特許第6784978号(P6784978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784978
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20201109BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   A61B5/11 230
   A61H1/02 K
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-163075(P2016-163075)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-29729(P2018-29729A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516253558
【氏名又は名称】医療法人穂翔会
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】小野 弓絵
(72)【発明者】
【氏名】栢沼 一修
(72)【発明者】
【氏名】富永 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直義
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 豪人
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−179062(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0101971(US,A1)
【文献】 特開2002−065641(JP,A)
【文献】 特開2015−167611(JP,A)
【文献】 特開2007−020617(JP,A)
【文献】 特開2009−285273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
A61H 1/00−1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の関節の可動域を計測することによりリハビリテーション効果を確認するための計測装置であって、
前記手の拇指を掛ける第一突出部と、
前記第一突出部と同方向に突出し、前記手の拇指以外の少なくとも一指を含む他指の第一関節より先の部分を掛ける第二突出部と、
前記第一突出部と前記第二突出部の少なくともいずれかと交差する基準面内で前記他指を伸展させるように前記第一突出部および/または前記第二突出部を移動させる移動機構と、
前記他指を伸展させた状態において前記他指の伸展度合を取得できる態様の前記手の指の画像を撮像するデータ取得部と、
前記データ取得部が撮像した画像に基づいて前記伸展度合を計測する計測部と、
を備え、
前記移動機構は、前記移動に伴って前記他指から前記第二突出部に加わる力が所定以上になることを条件に前記移動を停止する、
計測装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
前記基準面と直交する回転軸と、前記回転軸に設置され前記回転軸を中心に回転する回転棒と、を備え、
前記回転棒が前記中心とは異なる位置に前記第二突出部を支持して旋回動作することにより、前記第二突出部を移動させる、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記回転軸と前記第一突出部とが異なる軸を有する、
請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記手の甲と接して前記手を支える支持板と、
を備え、
前記支持板は、前記第一突出部に対する位置を調整可能である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項5】
前記第一突出部は、前記手の拇指を下方から支持する拇指支持部と、
を備え、
前記拇指支持部は、前記第一突出部の突出する方向に沿って位置を調整可能である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記手の前腕を載せて前記前腕を固定する前腕固定部と、
を備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項7】
手の拇指を掛ける第一突出部と、前記手の拇指以外の四指のうちの少なくとも一指を含む他指の第一関節から先の部分を掛ける第二突出部とを有する計測装置が行う、手の関節の可動域を計測することによりリハビリテーション効果を確認するための計測方法であって、
記第一突出部と、前記第二突出部とを、前記第一突出部と前記第二突出部の少なくともいずれかと交差する基準面内で前記他指を伸展させるように前記第一突出部および/または前記第二突出部を移動させる移動工程と、
前記他指を伸展させた状態において前記他指の伸展度合を取得できる態様の前記手の指の画像を撮像するデータ取得工程と、
前記データ取得工程において撮像された画像に基づいて前記伸展度合を計測する計測工程と、
を備え、
前記移動工程は、前記移動に伴って前記他指から前記第二突出部に加わる力が所定以上になることを条件に前記移動を停止する、
計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーションの効果を測定する、計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脳卒中などの後遺症により身体の一部に麻痺を有する患者が、日常生活動作の身体機能を回復するために行うリハビリテーションの効果を確認するために、BRS(Brunnstrom Recovery Stage)(非特許文献1)、等の指標が用いられている。
BRSは、上肢、下肢、手指のそれぞれについて、各々のステージに掲げられた確認項目の動作を行うことができるか否かのテストを行い、患者の麻痺の程度がどのステージにあるか判定する。
BRSは、麻痺の程度を6ステージで表し、完全麻痺の状態から麻痺のない状態までのそれぞれの区分で求められる運動機能を確認項目として設定している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】シグネ・ブルンストローム著「片麻痺の運動療法」医歯薬出版1974年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、麻痺の程度をわずか6つのステージに区分しているため、各々のステージ間で求められる運動機能に大きな差がある。このため、麻痺の患者がリハビリテーションを通して1つ上のステージに進むには相当の時間を要する。すなわち、患者はリハビリテーションをきちんと行っていても、なかなか上のステージに進むことはできない。
特に、手指に麻痺がある患者の場合、脚部や腕部に比べて繊細な動きが求められることから、脚部や腕部のリハビリテーションに比べて1つ上のステージに進むために相当の時間を要する。
このため、徐々に運動機能が回復し、手指の可動域が広がっているにもかかわらず効果を実感できないために、リハビリテーションを行う患者のモチベーションを保つことが困難になってしまう。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、日々のリハビリテーションの効果を確認するために手指の可動域を定量的に計測できる計測装置及び計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態にかかる、計測装置は、手の関節の可動域を計測することによりリハビリテーション効果を確認するための計測装置であって、前記手の拇指を掛ける第一突出部(実施形態における中央支柱302)と、前記手の拇指以外の少なくとも一指を含む他指の第一関節より先の部分を掛ける第二突出部(実施形態における円弧支柱312)と、前記第一突出部と前記第二突出部の少なくともいずれかと交差する基準面内で前記他指を伸展させるように前記第一突出部および/または前記第二突出部を移動させる移動機構(実施形態における回動部311)と、前記他指を伸展させた状態において前記他指の伸展度合を取得できる態様の前記手の指の画像を撮像するデータ取得部と、前記データ取得部が撮像した画像に基づいて前記伸展度合を計測する計測部と、を備え、前記移動機構は、前記移動に伴って前記他指から前記第二突出部に加わる力が所定以上になることを条件に前記移動を停止する。
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態にかかる、計測方法は、手の拇指を掛ける第一突出部と、前記手の拇指以外の四指のうちの少なくとも一指を含む他指の第一関節から先の部分を掛ける第二突出部とを有する計測装置が行う、手の関節の可動域を計測することによりリハビリテーション効果を確認するための計測方法であって、前記第一突出部と、前記第二突出部とを、前記第一突出部と前記第二突出部の少なくともいずれかと交差する基準面内で前記他指を伸展させるように前記第一突出部および/または前記第二突出部を移動させる移動工程と、前記他指を伸展させた状態において前記他指の伸展度合を取得できる態様の前記手の指の画像を撮像するデータ取得工程と、前記データ取得工程において撮像された画像に基づいて前記伸展度合を計測する計測工程と、を備え、前記移動工程は、前記移動に伴って前記他指から前記第二突出部に加わる力が所定以上になることを条件に前記移動を停止する。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、日々のリハビリテーションの効果を確認するために手指の可動域を定量的に計測できる。このため、患者は日々リハビリテーションの効果を定量的に把握することができ、モチベーションを保ち続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる第1の実施形態における計測装置を用いて計測する場合の一例を示すイメージ図である。
図2図1の計測装置の伸展部の構造を説明するために用いる斜視図である。
図3図2の伸展部の構造を説明するために用いる平面図である。
図4図2の伸展部の構造を説明するために用いる正面図である。
図5図2の伸展部の構造を説明するために用いる側面図である。
図6図1の計測装置を手指へ装着させた状態について説明するための図である。
図7図1の計測装置を手指へ装着させた状態について説明するための図である。
図8図1の計測装置の構成を示すブロック図である。
図9】手の指の屈曲角度を説明するために用いる図である。
図10図1の計測装置の計測処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本発明にかかる第2の実施形態における計測装置を説明するために用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態による計測装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の本実施形態による計測装置を用いて、患者(以下、被計測者とも称する。)のリハビリテーション効果を計測する場合のイメージ図である。
図1に示す例では、左側の手指の関節が拘縮し丸まった状態から、どの程度手指を伸展させることが可能かの伸展度合を計測する場合の例を示している。
本実施形態における計測装置は、伸展部3と、データ取得部5と、入出力部7とを含んで構成される。
伸展部3は、被計測者1の拇指(親指)と拇指以外の四指(以下、単に四指とも称する。)を伸展させる。また、伸展部3は、四指から伸展部3にかかる力が予め設定した所定の値以上となったら、四指の伸展を停止させる。四指の伸展させる機構については、後で詳しく説明する。
伸展部3が四指の伸展を停止させた際の四指の各関節の伸展度合が、麻痺した手指の可動域となる。リハビリテーションを行う過程で、この可動域が広くなれば、リハビリテーションの効果が出ていることを示している。なお、本明細書において、それぞれの手指の関節は、指先側から指の付け根方向に順に、第一関節、第二関節、第三関節と称す。
【0011】
データ取得部5は、伸展部3が四指を伸展させた状態における伸展度合を検出するために、伸展された四指の画像を取得する。こうすることで、伸展度合を定量的に検出することができる。
入出力部7は、本実施形態による計測装置と、外部との間の入出力を行う。入出力部7は、例えば、データ取得部5が取得した画像を表示してもよい。
【0012】
このように、本実施形態における計測装置は、被計測者1の手指を、手指に一定の力がかかるまで伸展させ、その伸展度合を計測する。こうすることで、被計測者1は、自身の手指の可動域を把握することができる。
本実施形態における計測装置を、例えば、日々のリハビリテーションの前後に用いて計測することにより、被計測者1はリハビリテーションの効果を定量的に把握することができる。そして、日々のリハビリテーションの効果を定量的に把握することにより、被計測者1は、リハビリテーションへの参加意欲を高く保つことができる。
【0013】
まず、図2から図5を用いて、本実施形態にかかる計測装置の伸展部3が手指を伸展させる機構について説明する。
図2は、伸展部3の外観を示す外観斜視図である。図3は、伸展部3を図2の矢印E方向から見た平面図である。図4は、伸展部3を図2の矢印C方向から見た正面図である。図5は、伸展部3を図2の矢印D方向から見た側面図である。
本実施形態にかかる計測装置に対して、被計測者1の手背を伸展部3の支持板301に接するように手を置き、中央支柱302に拇指を掛ける。こうすることで、被計測者1の手首から指の付け根までの部分が、支持板301と中央支柱302との間に挟まれて伸展部3に固定される。そして円弧支柱312に四指の第一関節から先の部分を掛けた状態において、円弧支柱312を図2の矢印Hの方向、すなわち四指の関節が伸展する方向、に旋回動作させる。これにより、円弧支柱312に掛けられた四指の関節が伸展する。そして、伸展部3は、旋回動作に伴って四指から円弧支柱312にかかる力が予め設定した所定の値以上となったら、円弧支柱312の旋回動作を停止させる。
なお、伸展部3は、拇指以外の四指すべてを伸展させてもよいし、四指のうちの一部の指を伸展させてもよい。
【0014】
伸展部3は、手掛け部30と、四指IP指掛け部31と、駆動部32と、手動駆動部34と、前腕固定部35と、を含んで構成される。
【0015】
手掛け部30は、計測装置の一部に拇指を掛けた状態の手を、手背側(手の甲側)から支えて安定させる。
手掛け部30は、台座300と、支持板301と、中央支柱302と、前腕連結部303と、支持板位置調整部305と、拇指支持部306と、を含んで構成される。
台座300は、上面が水平となるように設置された略角板形状の台である。
中央支柱302は、台座300の一端の上面に垂直に設置され、円柱状をなしている。
拇指支持部306は、中央支柱302の所定の位置に配置されている。中央支柱302に拇指を掛ける際、拇指支持部306に拇指を積載させることにより拇指を下方から支えて支持する。なお、拇指支持部306は、中央支柱302に掛けた拇指の付け根に沿った凹曲面形状をなすことが好ましい。こうすることで、拇指をより安定させることができる。
支持板301は、中央支柱302と平行に、すなわち、台座300に対して板面が垂直となるように設置される略長方形の板である。なお、支持板301は、以下で述べる支持板位置調整部305により、中央支柱302との間隔が、個々の手の大きさに合わせて調整される。
支持板位置調整部305は、図3に示すように、台座300の上面に沿って移動可能に、すなわち、台座300上を支持板301の板面に対して垂直な方向にスライド可能に設置されている。この支持板位置調整部305の台をスライドさせることで、この支持板位置調整部305と一体に支持板301とが移動し、中央支柱302との間の距離を調整することができ、ボルト307を締めることによって所定位置に固定されるよう構成されている。
【0016】
前腕連結部303は、図2に示すように、支持板位置調整部305の上面に沿って配設され、前腕固定部35を手掛け部30に連結するための機構を備える。前腕連結部303と手掛け部30を連結させることは、本発明の必須の構成要素ではないが、前腕連結部303により被計測者1の前腕を固定した状態で四指を伸展させることにより、被計測者1が麻痺等の影響により姿勢維持が困難な場合であっても、計測中の姿勢を安定させることができる。
前腕連結部303と前腕固定部35とは、例えばこれらの一方に設けた突起を他方に設けた凸部と嵌合させることにより、互いに所定の相対位置を維持して連結されている。
【0017】
四指IP指掛け部31には、被計測者1の手の拇指以外の四指を掛ける。
四指IP指掛け部31は、図3及び図4に示すように、回動部311と、円弧支柱312と、円弧支柱位置調整部313と、を含んで構成される。
図2に示すように、回動部311は、アーム状をなし、台座300の下面側に設置された連結動作部342により旋回動作する。
この連結動作部342は、手動ノブ341を回転させる動作によって、回動部311を基端部の軸Aを中心として旋回動作させるべく、手動ノブ341からの動力を軸Aと同軸に配置された回転軸310に伝達する。すなわち、回動部311は、図3及び図4に示すように、中央支柱302の軸Bと平行な軸Aを中心として旋回動作することができる。回転軸310と中央支柱302の各々は、それぞれの軸A、Bが所定の距離Lを有するように配置されている。図3及び図4に示すように、回転軸310と中央支柱302(第一突出部)とが異なる軸を有する。これにより、四指の関節を伸展させる際に、四指の第一関節から先の部分を円弧支柱312(第二突出部)に掛けた状態を維持することができる。
【0018】
駆動部32は、回転軸310を駆動して回動部311を旋回動作させる。駆動部32の処理の内容については後で説明する。
手動駆動部34は、使用者により手動操作されて、連結動作部342に駆動力(回転)を与える機構である。
この手動駆動部34は、手動ノブ341と、連結動作部342と、を含んで構成される。
連結動作部342は、例えば歯車やベルトなどから構成されていて、手動ノブ341から回動部311の回転中心軸に連結されて、この回転中心軸に手動ノブ341の回転を伝達する。
【0019】
円弧支柱位置調整部313は、図3に示すように、回動部311の長軸方向に移動可能に設けられている。円弧支柱位置調整部313は、回動部311が軸Aを中心に回転することにより、軸Aから円弧支柱位置調整部313への距離を半径として旋回動作する。
円弧支柱312は、円弧支柱位置調整部313に、台座300の上面に対し垂直に(すなわち、中央支柱302と平行に)支持されている。円弧支柱312は、円弧支柱位置調整部313の旋回動作に伴い、回転軸310と円弧支柱位置調整部313との距離を半径として旋回動作する。
【0020】
ここで、図6を用いて、計測装置を手指へ装着させた状態について説明する。図6は、手指を計測装置に載置した状態について説明するための模式図である。図6(a)は、手指を計測装置に載置した状態を示す図である。図6(b)は、図6(a)の状態において手指を伸展させた後の状態を示す図である。
図6(a)に示すように、計測装置に対して被計測者1の手の手背が伸展部3の支持板301に接するように手を置き、中央支柱302に拇指を掛ける。そして円弧支柱312に四指の第一関節から先の部分が掛けられた状態において、回動部311を、矢印Hの方向に軸Aを中心として旋回動作させる。こうすることで、図6(b)に示すように、回動部311の一端に取付けられた円弧支柱312が旋回動作し、円弧支柱312に掛けられた四指の関節が伸展する。
【0021】
前腕固定部35は、前腕を固定する。
前腕固定部35は、腕載せ部350と、支柱351と、基板352と、手連結部353と、から構成される。
前腕固定部35は、図5に示すように、水平な基板352の上に、この基板352に対して垂直に支柱351を設置し、この支柱351の上に基板352と平行に腕載せ部350を設けた構成となっている。
この腕載せ部350は、前腕の外形に沿って湾曲した凹曲面形状をなしている。
【0022】
手連結部353は、図2に示すように、前腕固定部35と手掛け部30を連結する。
手連結部353は、例えば、前腕連結部303が備える突起部と嵌合可能な複数の穴部を備え、前腕連結部303の突起部と嵌合させる穴部を選択することで前腕固定部35と手掛け部30との連結する距離を調整することができるよう構成されている。
【0023】
一般に、身体の一部が麻痺している場合、その麻痺が残る部位を外力により動かそうとすると身体の安定を保つことが困難となることが多い。例えば、四指の各関節の可動域を計測するために手指を伸展させた場合、手指を伸展させた方向に前腕ごと体が移動してしまう、という場合が考えられる。
このため、手連結部353が、前腕固定部35と手掛け部30を連結することにより、円弧支柱312の旋回動作の軌跡を含む仮想平面(基準面)と腕載せ部350に載せた前腕の長軸方向を含む平面とが略平行に保たれるようにすることが好ましい。これにより、回動部311の旋回動作に伴う四肢の伸展に際し、被計測者1が転倒することを防ぐことができる。
なお、本実施形態においては、上記基準面と前腕とが略平行に保たれることは、すなわち、台座300の上面と腕載せ部350の腕を載せる面とが略平行であるとも言い換えられる。
また、拇指支持部306の位置を調整し、上記基準面と前腕とが略平行に保たれるように、すなわち手首が捻じれないように、拇指を支持することが好ましい。これにより、更に効果的に転倒を防止できる点で好ましい。
【0024】
ここでは、図8および図9を用いて、本実施形態にかかる計測装置が測定を行うために用いる処理ブロックを順に説明する。図8は、本実施形態にかかる計測装置の構成を示すブロック図である。図9は、手指の関節の伸展および屈曲について説明するために用いる図である。
図8に示す通り、本実施形態にかかる計測装置は、処理ブロックとして、伸展部3と、制御部4と、データ取得部5と、入出力部7とを備え、例えば、データを交換するための共通の経路であるバス10を介して接続されて構成される。例えば、制御部4は、送信データを、データ通知先(例えば、伸展部3)のアドレスを付してバス10に送信することにより、図示しない送信回路により、データ通知先である伸展部3に送信データが通知され、制御部4と伸展部3の間で情報のやり取りが行われる。
ここでは、既に説明した伸展部3の機構的な事項については説明を省略し、主に処理にかかる事項についてのみ説明する。
【0025】
伸展部3は、処理を行うブロックとして、駆動部32と、負荷計測部33とを含んで構成される。
駆動部32は、回転軸310を回転させる。駆動部32は、制御部4からの制御に基づき、手動駆動部34を用いた手動による駆動操作の代わりにモータ等を用いて、所定の方向に、所定の回転速度で回転軸310を回転させることができる。また、駆動部32は、制御部4からの制御に基づいて回転軸310の回転を停止させる。
【0026】
負荷計測部33は、四指の伸展に伴い四指から円弧支柱312にかかる力(以下、負荷とも称する。)または駆動部32が回転するために必要なトルクを計測する。負荷計測部33は、負荷またはトルクを計測するためのセンサ等を含んで構成される。
負荷計測部33は、制御部4からの制御に基づいて計測を開始する。また、負荷計測部33は、計測した負荷またはトルクを制御部4に通知する。また、負荷計測部33は、制御部4からの制御に基づいて、計測を停止する。
【0027】
制御部4は、伸展部3と、データ取得部5と、入出力部7とを制御する。
また、制御部4は、例えば、伸展部3が移動を停止する条件である所定の負荷の値を制御部4内の記憶領域に記憶させてもよい。
制御部4は、伸展制御部43と、屈曲角度検出部45と、外部制御部47と、記憶部40と、を含んで構成される。
伸展制御部43は、伸展部3の伸展動作を制御する。
伸展制御部43は、駆動部32の駆動開始および停止の制御を行う。
伸展制御部43は、例えば、トルクリミッタ、あるいは回転を断続するクラッチ機構を含んで構成され、回転トルクが所定の値以上となった場合に回転を停止する。
また、伸展制御部43は、駆動部32を駆動させて回転軸310を回転させる場合、回転する方向と、回転する角速度を指定してもよい。この場合、伸展制御部43は、例えば、手指の関節が伸展する方向に、1秒間に90°回転する角速度で駆動部32を駆動させる。伸展制御部43は、駆動部32を駆動させる間、負荷計測部33が計測した負荷を取得する。伸展制御部43は、取得した負荷と、記憶部40にある負荷しきい値とを比較する。伸展制御部43は、取得した負荷が負荷しきい値以上である場合、駆動部32の駆動を停止させる。
【0028】
屈曲角度検出部45は、手指の画像から、手指の屈曲角度を検出する。
ここで手指の屈曲角度は、四指、特に示指(人差し指)の各関節の屈曲角度のことである。上述の通り、それぞれの手指の関節には、指先側から指の付け根方向に順に、第一関節、第二関節、第三関節がある。それぞれ関節の基準となる位置は、各関節の手背側の端と手側の端との中間地点での位置とする。また、手首の関節の基準となる位置は、手首の手背側の端と手側の端との中間地点での位置とする。
ここで、屈曲角度検出部45が検出に用いる手指の画像とは、データ取得部5が撮像した画像であり、例えば、手を鉛直方向に対して平行に、拇指側を手前にした状態の画像である。こうすることで、画像から、手首、示指(人差し指)の第三関節、第二関節、第一関節、指先の、それぞれの位置を取得することができる。
まず、屈曲角度検出部45は、画像から第一関節、第二関節、第三関節、手首の、それぞれ基準となる位置を取得する。また、例えば、この基準となる位置にマーカー等で印を付けた状態で撮影した画像から、その印が付された位置を各関節(手首)の基準となる位置として取得してもよい。
【0029】
次に、屈曲角度検出部45は、取得した手首、示指の第三関節、第二関節、第一関節、および指先の、それぞれの基準となる位置を順に線で接続する。たとえば、マーカーの各々の形状や色をそれぞれ異なるようにすると共に、マーカー毎に線を結ぶルールを予め設定しておき、このルールに基づいて、各マーカーを線で結ぶ。
この状態で、屈曲角度検出部45は、手首と第三関節をつないだ線に対する、第三関節と第二関節をつないだ線のなす角度を、第三関節の屈曲角度として検出する。
図9(a)に示す例では、手首位置A1と第三関節位置A2とを結んだ線と、第三関節位置A2と第二関節位置A3とを結んだ線のなす角α1が、第三関節の屈曲角度である。
【0030】
同様に、屈曲角度検出部45は、図9(b)に示す通り、第三関節位置B1と第二関節位置B2とをつないだ線と、第二関節位置B2と第一関節位置B3とをつないだ線のなす角度α2を、第二関節の屈曲角度として検出する。
また、図9(c)に示す通り、屈曲角度検出部45は、第二関節位置C1と第一関節位置C2とを結んだ線と、第一関節位置C2と指先位置C3とを結んだ線のなす角度α3を、第一関節の屈曲角度として検出する。
【0031】
このように、屈曲角度検出部45が各関節の屈曲角度を検出し、入出力部7を介して表示することで、被計測者1がリアルタイムに自身の指の屈曲角度を知ることができ、リハビリテーションの効果を認識することができる。
また、例えば、屈曲角度検出部45が屈曲角度を検出する代わりに、手指の画像から、分度器等を用いて屈曲角度を検出してもよい。その場合、屈曲角度検出部45は、不要となる。
屈曲角度検出部45は、検出したそれぞれの関節の屈曲角度を、記憶部40の記憶領域に書き込んで記憶させる。
【0032】
外部制御部47は、入出力部7を制御し、外部との情報のやり取りを行う。
外部制御部47は、外部より入力される情報を、入出力部7を介して取得する。外部より入力される情報とは、例えば、被計測者の個人識別番号、および操作ボタン押下の有無などの情報である。
外部制御部47は、外部に対し入出力部7を介して情報の表示を行う。外部に対する情報の表示とは、例えば、伸展の状況および負荷の表示、伸展度合および過去の計測履歴等の表示等である。
【0033】
記憶部40は、制御部4の制御に必要な情報を記憶する。記憶部40は、書き込み及び読み出し可能な記憶領域を含んで構成される。記憶部40は、制御部4からの書込み命令に従って個人識別番号、計測履歴等の情報を書き込んで記憶する。また、記憶部40は、読み出し命令に従って記憶させた負荷しきい値等の情報を読み出す。
【0034】
データ取得部5は、手指の可動域を示すデータを取得する。データ取得部5は、手指の可動域を示すデータを取得するために手指の画像を撮像する。
データ取得部5は、例えば撮像部50を含んで構成される。撮像部50は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等を含んで構成され、制御部4からの制御に基づいて手指の画像を撮像する。また、撮像部50は、撮像した画像を制御部4に送信する。
撮像部50は、手指の可動域を撮像可能な位置、例えば、伸展部3に置いた手指を含めた領域を上から撮像可能な位置にスタンドで支えて持ち上げて設置される。
なお、データ取得部5は、手指の可動域を示すデータを取得すればよいため、その取得方法は上述した手指の画像を撮像する方法に限られない。
【0035】
入出力部7は、外部からの入力および外部への出力を行う。
入出力部7は、入力部70および出力部71を含んで構成される。
入力部70は、例えば、キーボードや押下ボタン等の外部入力装置を含んで構成される。そして、入力部70は、これらの外部入力装置から入力された情報を、外部制御部47に通知する。
出力部71は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。そして、出力部71は、外部制御部47から通知された情報をこれらの表示装置に表示する。
【0036】
図10は、本実施形態にかかる計測装置を用いて計測をする流れを示すフローチャートである。図10を用いて、本実施形態にかかる計測装置が測定を行う流れを説明する。
図10のフローチャートにかかる処理を行う前提として、被計測者1の手指を伸展部3に置き、拇指を中央支柱302に掛け、四指の第一関節より先を円弧支柱312に掛けた状態であるものとする。
また、記憶部40は、負荷しきい値を自身の記憶領域に記憶させているものとする。負荷しきい値は、常に一定値としてもよいし、麻痺の程度に応じて算出する値であってもよい。
【0037】
計測が開始されると、制御部4の伸展制御部43は、駆動部32を駆動させる。駆動部32は、伸展制御部43が指定した、所定の方向、回転速度で、回転軸310を回転させる。回転軸310の回転に伴い、回動部311が旋回動作する。
回動部311の旋回動作に伴って、円弧支柱312が旋回動作し、円弧支柱312に掛けられた四指の関節が伸展する(ステップS1)。
【0038】
伸展制御部43は、駆動部32を駆動させている間、負荷計測部33から、伸展させている四指から円弧支柱312にかかる負荷を取得する。このとき、伸展制御部43は、例えば出力部71の表示装置に伸展させている四指にかかる負荷の値を表示させてもよい。
伸展制御部43は、負荷と記憶部40から読み出した負荷しきい値を比較する(ステップS2)。
【0039】
伸展制御部43は、伸展させている四指にかかる負荷が、負荷しきい値未満である場合(ステップS2 NO)、ステップS1に戻り駆動部32の駆動を継続させる。
伸展制御部43は、伸展させている四指にかかる負荷が、負荷しきい値以上である場合(ステップS2 YES)、駆動部32の駆動を停止させる(ステップS3)。このとき、伸展制御部43は、例えば出力部71の表示装置に伸展停止を通知しその旨を表示させてもよい。
【0040】
伸展制御部43は、制御部4に伸展停止を通知する。制御部4はデータ取得部5に、画像の取得を通知する。データ取得部5は、伸展させている四指の画像を取得する(ステップS4)。
【0041】
データ取得部5は、取得した画像の画像データを、制御部4に送信する。
制御部4は、受信した画像データを、記憶部40に書き込んで記憶させる。また、制御部4は、屈曲角度検出部45に、屈曲角度検出命令を通知する。
屈曲角度検出部45は、制御部4から屈曲角度検出命令の通知を受け、記憶部40を参照し画像データを読み出す。屈曲角度検出部45は、読み出した画像から、手首および各関節の位置を取得し、それぞれの位置を線でつなぎ、各々の関節の屈曲角度を検出する(ステップS5)。
【0042】
屈曲角度検出部45は、画像から検出した屈曲角度を記憶部40に書き込んで記憶させる。屈曲角度検出部45は、制御部4に検出終了を通知する(ステップS6)。このとき、制御部4は、例えば出力部71の表示装置に検出した屈曲角度を表示させてもよい。
【0043】
制御部4は、伸展制御部43に検出終了を通知する。すると、伸展制御部43は、駆動部32を駆動させ、円弧支柱312をもとの位置に戻す(ステップS7)。
そして、本フローチャートは終了する。
【0044】
<第2の実施形態>
第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態が回転軸310を中心として旋回動作するのに対し、本実施形態では直線的な動作を行わせるという点で相違する。以下の説明では、この相違点を中心に説明する。
図11は、本実施形態にかかる直線移動伸展部2の概略を示す図である。
図11に示す例では、直線移動伸展部2は、移動部20と、第一指掛け部21と、第二指掛け部22と、を含んで構成される。
【0045】
直線移動伸展部2は、棒状の構造体である移動部20に、板状の第一指掛け部21、および第二指掛け部22が、移動部20に沿って移動可能に設置される。
第一指掛け部21、および第二指掛け部22は、板面が移動部20の長軸方向と垂直となるように設置される。そして、第一指掛け部21、および第二指掛け部22は、それぞれの板面が移動部20の長軸方向と垂直な関係を保ったまま、移動部20の長軸方向に移動可能である。
被計測者1は、拘縮した手指を伸展させて計測する場合、第一指掛け部21と第二指掛け部22の外側に、自身の指をかける。
例えば、被計測者1は、第一指掛け部21の、第二指掛け部22と対向する側とは反対側(外側)に、拇指を掛ける。また、被計測者1は、第二指掛け部22の、第一指掛け部21と対向する側とは反対側(外側)に、示指(人差し指)の第一関節より先の部分を掛ける。
このように、被計測者1の指が掛けられた状態で、制御部4は、示指の関節を伸展させる方向に、第一指掛け部21に対し第二指掛け部22を相対的に、移動部20の長軸方向に沿って移動させる。
【0046】
一方、第一指掛け部21および第二指掛け部22には、例えば、図示しない圧力センサが取り付けられており、移動に伴って手指から第二指掛け部22に加わる力を取得する。
制御部4は、第一指掛け部21および第二指掛け部22を相対的に移動させる間、圧力センサから、移動に伴って手指から第二指掛け部22に加わる力を定期的に取得する。そして、制御部4は、移動に伴って手指から第二指掛け部22に加わる力が、予め定めた所定の範囲を超える場合に移動を停止させる。
データ取得部5は、移動に伴って伸展された手指から可動域を検出する。データ取得部5が行う処理については、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略するが、手指の可動域の検出は、手指の関節の屈曲角度に限ることはなく、その他の手指の可動域を認識することができる別の指標に基づく検出値であってもよい。
【0047】
上記説明したように、本実施形態における計測装置を用いることで、被計測者1は自身の可動域を数値で把握することができる。
被計測者1は、日々のリハビリテーションを行う前後において、本実施形態における計測装置を用いて指の可動域を計測することで、リハビリテーションの効果を実感することができる。
【0048】
上記第1の実施形態における計測装置は、左右いずれの手指に対しても計測が可能である。図2に示す通り、手掛け部30の前腕連結部303と前腕固定部35の手連結部353は、手掛け部30の支持板301を右手にして手前に前腕固定部35を連結している。これは、右手用の配置であるが、この実施形態に限られない。支持板301を左手にして手前に前腕固定部35を連結すれば、左手を計測するができる。この場合、右手を計測した場合と逆の方向に回動部311を旋回動作させる。
【0049】
また、第1の実施形態における手動駆動部34の代わりに、回転軸310をモータにより駆動させる構成としてもよい。この構成の場合、一定のトルクで回転軸310を回転させることにより、手動で動かした場合と比較して、計測時に手指から円弧支柱312に加わる力を一定にすることが可能となり、個人差により生じる手指から円弧支柱312に加わる力のバラツキを低減することができる点において好ましい。
【0050】
なお、上記第1の実施形態および第2の実施形態においては、手指の関節の屈曲角度を検出することにより手指の可動域を検出したが、これに限られない。屈曲角度に限らず手指の可動域を計測することができればよく、別の指標に基づく計測値であってもよい。
例えば、個々の関節の屈曲角度を検出する代わりに、第1の実施形態における、円弧支柱312が旋回動作した際に移動した角度を検出してもよい。角度は、例えば、円弧支柱312を旋回動作させた際の角速度と動作時間から求めることができる。こうすることにより、個々の関節の屈曲角度を検出するよりも容易に可動域を計測することができる。
【0051】
また、円弧支柱312を旋回動作させた際に円弧支柱312が到達した位置を保持するマーカーを設置して可動域を計測してもよい。
例えば、回動部311の長軸方向の長さ程度の半径の円盤に、円弧支柱312の旋回動作の軌跡に沿う溝を設け、この溝に沿ってスライド可能な目印となる部材(マーカー)を設置する。この円盤を、旋回動作の軌跡を含む仮想平面(基準面)と平行に、円盤中心が軸Aと同軸となる位置に載置する。そして、マーカーを円弧支柱312の旋回動作方向(図6(a)のH方向)に、円弧支柱312とマーカーとが接するように配置する。
こうすることで、円弧支柱312のH方向の旋回動作に伴い、マーカーは円弧支柱312に押されて移動するが、円弧支柱312がH方向とは逆の方向に元に戻る動作に対してマーカーは移動せず、円弧支柱312が到達した位置を保持する。
このように円弧支柱312が旋回動作した際に到達した位置が保持されることで、計測時に到達した位置が可視化され、可視化されない場合と比較して、例えば、さらにマーカーをより大きな角度位置まで移動させようとするなど目標が立てやすくなり、その結果モチベーションを保ち続けることができる。
【0052】
また、麻痺の態様は様々であり、例えば、手が開いた状態のままで麻痺し、手を握る動作が難しい麻痺の態様がある。この麻痺の態様に対しても、上記第1の実施形態の計測装置を用いることができる。
図7は、計測装置を手指への装着させた状態について説明するための図である。図7(a)は、図6(a)と異なる態様にて手指を計測装置に載置した状態を示す図である。図7(b)は、図7(a)の状態において手指を屈曲させた後の状態を示す図である。
計測装置に対して、開いた状態の手を載置し、中央支柱302に拇指を掛ける。支持板301を調整して手首から指の付け根までの部分を支持板301と中央支柱302の間に挟んで固定する。そして、例えば図7(a)のように、円弧支柱312に手を開いた状態の四指の第一関節から先の部分が掛けた状態において、被計測者1の可能な範囲で、手を握る動作を行わせる。こうすることで円弧支柱312が、図7(a)の矢印Kの方向に、指の屈曲に伴って(伸展させた場合とは逆の方向に)旋回動作する(図7(b))。そして、円弧支柱312が旋回動作した角度を検出する等により、可動域を計測することができる。
【0053】
さらに、麻痺の態様において、手を開いた状態から一度握ると手が固まってしまい、そこから開けなくなるという態様がある。この麻痺の態様に対しても、上記第1の実施形態の計測装置を用いることができる。
まず、握った状態、すなわち屈曲した状態の手を、例えば図6(a)のように計測装置に対して載置する。そして、回動部311を図6(a)の矢印Hの方向、すなわち四指が伸展する方向に旋回動作させる。
次に、四指が伸展した状態、すなわち手が開いた状態において、被計測者1が自発的に手を握る動作を行う。こうすることで円弧支柱312が、図6(b)の矢印Kの方向に、指の屈曲に伴って(伸展させた場合とは逆の方向に)旋回動作する。
そして、屈曲した状態、例えば図6(a)の状態の手を、再度、回動部311を図6(a)の矢印Hの方向、すなわち四指が伸展する方向に旋回動作させる。
円弧支柱312が旋回動作した角度を個別に検出する、或いは平均化して検出することにより、可動域を計測する。こうすることで、手を開く動作、および握る動作を繰り返し行う日常生活における動作に近い可動域を計測することができる。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…被計測者、3…伸展部、30…手掛け部、31…四指IP指掛け部、32…駆動部、33…負荷計測部、34…手動駆動部、35…前腕固定部、301…支持板、302…中央支柱、306…拇指支持部、312…円弧支柱、310…回転軸、311…回動部、350…腕載せ部、
4…制御部、5…データ取得部、50…撮像部、7…入出力部、
2…直線移動伸展部、20…移動部、21…第一指掛け部、22…第二指掛け部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11