【実施例】
【0090】
以下、本発明の試験例を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0091】
<材料及び方法>
<患者> 末梢血液単核細胞(PBMC)は、書面のインフォームドコンセントを提供した前立腺癌患者及び健康なドナー(HD:Healthy Donor)から得られた。被検者はHLA−A11
+、−A31
+又は−A33
+患者を含んでいた;HLA−A3
+又は−A68
+患者からのPBMCは、日本人の個体群中でそれらの極端に低い頻度(それぞれに1.6及び0.5%)のために利用可能ではなかった[Aizawa M. The Proceedings of the 3rd Asia-Oceania histocompatibility workshop conference. Oxford University Press 1986; 1090-1103]。どの参加者もヒト免疫不全ウィルス(HIV)に感染していなかった。30ミリリッターの末梢血が得られた。そして、PBMCがフィコール−コンレイ密度グラディエント遠心分離によって調製された。サンプルはすべて使用まで凍結保存された。近畿大学の倫理検討委員会は研究プロトコール(承認No.19−10)を承認した。
【0092】
<細胞株>
C1R−A11、C1R−A31及びC1R−A33は、HLA−A11:01(A31:01)(A33:03遺伝子)で強固にそれぞれにトランスフェクトされたC1Rリンパ腫亜系である。これらの亜系上のHLA−A11、−A31及び−A33分子の発現が報告されている[Takedatsu H, Shichijo S, Katagiri K, Sawamizu H, Sata M, Itoh K: Identification of peptide vaccine candidates sharing among HLA-A3+, -A11+, -A31+, -A33+ cancer patients. Clin Cancer Res 2004; 10: 1112-1120]。LNCaP−A11、LNCaP−A31及びLNCaP−A33は、HLA−A11、−A31、−A33分子の各々を発現するLNCaP亜系である[Minami T, Matsueda S, Takedatsu H, Tanaka M, Noguchi M, Uemura H, Itoh K, Harada M: “Identification of SART3-derived peptides having the potential to induce cancer-reactive cytotoxic T lymphocytes from prostate cancer patients with HLA-A3 supertype alleles.” Cancer Immunol Immuother 2007; 56: 689-698]。これらの細胞株はすべて10%のFCSでRPMI 1640(Invitrogen)中に維持された。PrECは、Lonza、Walkersville、MD、米国、から購入された前立腺正常上皮細胞株である。
【0093】
<ペプチド>
EZH2から派生した全てのペプチドは、HLA−A3スーパータイプアレルに結合するモチーフに基づいて調製された[Parker KC, Bednarek MA, Coligan JE. “Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.” J Immunol 1994; 152: 163-175]。簡単に言えば、ペプチドを結合するスコアはBIMAS(Bioinformatics and Molecular Analysis Section, Computational Bioscience and Engineering Laboratory, Division of Computer Research & Technology, NIH, bimas.cit.nih.gov)から得られるようなHLAクラスI分子からの解離の予測された半減期に基づいて計算され、そしてEZH2由来の5つのペプチド(配列番号:1〜5)が選択された。それらを以下に示す:
【0094】
【表1】
【0095】
また、HLA−A3スーパータイプアレルに結合するコントロールに用いたペプチドのアミノ酸配列を以下に示す:
【0096】
【表2】
【0097】
全てのペプチドは、(ユーロフィンジェノミクス株式会社、Tokyo、日本)から購入され、服量10mg/mlでDMSOに溶解された。
【0098】
<PBMCからのペプチドに特有のCTLの誘導>
ペプチドに特有のCTLの検出のためのアッセイはいくつかの修正を伴って以前に報告された方法によって行なわれた[Hida N, Maeda Y, Katagiri K, Takasu H, Harada M, Itoh K: “A simple culture protocol to detect peptide-specific cytotoxic T lymphocyte precursors in the circulation.” Cancer Immunol Immunother 2002;51:219-228]。PBMC(5個×104細胞/ウエル)は、培地100μL中、U底型96穴ウエルサブカルチャープレート(Nunc、Roskilde、Denmark)で、各ペプチド10μg/mlで培養された。培地は、45%のRPMI1640、45%のAIM−V媒体(Gibco BRL、Gaithersburg、MD、アメリカ)、10%のFCS及びMEM非必須アミノ酸溶液(×100希釈、Gibco BRL)から構成されていた。8つのウエルが各ペプチドに用いられた。翌日に、50U/mlのIL−2を含有している培地100μLが添加された。8日目に、培地100μLが除去され、対応するペプチド(10μg/ml)を含有している新鮮な培地が補充され、及び9日目には、50U/mlのIL−2を含有している培地100μLが添加された。培養の17日目に、新鮮な培地で置換された。そして、培養細胞は1つのウエルから4つのウエルへ分離された:対応するペプチドパルスC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞を持った刺激のための2つのウエル及び他の2つのウエルが、コントロールのHIVのペプチドパルスC1R−A11、C1R−A31又はC1R−A33細胞を持った刺激に用いられた。18時間の培養の後、上澄みが収集され、及びIFN−γのレベルがELISAによって決定された。ペプチドに特有のCTLの誘導は以下の2つの基準が満たされたときにだけ陽性と判断された:
(i)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルの両方共が、≧50pg/mlであって、且つ、(ii)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルの両方共が、コントロールのHIVペプチドで刺激された2つのウエルにおけるINF−γレベルの中間値より1.2倍以上多かった場合である。
【0099】
<フローサイトメトリック分析>
HLA−A3スーパータイプアレルの発現を検討するために、LNCaPトランスフェクタントが、抗−HLA−A11 mAb(Cat.no.0284HA;One Lambda Inc.、Canoga、CA、アメリカ)、抗−HLA−A31 mAb(Cat.no.0273HA;One Lambda)、及び抗−HLA−A33 mAb(Cat.no.0612HA;One Lambda)のいずれかで染色され、引き続き、FITC共役ヤギ抗マウスIgG(H+L)抗体(KPL、Gaithersburg、MD、アメリカ)で染色された。
【0100】
<免疫ブロット法アッセイ>
細胞はプロテアーゼ阻害剤混合液(Nacalai Tesque)でM−PER試薬(Pierce、Rockford、IL、アメリカ)中に溶解された。タンパク濃度はCoomassie Plus Protein Bradfordキット(Pierce)を用いて決定された。NuPAGEジェル(4〜12%又は12%;ライフ・テクノロジーズ、Carlsbad、CA、アメリカ)が、タンパク質分離に用いられた。そして、タンパク質はiBlotトランスファー方式(ライフ・テクノロジーズ)を用いて、PVDF膜(ライフ・テクノロジーズ)の上に固定された。膜は、BlockerBSA溶液(1×)(Pierce)を含有しているTBST(0.1%のトゥイーン20でトリス塩基塩性)を用いて、30分間ブロックされた。一次抗体での培養は4℃でBlockerBSA(1×)を含有しているTBSTを用いて一夜行なわれた。以下の一次抗体を用いた:抗EZH2(Cell Signaling Technology、Danvers、MA、アメリカ)及び抗−β−アクチン(Biolegend、San Diego、CA、アメリカ)抗体。洗浄の後、膜は、アルカリホスファターゼ共役二次抗体で、室温で30分間培養された。タンパク質帯域は、CDP星状体化学発光を用いて視覚化され、LAS−4000(FujiFilm、Tokyo、日本)で撮影された。
【0101】
<細胞毒性試験>
標準6時間の
51Cr遊離試験によってCTLの細胞毒性を試験するために、CD8
+T細胞が、ペプチドに刺激されたPBMCから以下のようにマイナスで精製された:ペプチドで刺激されたPBMCが、抗CD56 mAb(mIgG1:DIACLONE、Besancov Cedex、フランス)で最初に染色され、次いで、Dynabeads抗マウスIgG(Invitrogen)、Dynabeads抗CD19(Invitrogen)及びDynabeads抗CD4(Invitrogen)で染色された。Dynabeadsに結合した細胞は磁化されマイナスで除去された。CD4
+T細胞、B細胞及びナチュラルキラー細胞の消耗の後、CD8
+T細胞のパーセンテージは実験(データは示されず)の全体にわたり約80〜85%であった。フィトヘマグルチニン(PHA)−活性化T細胞が、HLAA−11
+、−A31
+及び−A33
+正常標的細胞の負の対照として用いられた。1つのウエル当たり、
51Crで標識された2000個の細胞が、96円形ウエルプレート中でエフェクター細胞と共に、表示されたエフェクター/標的比率で培養された。特定の
51Cr遊離は以下の式によって計算された:
比溶解%=(試験サンプル遊離−自然遊離)×100/(最大遊離−自然遊離)
最大遊離は、1%のトリトンX(和光純薬化学工業、大阪、日本)で培養されたサンプルの上澄み液によって決定された。
【0102】
ペプチドで刺激されたCD8
+T細胞がLNCaPトランスフェクタント細胞に対する細胞毒性の原因であったかどうかテストするために、コールドインヒビションアッセイ(cold inhibition assay)が行なわれた。簡単に言えば、
51Cr−標識された標的細胞(2×10
3細胞/ウエル)が、精製されたCD8
+T細胞(2×10
4細胞/ウエル)と共に96穴−丸底ウエルプレート中で4×10
4個の標識されていないコールド標的細胞と共に培養された。対照HIVペプチド又は対応するEZH2ペプチドのいずれかで予めパルスされた、C1R−A11、C1R−A31及びC1R−A33細胞が、コールド標的細胞として用いられた。
【0103】
<統計処理>
データの統計的有意差は両側スチューデントt−検定(two−tailed Student’s t−test)を用いて決定された。0.05未満のP値(確率)が、統計的に意義ありと考慮された。
【0104】
実施例1
<HLA−A3スーパータイプアレルを持った前立腺癌患者のPBMCからのEZH2ペプチドに特有のCTLの誘導>
HLA−A11、−A31及び−A33分子に対する結合モチーフに基づいて[Parker KC, Bednarek MA, Coligan JE. “Scheme for ranking potential HLA-A2 binding peptides based on independent binding of individual peptide side-chains.” J Immunol 1994; 152: 163-175]、EZH2から誘導された5つのペプチド(下記表3にリストされている)を調製し、どのペプチドが、HLA−A11
+、−A31
+、又は−A33
+前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有のCTLを誘発し得るかを決定した(表4)。
【0105】
<1>即ち、まずEZH2の5つの部分ペプチドのHLA−A3スーパータイプアレルに対する結合スコアを算出した(表3)。その結果、部分ペプチドEZH2
733−741(配列番号5)が、結合スコア12と最も高い値を示し、HLA−A3スーパータイプアレルに最も結合し易いことを推測させた。
【0106】
【表3】
【0107】
表3中、a)ペプチド結合スコアは、ウエブサイト(Bioinformatics and Molecular Analysis Section, Computational Bioscience and Engineering Laboratory, Division of Computer Research & Technology, NIH)から得られたHLAクラスI分子からの解離の予想半減期(half-time)に基づいて算出された。HIVペプチドの結合スコアは算出されなかった。なぜならば、そのペプチドはアミノ酸の11量体から成っていたからである。
【0108】
<2>次に、HLA−A11
+、−A31
+及び−A33
+患者及び健常ドナーのPBMCからのペプチド反応性CTLの誘導性を試験した。PBMCは、EZH2由来の各部分ペプチド(5種類)、又はEBV若しくはインフルエンザペプチドのいずれかにより生体外で刺激され、そして、対応するペプチドでパルスされたC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞に応じたそれらのIFN−γ生産の項目で細胞が試験された。8つのウエルが各ペプチドに用いられた。結果を表4に示した。
【0109】
【表4】
【0110】
表4中、PBMCは示された各ペプチドで生体外にて刺激され、ペプチド特異的反応性が試験された。表4には陽性の結果のみ示されている。
【0111】
表4の結果は、ペプチドに特有のCTLの誘導は以下の2つの基準が満たされたときにだけ陽性と判断された:(i)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルが共に≧50pg/mlであり、及び、(ii)対応するペプチドで刺激された2つのウエル中のIFN−γレベルが共に、ペプチドで刺激された2つのウエル中の対照HIV中のINF−γレベルの平均より≧1.2倍以上高いことである。HD(健常ドナー)に関しては、EZH2
23−31及びEZH2
70−78ペプチドの両方とも、HLA−A11
+HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。EZH2
73−81及びEZH2
699−707ペプチドは、HLAA31
+HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。そして、EZH2
733−741ペプチドは、HLA−A33
+HDからのペプチドに特有のCTLを誘発した。前立腺癌患者に関して、4患者からのPBMCが各々のHLA−A3スーパータイプアレルについて試験された。その結果、EZH2
733−741ペプチドは、HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のPBMCからのペプチド反応性のCTLを最も効率的に誘発した。EZH2
733−741ペプチドの誘導効果はコントロールEBV又はインフルエンザペプチドより高かった。ペプチドに特有のCTLの陽性誘導は、HLA−A3スーパータイプアレルを持った4人の患者のうち、HLA−A11保有患者で2人、HLA−A31保有患者で2人及びHLA−33保有患者で2人の患者から誘発された。EZH2
733−741ペプチドと較べると、他の4つのEZH2ペプチドは、ペプチドに特有のCTLを誘発するのにはそれほど成功しなかった。全体として、これらの結果は、5つの候補の中で、EZH2
733−741ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有のCTLを発生することができる最良のペプチドであることを示す。そこで、このEZH2
733−741ペプチドを候補ペプチドとして選択して、次に、細胞毒性試験を行なった。
【0112】
実施例2
<HLA−A3スーパータイプアレル
+及びEZH2発現性前立腺癌細胞に対する、EZH2
733−741ペプチドに反応性であるCTLの細胞毒性>
【0113】
実施例1においてペプチド特異的CTLの誘導を認めたEZH2
733−741ペプチドをパルスされたCD8
+CTLは、6時間の
51Cr遊離試験にて、LNCaP、LNCaP−A11、LNCaP−A31及びLNCaP−A33に対しての細胞毒性を確認する。
【0114】
まず、HLA−A3スーパータイプアレル
+に対する細胞毒性及びEZH2を発現する前立腺癌細胞を試験する前に、EZH2及びHLA−A3スーパータイプアレルのタンパク質発現を確認した。その結果を
図1(a)に示す。
図1(a)は、本発明を適用するLNCaP細胞におけるEZH2タンパク質の発現を示すゲル泳動図である。前立腺癌細胞株のLNCaP、PC3、前立腺の正常な上皮細胞PrEC、及びPHA活性化T細胞芽球におけるEZH2タンパク質発現が免疫ブロット法によって検査された。β−アクチンの発現はコントロールとして用いられた。その結果、前立腺癌細胞株のLNCaP及びPC3、並びにPHAで活性化されたT細胞芽球は、タンパク質レベルでEZH2を発現した。対照的に、その発現は前立腺正常上皮細胞株PrECにおいて非常に低かった。
【0115】
次に、本発明を適用する3つのLNCaPトランスフェクタントが、HLA−A11、−A31、又は−A33分子のそれらの表面発現に対して、フローサイトメトリー(流動細胞計測法)によって検査を行なった。
図1(b)にその結果を示す。これらの細胞は、抗HLA−A11、抗HLA−A31、又は抗HLA−A33mAbで最初に染色され、次いでFITC共役抗マウスIgG mAbで染色された。白抜きは最初のmAb無しの染色を表わす。HLA−A11、−A31及び−A33プラスミドで強固にトランスフェクトされたLNCaP亜系は、各々のA3スーパータイプアレルに対して陽性であった。
【0116】
次に、EZH2
733−741ペプチドでMP(多核白血球)インビトロ刺激によって誘発されたCTLがHLA−A3スーパータイプアレル
+及びEZH2を発現する前立腺癌細胞に対する細胞毒性を示すかどうかを決定した。
HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者からのPBMCは、EZH2
733−741ペプチドによって生体外で刺激される。CD8
+T細胞のための精製の後、HLA−A11、−A31、又は−A33のいずれか分子を発現するLNCaP亜系に対するそれらの細胞毒性を検討した。得られた結果を
図2に示す。
【0117】
図2において、HLA−A3スーパータイプアレル
+HDsからのPBMCのPHAに刺激されたT細胞芽球が、正常なコントロール細胞として用いられた。HLA−A11
+患者からのPBMCの精製されたCD8
+T細胞(患者Pt#1及びPt#2)(それらはEZH2
733−741ペプチドにより生体外で刺激された)は、親のLNCaP細胞及びHLA−A11
+T細胞芽球に対するより、LNCaP−A11細胞に対してより高いレベルの細胞毒性を示した。
図2における、患者Pt#7及びPt#13は表4におけるHLA−A11についての患者Pt#2及びPt#4に相当する。同様に、親のLNCaP細胞、HLAA31
+又はHLA−A33
+T細胞芽球と比較して、HLA−A31
+又はHLA−A33
+患者からのPBMCのEZH2
733−741ペプチドで刺激され、及び精製されたCD8
+T細胞は、LNCaP−A31及びLNCaP−A33細胞に対するより高い細胞毒性をそれぞれに発揮した。
図2におけるHLA−A31についての患者Pt#34及びPt#35は、表4におけるHLA−A31についての患者Pt#1及びPt#4に相当し、
図2におけるHLA−A33についての患者Pt#14及びPt#30は、表4におけるHLA−A33についての患者Pt#1及びPt#2に相当する。
これらの結果は、EZH2
733−741ペプチドがHLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のPBMCからの前立腺癌反応性CTLを誘発する潜在力を有していることを示す。
【0118】
細胞毒性の特異性を確認するために、次に、精製されたCD8
+T細胞を用いて、コールド阻害細胞毒性アッセイを行なった。得られた結果を
図3に示す。
その結果、
図3に示されるように、EZH2
733‐741ペプチドで刺激され及び精製されたHLA‐A11
+、HLA−A31
+又はHLA−A33
+患者からのCD8
+T細胞のLNCaP−A11、LNCaP−A31、又はLNCaP−A33細胞に対する細胞毒性は、HIVペプチドでパルスされラベルされていないC1R−A11、C1R−A31、又はC1R−A33細胞と共に添加されたときに比較して、対応するEZH2
733−741ペプチドでパルスされラベルされていないC1R−A11、C1R−A31又はC1R−A33細胞の添加によって著しく抑えられた。
【0119】
これらの結果は、HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者からのEZH2
733−741ペプチドで刺激されたPBMCの、HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌細胞に対する細胞毒性が、少なくとも、部分的に、EZH2
733−741ペプチド特異的なCD8
+T細胞に帰着されたことを示唆する。
【0120】
<考察>
現在まで、HLA−A2又は−A24分子を持った癌患者のための、ペプチドに基づいた抗癌ワクチンに用いることができるEZH2由来ペプチドが報告されてきたが(例えば、特許文献4、非特許文献2及び非特許文献4)、EZH2由来ペプチドをHLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のためのワクチンに用いられた例はない。本発明によって、EZH2
733−741ペプチドが、HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のPBMCからのペプチドに特有で且つ前立腺癌に反応性のCTLを誘発する潜在力を有していることを示した。EZH2
733−741ペプチドは、対照のEBV又はFlu(インフルエンザ)ペプチドと比較して、より効率的にHLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者のPBMCからのペプチド特有のCTLを誘発した。さらに、コールド阻害アッセイは、EZH2
733−741ペプチドで刺激されたHLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者からのPBMCの、HLA−A3スーパータイプ
+EZH2を発現している前立腺癌細胞に対する細胞毒性が、ペプチドに特有のCD8
+T細胞に依存することを示した。これら一連の本発明の結果は、EZH2
733−741ペプチドが、HLA−A3スーパータイプアレル
+前立腺癌患者に対する抗癌ワクチンとして適用可能であることを示す。