(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785004
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ボタン及びボタンの作製方法
(51)【国際特許分類】
A44B 1/02 20060101AFI20201109BHJP
B41M 5/26 20060101ALI20201109BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20201109BHJP
B21D 53/48 20060101ALI20201109BHJP
A44B 1/04 20060101ALI20201109BHJP
A44B 1/00 20060101ALI20201109BHJP
C25D 11/36 20060101ALI20201109BHJP
C25D 11/26 20060101ALI20201109BHJP
C23C 22/54 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
A44B1/02 A
B41M5/26
B23K26/00 B
B21D53/48 B
A44B1/04 M
A44B1/00 Z
C25D11/36 E
C25D11/26 A
C23C22/54
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-87641(P2017-87641)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-200578(P2017-200578A)
(43)【公開日】2017年11月9日
【審査請求日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-89842(P2016-89842)
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年11月19〜20日春日井市総合体育館において開催された「かすがいビジネスフォーラム2015」で公開
(73)【特許権者】
【識別番号】516127455
【氏名又は名称】有限会社志村プレス工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】志村 正廣
【審査官】
西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−050430(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3142622(JP,U)
【文献】
特開2002−120495(JP,A)
【文献】
特開平07−061198(JP,A)
【文献】
特開2008−056888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B 1/00 − 1/44
B44C 1/22
B21D 53/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタンからなる金属板をファイバーレーザーでボタンの外形及びボタン孔を加工する加工工程と、
前記加工工程の後に、ボタンをプレスにより加工するプレス工程と、
切断された金属板をバレル研磨又はスピン研磨する研磨工程と、
前記研磨工程で研磨された金属板を化学研磨する化学研磨工程と、
前記化学研磨工程によって化学研磨された金属板を化学発色させる第1化学発色工程と、
前記金属板の表面にファイバーレーザー光を照射して発色させる発色工程と、
前記第1化学発色工程によって発色された面をファイバーレーザー光によって除去した除去面を形成する化学発色除去工程と、
少なくとも発色除去された部位にさらに第1化学発色工程と同じ発色法により化学発色させる第2化学発色工程と、
前記金属板の表面に樹脂をコーティングするコーティング工程と、
を含むことを特徴とするボタンの作製方法。
【請求項2】
前記ボタン孔は、前記ボタン孔の内側から円周に向かって切断した部分に対して、複数回レーザーを通過させて加工することを特徴とする請求項1に記載のボタンの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服飾用のボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板の表面を発色したり、防汚損性能及び防摩耗性能を付与したりする表面処理方法が従来から知られている。例えば、金属の表面に形成されている酸化皮膜をレーザー光で除去することで該酸化皮膜の厚さを調整して、該金属を任意の色に見えるようにする金属の表面処理方法がある(特許文献1)。
【0003】
また、例えば、金属表面にレーザー光を照射して文字、模様に相当する凹部を金属酸化皮膜とともに形成し、この金属を利用して発色させる場合に、レーザーパワーや周波数等の刻印の条件を適宜に選ぶことにより、所望の色に発色させられるようにするレーザーによる金属のカラーマーキング方法がある(特許文献2)。
【0004】
さらに、例えば、金属表面に化学発色処理により多彩色の酸化皮膜を形成して最後の表面にスーパーブラックの酸化皮膜を形成し、レーザー光を照射してこれら酸化皮膜を適宜深さまで除去することで、金属表面に多彩色の絵柄等を描画する方法がある(特許文献3)。
【0005】
一方で、服飾用のボタンにおける金属製のボタンは、一般に大量生産のものであり、打ち抜きによるものが多く、色も金属色自体のボタンやメッキによる一色のボタンがほとんどである。僅かに、色彩を施したボタンも存在するが、こうした色彩付きのボタンは塗装であるため、使用によって色が落ちてくるという問題点があった。また、これらボタンは、大量生産であることから、一定の模様のボタンしか作製することができず、顧客の要望に応じた模様やデザインのボタンを作製することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−254790号公報
【特許文献2】特開平7−61198号公報
【特許文献3】特開2004−82493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような課題を鑑みなされたものであり、任意の文字、模様等を表面に施してあるボタン及びその作製方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の主目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0009】
本発明にかかるボタンは、
バレル研磨又はスピン研磨及び化学研磨が施されたチタンからなる金属板において、
化学発色されている第1化学発色部と、
レーザー光が照射されて発色されているレーザー発色部と、
前記第1化学発色層が除去された部分に化学発色されている第2化学発色部と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成を採用することによって、チタンからなる金属板に、第1化学発色部と、レーザー発色部と、第2化学発色部との3つの発色部を設けることによって、それぞれの異なる質感の発色部を設けることができ、より深みのある色彩を有するボタンとすることができる。また、美観性に優れたボタンを提供することができる。また、ボタンはチタン製であるので、従来のプラスチック製のボタンと比較して硬いため、傷がついたり、欠けたり、割れたりする可能性を低減することができ、長寿命なボタンを作製することができる。また、本発明のボタンは、化学発色及びレーザーによる発色により色彩を表現しているため、塗装と異なり発色効果の持続性が高いため、半永久的に、発色が薄くなったり、消えたりすることを防止することができる。
【0011】
また、本発明にかかるボタンにおいて、さらに、前記第1化学発色部と、前記レーザー発色部と、前記第2化学発色部をコーティングしているコーティング層を備えていることを特徴とするものであってもよい。さらに、本発明にかかるボタンにおいて、前記コーティング層は、ガラスコーティングであることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、さらに、長期間の間、発色が薄くなったり、消えたりすることを防止することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるボタンにおいて、前記第2化学発色部は、レーザー光によって前記第1化学発色部が除去されている部分に形成されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、レーザー光による表面の仕上がり状況に応じて、異なる風合いを醸し出すことができる。そのため、たとえ同じ方法により同じ発色条件を使用しても第1化学発色部と第2化学発色部は、異なる風合いの発色状態とすることができ、よりバリエーションに富んだ色彩を表現することができる。
【0013】
本発明にかかるボタンの作製方法は、
チタンからなる金属板をファイバーレーザーでボタンの外形及びボタン孔を加工する加工工程と、
切断された金属板をバレル研磨又はスピン研磨する研磨工程と、
前記研磨工程で研磨された金属板を化学研磨する化学研磨工程と、
前記化学研磨工程によって化学研磨された金属板を化学発色させる第1化学発色工程と、
前記金属板の表面にファイバーレーザー光を照射して発色させる発色工程と、
前記第1化学発色工程によって化学発色された面をファイバーレーザー光によって化学発色された面を除去した除去面を形成する化学発色除去工程と、
少なくとも前記除去面にさらに化学発色させる第2化学発色工程と、
前記金属板の表面に樹脂をコーティングするコーティング工程と、
を含むことを特徴とするボタンの作製方法。
【0014】
チタンからなる金属板に、第1化学発色部と、レーザー発色部と、第2化学発色部との3つの発色部を設けることによって、それぞれの異なる質感の発色部を設けることができ、より深みのある色彩を有するボタンを作製することができる。また、チタン製金属板を使用してボタンを作製することによって、従来のプラスチック製のボタンと比較して、硬いため、傷がついたり、欠けたり、割れたりする可能性を低減することができ、長寿命なボタンを作製することができる。また、チタンにファイバーレーザー光を使用して化学発色させることによって、塗装と異なり酸化皮膜の厚さによって発色させるものであるため、半永久的に発色効果が持続するため、発色が薄くなったり、消えたりすることを防止することができる。
【0015】
また、本発明にかかるボタンの作製方法において、前記加工工程の後に、ボタンをプレスにより加工するプレス工程を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することによって、ボタン面の形態を曲面にしたり、凹凸面をつけたりして、デザイン面に立体的な装飾を施すとともに、ボタンの厚さを調整して軽量化を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明にかかるボタンの作製方法において、前記第1化学発色工程と前記第2化学発色工程は、同じ発色法であることを特徴とするものであってもよい。たとえ同じ方法により同じ発色条件を使用しても第1化学発色部と第2化学発色部は、異なる風合いの発色状態とすることができ、よりバリエーションに富んだ色彩を表現することができる。
【0018】
さらに、本発明にかかるボタンの作製方法において、前記ボタン孔は、前記ボタン孔の内側から円周に向かって切断した後、円周に沿って所定長さ加工し、そこでUターンさせて周回させて初期位置まで戻すように加工することを特徴とするものであってもよい。
【0019】
かかる構成を採用することによって、ボタン孔にバリが発生することが防止でき、衣服に縫い付けた場合に、糸切れが発生する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるボタン10の作製方法で作製されたボタン10の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるボタン10の断面状態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるボタン10の作製工程を示したフロー図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるボタン10の作製工程の一部を示した図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるボタン10のボタン孔の作製方法を示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるボタン10の作製工程の一部を示した図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるボタン10の作製工程の一部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかるボタン10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。
【0022】
本実施形態かかるボタン10の写真が
図1に示されている。
図2は、ボタン10の断面を示した模式図である。本実施形態にかかるボタン10は、
図2に示すように、バレル研磨又はスピン研磨及び化学研磨が施されたチタンからなる金属板20の表面に、第1化学発色部30と、レーザー発色部40と、第2化学発色部50と、これらがコーティングされたコーティング層60と、を備えている。なお、実際には、第1化学発色部30と、レーザー発色部40と、第2化学発色部50と、これらがコーティングされたコーティング層60とは、μ単位の薄い層であるが、
図2ではこれらがかなり誇張して図示されている。
【0023】
第1化学発色部30は、バレル研磨又はスピン研磨及び化学研磨されたボタン形状のチタン製金属板の表面に化学発色された部分であり、ボタン10全体の基本色調を発色させる工程である。レーザー発色部40は、化学発色された部分にレーザー光を照射することによって、第1化学発色部30より深く酸化被膜を形成してプラズマ効果により発色させた部分である。第1化学発色部30とは異なる色の発色を施し、主として模様、文字、記号等に発色させる。第2化学発色部50は、一端、第1化学発色部30又はレーザー発色部40された部分をレーザー加工により除去した部位に、化学発色された部位である。一端、第1化学発色部30又はレーザー発色部40をレーザーで除去した部位に化学発色させることによって、化学研磨された部位に発色された第1化学発色部30とは異なる風合いの発色をさせることができる。例えば、第1化学発色部30と第2化学発色部50とで、同じ溶液等によって同じ色の発色をさせた場合であっても、それぞれ異なる風合いの発色をさせることができる。さらに、本実施形態にかかるボタン10は、表面にガラスコーティングによるコーティング層60が設けられている。このコーティング層60を設けることによって、発色層が保護され、発色が減色することなく長期間発色状態を維持することができる。
【0024】
次に、本実施形態にかかるボタン10の作製方法について説明する。実施形態にかかるボタン10を作製する方法の工程図が
図3に示されている。
図3に示すように、本実施形態にかかるボタン10の作製方法は、主として、(1)チタンからなる金属板をボタン10の形態に加工する加工工程、(2)加工された円形の金属板をプレスによりボタンの凹凸を形成する工程、(3)加工されたボタン状の金属板(以下「ボタン10」ともいう。)をバレル研磨又はスピン研磨で物理的に表面を研磨する研磨工程、(4)研磨工程で研磨されたボタン10を強酸性溶液等の化学研磨液で化学研磨する化学研磨工程、(5)ボタン10の表面を化学発色する第1化学発色工程、(6)ボタン10の表面にファイバーレーザーを照射して発色させるレーザー発色工程、(7)ファイバーレーザーを照射して、化学発色又はレーザー発色された表面を除去する工程、(8)表面が除去された部分に第2の化学発色をする第2化学発色工程、(9)ボタン10の表面に樹脂をコーティングするコーティング工程と、を備えている。
【0025】
(1)加工工程
加工工程は、
図4Aに示すように、チタンの金属板20からボタン10の外形に加工してボタン形状に切り出すと同時に、ボタン孔11を加工する工程である。この加工工程は、限定するものではないが、様々なボタン10の形態に対応するために、レーザー加工が好ましく、より好ましくは、ファイバーレーザーで加工するとよい。レーザー加工により円形の孔を加工する場合には、
図5Aの矢印に示すように、レーザーを円の内側から円周まで加工した後、円周を1周させて加工することが一般的である。しかしながら、ボタン孔11にこの加工方法を採用すると、
図5Bに示すように、円周を開始する部分にバリ12が発生する可能性がある。バリが発生すると、ボタンを縫い付けた場合に縫い付けた糸の糸切れを起こす可能性がある。そこで、
図5Cに示す矢印のように、ボタン孔11の内側から円周に向かって切断した後、円周に達した部分、すなわち円周の切り始めの部分をレーザーを往復させて加工するように、複数回レーザーで加工するとよい。例えば、
図5Cに示すように、円周に達した後、所定長さ円周に沿って加工し、そこで、Uターンさせてバリが発生する部分を通過するように1周させて初期位置まで戻すように加工したり、又は円周に達した後、円周に沿って所定長さ加工し、そこでUターンさせてバリが発生する部分を通過するように1周させて初期位置まで戻すように加工するとよい。このような加工方法を採用することによって、ボタン孔11の周囲にバリがなくなり、スムーズな円周面を形成することができ、糸切れを起こす可能性を低減することができる。
図4においては、全て同じ形状のボタン10を切り出しているが、勿論、異なる種類のボタン10を切り出しても構わない。切り出したボタン10は、
図4Bに示すように、角が鋭角に形成されている。また、初期の酸化皮膜層11が形成されている。なお、この加工工程において、ボタンの周囲を除く中央部分が薄くなるように切削加工してもよい。中央部分を薄く切削することによって、ボタンの軽量化を図ることができる。
【0026】
(2)プレス工程
プレス工程は、ボタン面の形態を曲面にしたり、凹凸面をつけたりして、デザイン面に立体的な装飾を施すとともに、ボタンの厚さを調整して軽量化を図ることを目的としてなされる。チタンの化学発色、レーザー発色は、酸化被膜層による光の反射によって発色しているため、ボタン表面の凹凸の形態や曲面の形態や曲率によって同様の発色方法であっても様々な異なる色を視認させることができる。また、立体的に加工することによって、より複雑なデザインのボタンを作製することができる。
【0027】
(2)研磨工程
研磨工程は、加工工程によって加工されたボタン10のバリ取りや角の面取りを行なうとともに、チタンの初期の酸化皮膜層を除去するための工程である。この工程により、
図6Aに示したように、丸みを帯びたボタン10とすることができるとともに、後の発色加工工程における発色をより明瞭にすることができる。研磨処理には、例えばバレル研磨の他、ゴム砥石を用いてチタンの表面を0.05mm以下の深さで削るスピン研磨加工、ヘアーライン研磨加工、バイブレーション研磨加工、オーバーラップスピン研磨加工等の各種機械的研磨加工も用いることができる。表面に様々な模様の研磨痕を設けることによって、様々な模様を表現することができる。チタンの表面に初期に形成されている酸化皮膜は極めて薄い為(0.1μm〜0.5μm程度)、研磨工程によって酸化皮膜は取り除かれ、金属板の表面に粗面が形成される。これにより、研磨工程を経ていない場合と比較して、金属板は傷がつきにくいという効果を有する。
【0028】
(3)化学研磨工程
化学研磨工程は、研磨工程でバリ取りや面取りされた金属板の表面をさらに滑らかにするための工程である。本化学研磨工程では、表面を溶解することにより、微細な凹凸を除去し、平滑化・光沢化を促進し、光沢のあるボタン10を作製することができる。
【0029】
(4)第1化学発色工程
第1化学発色工程は、
図6Bに示すように、陽極酸化法又は化学着色法により、金属板の表面に様々な色に視認できる酸化皮膜層を形成する。例えば、陽極酸化法では、リン酸と硫酸、リン酸とシュウ酸、又はリン酸と硫酸と過酸化水素の溶液等に、チタンを浸漬させて電圧を印加する。また、化学着色法では、硫酸の溶液等に金属板を浸漬させる。こうした化学発色工程を通じて、ボタン10に色を視認できる酸化皮膜層が形成される。これにより、第1化学発色部30が形成される。勿論化学発色はこれらの方法に限定されるものではない。これにより、ボタン10は、高級感に満ち、かつ重厚な質感を表現することができる。また、ボタン10は、対候性に優れ、錆びにくく、かつ変色しにくいという効果を得ることができる。また、化学発色工程を経ていない場合と比較して、ボタン10は傷がつきにくくかつ汚れにくいという効果を有する。
【0030】
(5)レーザー発色工程
レーザー発色工程は、
図7Aに示すように、ボタン10にファイバーレーザー光を照射して、チタンの表面に酸化皮膜を生成し、その酸化皮膜で反射した光と、酸化皮膜を透過して反射した光の干渉によっていわゆるプリズム効果によって発色させる技術である。酸化皮膜の厚みをコントロールすることにより様々な色を表現することができる。例えば、白色に視認できる表示部を形成するためには、具体的には、ファイバーレーザー光をチタンに照射すると、照射した箇所が凹部に変化し、凹部に隣接した箇所が盛り上がり凸部に変化する。ファイバーレーザー光の照射条件としては、例えば、周波数60000Hz以上100000Hz以下、望ましくは80000Hz、走査速度2000mm/s以上3000mm/s以下、望ましくは2500mm/s、かつ焦点距離が−0.1mm以上0.1mm以下、望ましくは0mm、となるように照射すると、白色に視認できる表示部が得られる。こうしたファイバーレーザーの条件を変更することによって、様々な色を発色させることができる。なお、ファイバーレーザー光を金属板に一回のみ照射しても、極めて細い線の表示部が得られるだけである。所望の文字や模様を表示部として表示するためには、一定の間隔を空けて略平行にファイバーレーザー光を繰り返し照射する必要がある。この時、0.03mm以上0.05mm以下、望ましくは0.04mmを一定の間隔として略平行にファイバーレーザー光を照射するとよい。勿論、これらの加工条件に限定するものではなく、ファイバーレーザー光の照射間隔はこれに限定されるものではない。これにより、研磨工程により形成される粗面と表示部形成工程により形成される表示部との対比により、表示部をはっきりと視認できるようになる。こうしてレーザー発色部40が形成される
【0031】
(6)発色除去工程
発色除去工程は、
図7Bに示すように、前述した(4)第1化学発色工程によって発色された第1化学発色部30及び(5)レーザー発色工程によって発色されたレーザー発色部40の少なくともいずれかの発色部を除去し、除去部13を形成する工程である。これは、次の工程である第2化学発色工程による発色の前処理としての機能を有する。この発色部の除去には、レーザーが使用される。レーザーにより、第1化学発色部30及びレーザー発色部40の少なくともいずれかの酸化被膜全体を除去するレーザー強度を照射することによって、酸化皮膜を除去することができる。この際に除去された面の粗面状態をコントロールすることによって、次の第2化学発色工程による発色の風合いを変化させることができる。
【0032】
(7)第2化学発色工程
第2化学発色工程は、
図2又は
図7Cに示すように、発色除去された部位に新たに化学発色を施し第2化学発色部50を形成する工程である。発色方法自体は、第1化学発色工程と同様であるので説明を省略する。この第2化学発色工程では、レーザー加工された面に化学発色を行なうことから、化学研磨された面に化学発色した場合と比較して異なる風合いの発色をさせることができる。この第2化学発色の色は、第1化学発色とは異なる色であっても、同一の色であってもよい。たとえ、同一の色で化学発色させたとしても、風合いが異なるため、十分に第1化学発色部30と第2化学発色部50は視認により区別して認識されうる。
【0033】
(8)コーティング工程
コーティング工程は、ボタン状の金属板を保護するためのものであり、ガラスコーティングによりコーティング層60が形成される。このようにボタン10にコーティングを行なうことによって、表面にキズがつくことを防止し、より長い寿命を有するボタン10とすることができる。
【0034】
こうして工程を経て作製されたボタン10は、金属製であるため、欠けたり、割れたりする可能性を低減することができ、より長寿命なボタン10とすることができる。また、ファイバーレーザーによる発色は、酸化皮膜によるプリズム効果による発色であるので、洗濯やクリーニングによって発色が薄くなったり、消えたりすることがなく、半永久的に発色効果を発揮することができる。
【0035】
また、第1化学発色部30、レーザー発色部40及び第2化学発色部50と3つの異なる発色領域を有しているため、より表現力が高く、美観性に優れたボタン10とすることができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施の形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0037】
上述した実施形態においては、ファイバーレーザーを使用して加工、発色、発色除去をしていたが、CO
2レーザー、等を使用してもよい。
【0038】
また、上述した実施形態においては、ボタンの表側のみに発色加工を施したが、裏面にも施しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述した実施の形態で示すように、装飾用のボタンとして利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10…ボタン、11…ボタン穴、20…金属板、30…第1化学発色部、40…レーザー発色部、50…第2化学発色部、60…コーティング層