(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄骨構造又は木質構造の建物に使用される柱材、梁材、又は繋ぎ材等の第1構造材と、柱材、梁材、繋ぎ材、基礎、又は土台等の第2構造材と、を接合する接合金具であって、
前記第1構造材に接合される第1接合部と、
前記第2構造材に接合される第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する連結部と、を備え、
前記第1接合部、前記第2接合部、及び前記連結部は、鋳造により一体形成され、
前記第1構造材は、閉鎖断面の形鋼からなり、
前記第1接合部は、前記第1構造材である閉鎖断面の形鋼の内周部が挿入されてその端部が裏当てされる裏当て部を備え、該裏当て部は鋳造により前記第1接合部に隆起状に一体形成され、
前記裏当て部は、前記第1構造材の内周部が挿入される先端部から、基端部に向かって拡径する傾斜面を有しており、該裏当て部の傾斜面が、溶接時の開先部となり、
前記裏当て部は、先端部側に設けられる第1傾斜面と、基端部側に設けられ、傾斜角度が、前記第1傾斜面の傾斜角度よりも大きくなるように形成される第2傾斜面と、を有してなる接合金具。
前記連結部は、十字形状の交差部の外形が滑らかに湾曲するアール形状となるとともに、前記交差部から十字状に延びる補強リブ部の先端部に向かって滑らかに傾斜する先細り形状となるように形成されてなる請求項2に記載の接合金具。
前記第1構造材が建物の柱材からなり、前記第2構造材が柱材の基礎となる基礎又は土台からなり、柱材は、接合金具の第1接合部であるトッププレートに接合され、基礎又は土台は、接合金具の第2接合部であるベースプレートに接合され、トッププレートとベースプレートは連結部に、鋳造により一体形成されてなる請求項1に記載の接合金具。
柱材は、筒状乃至環状の閉鎖断面の形鋼からなり、該筒状乃至環状の閉鎖断面の形鋼からなる柱材の下端部が、トッププレートに備える裏当て部に裏当てされ、これによって該形鋼製柱材の下端部と裏当て部との間に開先部が形成され、該開先部に突き合わせ溶接によって溶接部材が充填されてなる請求項4に記載の接合金具。
鉄骨構造又は木質構造の建物に使用される柱材、梁材、又は繋ぎ材等の第1構造材と、柱材、梁材、繋ぎ材、基礎、又は土台等の第2構造材と、を接合する接合金具であって、
前記第1構造材に接合される第1接合部と、
前記第2構造材に接合される第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部とを連結する連結部と、を備え、
前記第1接合部、前記第2接合部、及び前記連結部は、鋳造により一体形成され、
前記連結部は、横断面が十字形状に鋳造により一体形成され、十字形状の交差部の外形が滑らかに湾曲するアール形状となるとともに、前記交差部から十字状に延びる補強リブ部の先端部に向かって滑らかに傾斜する先細り形状となるように形成されてなる接合金具。
前記第1構造材が建物の柱材からなり、前記第2構造材が柱材の基礎となる基礎又は土台からなり、柱材は、接合金具の第1接合部であるトッププレートに接合され、基礎又は土台は接合金具の第2接合部であるベースプレートに接合され、トッププレートとベースプレートは連結部に鋳造により一体形成されてなる請求項7、8又は9に記載の接合金具。
木材からなる柱材に形成されるスリットに、前記トッププレートに一体形成される平板状鋼が挿入係合され、該木材からなる柱材とそのスリットに挿入係合される平板状鋼とその両者にわたって挿入されるドリフトピンとによって、前記木材からなる柱材は前記トッププレートに接合されてなる請求項10に記載の接合金具。
木材からなる柱材の木材下端部に形成されるほぞ穴に、前記トッププレートに一体形成される柱状鋼が挿入係合され、木材からなる柱材とそのほぞ穴に挿入係合される柱状鋼とその両者にわたって挿入されるドリフトピンとによって、前記木材からなる柱材は前記トッププレートに接合されてなる請求項10に記載の接合金具。
【発明を実施するための形態】
【0039】
[第1実施形態]
以下に、本発明に係る接合金具及びそれを用いてなる建物構造の第1実施形態について、
図1〜
図8を参照して具体的に説明する。
【0040】
図6及び
図7に示すように、本実施形態に係る接合金具1は、鉄骨構造又は木質構造の建物(建築物、工作物)に使用される形鋼、木材等からなる柱材、梁材、又は繋ぎ材等の第1構造材と、形鋼、木材等からなる柱材、梁材、繋ぎ材、コンクリート、木材等からなる基礎、又は土台等の第2構造材と、を接合するものであって、具体的には、鉄骨構造の建物に使用される角形鋼管等の形鋼からなる柱材50(第1構造材の一例)と、コンクリートからなる基礎60(第2構造材の一例)と、を接合するものである。
図6及び
図7に示すように、柱材50は、矩形状の閉鎖断面を有する角形鋼管であって、例えば、JIS(日本工業規格) G 3466(一般構造用角形鋼管)に準拠したものであり、横断面が正方形状となるように形成され、例えば、各外辺の長さが75mm、厚さが6.0mmとなる角パイプである。
図6及び
図7に示すように、基礎60は、例えば、コンクリート標準示方書(土木学会発行)、鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説(日本建築学会発行)等に準拠したものであって、ナット62が螺結される先端部が上面60aから突出するようにアンカーボルト61が埋設固定されたコンクリートからなる下部構造である。
【0041】
図1〜
図7に示すように、接合金具1は、柱材50の下端部50a(
図6及び
図7参照)に接合されるトッププレート2(第1接合部の一例)と、基礎60の上端部60a(
図6及び
図7参照)に接合されるベースプレート3(第2接合部の一例)と、トッププレート2とベースプレート3とを連結し、横断面が十字形状となるように形成された連結部4と、を備える。トッププレート2、ベースプレート3、及び連結部4は、鋳造により一体形成され、例えば、JIS G 5102(溶接構造用鋳鋼品)に準拠したSCW480等の鋳鋼により一体形成される。なお、鋳鋼により一体形成された接合金具1は、ショットブラスト等の表面処理、めっき、電着塗装等の防錆処理などの仕上げ処理が施される。
【0042】
図1〜
図3に示すように、トッププレート2は、連結部4の上端部に鋳造により一体形成され、矩形板状に形成された板状部20と、板状部20の上面部に鋳造により隆起状に一体形成される裏当て部21とを有しており、
図8に示すように、該裏当て部21に柱材50の下端部50aの内周部50bが挿入されて、その下端部内周部50bを裏当て材21に当て付けることによって、柱材50の下端部50aをトッププレート2に正確に位置決め作用を果たすことができ、この状態で、
図6又は
図7に示すように、両者を突き合わせ溶接による溶接部材wによって、柱材50はトッププレート2、すなわち連結部4に強固に且つ正確に接合されることになる。
【0043】
図2に示すように、板状部20は、上面及び下面が水平となるように形成された平板状鋼であって、
図6及び
図7に示すように、柱材50の外形と一致するように、横断面が正方形状となるように形成され、例えば、各外辺の長さが75mmとなっている。
図1及び
図2に示すように、板状部20の下面には、中心が板状部20の中心と一致するとともに、側部が板状部20の側部と面一となるように、横断面が十字形状となる連結部4が一体形成され、更に、
図1〜
図3に示すように、板状部20の上面には、裏当て部21が上方に向けて突出する截頭四角錐形状となるように一体形成される。
【0044】
図7に示すように、裏当て部21は、柱材50の下端部50aから内周部50bに挿入され、トッププレート2を柱材50に溶接するとき、裏当て金として機能するものである。詳細には、
図8(a)に示すように、裏当て部21は、先端部(上端部)側に設けられる第1傾斜面21aと、基端部(下端部)側に設けられ、傾斜角度θ2が、第1傾斜面21aの傾斜角度θ1よりも大きくなるように形成される第2傾斜面21bと、を有する。裏当て部21は、柱材50の内周部50bに挿入される先端部から、基端部に向かって拡径する傾斜面21a,21bを有しており、基端部側の傾斜面21a,21b(第1傾斜面21aの基端部側の傾斜面及び第2傾斜面21b)が、溶接時の開先部21cとなるように形成される。本実施形態では、例えば、第1傾斜面21aの傾斜角度θ1が、20度であり、第2傾斜面21bの傾斜角度θ2が、45度であって、第1傾斜面21aの開先角度α(90度−傾斜角度θ1=90度−20度)が、70度であり、第2傾斜面21bの開先角度β(90度−傾斜角度θ2=90度−45度)が、45度となる。一方、柱材50の端部の平坦な下端部50aは、第1傾斜面21aに当接するとともに、第1傾斜面21a及び第2傾斜面21bと対向する。したがって、トッププレート2を柱材50(厚さが6.0mmであるもの)に溶接するとき、第1傾斜面21aの基端部側の傾斜面(開先角度α=70度)及び第2傾斜面21b(開先角度β=45度)からなる開先部21cと、柱材50の平坦な下端部50aと、で囲まれる縦断面が段付きの略三角形状となる開先溝に突き合わせ溶接による溶接部材w(溶接金属)が充填されることとなる。このとき、裏当て部21が柱材50の内周部50bに挿入され、裏当て金として機能するから、溶接金属の抜け落ちが防止され、且つ柱材50の内周部50bの下端部50aが裏当て部21の傾斜面21aに当接してトッププレート2に正確に位置決めされて取り付けられることになる。
【0045】
本実施形態によれば、トッププレート2が、鋳造により一体形成される裏当て部21を有するから、従来のように柱材50の内周部50bに別個に溶接していた裏当て金が不要となるから、製造費を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、裏当て部21が、柱材50の内周部50bに挿入される先端部から、基端部に向かって拡径する傾斜面を有しているから、柱材50の外径が同一であって、柱材50の厚さ、即ちその内径が異なる場合(柱材50の厚さが3種類ある場合)であっても、又は、柱材50の内径に多少の製作誤差があっても、柱材50の下端部50aから内周部50bに、傾斜面21a,21bからなる裏当て部21を挿入することによって、裏当て部21を正確な裏当て金として機能させることができるから、溶接を良好に行うことができるとともに、基端部側の傾斜面が、溶接時の開先部21cとなるように形成されるから、従来のように柱材50の下端部50aに開先部を形成したり、裏当て部21に開先部21cを形成するための切削加工が不要となり、製造費を低減することができる。更に柱材50の内周部50bの下端部50aが裏当て部21の傾斜面21aに当接してトッププレート2に正確に位置決めされて取り付けられることになる。
【0046】
本実施形態では、トッププレート2を柱材50の厚さL1が6.0mmであるものに溶接するものを
図8(a)に示したが、柱材50の外径は何れも同じ75mmでその厚さが異なり、内径が異なるものとして、トッププレート2を柱材50の厚さL2が4.5mmであるものに溶接するものを
図8(b)に示し、トッププレート2を柱材50の厚さL3が3.2mmであるものに溶接するものを
図8(c)に示す。
【0047】
図8(b)に示すように、トッププレート2を柱材50の厚さL2が4.5mmであるものに溶接するとき、柱材50の下端部50aは、第2傾斜面21bに当接するとともに、下端部50aの端面は、第2傾斜面21bと対向する平坦面となっている。したがって、トッププレート2を柱材50の厚さL2が4.5mmであるものに溶接するとき、第2傾斜面21b(開先角度β=45度)からなる開先部21cと、柱材50の下端部50aと、で囲まれる縦断面が略三角形状となる開先溝に突き合わせ溶接による溶接部材w(溶接金属)が充填されることとなる。
【0048】
図8(c)に示すように、トッププレート2を柱材50(厚さL3が3.2mmであるもの)に溶接するとき、柱材50の下端部50aは、第2傾斜面21bの基端部側の傾斜面に当接するとともに、下端部50aの端面は、第2傾斜面21bと対向する平坦面となっている。したがって、トッププレート2を柱材50の厚さL3が3.2mmであるものに溶接するとき、第2傾斜面21bの基端部側の傾斜面(開先角度β=45度)からなる開先部21cと、柱材50の下端部50aと、で囲まれる縦断面が略三角形状となる開先溝に突き合わせ溶接による溶接部材w(溶接金属)が充填されることとなる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、裏当て部21が、先端部側に設けられる第1傾斜面21aと、基端部側に設けられ、傾斜角度θ2が、第1傾斜面21aの傾斜角度θ1よりも大きくなるように形成される第2傾斜面21bと、を有するから、すなわち、先端部側に設けられる第1傾斜面21aの開先角度αが、基端部側に設けられる第2傾斜面21bの開先角度βよりも大きくなるように形成される。したがって、柱材50の厚さL1が大きい6.0mmである場合には、開先角度αが大きい第1傾斜面21aが、柱材50の内周部50bに挿入され、溶着量が増加するとともに、柱材50の厚さL2又はL3が小さい4.5mm又は3.2mmである場合には、開先角度βが小さい第2傾斜面21bが、柱材50の内周部50bに挿入され、すなわち、柱材50の厚さが異なりその内径が異なる場合であっても、適切な開先部を得て適切の溶着量とすることができると共に、裏当て部21の何れかの傾斜面にに柱材50の下端部50aが当接することによって正確な位置決めがなされ、もって、強度の向上を図ることができる。
【0050】
図1及び
図2に示すように、ベースプレート3は、連結部4の下端部に鋳造により一体形成され、
図6又は
図7に示すように、上面60aから突出したアンカーボルト61の先端部にナット62を螺結することにより、基礎60に接合される。
図1及び
図2に示すように、ベースプレート3は、上面及び下面が水平となるように形成された平板状鋼(平板)であって、中心がトッププレート2及び連結部4の中心と一致するとともに、側部がトッププレート2及び連結部4の側部よりも側方に位置するように大きい外形を有する。
図1、
図3〜
図5に示すように、ベースプレート3は、鋳造により一体形成され、アンカーボルト61の先端部が挿通される複数(本実施形態では、4箇所)の挿通孔31と、複数の挿通孔31に挿通されたアンカーボルト61の先端部にねじ込まれるナット62が配置される複数(本実施形態では、4箇所)のナット座33と、複数のナット座33と連結部4の下端部とを滑らかに接続するとともに、上面が側方に向かって低くなるように僅かに傾斜する傾斜部34と、複数のナット座33を避けて切り欠かれる複数(本実施形態では、4箇所)の肉落し部32と、を有する。複数の挿通孔31は、アンカーボルト61の外径よりもやや大径となるように形成され、ベースプレート3の中心に対して対称となるように4箇所に設けられた平面視円形状の貫通孔である。複数の肉落し部32は、軽量化のために複数のナット座33の間に設けられたものであって、平面視半円形状の切り欠きである。ナット座33は、上面が平坦となるように形成される平面視円形状の部分であって、傾斜部34の側端部よりも1段低くなるように形成されている。傾斜部34は、上述のように、連結部4の下端部から傾斜部34の側端部に向かって低くなるように僅かに傾斜するように形成されることにより、めっき、電着塗装等の防錆処理を行うとき、余剰塗料が連結部4の下端部から傾斜部34の側端部に向けて流れ落ちやすくなり、連結部4の下端部に余剰塗料による液溜りが形成されることがなくなり、もって、めっき、電着塗装等の防錆処理を精度よく行うことができる。なお、複数の挿通孔31、アンカーボルト61の配置、寸法等は、平成12年建設省告示第1456号(鉄骨造の柱の脚部を基礎に緊結する構造方法の基準を定める件)に準拠したものである。
【0051】
本実施形態によれば、ベースプレート3において複数の肉落し部32を形成することによって、強度を高く維持しながら、軽量化及び小型化を図ることができる。さらに、軽量化及び小型化を図ることによって、荷姿がコンパクトになるから、運送費を低減することができるとともに、現場における施工が容易になる。
【0052】
図1及び
図2に示すように、連結部4は、トッププレート2とベースプレート3とを連結するものであって、上端部がトッププレート2と鋳造により一体形成され、下端部がベースプレート3と鋳造により一体形成され、
図5に示すように、横断面が十字形状となるように、一体形成される。連結部4は、上下方向に延びる補強リブ部4bを十字状に直交配置したものであって、各辺の辺長及び厚さが同一となるように形成されており、例えば、各辺の辺長が37.5mm、厚さが8.0mmとなるように形成される。このため、連結部4の側端部は、トッププレート2の側端部と同一又は内側に収まるように配置される。
図5に示すように、連結部4は、平面視十字状の補強リブ部4bが直交する交差部分において、上下方向に円柱状に延びる交差部4aを有しており、例えば、断面円形状の交差部4aの外径が、20mmとなるように形成される。また、連結部4の高さは、複数の挿通孔31に挿通されるアンカーボルト61の先端部に螺結されるナット62を固定するシャーレンチ等の工具を挿入可能な高さとなるように形成され、例えば、200mm〜300mmとなるように長く形成されている。連結部4は、交差部4aの外形が滑らかに所定の曲率半径(例えば、10mm)となるように湾曲するアール形状となるアール部4cに形成され、交差部4aから十字状に延びる補強リブ部4bの先端部4dに向かって滑らかに僅かに傾斜する先細り形状(テーパ状)となるとともに、先端部4dが丸みを帯びた形状となるように形成されている。
【0053】
本実施形態によれば、連結部4が、横断面が十字形状となるように、鋳造により一体形成されるから、複数の挿通孔31に挿通されるアンカーボルト61の先端部に螺結されるナット62を固定するシャーレンチ等の工具の動作スペースを確保することができるとともに、連結部4の断面円形状の交差部4a及びこれより十字状に延びる補強リブ部4bの辺長及び厚さを、上記したように必要強度を維持するのに充分なものに設計することによって、断面二次モーメント(曲げモーメントに対する変形のしにくさを表した量)を大きくすることができるから、従来の横断面が円形状となるもの(例えば、丸形鋼管)に比較して、強度の向上を図ることができる。
【0054】
かくして、このように形成される接合金具1を使用して、鉄骨構造の建物に使用される角形鋼管等の形鋼からなる柱材50と、コンクリートからなる基礎60と、を接合するにあたっては、
図6及び
図7に示すように、まず、ベースプレート3の複数の挿通孔31(
図7参照)に基礎60の上面60aから突出したアンカーボルト61の先端部が挿通されるように、ベースプレート3の下端部を基礎60の上端部60aに載置し、アンカーボルト61の先端部にナット62を螺結することによって、ベースプレート3の下端部を基礎60の上端部60aに接合する。次いで、トッププレート2の裏当て部21(
図7参照)が柱材50の下端部50aから内周部50bに挿入されるように、柱材50の下端部50aをトッププレート2の上端部に装着し、突き合わせ溶接による溶接部材wを充填することによって、柱材50の下端部50aをトッププレート2の上端部に接合する。しかして、このようにして、接合金具1は、鉄骨構造の建物に使用される角形鋼管等の形鋼からなる柱材50と、コンクリートからなる基礎60と、を接合することとなる。
【0055】
以上説明した本実施形態によれば、接合金具1が、トッププレート2、ベースプレート3、及び連結部4が、鋳造により一体形成されるから、従来のようにトッププレート2、ベースプレート3、及び連結部4を別個に溶接する必要がなくなるから、これにより、強度の向上を図ることができるとともに、接合金具1が、鋳造による1つの製作工程で形成されるから、従来のように多数の製作工程を経る必要がなくなるから、もって、製造費を低減することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、トッププレート2、ベースプレート3、及び連結部4は、鋳鋼を鋳造することにより一体形成されていたが、これに限らず、例えば、鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタン、その他の鋳造可能な合金を鋳造することにより一体形成されていてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、裏当て部21は、第1傾斜面21a及び第2傾斜面21bを有していたが、これに限らず、例えば、第1傾斜面21a又は第2傾斜面21bの一方のみを有するものであってもよいし、3以上の傾斜面を有するものであってもよい。この場合においても、本実施形態と同様に、柱材50の外径が同一であって、柱材50の厚さ、即ちその内径が異なる場合(柱材50の厚さが2、3種類ある場合)であっても、柱材50の下端部50aから内周部50bに、傾斜面21a,21bからなる裏当て部21を挿入することによって、裏当て部21を正確な裏当て金として機能させることができる。
【0058】
さらにまた、本実施形態では、ベースプレート3は、中心に対して対称となるように4箇所に設けられた挿通孔31を有していたが、これに限らず、例えば、中心に対して対称となるように2箇所に設けられた挿通孔31を有していてもよい。また、本実施形態では、ベースプレート3は、肉落し部32を有していたが、これに限らず、例えば、肉落し部32を有さないものであってもよい。
【0059】
さらにまた、本実施形態では、柱材50は、角形鋼管等の形鋼であったが、これに限らず、例えば、丸形鋼管等の形鋼であってもよい。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明に係る接合金具及びそれを用いてなる建物構造の第2実施形態について、
図9〜
図11を参照して具体的に説明する。なお、以下では、第1実施形態と同一の構成には、同一の参照符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
図9に示すように、本実施形態の接合金具1Aは、木質構造の建物に使用される角形木材からなる柱材50A(第1構造材の一例)と、コンクリートからなる基礎60と、を接合するものである。
図9及び
図10に示すように、接合金具1Aは、柱材50Aの下端部50aに接合されるトッププレート2A(第1接合部の一例)と、基礎60の上端部60aに接合されるベースプレート3と、トッププレート2Aとベースプレート3とを連結し、横断面が十字形状となるように形成された連結部4と、を備える。トッププレート2A、ベースプレート3、及び連結部4は、鋳造により一体形成される。
【0062】
図9〜
図11に示すように、柱材50Aは、下端部50a及び側部50dが開口する係合凹部51Aを有する角形木材であって、係合凹部51Aは、後述するトッププレート2Aの係合凸部22Aが挿入係合する側面視矩形状のスリットである。
図9及び
図10に示すように、トッププレート2Aは、矩形板状に形成された板状部20と、板状部20の上端部に鋳造により一体形成され、係合凹部51Aに係合する係合凸部22Aと、を有する。係合凸部22Aは、板状部20の上端部の中央部において前後方向に延びるとともに垂直方向に突出する平板状鋼(平板)であって、係合凹部51Aの下端部50a又は側部50dから挿入係合するものである。係合凸部22Aの側部には、複数(本実施形態では、3箇所)の挿通孔23Aが左右方向に並んで形成され、柱材50Aの側部50dには、係合凸部22Aを係合凹部51Aに係合したとき、複数の挿通孔23Aと連通する複数(本実施形態では、3箇所)の係止孔52Aが左右方向に並んで形成されており、トッププレート2Aは、柱材50Aの係合凹部51Aに係合凸部22Aを係合し、両者の係止孔52A及び挿通孔23Aにわたって、複数(本実施形態では、3本)のドリフトピン53(係止ピンの一例)を圧入挿通することによって、柱材50Aに接合される。
【0063】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、接合金具1Aが、トッププレート2A、ベースプレート3、及び連結部4が、鋳造により一体形成されるから、すなわち、従来のようにトッププレート2A、ベースプレート3、及び連結部4を別個に溶接する必要がなくなるから、これにより、強度の向上を図ることができるとともに、接合金具1Aが、鋳造による1つの製作工程で形成されるから、従来のように多数の製作工程を経る必要がなくなるから、もって、製造費を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、トッププレート2Aが、鋳造により一体形成される係合凸部22Aを有するから、従来の係合凸部22Aを板状部20に溶接する場合に比較して、強度の向上を図ることができるとともに、
図11に示すように、従来のように係合凸部22Aと板状部20との間に鎖線で示すように溶接特有のビード(溶接金属の隅肉盛り部分s)が形成されることがないから、係合凹部51Aの開口縁部においてビードsを避けるための面取り加工が不要となり、この面からも、製造費を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、係合凹部51Aが、スリットであって、係合凸部22Aが、平板状鋼であるから、すなわち、係合凹部51A及び係合凸部22Aが、強固にして簡素な係合構造となるから、強度の向上を図ることができ、且つ製造費を低減することができるとともに、木材からなる柱材50Aの加工が簡単となる。
【0064】
なお、本実施形態では、係合凸部22Aは、板状部20の上端部の中央部において前後方向に延びるとともに垂直方向に突出していたが、これに限らず、例えば、板状部20の上端部の中央部において左右方向に延びるとともに垂直方向に突出するものであってもよい。
【0065】
また、本実施形態では、係合凸部22Aの側部には、複数の挿通孔23Aが左右方向に並んで形成されていたが、これに限らず、例えば、複数の挿通孔23Aを上下方向に並んで形成してもよいし、複数の挿通孔23Aを左右方向及び上下方向の2方向に並んで形成してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、柱材50Aは、角形木材であったが、これに限らず、例えば、丸形木材であってもよい。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明に係る接合金具及びそれを用いてなる建物構造の第3実施形態について、
図12〜
図14を参照して具体的に説明する。なお、以下では、第1実施形態と同一の構成には、同一の参照符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0068】
図12に示すように、本実施形態の接合金具1Bは、木質構造の建物に使用される角形木材からなる柱材50B(第1構造材の一例)と、コンクリートからなる基礎60と、を接合するものである。
図12及び
図13に示すように、接合金具1Bは、柱材50Bの下端部50aに接合されるトッププレート2B(第1接合部の一例)と、基礎60の上端部60aに接合されるベースプレート3と、トッププレート2Bとベースプレート3とを連結し、横断面が十字形状となるように形成された連結部4と、を備える。トッププレート2B、ベースプレート3、及び連結部4は、鋳造により一体形成される。
【0069】
図12〜
図14に示すように、柱材50Bは、下端部50aが開口する係合凹部51Bを有する角形木材であって、係合凹部51Bは、後述するトッププレート2Bの係合凸部22Bが挿入係合する中空円柱形状のほぞ穴である。
図12及び
図13に示すように、トッププレート2Bは、矩形板状に形成された板状部20と、板状部20の上端部に鋳造により一体形成され、係合凹部51Bに係合する係合凸部22Bと、を有する。係合凸部22Bは、板状部20の上端部の中央部において垂直方向に突出する中実円柱状の柱状鋼であって、係合凹部51Bの下端部50aから挿入係合するものである。係合凸部22Bの上端部には、上方に向かって縮径するように面取り加工された截頭円錐形状となるテーパ部24が形成されており、このテーパ部24によって、係合凸部22Bを係合凹部51Bに容易に挿入係合することができる。係合凸部22Bの側部には、複数(本実施形態では、2箇所)の挿通孔23Bが上下方向に並んで形成され、柱材50Bの側部50dには、係合凸部22Bを係合凹部51Bに係合したとき、複数の挿通孔23Bと連通する複数(本実施形態では、2箇所)の係止孔52Bが上下方向に並んで形成されており、トッププレート2Bは、柱材50Bの係合凹部51Bに係合凸部22Bを係合し、両者の係止孔52B及び挿通孔23Bにわたって、複数(本実施形態では、2本)のドリフトピン53(係止ピンの一例)を圧入挿通することによって、柱材50Bに接合される。
【0070】
しかして、以上説明した本実施形態によれば、接合金具1Bが、トッププレート2B、ベースプレート3、及び連結部4が、鋳造により一体形成されるから、すなわち、従来のようにトッププレート2B、ベースプレート3、及び連結部4を別個に溶接する必要がなくなるから、これにより、強度の向上を図ることができるとともに、接合金具1Bが、鋳造による1つの製作工程で形成されるから、従来のように多数の製作工程を経る必要がなくなるから、もって、製造費を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、トッププレート2Bが、鋳造により一体形成される係合凸部22Bを有するから、従来の係合凸部22Bを板状部20に溶接する場合に比較して、強度の向上を図ることができるとともに、
図14に示すように、従来のように係合凸部22Bと板状部20との間に鎖線で示すように溶接特有のビード(溶接金属の隅肉盛り部分s)が形成されることがないから、係合凹部51Bの開口縁部においてビードsを避けるための面取り加工が不要となり、この面からも、製造費を低減することができる。さらに、本実施形態によれば、係合凹部51Bが、ほぞ穴であって、係合凸部22Bが、柱状鋼であるから、すなわち、係合凹部51B及び係合凸部22Bが、強固にして簡素な係合構造となるから、強度の向上を図ることができ、且つ製造費を低減することができるとともに、木材からなる柱材50Bの加工が簡単となる。さらに、本実施形態によれば、柱材50Bは、下端部50aが開口する係合凹部51Bを有するから、第2実施形態のスリットのように、柱材50Bの側部50dが開口することがなく、柱材50Bの外観を損ねることがない。さらに、本実施形態によれば、複数の挿通孔23Bは、係合凸部22Bの側部の1方向に向かって形成されるから、複数の挿通孔23Bに圧入挿通される複数のドリフトピン53を外部から見えないように配置することが可能となる。
【0071】
なお、本実施形態では、係合凸部22Bの側部には、複数の挿通孔23Bが上下方向に並んで形成されていたが、これに限らず、例えば、複数の挿通孔23Bを左右方向に並んで形成してもよいし、複数の挿通孔23Bを上下方向及び左右方向の2方向に並んで形成してもよい。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について従来例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0073】
(実施例)
図16に示すように、第1実施形態の接合金具1において、連結部4の各辺(補強リブ部4b)の厚さtが8.0mm、辺長h(交差部4aを挟んで直径方向に延びる各補強リブ部4bの先端部4d間の長さ)が70mmとなるように形成した接合金具1を準備し、連結部4の横辺の中心線がX0軸となるように配置し、連結部4の縦辺の中心線がY0軸となるように配置し、連結部4の中心がX0軸とY0軸との交点となるように配置した。
【0074】
(従来例1)
図15に示すように、柱材50の下端部50aに溶接部材wにより溶接接合される矩形板状のトッププレート102と、アンカーボルト61の先端部にナット62を螺結することによって、基礎60の上端部60aに接合される矩形板状のベースプレート103と、トッププレート102とベースプレート103とを連結し、横断面が円形状となるように円筒形状に形成された丸形鋼管からなる連結部104と、を備え、連結部104の上端部が、トッププレート102の下端部に溶接部材wにより溶接接合され、連結部104の下端部が、ベースプレート103の上端部に溶接部材wにより溶接接合される接合金具101において、
図16に示すように、連結部104の厚さt1が8.0mm、外径d1が42.7mm、内径d2が26.7mmとなるように形成した接合金具101を準備し、連結部104の中心がX0軸とY0軸との交点となるように配置した。
【0075】
(従来例2)
従来例1の接合金具101の連結部104を中実丸鋼とし、
図16に示すように、連結部204の外径d3が42.7mmとなるように形成した接合金具201を準備し、連結部204の中心がX0軸とY0軸との交点となるように配置した。
【0076】
(断面二次モーメントの比較)
上記のように配置した接合金具1,101,201の座標軸X0,Y0に対して反時計回りにそれぞれ0度、15度、30度、45度、60度、75度、90度回転させた(それぞれ下記表1に記載の実施例1〜7、従来例1,2(0度のみ)とする)計算軸である座標軸X,Y(X0〜X5、Y0,Y0〜Y5、X0)におけるX軸まわりの断面二次モーメント及びY軸まわりの断面二次モーメントを表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1によれば、実施例1〜7のX軸まわりの断面二次モーメント及びY軸まわりの断面二次モーメント(22.90cm
4〜28.43cm
4)は、従来例1,2のX軸まわりの断面二次モーメント及びY軸まわりの断面二次モーメント(13.82cm
4,16.32cm
4)よりも大きい、すなわち、X軸まわりの曲げモーメントに対する変形のしにくさ及びY軸まわりの曲げモーメントに対する変形のしにくさが大きいことを確認できた。また、実施例1〜7のX軸まわりの断面二次モーメント及びY軸まわりの断面二次モーメントは、22.90cm
4〜28.43cm
4であって、略同一であることから、結局、従来例の丸形鋼管からなる接合金具101や、中実丸鋼からなる接合金具201と同様に、実施例の接合金具1に対する垂直軸方向の圧縮力に対して方向性がなく、すなわち、本実施例の接合金具1の連結部4が断面十字状に形成されているにもかかわらず、連結部4の軸回りのいずれの方向からの曲げモーメントに対し耐座屈力が一定となる略均等の強度を有していることが確認できた。