特許第6784997号(P6784997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784997
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20201109BHJP
【FI】
   C02F1/32
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-157620(P2016-157620)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2018-23935(P2018-23935A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2019年8月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年3月16日〜18日にアスティとくしまにて開催された第50回 日本水環境学会年会にて、3月18日に発表した。
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】神子 直之
(72)【発明者】
【氏名】谷田 実穂
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/058607(WO,A1)
【文献】 特開昭54−104690(JP,A)
【文献】 特開2004−181409(JP,A)
【文献】 特開2008−142593(JP,A)
【文献】 特許第5819135(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水に対して、ブラックライトとピーク波長が222nmであるクリンプトンクロライドエキシマランプを同時に照射し、その際、該クリンプトンクロライドエキシマランプの平均紫外線照度を、0.25μW/cm〜7.5μW/cmの範囲にしてなる水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光を利用して水処理を行う水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水道水として用いる原水を浄化する方法として、塩素や次亜塩素酸等の塩素系加工物からなる酸化剤を注入して塩素消毒を行う方法が知られている。しかしながら、この種の塩素消毒においては、被処理水に対して酸化剤の注入量を多くして遊離塩素の濃度を高くすると、塩素の副生成物であるトリハロメタンなどの有害物質が生成されるという問題がある一方、酸化剤の注入量を少なくして遊離塩素の濃度を低くすると、細菌などの微生物に対して不活化効果が得られないという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題を解決すべく、特許文献1に記載の発明が提案されている。この発明は、被処理水に対して、酸化剤を投入した上で、短波長254nmや185nmを含む紫外光を照射することにより、被処理水中の細菌を死滅させるというものである。
【0004】
しかしながら、この発明は、トリハロメタンなどの有害物質が生成されるという問題がある一方で、波長185nmの紫外光は水中での透過率が低く、細菌などの微生物に対して不活化効果が得られないという問題があった。
【0005】
そこで、さらにこのような問題を解決すべく、特許文献2に記載の発明が提案されている。この発明は、被処理水に対して、波長200nm〜240nmの光を少なくとも含む、クリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプより放射された紫外光を照射し、その後、酸化剤を供給するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−279909号公報
【特許文献2】特許第5819135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この発明は、酸化剤の使用量を低減することができ、細菌などの微生物を不活化することができるものの、酸化剤を必ず使用する必要があるため、トリハロメタンなどの有害物質が生成されてしまうという問題を解決できるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、酸化剤を使用せずとも、細菌などの微生物に対して不活化効果を得ることができる水処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
すなわち、請求項1の水処理方法は、被処理水に対して、ブラックライト(8)とピーク波長が222nmであるクリンプトンクロライドエキシマランプを同時に照射し、その際、該クリンプトンクロライドエキシマランプの平均紫外線照度を、0.25μW/cm〜7.5μW/cmの範囲にしてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸化剤を使用せずとも、細菌などの微生物に対して不活化効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る水処理方法の実験装置を示す斜視図である。
図2図1に示す実験装置を用いて実験した結果を示し、(a)はピーク波長が254nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示し、(b)はピーク波長が282nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示し、(c)はピーク波長が222nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示した図である。
図3図1に示す実験装置を用いて実験した結果を示し、(a)は平均紫外線照度が7.5μW/cmでピーク波長が222nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示し、(b)は平均紫外線照度が0.25μW/cmでピーク波長が222nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示し、(c)は平均紫外線照度が10.0μW/cmでピーク波長が222nmの紫外光を用いて、紫外線のみを試料に照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率と、紫外線とブラックライトを試料に同時照射した場合の平均紫外線量に対するlog生残率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る水処理方法を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0014】
本実施形態に係る水処理方法は、被処理水に対して、ブラックライトと該ブラックライトとは異なる紫外光を同時に照射することで、酸化剤を使用せずとも、細菌などの微生物に対して不活化効果を得ることができるというものである。より具体的に説明すると、被処理水は、どのような物でも良いが、例えば、塩素系化合物よりなる酸化剤によって塩素消毒処理されていないもの、具体的には遊離塩素が含まれないもの、又は、遊離塩素が含まれていても極めて少量のものである。
【0015】
また、ブラックライトは、殺菌作用のある紫外線(UV−C)を発光せず紫外線(UV−A)を発光し、可視光は殆ど発光しないように設計されたランプであり、発光スペクトルは、波長315〜400nmで、365nm付近がピーク波長となるものである。
【0016】
一方、紫外光は、単位面積・単位時間当りに光源から照射された紫外線の強さである紫外線照度の平均紫外線照度が低紫外線照度からなるもので、低紫外線照度として、0.25μW/cm〜7.5μW/cmの範囲からなるものが好ましい。この紫外線照度は、被処理水の吸光度と水深によって左右され、吸光度が高い程又は水深が大きくなればなるほど照度が減少するもので、以下の数式で表すことができる。
【0017】
【数1】
【0018】
なお、Iは紫外線照度、Iは表面紫外線照度、Aは被処理水の吸光度、dは水深である。
【0019】
一方、平均紫外線照度は、紫外線が照射された3次元空間における紫外線照度の平均値のことであり、紫外線照度を水深の深さ方向で積分することで算出できるものであり、以下の数式で表すことができる。
【0020】
【数2】
【0021】
また一方、このような紫外光としては、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用するのが好ましい。
【0022】
かくして、このようなブラックライトと紫外光を被処理水に対して同時に照射するようにすれば、酸化剤を使用せずとも、細菌などの微生物に対して不活化効果を得ることができる。
【実施例】
【0023】
ここで、発明者らは、上記説明した内容を証明するため、以下の実験を行った。それを実験1〜6として説明することとする。
【0024】
<実験装置>
まず、実験1〜実験6の実験を行うにあたって、共通の実験装置を用いて行った。この共通の実験装置とは図1に示すものである。すなわち、図1に示すように、実験装置1は、紫外線Sが鉛直下向き方向(図示下方向)に照射される紫外光2を備え、この紫外光2の下面側には、薄板矩形状の第1仕切板3が配置されている。そして、この第1仕切板3の中央部には、薄板矩形状の第2仕切板4が立設されている。これにより、第1仕切板3の下面には、第1試料室H1,第2試料室H2の空間が形成されることとなる。なお、第1試料室H1,第2試料室H2の上面に位置する第1仕切板3には、夫々、円形状の貫通孔3aが夫々上下方向に貫通されて設けられており、この貫通孔3aを通って、紫外光2より照射された紫外線Sが第1試料室H1,第2試料室H2内に夫々照射されることとなる。
【0025】
そして、この第1試料室H1内には、第1設置台5a上に設置された第1シャーレ6aが設けられている。この第1シャーレ6a内には、後述する試料(被処理水に相当するもの)と第1十字撹拌子6a1が設けられ、第1シャーレ6a上面には第1石英ガラス7aが載置されている。
【0026】
一方、第2試料室H2内には、第2設置台5b上に設置された第2シャーレ6bが設けられている。この第2シャーレ6b内には、後述する試料(被処理水に相当するもの)と第2十字撹拌子6b1が設けられ、第2シャーレ6b上面には第2石英ガラス7bが載置されている。そして、この第2シャーレ6bの外周には、ブラックライト8が設けられている。
【0027】
かくして、このように構成される実験装置1を用いて、以下の実験1〜実験6を行った。
【0028】
<実験1>
まず、発明者らは、紫外光2として、日本フォトサイエンス社製のピーク波長が254nmである低圧水銀ランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。以下に実験手順並びに実験条件を示す。
【0029】
<実験手順>
1.滅菌済みのリン酸緩衝液に大腸菌E.Coli C原液を適量添加し、それを試料(被処理水に相当するもの)とする。
2.第1シャーレ6aの内径と水深を測定すると共に、第2シャーレ6bの内径と水深も測定する。
3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。
4.実験開始時の照度を紫外線照度計にて測定する。また、紫外線照度計の受光部に第1石英ガラス7a,第2石英ガラス7bを乗せ、照度を測定し、第1石英ガラス7a,第2石英ガラス7bの有無による照度への影響を調べる。
5.第1シャーレ6a内に第1十字撹拌子6a1と試料を入れ、気泡が入らないように注意しながら第1石英ガラス7aで蓋をする。そしてさらに、第2シャーレ6b内に第2十字撹拌子6b1と試料を入れ、気泡が入らないように注意しながら第2石英ガラス7bで蓋をする。
6.試料から0.1ml採取し、この試料を照射時間0秒の試料とする。
7.試料が入った第1シャーレ6a,第2シャーレ6bを遮蔽板(図示せず)で覆い、第1シャーレ6a内に設けられている第1十字撹拌子6a1を回し、第2シャーレ6b内に設けられている第2十字撹拌子6b1を回す。
8.遮蔽板(図示せず)を取り、紫外光2より紫外線Sを照射する。この際、2つの試料に照射される紫外線量を同じにするため、開始と終了のタイミングを合せる。
9.照射後、試料を0.1mL採取する。
10.照射時間を変えて6.〜10.の手順を繰り返す。
11.実験後の照度を測定する。
12.混釈法にて採取した試料の濃度を測定(混釈法にて大腸菌E.Coli Cのコロニー数を測定)することによって、殺菌効果(log生残率)を測定する。
【0030】
<実験条件>
平均紫外線照度:約1μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:47.0cm
吸光度:0.373cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度:1.84μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0031】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図2(a)に示す結果を得た。なお、図2(a)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、以下の数式で算出したものである。
【0032】
【数3】
【0033】
すなわち、上記説明した<実験手順>「10.照射時間を変えて6.〜10.の手順を繰り返す」という点における「照射時間を変えて」というのは、上記数式3に照らせば、平均紫外線量を5(mJ/cm)にするには、本実験における平均紫外線照度は1(μW/cm)であるから、照射時間は、5000(s)にすれば良いこととなり、平均紫外線量を10(mJ/cm)にするには、本実験における平均紫外線照度は1(μW/cm)であるから、照射時間は、10000(s)にすれば良いこととなる。このようにして、照射時間を変えていくことにより、図2(a)に示す平均紫外線量に対する試料の殺菌効果(log生残率)の結果を得ることができた。
【0034】
しかるに、図2(a)に示す結果によれば、紫外線照射のみの方が、紫外線照射とブラックライトを同時照射した場合よりも不活化効率が高いという結果となった。
【0035】
<実験2>
次に、発明者らは、紫外光2として、ウシオ電機社製のピーク波長が282nmであるXeBrエキシマランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。なお、実験手順は、実験1で示した「3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。」が「3.分光光度計で試料の282nmの吸光度を測定する。」に変わるだけでそれ以外は同一である。実験条件は以下の通りである。
【0036】
<実験条件>
平均紫外線照度:約1μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:45.0cm
吸光度:0.24cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度:1.35μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0037】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図2(b)に示す結果を得た。なお、図2(b)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、数式3を用いて算出したものである。
【0038】
しかるに、図2(b)に示す結果によれば、紫外線照射のみの方が、紫外線照射とブラックライトを同時照射した場合よりも不活化効率が高いという結果となった。
【0039】
<実験3>
次に、発明者らは、紫外光2として、ウシオ電機社製のピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。なお、実験手順は、実験1で示した「3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。」が「3.分光光度計で試料の222nmの吸光度を測定する。」に変わるだけでそれ以外は同一である。実験条件は以下の通りである。
【0040】
<実験条件>
平均紫外線照度:約1μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:46.0cm
吸光度:1.153cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度(紫外線照射のみ):5.09μW/cm
表面紫外線照度(紫外線とブラックライトを同時照射):4.70μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0041】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図2(c)に示す結果を得た。なお、図2(c)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、数式3を用いて算出したものである。
【0042】
しかるに、図2(c)に示す実験結果によれば、紫外線照射とブラックライトを同時照射した方が、紫外線照射のみに比べ不活化効率が高いという結果となった。
【0043】
<実験1〜実験3に対する結論>
以上の実験結果により、試料に対して、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプとブラックライトを同時照射するようにすれば、相乗効果が生じ不活化効率が高くなるということが分かった。
【0044】
なお、実験1,2において、紫外線照射とブラックライトを同時照射した場合に、log生残率が高くなったのは、ブラックライトを同時照射したことにより大腸菌E.Coli CのDNAが酵素的光回復現象により修復されたものと考えられる。
【0045】
以上の結果を受けて、発明者らは、紫外光2として、ウシオ電機社製のピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用した際、平均紫外線照度を変更した場合も実験3と同様の結果を得ることができるのかを確かめるため、実験4〜6を行った。
【0046】
<実験4>
まず、発明者らは、平均紫外線照度:約7.5μW/cmとなるようにしたウシオ電機社製のピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。なお、実験手順は、実験1で示した「3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。」が「3.分光光度計で試料の222nmの吸光度を測定する。」に変わるだけでそれ以外は同一である。実験条件は以下の通りである。
【0047】
<実験条件>
平均紫外線照度:約7.5μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:35.0cm
吸光度:1.075cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度:32.8μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0048】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図3(a)に示す結果を得た。なお、図3(a)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、数式3を用いて算出したものである。
【0049】
しかるに、図3(a)に示す実験結果によれば、実験3と同様、紫外線照射とブラックライトを同時照射した方が、紫外線照射のみに比べ不活化効率が高いという結果となった。
【0050】
<実験5>
次に、発明者らは、平均紫外線照度:約0.25μW/cmとなるようにしたウシオ電機社製のピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。なお、実験手順は、実験1で示した「3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。」が「3.分光光度計で試料の222nmの吸光度を測定する。」に変わるだけでそれ以外は同一である。実験条件は以下の通りである。
【0051】
<実験条件>
平均紫外線照度:約0.25μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:50.0cm
吸光度:1.042cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度:1.07μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0052】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図3(b)に示す結果を得た。なお、図3(b)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、数式3を用いて算出したものである。
【0053】
しかるに、図3(b)に示す実験結果によれば、実験3と同様、紫外線照射とブラックライトを同時照射した方が、紫外線照射のみに比べ不活化効率が高いという結果となった。
【0054】
<実験6>
次に、発明者らは、平均紫外線照度:約10.0μW/cmとなるようにしたウシオ電機社製のピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプを使用し、ブラックライト8として、オーム電機社製4Wのブラックライトを使用し、図1に示す実験装置1を用いて、大腸菌E.Coli Cに対し、紫外線照射のみ行った場合の試料と、紫外線照射とブラックライト8を同時照射した場合の試料の不活化実験を行った。なお、実験手順は、実験1で示した「3.分光光度計で試料の254nmの吸光度を測定する。」が「3.分光光度計で試料の222nmの吸光度を測定する。」に変わるだけでそれ以外は同一である。実験条件は以下の通りである。
【0055】
<実験条件>
平均紫外線照度:約10.0μW/cm
試料とブラックライト8との距離:4.0cm
試料と紫外光2との距離:29.5cm
吸光度:1.331cm−1
水深:1.7cm
表面紫外線照度(紫外線照射のみ):52.8μW/cm
表面紫外線照度(紫外線とブラックライトを同時照射):61.9μW/cm
なお、表面紫外線照度は紫外線照度計を用いて計測したもので、平均紫外線照度は、上記数式1,2を用いて算出したものである。
【0056】
かくして、以上のような実験手順並びに実験条件に基づいて実験を行った結果、図3(c)に示す結果を得た。なお、図3(c)に示す「BL」とはブラックライトの略称であり、平均紫外線量(mJ/cm)は、数式3を用いて算出したものである。
【0057】
しかるに、図3(c)に示す実験結果によれば、紫外線照射とブラックライトを同時照射した場合と紫外線のみ照射した場合とで、顕著な差はでなかった。
【0058】
<実験4〜実験6に対する結論>
しかして、実験4〜実験6の実験結果により、試料に対して、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプとブラックライトを同時照射するにあたって、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプの平均紫外線照度を0.25μW/cm〜7.5μW/cmの範囲にすることで、不活化効率が高くなるということが分かった。なお、平均紫外線照度を0.25μW/cmより低くして実験を行おうとしたが、これ以上紫外線照度を下げることは物理的に不可能であったため、平均紫外線照度を0.25μW/cmより低くする実験は行っていない。
【0059】
しかして、以上説明した実験結果によれば、被処理水に対して、ブラックライトと該ブラックライトとは異なる紫外光を同時に照射することで、酸化剤を使用せずとも、細菌などの微生物に対して不活化効果を得ることができ、特に、その効果は、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプとブラックライトを同時照射し、さらに、ピーク波長が222nmであるクリプトンクロライド(KrCl)エキシマランプの平均紫外線照度を0.25μW/cm〜7.5μW/cmの範囲にした際に最も顕著に表れることが分かった。
【0060】
ところで、本実施形態における水処理方法は、加湿器、浄水器、ボトルウォーターサーバ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 実験装置
2 紫外光
8 ブラックライト
図1
図2
図3