と結合させてもいずれでもよく、式(1)と式(2)で表される化合物は、本質的に同じ手法により合成することが可能である。なお、式(1)と式(2)で表される化合物の合成例については、以下の実施例で具体的に示しており、これらが本質的に同じ手法により合成できることは、当業者によって理解されるであろう。
【実施例】
【0144】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0145】
1H-NMR分析では日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600を使用した。測定にはφ5mmチューブを用い、重水素化溶媒がCDCl3、CD3CNまたはCD3ODの場合は、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用し、D2Oの場合はHDOを基準とした。
【0146】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析では、GPCシステムとしてSHODEX
GPC SYSTEM-11、検出器である示唆屈折計としてSHODEX RIX8、GPCカラムとしてSHODEX KF801L、KF803L、KF804L(φ8mm×300mm)を3本直列に繋ぎ、カラムオーブンの温度を40℃とした。溶離液としてはテトラヒドロフランを用い、流速は1ml/分とし、試料の濃度は0.1wt%とし、注入容量は0.1mLとして測定を行った。検量線は関東化学(株)製のエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、並びにPolymer Laboratory製の分子量600〜70000のポリエチレングリコールまたはポリエチレンオキシドのGPC用Polymer Standardsを用いて作成したものを用いた。データの解析はBORWIN GPC計算プログラムを使用した。Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量を表わし、分子量分布はMw/Mnとしてその計算値を示した。
【0147】
加水分解試験で使用するpD 5.5のMES(2-morpholinoethanesulfonic acid)重水緩衝液とpD 7.4のHEPES(2-[4-(Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid])重水緩衝液は、それぞれ0.1MのMES重水溶液と0.1MのHEPES重水溶液に0.1Mの水酸化ナトリウム重水溶液を加え、「Glasoe, P. K.; Long,
F. A. J. Phys. Chem. 1960, 64, 188-190」に記載されている以下の関係式に基づいて調製した。

pD=pHメーターの測定値+0.40
【0148】
式(35)、式(44)、式(45)、式(47)および式(48)の化合物の加水分解率は1H-NMRで評価し、アセタール基の水素の積分値をI1、加水分解で生成するアルデヒド基の水素の積分値をI2として、次の計算式により算出した。

加水分解率(%)=[I2/(I1+I2)]×100
【0149】
式(41)および式(54)の化合物の加水分解率はGPCで評価し、リンカーの加水分解で分割されていないポリエチレングリコール(分子量約10000)のピーク面積をA1、リンカーの加水分解で分割されたポリエチレングリコール(分子量約5000)のピーク面積をA2として、次の計算式により算出した。

加水分解率(%)=[A2/(A1+A2)]×100

式(74)および式(76)の化合物の加水分解率はGPCで評価し、リンカーの加水分解で分割されていないポリエチレングリコール(分子量約15000)のピーク面積をA1、リンカーの加水分解で一部分割されたポリエチレングリコール(分子量約10000)のピーク面積をA2、完全に分割されたポリエチレングリコール(分子量約5000)のピーク面積をA3として、次の計算式により算出した。

加水分解率(%)=[A3/(A1+A2+A3)]×100
【0150】
(実施例1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管および冷却管を装備した200 mLの三つ口フラスコに1,2,6-ヘキサントリオール(30.0 g, 0.224 mol)、アセトンジメチルアセタール(25.6 g, 0.246 mol)およびp-トルエンスルホン酸一水和物(0.426 g, 2.24 mmol)を仕込み、80℃にてメタノールの留去を行いながら、3時間反応を行った。トリエチルアミン(0.453 g, 4.48 mmol)を加えてしばらく攪拌し、酢酸エチルで希釈後、20wt%食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、式(28)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
1.35(3H, s, -CH3), 1.41(3H, s, -CH3), 1.49-1.67(6H,
m, >CHCH2CH2CH2-), 2.07(1H, brs, -OH), 3.51(1H, t, -OCH2CH<),
3.64(2H, t, -CH2OH),
4.04(1H, dd, -OCH2CH<), 4.07-4.10(1H, m, -OCH2CH<)
【0151】
【化35】
【0152】
(実施例2)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した500 mLの四つ口フラスコに式(28)の化合物(20.0 g, 0.115 mol)、トリエチルアミン(23.3 g, 0.230 mol)およびトルエン(200 g)を仕込み、10℃以下に冷却した。冷却を続けながら、滴下漏斗に準備した塩化メタンスルホニル(19.8 g, 0.173 mol)を徐々に滴下した。滴下終了後、20℃で2時間反応を行った。エタノール(7.97 g, 0.173 mol)を加えてしばらく攪拌し、濾過後、有機層をイオン交換水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、溶媒を減圧留去して式(29)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
1.35(3H, s, -CH3), 1.40(3H, s, -CH3), 1.44-1.83(6H,
m, >CHCH2CH2CH2-), 3.01(3H, s, -OSO2CH3), 3.51(1H, t, -OCH2CH<), 4.03-4.11(2H, m, -OCH2CH<, -OCH2CH<), 4.24(2H, t, -CH2OSO2CH3)
【0153】
【化36】
【0154】
(実施例3)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した500 mLの四つ口フラスコに式(29)の化合物(20.0 g, 79.3 mmol)、フタルイミドカリウム(17.6 g, 95.2 mmol)および脱水ジメチルホルムアミド(200 g)を仕込み、60℃で2時間反応を行った。10℃以下に冷却し、イオン交換水(400 g)を加えてしばらく攪拌した後、酢酸エチル/ヘキサン(60/40, v/v)混合溶液で抽出した。有機層を0.2wt%炭酸カリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧留去して式(30)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
1.34(3H, s, -CH3), 1.39(3H, s, -CH3), 1.44-1.75(6H,
m, >CHCH2CH2CH2-), 3.50(1H, t, -OCH2CH<), 3.69(2H, t, -CH2-phthalimide), 4.01-4.09(2H, m, -OCH2CH<, -OCH2CH<), 7.71-7.85(4H, m, -phthalimide)
【0155】
【化37】
【0156】
(実施例4)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した1 Lの四つ口フラスコに式(30)の化合物(15.2 g, 50.0 mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(951 mg, 5.00 mmol)およびメタノール(500 mL)を仕込み、室温で4時間反応を行った。トリエチルアミン(1.01 g, 10.0 mmol)を加えてしばらく攪拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣をクロロホルムに溶解し、イオン交換水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧留去して式(31)の化合物を得た。

1H-NMR(CD3CN, 内部標準TMS); δ(ppm):
1.24-1.61(6H, m, >CHCH2CH2CH2-), 2.69(1H,
t, -OH), 2.75(1H, d, -OH), 3.17-3.21(1H, m, -OCH2CH<), 3.31-3.37(1H, m, -OCH2CH<), 3.39-3.43(1H, m,
-OCH2CH<), 3.54(2H, t, -CH2-phthalimide),
7.67-7.75(4H, m, -phthalimide)
【0157】
【化38】
【0158】
(実施例5)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管および冷却管を装備した300 mLの三つ口フラスコに式(31)の化合物(3.87 g, 14.7 mmol)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(1.20 g, 9.83 mmol)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(247 mg, 0.983 mmol)およびトルエン(180 g)を仕込み、副生する水をトルエンで共沸除去しながら4時間反応を行った。トリエチルアミン(199 mg, 1.97 mmol)を加えてしばらく攪拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣をクロロホルムに溶解し、20wt%食塩水、イオン交換水の順で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧留去して式(32)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.41-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.57-4.26(5H, m, -OCH2CH<, -CH2-phthalimide),
5.71(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.79-6.82(2H, m, arom.
H), 7.31-7.35(2H, m, arom. H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
【0159】
【化39】
【0160】
(実施例6)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した300 mLの四つ口フラスコに脱水メタノール(12.8 g, 0.400 mol)、脱水トルエン(150 g)および金属ナトリウム0.3 g(13 mmol)を仕込み、窒素を吹き込みながら金属ナトリウムが溶解するまで室温で攪拌した。この溶液を5 Lオートクレーブへ仕込み、系内を窒素置換後、100℃に昇温した。100〜130℃、1 MPa以下の圧力でエチレンオキシド(1,987 g, 45 mol)を加えた後、更に2時間反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキシドガスを除去後、60℃に冷却し、85%リン酸水溶液でpH 7.5に調整して式(33)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS); δ(ppm):
2.68(1H, t, OH), 3.38(3H, s, CH3O-), 3.49-3.85(450H,
m, -(OCH2CH2)n-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5119, 重量平均分子量(Mw): 5226, 多分散度(Mw/Mn): 1.021
【0161】
【化40】
【0162】
(実施例7)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管および冷却管を装備した500 mLの三つ口フラスコに式(33)の化合物(100 g, 20.0 mmol)とトルエン(250g)を仕込み、水をトルエンで共沸除去した。40℃へ冷却後、トリエチルアミン(3.24 g, 32.0 mmol)を仕込み、滴下漏斗に準備した塩化メタンスルホニル(2.75
g, 24.0 mmol)を徐々に滴下した。滴下終了後、40℃で3時間反応を行った。エタノール(1.11 g, 24.0 mmol)を加えてしばらく攪拌し、濾過後、酢酸エチル(200 g)で希釈した。ヘキサン(500 g)を添加して晶析を行い、濾過後、結晶を酢酸エチル(500 g)に溶解させた。ヘキサン(500g)を添加して再度晶析を行い、濾過後、減圧下で乾燥して式(34)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
3.08(3H, s, -OSO2CH3), 3.38(3H, s,
CH3O-), 3.52-3.85(448H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-),
4.37-4.39(2H, m, -CH2OSO2CH3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5197, 重量平均分子量(Mw): 5306, 多分散度(Mw/Mn): 1.021
【0163】
【化41】
【0164】
(実施例8)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコに式(34)の化合物(5.00 g, 1.00 mmol)、式(26)の化合物(551 mg, 1.50 mmol)、炭酸カリウム(691 mg, 5.00 mmol)およびアセトニトリル(25 g)を仕込み、80℃で4時間反応を行った。溶媒を減圧留去した後、残渣を酢酸エチル(100 g)に溶解し、濾過を行った。ヘキサン(100 g)を添加して晶析を行い、濾過後、減圧下で乾燥して式(35)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.25(455H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2-phthalimide), 5.72(0.6H,
s, >CH-), 5.84(0.4H, s, >CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom. H),
7.35-7.39(2H, m, arom. H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5462, 重量平均分子量(Mw): 5582, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0165】
【化42】
【0166】
(実施例9)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコに式(35)の化合物(2.00 g, 0.400 mmol)、メタノール(7 g)およびエチレンジアミン一水和物(0.781 g, 10.0 mmol)を仕込み、40℃にて4時間反応を行った。20wt%食塩水で希釈し、ジクロロメタンで抽出後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル(50 g)に溶解して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、ヘキサン(50 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(36)の化合物を得た。

1H-NMR(CD3OD, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.43-1.79(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.77(2H, t, -CH2-NH2), 3.36(3H, s, CH3O-),
3.50-4.29(453H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<), 5.70(0.6H, s, >CH-), 5.81(0.4H,
s, >CH-), 6.93-6.98(2H, m, arom. H), 7.33-7.41(2H, m, arom.
H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5332, 重量平均分子量(Mw): 5454, 多分散度(Mw/Mn): 1.023
【0167】
【化43】
【0168】
(実施例10)
【化44】
【0169】
特開2010-248504号公報に記載の方法で合成した式(37)の化合物に対して、塩酸を用いてt-ブチル基を除去することで、式(38)の化合物を得た。

1H-NMR(D2O, 内部標準TMS);
δ(ppm):
3.14(2H, t, -CH2NH2),
3.40-4.00(452H, m, -(OCH2CH2)m-)
【0170】
【化45】
【0171】
(実施例11)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコへ式(38)の化合物(5.00 g, 1.00 mmol)、ジクロロメタン(30 g)、およびトリエチルアミン(607 mg, 6.00 mmol)を仕込み、トリフルオロ酢酸無水物(630 mg, 3.00 mmol)を加えて25℃にて3時間反応を行った。pH 7.0のリン酸緩衝液を加えてしばらく攪拌した後、ジクロロメタン層を回収して、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル(100 g)に溶解して無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、ヘキサン(100 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(39)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
2.58(1H, t, -OH), 3.40-3.95(450H, m, -(OCH2CH2)m-),
7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
【0172】
【化46】
【0173】
(実施例12)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコへ式(39)の化合物(4.50 g, 0.900 mmol)とジクロロメタン(27 g)を仕込み、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(692 mg, 2.70 mmol)およびトリエチルアミン(410 mg, 4.05 mmol)を加えて25℃にて4時間反応を行った。濾過後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル(90 g)に溶解した後、ヘキサン(90 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(40)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
2.84(4H, s, -succinimide), 3.40-3.95(448H, m, -(OCH2CH2)m-OCH2-),
4.44-4.48(2H, m, -CH2O-COO-succinimide), 7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5241, 重量平均分子量(Mw): 5356, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0174】
【化47】
【0175】
(実施例13)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコへ式(40)の化合物(4.00 g, 0.800 mmol)、式(36)の化合物(4.20 g, 0.840 mmol)およびトルエン(24 g)を仕込み、50℃にて2時間反応を行った。続いて、キョーワード700(1.2 g)を加えて、50℃にて2時間吸着処理を行った。濾過後、ヘキサン(24 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(41)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.31-3.34(2H, m, -CH2-HNCOO-), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.25(903H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-, -OCH2CH<),
5.19(1H, brs, -HNCOO-), 5.72(0.6H, s, >CH-), 5.84(0.4H, s,
>CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom. H), 7.35-7.39(2H, m, arom. H),
7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10458, 重量平均分子量(Mw): 11180, 多分散度(Mw/Mn): 1.069
【0176】
【化48】
【0177】
(実施例14)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した100 mLの三つ口フラスコへ式(41)の化合物(5.00 g, 0.200 mmol)、1M炭酸カリウム水溶液(25 g)を仕込み、25℃にて2時間反応を行った。20wt%食塩水で希釈し、ジクロロメタンで抽出後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル(100 g)に溶解して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過後、ヘキサン(100 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(42)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.86(2H, t, -CH2-NH2), 3.31-3.34(2H, m, -CH2-HNCOO-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.25(901H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<), 5.19(1H, brs, -HNCOO-),
5.72(0.6H, s, >CH-), 5.84(0.4H, s, >CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom.
H), 7.35-7.39(2H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10309, 重量平均分子量(Mw): 11021, 多分散度(Mw/Mn): 1.069
【0178】
【化49】
【0179】
(実施例15)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコへ式(42)の化合物(2.00 g, 0.200 mmol)とトルエン(10 g)を仕込み、3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジル(63.9 mg, 0.240 mmol)を加えて40℃にて2時間反応を行った。濾過後、酢酸エチル(40 g)で希釈し、ヘキサン(50 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(43)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.44(2H, t, -CH2CH2-maleimide), 3.27-3.34(4H, m,
-CH2-HNCOO-, -CH2-NHCOCH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.25(903H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -CH2CH2-maleimide),
5.19(1H, brs, -HNCOO-), 5.72(0.6H, s, >CH-), 5.84(0.4H, s,
>CH-), 6.70(2H, s, -maleimide), 6.89-6.91(2H, m, arom. H),
7.35-7.39(2H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10513, 重量平均分子量(Mw): 11249, 多分散度(Mw/Mn): 1.070
【0180】
【化50】
【0181】
(実施例16)
3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドを用いて、実施例1〜8と同様の方法にて式(44)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.38-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.23(455H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2-phthalimide), 5.70(0.6H,
s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom. H),
7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5485, 重量平均分子量(Mw): 5606, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0182】
【化51】
【0183】
(実施例17)
2-ブロモ-5-ヒドロキシベンズアルデヒドを用いて、実施例1〜8と同様の方法にて式(45)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.38-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.23(455H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2-phthalimide),
5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom.
H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5548, 重量平均分子量(Mw): 5670, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0184】
【化52】
【0185】
(実施例18)
【化53】
【0186】
実施例1〜4と類似の方法にて式(46)の化合物を合成した後、3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドを用いて、実施例5〜8と同様の方法にて式(47)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.89 (2H, m, -CH2CH2-phthalimide),
3.19(1H, m, -OCH2CH<), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.41(456H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2CH2CH2-phthalimide),
5.34(0.8H, s, >CH-), 5.42(0.2H, s, >CH-), 6.95-7.25(3H, m, arom.
H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5498, 重量平均分子量(Mw): 5619, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0187】
【化54】
【0188】
(実施例19)
式(46)の化合物と2-ブロモ-5-ヒドロキシベンズアルデヒドを用いて、実施例5〜8と同様の方法にて式(48)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.89 (2H, m, -CH2CH2-phthalimide),
3.19(1H, m, -OCH2CH<), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.41(456H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2CH2CH2-phthalimide),
5.61(0.8H, s, >CH-), 5.68(0.2H, s, >CH-), 6.78-7.40(3H, m, arom.
H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5564, 重量平均分子量(Mw): 5686, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0189】
【化55】
【0190】
(実施例20)
式(39)の化合物に対して、実施例7と類似の方法にて塩化メタンスルホニルを反応させることで、式(49)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
3.08(3H, s, -OSO2CH3),
3.40-3.95(448H, m, -(OCH2CH2)m-OCH2-),
4.37-4.39(2H, m, -CH2OSO2CH3), 7.34(1H,
brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5193, 重量平均分子量(Mw): 5302, 多分散度(Mw/Mn): 1.021
【0191】
【化56】
【0192】
(実施例21)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管および冷却管を装備した300 mLの三つ口フラスコに1,2,6-ヘキサントリオール(2.01 g, 15.0 mmol)、3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(1.40 g, 10.0 mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(19.0 mg, 0.100 mmol)およびトルエン(183 g)を仕込み、副生する水をトルエンで共沸除去しながら4時間反応を行った。トリエチルアミン(20.2 mg, 0.200 mmol)を加えてしばらく攪拌し、10wt%食塩水で洗浄した後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を減圧留去して式(50)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.32-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.50-4.24(5H, m, -OCH2CH<, -CH2-OH),
5.71(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.73-7.24(3H, m, arom.
H)

【化57】
【0193】
(実施例22)
式(50)の化合物と式(49)の化合物を用いて、実施例8と同様の方法にて式(51)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.40-4.25(455H, m, -(OCH2CH2)m-,
-OCH2CH<, -CH2-OH), 5.70(0.6H, s,
>CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom. H),
7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5239, 重量平均分子量(Mw): 5354, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0194】
【化58】
【0195】
(実施例23)
式(51)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させることで、式(52)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.84(4H, s, -succinimide), 3.40-4.25(453H, m, -(OCH2CH2)m-,
-OCH2CH<), 4.33(2H, dd, -CH2O-COO-succinimide),
5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom.
H), 7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5354, 重量平均分子量(Mw): 5472, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0196】
【化59】
【0197】
(実施例24)
【化60】
【0198】
特開2010-248504号公報に記載の方法で合成した式(53)の化合物と式(52)の化合物を用いて、実施例13と同様の方法にて式(54)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.27-3.29(2H, m, -CH2-HNCOO-), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.25(903H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-, -OCH2CH<,
-HNCOO-CH2-), 5.19(1H, brs, -HNCOO-), 5.70(0.6H, s,
>CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom. H),
7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10138, 重量平均分子量(Mw): 10685, 多分散度(Mw/Mn): 1.054
【0199】
【化61】
【0200】
(実施例25)
式(54)の化合物に対して、実施例14と同様の方法にてトリフルオロアセチル基を脱保護した後、実施例15と同様の方法にて3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジルを反応させることで、式(55)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.44(2H, t, -CH2CH2-maleimide), 3.27-3.29(4H, m,
-CH2-HNCOO-, -CH2-NHCOCH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.25(903H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-, -CH2CH2-maleimide),
5.19(1H, brs, -HNCOO-), 5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s,
>CH-), 6.15(1H, brs, -HNCOCH2-), 6.70(2H, s, -maleimide),
6.95-7.21(3H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10291, 重量平均分子量(Mw): 10847, 多分散度(Mw/Mn): 1.054
【0201】
【化62】
【0202】
(実施例26)
【化63】
【0203】
特開2004-197077号公報に記載の方法で合成した式(56)の化合物に対して、トリエチルアミンおよび4-ジメチルアミノピリジン存在下、無水酢酸を反応させることで、式(57)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
2.08(6H, s, CH3CO-), 3.40-4.00(901H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)n-OCH<, -CH2OCH2Ph),
4.22(4H, t, CH3CO2CH2-), 4.54(2H, s, -CH2OCH2Ph),
7.27-7.38(5H, m, -CH2OCH2Ph)
【0204】
【化64】
【0205】
(実施例27)
式(57)の化合物に対して、特開2004-197077号公報に記載の方法でベンジル基を除去した後、実施例7と類似の方法にて塩化メタンスルホニルを反応させることで、式(58)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
2.08(6H, s, CH3CO-), 3.08(3H, s, -OSO2CH3),
3.40-4.00(899H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)n-OCH<), 4.22(4H,
t, CH3CO2CH2-), 4.26-4.42(2H, m, -CH2OSO2CH3)
【0206】
【化65】
【0207】
(実施例28)
3-フルオロ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドと式(58)の化合物を用いて、実施例1〜5および8と同様の方法にて式(59)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.38-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.08(6H, s, CH3CO-), 3.40-4.23(910H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)n-OCH<, -OCH2CH<,
-CH2-phthalimide, CH3CO2CH2-),
5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.95-7.21(3H, m, arom.
H), 7.70-7.86(4H, m, -phthalimide)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10223, 重量平均分子量(Mw): 10458, 多分散度(Mw/Mn): 1.023
【0208】
【化66】
(実施例29)
式(38)の化合物を5-アジドペンタン酸無水物と反応させ、続いてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートと反応させることで、式(60)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.60-1.74(4H, m, -CH2CH2CH2CH2N3),
2.18(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
2.84(4H, s, -succinimide), 3.29(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
3.40-3.85(448H, m, -(OCH2CH2)m-OCH2-),
4.44-4.48(2H, m, -CH2O-COO-succinimide), 6.30(1H, brs, -HNCOCH2-)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5532, 重量平均分子量(Mw): 5665, 多分散度(Mw/Mn): 1.024
【0209】
【化67】
【0210】
(実施例30)
式(59)の化合物に対して、エチレンジアミン一水和物を用いたフタルイミド基の脱保護と水酸化ナトリウム水溶液を用いたアセチル基の除去を行った後、式(60)の化合物を反応させることで、式(61)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(10H, m, >CHCH2CH2CH2-,
-CH2CH2CH2CH2N3),
2.18(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
3.29(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
3.31-3.34(2H, m, -CH2-HNCOO-), 3.40-4.23(1353H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)n-OCH<, -OCH2CH<),
5.19(1H, brs, -HNCOO-), 5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s,
>CH-), 6.30(1H, brs, -HNCOCH2-), 6.95-7.21(3H, m, arom.
H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 14728, 重量平均分子量(Mw): 15582, 多分散度(Mw/Mn): 1.058
【0211】
【化68】
【0212】
(実施例31)
式(61)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させることで、式(62)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(10H, m, >CHCH2CH2CH2-,
-CH2CH2CH2CH2N3),
2.18(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
2.84(8H, s, -succinimide), 3.29(2H, t, -CH2CH2CH2CH2N3),
3.31-3.34(2H, m, -CH2-HNCOO-), 3.40-4.23(1349H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)n-OCH<, -OCH2CH<),
4.44-4.48(4H, m, -CH2O-COO-succinimide), 5.19(1H, brs, -HNCOO-),
5.70(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.30(1H, brs, -HNCOCH2-),
6.95-7.21(3H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 14958, 重量平均分子量(Mw): 15855, 多分散度(Mw/Mn): 1.060
【0213】
【化69】
【0214】
(実施例32)
【化70】
【0215】
ペンタエリスリトールにエチレンオキシドを重合させて合成した式(63)の化合物に対して、実施例7と同様の方法にて塩化メタンスルホニルを反応させることで、式(64)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
3.08(12H, s, -OSO2CH3), 3.47-3.85(1800H,
m, -(OCH2CH2)n-OCH2-),
4.37-4.39(8H, m, -CH2OSO2CH3)
【0216】
【化71】
【0217】
(実施例33)
式(64)の化合物と式(50)の化合物を用いて、実施例8と同様の方法にて式(65)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(24H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.52-4.23(1828H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-OCH2CH<, -CH2-OH), 5.70(2.4H, s,
>CH-), 5.82(1.6H, s, >CH-), 6.95-7.21(12H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 19078, 重量平均分子量(Mw): 19574, 多分散度(Mw/Mn): 1.026
【0218】
【化72】
【0219】
(実施例34)
式(65)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させることで、式(66)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(24H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.84(16H, s, -succinimide), 3.52-4.23(1820H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-OCH2CH<), 4.33(8H, dd, -CH2O-COO-succinimide),
5.70(2.4H, s, >CH-), 5.82(1.6H, s, >CH-), 6.95-7.21(12H, m,
arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 19538, 重量平均分子量(Mw): 20046, 多分散度(Mw/Mn): 1.026
【0220】
【化73】
【0221】
(実施例35)
式(66)の化合物と式(38)の化合物を用いて、実施例13と同様の方法にて式(67)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(24H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.27-3.29(8H, m, -CH2-HNCOO-), 3.52-4.23(3620H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-), 5.19(4H,
brs, -HNCOO-), 5.70(2.4H, s, >CH-), 5.82(1.6H, s, >CH-),
6.95-7.21(12H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 37096, 重量平均分子量(Mw): 39878, 多分散度(Mw/Mn): 1.075
【0222】
【化74】
【0223】
(実施例36)
温度計、窒素吹き込み管および攪拌機を装備した50 mLの三つ口フラスコに式(67)の化合物(4.00 g, 0.100 mmol)とジクロロメタン(20 g)を仕込み、グルタル酸無水物(68.5 mg, 0.600 mmol)、トリエチルアミン(60.7 mg, 0.600 mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(3.7 mg, 0.030 mmol)を加えて、25℃にて6時間反応を行った。濾過後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチル(100 g)に溶解した後、ヘキサン(100 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(68)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(24H, m, >CHCH2CH2CH2-),
1.97(8H, quin, -CH2CH2CH2COOH), 2.38-2.46(16H,
m, -CH2CH2CH2COOH), 3.27-3.29(8H,
m, -CH2-HNCOO-), 3.52-4.23(3620H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-, -CH2O-COCH2-),
5.19(4H, brs, -HNCOO-), 5.70(2.4H, s, >CH-), 5.82(1.6H, s,
>CH-), 6.95-7.21(12H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 38021, 重量平均分子量(Mw): 40873, 多分散度(Mw/Mn): 1.075
【0224】
【化75】
【0225】
(実施例37)
4-ヒドロキシベンズアルデヒドを用いて、実施例21と同様の方法にて式(69)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.32-1.80(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.50-4.24(5H, m, -OCH2CH<, -CH2-OH),
5.71(0.6H, s, >CH-), 5.82(0.4H, s, >CH-), 6.79-6.82(2H, m, arom.
H), 7.31-7.35(2H, m, arom. H)
【0226】
【化76】
【0227】
(実施例38)
式(34)の化合物と式(69)の化合物を用いて、実施例8と同様の方法にて式(70)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.40-4.25(455H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<, -CH2-OH), 5.72(0.6H, s,
>CH-), 5.84(0.4H, s, >CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom. H),
7.35-7.39(2H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5142, 重量平均分子量(Mw): 5255, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0228】
【化77】
【0229】
(実施例39)
式(70)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させることで、式(71)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.84(4H, s, -succinimide), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.40-4.25(453H, m, -(OCH2CH2)n-,
-OCH2CH<), 4.33(2H, dd, -CH2O-COO-succinimide),
5.72(0.6H, s, >CH-), 5.84(0.4H, s, >CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom.
H), 7.35-7.39(2H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5257, 重量平均分子量(Mw): 5373, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0230】
【化78】
【0231】
(実施例40)
式(49)の化合物と式(69)の化合物を用いて、実施例8と同様の方法にて反応させた後、実施例14と同様の方法にてトリフルオロアセチル基を脱保護して、式(72)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(6H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.86(2H, t, -CH2-NH2), 3.40-4.25(453H, m, -(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -CH2-OH), 5.72(0.6H, s,
>CH-), 5.84(0.4H, s, >CH-), 6.89-6.91(2H, m, arom. H),
7.35-7.39(2H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 5126, 重量平均分子量(Mw): 5239, 多分散度(Mw/Mn): 1.022
【0232】
【化79】
【0233】
(実施例41)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機および冷却管を装備した50 mLの三つ口フラスコへ式(71)の化合物(2.00 g, 0.400 mmol)、式(72)の化合物(2.10 g, 0.420 mmol)およびトルエン(12 g)を仕込み、50℃にて2時間反応を行った。続いて、キョーワード200B(0.6 g)を加えて、50℃にて2時間吸着処理を行った。濾過後、ヘキサン(12 g)を添加して晶析を行った。濾過後、減圧下で乾燥して式(73)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(12H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.27-3.29(2H, m, -CH2-HNCOO-), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.25(908H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -CH2-OH, -HNCOO-CH2-),
5.72(1.2H, s, >CH-), 5.84(0.8H, s, >CH-), 6.89-6.91(4H, m, arom.
H), 7.35-7.39(4H, m, arom. H), 7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 10268, 重量平均分子量(Mw): 10812, 多分散度(Mw/Mn): 1.053
【0234】
【化80】
【0235】
(実施例42)
式(73)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させた後、実施例13と同様の方法にて式(38)の化合物と反応させて、式(74)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(12H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.27-3.29(4H, m, -CH2-HNCOO-), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.25(1356H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-),
5.72(1.2H, s, >CH-), 5.84(0.8H, s, >CH-), 6.89-6.91(4H, m, arom.
H), 7.35-7.39(4H, m, arom. H), 7.34(2H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 15296, 重量平均分子量(Mw): 16856, 多分散度(Mw/Mn): 1.102
【0236】
【化81】
【0237】
(実施例43)
式(74)の化合物に対して、実施例12と同様の方法にてN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを反応させることで、式(75)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(12H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.84(4H, s, -succinimide), 3.27-3.29(4H, m, -CH2-HNCOO-),
3.38(3H, s, CH3O-), 3.52-4.25(1354H, m, -(OCH2CH2)n-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-),
4.44-4.48(2H, m, -CH2O-COO-succinimide), 5.72(1.2H, s, >CH-),
5.84(0.8H, s, >CH-), 6.89-6.91(4H, m, arom. H), 7.35-7.39(4H,
m, arom. H), 7.34(2H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 15439, 重量平均分子量(Mw): 17014, 多分散度(Mw/Mn): 1.102
【0238】
【化82】
【0239】
(実施例44)
式(54)の化合物に対して、実施例14と同様の方法にてトリフルオロアセチル基を脱保護した後、実施例41と同様の方法にて式(52)の化合物と反応させて、式(76)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(12H, m, >CHCH2CH2CH2-),
3.27-3.29(4H, m, -CH2-HNCOO-), 3.38(3H, s, CH3O-),
3.52-4.25(1359H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-), 5.19(2H,
brs, -HNCOO-), 5.70(1.2H, s, >CH-), 5.82(0.8H, s, >CH-),
6.95-7.21(6H, m, arom. H), 7.34(1H, brs, -HNCOCF3)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 15279, 重量平均分子量(Mw): 16822, 多分散度(Mw/Mn): 1.101
【0240】
【化83】
【0241】
(実施例46)
式(76)の化合物に対して、実施例14と同様の方法にてトリフルオロアセチル基を脱保護した後、実施例15と同様の方法にて3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジルを反応させることで、式(77)の化合物を得た。

1H-NMR(CDCl3, 内部標準TMS);
δ(ppm):
1.40-1.81(12H, m, >CHCH2CH2CH2-),
2.44(2H, t, -CH2CH2-maleimide), 3.27-3.29(4H, m,
-CH2-HNCOO-, -CH2-NHCOCH2-), 3.38(3H,
s, CH3O-), 3.52-4.25(1359H, m, -(OCH2CH2)n-OCH2-,
-(OCH2CH2)m-OCH2-,
-OCH2CH<, -HNCOO-CH2-, -CH2CH2-maleimide),
5.19(2H, brs, -HNCOO-), 5.70(1.2H, s, >CH-), 5.82(0.8H, s,
>CH-), 6.15(1H, brs, -HNCOCH2-), 6.70(2H, s, -maleimide),
6.95-7.21(6H, m, arom. H)
GPC分析;
数平均分子量(Mn): 15334, 重量平均分子量(Mw): 16883, 多分散度(Mw/Mn): 1.101
【0242】
【化84】
【0243】
(実施例47)
式(35)、式(44)、式(45)、式(47)および式(48)の化合物(20 mg)をそれぞれpD 5.5のMES重水緩衝液(1 mL)とpD 7.4のHEPES重水緩衝液(1 mL)に溶解し、37℃の恒温槽で静置した。図1はpD 5.5、図2はpD 7.4における加水分解率の測定結果である。
【0244】
(実施例48)
式(41)、式(54)、式(74)および式(76)の化合物(200 mg)をそれぞれpD 5.5のMES重水緩衝液(10
mL)とpD 7.4のHEPES重水緩衝液(10 mL)に溶解し、37℃の恒温槽で静置した。図3はpD 5.5、図4はpD 7.4における加水分解率の測定結果である。
【0245】
図1に示すように、式(35)、式(44)、式(45)、式(47)および式(48)の化合物のpD 5.5、37℃における加水分解半減期(t1/2)は、それぞれ2時間、12時間、30日、24時間および6ヶ月であった。また、図2に示すようにpD
7.4、37℃においては、式(35)および式(44)の化合物の加水分解半減期(t1/2)は、それぞれ65時間および18日であり、式(47)の化合物は18日で17%程度の加水分解が見られたが、式(45)および式(48)の化合物は18日後でも加水分解は見られなかった。
【0246】
図3に示すように、環状ベンジリデンアセタールリンカーの構造が同じである式(41)と式(74)の化合物のpD 5.5、37℃における加水分解半減期(t1/2)はいずれも2時間であり、同じリンカー構造を有する式(35)の加水分解半減期(t1/2)と同等であった。また、環状ベンジリデンアセタールリンカーの構造が同じである式(54)と式(76)の化合物のpD
5.5、37℃における加水分解半減期(t1/2)はいずれも12時間であり、同じリンカー構造を有する式(44)の加水分解半減期(t1/2)と同等であった。図4に示すようにpD 7.4、37℃においては、式(41)と式(74)の化合物の加水分解半減期(t1/2)は65時間、式(54)と式(76)の化合物の加水分解半減期(t1/2)は18日であり、それぞれ同じリンカー構造を有する式(35)の化合物、式(44)の化合物と同等であった。
【0247】
以上より、環状ベンジリデンアセタールリンカーの構造が同じであれば、連結するポリエチレングリコールの数に関係無く、加水分解速度が同じであることが示された。
図1
図2
図3
図4