(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガイド壁の前記柱状重量物の外周面に対向する内面は、前記載置台が前記第2位置にあるとき上方または斜め上方を向く請求項1又は2に記載の柱状重量物用ホルダ。
前記上ホルダ部及び前記下ホルダ部は、上下方向に沿って延びた共通するロッドに固定することができるように構成されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の柱状重量物用ホルダ。
前記上ホルダ部及び前記下ホルダ部のうちの少なくとも一方は、上下方向位置及び前記ロッドを中心とする回転方向位置のうちの少なくとも一方を調整することができるように構成されている請求項7に記載の柱状重量物用ホルダ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の本発明のホルダにおいて、前記載置台は、前記柱状重量物が載置されていない状態で前記第2位置を維持できるように構成されていてもよい。かかる構成は、柱状重量物の載置台に対する積み降ろし作業を容易にするのに有利である。
【0013】
前記ガイド壁の前記柱状重量物の外周面に対向する内面は、前記載置台が前記第2位置にあるとき上方または斜め上方を向いてもよい。かかる構成は、第2位置ある載置台に載置した柱状重量物を載置台に安定的に保持させるのに有利である。
【0014】
前記ガイド壁の記柱状重量物の外周面に対向する内面は、円筒状の凹曲面であってもよい。かかる構成は、第2位置ある載置台に載置した柱状重量物を載置台に安定的に保持させるのに有利である。
【0015】
前記上ホルダ部の前記バンドは、前記柱状重量物を締め付け固定するように構成されていてもよい。かかる構成は、ホルダが移動可能なカートに設けられていた場合に、カートを移動したときに柱状重量物がホルダに対してがたついたり自由に回転したりするのを防止するのに有利である。
【0016】
前記バンドは、形状保持性を有する材料からなり、円弧に沿って湾曲していてもよい。かかる構成は、バンドを開状態と閉状態とに切り替える作業を容易且つ迅速に行うのに有利である。
【0017】
前記上ホルダ部及び前記下ホルダ部は、上下方向に沿って延びた共通するロッドに固定することができるように構成されていてもよい。かかる構成は、本発明のホルダを、既存のカートに大幅な設計変更をすることなく搭載するのに有利である。
【0018】
前記上ホルダ部及び前記下ホルダ部のうちの少なくとも一方は、上下方向位置及び前記ロッドを中心とする回転方向位置のうちの少なくとも一方を調整することができるように構成されていてもよい。かかる構成は、保持対象である柱状重量物のサイズ等に応じて上ホルダ部及び/又は下ホルダ部を位置を調整することができるので、任意の柱状重量物を直立状態で安定的に保持するのに有利である。
【0019】
前記上ホルダ部及び前記下ホルダ部のうちの少なくとも一方は、前記ロッドが挿入される貫通孔と、前記貫通孔の半径方向に沿って前記貫通孔に達するように設けられたスリットとが設けられた基部、及び、前記基部に設けられたレバーカム機構を備えていてもよい。前記レバーカム機構は、前記基部に対して回動可能なレバーを備える。前記レバーは、前記レバーの回動中心が設けられた基端部に回転カムを備える。前記回転カムは、前記レバーを回動させると前記貫通孔の内径が変化するように前記スリットの幅を変化させてもよい。かかる構成は、上ホルダ部及び/又は下ホルダ部をロッドに対して簡単且つ迅速に位置調整するのに有利である。
【0020】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。本発明の実施形態を示す図面において、同一又は対応する部材には同じ符号が付してあり、そのような部材については、重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る柱状重量物用ホルダ(以下、単に「ホルダ」という)1を備えた搬送カート100の斜視図である。カート100は、心臓手術において使用される。3枚の横板105a,105b,105cが、上下方向に沿って延びた4本のロッド101,102,103,104に、互いに上下方向に離間して固定されている。横板105a,105b,105cには、例えば体外血液循環回路に血液を流すための血液ポンプを駆動するための駆動装置や、人工肺を通過する血液の温度等を制御するための制御装置を載置することができる(例えば特許文献2参照)。最も下の横板105cの下面に4つのキャスタ106が設けられている。キャスタ106はカート100を任意の方向に移動可能に支持する。
【0022】
ロッド101にホルダ1が装着されている。ホルダ1は、上ホルダ部10及び下ホルダ部50を備える。柱状重量物としてのボンベ90がホルダ1に保持されている。ボンベ90は、略円柱状を有する。ボンベ90は、例えば人工肺において血液に対してガス交換を行うための酸素が貯蔵された酸素ボンベであってもよい。ボンベ90は、
図1に示されたように直立状態でカート100に搭載され、カート100とともに任意の位置に移動可能である。ボンベ90の「直立状態」とは、柱状のボンベ90の中心軸を上下方向に平行にした、ボンベ90の通常の使用時の姿勢を意味する。
【0023】
図2Aは、上ホルダ部10の斜視図、
図2Bは上ホルダ部10の別の方向から見た斜視図、
図2Cは、上ホルダ部10の平面図である。以下の説明の便宜のため、図示したようなXYZ直交座標系を設定する。XYZ直交座標系は、後述する下ホルダ部50にも適用される。Z軸は上下方向に平行であり、Z軸の矢印は上方を向いている。「上」、「下」はホルダ1の実際の使用時の向き(
図1参照)を基準とする。Z軸に垂直な面(XY面)を「水平面」という。X軸の矢印が向いた側を「遠位側」、その反対側を「近位側」という。
【0024】
上ホルダ部10は、基部30及びバンド11を備える。基部30の平面視形状は、遠位側に向かって拡幅した略鋭角二等辺三角形(または略楔形状)である(
図2C参照)。基部30は、その一側面(略鋭角二等辺三角形の底辺に対応する面、即ち、遠位側を向いた面)に、円弧にほぼ沿った凹曲面31を有する。バンド11は、略「C」字形状を有するように円弧にほぼ沿って湾曲している。バンド11が構成する円弧の中心角度は、180度またはこれよりわずかに小さい。凹曲面31とバンド11とは、その上下方向位置が略同じであり、且つ、X軸方向に対向している。
【0025】
基部30の材料は、制限はないが、硬質材料、例えばアルミニウム等の金属材料や樹脂を用いることができる。バンド11の材料は、制限はないが、略「C」字形状を維持できる程度の形状保持性と、ボンベ90をしっかりと固定することができる程度の機械的強度とを有することが好ましく、具体的には、硬質材料、例えば、ステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料や樹脂を用いることができる。
【0026】
図3は、バンド11の一端を開放した状態を示した上ホルダ部10の斜視図である。
図2B及び
図3から理解できるように、バンド11の開放された端部(開放端)とは反対側の端部は、ヒンジ12を介して基部30の凹曲面31の一端側に連結されている。ヒンジ12の回動軸は上下方向に平行である。従って、バンド11は、基部30に対して、ヒンジ12の回りに水平面内で回動可能である。
【0027】
図3に示されているように、バンド11の開放端には、略「J」字形状の係合爪13が設けられている。基部30の凹曲面31の他端側には連結機構14が設けられている。連結機構14は、ハンドル15と連結アーム16とを備える。ハンドル15の一端は、基部30の外側面からわずかに離間して設けられた回動軸17に連結されている。回動軸17は、上下方向に平行である。ハンドル15は、回動軸17の回りに回動可能である。ハンドル15の他端15aは、ハンドル15を回動軸17の回りに回動させるための操作部である。連結アーム16の一端は、ハンドル15の回動軸17と操作部15aとの間の位置に、ハンドル15に対して回動可能に連結されている。連結アーム16の他端には、略三角形の枠状のフック16aが設けられている。
【0028】
本発明では、
図3に示したように係合爪13と連結機構14とが分離され、バンド11の一端が開放された状態を「開状態」といい、
図2A〜
図2Cに示したように係合爪13と連結機構14とが結合され、バンド11と基部30とが環状に連結された状態を「閉状態」という。バンド11は、開状態と閉状態とに繰り返し切り替えることができる。
【0029】
開状態(
図3参照)から閉状態(
図2A〜
図2C参照)への切替は以下のようにして行う。
図3において、バンド11を回動させ、バンド11の係合爪13に連結アーム16のフック16aを係合させる。次いで、ハンドル15の操作部15aを、回動軸17が設けられた基部30の外側面に接近するように、バンド11とは反対側に向かって回動させると、
図2A〜
図2Cに示す閉状態となる。
図2Cに示されているように、閉状態では、基部30とバンド11とが環状に連結され、基部30の凹曲面31とバンド11とが共通する円にほぼ沿って配置される。凹曲面31とバンド11とで囲まれた略円形の領域内にボンベ90が配置される(
図1参照)。ハンドル11を
図2Cにおいて時計回り方向に回動させたとき、ハンドル11は連結アーム16を介して係合爪13を回動軸17に接近するように変位させる。これにより、バンド11及び凹曲面31が沿う略円の周長が短縮し、凹曲面31及びバンド11はボンベ90の外周面を締め付け固定する。
【0030】
閉状態(
図2A〜
図2C参照)から開状態(
図3参照)への切替は以下のようにして行う。
図2A〜
図2Cにおいて、ハンドル15の操作部15aをバンド11の側に回動させる。次いで、連結アーム16のフック16aとバンド11の係合爪13との係合を解除する。最後に、バンド11を回動させれば、
図3に示す開状態となる。
【0031】
基部30に、貫通孔32及びスリット33が設けられている。貫通孔32及びスリット33は、いずれも基部30を上下方向に貫通している。
図2Cに示されているように、貫通孔32は、略鋭角二等辺三角形の平面視形状を有する基部30の頂角に対応する角部の近傍(即ち、基部30の近位側端の近傍)に設けられている。貫通孔32は、凹曲面31に対して、凹曲面31が沿う円弧の中心とは反対側に位置している。貫通孔32の内周面は、ロッド101(
図1参照)の外径と同じかこれよりわずかに大きな内径を有する円筒面である。スリット33は、貫通孔12の半径方向に沿って、貫通孔12と基部30の外側面(特に前記角部の位置)とを結ぶように、XZ面と平行に設けられている。スリット33に直交するように、横孔(図示せず)が基部30をY軸と平行に貫通している。横孔を利用して基部30にレバーカム機構34が設けられている。
図4はレバーカム機構34の分解斜視図である。棒状のテンションバー35が、中央に貫通孔が形成されたドーナツ状の台座36を貫通し、更に基部30の前記横孔に挿入されている。テンションバー35の基端部には、テンションバー35を上下方向に貫通する貫通孔35aが設けられている。レバー38の基端部には、レバー38を上下方向に貫通する貫通孔38aが設けられている。テンションバー35の貫通孔35aとレバー38の貫通孔38aとが同軸に配置され、貫通孔35a,38aに連結軸39が挿入される。連結軸39は上下方向に平行である。レバー38は、連結軸39を回動中心としてテンションバー35に対して回動可能に、テンションバー35に連結される。テンションバー35の先端は、基部30を突き抜けて突出している。テンションバー35に張力が印加された状態で、テンションバー35の先端にノブ37が取り付けられる。テンションバー35に印加された張力は、連結軸39を介して、レバー38の基端部の外周面38bを台座36にY軸方向に圧接させる。
【0032】
図2Cに示されているように、レバー38の外周面38bは円形の平面視形状を有する。この円形の外周面38bは貫通孔38aに対して偏心している。このため、レバー38を連結軸39回りに回動させると、外周面38bが回転カムとして機能し、連結軸39から台座36までの距離を変化させる。このため、台座36とノブ37との間隔が変化し、基部30が弾性的に変形して、スリット33の幅(テンションバー35の長手方向に平行な方向に沿ったスリット33の間隔)が変化する。より詳細には、上方から見たとき、
図2Cに示すようにレバー38を基部30の外側面に沿うように最も時計回り方向に回動させたときスリット33の幅が最小となり(ロック状態)、この状態からレバー38を反時計回り方向に回動させるとスリット33の幅が拡大する(非ロック状態)。スリット33の幅の変化に応じて、貫通孔32の内径(特にテンションバー35の長手方向に平行な方向に沿った内径)が変化する。貫通孔32にロッド101(
図1参照)を挿入した状態でレバー38を回動させることにより、上ホルダ部10がロッド101に固定されたロック状態(
図2C参照)と、上ホルダ部10をロッド101に対して上下方向及び回転方向に自由に変位させることができる非ロック状態とに切り替えることができる。レバーカム機構34が非ロック状態にてロッド101に対する上ホルダ部10の位置調整をした後、レバー38を回動させてレバーカム機構34をロック状態に切り替えることにより、上ホルダ部10の位置調整を簡単且つ迅速に行うことができる。
【0033】
図5Aは、下ホルダ部50の上方から見た斜視図である。
図5Bは、下ホルダ部50の下方から見た斜視図である。
図5Cは、下ホルダ部50の平面図である。
図5Dは、
図5Cの5D−5D線を含む上下方向面で切断された下ホルダ部50の断面図である。これらの図において、下ホルダ部50を構成する部材のうち、上ホルダ部10を構成する部材と同一又は対応する部材には上ホルダ部10の部材と同じ符号を付してある。そのような部材については重複する説明が省略されており、上ホルダ部10の部材に関する説明を適宜参酌すべきである。
【0034】
下ホルダ部50は、載置台51を備える。載置台51は、薄板平板状の底板52と、底板51に対して略垂直に立設されたガイド壁53とを備える。底板52は、その遠位側に円弧状の外端縁を有する。ガイド壁53は、底板52の、この円弧状の外端縁に沿って設けられており、外端縁と同じ曲率の円筒面に沿った曲面である。
図5Cに示されているように、底板52と垂直な方向に沿って見たガイド壁53が構成する円弧の中心角度は、180度またはこれよりわずかに小さい。
【0035】
図5Bに示されているように、基部30に保持板57が設けられている。基部30は、上ホルダ部10の基部30と実質的に同じものである。保持板57は、水平面に平行な薄板平板状のベース板57aを備える。ベース板57aは、基部30の下面30aよりも低い位置ある。ベース板57aの遠位側の端縁に沿ってヒンジ58が設けられている。載置台51の底板52は、ヒンジ58を介してベース板57aに連結されている。ヒンジ58の回動軸はY軸に平行である。従って、載置台51は、ベース板57a及び基部30に対して、ヒンジ58の回りにXZ面内で回動可能である。載置台51の底板52は、ヒンジ58よりも近位側に延びている。
【0036】
図6Aは、載置台51が回動した状態の下ホルダ部50の上方から見た斜視図である。
図6Bは、その下方から見た斜視図、
図6Cは、その平面図である。
図6Dは、
図6Cの6D−6D線を含む上下方向面で切断された下ホルダ部50の断面図である。
図6Bに最もよく示されているように、載置台51の底板52の近位側端52aが基部30の下面30aに当接し、これにより、載置台51のヒンジ58回りの回動が制限されている。
【0037】
本発明では、
図5A〜
図5Dに示したように底板52が水平面と略平行である載置台51の位置を「第1位置」といい、
図6A〜
図6Dに示したように底板52が水平面に対して最大に傾斜した載置台51の位置を「第2位置」という。
【0038】
第1位置では、
図5Dに示されているように、底板52は、ベース板57aに対して上側に位置し、上下方向に当接している。従って、載置台51は、第1位置よりも、
図5Dにおいて反時計回り方向に更に回動することはできない。載置台51のガイド壁53は、ヒンジ58よりも遠位側に位置している。ガイド壁53と基部30の凹曲面31とは、その上下方向位置が略同じであり、且つ、X軸方向に対向している。
図5Cに示されているように、ガイド壁53と凹曲面31とは共通する円にほぼ沿って配置される。当該円の直径は、好ましくは、ボンベ90の外周面が構成する円筒面の外径と同じか、これよりわずかに大きい。載置台51の底板52は、ガイド壁53と凹曲面31とで囲まれた略円形の全領域に延びている。
【0039】
第2位置では、載置台51の遠位側(ガイド壁53側)が下降するように載置台51が回動し、上述したように底板52の近位側端52aが基部30の下面30aに当接する。従って、載置台51は、第2位置よりも、
図6Dにおいて時計回り方向に更に回動することはできない。第2位置で、底板52の水平面に対する傾斜角度は最大になる。第2位置での底板52の水平面に対する傾斜角度θ(
図6D参照)の上限は、90度以下であり、好ましくは60度以下、更に好ましくは45度以下である。傾斜角度θの下限は、制限はないが、好ましくは10度以上、更に好ましくは15度以上である。傾斜角度θが大きすぎても、小さすぎても、第2位置にある載置台51に対するボンベ90の積み降ろし作業が困難になる。ガイド壁53はヒンジ58よりも遠位側に配置されているので、載置台51が第2位置にあるとき、ガイド壁53と凹曲面31との距離が拡大し、ガイド壁53の内面53a、即ち円筒状の凹曲面が上方又は斜め上方を向く。ヒンジ58に対して遠位側(ガイド壁53側)は、近位側よりわずかに重いので、載置台51は、ボンベ90が載置されていない状態で
図6A〜
図6Dに示したように第2位置を安定的に維持する。
【0040】
載置台51及び保持板57の材料は、制限はないが、硬質材料、例えばステンレス鋼やアルミニウム等の金属材料や樹脂を用いることができる。載置台51及び保持板57は、例えば金属板材を曲げ加工またはプレス加工することにより製造することができる。
【0041】
下ホルダ部50の基部30には、上ホルダ部10と同様に、貫通孔32、スリット33、及びレバーカム機構34が設けられている。このため、上ホルダ部10と同様に、ロッド101に対する下ホルダ部50の位置調整を簡単且つ迅速に行うことができる。
【0042】
以上のように構成された上ホルダ部10及び下ホルダ部50からなるホルダ1の使用方法を説明する。
【0043】
上ホルダ部10及び下ホルダ部50は、共通するロッド101に、上ホルダ部10を下ホルダ部50より上側にして取り付けられる(
図1参照)。ロッド101は、上下方向に沿って延び、その外周面は、外径が上下方向において一定である円筒面である。上ホルダ部10及び下ホルダ部50は、基部30の貫通孔32にロッド101を挿入し、レバーカム機構34を用いて、それぞれ所定位置に固定される。上方から見たとき、上ホルダ部10の閉状態のバンド11と凹曲面31とで囲まれる略円形(
図2C参照)と、下ホルダ部50の第1位置にある載置台51のガイド壁53と凹曲面31とで囲まれる略円形(
図5C参照)とが一致するように、上ホルダ部10及び下ホルダ部50の、ロッド101回りの回転方向位置が調整される。上ホルダ部10の凹曲面31と下ホルダ部50の凹曲面31とは、ロッド101とは反対側を向く。下ホルダ部50のガイド壁53の内面53a(
図5A参照)はロッド101の側を向く。
【0044】
最初に、ホルダ1にボンベ90を搭載する方法を説明する。上ホルダ部10のバンド11を開状態(
図3参照)にし、下ホルダ部50の載置台51は第2位置(
図6A〜
図6D参照)にする。そして、
図7に示すように、ボンベ90が斜めになるように、その下端部90bをわずかに持ち上げて下ホルダ部50の載置台51上に載置する。例えば、ガイド壁53の円弧状の上端縁53b(
図6A参照)にボンベ90の外周面を載せ、次いで、ボンベ90の下面が底板52に当接するまでボンベ90をガイド壁53上で下方に滑らせてもよい。上述したように、載置台51は第2位置よりも更に大きく傾くことはないので、ガイド壁53にボンベ90の下端部90bを載置しても、載置台51の姿勢(傾き)が変わることはなく、ガイド壁53でボンベ90の荷重を支えることができる。また、ガイド壁53の内面53aが上方または斜め上方を向き、しかも内面53aは円筒状の凹曲面を有するので、一旦ボンベ90をガイド壁53上に載置すれば、ボンベ90がガイド壁53から転がり落ちることはない。
【0045】
次いで、ボンベ90が直立するように、ボンベ90の上端部90aを持ち上げる。ボンベ90の荷重の大半は下ホルダ部50の載置台51が支えているので、比較的小さな力でボンベ90の上端部90aを持ち上げることができる。ボンベ90の下面は載置台51の底板52に当接しているので、ボンベ90の下端部90bが載置台51に載置された状態で、ボンベ90及び載置台51が一体的にヒンジ58回りに回動する。
【0046】
ボンベ90が直立されたとき、載置台51は第1位置(
図5A〜
図5D)となる。ボンベ90の外周面は、上ホルダ部10の凹曲面31(
図3参照)に接近または当接する。バンド11の係合爪13を連結機構14に結合し、バンド11を閉状態にする(
図2A〜
図2C)。バンド11と上ホルダ部10の凹曲面31とがボンベ90の外周面をしっかりと保持する。かくして、
図1に示すように、ボンベ90を直立状態でホルダ1に保持させることができる。ホルダ1はカート100に設けられているので、ボンベ90をカート100に搭載した状態で任意の位置に移動させることができる。
【0047】
ホルダ1からボンベ90の取り外しは、上述したボンベ90の搭載と概略逆の手順を行うことにより可能である。即ち、
図1の状態において、上ホルダ部10のバンド11を開状態(
図3参照)にする。ボンベ90の上端部90aを水平方向(遠位側方向)に押して、ボンベ90が上ホルダ部10の凹曲面31(
図3参照)から離れるようにボンベ90を傾かせる。ボンベ90の下端部90bが載置台51に載置された状態で、ボンベ90及び載置台51が一体的にヒンジ58回りに回動する。載置台51が第2位置まで傾いた後(
図7参照)、ボンベ90の下端部90bをわずかに持ち上げて、ボンベ90を載置台51から床面上へ降ろす。載置台51の姿勢(傾き)は第2位置で安定するので、第2位置にある載置台51からボンベ90を安全に降ろすことができる。下端部90bを床面に置いたままでボンベ90を回動させ、ボンベ90を直立させる。
【0048】
以上のように、本発明のホルダ1によれば、下ホルダ部50の載置台51は、ボンベ90が直立されたとき第1位置になる。第1位置では、底板52にボンベ90の下面が上下方向に当接し、底板52がボンベ90の荷重を支持する。上ホルダ部10のバンド11は、上ホルダ部10の凹曲面31とともにボンベ90を取り囲み、ボンベ90が転倒しないようにボンベ90を保持する。このため、振動や水平方向の力がボンベ90に加えられても、第1位置にある載置台51が第2位置に向かって傾くことはない。下ホルダ部50の凹曲面31及びガイド壁53は、ボンベ90の外周面に水平方向に対向するので、ボンベ90の水平方向の移動を制限する。これらの結果、ボンベ90を搭載したカート100(
図1参照)を移動させたときにボンベ90に振動が加えられても、ホルダ1は、ボンベ90を直立状態で安定的に保持することができる。
【0049】
上ホルダ部10のバンド11は開閉可能であり、開状態、即ち、バンド11の一端を開放した状態(
図3参照)にて、上ホルダ部10に対してボンベ90を着脱することができる。従って、ホルダ1に対するボンベ90の積み降ろし時に、ボンベ90の下端部90bを上ホルダ部10より高く持ち上げる必要はない。上ホルダ部10よりも低い位置に設置される下ホルダ部50の載置台51に対してボンベ90の下端部90bを積み降ろすだけでよい。更に、載置台51に対する積み降ろし時にボンベ90は直立している必要はなく、傾いていてよい。上ホルダ部10に対するボンベ90の着脱は、ボンベ90を直立状態のまま水平方向に並進移動させるのではなく、ボンベ90を載置台51に載置した状態でボンベ90を回動させることにより行うことができる。回動時にボンベ90の荷重のほとんどを載置台51が支持するので、ボンベ90を回動させるのに要する力は小さくてよい。このように、本発明によれば、ホルダ1に対するボンベ90の積み降ろし時にボンベ90を直立状態のままで高く持ち上げる必要がなく、また、ボンベ90の傾きはボンベ90を載置台51に載置した状態で変更することができる。このため、ホルダ1に対するボンベ90の積み降ろし作業や交換作業を、比較的小さな力で容易に行うことができる。
【0050】
バンド11が開状態のときの上ホルダ部10の凹曲面31と、載置台51が第2位置にあるときの下ホルダ部50の凹曲面31とが、同じ側を向いている(
図7参照)。このため、ボンベ90を載置台51に載置した状態でボンベ90を回動させたとき、ボンベ90は、上ホルダ部10の凹曲面31及び下ホルダ部50の凹曲面31のいずれに対しても接離するように移動する。これは、ホルダ1に対するボンベ90の積み降ろし作業を容易にするのに有利である。
【0051】
上ホルダ部10及び下ホルダ部50において、ロッド101が挿入される貫通孔32は、ボンベ90が対向する凹曲面31とは反対側に位置している(
図2C、
図5C参照)。下ホルダ部50の載置台51は、第2位置においてガイド壁53はロッド101から離間する向きに傾く(
図6A、
図7参照)。従って、ホルダ1に対するボンベ90の積み降ろし時に、ボンベ90がロッド101に衝突することはない。
【0052】
ボンベ90をホルダ1に直立状態で保持させたとき(
図1参照)、上ホルダ部10は、ボンベ90の重心位置よりも高い位置に配置されることが好ましい。これは、ボンベ90を傾くことなく直立状態で安定的に保持するのに有利である。一方、下ホルダ部50(特にその凹曲面31及びガイド壁53)は、ボンベ90の重心位置よりも低い位置に配置されることが好ましい。これは、ボンベ90の水平方向の移動の制限、及び、載置台51に対するボンベ90の積み降ろし作業の容易化に有利である。
【0053】
載置台51は、ボンベ90が載置されていない状態で第2位置(
図6A〜
図6D参照)を安定的に維持することができるように構成されている。このため、ボンベ90の下端部90bを載置台51に対して積み降ろしする作業が容易である。
【0054】
載置台51が第2位置(
図6A〜
図6D参照)にあるとき、ガイド壁53の内面53aが上方または斜め上方を向く。しかも、ガイド壁53の内面53aは、ボンベ90の外周面に沿うように構成された円筒状の凹曲面である。このため、第2位置ある載置台51にボンベ90を載置したとき、ガイド壁53がボンベ90を安定的に保持することができる。
【0055】
上ホルダ部10のバンド11は、ボンベ90を締め付け固定する。このため、カート100を移動したときに振動が発生しても、ホルダ1に保持されたボンベ90がホルダ1に対してがたついたり、回転したりすることはない。上述した従来の有底筒状のホルダは、ボンベが単に上から挿入されているだけであるので、カートを移動したときの振動によって酸素ボンベがホルダ内でがたついたり、自由に回転したりする。このため、大きな騒音を発生したり、酸素ボンベが回転することによって酸素ボンベに接続されたチューブが捻れたりするという課題がある。上ホルダ部10のバンド11がボンベ90を締め付け固定することによりこの課題が解決され、ボンベ90を直立状態でしっかりと固定して保持することが可能になる。
【0056】
上ホルダ部10のバンド11は、形状保持性を有する材料からなり、円弧に沿って湾曲している。このため、バンド11は、開状態(
図3参照)でもその形状が実質的に変化しない。これは、バンド11を開状態と閉状態とに切り替える作業を容易且つ迅速に行うのに有利である。なお、バンド11は、閉状態(
図1、
図2A〜
図2C参照)においてボンベ90の外周面に沿って変形できる程度の弾性を有していることが好ましい。
【0057】
上記の実施形態は例示に過ぎない。本発明は上記の実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0058】
上ホルダ部10のバンド11の開放端を基部30に連結するための連結機構14の構成は、上記の実施形態に限定されない。連結機構14は、バンド11と基部30とを着脱可能に連結する任意の構成を有しうる。
【0059】
バンド11の構成も、上記の実施形態に限定されない。例えば、バンド11が弾性的に伸張可能な材料(例えばゴム)で構成されていてもよい。この場合、バンド11はその弾性力を利用してボンベ90を締め付け固定することができる。
【0060】
上記の実施形態では、バンド11は、形状保持性を有する材料からなり、ボンベ90の外周面を構成する円筒面の曲率に略一致する円弧に沿って湾曲していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、バンド11は、形状保持性を有しない材料(例えば、織布、不織布、ゴムバンドなど)からなり、開状態では重力により下方に垂れ下がるものであってもよい。この場合、バンド11は、ヒンジ12を用いることなく、基部30に直接連結することができる。
【0061】
上記の実施形態では、バンド11は閉状態でボンベ90を締め付け固定するように構成されていたが、本発明はこれに限定されない。バンド11は、その閉状態においてボンベ90を転倒しないように保持できればよい。例えば、バンド11が閉状態のとき、ボンベ90とバンド11及び/又は凹曲面31との間にわずかな隙間が形成され、ボンベ90が上ホルダ部10に対して水平方向にわずかに変位可能であってもよい。
【0062】
下ホルダ部50の載置台51の回動範囲を制限する機構は、上記の実施形態に限定されない。例えば、ヒンジ58が、載置台51の回動範囲を制限する機構を備えていてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、載置台51のヒンジ58に対して遠位側部分と近位側部分との重量差を利用して、ボンベ90が載置されていない状態において載置台51が第2位置を安定的に維持するように構成されていたが、載置台51が第2位置を安定的に維持するための構成はこれに限定されない。例えば、載置台51が第2位置を維持するように載置台51を付勢する弾性部材(例えばバネ)を設けてもよく、あるいは、載置台51が第2位置にあるときに互いに係合するように構成された係合機構(例えば、凸部と凸部、凸部と凹部)を載置台51と保持板57(または基部30)に設けてもよい。
【0064】
また、ボンベ90を搭載していないときに載置台51を第1位置に維持して下ホルダ部50をコンパクトにするために、載置台51が第1位置を維持するような構成を設けてもよい。この構成として、任意であるが、例えば、載置台51が第1位置を維持するように載置台51を付勢する弾性部材(例えばバネ)を設けてもよく、あるいは、載置台51が第1位置にあるときに互いに係合するように構成された係合機構(例えば、凸部と凸部、凸部と凹部)を載置台51と保持板57(または基部30)に更に設けてもよい。
【0065】
上ホルダ部10と下ホルダ部50とのロッド101回りの回転方向位置を一致させるための機構が設けられてもよい。例えば、ロッド101の外周面に上下方向に沿ったリブ状の突起を設け、当該リブ状突起を基部30のスリット33に遊嵌させてもよい。この場合、ロッド101はカート100に対して回動可能であってもよい。
【0066】
上ホルダ部10及び及び下ホルダ部50のボンベ90に対向する面(即ち、凹曲面31、バンド11の内面、底板52の上面、ガイド壁53の内面53a)に、ゴムシート等の緩衝材を設けてもよい。カート100の移動時の振動によって、これらの面にボンベ90が直接衝突することによって騒音が発生したり、ボンベ90が上ホルダ部10及び及び下ホルダ部50に対して回転や変位したりする可能性がある。緩衝材は、これらを防止するのに有効である。
【0067】
本発明のホルダ1が搭載されるカートの構成は上記の実施形態に限定されず任意である。カートに設けられる横板の数や形状は、カートに搭載される機器に応じて適宜変更しうる。カートの用途や、カートに搭載される機器も、上記の実施形態に限定されず任意である。
【0068】
上記の実施形態では、心臓手術で使用される酸素ボンベを保持するホルダを説明したが、本発明のホルダは、心臓手術以外の分野においても使用可能である。ホルダが保持するボンベは、酸素ボンベ以外のガスボンベや、液体が貯蔵されたボンベであってもよい。更に、本発明のホルダは、ボンベ以外の、電池やドラム缶などの重く且つ柱状形状を有する任意の柱状重量物を保持するために使用することができる。