(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785250
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】複数の複合粉体を含有するメーキャップ化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20201109BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20201109BHJP
A61Q 1/12 20060101ALI20201109BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q1/02
A61Q1/12
A61K8/29
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-565937(P2017-565937)
(86)(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公表番号】特表2018-526326(P2018-526326A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】KR2016007070
(87)【国際公開番号】WO2017003234
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年4月9日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0093768
(32)【優先日】2015年6月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】パク セ ジュン
【審査官】
田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0321684(US,A1)
【文献】
特開2003−002634(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0271741(US,A1)
【文献】
特開2012−236775(JP,A)
【文献】
特開2011−225511(JP,A)
【文献】
特開2007−176875(JP,A)
【文献】
米国特許第6632275(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の複合粉体及び第2の複合粉体を含有するメーキャップ化粧料組成物であって、
前記第1の複合粉体及び第2の複合粉体は、コーティング層でコーティングされた板状粉体であり、
前記第1の複合粉体は、コーティング層の平均物理的厚さが20〜70nmであり、
前記第2の複合粉体は、コーティング層の平均物理的厚さが74〜104nmであり、
前記第1の複合粉体:前記第2の複合粉体の重量比は、2.333:1〜5.667:1である、メーキャップ化粧料組成物。
【請求項2】
前記板状粉体のコーティング層は、二酸化チタンであることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【請求項3】
前記板状粉体は、マイカ、合成マイカ、アルミナ、ボロンナイトライド粉末、タルク、及びセリサイトからなる群から選択されたいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【請求項4】
前記第1の複合粉体は、コーティング層の平均物理的厚さが20〜60nmであり、
前記第2の複合粉体は、コーティング層の平均物理的厚さが74〜84nmであることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【請求項5】
前記第1の複合粉体の含有量は、組成物の総重量に対して5〜25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【請求項6】
前記第2の複合粉体の含有量は、組成物の総重量に対して2〜10重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【請求項7】
前記第1の複合粉体:前記第2の複合粉体の重量比は、3.545:1〜5.667:1であることを特徴とする、請求項1に記載のメーキャップ化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の複合粉体を含有するメーキャップ化粧料組成物に関する。
【0002】
本出願は、2015年6月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2015−0093768号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては、本明細書に参考として含まれる。
【背景技術】
【0003】
従来には、肌につやや光沢を与えるためには、光の反射率が高いマイカなどの板状粉体を二酸化チタンや酸化鉄、有機顔料などでコーティングして干渉効果による色相や色素による色相を表す複合粉体であるパール顔料を多く使用した。
【0004】
しかし、このようなパール顔料を含有したメーキャップ化粧料組成物は、つやや光沢は与えることができるが、一般的に、直径が20μm以上の複合粉体の大きさにより、多量使用時に不自然な光沢感を与え、時間の経過時にテカリという否定的要素として作用する短所があった。
【0005】
一方、4つの色を反射する各粉体を混合して白色光を具現した場合もあり、この場合、光の干渉効果によってそれぞれの光が補強されて美白効果を与えることはできるが、一般的に、直径が20μm以上の複合粉体の混合によって自然な美白効果が落ちて、美白効果が多少落ちる短所がある。
【0006】
また、酸化チタンがコーティングされたパール顔料を含有したメーキャップ化粧料組成物は、そのコーティングされた厚さを調節して白色反射光を具現しても、肌に塗布時、その反射光が400〜500nmの間の波長に対して相対的に反射率が高く、肌のトーン(skin tone)が明るくなるにも青色光が強調された反射光によって不自然な美白効果を示す副作用がある。
【0007】
また、通常的に使用される二酸化チタンで明るい肌を具現しようとする場合にも、白色光と青色光が同時に示される効果により、不自然な美白効果が示される実情である。
【0008】
従って、自然な美白効果を具現できるメーキャップ化粧料の開発が要求されているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肌のトーンを明るくする優れた美白効果を示しながらも、自然の白色光のように、可視光線の波長帯全体から選んだ反射率を示し、肌に塗布時に、自然な白色光を反射するメーキャップ化粧料、つまり、光美白を具現するメーキャップ化粧料組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の複合粉体及び第2の複合粉体を含有するメーキャップ化粧料組成物を提供する。
【0011】
具体的に、本発明は、前記第1の複合粉体及び第2の複合粉体が、コーティング層でコーティングされた板状粉体であり、前記第1の複合粉体は、そのコーティング層の平均厚さが20〜70nmであり、前記第2の複合粉体は、そのコーティング層の平均厚さが74〜104nmである、メーキャップ化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、青色系列の波長帯で相対的に高い反射率を示す第1の複合粉体が肌のトーンを明るくしながらも、第1の複合粉体では相対的に低い反射率を示す波長帯を第2の複合粉体が補強することにより、結果的に優れた肌のトーンの改善効果と共に、全ての可視光線の波長帯から均一な反射率を示す光美白を具現するメーキャップ化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に実施例1の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図2】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に実施例2の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図3】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に実施例3の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図4】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に実施例4の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図5】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に実施例5の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図6】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に比較例1の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【
図7】下段線は、黒色の人造皮革に何らの処理もしない状態で測定した結果を示し、上段線は、黒色の人造皮革に比較例2の組成物を塗布した後、その反射光を測定した結果を示す。
【0014】
図1〜
図7において、横軸は、反射光の波長帯(単位:nm)を示し、縦軸は、該波長帯の反射率(単位:%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、第1の複合粉体及び第2の複合粉体を含有するメーキャップ化粧料組成物を提供する。
【0016】
本発明において、前記第1の複合粉体は、コーティング層でコーティングされた板状粉体であり、前記第2の複合粉体は、コーティング層でコーティングされた板状粉体であり、前記第1の複合粉体及び前記第2の複合粉体のコーティング層でコーティングされた板状粉体は、本明細書において異なるように限定しない限り、同一の意味として解釈される。
【0017】
本発明による第1の複合粉体は、そのコーティング層の平均厚さが20〜70nmである。
【0018】
本発明による第2の複合粉体は、そのコーティング層の平均厚さが74〜104nmである。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記板状粉体のコーティング層は、二酸化チタンである。
【0020】
二酸化チタンは、白色顔料でありながら、屈折率が2.5〜2.7を示す唯一の成分であって、二酸化チタンを粉体に均一にコーティングすると、光を反射させる効果を示すので、光美白効果を具現することができる。このような二酸化チタンは、他の白色顔料であるジンクオキサイドと比較するとき、ジンクオキサイドは、屈折率が1.9〜2.0で高レベルであるが、光を反射させる量がより多くて肌の欠点を隠してくれるカバー力などがより優れている。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記板状粉体は、マイカ、合成マイカ、アルミナ、ボロンナイトライド粉末、タルク、及びセリサイトからなる群から選択されたいずれか1つ以上であり、光の反射効果は、コーティング層の屈折率と板状粉体の屈折率との差が大きいほど高く示されるので、前記板状粉体は、好ましくは、屈折率が1.65で最も低いマイカである。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記第1の複合粉体または前記第2の複合粉体の平均粒径は、1〜17μmである。前記第1の複合粉体または前記第2の複合粉体の平均粒径が1μm未満であれば、光沢効果が微々である。また、前記平均粒径が17μm超過であれば、粉体が圧縮粉末剤型であるツインケーキ剤型で使用される場合、塗布性と均一性、成形性が低下するといった問題点と共に、含有量が高いほど光沢感が表現されるが、不自然だったり、斑になるように表現されたりして、光沢効果に限界がある。一方、前記第1の複合粉体または前記第2の複合粉体の平均粒径が1〜17μmである場合、干渉光による自然な光沢感を表現することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記第1の複合粉体の含有量は、組成物の総重量に対して5〜25重量%である。
【0024】
前記第1の複合粉体の含有量が5重量%未満の場合には、光を反射させる効果が微々で光美白効果が示されず、25%超過の場合には、反射光がとても白く表現されて不自然な効果を示すことがある。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記第2の複合粉体の含有量は、組成物の総重量に対して2〜10重量%である。
【0026】
前記第2の複合粉体の含有量が2重量%未満の場合には、前記第2の複合粉体の反射光が前記第1の複合粉体の青色光を相殺させる効果が微々で、不自然な光美白効果を示し、10重量%超過の場合は、前記第2の複合粉体の反射光が前記第1の複合粉体の青色光を相殺してからも前記第2の複合粉体の黄色反射光が強く示される結果をもたらして、明るい黄色反射光により本願発明において具現しようとする光美白効果を示すことができなくなる。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記第1の複合粉体:前記第2の複合粉体の重量比は、4:1以上であり、3:1未満であり、より好ましくは、3.8:1以上であり、3.3:1以下である。
【0028】
前記第1の複合粉体と第2の複合粉体との重量比が4:1未満の場合には、白色反射光と青色反射光が同時に発生して、反射光が不自然であり、3:1以上では、白色反射光と黄色反射光が同時に発生して、本発明において達成しようとする光美白効果を示すことができなくなる。
【0029】
本発明の一実施形態において、前記メーキャップ化粧料組成物は、色差計を用いたCIELAB表色系の明度(L)が58.3〜58.4であり、彩度座標のX軸であるa
*が−0.8〜−0.5であり、彩度座標のY軸であるb
*が−0.3〜0.6である色座標を同時に満足する。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記メーキャップ化粧料組成物は、光美白用である。
【0031】
本明細書において、光美白は、組成物を肌に適用する際、肌の明るさを増加させながら、組成物で反射される反射光が全ての可視光線の波長帯で均一な反射率を示すことを意味する。
【0032】
また、光美白は、人間の目で認識時、つや及び光沢が増加すると認識することができる効果を示す。
【0033】
本発明のメーキャップ化粧料組成物は、その剤型に限定されず、例えば、メーキャッププライマー、ファンデーション、BBクリーム、メーキャップベース、ツーウェイケーキ、ファクト、パウダーまたはアイシャドウなどの形態で剤型化することができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例などは、本発明を具体的に説明しようとするのであって、これらの実施例によって本発明の権利範囲が制限されるものではない。
【0035】
[参考例1]第1の複合粉体の色座標測定
本発明による第1の複合粉体に該当するBASF社の商品名Flamenco(登録商標) ultra silk 2500(二酸化チタンのコーティング厚さ:43〜60nm)0.002gを、7.5cm×2.5cmの黒色人造皮革に塗布した後、KONICA MINOLTA社で製造された商品名Spectrophotometer CM−5である色差計を用いて、CIELAB表色系による値を測定した。
【0036】
測定の結果、明度(L)は58.87であり、彩度座標のX軸であるa
*は−1.64であり、彩度座標のY軸であるb
*は−4.91で測定された。
【0037】
[参考例2]第2の複合粉体の色座標測定
本発明による第2の複合粉体に該当するBASF社の商品名Flamenco(登録商標) Silk Gold 230M(二酸化チタンのコーティング厚さ:60〜84nm)0.002gを、7.5cm×2.5cmの黒色人造皮革に塗布した後、KONICA MINOLTA社で製造された商品名Spectrophotometer CM−5である色差計を用いて、CIELAB表色系による値を測定した。
【0038】
測定の結果、明度(L)は56.5であり、彩度座標のX軸であるa
*は2.94であり、彩度座標のY軸であるb
*は17.95で測定された。
【0039】
[参考例3]実施例及び比較例の製造
下記表1の組成(単位:重量%)で、実施例1〜5、比較例1及び2の組成物を混合粉末の形態で製造した。
【0040】
【表1】
【0041】
[試験例1]色座標の測定比較
前記参考例3によって製造された実施例1〜実施例5と比較例1及び比較例2のそれぞれ0.003gを、7.5cm×2.5cmの黒色人造皮革に塗布した後、KONICA MINOLTA社で製造された商品名Spectrophotometer CM−5である色差計を用いて、CIELAB表色系による値をそれぞれ測定し、その結果を下記表2に示した。
【0042】
【表2】
【0043】
[試験例2]可視光線波長の測定比較
前記参考例3によって製造された実施例1〜実施例5と比較例1及び比較例2のそれぞれ0.003gを、7.5cm×2.5cmの黒色人造皮革に塗布した後、KONICA MINOLTA社で製造された商品名Spectrophotometer CM−5である測定機を用いて、可視光線の波長帯である400nm〜700nmによる反射率を測定して、その結果を
図1〜
図7に示し、400nm〜700nmの波長範囲における反射率の最大値と最小値との差の値を下記表3に示した。
【0044】
【表3】
【0045】
図6及び
図7において、比較例1の組成物は、400〜500nmの波長帯、すなわち、主に青色系列に対して主に反射率を増加させ、また、比較例2の組成物は、600〜700nmの波長帯、すなわち、主に黄色系列に対して主に反射率を増加させることを確認することができ、400nm〜700nmにおける反射率の最大最小の差の値が9%以上に大幅に差があることを確認することができる。
【0046】
一方、
図1〜
図5においては、実施例1〜実施例5の組成物が、全ての可視光線の波長帯の反射率を均等に増加させ、自然な白色光、すなわち、光美白効果を示すことを確認することができ、特に、
図1〜
図5、前記表2及び表3を見ると、実施例2及び実施例3の組成物は、全ての可視光線の波長帯の反射率を均等に増加させながらも明るさが高く、優れた光美白効果を示すことを確認することができる。
【0047】
[試験例3]パネルによる使用感の評価
下記表4の組成で剤型例1及び比較剤型例1〜3による圧縮粉末形態のツインケーキ組成物を通常的な方法によって製造した。
【0048】
【表4】
【0049】
剤型例1及び比較剤型例1〜3に対する自然さ、つや、毛穴カバー及び光沢効果に対する使用感の評価を、20〜30代の女性消費者パネルテスト20人が直接自分の顔に塗布して評価した。実際官能的に塗布前後に対する評価を実施して比較し、その結果は下記表5に示した。
【0050】
【表5】
【0051】
前記表5を見ると、剤型例1が比較剤型例3に比べて、光沢度とつやが高いことを確認することができ、比較剤型例1及び2に比べて、自然な光による美白効果が卓越に示されることを確認することができる。これは、本願発明による組成物が微細なスペクトルの差によって、肌に塗布した後、自然な明るくてきれいな肌表現がなる効果が示されるものと見ることができる。