特許第6784961号(P6784961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784961メラミンフォーム歯面清掃具とその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784961
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】メラミンフォーム歯面清掃具とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   A46B15/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-117085(P2014-117085)
(22)【出願日】2014年5月19日
(65)【公開番号】特開2015-217283(P2015-217283A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年8月21日
【審判番号】不服2019-1344(P2019-1344/J1)
【審判請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】591287587
【氏名又は名称】株式会社広栄社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊文
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 柿崎 拓
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3136247(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3154273(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00
A47L13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ8mm以下の板形状であるメラミンフォーム単体を圧縮加熱することにより、圧縮加熱処理されたメラミンフォームの厚さが0.8mm以下の範囲であり、圧縮比が1/10〜1/16の範囲であって、該使用平面反対面に、熱可塑性樹脂層を設けることを特徴とする歯面清掃用特殊メラミンフォーム。
【請求項2】
厚さ8mm以下の板形状にメラミンフォームをスライスカットする工程と、該メラミンフォームを厚さ0.8mm以下の範囲であり、圧縮比が1/10〜1/16の範囲に圧縮加熱処理する工程と、該使用平面反対面に、熱可塑性樹脂層を含浸する工程を特徴とする歯面清掃用特殊メラミンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメラミンフォーム歯面清掃具とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メラミンフォームの着色汚れに対する除去力を利用し、長方型形状にカットされた商品がスーパー、ホームセンターなどにおいて広く販売されている。
【0003】
又、近年メラミンフォームの強度を上昇する目的から、圧縮加工や他物性の樹脂を使用平面の対称裏面に含浸加工した商品も市販されている。
使用目的においても、歯面着色汚れを専門に除去するホワイトニング商品も市販され、洗浄処理され安全性を向上させた商品まで市販されてきた。
【0004】
【特許文献1】 特許第3674907号公報
【特許文献2】 特許第3783039号公報
【特許文献3】 特許第4101064号公報
【特許文献4】 特許第4963552号公報
【発明の開示】
【発明者が解決しようとする課題】
【0005】
メラミンフォームを生体外由来の歯面着色汚れ除去(口腔内使用)を目的として使用する手段を、本発明者は色々と発明考案してきた。
化学的見地からは洗浄とP調整剤による中和作用により製造時過剰投入などから固体化し安定状態に至らず残留物となった各物質の除去においては高レベルで実行することが可能となった。
しかし、物理的見地から思慮すると、歯面着色汚れ除去に重要なメラミンフォームの引き裂き強度及び引張強度においては充分でなく、この数値の上昇を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
生体外由来の歯面着色汚れ除去(口腔内使用)において重要である引張り強度上昇に関しては、1/5以上の高圧縮に加え、引っ張り強度においては圧縮比率に対し強度上昇カーブが緩やかで平凡(図1参照)であることから、清掃時使用平面に対し対称裏面に樹脂製(熱可塑性物質)補強材を溶着又は含浸加工した。
上記樹脂においては、メラミンフォームの破断伸びが40%位であることから補強材樹脂の破断伸びは40%以下であり且つ、引っ張り強度に優れている物性の樹脂を使用することが好適である。
それに加え、溶着又は含浸した樹脂が口腔内を傷つけないためにも柔軟であり且つ、メラミンフォームのいかなる面より突出しない(着脱部以外)ように思慮した。
【0007】
メラミンフォームにおいては、1/5以上の高圧縮した商品に水分を加えるとゴム系樹脂の物性に似た特徴を示し、図1で示すように引き裂き強度においては急激に上昇したことから、容易に高圧縮が可能となる条件及び製造方法、メラミンフォームの加工形状にまで踏み込み最良の方法を発見した。
【発明の効果】
【0008】
本発明における効果を図1の折れ線グラフで示し、その数値を表1に記載した。
【表1】
上記した表1及び図1から理解できるようにメラミンフォームにおける引き裂き強度は、圧縮開始と共に増加し、1/6を超えると激増することが実験より判明した。
それに比べ、引っ張り強度における圧縮比率増加に伴う上昇値は平凡であることも判明した。
この事実より、上記した物性を有する樹脂を清掃時使用平面に対し対称裏面に溶着または含浸加工することで、引っ張り強度値は18.2kg/cmとなった。
【0009】
今までとは異なり更なる安全性を求める目的から、補強材として使用される樹脂形状にも注目し、メラミンフォーム面より突出することがない構造とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を順をもって説明する。
【0011】
最初に、本発明者が今までのメれミンフォームに対する研究開発における多数の実験から判明した、圧縮作業の難易度を表2に示した。
【表2】
上記した表2の実験に使用したメラミンフォーム素材の詳細なデータは、本発明者が歯面着色汚れ除去に好適と思慮する寸法、8tx40x100l(単位は以下全てmm)とし、加熱圧縮機に10枚(5枚x2列)を正確に並べ(合計面積40,000mm)、上下より230℃位の熱を加え、圧縮負荷重量100kgにおいて圧縮加工を実施した。
この実験において、圧縮加工時間(3分)内に表面に変色がなく正確な寸法に加工できた場合を○印とし、変色または、時間内に加工できなかった場合を△、長時間繰り返し圧縮加工を行っても上記条件下においては正確な寸法を得ることができなかった場合を×とした。
【0012】
この実験結果と各種文献より下記の事実が判明した。
【0013】
メラミンフォームは柔軟且つ、弾性を有し、反発力(復元力)において優れていると同時に、熱硬化性樹脂であり熱伝導率(24℃)が0.0293kcal/mh°cと極めて低い物性のフォーム(連続気泡構造)であることから、圧縮加工するメラミンフォームにおいて厚さ(物質量)が増加するに従い、熱量の伝導が激減した。
メラミンフォームの圧縮は難しく、圧力(負荷重量)と熱量の双方の作用により、復元力を失い実現できるものでありメラミンフォームの厚さが増せば高圧縮比を得ることは難しくなることは当然である。
【0014】
本発明のように、歯面清掃が目的で、小型商品、量産品目、高圧縮である必要性からメラミンフォームの厚さは、高圧縮が容易な16mm以下とした。
【0015】
上記したメラミンフォームを各圧縮比率に圧縮加工し、引っ張り強度及び引き裂き強度の上昇を示した折れ線グラフが図1である。
その推移から理解できるように、引っ張り強度においては上昇率が緩やかで平凡にあるのに対し、引き裂き強度においては圧縮比率1/6付近から急激な数値上昇となる。この高圧縮状態のメラミンフォームに対し、水において湿潤状態にすると、その物性はゴム系と類似し、JIS,ISO規格、官報の区分においてメラミン系樹脂をゴム類とする理由も理解できる。
【0016】
図2は、高圧縮による厚さの変化を示した正面図であり、圧縮前のメラミンフォーム1とメラミンフォーム高圧縮状態を1Aで示した。
【0017】
図3は、上記引張り強度における上昇率が引き裂き強度に比べ、緩く平凡であることから、0.1〜0.8mm程度の熱可塑性樹脂を打ち抜き金型において図に示す形状に打ち抜き、上記した高圧縮メラミンフォーム清掃面に対称する裏平面に熱により溶着または含浸加工に裏張りすることで、引張強度を18.2kg/cmまで上昇することができた。
【0018】
このメラミンフォームを一点斜線部分より専用切断器により、8〜11等分位に切り分けた形状を示した斜射図が図4である。
溶着及び、含浸する樹脂2においては熱可塑性樹脂であれば効果は一様にあるが好適には、メラミンフォームの破断伸びが40%位であることから、その数値以下であることが理想である。
その理由は、引っ張り方向に力が掛かった場合において補強材の破断伸びが低いため、その力を補強材自身がうけることでメラミンフォームの亀裂切断を防止することができた。
よって、引っ張り強度は補強材の強度に準じる好結果となり、今回の実験においては18.2kg/cmであった。
この樹脂2を補強材とする場合、メラミンフォームに溶着又は含浸する際、物性を失うことがなく正確に実行する必要がある。
もう一つの重要な条件は、口腔内で使用するため柔らかい(固体化した状態)ことが必要である。
しかし、本発明においては一層の安全性を追求する目的から図3で示す連続形状とし、使用時には図4で示すように個別に切り分けて使用する。
【0019】
図4に示す形状にすることで、図5で示す使用方法においてもメラミンフォーム面より樹脂2が突出又は同位置にないため、メラミンフォームに包まれ状態になることで一層安全となる。
【0020】
専用ハンドル3にメラミンフォームを取り付ける方法においても、図5に示した方法が、メラミンフォーム自体に無駄な力が掛かることが少なく亀裂切断などの事故を激少させることができる。
従来のように、薄い板の先端部を円形状とした芯材に冠せるように二つ折りし取り付けた場合、使用時において外側(歯面)と内側(芯材)から力が作用し、メラミンフォームが板上で左右に移動することから、内側からも剥離、亀裂が進み破断する。
この切断を図5の取り付け方法にすることで軽減できた。それに加え、取り付け位置を前部(メラミンフォームの突出量を少なく)にすることで歯面凹部清掃においても有効であった。又、取り替え式とすれば使用者が目的に合った形状で使用可能である。
【0021】
メラミンフォームは熱硬化性樹脂であり、水に対し不溶で熱分解温度は350℃以上の物性を有しているため、加熱圧縮比率においては広範囲にできないことが研究開発から判明した。
その要因は幾層にも重なり合った連続気泡構造で復元力に優れ、熱にも強いためです。
無理な圧縮(温度250℃以上、高圧、短時間)をすれば、表面が茶系色に変色し商品化できないし、製造時間を必要以上に要すれば量産ができずコスト高となる。
歯面清掃用として、上記した理由により高圧縮商品を製造する場合、高品質で、量産するためには非圧縮メラミンフォーム(材料)の厚さが10mm以下であり、圧縮加工面積も小さいことが重要である。加熱温度は品質から上昇させることはできず、圧力においても高圧にするためには超大型加熱プレス機が必要となりコスト面で不可能であり、優れた圧縮比率を得ることはなかった。
メラミンフォームを発泡させることで使用意味を有する商品であり、その商品を逆行して圧縮することは困難であって当然である。
【0022】
色々な怪情報により長時間を要したが、上記したように厚さ10mm以上の場合、加熱温度230℃位において低圧力で高圧縮が可能である。
この事実から、例えば4mmの商品厚さを実現し、1/4圧縮であることを条件とした場合、材料とされるメラミンフォームの厚さは16mmとなる。
上記文章内で説明したように、このような商品は容易に製造すること不可能であります。
復元力の低い薄い材料の場合のみ高圧縮が可能であることが判明しました。
又、メラミンフォームの圧縮比を容易に知る方法は、圧縮メラミンフォームの厚さと自重を計測し次に、同容積の非圧縮メラミンフォームの重量を計測する。メラミンフォームは熱硬化樹脂であり溶解しないことから物性に変化はない。よって厚さ4mmの圧縮メラミンフォームの自重が0.6gの場合、同容積の市販メラミンフォームの自重が0.2gであれば0.6÷0.2=3、つまり1/3圧縮商品である。(ロット差は多少有り)
【0023】
本発明方法においてメラミンフォームを加熱圧縮すると、1/2圧縮状態においても表面付近の硬度はデュロメーター硬さにおいてE1よりE16値まで上昇し、1/6圧縮以上においてはその数倍以上と思慮できる。
このような高圧縮メラミンフォームにおいても、着色汚れ除去力に変化は生じず効率よく除去できる。これにより、物性に変化が一切ないことも再確認できた。
メラミンフォームに関する研究開発を、化学、物理面から進めてきたが、今回の文献において剥離破壊の極めて少ない商品となったことで終了致します。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】メラミンフォームにおいて圧縮比別の引っ張り強度、引き裂き強度の上昇を示す折れ線グラフ。
図2】メラミンフォームの圧縮状態を点線で示す正面図
図3】引っ張り強度を上昇させる目的から、メラミンフォーム清掃使用対称裏面に溶着する樹脂製プレートの形状と、カット位置を一点斜線で示した平面図
図4】メラミンフォーム清掃使用対称裏面に樹脂製プレートを溶着、使用形状にカットした商品の斜射図
図5】上記したメラミンフォームを中心部分から二つおりしハンドルに取り付け歯面清掃状態を示すイメージ図
【符号の説明】
【0024】
1. メラミンフォーム
1A.メラミンフォーム高圧縮状態
2. 樹脂
3. 専用ハンドル
4. 歯面
図1
図2
図3
図4
図5