(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉛直面状に自立して個室(Z)を形成するための間仕切壁本体(1)と、該間仕切壁本体(1)に平行面状に配設され上記個室(Z)の出入口(E)を開状態と閉状態にするための引戸(2)と、を備え、
さらに、上記間仕切壁本体(1)の上縁部(18)と上記引戸(2)の上縁部(28)とを連結する左右方向伸縮自在な上伸縮スライド部材(3A)と、上記間仕切壁本体(1)の下縁部(19)と上記引戸(2)の下縁部(29)とを連結する左右方向伸縮自在な下伸縮スライド部材(3B)と、を備え、
上記上伸縮スライド部材(3A)及び上記下伸縮スライド部材(3B)の伸縮によって、上記引戸(2)を左右方向収納引出し自在に構成し、
上記引戸(2)は、上記上縁部(28)に、短縮状態の上記上伸縮スライド部材(3A)を収容するために左右方向に沿って形成された上凹溝(21)を有し、かつ、上記下縁部(29)に、短縮状態の上記下伸縮スライド部材(3B)を収容するために左右方向に沿って形成された下凹溝(22)を有することを特徴とする間仕切引戸装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
本発明に係る間仕切引戸装置は、
図1に示すように、会議室や応接室等の個室Zを形成するための正面視矩形状(長方形状)の間仕切壁本体1と、個室Zの出入口Eを開状態と閉状態にするための正面視矩形状(長方形状)の引戸2と、を備えている。
【0011】
間仕切壁本体1は、鉛直面状の第1壁部11と、第1壁部11に沿って左右方向に隣接して配設され(左右一方に連設され)第1壁部11よりも薄肉の第2壁部12と、第1壁部11と第2壁部12との段差によって形成され開状態(全開位置)の引戸2が配設される戸収容空間部10と、を有している。
そして、間仕切壁本体1は、
図2乃至
図4に示すように、設置面(室内の床面)Gに固設され、鉛直面状に自立する。第1壁部11の表て面11dと第2壁部12の表て面12dは同一面状である。
【0012】
図2乃至
図4に於て、間仕切壁本体1の第2壁部12の上縁部18と引戸2の上縁部28とを連結する左右方向伸縮自在な上伸縮スライド部材3Aと、間仕切壁本体1の第2壁部12の下縁部19と引戸2の下縁部29とを連結する左右方向伸縮自在な下伸縮スライド部材3Bを備えている。
【0013】
上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3Bの伸縮によって、戸収容空間部10に対して、引戸2を、左右方向収納引き出し自在(左右一方へ引き出し可能かつ左右他方へ収納可能)に構成している。
【0014】
引戸2は、上縁部28に、短縮状態の上伸縮スライド部材3Aを収容するために左右方向に沿って形成された上方開口状の上凹溝21を有している。
また、引戸2は、下縁部29に、短縮状態の下伸縮スライド部材3Bを収容するために左右方向に沿って形成された下方開口状の下凹溝22を有している。
また、上凹溝21及び下凹溝22は、左右他方へ開口している。言い換えると、上凹溝21及び下凹溝22の閉走行後尾部(開走行先頭部)は、左右方向に開口している。
【0015】
また、引戸2は、左右一方側縁部(閉走行先頭側縁部)2gの前後面夫々に手掛け部や取手部等の開閉操作用の把持部を有している。
引戸2の開状態(全開位置)は、使用者が把持部を操作可能なように、左右一方側縁部2gを戸収容空間部10(第2壁部12の左右一方側縁12g)から左右一方側へ突出状態としている。
【0016】
図2乃至
図4に示すように、上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3B(以下、まとめて伸縮スライド部材3と呼ぶ場合もある)は、間仕切壁本体1に固着される固定枠31と、固定枠31に左右方向スライド自在に保持されるレール部材32と、レール部材32に左右方向スライド自在に保持されると共に引戸2に固着されるスライダ部材33と、を備えている。伸縮スライド部材3(固定枠31とレール部材32とスライダ部材33)は、正面視で左右方向に沿った帯形状である。
【0017】
固定枠31は、横断面略コの字状であって、第1リテーナ部材に回転自在に保持された複数の摺動用第1鋼球34を介して(によって)、レール部材32を左右方向スライド自在、かつ、前後方向及び上下方向に移動不可能に、内嵌状に保持している。なお、
図3及び
図4に於て、第1リテーナ部材及び第1鋼球34は、図示省略している。
【0018】
レール部材32は、横断面略コの字状であって、第2リテーナ部材に回転自在に保持された複数の摺動用第2鋼球35を介して(によって)、スライダ部材33を左右方向スライド自在、かつ、前後方向及び上下方向に移動不可能に、内嵌状に保持している。なお、
図3及び
図4に於て、第2リテーナ部材及び第2鋼球35は、図示省略している。
【0019】
上伸縮スライド部材3Aの固定枠31は、上取着部材71を介して、第2壁部12に固着している。上取着部材71は、第2壁部12の上縁部18に固着される上第1取着片部71dと、上第1取着片部71dに連設され第2壁部12寄りの上溝側壁部21fを上方から跨いで開状態の引戸2の上凹溝21内に侵入して配設され固定枠31が固着する上第2取着片部71eと、を有する横断面コの字状である。
【0020】
上伸縮スライド部材3Aのスライダ部材33は、上固着部材61を介して、引戸2に固着している。上固着部材61は、上凹溝21の内面(溝底面又は溝側面)に固着される上ベース片部と、スライダ部材33に固着される上固着片部と、を有する横断面L字状である。
【0021】
下伸縮スライド部材3Bの固定枠31は、下取着部材72を介して、第2壁部12に固着している。下取着部材72は、第2壁部12の下縁部19に固着される下第1取着片部72dと、下第1取着片部72dに連設され第2壁部12寄りの下溝側壁部22fを下方から跨いで開状態の引戸2の下凹溝22内に侵入して配設され固定枠31が固着する下第2取着片部72eと、を有する横断面コの字状である。
【0022】
下伸縮スライド部材3Bのスライダ部材33は、下固着部材62を介して、引戸2に固着している。下固着部材62は、下凹溝22の内面(溝底面又は溝側面)に固着される下ベース片部と、スライダ部材33に固着される下固着片部と、を有する横断面L字状である。
【0023】
図2及び
図3に示すように、引戸2の開状態(全開位置に配設された状態)において、伸縮スライド部材3(3A,3B)は、固定枠31とレール部材32とスライダ部材33が壁厚方向(前後方向)に重なって配設されると共に、固定枠31とレール部材32とスライダ部材33の先端部が左右方向略同位置に配設された(固定枠31からレール部材32とスライダ部材33が突出せずに配設された)短縮状態となる。
【0024】
伸縮スライド部材3は、
図4に示すように、固定枠31からレール部材32が左右一方へ突出すると共に、レール部材32からスライダ部材33が左右一方へ突出した伸長状態になることで、引戸2が閉状態となる(全閉位置に配設される)。
【0025】
引戸2の閉状態(伸縮スライド部材3の伸長状態)で、戸収容空間部10に残存している固定枠31に、レール部材32の(レール左右全長寸法L32の)40%以上60%以下が保持されると共に、レール部材32に、スライダ部材33の(スライダ左右全長寸法L33の)40%以上60%以下が保持される。40%未満であると、引戸2の荷重を十分に支持できない虞れがあり、60%を超えると、固定枠31を無駄に大きくする必要がある。
なお、レール部材32及びスライダ部材33は、図示省略のストッパ部によって、所定ストローク寸法を超える引き出しが阻止されるように設けている。
【0026】
また、伸縮スライド部材3の伸長状態で、スライダ部材33は、固定枠31から完全に引き出された左右位置に配設される。つまり、固定枠31とスライダ部材33が正面視(背面視)で重なっていない。
このように、固定枠31からスライダ部材33を完全引き出し状態にできるため、引戸2の引き出し量(移動ストローク)を大きくして、出入口Eを幅広にすることができ、車椅子や歩行器を使用した通行が容易となる。
【0027】
さらに、このような2回引き型の伸長構造とすることで、固定枠31から完全に引き出されたスライダ部材33にて、引戸2を長い(広い)範囲で支持して荷重を受ける。
また、引戸2の荷重を受けたスライダ部材33を、レール部材32にて、長い(広い)範囲で支持する。また、スライダ部材33からの荷重を受けたレール部材32を、固定枠31にて、長い(広い)範囲で支持する。
【0028】
また、スライダ部材33を完全引き出し状態にできるため、引戸2の荷重を安定して十分に支持可能な長さにスライダ部材33を設定できる。
例えば、スライダ左右全長寸法L33を、引戸2の戸左右全長寸法L2の70%以上100%以下、好ましくは、80%以上100%以下に設定できる。下限値未満であると、引戸2の荷重を十分に支持できない虞れがあり、上限値を超えると、伸縮スライド部材3や戸収容空間部10の左右寸法が無駄に大きくなる。
【0029】
さらに、戸収容空間部10に配設された開状態の引戸2を目隠しするための化粧カバー部材5を備えている。
化粧カバー部材5は、第2壁部12及び第1壁部11と供働きして(戸収容空間部10を覆って)左右一方へ開口する戸袋を構成している。
【0030】
化粧カバー部材5は、間仕切壁本体1の第2壁部12の上縁部18に固着される水平面状の上壁部51と、上壁部51の先端から垂下面状に設けられ第2壁部12と引戸2に平行面状に配設される目隠し壁部52と、を有している。
【0031】
さらに、
図1及び
図2に示すように、第1壁部11は、第1壁厚寸法T11をもって形成され、第2壁部12は、第1壁厚寸法T11よりも小さい第2壁厚寸法T12をもって形成されている。
第2壁厚寸法T12は、第1壁厚寸法T11の40%以上55%以下に設定している。より好ましくは、40%以上50%以下に設定している。
下限値未満であると、引戸2の荷重を受けて自立が不安定になる虞れや耐久性が低下する。上限値を超えると、引戸2が薄く低強度になる、或いは、第1壁部11から壁厚方向(前後方向)へ引戸2が大きく突出して、安全性や美観を損なう虞れがある。
【0032】
そして、第2壁部12の表て面(前後一方面)12dから化粧カバー部材5の目隠し壁部52の表て面(前後他方面)5dまでの戸袋形成部厚さ寸法Taを、第1壁厚寸法T11の80%以上100%以下に設定している。下限値未満であると、不安定になると共に、美観を損なう虞れがある。上限値を超えると、化粧カバー部材5等が第1壁部11から壁厚方向(前後方向)へ突出して、安全性が低下すると共に美観を損なう虞れがある。
また、引戸2の下端と設置面Gの間は所定の間隙寸法をもって離間しており(間隙が形成され)、清掃が容易である。
【0033】
次に、本発明の間仕切引戸装置の使用方法(作用)について説明する。
先ず、施工する際は、設置面(床面)Gに、間仕切壁本体1を固設するだけで、施工が終了する。伸縮スライド部材3や引戸2の平行出し作業や化粧カバー部材5の取り付けは、製造工場で予め行えるからである。また、床レールや出入口上方位置の上ガイドレールの設置も不要なためである。
【0034】
そして、施工終了後の使用時において、引戸2が開状態(全開位置)の場合は、短縮状態の上伸縮スライド部材3Aは上凹溝21内に収納され、短縮状態の下伸縮スライド部材3Bは下凹溝22内に収納される。
引戸2は、把持部を操作しやすくするため戸収容空間部10(戸袋)から左右一方側縁部2gが露出しているが、それ以外の前後一方面は、第2壁部12によって外部から目隠しされ、前後他方面は、化粧カバー部材5によって外部から目隠しされるので、装置全体として一枚の間仕切部材のような外観を得ている。
【0035】
使用者が引戸2の把持部を持って、左右一方側(閉走行側)へ引くと、固定枠31からレール部材32及びスライダ部材33が引き出されると共に、引戸2が戸収容空間部10から引き出され、引戸2の閉状態となる。
この引戸2の閉状態は、固定枠31は戸収容空間部10内(戸袋内)に残存し、レール部材32及びスライダ部材33において戸収容空間部10(固定枠31)から引き出された部位が、上凹溝21及び下凹溝22内に収容されているので、安全であると共に外部から目視できず美観を損ねない。
【0036】
そして、引っ越しやレイアウト変更等の理由により、撤収する際は、間仕切壁本体1を設置面Gから分離(固定解除)すれば終了である。間仕切壁本体1の固設に対応する設置面Gの簡単な補修でよく、床レールや上ガイドレールの撤収や、レール溝埋め作業等の大掛かりな補修は必要ない。
【0037】
また、
図5乃至
図7に示すように、本発明の間仕切引戸装置は、室内の側壁Kaと、柱や段差壁面等の室内突出部Kbと、正面視矩形状(長方形状)の間仕切壁材9と、を適宜組合せて、個室Zを形成可能であり、様々な間取り(レイアウト)を実現できる。
【0038】
そして、間仕切壁本体1に沿って左右方向に隣接して配設されると共に引戸構造を有していない矩形壁型の間仕切壁材9の壁厚寸法T9に対して、第1壁厚寸法T11及び戸袋形成部厚さ寸法Taを、80%以上100%以下に設定するのが好ましい。このように、第1壁厚寸法T11及び戸袋形成部厚さ寸法Taを設けることで、個室Zの外観や室内に統一感がでて、美観を向上できる。
【0039】
なお、本発明は、設計変更可能であって、第2壁部12を個室外側(化粧カバー部材5を個室内側)として設置した場合を図示しているが、第2壁部12を個室内側(化粧カバー部材5を個室外側)となるように設置するも良い。化粧カバー部材5を上取着部材71を介して間仕切壁本体1に固着するも良い。上取着部材71と下取着部材72と上固着部材61と下固着部材62の形状は自由である。
【0040】
以上のように、本発明の間仕切引戸装置は、鉛直面状に自立して個室Zを形成するための間仕切壁本体1と、間仕切壁本体1に平行面状に配設され個室Zの出入口Eを開状態と閉状態にするための引戸2と、を備え、さらに、間仕切壁本体1の上縁部18と引戸2の上縁部28とを連結する左右方向伸縮自在な上伸縮スライド部材3Aと、間仕切壁本体1の下縁部19と引戸2の下縁部29とを連結する左右方向伸縮自在な下伸縮スライド部材3Bと、を備え、上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3Bの伸縮によって、引戸2を左右方向収納引出し自在に構成したので、設置面Gにレールが不要で、凹凸の無い平坦な出入口Eを形成でき、バリアフリー化に最適である。設置面Gの清掃を容易に行うことができる。施工や撤収時の修復を容易かつ迅速に行うことができる。上伸縮スライド部材3Aと下伸縮スライド部材3Bの平行出しや位置決め、間仕切壁本体1と引戸2の平行等を製造工場で行え、1つのユニットとして高精度かつ高品質に完成させることができる。現場にて、間仕切壁本体1を設置面Gに固設するだけで施工を終了できる。設置面Gの水平度の影響を受けず、施工を容易に行えると共にスムーズな開閉を実現できる。戸車によるゴミの巻き込みや脱輪等のトラブルが少なく耐久性に優れる。戸車やガイドローラによる揺れ(振れ)が無く、スムーズな開閉動作を安定して得ることができる。設置面Gの水平レベルに悪影響を受けず、施工が容易でありながらスムーズな開閉動作を得ることができる。また、天井面に部材を取着する必要がなく、天井高さや天井の水平などを考慮せずに施工できる。また、間取り変更等に移設や撤収の際に、間仕切壁本体1を固設した設置面Gの修復のみでよく、大掛かりな設置面Gの修復が不要となる。
【0041】
また、引戸2は、上縁部28に、短縮状態の上伸縮スライド部材3Aを収容するために左右方向に沿って形成された上凹溝21を有し、かつ、下縁部29に、短縮状態の下伸縮スライド部材3Bを収容するために左右方向に沿って形成された下凹溝22を有するので、引戸2の閉状態(引き出し状態)で、上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3Bが露出せず、美観に優れると共に、手指の挟み込み等の事故を防止できる。また、ゴミ等の異物が上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3Bに付着するのを防止でき、故障を少なくできる。
【0042】
また、上伸縮スライド部材3A及び下伸縮スライド部材3Bは、間仕切壁本体1に固着される固定枠31と、固定枠31に左右方向スライド自在に保持されるレール部材32と、レール部材32に左右方向スライド自在に保持されると共に引戸2に固着されるスライダ部材33と、を備えるので、引戸2を、安定してスムーズに引き出し・収納走行させることができる。耐荷重を大きくでき、大型の引戸2に対応できる。
【0043】
また、間仕切壁本体1は、第1壁厚寸法T11をもって形成された第1壁部11と、第1壁部11に沿って左右方向に隣接して配設され第1壁厚寸法T11よりも小さい第2壁厚寸法T12をもって形成された第2壁部12と、第1壁部11と第2壁部12との段差によって形成され開状態の引戸2が配設される戸収容空間部10と、を有し、第2壁厚寸法T12は、第1壁厚寸法T11の40%以上55%以下に設定したので、引戸2の荷重を十分に安定して支えることができる。ガタつきや揺れを発生させずにスムーズな引戸2の開閉走行を実現できる。美観に優れ、引戸2と間仕切壁本体1との一体感が得られ、個室Z内外から見て違和感や圧迫感を軽減できる。
【0044】
また、
開状態の引戸2を目隠しするための化粧カバー部材5を備え、化粧カバー部材5は、間仕切壁本体1に固着したので、施工現場にて、化粧カバー部材5を固定するための工事(加工)を、設置面Gや天井面、壁面等に行う必要がなく、施工を迅速かつ容易にできる。製造工場で間仕切壁本体1と引戸2と化粧カバー部材5を1つのユニットとして組立・完成させることができる。間仕切壁本体1と化粧カバー部材5を一体状に演出でき、美観が優れる。