特許第6785167号(P6785167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6785167-磁気記録媒体 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785167
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/70 20060101AFI20201109BHJP
   G11B 5/708 20060101ALI20201109BHJP
   G11B 5/706 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G11B5/70
   G11B5/708
   G11B5/706
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-27032(P2017-27032)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-168178(P2017-168178A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-49757(P2016-49757)
(32)【優先日】2016年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】川上 伸二
(72)【発明者】
【氏名】廣井 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】蒔田 義幸
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−043495(JP,A)
【文献】 特開2014−209403(JP,A)
【文献】 特開2010−231843(JP,A)
【文献】 特開2014−149886(JP,A)
【文献】 米国特許第06162528(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/62 − 5/82
G11B 5/84 − 5/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性支持体と、磁性層とを備える磁気記録媒体であって、
前記磁性層は、磁性粉末と、カーボンブラックと、シリカと、アルミナとを含み、
前記カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径が、10nm以上300nm以下であり、
前記シリカの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上200nm以下であり、
前記アルミナの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上300nm以下であり、
前記磁性層の表面をn−ヘキサンで洗浄した後の前記磁性層の表面のスペーシングをTSA(Tape Spacing Analyzer)で測定したとき、前記スペーシングの値をSpとすると、Sp≦18nmであり、
前記磁性層の表面を原子間力顕微鏡により測定して求めた高さnm以上の突起の中から、前記カーボンブラック、前記シリカ及び前記アルミナによって形成される突起をそれぞれ特定し、特定された前記カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcbとし、特定された前記シリカにより形成される突起の高さの平均値をHsiとし、特定された前記アルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとし、HcbとHsiとの差:Hcb−HsiをdHとした場合、下記関係(1)、(2)及び(3)が成立することを特徴とする磁気記録媒体。
(1)Hsi≦Sp≦Hcb
(2)1nm≦dH≦6nm
(3)Hsi<Hal
【請求項2】
前記磁性粉末が、ε−酸化鉄粉末からなり、Sp≦15nm以下である請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記カーボンブラックの粒子、前記シリカの粒子及び前記アルミナの粒子が、それぞれ略粒状である請求項1又は2に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
9nm≦Spである請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記磁性層の厚さが、30nm以上200nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【請求項6】
前記TSAは、
前記磁性層の表面に透明体を接して対向させ、
前記透明体を介して光を前記透明体側から前記磁性層に照射し、
前記磁性層の表面と前記透明体の対向部に生じる干渉光の強度に基づいて、前記磁性層と前記透明体との間のスペーシングを算出するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量磁気記録媒体に関し、特に電磁変換特性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の一種である磁気テープは、オーディオテープ、ビデオテープ、コンピュータテープ等、様々な用途がある。特に、コンピュータ用のデータバックアップテープの分野では、バックアップの対象となるハードディスクの大容量化に伴い、1巻当たり数TBの記録容量のものが商品化されている。今後、ハードディスクの更なる大容量化に対応するため、バックアップテープの高容量化は不可欠である。
【0003】
上記バックアップテープとして使用される磁気テープは、更なる記録容量の増大に伴って記録波長が短波長化され、記録・再生時の厚さ損失を低減するために、磁性層の薄層化が進んでいる。磁性層の薄層化にあたっては、非磁性支持体上に非磁性層を設け、更に、その上に磁性層を設ける重層構成の磁気記録媒体が採用されている。
【0004】
一方、記録容量の向上のための記録波長の短波長化においては、上記磁性層の薄層化とともに磁性層と磁気ヘッドとの間のスペーシングを低スペーシング化して電磁変換特性を向上させる必要がある。しかしながら、この低スペーシング化により磁性層と磁気ヘッドとの間の摩擦が大きくなって走行性が低下して、磁性層の耐久性が劣化する問題がある。
【0005】
磁性層と磁気ヘッドとの間の摩擦を低減するためには、磁性層表面に突起を設けて磁性層と磁気ヘッドとの真実接触面積を減らすことが有効である。そのため、従来から磁性層の表面に突起を形成して摩擦を下げるための潤滑性フィラーとして、カーボンブラックが用いられているとともに、さまざまな技術が提案されている。
【0006】
例えば、磁性層と磁気テープとの間の摩擦を適当な範囲に維持して磁気テープの走行耐久性を維持するために、磁性層表面の突起密度を規定する技術(特許文献1)、使用するカーボンブラックの粒子径と磁性層の厚さを規定する技術(特許文献2)、カーボンブラックにより形成される突起とアルミナ等の研磨剤により形成される突起との高さの差を規定する技術(特許文献3)、潤滑性フィラーとしてカーボンブラックの代わりにシリカを用いてシリカにより形成される突起とアルミナ等の研磨剤により形成される突起との高さの差を規定する技術(特許文献4)等が、提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−087467号公報
【特許文献2】特開2006−120261号公報
【特許文献3】特開2010−231843号公報
【特許文献4】特開2014−209403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年のストレージメディアの大容量化に伴って、磁気テープにおいては更なる記録密度の向上、低スペーシング化が要求されており、従来の技術では、磁性層と磁気ヘッドとの間の摩擦を適当な範囲に維持して、電磁変換特性と走行耐久性とを両立させることが困難になってきた。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、電磁変換特性に優れ、しかも、走行耐久性に優れる磁気記録媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と、磁性層とを備える磁気記録媒体であって、前記磁性層は、磁性粉末と、カーボンブラックと、シリカと、アルミナとを含み、前記カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径が、10nm以上300nm以下であり、前記シリカの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上200nm以下であり、前記アルミナの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上300nm以下であり、前記磁性層の表面をn−ヘキサンで洗浄した後の前記磁性層の表面のスペーシングをTSA(Tape Spacing Analyzer)で測定したとき、前記スペーシングの値をSpとすると、Sp≦18nmであり、前記磁性層の表面を原子間力顕微鏡により測定して求めた高さ10nm以上の突起の中から、前記カーボンブラック、前記シリカ及び前記アルミナによって形成される突起をそれぞれ特定し、特定された前記カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcbとし、特定された前記シリカにより形成される突起の高さの平均値をHsiとし、特定された前記アルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとし、HcbとHsiとの差:Hcb−HsiをdHとした場合、下記関係(1)、(2)及び(3)が成立することを特徴とする。
(1)Hsi≦Sp≦Hcb
(2)1nm≦dH≦6nm
(3)Hsi<Hal
【発明の効果】
【0011】
本発明の磁気記録媒体によれば、磁性層の表面に形成される突起の種類によりその高さを規定しているので、電磁変換特性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の磁気記録媒体の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の磁気記録媒体の表面の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体と、磁性層とを備えている。また、上記磁性層は、磁性粉末と、カーボンブラックと、シリカと、アルミナとを含み、上記カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径が、10nm以上300nm以下であり、上記シリカの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上200nm以下であり、上記アルミナの一次粒子の平均粒子径が、30nm以上300nm以下である。更に、上記磁性層の表面をn−ヘキサンで洗浄した後の上記磁性層の表面のスペーシングをTSA(Tape Spacing Analyzer)で測定したとき、上記スペーシングの値をSpとすると、Sp≦18nmであり、上記磁性層の表面を原子間力顕微鏡により測定して求めた高さ10nm以上の突起の中から、上記カーボンブラック、上記シリカ及び上記アルミナによって形成される突起をそれぞれ特定し、特定された上記カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcbとし、特定された上記シリカにより形成される突起の高さの平均値をHsiとし、特定された上記アルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとし、HcbとHsiとの差:Hcb−HsiをdHとした場合、下記関係(1)、(2)及び(3)が成立することを特徴とする。
(1)Hsi≦Sp≦Hcb
(2)1nm≦dH≦6nm
(3)Hsi<Hal
【0014】
上記本発明の磁気記録媒体では、磁性層の表面に突起を形成して磁気ヘッドとの摩擦を低下させるための非磁性潤滑性フィラーとしてカーボンブラックとシリカとを併用し、更に磁性層の表面に突起を形成して磁性層に磁気ヘッドに対する研磨性を付与するためのフィラーとしてアルミナを用いることにより、カーボンブラックにより形成した突起により摩擦を低減し、カーボンブラックよりも硬度が高いシリカによって形成した突起により、低減した摩擦を継続して維持することができ、更にアルミナにより形成した突起により磁性層の研磨性を適切な範囲に維持することができる。このため、電磁変換特性が良好で、走行耐久性に優れた磁気記録媒体を提供できる。
【0015】
Spが18nmを超えると、磁気ヘッドと磁性層表面との距離が大きくなりすぎて、記録再生特性が低下する。Spは、15nm以下がより好ましい。一方、Spが小さすぎると、磁性層の表面が平滑になりすぎて、磁気ヘッドと磁性層との接触面積が大きくなり、摩擦係数が増大して、磁性層の走行耐久性が低下するため、Spは9nm以上が好ましい。
【0016】
上記スペーシングの値の測定方法及びその制御方法は特に限定されないが、例えば、特開2012−43495号公報に記載の方法により行うことができる。
【0017】
HcbがSpよりも小さくなると(Hcb<Sp)、カーボンブラックで形成した突起の平均高さがスペーシングより低くなり、カーボンブラックが磁気ヘッドと常には接触しなくなるため、カーボンブラックにより摩擦を低減させる効果が得られない。また、HsiがSpよりも大きくなると(Sp<Hsi)、シリカで形成した突起の平均高さがスペーシングより高くなり、カーボンブラックに比べて摩擦を低減する効果が小さいシリカが磁気ヘッドと接触する機会が増えるため、摩擦を低減させる効果が小さくなる。
【0018】
dHが1nmよりも小さくなると(dH<1nm)、カーボンブラックにより形成される突起の高さと、シリカにより形成される突起の高さとが近くなり、カーボンブラックに比べて摩擦を低減する効果が小さいシリカが磁気ヘッドと接触する機会が増えるため、摩擦を低減させる効果が小さくなる。また、dHが6nmよりも大きくなると(6nm<dH)、硬度が低くて削れ易いカーボンブラックにより形成される突起が、シリカにより形成される突起に比べて高くなりすぎるため、カーボンブラックにより形成される突起が削れて発生する削れ粉により磁気ヘッドが摩耗するアブレシブ磨耗を起こすため、磁気ヘッドの磨耗が増加する。
【0019】
HalがHsi以下となると(Hal≦Hsi)、アルミナが直接磁気ヘッドと接触する機会が少なくなり、磁性層表面の研磨力が低下するため、磁気ヘッドに対する磁性層のクリーニング効果が低下し、磁気ヘッド表面に汚れが付着、堆積し易くなるため、電磁変換特性が低下するとともに走行耐久性も低下する。
【0020】
上記Hcb、Hsi、Halは、原子間力顕微鏡により測定して求めた高さ10nm以上の突起の中から、上記カーボンブラック、上記シリカ及び上記アルミナによって形成される突起をそれぞれ特定し、特定された上記カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcbとし、特定された上記シリカにより形成される突起の高さの平均値をHsiとし、特定された上記アルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとしたものである。
【0021】
上記カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径は、10nm以上300nm以下に設定されている。上記平均粒子径が10nmを下回ると、Spよりも小さくなる可能性があり、その場合にはカーボンブラックが磁気ヘッドと常には接触しなくなるため、カーボンブラックにより摩擦を低減させる効果が得られない。また、上記平均粒子径が300nmを超えると、硬度が低くて削れ易いカーボンブラックにより形成される突起が、シリカにより形成される突起に比べて高くなりすぎるため、カーボンブラックにより形成される突起が削れて発生する削れ粉により磁気ヘッドが摩耗するアブレシブ磨耗を起こすため、磁気ヘッドの磨耗が増加する。
【0022】
上記シリカの一次粒子の平均粒子径は、30nm以上200nm以下に設定されている。上記平均粒子径が30nmを下回ると、カーボンブラックにより形成される突起の高さHcbに比べてシリカにより形成される突起の高さHsiが小さくなり、その結果dHが大きくなりすぎる可能性があり、その場合にはカーボンブラックにより形成した突起により低減した摩擦を、シリカによって形成した突起により継続して維持することができなくなる。また、上記平均粒子径が200nmを超えると、HsiがSpよりも大きくなる可能性があり、その場合にはカーボンブラックに比べて磁気ヘッドの摩擦を低減する効果が小さいシリカが磁気ヘッドと接触する機会が増えるため、磁気ヘッドの摩擦を低減させる効果が小さくなる。
【0023】
上記アルミナの一次粒子の平均粒子径は、30nm以上300nm以下に設定されている。上記平均粒子径が30nmを下回ると、Hsiよりも小さくなる可能性があり、その場合にはアルミナが直接磁気ヘッドと接触する機会が少なくなり、磁性層表面の研磨力が低下するため、磁気ヘッドに対する磁性層のクリーニング効果が低下し、磁気ヘッド表面に汚れが付着、堆積し易くなるため、電磁変換特性が低下して走行耐久性も低下する。また、上記平均粒子径が300nmを超えると、Spよりも大きくなる可能性があり、その場合にはアルミナが磁気ヘッドと接触する機会が増えるため、磁気ヘッドの磨耗が増加する。
【0024】
上記一次粒子の平均粒子径は、日立製作所製の走査型電子顕微鏡(SEM)“S−4800”を用い、加速電圧:2kV、倍率:10000倍、観察条件:U−LA100で、磁性層の表面を撮影した写真より、任意の粒子100個を用いて、次のように決定した。
【0025】
上記粒子が針状の場合は任意の100個の粒子の平均長軸径を、上記粒子が板状の場合は任意の100個の粒子の平均最大板径を、上記粒子が長軸長と短軸長の比が1〜3.5である球状ないし楕円体状の場合は任意の100個の粒子の平均最大差し渡し径をそれぞれ算出して決定した。
【0026】
上記カーボンブラックの粒子、上記シリカの粒子及び上記アルミナの粒子は、それぞれ略粒状であることが好ましい。上記粒子が略粒状であると、形成された突起の形状が均一となり、突起の高さの調整が容易となるからである。
【0027】
上記磁性層の厚さは、30nm以上200nm以下であることが好ましい。上記磁性層の厚さを200nm以下とすることにより、短波長記録においても自己減磁作用による記録再生時の厚み損失を低減することができ、短波長記録特性を向上できる。また、上記磁性層の厚さを30nm以上とすることにより、サーボ信号を記録することができる。
【0028】
上記サーボ信号を磁性層に記録しない場合には、上記磁性層の厚さは、10nm以上50nm以下が好ましい。上記磁性層の厚さを10nm以上50nm以下としても、トンネル型磁気抵抗効果型ヘッド(TMRヘッド)等の高感度の磁気ヘッドを用いれば、データ信号の記録再生が可能である。
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、本発明の磁気記録媒体の一例を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の磁気記録媒体の表面の模式断面図である。
【0030】
図1において、本発明の磁気記録媒体10は、非磁性支持体11と、非磁性支持体11の一方の主面(ここでは、上面)に形成された下塗層12と、下塗層12の非磁性支持体11側とは反対側の主面(ここでは、上面)に形成された磁性層13とを有する磁気テープである。また、非磁性支持体11の下塗層12が形成されていない側の主面(ここでは、下面)には、バックコート層14が形成されている。
【0031】
また、図2において、下塗層の上に形成された磁性層の表面を原子間力顕微鏡により測定して求めた高さ10nm以上の突起の中から、カーボンブラック、シリカ及びアルミナによって形成される突起をそれぞれ特定し、特定されたカーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcbとし、特定されたシリカにより形成される突起の高さの平均値をHsiとし、特定されたアルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとし、HcbとHsiとの差:Hcb−HsiをdHとした場合、下記関係(1)、(2)及び(3)が成立している。
(1)Hsi≦Sp≦Hcb
(2)1nm≦dH≦6nm
(3)Hsi<Hal
【0032】
<磁性層>
磁性層13は、磁性粉末と、カーボンブラックと、シリカと、アルミナと、結合剤とを含むものである。
【0033】
上記磁性粉末としては、例えば、針状の金属鉄系磁性粉末、板状の六方晶フェライト磁性粉末、粒状の窒化鉄系磁性粉末、ε−酸化鉄粉末等を用いることができる。
【0034】
上記金属鉄系磁性粉末としては、α−Fe磁性粉末、Fe−Co系磁性粉末が好ましく、これらの中でもFe−Co系磁性粉末がより好ましい。上記Fe−Co系磁性粉末の保磁力は、160〜320kA/mが好ましく、200〜300kA/mがより好ましい。また、上記Fe−Co系磁性粉末の飽和磁化量は、60〜200A・m2/kgが好ましく、80〜180A・m2/kgがより好ましい。
【0035】
上記六方晶フェライト磁性粉末としては、六方晶バリウムフェライト磁性粉末が好ましい。上記六方晶フェライト磁性粉末は、所定の元素以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、B、Ge、Nb等の原子を含んでいてもよい。上記六方晶フェライト磁性粉末の保磁力は、120〜320kA/mが好ましく、飽和磁化量は、40〜60A・m2/kgが好ましい。
【0036】
上記窒化鉄系磁性粉末としては、例えば、特開2000−277311号公報に記載されているものを好適に用いることができる。上記窒化鉄系磁性粉末としては、鉄に対して窒素を1〜20原子%含有する窒化鉄系磁性粉末が好ましい。上記窒化鉄系磁性粉末は、鉄の一部が他の遷移金属元素で置換されていてもよい。このような他の遷移金属元素としては、例えば、Mn、Zn、Ni、Cu、Co等が挙げられる。これらの中でも、Co及びNiが好ましく、特にCoは飽和磁化を最も向上することができるので好ましい。上記窒化鉄系磁性粉末の保磁力は、160〜320kA/mが好ましく、200〜300kA/mがより好ましい。上記窒化鉄系磁性粉末の飽和磁化量は、60〜200A・m2/kgが好ましく、80〜180A・m2/kgがより好ましい。
【0037】
上記ε−酸化鉄粉末は、その平均粒子径が10nm以下であっても強磁性の特性を有するε−Fe23相の単相で形成された酸化鉄ナノ磁性粒子粉である。一方、通常知られているFe23の結晶構造は、ガンマ(γ)相又はアルファ(α)相で形成されているが、ε−Fe23相はこれらの中間に存在する結晶構造であり、結晶異方性に基づく磁気異方性を示すため、粒子径を10nm以下に小さくしても高保磁力を示すことが特徴である。また、上記ε−酸化鉄粉末は、高保磁力を維持することができれば、ε−Fe23相のFeサイトの一部を他の3価の金属元素で置換してもよい。
【0038】
また、本発明において、ε−酸化鉄と、それ以外のγ−酸化鉄及びα−酸化鉄とは、X線回折によりそれらの結晶構造を解析することにより、識別できる。
【0039】
また、上記磁性粉末の平均粒子径は、5nm以上40nm以下が好ましく、10nm以上35nm以下がより好ましい。上記平均粒子径が5nm以上であれば、分散性に優れた磁性塗料を調製することができ、上記平均粒子径が40nm以下であれば、粒子ノイズを低減することができる。特に、上記磁性粉末が、上記ε−酸化鉄粉末の場合には、その平均粒子径は、8nm以上20nm以下であることが好ましい。
【0040】
本発明において磁性粉末の平均粒子径は、磁性粉末の粒子100個を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、上記粒子が針状の場合は100個の粒子の平均長軸径を、上記粒子が板状の場合は100個の粒子の平均最大板径を、上記粒子が長軸長と短軸長の比が1〜3.5である粒状ないし楕円体状の場合は100個の粒子の平均最大差し渡し径をそれぞれ算出して決定する。
【0041】
上記カーボンブラックは、磁気ヘッドやガイドロール等の接触部分との摩擦を低減する。上記カーボンブラックとしては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等が挙げられる。また、必要に応じて、平均粒子径の異なるカーボンブラックを2種以上用いてもよい。上記カーボンブラックの含有量は、磁性粉末100質量部に対して、好ましくは0.2〜5質量部であり、より好ましくは0.5〜4質量部である。
【0042】
上記シリカは、上記カーボンブラックにより形成された突起の補強剤として機能するものであり、上記カーボンブラックにより低減した磁気ヘッドの摩耗を継続して維持する。上記アルミナは、研磨剤として機能し、磁性層の研磨性を適切に維持する。上記シリカの含有量は、磁性粉末100質量部に対して、好ましくは1〜4質量部であり、より好ましくは2〜3質量部であり、上記アルミナの含有量は、磁性粉末100質量部に対して、好ましくは4〜12質量部であり、より好ましくは6〜10質量部である。
【0043】
磁性層13に含まれる結合剤としては、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル−水酸基含有アルキルアクリレート共重合樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂等が挙げられる。
【0044】
磁性層13中の上記結合剤の含有量は、磁性粉末100質量部に対して、好ましくは7〜50質量部であり、より好ましく10〜35質量部である。
【0045】
また、上記結合剤とともに、結合剤中に含まれる官能基等と結合し架橋構造を形成する熱硬化性の架橋剤を併用することが好ましい。上記架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;イソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等の水酸基を複数個有する化合物との反応生成物;イソシアネート化合物の縮合生成物等の各種のポリイソシアネートが挙げられる。上記架橋剤の含有量は、結合剤100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部である。
【0046】
磁性層13は、上述した各成分を含有していれば、潤滑剤、分散剤等の添加剤を更に含有してもよい。特に、耐久性の観点から潤滑剤が好ましく用いられる。
【0047】
上記潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドが挙げられる。上記脂肪酸は、直鎖型、分岐型、シス・トランス異性体のいずれであってもよいが、潤滑性能に優れる直鎖型が好ましい。このような脂肪酸としては、具体的には、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。上記脂肪酸エステルとしては、具体的には、例えば、オレイン酸n−ブチル、オレイン酸ヘキシル、オレイン酸n−オクチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸オレイル、ラウリン酸n−ブチル、ラウリン酸ヘプチル、ミリスチン酸n−ブチル、オレイン酸n−ブトキシエチル、トリメチロールプロパントリオレエート、ステアリン酸n−ブチル、ステアリン酸s−ブチル、ステアリン酸イソアミル、ステアリン酸ブチルセロソルブ等が挙げられる。上記脂肪酸アミドとしては、例えば、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。これらの潤滑剤は、単独で使用してもよく、また、複数を併用してもよい。
【0048】
これらの中でも、脂肪酸エステルと脂肪酸アミドとを併用することが好ましい。特に、磁性層13中の磁性粉末、研磨剤等の全粉末の総量100質量部に対して、脂肪酸エステルを0.2〜3質量部、脂肪酸アミドを0.5〜5質量部使用することが好ましい。上記脂肪酸エステルの含有量が0.2質量部未満であると、摩擦係数低減効果が小さく、3質量部を超えると、磁性層13がヘッドに貼り付く等の副作用を生じる虞があるからである。また、上記脂肪酸アミドの含有量が0.5質量部未満であると、磁気ヘッドと磁性層13とが相互接触することにより生じる焼き付きを防止する効果が小さくなるからであり、5質量部を超えると脂肪酸アミドがブリードアウトしてしまう虞があるからである。
【0049】
また、図1には示していないが、磁性層13の摩擦係数を低減し、磁性層13の耐久性をより向上させるため、磁性層13の上には、上記潤滑剤を含む潤滑剤層を設けることができる。上記潤滑剤層は、上記潤滑剤を有機溶媒に溶解させて作製した潤滑剤溶液を、磁性層13の表面にトップコートすれば形成できる。
【0050】
<下塗層>
磁性層13の下には、潤滑剤の保持機能と、外部応力(例えば、磁気ヘッドによる加圧力)の緩衝機能とを有する下塗層12を設けることが好ましい。また、下塗層12を設けることにより、磁気記録媒体10の強度が高まるため、磁気記録媒体10を形成する際に、カレンダ処理を可能とし、磁性層13の充填性を向上できる。下塗層12は、非磁性粉末と結合剤と潤滑剤とを含むものである。
【0051】
下塗層12に含まれる非磁性粉末としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等が挙げられ、通常は、カーボンブラックが単独で用いられるか、カーボンブラックと、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム等の他の非磁性粉末とが混合して用いられる。厚さムラの少ない塗膜を形成して平滑な下塗層12を形成するためには、粒度分布がシャープな非磁性粉末を用いることが好ましい。上記非磁性粉末の平均粒子径は、下塗層12の均一性、表面平滑性、剛性の確保、及び導電性確保の観点から、例えば10〜1000nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましい。
【0052】
下塗層12に含まれる非磁性粉末の粒子形状は、球状、板状、針状、紡錘状のいずれでもあってもよい。針状又は紡錘状の非磁性粉末の平均粒子径は、平均長軸径で10〜300nmが好ましく、平均短軸径で5〜200nmが好ましい。球状の非磁性粉末の平均粒子径は、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましい。板状の非磁性粉末の平均粒子径は、最も大きな板径で10〜200nmが好ましい。更に、平滑且つ厚みムラの少ない下塗層12を形成するためにも、シャープな粒度分布を有する非磁性粉末が好ましく用いられる。
【0053】
下塗層12に含まれる結合剤及び潤滑剤としては、前述の磁性層13に用いられる結合剤及び潤滑剤と同様のものが使用できる。上記結合剤の含有量は、上記非磁性粉末100質量部に対して、好ましくは7〜50質量部であり、より好ましくは10〜35質量部である。また、上記潤滑剤の含有量は、上記非磁性粉末100質量部に対して、好ましくは2〜6質量部であり、より好ましくは2.5〜4質量部である。下塗層12に用いる潤滑剤としては、磁性層表面への移動のしやすさの点から、脂肪酸又は脂肪酸エステルを単独で用いるか、或いは両者を併用することが好ましい。
【0054】
下塗層12にサーボ信号を記録する場合には、下塗層12に磁性粉末を含有させる。上記磁性粉末としては、例えば、前述の磁性層13に用いられる針状の金属鉄系磁性粉末、板状の六方晶フェライト磁性粉末、粒状の窒化鉄系磁性粉末、ε−酸化鉄粉末等を用いることができる。
【0055】
下塗層12の厚さは、好ましくは0.1〜3μmであり、より好ましくは0.3〜2μmである。この厚さ範囲とすることにより、磁気記録媒体10の全厚を不要に大きくせずに、潤滑剤の保持機能と、外部応力の緩衝機能を維持できる。
【0056】
<非磁性支持体>
非磁性支持体11としては、従来から使用されている磁気記録媒体用の非磁性支持体を使用できる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド等からなるフィルム等が挙げられる。
【0057】
非磁性支持体11の厚さは、用途によって異なるが、好ましくは1.5〜11μmであり、より好ましくは2〜7μmである。非磁性支持体11の厚さが1.5μm以上であれば、成膜性が向上するとともに、高い強度を得ることができる。一方、非磁性支持体11の厚さが11μm以下であれば、全厚が不要に厚くならず、例えば、磁気テープの場合1巻当たりの記録容量を大きくすることができる。
【0058】
非磁性支持体11の長手方向のヤング率は、好ましくは5.8GPa以上であり、より好ましくは7.1GPa以上である。非磁性支持体11の長手方向のヤング率が5.8GPa以上であれば、走行性を向上させることができる。また、ヘリキャルスキャン方式に用いられる磁気記録媒体では、長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は、好ましくは0.6〜0.8であり、より好ましく0.65〜0.75であり、更に好ましくは0.7である。上記比の範囲内であれば、磁気ヘッドのトラックの入側から出側間の出力のばらつき(フラットネス)を抑えることができる。リニアレコーディング方式に用いられる磁気記録媒体では、長手方向のヤング率(MD)と幅方向のヤング率(TD)との比(MD/TD)は、好ましくは0.7〜1.3である。
【0059】
<バックコート層>
非磁性支持体11の下塗層12が形成されている主面とは反対側の主面(ここでは、下面)には、走行性の向上等を目的としてバックコート層14を設けることが好ましい。バックコート層14の厚さは、好ましくは0.2〜0.8μmであり、より好ましくは0.3〜0.8μmである。バックコート層14の厚さが薄すぎると、走行性向上効果が不十分となり、厚すぎると磁気記録媒体10の全厚が厚くなり、磁気テープ1巻当たりの記録容量が小さくなる。
【0060】
バックコート層14は、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックを含有することが好ましい。通常、粒子径が相対的に異なる、小粒径カーボンブラックと大粒径カーボンブラックとが併用される。併用する理由は、走行性向上効果が大きくなるからである。
【0061】
また、バックコート層14は結合剤を含み、結合剤としては、磁性層13及び下塗層12に用いられる結合剤と同様のものを用いることができる。これら中でも、摩擦係数を低減させ磁気ヘッドの走行性を向上させるためには、セルロース系樹脂とポリウレタン系樹脂とを併用することが好ましい。
【0062】
バックコート層14は、強度向上を目的として、酸化鉄、アルミナ等を更に含有することが好ましい。
【0063】
次に、本発明の磁気記録媒体の製造方法について説明する。本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、各層形成成分と溶媒とを混合して、磁性層形成用塗料、下塗層形成用塗料及びバックコート層形成用塗料をそれぞれ作製し、非磁性支持体の片面に下塗層形成塗料を塗布して乾燥させて下塗層を形成した後に、その下塗層の上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させる逐次重層塗布方式で磁性層を形成し、更に非磁性支持体の他方の片面にバックコート層形成用塗料を塗布して乾燥してバックコート層を形成する。その後に全体をカレンダ処理して磁気記録媒体を得る。
【0064】
また、上記逐次重層塗布方式に代えて、非磁性支持体の片面に下塗層形成用塗料を塗布した後、下塗層形成用塗料が乾燥する前に、下塗層形成用塗料の上に磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させる同時重層塗布方式を採用することもできる。
【0065】
上記各塗料の塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布等を用いることができる。
【0066】
カーボンブラックは、硬度が低く、弾性変形しやすいために、カレンダ処理過程において荷重が加わった時にカーボンブラックによって形成された突起は弾性変形するが、カレンダ荷重が除去されたときにほぼ元に戻る。このため、下塗層形成塗料を塗布して乾燥させて下塗層を形成した後に、磁性層形成用塗料を塗布して乾燥させて磁性層を形成する逐次重層塗布方式の場合、下塗層が予め乾燥されて硬化した後に磁性層を形成してカレンダ処理を行うため、磁性層に含まれるカーボンブラックが、硬化した下塗層に混入しにくくなる。従って、下塗層が硬化する前に磁性層形成用塗料を塗布するためにカーボンブラックが下塗層に混入しやすくなっている同時重層塗布方式に比べ、逐次重層塗布方式ではカーボンブラックにより形成される突起は、カレンダ条件によって突起の高さが変化し難い。
【0067】
一方、カーボンブラックの粒子径及び分散時間を制御することによって、カーボンブラックによって形成される突起の高さをコントロールすることができる。
【0068】
また、シリカ及びアルミナは、硬度が高く、弾性変形しにくいため、カレンダ処理過程において荷重が加わった時に、突起部分が下塗層にめり込むように塑性変形するため、荷重を除去しても突起の高さは完全には元に戻らない。このためシリカ及びアルミナによって形成される突起は、線荷重、ロール温度等のカレンダ条件によってコントロールすることができる。更に、シリカ及びアルミナによって形成される突起の高さは、当然、粒子径や分散時間によってもコントロールすることができる。
【0069】
カーボンブラック及びアルミナの粒子は、凝集体となっているものが多いため、カーボンブラックやアルミナの分散塗料を磁性粉末の分散塗料に配合する場合、配合時期を調整することで突起を形成する凝集体の粒子径を制御することもできる。一般にカーボンブラックやアルミナの分散塗料を配合する時期が塗布の工程に近いほど分散時間が短くなるため突起を形成する凝集体の粒子径が大きくなる。一方、シリカは、最初からほとんどが一次粒子で存在しているので、分散時間による粒子径の変化は小さい。
【0070】
従って、カーボンブラックの粒子径及びカーボンブラックの分散時間で制御することによって、カーボンブラックによって形成される突起の高さをコントロールし、シリカ及びアルミナの粒子径、分散時間及びカレンダ条件により、シリカ及びアルミナによって形成される突起の高さを制御して、TSAで求めた磁性層表面のスペーシングの値Spが、磁気テープをn−ヘキサンで洗浄した後に、18nm以下であり、カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値をHcb、シリカにより形成される突起の高さの平均値をHsi及びアルミナにより形成される突起の高さの平均値をHalとした場合、下記関係(1)〜(3)が成立する磁気記録媒体を得ることができる。
(1)Hsi≦Sp≦Hcb
(2)1nm≦dH≦6nm
(3)Hsi<Hal
【0071】
これにより、カーボンブラックで形成される突起によって摩擦を低減することができ、且つ、シリカで形成される突起によって摩擦を継続して安定させることができ、また、アルミナによって形成した突起によって磁性層の研磨性を適切な範囲に維持することができるために、走行耐久性及び電磁変換特性が優れた磁気記録媒体が得られる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において、「部」とあるのは「質量部」を意味する。
【0073】
(実施例1)
[磁性塗料の調製]
表1に示す磁性塗料成分(1)を回分式ニーダで混練して混練物を調製した。次に、得られた混練物と、表2に示す磁性塗料成分(2)とをディスパを用いて攪拌して混合液を調製した。次に、得られた混合液をサンドミルで40分間分散処理した後、平均粒子径75nmのカーボンブラックを4部加えてサンドミルで60分間分散処理し、その後、表3に示す磁性塗料成分(3)を加えて分散液を調製した。次に、得られた分散液と、表4に示す磁性塗料成分(4)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、磁性塗料を調製した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
[下塗塗料の調製]
表5に示す下塗塗料成分(1)を回分式ニーダで混練することにより混練物を調製した。次に、得られた混練物と、表6に示す下塗塗料成分(2)とをディスパを用いて撹拌して、混合液を調製した。次に、得られた混合液をサンドミルで100分間分散して分散液を調製した後、この分散液と、表7に示す下塗塗料成分(3)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、下塗塗料を調製した。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
[バックコート層用塗料の調製]
表8に示すバックコート層用塗料成分を混合した混合液を、サンドミルで50分間分散して分散液を調製した。得られた分散液にポリイソシアネートを15部加えて撹拌し、これをフィルタでろ過して、バックコート層用塗料を調製した。
【0083】
【表8】
【0084】
[評価用磁気テープの作製]
非磁性支持体(ポリエチレンナフタレートフィルム、厚さ:5μm)の上に、上記下塗塗料をカレンダ処理後の下塗層の厚さが1.1μmとなるように塗布し、100℃で乾燥して下塗層を形成した。次に、上記下塗層の上に、上記磁性塗料をカレンダ処理後の磁性層の厚さが60nmとなるように塗布し、100℃で乾燥して磁性層を形成した。その後、ソレノイド磁石を用いて配向磁界(250kA/m)を印加しながら、面内配向処理を行った。
【0085】
次に、上記バックコート層用塗料を、非磁性支持体の上記下塗層及び上記磁性層が形成された面とは反対側の面上に、カレンダ処理後の厚さが0.5μmとなるように塗布し、100℃で乾燥してバックコート層を形成した。
【0086】
その後、上記非磁性支持体の上面側に下塗層及び磁性層が形成され、下面側にバックコート層が形成された原反ロールを、7段の金属ロールを有するカレンダ装置で温度100℃、線圧300kg/cmでカレンダ処理した。
【0087】
最後に、得られた原反ロールを60℃で48時間硬化処理し、磁気シートを作製した。この磁気シートを1/2インチ幅に裁断して評価用磁気テープを作製した。
【0088】
(実施例2)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を110nmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0089】
(実施例3)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を38nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を70nmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0090】
(実施例4)
磁性塗料の調製において、カーボンブラックの分散時間を100分に変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0091】
(実施例5)
磁性塗料の調製において、カーボンブラックの分散時間を10分に変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0092】
(実施例6)
磁性塗料の調製において、カーボンブラックの平均粒子径を38nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0093】
(実施例7)
表9に示す磁性塗料成分(1)を回分式ニーダで混練して混練物を調製した。次に、得られた混練物をサンドミルで20分間分散処理した後に、平均粒子径75nmのカーボンブラックを4部加えてサンドミルで230分間分散処理し、その後、表10に示す磁性塗料成分(2)を加えて分散液を調製した。次に、得られた分散液と、前述の表4に示す磁性塗料成分(4)とをディスパを用いて撹拌し、これをフィルタでろ過して、磁性塗料を調製した。この磁性塗料を用いた以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0094】
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
(実施例8)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更し、磁性塗料の調製において、サンドミルの分散処理開始から60分後に上記カーボンブラックを4部加え、カーボンブラックの分散時間を190分に変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0097】
(実施例9)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を38nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を70nmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0098】
(実施例10)
評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0099】
(実施例11)
評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0100】
(実施例12)
磁性塗料の調製において、サンドミルの分散処理開始から60分後にカーボンブラックを4部加え、カーボンブラックの分散時間を19分に変更し、磁性塗料に加える成分において、コロイダルシリカの平均粒子径を90nmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0101】
(比較例1)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を110nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0102】
(比較例2)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0103】
(比較例3)
磁性塗料の調製において、カーボンブラックの分散時間を10分に変更し、磁性塗料に加える成分において、コロイダルシリカの平均粒子径を110nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0104】
(比較例4)
磁性塗料に加える成分において、粒状アルミナ粒子の平均粒子径を46nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0105】
(比較例5)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を38nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧250kg/cmに変更した以外は、実施例1と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0106】
(比較例6)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0107】
(比較例7)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を280nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を70nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0108】
(比較例8)
磁性塗料に加える成分において、カーボンブラックの平均粒子径を38nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0109】
(比較例9)
磁性塗料に加える成分において、アルミナの平均粒子径を70nmに変更し、コロイダルシリカの平均粒子径を70nmに変更し、評価用磁気テープの作製において、カレンダ処理条件を温度100℃、線圧350kg/cmに変更した以外は、実施例7と同様にして評価用磁気テープを作製した。
【0110】
次に、作製した評価用磁気テープを用いて以下の測定を行った。
【0111】
<磁性層のスペーシング>
Micro Physics社製のTSA(Tape Spacing Analyzer)を用いて、磁性層の表面をn−ヘキサンで洗浄した後のスペーシングSpを測定した。
【0112】
具体的には、ウレタン製の半球で磁性層をガラス板に押し付ける圧力は0.5atm(5.05×104N/m)とした。この状態でストロボスコープから白色光を、ガラス板を通して評価用磁気テープの磁性層側表面の一定領域(240000〜280000μm2)に照射し、そこからの反射光を、IFフィルタ(633nm)及びIFフィルタ(546nm)を通してCCDで受光することで、この領域の凹凸で生じた干渉縞画像を得た。
【0113】
次に、この画像を66000ポイントに分割して各ポイントのガラス板から磁性層表面までの距離を求めこれをヒストグラム(度数分布曲線)とし、更にローパスフィルタ(LPF)処理によって滑らかな曲線として、そのピーク位置のガラス板から磁性層表面までの距離をスペーシングSpとした。
【0114】
また、上記スペーシングの計算に用いた磁性層表面の光学定数(位相、反射率)は、大塚電子社製の反射分光膜厚計“FE−3000”を用いて測定し、波長546nm付近の値を用いた。
【0115】
n−ヘキサンによる洗浄は、評価用磁気テープをn−ヘキサンに浸漬して室温で30分間超音波洗浄することにより行った。
【0116】
<磁性層表面の突起高さの平均値>
Veeco社製の原子間力顕微鏡“Nanoman−VSシステム”を用いて、磁性層の表面形状を下記測定条件及び解析条件で測定した。
【0117】
(1)測定条件
測定モード:Contact、カンチレバー:PNP−DB−B、測定視野:15μm×10μm、分解能:3072*2048、オフライン処理:Flatten(order2)
(2)解析条件(Nanoscope Analysis−Particle Analysisによる突起の特定条件)
解析エリア:7μm×14μm、Threshold Height:10nm、ノイズ除去(Neighberhood Size:3、Number Pixels Off:1で、Erode2回処理後、Dilate2回処理)
【0118】
次に、測定したエリアの外側4隅に原子間力顕微鏡のナノマニュピレーターを用いてマーキングを行った。次に、4隅に付けられたマークを基準にして、原子間力顕微鏡による測定と同じ測定視野を特定し、日立製作所製の走査型電子顕微鏡“S−4800”を用いて、倍率:9000倍、加速電圧:2kV、観察条件:U−LA100で磁性層表面を観察した。
【0119】
具体的には、原子間力顕微鏡による測定結果から、10nm以上の高さの突起を検出し、その同じ領域を走査型電子顕微鏡により求めた元素コントラスト像から突起を形成しているフィラーの種類を特定した。例えば、元素コントラスト像ではカーボンブラックは黒、アルミナはグレーとなり、コントラストの差から識別できる。シリカはアルミナと同様に元素コントラスト像ではグレーであるが、アルミナが歪な形状をした粒子であるのに対して、シリカは滑らかな曲面を持つ球状粒子であるため容易に特定することができる。
【0120】
上記の測定を7μm×14μmの範囲で3視野行い、3視野全てについてカーボンブラック、シリカ、アルミナにより形成された突起をそれぞれ特定し、3視野全てのカーボンブラック、シリカ、アルミナの突起高さを各々平均して、カーボンブラックにより形成される突起の高さの平均値:Hcb、シリカにより形成される突起の高さの平均値:Hsi、アルミナにより形成される突起の高さの平均値:Halを求め、HcbとHsiとの差:Hcb−HsiをdHとして算出した。
【0121】
ここで、各材料の突起と磁気ヘッドとの接触を考えた場合、磁気ヘッドに対する突起の接触面積は小さく、多くの突起が磁気ヘッドに接触する状態となる。このことから、カーボンブラック、シリカ、アルミナの各突起の高さは1点の値が外れている場合でも、各突起の高さの平均値が、前述の関係(1)、(2)及び(3)を満足すれば、本発明の効果を奏する。
【0122】
次に、作製した評価用磁気テープを用いて以下の評価を行った。
【0123】
<出力特性>
Micro Physics社製のループテスター(動的TSA装置)を用い、これに書込みトラック幅11μm、読出しトラック幅3.8μmの誘導型/GMR複合ヘッドを取り付け、テープ速度1.5m/secで、記録波長200nmの信号を評価用磁気テープに記録し、再生した信号を市販のMRヘッド用Readアンプで増幅した後、キーサイト・テクノロジー社製のスペクトラムアナライザー“N9020A”を用いて信号の基本波成分出力(S)と、その2倍の周波数までの積分ノイズ(N)とを測定した。そして、IBM LTO6テープのS/N値を基準(0dB)として、その相対値で出力特性を評価した。
【0124】
金属鉄系磁性粉末(Fe粉)とε−酸化鉄粉末(ε−Fe23)は、粒子サイズが異なるために粒子性ノイズが異なり、S/N値の目標値が異なってくる。粒子サイズの大きいFe粉の出力特性の目標値は−1.5dB以上であり、粒子サイズが小さいε−Fe23の出力特性の目標値は1.0dB以上である。
【0125】
<摩擦係数>
実ドライブにおける繰り返し走行耐久性を評価するために、ステンレス鋼製の丸棒を用いて、磁気テープの磁性層の摩擦係数を、繰り返し800パスまで測定した。この摩擦係数が大きくなると、テープ摺動によって走行不良を起こしやすくなり、繰り返し走行耐久性が劣化する。
【0126】
具体的には、直径6mmのステンレス鋼製の丸棒に、評価用磁気テープの磁性層側を90°でラップさせ、評価用磁気テープの先端に63.36gの荷重をかけて1200mm/minの速度で70mm摺動させ、11パス目及び800パス目の摺動中の荷重をロードセルで検出して測定荷重とし、下記式で摩擦係数Mを算出した。
摩擦係数M=In〔測定荷重(g)/63.36(g)〕/0.5π
【0127】
<角柱摩耗量>
実ドライブにおける新品磁気テープ連続走行耐久性(GTT走行耐久性)を評価するために、磁気ヘッドの記録再生シールドに用いられている材料であるパーマロイで角柱を作製して摩耗量を測定した。このパーマロイ角柱の摩耗量が大きいと、テープ摺動による磁気ヘッドの摩耗が大きくなり、新品磁気テープ連続走行耐久性が劣化する。
【0128】
具体的には、4mm×4mmの正方形断面形状を有し、高さ20mmのパーマロイ角柱の長辺の一つの角に、評価用磁気テープの磁性層側が摺動するように取り付け、下記条件で繰り返し走行させた。
テープ速度:3.0m/sec
テープ張力:1.0N
テープ走行距離:580m
走行回数:50往復(100パス)
【0129】
以上の結果を表11及び表12に示す。
【0130】
【表11】
【0131】
【表12】
【0132】
表11及び表12から、実施例1〜6及び実施例7〜12は、出力特性及び走行耐久性の全てで優れていることが分かる。
【0133】
一方、比較例1は実施例2に比べてカレンダ条件が弱くなり、カーボンブラックは硬度が低く弾性変形しやすくHcbの値は変化しなかったが、シリカやアルミナは硬度が高く塑性変形が小さくなるため、Hsi、Halは大きくなり、特にスペーシングSpが19nmと大きくなった。その結果、摩擦係数は全て良好であったが、出力特性が低下した。
【0134】
比較例2は比較例1に比べてシリカの平均粒子径が小さいため、Hsiが小さくなったが、Hcbは変化がないため、dH(=Hcb−Hsi)が7nmと大きくなった。その結果、カーボンブラックによる摩擦係数(11pass)は良好であったが、摩擦係数(11pass)と摩擦係数(800pass)の変化が大きかった。これはカーボンブラックにより形成された突起の摺動による摩耗が大きいことを示しており、カーボンブラックにより形成された突起が削れて発生する削れ粉によるアブレシブ摩耗のため、パーマロイの角柱摩耗量が大きくなり過ぎる結果となった。この結果より、新品磁気テープ連続走行耐久性が劣化すると予測される。
【0135】
比較例3は実施例5に比べてシリカの平均粒子径が大きいためHsiが大きくなり、dH(=Hcb−Hsi)が0nmと小さくなった。その結果、カーボンブラックによる摩擦を低減する効果が低下し、摩擦係数(800pass)が大きくなり過ぎて、繰り返し走行耐久性が劣化する。
【0136】
比較例4は実施例1に比べてアルミナの平均粒子径が小さく、カレンダ条件が強いため、Hcb、Hsi、Hal、Spが共に小さくなり、特にHalが著しく小さくなった。その結果、出力特性は向上した。一方、磁気テープの研磨力が低下したため角柱摩耗量が小さくなり過ぎて、テープのクリーニング効果が小さくなってヘッド汚れが付きやすくなり、摩擦係数(800pass)が上昇して、繰り返し走行耐久性が劣化する。
【0137】
比較例5は実施例6に比べてカレンダ条件が弱いため、Hcb、Hsi、Hal、Spが共に大きくなった。この結果、摩擦係数(11pass)及び摩擦係数(800pass)は良好であるが、出力特性が低下した。
【0138】
比較例6は、平均粒子径の大きいカーボンブラックを使用しているが、実施例8に比べて分散時間が短いために磁性層表面の平滑性が悪くなり、Hcb、Hsi、Halが大きくなり、Spが17nmと大きくなった。その結果、摩擦係数は良好であるが、出力特性が低下した。
【0139】
比較例7は比較例6に比べてシリカの平均粒子径が小さいため、Hsiが小さくなり、dH(=Hcb−Hsi)が7nmと大きくなった。その結果、摩擦係数(11pass)は良好であるが、摩擦係数(11pass)と摩擦係数(800pass)の変化が大きくなり、比較例2と同様に、カーボンブラックにより形成された突起が削れて発生する削れ粉によるアブレシブ摩耗のため、パーマロイの角柱摩耗量が大きくなり過ぎる結果となった。この結果より、新品磁気テープ連続走行耐久性が劣化すると予測される。
【0140】
比較例8は実施例9に比べてシリカの平均粒子径が大きいためHsiが大きくなり、dH(=Hcb−Hsi)が0nmと小さくなった。その結果、カーボンブラックによる摩擦を低減する効果が低下し、摩擦係数(800pass)が大きくなり過ぎて繰り返し走行耐久性が劣化する。
【0141】
比較例9は、アルミナの平均粒子径が小さく、カレンダ条件が強いため、Hsi、Halが共に小さくなり、特にHalが著しく小さくなり、Hsiと同じ値になった。この結果、磁気テープの研磨力が低下したため角柱摩耗量が小さくなり過ぎて、テープのクリーニング効果が小さくなってヘッド汚れが付きやすくなり、繰り返し走行耐久性が劣化する。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の磁気記録媒体は、電磁変換特性及び走行耐久性に優れた磁気記録媒体として利用可能である。
【符号の説明】
【0143】
10 磁気記録媒体(磁気テープ)
11 非磁性支持体
12 下塗層
13 磁性層
14 バックコート層
図1
図2