特許第6784964号(P6784964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6784964HLA−A3スーパータイプアレル陽性の前立腺癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なEZH2由来ペプチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784964
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】HLA−A3スーパータイプアレル陽性の前立腺癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なEZH2由来ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20201109BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20201109BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20201109BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20201109BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20201109BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20201109BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20201109BHJP
【FI】
   A61K38/08
   A61P35/00
   A61P37/04
   C07K7/06ZNA
   C07K14/705
   C12N5/071
   C12N5/0783
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-196099(P2014-196099)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-65027(P2016-65027A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年9月25日
【審判番号】不服2019-11249(P2019-11249/J1)
【審判請求日】2019年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100157174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100197550
【弁理士】
【氏名又は名称】津留 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】植村 天受
(72)【発明者】
【氏名】南 高文
【合議体】
【審判長】 光本 美奈子
【審判官】 岡崎 美穂
【審判官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−170799(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/000935(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/007711(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/022652(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
A61K38/08
A61P35/00,37/04
C07K7,14
DDBJ/GenBank/EMBL/PDB/GeneSeq/UniProt
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EZH2由来ペプチドであって、ヒト白血球抗原HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識されるペプチドであ、前記ペプチドが、配列番号:5に示すアミノ酸配列からなることを特徴とするペプチドを含む、前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物であって、前記HLA−A3スーパータイプに属するHLA−Aが、HLA−A11、HLA−A31及びHLA−A33からなる群から選択されるHLA−Aである、医薬組成物
【請求項2】
癌ワクチンである請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者より採取された末梢血単核細胞(PBMC)を請求項に記載のペプチドと接触させる工程を含む、前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導方法。
【請求項4】
請求項に記載のペプチドを含むことを特徴とする前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤。
【請求項5】
HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者に由来する抗原提示能を有する細胞に請求項に記載のペプチドを取り込ませる工程を含む、EZH2由来ペプチド又はその誘導体とHLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製する方法。
【請求項6】
EZH2由来ペプチド又はその誘導体とHLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するための抗原提示細胞調製剤であって、請求項に記載のペプチドを含むことを特徴とする抗原提示細胞調製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の処置又は予防に有用な癌ワクチン療法に有用なEZH2由来ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌は老年期男性に多い癌である。前立腺癌にはアンドロゲン除去療法が一過性に奏功するが、去勢抵抗性又は骨転移性前立腺癌として再発した場合に有効な治療法はない。このような患者にとって特異的免疫療法は有望な選択肢となりうる。これまで前立腺癌患者に対する特異的免疫療法に利用可能な癌抗原ペプチドは多く同定されている。しかしながらHLA(human leukocyte antigen:以下、ヒト白血球抗原ともいう)−A2及び−A24アレル(allele:以下、対立遺伝子ともいう)の頻度が世界的に高いことから、従来の癌抗原ペプチドはHLA−A2又は−A24アレルが陽性(陽性を、「」と表記することもある)の患者に対するものがほとんどであった。
【0003】
HLAクラスIアレルには、その構造的相同性及びペプチド結合モチーフ解析に基づきHLA−A2、−A3、−B7及び−44スーパータイプアレルが提唱されている。それらのうちHLA−A3スーパータイプアレルはコーカサス人の38%、中国人の53%、日本人の46%、並びに北米アフリカ系アメリカ人及びヒスパニックの43%に認められる。それにも関わらずHLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の治療に使用できる癌抗原ペプチドワクチンは限られている(例えば、特許文献1で開示された前立腺関連蛋白由来ペプチド、特許文献2で開示されたSART3由来ペプチド及び特許文献3で開示されたLck由来ぺプチド等)。
【0004】
一方、HLA−A2又は−A24分子を持った癌患者のための、ペプチドに基づいた抗癌ワクチンに用いることができるEZH2由来ペプチドの報告例が、特許文献4及び非特許文献1等に見られる。
【0005】
しかしながら、EZH2由来ペプチドをHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のためのワクチンに用いられた例はない。
【0006】
前記ペプチドワクチンによるワクチン療法の経験から、個々の患者の免疫状態の多様性と治療ターゲットである癌の多様性によって免疫応答(例えば、CTL反応など)が多彩であること、一旦有効であった症例も免疫逃避あるいは寛容により無効となることが明らかとなった。このようなエビデンスを鑑みると、1つの決まった抗原をターゲットにするのではなく、前立腺癌の発生、分化、増殖に立脚した複数の分子をターゲットにし、それぞれ異なった性質の癌を担癌した宿主に合ったテーラーメイドワクチン療法が必要と思われる。
【0007】
したがって、前立腺癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なペプチドの開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/000935号
【特許文献2】国際公開第2008/007711号
【特許文献3】国際公開第2009/022652号
【特許文献4】特開2005−170799号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ogata R, et al. “Identification of Polycomb Group Protein Enhancer of Zeste Homolog2 (EZH2)-Derived Peptides Immunogenic in HLA-A24+ Prostate Cancer Patients.” Prostate 2004; 60:273-281.
【非特許文献2】Itoh Y, et al., “New peptides of the polycomb group protein enhancer of zeste homolog 2 with the potential to induce cancer-reactive cytotoxic T lymphocytes in human leukocyte antigen-A2+ prostate cancer patients.” Oncol Rep 2007;18:1231-1237.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、前立腺癌患者に対する癌ワクチン療法に有用なペプチドを提供することを目的とする。また、本発明は、特異的細胞性免疫を誘導することができ、前立腺細胞癌の予防又は治療に有用な医薬組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導することができる前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤及びそれを用いた前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するためになされた本発明は、EZH2(enhancer of zeste homolog 2:以後、zesta同族体エンハンサー2ともいう)由来ペプチドであって、ヒト白血球抗原HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識され得るペプチドを提供することである。具体的には、本発明は、以下に示される:
<1>本発明は、EZH2由来の部分ペプチドであって、ヒト白血球抗原HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識され得る前立腺癌抗原ペプチド、又は同等の性質を有するその誘導体である。
【0012】
<2>本発明は、(a)配列番号5に示すアミノ酸配列からなるペプチド、又は(b)配列番号5に示すアミノ酸配列において1又は2個のアミノ酸置換、欠失及び/又は付加が導入されたアミノ酸配列からなり、かつ配列番号5に示すアミノ酸配列からなるペプチドと機能的に同等の性質を有するペプチドである<1>に記載のペプチドである。
【0013】
<3>本発明は、HLA−A3スーパータイプに属するHLA−Aが、HLA−A11、HLA−A31及びHLA−A33からなる群から選択されるHLA−Aである、<1>又は<2>に記載のペプチドである。
【0014】
<4>本発明のために、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチドをコードする塩基配列からなる核酸分子を用いてもよい。
【0015】
<5>本発明のために、<4>に記載の核酸分子を含有するベクターを用いてもよい。
【0016】
<6>本発明は、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチド、及び<5>に記載のベクターの少なくともいずれか1つを含む、前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物であってもよい。
【0017】
<7>本発明は、癌ワクチンである<6>に記載の医薬組成物である。
【0018】
<8>本発明は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者より採取された末梢血単核細胞(PBMC)を<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチドと接触させる工程を含む、前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導方法である。
【0019】
<9>本発明は、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチドを含む、前立腺癌反応性の細胞傷害性T細胞誘導剤である。
【0020】
<10>本発明は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者に由来する抗原提示能を有する細胞に<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチドを取り込ませる工程、又は<5>に記載のベクターを導入する工程を含む、EZH2由来ペプチド又はその誘導体とHLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製する方法である。
【0021】
<11>本発明は、EZH2由来ペプチド又はその誘導体とHLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するための抗原提示細胞調製剤であって、
<1>〜<3>のいずれか1つに記載のペプチド、及び<5>に記載のベクターの少なくとも1つを含む、抗原提示細胞調製剤であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者に対するペプチド基盤免疫療法、特に前立腺癌ワクチン療法の選択肢が広がった。本発明により、現在までいくつかの癌ワクチン候補ペプチドが同定されているHLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の治療において癌増殖に関与するとされるEZH2をターゲットに加えることにより更なる治療効果の向上に寄与することが期待される。
【0023】
本発明のペプチドは、HLA−A3スーパータイプアレルに結合できそれにより癌患者とりわけHLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の細胞性免疫に認識されるので、癌疾患とりわけ前立腺癌の治療や予防に有用である。このペプチドによれば、HLA拘束性に前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞を誘導することができる。このペプチドは、生体に存するEZH2に由来し又はその骨格に基づいて改変し又は誘導されたもので、生体内での所望のバインドサイトに結合し作用効果を発現するものであるから、副作用が少なくて信頼性が高く、安全である。
【0024】
このペプチドの配列を利用し、それをコードする核酸分子及びそれのベクターを作製して、ペプチドを生体外で製造したり生体内で産生したりするのに用いることができる。
【0025】
また、このぺプチドやそれをコードする核酸分子を利用して、前立腺癌の予防用又は治療用の医薬製剤、例えば前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞への誘導剤、CD8陽性T細胞の抗原提示細胞への誘導剤、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌の治療薬又は予防薬、癌ワクチンとして、癌治療、とりわけHLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌治療に供することができる。
【0026】
さらにこのペプチドとヒトHLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示した抗原提示細胞又は前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞が含有された前立腺癌予防用又は治療用の生物製剤を調製したりして、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の治療に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)は、LNCaP細胞(androgen-sensitive human prostate adenocarcinoma cells:以下、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞ともいう)におけるEZH2タンパク質の発現を示すゲル泳動図である。(b)は、3つのLNCaPトランスフェクタントが、HLA−A11、−A31、又は−A33分子のそれらの表面発現に対して、フローサイトメトリー(以下、流動細胞計測法ともいう)によって検査された図である。
図2】本発明を適用するEZH2由来ペプチドでHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者からの抹消血単核細胞(PBMC)を刺激し、それにより誘導されたペプチド反応性CTLが前立腺由来癌細胞株に対して細胞傷害活性を示すことができるかを調べた図である。
図3】本発明を適用する配列番号5のEZH2733−741ペプチドにて刺激したHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌細胞に由来するPBMCの、LNCaP−A11、−A31及び−A33に対する細胞傷害活性が、HIVペプチドパルスに比して、EZH2733−741ペプチドでパルスした非標識のC1R−A11、−A31及び−A33細胞の添加によって有意に抑制されたことを示す図である(C1R:HLAヒトB細胞株であり、HLAアレルのみを発現する細胞株を指す)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0029】
(ペプチド)
本発明のペプチドは、EZH2由来の部分ペプチドであって、ヒト白血球抗原HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識され得る前立腺癌抗原ペプチド、又は同等の性質を有するその誘導体ペプチドである。具体的には、下記(a)及び(b)のいずれかである。
(a)EZH2733−741(配列番号:5)に示すアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)EZH2733−741(配列番号:5)で表されるアミノ酸配列において、1個若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。
【0030】
本発明において、「ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレルに結合できる」とは、ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレルと複合体を形成し細胞表面に提示され得ることをいう。一般に、HLA分子に結合するペプチドは、HLAの型に依存する規則性あるアミノ酸配列を有することが知られており、前記規則性あるアミノ酸配列は、結合モチーフと呼ばれる。前記HLA−A3スーパータイプアレルに対し、ペプチドが結合できるか否かは、例えば、ウエブサイト(Bioinformatics and Molecular Analysis Section、 Computational Bioscience and Engineering Laboratory、 Division of Computer Research & Technology、NIH)などのコンピューター解析により予測することができる。
【0031】
本発明において、「細胞性免疫に認識される」とは、ペプチドが特異的な細胞傷害性T細胞(以下、CTLともいう)に認識される、即ち、ペプチド特異的CTLを誘導することができることをいう。ペプチド特異的CTLを誘導することができるか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペプチドで刺激した末梢血単核細胞(以下、PBMCともいう)が、該ペプチドをパルスした抗原提示細胞に反応してインターフェロン(以下、IFNと略すこともある)−γなどのサイトカインを産生するか否かを測定することにより確認する方法などが挙げられる。前記サイトカインを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay:以下、酵素免疫吸着測定法ともいう)などで測定することができる。また、誘導されたCTLの細胞傷害活性を確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、51Cr遊離試験により確認する方法などが挙げられる。
【0032】
前記(a)EZH2733−741(配列番号5)で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、EZH2由来ペプチドであり、前記EZH2における733番目から741番目のアミノ酸配列に相当する。
【0033】
前記(b)配列番号5で表されるアミノ酸配列において、1個若しくは2個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列からなるペプチドとしては、HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識されるペプチドであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
前記欠失、置換、及び付加の位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記置換としては、ペプチドの性質を変化させない点で、同族アミノ酸の間で置換することが好ましい。前記同族アミノ酸は、例えば、極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸、芳香族アミノ酸などの観点で選択することができる。
【0035】
前記欠失、置換、及び付加は、HLA−A3スーパータイプアレルの結合モチーフである点で、ペプチドのアミノ酸配列のN末端から第2番目のアミノ酸がアラニン、セリン、イソロイシン、バリン、トレオニン、メチオニン、又はロイシンであり、N末端から第9番目のアミノ酸がリシン又はアルギニンとなるように行うことが好ましい。
【0036】
前記ペプチドを構成するアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよいし、アミノ酸アナログであってもよい。前記アミノ酸アナログとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸のN−アシル化物、O−アシル化物、エステル化物、酸アミド化物、アルキル化物などが挙げられる。
【0037】
また、前記ペプチドは、本発明の効果を損なわない限り、その構成アミノ酸又はカルボキシル基などが修飾されていてもよい。前記修飾としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N末端や遊離のアミノ基にホルミル基、アセチル基、t−ブトキシカルボニル基等を結合するものや、C末端や遊離のカルボキシル基にメチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基等を結合するものなどが挙げられる。
【0038】
前記ペプチドは、細胞性免疫と液性免疫の両方に認識されるペプチドは、免疫原性が高くCTL誘導能に優れると期待される点で、液性免疫にも認識されることが好ましい。本発明において、「液性免疫に認識される」とは、ペプチドに特異的なIgGが生体内に存在する、即ち、ペプチド特異的IgGが血漿から検出されることをいう。血漿中の特異的IgGを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ELISA法などで測定することができる。
【0039】
前記ペプチドの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0040】
本発明のペプチドは、そのアミノ酸配列を含むポリペプチドが細胞内で断片化されることで生じるものであってもよい。前記ポリペプチドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
前記ペプチドは、癌増殖に関与するとされるEZH2由来ペプチドであり、HLA−A3スーパータイプアレルに結合でき、かつ細胞性免疫に認識されるので、例えば、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者の癌ワクチン療法に好適に用いることができる。
【0042】
(核酸分子)
本発明の核酸分子としては、前記ペプチドをコードする塩基配列からなるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0043】
前記核酸分子は、例えば、後述するベクターに好適に利用可能である。
【0044】
(ベクター)
本発明のベクターは、本発明の核酸分子を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の要素を含む。前記ベクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが挙げられる。前記ウイルスベクターの具体例としては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクターなどが挙げられる。
【0045】
前記ベクターの調製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して調製することができる。
【0046】
前記ベクターは、抗原提示細胞に導入されると本発明のペプチドを発現する。そして、前記抗原提示細胞は、前記ペプチドと、HLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する。前記抗原提示細胞は、ペプチド特異的に前立腺癌細胞を傷害するCTLを効率的に増殖させることができる。
【0047】
前記ベクターは、後述する前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物、抗原提示細胞調製剤に好適に利用可能である。
【0048】
(前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物)
本発明の前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、本発明のペプチド、及び本発明のベクターの少なくともいずれかを含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0049】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物における前記ペプチド、及び前記ベクターの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかからなるものであってもよい。前記ペプチド、及び前記ベクターは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記ペプチド、及び前記ベクターのそれぞれについても、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物における前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、医薬上許容され得る担体などが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記担体の具体例としては、セルロース、重合アミノ酸、アルブミンなどが挙げられる。
【0052】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0053】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、他の成分を有効成分とする医薬組成物と併せた態様で使用されてもよい。また、前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
【0054】
前立腺癌患者のCTLは、様々な癌抗原ペプチドを認識する細胞の集合であるため、前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、例えば、Lck由来ペプチド(特許文献3)及び/又はSART3由来ペプチド(特許文献2)と組み合わせて使用してもよい。
【0055】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物の剤形としては、特に制限はなく、公知の剤形を適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、液剤などが挙げられる。これらの剤形の前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、常法に従い製造することができる。
【0056】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、癌ワクチンとして使用することが好ましい。
【0057】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物の投与方法、投与量、投与時期、投与間隔、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0058】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物は、免疫応答が効果的に成立するように、従来からワクチン投与に用いられることが知られているアジュバントとともに投与することが好ましく、投与方法としては、例えば、皮内投与、皮下投与などが挙げられる。
【0059】
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象の個体の疾患の状態、年齢、体重、体質、他の成分を有効成分とする医薬組成物の投与の有無などを考慮して適宜選択することができる。前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物が前記ペプチドを含む場合の投与量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ペプチド量として、0.0001mg〜1,000mgなどが挙げられる。
【0060】
前記前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物が前記ベクター含む場合の投与量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA量として、0.1μg〜100mgなどが挙げられる。投与方法としては、静脈注射、皮下投与、皮内投与などが挙げられる。
【0061】
前記投与時期、及び投与間隔としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、数週から数ヶ月に1回、1年間〜3年間継続して投与するなどが挙げられる。
【0062】
前記投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒトが挙げられる。
【0063】
(前立腺癌の予防又は治療方法)
前記ペプチド、及び前記ベクターは、個体に投与することにより、個体における前立腺癌の発症を予防したり、前立腺癌を患っている個体を治療したりすることができる。したがって、本発明は、前立腺癌を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかを投与することを特徴とする、前立腺癌の予防又は治療方法にも関する。
【0064】
また、前記前立腺癌の予防又は治療方法は、後述する前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法により誘導した前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞を個体に戻したり、後述する抗原提示細胞の調製方法により調製した抗原提示細胞を個体に戻したりすることにより行ってもよい。
【0065】
(前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法)
本発明の前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法は、接触工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0066】
<接触工程>
前記接触工程は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者より採取された末梢血単核細胞(PBMC)を本発明のペプチドと接触させる工程である。前記接触工程により、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌細胞を傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導することができる。
【0067】
前記細胞傷害性T細胞が「前立腺癌反応性」であるとは、前記細胞傷害性T細胞が、前立腺癌細胞上の癌抗原ペプチドとHLA分子との複合体を認識し、その細胞を傷害する能力を有することをいう。
【0068】
前記ペプチドは、前記ペプチドのみからなるものを使用してもよいし、後述する前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤を使用してもよい。
【0069】
前記接触の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者より採取された末梢血単核細胞(PBMC)を、in vitroで前記ペプチドの存在下で培養する方法などが挙げられる。
【0070】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法で得られた前立腺反応性細胞傷害性T細胞は、例えば、末梢血単核細胞を採取した個体の体内に戻して前立腺癌細胞を傷害する養子免疫療法に好適に用いることができる。
【0072】
(前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤)
本発明の前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤は、本発明のペプチドを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。前記ペプチドは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤における前記ペプチドの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記前立腺癌反応性傷害性T細胞誘導剤は、前記ペプチドのみからなるものであってもよい。
【0073】
前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物のその他の成分の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤は、上述した前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法に好適に用いることができる。
【0075】
(前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キット)
本発明の前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キットは、本発明の前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の要素を含む。前記その他の要素としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の要素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導用キットは、上述した前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導方法に好適に用いることができる。
【0076】
(抗原提示細胞の調製方法)
本発明の抗原提示細胞は、導入工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0077】
前記導入工程は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者より採取された抗原提示能を有する細胞に本発明のペプチド、及び本発明のベクターの少なくともいずれかを導入する工程である。前記導入工程により、エリスロポイエチンレセプター由来ペプチドと、HLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製することができる。前記抗原提示細胞は、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌細胞を傷害する細胞傷害性T細胞を誘導し得る。
【0078】
前記ペプチドは、前記ペプチドのみからなるものを使用してもよいし、後述する抗原提示細胞調製剤を使用してもよい。前記ベクターは、前記ベクターのみからなるものを使用してもよいし、後述する抗原提示細胞調製剤を使用してもよい。前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかを前記抗原提示能を有する細胞導入する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0079】
前記抗原提示細胞は、例えば、HLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者由来の抗原提示能を有する細胞を前記ペプチドと共に培養することにより得られる。また、例えば、前記ベクターをHLA−A3スーパータイプアレル陽性前立腺癌患者由来の抗原提示能を有する細胞に導入し、前記ペプチドを発現させることにより得られる。
【0080】
前記抗原提示能を有する細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹状細胞などが挙げられる。前記樹状細胞の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、患者より採取した末梢血単核細胞から培養プレートに接着する細胞を分離し、その細胞をIL−4及びGM−CSFの存在下で約1週間培養する方法などが挙げられる。
【0081】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0082】
前記抗原提示細胞の調製方法で得られた抗原提示細胞は、例えば、末梢血単核細胞を採取した個体の体内に戻し、体内での前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞の誘導を促進するために好適に用いることができる。
【0083】
(抗原提示細胞調製剤)
本発明の抗原提示細胞調製剤は、エリスロポイエチンレセプター由来ペプチドと、HLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するための抗原提示細胞調製剤であって、本発明のペプチド、及び本発明のベクターの少なくともいずれかを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0084】
前記ペプチド、及び前記ベクターは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記ペプチド、及び前記ベクターのそれぞれについても、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記抗原提示細胞調製剤における前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記抗原提示細胞調製剤は、前記ペプチド、及び前記ベクターの少なくともいずれかのみからなるものであってもよい。
【0085】
前記抗原提示細胞調製剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述した前立腺癌の予防又は治療用医薬組成物のその他の成分の項目に記載したものと同様のものが挙げられる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記抗原提示細胞調製剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0086】
前記抗原提示細胞調製剤は、上述した抗原提示細胞の調製方法に好適に用いることができる。
【0087】
(抗原提示細胞調製用キット)
本発明の抗原提示細胞調製用キットは、エリスロポイエチンレセプター由来ペプチドと、HLA−A3スーパータイプアレルとの複合体を細胞表面に提示する抗原提示細胞を調製するための抗原提示細胞調製用キットであって、本発明の前立腺癌反応性細胞傷害性T細胞誘導剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の要素を含む。
【0088】
前記その他の要素としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培地、緩衝液などが挙げられる。前記その他の要素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記抗原提示細胞調製用キットは、上述した抗原提示細胞の調製方法に好適に用いることができる。
【実施例】
【0090】
以下、本発明の試験例を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0091】
<材料及び方法>
<患者> 末梢血液単核細胞(PBMC)は、書面のインフォームドコンセントを提供した前立腺癌患者及び健康なドナー(HD:Healthy Donor)から得られた。被検者はHLA−A11、−A31又は−A33患者を含んでいた;HLA−A3又は−A68患者からのPBMCは、日本人の個体群中でそれらの極端に低い頻度(それぞれに1.6及び0.5%)のために利用可能ではなかった[Aizawa M. The Proceedings of the 3rd Asia-Oceania histocompatibility workshop conference. Oxford University Press 1986; 1090-1103]。どの参加者もヒト免疫不全ウィルス(HIV)に感染していなかった。30ミリリッターの末梢血が得られた。そして、PBMCがフィコール−コンレイ密度グラディエント遠心分離によって調製された。サンプルはすべて使用まで凍結保存された。近畿大学の倫理検討委員会は研究プロトコール(承認No.19−10)を承認した。
【0092】
<細胞株>
C1R−A11、C1R−A31及びC1R−A33は、HLA−A11:01(A31:01)(A33:03遺伝子)で強固にそれぞれにトランスフェクトされたC1Rリンパ腫亜系である。これらの亜系上のHLA−A11、−A31及び−A33分子の発現が報告されている[Takedatsu H, Shichijo S, Katagiri K, Sawamizu H, Sata M, Itoh K: Identification of peptide vaccine candidates sharing among HLA-A3+, -A11+, -A31+, -A33+ cancer patients. Clin Cancer Res 2004; 10: 1112-1120]。LNCaP−A11、LNCaP−A31及びLNCaP−A33は、HLA−A11、−A31、−A33分子の各々を発現するLNCaP亜系である[Minami T, Matsueda S, Takedatsu H, Tanaka M, Noguchi M, Uemura H, Itoh K, Harada M: “Identification of SART3-derived peptides having the potential to induce cancer-reactive cytotoxic T lymphocytes from prostate cancer patients with HLA-A3 supertype alleles.” Cancer Immunol Immuother 2007; 56: 689-698]。これらの細胞株はすべて10%のFCSでRPMI 1640(Invitrogen)中に維持された。PrECは、Lonza、Walkersville、MD、米国、から購入された前立腺正常上皮細胞株である。
【0093】
<ペプチド>
EZH2から派生した全てのペプチドは、HLA−A3スーパータイプアレルに結合するモチーフに基づいて調製された[Parker KC, Bednarek MA, Coligan JE. “Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.” J Immunol 1994; 152: 163-175]。簡単に言えば、ペプチドを結合するスコアはBIMAS(Bioinformatics and Molecular Analysis Section, Computational Bioscience and Engineering Laboratory, Division of Computer Research & Technology, NIH, bimas.cit.nih.gov)から得られるようなHLAクラスI分子からの解離の予測された半減期に基づいて計算され、そしてEZH2由来の5つのペプチド(配列番号:1〜5)が選択された。それらを以下に示す:
【0094】
【表1】
【0095】
また、HLA−A3スーパータイプアレルに結合するコントロールに用いたペプチドのアミノ酸配列を以下に示す:
【0096】
【表2】
【0097】
全てのペプチドは、(ユーロフィンジェノミクス株式会社、Tokyo、日本)から購入され、服量10mg/mlでDMSOに溶解された。
【0098】
<PBMCからのペプチドに特有のCTLの誘導>
ペプチドに特有のCTLの検出のためのアッセイはいくつかの修正を伴って以前に報告された方法によって行なわれた[Hida N, Maeda Y, Katagiri K, Takasu H, Harada M, Itoh K: “A simple culture protocol to detect peptide-specific cytotoxic T lymphocyte precursors in the circulation.” Cancer Immunol Immunother 2002;51:219-228]。PBMC(5個×104細胞/ウエル)は、培地100μL中、U底型96穴ウエルサブカルチャープレート(Nunc、Roskilde、Denmark)で、各ペプチド10μg/mlで培養された。培地は、45%のRPMI1640、45%のAIM−V媒体(Gibco BRL、Gaithersburg、MD、アメリカ)、10%のFCS及びMEM非必須アミノ酸溶液(×100希釈、Gibco BRL)から構成されていた。8つのウエルが各ペプチドに用いられた。翌日に、50U/mlのIL−2を含有している培地100μLが添加された。8日目に、培地100μLが除去され、対応するペプチド(10μg/ml)を含有している新鮮な培地が補充され、及び9日目には、50U/mlのIL−2を含有している培地100μLが添加された。培養の17日目に、新鮮な培地で置換された。そして、培養細胞は1つのウエルから4つのウエルへ分離された:対応するペプチドパルスC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞を持った刺激のための2つのウエル及び他の2つのウエルが、コントロールのHIVのペプチドパルスC1R−A11、C1R−A31又はC1R−A33細胞を持った刺激に用いられた。18時間の培養の後、上澄みが収集され、及びIFN−γのレベルがELISAによって決定された。ペプチドに特有のCTLの誘導は以下の2つの基準が満たされたときにだけ陽性と判断された:
(i)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルの両方共が、≧50pg/mlであって、且つ、(ii)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルの両方共が、コントロールのHIVペプチドで刺激された2つのウエルにおけるINF−γレベルの中間値より1.2倍以上多かった場合である。
【0099】
<フローサイトメトリック分析>
HLA−A3スーパータイプアレルの発現を検討するために、LNCaPトランスフェクタントが、抗−HLA−A11 mAb(Cat.no.0284HA;One Lambda Inc.、Canoga、CA、アメリカ)、抗−HLA−A31 mAb(Cat.no.0273HA;One Lambda)、及び抗−HLA−A33 mAb(Cat.no.0612HA;One Lambda)のいずれかで染色され、引き続き、FITC共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(KPL、Gaithersburg、MD、アメリカ)で染色された。
【0100】
<免疫ブロット法アッセイ>
細胞はプロテアーゼ阻害剤混合液(Nacalai Tesque)でM−PER試薬(Pierce、Rockford、IL、アメリカ)中に溶解された。タンパク濃度はCoomassie Plus Protein Bradfordキット(Pierce)を用いて決定された。NuPAGEジェル(4〜12%又は12%;ライフ・テクノロジーズ、Carlsbad、CA、アメリカ)が、タンパク質分離に用いられた。そして、タンパク質はiBlotトランスファー方式(ライフ・テクノロジーズ)を用いて、PVDF膜(ライフ・テクノロジーズ)の上に固定された。膜は、BlockerBSA溶液(1×)(Pierce)を含有しているTBST(0.1%のトゥイーン20でトリス塩基塩性)を用いて、30分間ブロックされた。一次抗体での培養は4℃でBlockerBSA(1×)を含有しているTBSTを用いて一夜行なわれた。以下の一次抗体を用いた:抗EZH2(Cell Signaling Technology、Danvers、MA、アメリカ)及び抗−β−アクチン(Biolegend、San Diego、CA、アメリカ)抗体。洗浄の後、膜は、アルカリホスファターゼ共役二次抗体で、室温で30分間培養された。タンパク質帯域は、CDP星状体化学発光を用いて視覚化され、LAS−4000(FujiFilm、Tokyo、日本)で撮影された。
【0101】
<細胞毒性試験>
標準6時間の51Cr遊離試験によってCTLの細胞毒性を試験するために、CD8T細胞が、ペプチドに刺激されたPBMCから以下のようにマイナスで精製された:ペプチドで刺激されたPBMCが、抗CD56 mAb(mIgG1:DIACLONE、Besancov Cedex、フランス)で最初に染色され、次いで、Dynabeads抗マウスIgG(Invitrogen)、Dynabeads抗CD19(Invitrogen)及びDynabeads抗CD4(Invitrogen)で染色された。Dynabeadsに結合した細胞は磁化されマイナスで除去された。CD4T細胞、B細胞及びナチュラルキラー細胞の消耗の後、CD8T細胞のパーセンテージは実験(データは示されず)の全体にわたり約80〜85%であった。フィトヘマグルチニン(PHA)−活性化T細胞が、HLAA−11、−A31及び−A33正常標的細胞の負の対照として用いられた。1つのウエル当たり、51Crで標識された2000個の細胞が、96円形ウエルプレート中でエフェクター細胞と共に、表示されたエフェクター/標的比率で培養された。特定の51Cr遊離は以下の式によって計算された:
比溶解%=(試験サンプル遊離−自然遊離)×100/(最大遊離−自然遊離)
最大遊離は、1%のトリトンX(和光純薬化学工業、大阪、日本)で培養されたサンプルの上澄み液によって決定された。
【0102】
ペプチドで刺激されたCD8T細胞がLNCaPトランスフェクタント細胞に対する細胞毒性の原因であったかどうかテストするために、コールドインヒビションアッセイ(cold inhibition assay)が行なわれた。簡単に言えば、51Cr−標識された標的細胞(2×10細胞/ウエル)が、精製されたCD8T細胞(2×10細胞/ウエル)と共に96穴−丸底ウエルプレート中で4×10個の標識されていないコールド標的細胞と共に培養された。対照HIVペプチド又は対応するEZH2ペプチドのいずれかで予めパルスされた、C1R−A11、C1R−A31及びC1R−A33細胞が、コールド標的細胞として用いられた。
【0103】
<統計処理>
データの統計的有意差は両側スチューデントt−検定(two−tailed Student’s t−test)を用いて決定された。0.05未満のP値(確率)が、統計的に意義ありと考慮された。
【0104】
実施例1
<HLA−A3スーパータイプアレルを持った前立腺癌患者のPBMCからのEZH2ペプチドに特有のCTLの誘導>
HLA−A11、−A31及び−A33分子に対する結合モチーフに基づいて[Parker KC, Bednarek MA, Coligan JE. “Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.” J Immunol 1994; 152: 163-175]、EZH2から誘導された5つのペプチド(下記表3にリストされている)を調製し、どのペプチドが、HLA−A11、−A31、又は−A33前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有のCTLを誘発し得るかを決定した(表4)。
【0105】
<1>即ち、まずEZH2の5つの部分ペプチドのHLA−A3スーパータイプアレルに対する結合スコアを算出した(表3)。その結果、部分ペプチドEZH2733−741(配列番号5)が、結合スコア12と最も高い値を示し、HLA−A3スーパータイプアレルに最も結合し易いことを推測させた。
【0106】
【表3】
【0107】
表3中、a)ペプチド結合スコアは、ウエブサイト(Bioinformatics and Molecular Analysis Section, Computational Bioscience and Engineering Laboratory, Division of Computer Research & Technology, NIH)から得られたHLAクラスI分子からの解離の予想半減期(half-time)に基づいて算出された。HIVペプチドの結合スコアは算出されなかった。なぜならば、そのペプチドはアミノ酸の11量体から成っていたからである。
【0108】
<2>次に、HLA−A11、−A31及び−A33患者及び健常ドナーのPBMCからのペプチド反応性CTLの誘導性を試験した。PBMCは、EZH2由来の各部分ペプチド(5種類)、又はEBV若しくはインフルエンザペプチドのいずれかにより生体外で刺激され、そして、対応するペプチドでパルスされたC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞に応じたそれらのIFN−γ生産の項目で細胞が試験された。8つのウエルが各ペプチドに用いられた。結果を表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表4中、PBMCは示された各ペプチドで生体外にて刺激され、ペプチド特異的反応性が試験された。表4には陽性の結果のみ示されている。
【0111】
表4の結果は、ペプチドに特有のCTLの誘導は以下の2つの基準が満たされたときにだけ陽性と判断された:(i)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルが共に≧50pg/mlであり、及び、(ii)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルが共に、ペプチドで刺激された2つのウエル中の対照HIV中のINF−γレベルの平均より≧1.2倍以上高いことである。HD(健常ドナー)に関しては、EZH223−31及びEZH270−78ペプチドの両方とも、HLA−A11HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。EZH273−81及びEZH2699−707ペプチドは、HLAA31HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。そして、EZH2733−741ペプチドは、HLA−A33HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。前立腺癌患者に関して、4患者からのPBMCが各々のHLA−A3スーパータイプアレルについて試験された。その結果、EZH2733−741ペプチドは、HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のPBMCからのペプチド反応性のCTLを最も効率的に誘発した。EZH2733−741ペプチドの誘導効果はコントロールEBV又はインフルエンザペプチドより高かった。ペプチドに特有のCTLの陽性誘導は、HLA−A3スーパータイプアレルを持った4人の患者のうち、HLA−A11保有患者で2人、HLA−A31保有患者で2人及びHLA−33保有患者で2人の患者から誘発された。EZH2733−741ペプチドと較べると、他の4つのEZH2ペプチドは、ペプチドに特有のCTLを誘発するのにはそれほど成功しなかった。全体として、これらの結果は、5つの候補の中で、EZH2733−741ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有のCTLを発生することができる最良のペプチドであることを示す。そこで、このEZH2733−741ペプチドを候補ペプチドとして選択して、次に、細胞毒性試験を行なった。
【0112】
実施例2
<HLA−A3スーパータイプアレル及びEZH2発現性前立腺癌細胞に対する、EZH2733−741ペプチドに反応性であるCTLの細胞毒性>
【0113】
実施例1においてペプチド特異的CTLの誘導を認めたEZH2733−741ペプチドをパルスされたCD8CTLは、6時間の51Cr遊離試験にて、LNCaP、LNCaP−A11、LNCaP−A31及びLNCaP−A33に対しての細胞毒性を確認する。
【0114】
まず、HLA−A3スーパータイプアレルに対する細胞毒性及びEZH2を発現する前立腺癌細胞を試験する前に、EZH2及びHLA−A3スーパータイプアレルのタンパク質発現を確認した。その結果を図1(a)に示す。図1(a)は、本発明を適用するLNCaP細胞におけるEZH2タンパク質の発現を示すゲル泳動図である。前立腺癌細胞株のLNCaP、PC3、前立腺の正常な上皮細胞PrEC、及びPHA活性化T細胞芽球におけるEZH2タンパク質発現が免疫ブロット法によって検査された。β−アクチンの発現はコントロールとして用いられた。その結果、前立腺癌細胞株のLNCaP及びPC3、並びにPHAで活性化されたT細胞芽球は、タンパク質レベルでEZH2を発現した。対照的に、その発現は前立腺正常上皮細胞株PrECにおいて非常に低かった。
【0115】
次に、本発明を適用する3つのLNCaPトランスフェクタントが、HLA−A11、−A31、又は−A33分子のそれらの表面発現に対して、フローサイトメトリー(流動細胞計測法)によって検査を行なった。図1(b)にその結果を示す。これらの細胞は、抗HLA−A11、抗HLA−A31、又は抗HLA−A33mAbで最初に染色され、次いでFITC共役抗マウスIgG mAbで染色された。白抜きは最初のmAb無しの染色を表わす。HLA−A11、−A31及び−A33プラスミドで強固にトランスフェクトされたLNCaP亜系は、各々のA3スーパータイプアレルに対して陽性であった。
【0116】
次に、EZH2733−741ペプチドでMP(多核白血球)インビトロ刺激によって誘発されたCTLがHLA−A3スーパータイプアレル及びEZH2を発現する前立腺癌細胞に対する細胞毒性を示すかどうかを決定した。
HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者からのPBMCは、EZH2733−741ペプチドによって生体外で刺激される。CD8T細胞のための精製の後、HLA−A11、−A31、又は−A33のいずれか分子を発現するLNCaP亜系に対するそれらの細胞毒性を検討した。得られた結果を図2に示す。
【0117】
図2において、HLA−A3スーパータイプアレルHDsからのPBMCのPHAに刺激されたT細胞芽球が、正常なコントロール細胞として用いられた。HLA−A11患者からのPBMCの精製されたCD8T細胞(患者Pt#1及びPt#2)(それらはEZH2733−741ペプチドにより生体外で刺激された)は、親のLNCaP細胞及びHLA−A11T細胞芽球に対するより、LNCaP−A11細胞に対してより高いレベルの細胞毒性を示した。図2における、患者Pt#7及びPt#13は表4におけるHLA−A11についての患者Pt#2及びPt#4に相当する。同様に、親のLNCaP細胞、HLAA31又はHLA−A33T細胞芽球と比較して、HLA−A31又はHLA−A33患者からのPBMCのEZH2733−741ペプチドで刺激され、及び精製されたCD8T細胞は、LNCaP−A31及びLNCaP−A33細胞に対するより高い細胞毒性をそれぞれに発揮した。図2におけるHLA−A31についての患者Pt#34及びPt#35は、表4におけるHLA−A31についての患者Pt#1及びPt#4に相当し、図2におけるHLA−A33についての患者Pt#14及びPt#30は、表4におけるHLA−A33についての患者Pt#1及びPt#2に相当する。
これらの結果は、EZH2733−741ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のPBMCからの前立腺癌反応性CTLを誘発する潜在力を有していることを示す。
【0118】
細胞毒性の特異性を確認するために、次に、精製されたCD8T細胞を用いて、コールド阻害細胞毒性アッセイを行なった。得られた結果を図3に示す。
その結果、図3に示されるように、EZH2733‐741ペプチドで刺激され及び精製されたHLA‐A11、HLA−A31又はHLA−A33患者からのCD8T細胞のLNCaP−A11、LNCaP−A31、又はLNCaP−A33細胞に対する細胞毒性は、HIVペプチドでパルスされラベルされていないC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞と共に添加されたときに比較して、対応するEZH2733−741ペプチドでパルスされラベルされていないC1R−A11、C1R−A31又はC1R−A33細胞の添加によって著しく抑えられた。
【0119】
これらの結果は、HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者からのEZH2733−741ペプチドで刺激されたPBMCの、HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌細胞に対する細胞毒性が、少なくとも、部分的に、EZH2733−741ペプチド特異的なCD8T細胞に帰着されたことを示唆する。
【0120】
<考察>
現在まで、HLA−A2又は−A24分子を持った癌患者のための、ペプチドに基づいた抗癌ワクチンに用いることができるEZH2由来ペプチドが報告されてきたが(例えば、特許文献4、非特許文献2及び非特許文献4)、EZH2由来ペプチドをHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のためのワクチンに用いられた例はない。本発明によって、EZH2733−741ペプチドが、HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有で且つ前立腺癌に反応性のCTLを誘発する潜在力を有していることを示した。EZH2733−741ペプチドは、対照のEBV又はFlu(インフルエンザ)ペプチドと比較して、より効率的にHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者のPBMCからのペプチド特有のCTLを誘発した。さらに、コールド阻害アッセイは、EZH2733−741ペプチドで刺激されたHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者からのPBMCの、HLA−A3スーパータイプEZH2を発現している前立腺癌細胞に対する細胞毒性が、ペプチドに特有のCD8T細胞に依存することを示した。これら一連の本発明の結果は、EZH2733−741ペプチドが、HLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者に対する抗癌ワクチンとして適用可能であることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明はHLA−A3スーパータイプアレル前立腺癌患者に適用可能な新しいEZH2ペプチド候補を特定した。HLA−A2又は−A24前立腺癌患者のための既知のEZH2ペプチドと組み合わせることで、EZH2ペプチドパネルは、種々の少数民族の個体群におけるホルモン難治性及び転移性の前立腺癌患者のためのペプチドに基づいた抗癌ワクチンを促進することを可能にする。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]