特許第6785364号(P6785364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785364
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】ブレーキ用マスタシリンダ
(51)【国際特許分類】
   B62L 3/02 20060101AFI20201109BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20201109BHJP
   B60T 11/18 20060101ALI20201109BHJP
   G05G 1/04 20060101ALI20201109BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20201109BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   B62L3/02 D
   B60T7/10 Z
   B60T11/18
   G05G1/04 C
   F16C17/02 Z
   F16C17/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-508621(P2019-508621)
(86)(22)【出願日】2018年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2018002108
(87)【国際公開番号】WO2018179740
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年6月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-61325(P2017-61325)
(32)【優先日】2017年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠秋
(72)【発明者】
【氏名】南里 圭介
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−202653(JP,A)
【文献】 実開昭56−127081(JP,U)
【文献】 特許第3440373(JP,B2)
【文献】 実公平08−008929(JP,Y2)
【文献】 実開昭60−117257(JP,U)
【文献】 特許第2772698(JP,B2)
【文献】 特許第5227872(JP,B2)
【文献】 特許第6041305(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T1/00−7/10
10/00−11/34
B62L1/00−5/20
F16C17/00−17/26
33/00−33/28
G05G1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリンググリップの前方に配置されるレバーと、
前記レバーへの操作力をピストンに伝達するノッカーと、
前記レバー及び前記ノッカーを跨ぐように配置され、前記ピストンを収容するシリンダボディと、
前記レバー、前記ノッカー及び前記シリンダボディを貫通する貫通孔に挿通されて、前記レバー及び前記ノッカーを前記シリンダボディに対して回動可能に支持する支持軸と、
を備え、
前記シリンダボディと前記レバーとが接触する第一の接触部と、前記レバーと前記ノッカーとが接触する第二の接触部と、前記ノッカーと前記シリンダボディとが接触する第三の接触部と、のいずれか一つの前記接触部において、前記貫通孔を囲む環状溝が設けられている、ブレーキ用マスタシリンダ。
【請求項2】
前記環状溝は、前記ノッカーと前記シリンダボディとが接触する前記第三の接触部に設けられている、請求項1記載のブレーキ用マスタシリンダ。
【請求項3】
前記環状溝は、前記ノッカーの前記シリンダボディ側に設けられるノッカー環状溝と、前記シリンダボディの前記ノッカー側に設けられるシリンダボディ環状溝と、であり、
前記シリンダボディ環状溝は、前記ノッカー環状溝よりも大径である、請求項2記載のブレーキ用マスタシリンダ。
【請求項4】
前記環状溝と前記貫通孔とを連通させる連通溝が設けられている、請求項1から3のいずれか一項記載のブレーキ用マスタシリンダ。
【請求項5】
前記連通溝は、前記貫通孔の径方向に対して傾斜している、請求項4記載のブレーキ用マスタシリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ用マスタシリンダに関する。
本願は、2017年3月27日に、日本に出願された特願2017−061325号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
レバーを支持する軸が嵌合される貫通孔の内周縁に切り欠きを形成して油溜まりとするブレーキ装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2009−202653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキ用マスタシリンダにおいては、回転部分の摩耗を抑制することが求められている。
【0005】
本発明は、回転部分の摩耗を抑制することが可能なブレーキ用マスタシリンダを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るブレーキ用マスタシリンダは、ステアリンググリップの前方に配置されるレバーと、前記レバーへの操作力をピストンに伝達するノッカーと、前記レバー及び前記ノッカーを跨ぐように配置され、前記ピストンを収容するシリンダボディと、前記レバー、前記ノッカー及び前記シリンダボディを貫通する貫通孔に挿通されて、前記レバー及び前記ノッカーを前記シリンダボディに対して回動可能に支持する支持軸と、を備え、前記シリンダボディと前記レバーとが接触する第一の接触部と、前記レバーと前記ノッカーとが接触する第二の接触部と、前記ノッカーと前記シリンダボディとが接触する第三の接触部と、のいずれか一つの前記接触部において、前記貫通孔を囲む環状溝が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
上記したマスタシリンダによれば、回転部分の摩耗を抑制することが可能なブレーキ用マスタシリンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る一実施形態を示す平面図である。
図2】本発明に係る一実施形態を示す正面図である。
図3】本発明に係る一実施形態を示す主要部品の分解正面図である。
図4A】本発明に係る一実施形態のシリンダボディにおける上側支持片部の下面図である。
図4B】本発明に係る一実施形態のシリンダボディにおける下側支持片部の平面図である。
図5】本発明に係る一実施形態のレバーを示す平面図である。
図6】本発明に係る一実施形態のレバーを示す下面図である。
図7A】本発明に係る一実施形態のノッカーにおける平面図である。
図7B】本発明に係る一実施形態のノッカーにおける下面図である。
図8】本発明に係る一実施形態の上側支持片部の断面図である。
図9A】本発明に係る一実施形態の環状溝及び連通溝の変形例である。
図9B】本発明に係る一実施形態の環状溝及び連通溝の変形例である。
図9C】本発明に係る一実施形態の環状溝及び連通溝の変形例である。
図10】本発明に係る一実施形態の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態は、図1及び図2に示すように、リザーバ1がブレーキ用マスタシリンダ2の一部を構成するリザーバ一体型のブレーキ用マスタシリンダ2となっている。このブレーキ用マスタシリンダ2は、外部に露出した状態で取り付けられる自動二輪車、三輪バギー及び四輪バギー等の鞍乗型車両用のものである。ここでは、説明の便宜上、各図に示す前後左右上下で方向を規定して説明する。この前後左右上下は車両に取り付けられた状態とほぼ一致する。図1に示すように、ブレーキ用マスタシリンダ2はステアリングバー3に取り付けられている。具体的には、運転者の右手により把持される右側のステアリンググリップ4の前側に配置されており、運転者の右手により操作されて図示略の前輪のブレーキ装置にブレーキ液圧を導入する。
【0010】
ブレーキ用マスタシリンダ2は、シリンダボディ11とホルダ12と蓋部13とレバー14とノッカー15と戻しバネ16と支持軸17と図2に示すナット18とを有している。
【0011】
シリンダボディ11は、金属製であって、鋳造による一体成形品である。シリンダボディ11は、図1に示すようにステアリングバー3の前側に配置されている。シリンダボディ11には、その左右方向中央よりもやや右側に、後方に向けて突出するように突出部31が形成されている。シリンダボディ11は、この突出部31とホルダ12とでステアリングバー3を挟持することでステアリングバー3に取り付けられている。突出部31とホルダ12とはボルトである二本の締結部材32によって結合されてステアリングバー3を挟持する。なお、図1において平面図で表した関係上、締結部材32が一本のみ示されている。
【0012】
シリンダボディ11は、図3に示すように、その右側部の上下に、いずれも板状の上側支持片部35及び下側支持片部36が設けられている。上側支持片部35及び下側支持片部36は、前方に向けて若干前下がりに延出している。上側支持片部35には、これを厚さ方向に貫通する孔部37が形成されており、下側支持片部36にも、これを厚さ方向に貫通する孔部38が形成されている。これら孔部37,38は、互いの中心軸線を一致させて形成されている。孔部37は上側支持片部35の平坦な図4Aに示す下面35aに直交しており、孔部38は下側支持片部36の平坦な図4Bに示す上面36aに直交している。下面35a及び上面36aは平行である。孔部37は孔部38よりも大径となっている。
【0013】
図1に示すように、シリンダボディ11には、突出部31と上側支持片部35との間位置の上部に、ミラー装着部41が上方に突出するように形成されている。ミラー装着部41は、図示略のバックミラーが取り付けられる部分である。また、シリンダボディ11には、図2に示すように、その下部に、ネジ部材42によってワイヤステー43が固定される取付座44が形成されている。
【0014】
図1に示すように、シリンダボディ11には、突出部31の基端側から左方に延出するシリンダ50が設けられている。このシリンダ50は、ステアリングバー3の前方にステアリンググリップ4の軸方向に沿うように配置されている。このシリンダ50は、図2に示す上側支持片部35及び下側支持片部36の間位置に開口する有底筒状をなしている。シリンダ50の内側には、図1において破線で示すピストン51が摺動可能に嵌合されている。言い換えれば、シリンダボディ11は、そのシリンダ50内にピストン51を摺動可能に収容する。ピストン51は、ステアリンググリップ4の軸方向に沿って移動し、シリンダ50内に押し込まれることでブレーキ液圧を発生させる。
【0015】
図2に示すように、シリンダ50は、シリンダボディ11の下部に形成されており、シリンダボディ11の中間部から上部にはリザーバ壁部52が形成されている。このリザーバ壁部52は、上下方向に沿う筒状をなしており、上端の開口部が蓋部13で閉塞されている。リザーバ壁部52の内側にブレーキ液が貯留される。リザーバ壁部52内はシリンダ50内に連通可能となっている。リザーバ壁部52の前部には窓穴53が形成されており、この窓穴53には透明な窓部材54が嵌合されている。窓部材54を介してリザーバ壁部52の内側のブレーキ液の液量を目視可能となっている。
【0016】
レバー14は金属製である。レバー14には、長さ方向の中間部にベース部61が設けられている。このベース部61から長さ方向の一端部まで板状の被支持部62が設けられている。被支持部62は、ベース部61の上部からレバー14の長さ方向に沿って延出している。また、レバー14には、ベース部61から長さ方向の他端部まで、運転者により操作される操作部63が設けられている。
【0017】
被支持部62は、図3に示すように、これを主体的に構成する板状の主板部71と、主板部71の上面から上方に突出する円形の上側ボス部72と、主板部71の下面から下方に突出する円形の下側ボス部73と、主板部71の先端の当接部74とを有している。上側ボス部72及び下側ボス部73は中心軸線を一致させており、この中心軸線上に、被支持部62を厚さ方向に貫通する孔部75が形成されている。
【0018】
上側ボス部72の図5に示す上端面72aは平坦面となっており、下側ボス部73の図6に示す下端面73aも平坦面となっている。これら上端面72aと下端面73aとは平行であり、孔部75と直交している。孔部75は、図4Aに示すシリンダボディ11の上側支持片部35の孔部37とほぼ同径となっている。図6に示すように、レバー14のベース部61の孔部75と操作部63との間が押圧部77となっている。押圧部77は、図3に示すノッカー15に当接してこれを押圧する。主板部71の上側ボス部72と当接部74との間には係合穴76が形成されている。
【0019】
ノッカー15は金属製である。ノッカー15は、ベース部81と、ベース部81の長さ方向の一端部から下方に延出する下方延出部82と、ベース部81の長さ方向の他端部から下方に延出する中間延出部83と、中間延出部83の下部からベース部81と平行に延出するブラケット支持部84と、を有している。
【0020】
ベース部81は、これを主体的に構成する板状の主板部91と、主板部91の下面から下方に突出する円形のボス部92と、ピストン51を押圧する作用部93とを有している。ボス部92の中心軸線上には、ベース部81を厚さ方向に貫通する孔部94が形成されている。主板部91は図7Aに示す上面91aが平坦面となっており、ボス部92は図7Bに示す下端面92aが平坦面となっている。これら上面91aと下端面92aとは平行であり、孔部94と直交している。孔部94は、図3に示すレバー14の孔部75よりも小径である。ブラケット支持部84にも厚さ方向に貫通する孔部95が形成されている。
【0021】
図2に示す戻しバネ16は、金属製であり、螺旋状のコイル部101と、コイル部101の一端から延出する係合部102と、コイル部101の他端から延出する引掛部103とを有している。
【0022】
シリンダボディ11の上側支持片部35の下側にレバー14が配置され、レバー14の下側にノッカー15のベース部81が配置され、ベース部81の下側にシリンダボディ11の下側支持片部36が配置される。この状態では、シリンダボディ11が、レバー14及びノッカー15のベース部81を跨ぐ状態となる。この状態で、図3に示す上側支持片部35の孔部37と、レバー14の孔部75と、ノッカー15の孔部94と、下側支持片部36の孔部38と、が連続的に配置されて一つの貫通孔111となる。言い換えれば、この貫通孔111は、レバー14、ノッカー15及びシリンダボディ11を貫通する。
【0023】
図2に示す戻しバネ16のコイル部101の内側と、図3に示す孔部37,75,94,38からなる貫通孔111とに支持軸17が挿通されることにより、レバー14及びノッカー15が、シリンダボディ11に対し、この支持軸17を中心として回転可能となる。言い換えれば、支持軸17がレバー14及びノッカー15をシリンダボディ11に対して回転可能となるように支持する。
【0024】
支持軸17は、金属製のボルト部材である。支持軸17は、頭部121と、頭部121よりも小径の大径軸部122と、大径軸部122よりも小径の中径軸部123と、中径軸部123よりも小径のネジ軸部124とを有している。
【0025】
頭部121は、図2に示す戻しバネ16のコイル部101の内径よりも大径となっており、コイル部101を上側支持片部35とで挟む。図3に示す大径軸部122は、シリンダボディ11の上側支持片部35の孔部37とレバー14の孔部75とに嵌合する。中径軸部123はノッカー15の孔部94に嵌合する。ネジ軸部124は下側支持片部36の孔部38を通って下側支持片部36よりも下側に突出し、この部分に図2に示すナット18が螺合される。これにより、中径軸部123とナット18とが下側支持片部36を挟持して支持軸17をシリンダボディ11に固定する。
【0026】
支持軸17の頭部121とシリンダボディ11の上側支持片部35とに挟持された戻しバネ16は、係合部102がレバー14の係合穴76に挿入され、引掛部103が上側支持片部35に引っ掛けられることにより、レバー14を付勢する。
【0027】
図1に示すように、ブレーキ用マスタシリンダ2は、シリンダボディ11がホルダ12によってステアリンググリップ4に取り付けられる際に、ステアリンググリップ4の前方にレバー14が配置される。この状態で、戻しバネ16は、操作部63がステアリンググリップ4から離れる方向、つまり前方にレバー14を付勢する。レバー14は、図2に示すように当接部74がシリンダボディ11に当接することにより、操作部63を前方に移動させる方向のそれ以上の回転が規制される。
【0028】
図3に示すレバー14のベース部61の孔部75と操作部63との間の押圧部77がノッカー15の中間延出部83の前側に配置されている。レバー14の操作部63が後方に引かれると、レバー14の押圧部77は、ノッカー15の中間延出部83に当接し、この中間延出部83が後方に移動するようにノッカー15を回転させる。すると、ノッカー15の作用部93が、図1に示すピストン51を押す。これにより、ブレーキ用マスタシリンダ2からフロントのブレーキ装置にブレーキ液が供給されてブレーキがかかる。つまり、ノッカー15は、レバー14への操作力をピストン51に伝達する。
【0029】
図2に示すように、ノッカー15のブラケット支持部84には、ワイヤブラケット131が回動可能に取り付けられている。上記したワイヤステー43には、ワイヤ135のアウタケーブル136の末端部が係合されており、ワイヤブラケット131には、このワイヤ135のインナケーブル137の末端部が係合されている。このワイヤ135は、図示は略すが、運転者の左手により把持される左側のステアリンググリップ4の近傍に配置されたイコライザに連結されている。左側のレバーが操作されることで、このイコライザを作動する。すなわち、左側のレバーが後方に引かれると、イコライザによって後輪のブレーキ装置を駆動するとともに、ワイヤ135を介してノッカー15を回動させてピストン51を押してブレーキ用マスタシリンダ2を作動させる。つまり、このブレーキ用マスタシリンダ2のノッカー15は、左側のレバーの操作のみで後輪のブレーキ装置と前輪のブレーキ装置とを両方作動させる前後輪連動制動システムを構成する。
【0030】
本発明の実施形態において、シリンダボディ11の上側支持片部35には、図4Aに示すように孔部37を囲む円環状をなす環状溝35Aが、図8に示すように上側支持片部35の平坦な下面35aよりも凹んで形成されている。環状溝35Aは上側支持片部35の下側つまり図2に示すレバー14側に設けられている。図4Aに示すように環状溝35Aは、孔部37に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。
【0031】
上側支持片部35には、環状溝35Aと孔部37とを連通させる連通溝35Bが、図8に示すように下面35aよりも凹んで形成されている。図4Aに示すように連通溝35Bは、環状溝35A及び孔部37の径方向に沿っており、環状溝35A及び孔部37の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝35Bは、環状溝35Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝35Aと孔部37との間の範囲内に設けられている。連通溝35Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝35A及び複数の連通溝35Bは、互いに接触するシリンダボディ11の上側支持片部35と図2に示すレバー14の上側ボス部72との間位置に設けられている。
【0032】
図5に示すように、レバー14の上側ボス部72には、平坦な上端面72aよりも凹む環状溝72Aが、孔部75を囲む円環状をなして設けられている。環状溝72Aはレバー14の上側つまり図2に示す上側支持片部35側に設けられている。図5に示すように、環状溝72Aは孔部75に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。
【0033】
上側ボス部72には、上端面72aよりも凹んで環状溝72Aと孔部75とを連通させる連通溝72Bが形成されている。連通溝72Bは環状溝72A及び孔部75の径方向に沿っており、環状溝72A及び孔部75の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝72Bは、環状溝72Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝72Aと孔部75との間の範囲内に設けられている。連通溝72Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝72A及び複数の連通溝72Bは、互いに接触する図2に示すシリンダボディ11の上側支持片部35とレバー14の上側ボス部72との間位置に設けられている。
【0034】
また、図6に示すように、レバー14の下側ボス部73には、平坦な下端面73aよりも凹む環状溝73Aが、孔部75を囲む円環状をなして設けられている。環状溝73Aはレバー14の下側つまり図2に示すノッカー15側に設けられている。図6に示す環状溝73Aは孔部75に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。環状溝73Aは、図5に示す環状溝72Aと同径であり、環状溝72Aと中心軸線を一致させている。
【0035】
図6に示すように、下側ボス部73には、下端面73aよりも凹んで環状溝73Aと孔部75とを連通させる連通溝73Bが形成されている。連通溝73Bは環状溝73A及び孔部75の径方向に沿っており、環状溝73A及び孔部75の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝73Bは、環状溝73Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝73Aと孔部75との間の範囲内に設けられている。連通溝73Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝73A及び複数の連通溝73Bは、互いに接触する図2に示すレバー14の下側ボス部73とノッカー15の主板部91との間位置に設けられている。
【0036】
図7Aに示すように、ノッカー15の主板部91には、平坦な上面91aよりも凹む環状溝91Aが、孔部94を囲む円環状をなして設けられている。環状溝91Aはノッカー15の上側つまり図2に示すレバー14側に設けられている。図7Aに示すように、環状溝91Aは孔部94に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。環状溝91Aは、図5図6に示すレバー14の環状溝72A,73Aよりも小径となっている。
【0037】
主板部91には、上面91aよりも凹んで環状溝91Aと孔部94とを連通させる連通溝91Bが形成されている。連通溝91Bは環状溝91A及び孔部94の径方向に沿っており、環状溝91A及び孔部94の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝91Bは、環状溝91Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝91Aと孔部94との間の範囲内に設けられている。連通溝91Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝91A及び複数の連通溝91Bは、互いに接触する図2に示すレバー14の下側ボス部73とノッカー15の主板部91との間位置に設けられている。
【0038】
図7Bに示すように、ノッカー15のボス部92には、平坦な下端面92aよりも凹む環状溝92A(ノッカー環状溝)が、孔部94を囲む円環状をなして設けられている。環状溝92Aはノッカー15の下側つまり図2に示す下側支持片部36側に設けられている。図7Bに示すように、環状溝92Aは孔部94に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。環状溝92Aは環状溝91Aと同径となっており、中心軸線を一致させている。
【0039】
ボス部92には、下端面92aよりも凹んで環状溝92Aと孔部94とを連通させる連通溝92Bが形成されている。連通溝92Bは、環状溝92A及び孔部94の径方向に沿っており、環状溝92A及び孔部94の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝92Bは、環状溝92Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝92Aと孔部94との間の範囲内に設けられている。連通溝92Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝92A及び複数の連通溝92Bは、互いに接触する図2に示すノッカー15のボス部92とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置に設けられている。
【0040】
図4Bに示すように、シリンダボディ11の下側支持片部36には、平坦な上面36aよりも凹む環状溝36A(シリンダボディ環状溝)が、孔部38を囲む円環状をなして設けられている。環状溝36Aは下側支持片部36の上側つまり図2に示すノッカー15のベース部81側に設けられている。図4Bに示すように、環状溝36Aは、孔部38に対し中心軸線を一致させて同軸状に配置されている。下側支持片部36の環状溝36Aは、図7A図7Bに示すノッカー15の環状溝91A,92Aよりも大径となっている。
【0041】
図4Bに示すように、下側支持片部36には、上面36aよりも凹んで環状溝36Aと孔部38とを連通させる連通溝36Bが形成されている。連通溝36Bは環状溝36A及び孔部38の径方向に沿っており、環状溝36A及び孔部38の周方向に等間隔で複数設けられている。複数の連通溝36Bは、環状溝36Aよりも径方向外側に延出することはなく、環状溝36Aと孔部38との間の範囲内に設けられている。連通溝36Bは具体的には4箇所設けられている。これら環状溝36A及び複数の連通溝36Bは、互いに接触する図2に示すノッカー15のボス部92とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置に設けられている。
【0042】
上記特許文献1に記載のブレーキ装置は、レバーを支持する軸が嵌合される貫通孔の内周縁に部分的に切り欠きを形成して油溜まりを構成する。このような構造では、グリスの流出を抑制することができない。つまり、油溜まりを設けることでグリスを多く保持することができるものの、油溜まりから接触面に供給されたグリスは、接触面を通過して接触面よりも径方向外側に広がってしまう。このため、グリス切れが発生し易く、回転部分が摩耗し易い。
【0043】
これに対し、本発明の実施形態によれば、上側支持片部35に環状溝35Aを設け、上側支持片部35の下面35aに上端面72aにおいて接触して相対回転するレバー14の上側ボス部72に環状溝72Aを設けている。また、レバー14の下側ボス部73に環状溝73Aを設け、下側ボス部73の下端面73aに上面91aにおいて接触して相対回転するノッカー15の主板部91に環状溝91Aを設けている。さらに、ノッカー15のボス部92に環状溝92Aを設け、ボス部92の下端面92aに上面36aにおいて接触して相対回転する下側支持片部36に環状溝36Aを設けている。
【0044】
これにより、環状溝35A,72A,73A,91A,92A,36Aにグリスを溜めることができると共に、環状溝35A,72A,73A,91A,92A,36Aによって、グリスを堰き止めることで、これらよりも径方向外側にグリスが流出することを抑制できる。このため、グリスが相対回転する回転部分の接触範囲よりも外側に漏れ出てしまうことを抑制できる。したがって、接触して相対回転する回転部分の摩耗を抑制することが可能となる。
【0045】
特に、鉛直方向下に向く環状溝35A、環状溝73A及び環状溝92Aは、重力によってグリスを下方に流動させて回転部分に供給することができるため、より効果的に摩耗を抑制することが可能となる。
【0046】
また、ノッカー15には、主板部91よりも下側のブラケット支持部84にワイヤ135から荷重が加わる。これにより、ノッカー15は、主板部91が下方向の力を受けて、シリンダボディ11の下側支持片部36に押し付けられることになる。このため、ノッカー15のボス部92に環状溝92Aを設け、ボス部92の下端面92aに上面36aにおいて接触して相対回転する下側支持片部36に環状溝36Aを設けていることにより、ボス部92と下側支持片部36とに生じ易い摩耗を効果的に抑制することができる。
【0047】
また、下側支持片部36の環状溝36Aが、これに対向するノッカー15の環状溝92Aよりも大径であるため、環状溝92Aから重力により下方に流動するグリスの径方向外側への流出を環状溝36Aで抑制することができる。
【0048】
また、環状溝35Aと孔部37とを連通させる連通溝35B、環状溝72Aと孔部75とを連通させる連通溝72B、環状溝73Aと孔部75とを連通させる連通溝73B、環状溝91Aと孔部94とを連通させる連通溝91B、環状溝92Aと孔部94とを連通させる連通溝92B、及び、環状溝36Aと孔部38とを連通させる連通溝36Bが設けられているため、貫通孔111と支持軸17との間のグリスを、環状溝35A,72A,73A,91A,92A,36Aに流すことができる。よって、回転部分の摩耗をさらに抑制することが可能となる。
【0049】
以上において、連通溝35B,72B,73B,91B,92B,36Bを、貫通孔111の径方向に沿って形成したが、これらのうちのいずれか、あるいは全部について、貫通孔111の径方向に対して傾斜させても良い。例えば、図9Aに示す変形例のように貫通孔111及び環状溝151Aの径方向に対して、これらを連通させる連通溝151Bを傾斜させてもよい。このように傾斜させることで回転部分の相対回転を利用して、貫通孔111側のグリスを、連通溝151Bで案内して環状溝151Aに流すことができる。その場合、図9Aに示すように、複数の連通溝151Bを周方向に対して同様に湾曲させてスパイラル状としても良い。
【0050】
また、以上において、連通溝35B,72B,73B,91B,92B,36Bを、それぞれ四箇所ずつ設けたが、これらは少なくとも一箇所ずつ設けられていれば良い。例えば、図9Bに示す変形例のように、一つの環状溝152Aに対して連通溝152Bを二箇所だけ設けても良い。さらには、連通溝35B,72B,73B,91B,92B,36Bのうちのいずれか、あるいは全部について設けないようにしても良い。つまり、図9Cに示す変形例のように、貫通孔111と環状溝153Aとの間に、これらを連通させる連通溝を設けなくても良い。
【0051】
また、連通溝35Bを設けずに、環状溝35Aと孔部37との間の全体に、下面35aから環状溝35Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。同様に、連通溝72Bを設けずに、環状溝72Aと孔部75との間の全体に、上端面72aから環状溝72Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。同様に、連通溝73Bを設けずに、環状溝73Aと孔部75との間の全体に、下端面73aから環状溝73Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。同様に、連通溝91Bを設けずに、環状溝91Aと孔部94との間の全体に、上面91aから環状溝91Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。同様に、連通溝92Bを設けずに、環状溝92Aと孔部94との間の全体に、下端面92aから環状溝92Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。同様に、連通溝36Bを設けずに、環状溝36Aと孔部38との間の全体に、上面36aから環状溝36Aよりも浅く凹む凹状部を設けても良い。つまり、図10に示す変形例のように、貫通孔111と環状溝154Aとの間全体に、環状溝154Aよりも浅く凹む凹状部155を設ける。
【0052】
上記実施形態においては、上側支持片部35に環状溝35A及び連通溝35Bを設け、これに対向するレバー14の上側ボス部72に環状溝72A及び連通溝72Bを設けたが、これらのうちのいずれか一方側のみに環状溝及び連通溝を設けても良い。つまり、シリンダボディ11の上側支持片部35とレバー14との間位置に、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とが設けられていれば良い。
【0053】
また、レバー14の下側ボス部73に環状溝73A及び連通溝73Bを設け、これに対向するノッカー15の主板部91に環状溝91A及び連通溝91Bを設けたが、これらのうちのいずれか一方側のみに環状溝及び連通溝を設けても良い。つまり、レバー14とノッカー15との間位置に、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とが設けられていれば良い。
【0054】
また、ノッカー15のボス部92に環状溝92A及び連通溝92Bを設け、これに対向するシリンダボディ11の下側支持片部36に環状溝36A及び連通溝36Bを設けたが、これらのうちのいずれか一方側のみに環状溝及び連通溝を設けても良い。つまり、ノッカー15とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置に、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とが設けられていれば良い。
【0055】
さらに、シリンダボディ11の上側支持片部35とレバー14との間位置、レバー14とノッカー15との間位置、及び、ノッカー15とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置、の三箇所のうちのいずれか一箇所のみに、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とを設けても良い。あるいは、シリンダボディ11の上側支持片部35とレバー14との間位置、レバー14とノッカー15との間位置、及び、ノッカー15とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置、の三箇所のうちのいずれか二箇所のみに、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とを設けても良い。つまり、シリンダボディ11の上側支持片部35とレバー14との間位置、レバー14とノッカー15との間位置、及び、ノッカー15とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置、の三箇所のうちの少なくともいずれか一箇所のみに、貫通孔111を囲む環状溝と、この環状溝及び貫通孔111を連通させる連通溝とが設けられていれば良い。
【0056】
ここで、特に、レバー14とノッカー15との間位置、及び、ノッカー15とシリンダボディ11の下側支持片部36との間位置に設けることが、摩耗抑制効果が高い。その場合、レバー14の下側ボス部73に環状溝73A及び連通溝73Bを設け、これに対向するノッカー15の主板部91に環状溝91A及び連通溝91Bを設け、ノッカー15のボス部92に環状溝92A及び連通溝92Bを設けると効果的である。
【0057】
上記実施形態は、ステアリンググリップの前方に配置されるレバーと、上記レバーへの操作力をピストンに伝達するノッカーと、上記レバー及び上記ノッカーを跨ぐように配置され、上記ピストンを収容するシリンダボディと、上記レバー、上記ノッカー及び上記シリンダボディを貫通する貫通孔に挿通されて、上記レバー及び上記ノッカーを上記シリンダボディに対して回動可能に支持する支持軸と、を備え、上記シリンダボディと上記レバーとの間位置、上記レバーと上記ノッカーとの間位置、及び、上記ノッカーと上記シリンダボディとの間位置の少なくともいずれか一つの間位置に、上記貫通孔を囲む環状溝が設けられている。
この構成により、環状溝にグリスを溜めることができると共に、環状溝によって、その径方向外側にグリスが流出することを抑制できるため、接触して相対回転する回転部分の摩耗を抑制することが可能となる。
【0058】
また、上記実施形態では、上記環状溝は、上記ノッカーと上記シリンダボディとの間位置に設けられている。
この構成により、ノッカーがシリンダボディに押し付けられる場合に、これらの間に生じ易い摩耗を抑制することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、上記環状溝は、上記ノッカーの上記シリンダボディ側に設けられるノッカー環状溝と、上記シリンダボディの上記ノッカー側に設けられるシリンダボディ環状溝と、であり、上記シリンダボディ環状溝は、上記ノッカー環状溝よりも大径である。
この構成により、シリンダボディ環状溝によって、その径方向外側にグリスが流出することを抑制することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、上記環状溝と上記貫通孔とを連通させる連通溝が設けられている。
この構成により、貫通孔と支持軸との間のグリスを環状溝に流すことができる。よって、回転部分の摩耗をさらに抑制することが可能となる。
【0061】
また、上記実施形態では、連通溝は、貫通孔の径方向に対して傾斜している。
この構成により、回転部分の回転を利用してグリスを環状溝に流すことができる。
【符号の説明】
【0062】
2 ブレーキ用マスタシリンダ
4 ステアリンググリップ
11 シリンダボディ
14 レバー
15 ノッカー
17 支持軸
35A,72A,73A,91A,92A,36A 環状溝
35B,72B,73B,91B,92B,36B 連通溝
51 ピストン
111 貫通孔
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図10