特許第6785399号(P6785399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6785399電線矯正装置、それを備えた電線処理装置、および電線矯正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6785399
(24)【登録日】2020年10月28日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】電線矯正装置、それを備えた電線処理装置、および電線矯正方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/06 20060101AFI20201109BHJP
   B21F 1/02 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   H02G1/06
   B21F1/02 B
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-541473(P2020-541473)
(86)(22)【出願日】2019年10月11日
(86)【国際出願番号】JP2019040293
【審査請求日】2020年7月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】大島 崇
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−172642(JP,A)
【文献】 実開昭58−189036(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0315266(US,A1)
【文献】 特開2017−113805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/06
B21F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線処理装置に備えられ、直線状の送出経路上に送り出される電線の曲がり癖を矯正する電線矯正装置であって、
前記送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、
前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、
前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、
前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、
前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、
電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、
電線の種類が入力されると、前記ローラ間隔が前記電線の種類に応じた設定値となるように前記アクチュエータを駆動するローラ間隔自動設定装置と、
前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま、オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔を変更するローラ間隔変更装置と、
を備えた電線矯正装置。
【請求項2】
前記ローラ間隔変更装置は、前記オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔の補正値を設定する補正値設定部と、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように、前記アクチュエータを駆動する駆動制御部と、を有するコンピュータを備えている、請求項1に記載の電線矯正装置。
【請求項3】
前記電線処理装置は、前記電線を前記送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置を備え、
前記ローラ間隔変更装置は、前記送給装置が前記電線の送り出しを停止している間に、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように前記アクチュエータを駆動するように構成されている、請求項2に記載の電線矯正装置。
【請求項4】
前記ローラ間隔変更装置は、
前記第2矯正ローラが前記第1矯正ローラに近づく方および前記第1矯正ローラから遠ざかる方に前記第2支持部材を移動させる他のアクチュエータと、
前記オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔の補正値を設定する補正値設定部と、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように、前記他のアクチュエータを駆動する駆動制御部と、を有するコンピュータと、
を備えている、請求項1に記載の電線矯正装置。
【請求項5】
前記電線処理装置は、前記電線を前記送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置を備え、
前記ローラ間隔変更装置は、前記送給装置が前記電線の送り出しを停止している間に、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように前記他のアクチュエータを駆動するように構成されている、請求項4に記載の電線矯正装置。
【請求項6】
前記ローラ間隔変更装置の前記補正値設定部は、前記電線処理装置の運転が終了した後、または、次回の運転が開始される前に、設定された補正値を消去するように構成されている、請求項2〜5のいずれか一つに記載の電線矯正装置。
【請求項7】
前記ローラ間隔変更装置の前記補正値設定部は、前記電線処理装置の運転が終了しても、設定された補正値を保持するように構成されている、請求項2〜5のいずれか一つに記載の電線矯正装置。
【請求項8】
前記設定値および前記補正値を表示する表示装置を備えている、請求項2〜7のいずれか一つに記載の電線矯正装置。
【請求項9】
前記ローラ間隔変更装置は、前記電線処理装置の運転中に前記オペレータによって操作可能に構成され、前記ローラ間隔の変更が入力される変更入力装置を備えている、請求項2〜8のいずれか一つに記載の電線矯正装置。
【請求項10】
前記電線処理装置の運転中に前記補正値の程度を表示する表示器を備えている、請求項2〜9のいずれか一つに記載の電線矯正装置。
【請求項11】
前記ローラ間隔変更装置は、前記オペレータの手動操作により、前記第2矯正ローラが前記第1矯正ローラに近づく方および前記第1矯正ローラから遠ざかる方に前記第2支持部材を移動させる移動機構を備えている、請求項1に記載の電線矯正装置。
【請求項12】
電線を直線状の送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置と、
前記送出経路上に送り出される電線の曲がり癖を矯正する電線矯正装置と、
前記電線矯正装置により矯正された電線に対して、切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子の圧着の少なくとも一つの処理を行う処理機構と、を備えた電線処理装置であって、
前記電線矯正装置は、
前記送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、
前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、
前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、
前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、
前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、
電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、
電線の種類が入力されると、前記ローラ間隔が前記電線の種類に応じた設定値となるように前記アクチュエータを駆動するローラ間隔自動設定装置と、
前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま、オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔を変更するローラ間隔変更装置と、
を備えている、電線処理装置。
【請求項13】
電線の送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、
前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、
前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、
前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、
前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、
電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、
を備え、電線処理装置に備えられた電線矯正装置により電線を矯正する方法であって、
前記電線処理装置の運転開始前に、電線の種類に応じて、前記ローラ間隔が前記設定値取得装置により取得された設定値となるように前記アクチュエータを駆動し、
前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま、前記ローラ間隔を変更する、電線矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線矯正装置、それを備えた電線処理装置、および電線矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リールから電線を引き出し、その電線に対して切断や端子圧着などの処理を行う電線処理装置が知られている。リールに巻かれた電線には曲がり癖がついているが、電線が曲がったままの状態では上記処理を良好に行うことができない。そこで、電線矯正装置により、リールから引き出された電線の曲がり癖を矯正することがよく行われている。
【0003】
従来から、複数の上側ローラおよび複数の下側ローラを備えた電線矯正装置が知られている。電線は、上側ローラと下側ローラとに挟まれながら搬送されることにより、それらローラから押圧力を受け、曲がり癖が矯正される。
【0004】
ここで、押圧力が適度な大きさでないと、曲がり癖を良好に矯正することができない。電線が受ける押圧力の大きさは、上側ローラと下側ローラとの上下の間隔(以下、ローラ間隔という)によって定められるが、ローラ間隔が同じであっても、電線の外径が異なると押圧力は相違する。外径の異なる電線ごとに、好適なローラ間隔が存在する。
【0005】
特許文献1には、電線の種類に応じてローラ間隔を自動的に設定することが可能な電線矯正装置が開示されている。この電線矯正装置では、上側ローラを支持する上支持体の上下位置を変更することにより、ローラ間隔が変更される。この電線矯正装置は、上支持体を昇降させるサーボモータと、電線の種類ごとに設定された上支持体の目標位置を記憶するメモリとを備えている。オペレータが電線の種類を指定すると、制御装置はサーボモータを駆動し、上支持体を目標位置まで自動的に移動させる。これにより、電線の種類に応じて、ローラ間隔が自動的に設定される。
【0006】
また、特許文献1には更に、オペレータが操作部を操作すること等により、目標位置を随時変更できることが記載されている。そのため、押圧力が不適当な場合には、装置の運転前に目標位置を変更したうえで、運転を開始することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−172642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リールから電線が引き出される場合、始めに、リールの外側に巻かれていた部分が引き出され、その後、リールの内側に巻かれていた部分が引き出される。ところが、リールの内側に巻かれていた部分と外側に巻かれていた部分とでは、曲がり癖の程度が異なる。リールの内側に巻かれていた部分は、外側に巻かれていた部分よりも曲がり癖が大きいため、より大きな押圧力で矯正すべきである。このように、電線の種類が同じであっても、好適なローラ間隔は常に一定という訳ではなく、装置の運転中に徐々に変わっていく。
【0009】
また、曲がり癖の程度が同じであっても、電線の硬さは気温や湿度などの環境条件によって変化する。そのため、電線の種類および曲がり癖の程度が同じであっても、環境条件が変わると、付与すべき押圧力の大きさは微妙に変化する。これに伴い、好適なローラ間隔は微妙に変化する。
【0010】
特許文献1に開示された矯正装置および矯正方法では、電線の種類が指定されると、ローラ間隔は、電線の種類ごとに予め定められた値(プリセット値)またはそれから変更された値(変更後のプリセット値)に自動的に設定されるが、装置の運転中において常に一定である。そのため、装置の運転開始直後は好適なローラ間隔であったとしても、運転が進むにつれて、ローラ間隔が不適切となり、矯正の効果が低減していく場合があった。矯正効果を復帰させる(言い換えると、適切なローラ間隔にする)ためには、いったん装置の運転を停止して、プリセット値を調整する必要がある。しかし、電線処理装置は高速で連続的に電線を処理する装置であるため、僅かの間の停止であっても、生産性を著しく低下させる。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線の種類に応じてローラ間隔を自動的に設定することができ、更に、運転中にローラ間隔を調整することができる電線矯正装置、電線処理装置、および電線矯正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電線矯正装置は、電線処理装置に備えられ、直線状の送出経路上に送り出される電線の曲がり癖を矯正する電線矯正装置である。前記電線矯正装置は、前記送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、電線の種類が入力されると、前記ローラ間隔が前記電線の種類に応じた設定値となるように前記アクチュエータを駆動するローラ間隔自動設定装置と、前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま、オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔を変更するローラ間隔変更装置と、を備える。
【0013】
上記電線矯正装置によれば、電線の種類が入力されると、ローラ間隔自動設定装置がアクチュエータを駆動し、ローラ間隔は、電線の種類に応じて予め設定された設定値に自動的に設定される。加えて、上記電線矯正装置にはローラ間隔変更装置が備えられているので、オペレータは電線処理装置の運転中に、電線の状態を見ながら、ローラ間隔を変更することができる。そのため、電線処理装置の運転中にローラ間隔を調整することができ、矯正の精度を向上させることができる。なお、ローラ間隔の設定値自体は変更されず、保持されるので、例えば電線処理装置の次回の運転開始前に、再びローラ間隔を本来の設定値に自動的に設定することができる。
【0014】
本発明の好ましい一態様によれば、前記ローラ間隔変更装置は、前記オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔の補正値を設定する補正値設定部と、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように、前記アクチュエータを駆動する駆動制御部と、を有するコンピュータを備えている。
【0015】
上記態様によれば、ローラ間隔が設定値となるように第1支持部材を移動させるアクチュエータにより、ローラ間隔の調整を行うことができる。ローラ間隔を設定値に設定するためのアクチュエータと、ローラ間隔を調整するためのアクチュエータとを別々に設ける必要がない。
【0016】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線処理装置は、前記電線を前記送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置を備えている。前記ローラ間隔変更装置は、前記送給装置が前記電線の送り出しを停止している間に、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように前記アクチュエータを駆動するように構成されている。
【0017】
上記態様によれば、ローラ間隔は電線が停止している間に調整されるので、ローラ間隔を安定して調整することができる。
【0018】
本発明の好ましい一態様によれば、前記ローラ間隔変更装置は、前記第2矯正ローラが前記第1矯正ローラに近づく方および前記第1矯正ローラから遠ざかる方に前記第2支持部材を移動させる他のアクチュエータと、コンピュータと、を備えている。前記コンピュータは、前記オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔の補正値を設定する補正値設定部と、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように、前記他のアクチュエータを駆動する駆動制御部と、を有している。
【0019】
上記態様によれば、ローラ間隔の調整は、ローラ間隔を設定値に設定するためのアクチュエータとは別のアクチュエータによって行われる。そのため、ローラ間隔を設定値に設定するためのアクチュエータの影響を受けずに、ローラ間隔を調整することができる。
【0020】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線処理装置は、前記電線を前記送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置を備えている。前記ローラ間隔変更装置は、前記送給装置が前記電線の送り出しを停止している間に、前記ローラ間隔が前記設定値に前記補正値を加えた値となるように前記他のアクチュエータを駆動するように構成されている。
【0021】
上記態様によれば、ローラ間隔は電線が停止している間に調整されるので、ローラ間隔を安定して調整することができる。
【0022】
ところで、補正値は、一の運転時に電線の状態に応じて適宜設定される値であるため、他の一の運転時に、同じ補正を行うことが好ましいとは限らない。そこで、前記ローラ間隔変更装置の前記補正値設定部は、前記電線処理装置の運転が終了した後、または、次回の運転が開始される前に、設定された補正値を消去するように構成されていてもよい。
【0023】
一方、例えば、いったん電線処理装置の運転を終了した後、電線の種類を変更せずに運転を再開する場合がある。このような場合には、前記ローラ間隔変更装置の前記補正値設定部は、前記電線処理装置の運転が終了しても、設定された補正値を保持するように構成されていてもよい。
【0024】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線矯正装置は、前記設定値および前記補正値を表示する表示装置を備えている。
【0025】
上記態様によれば、オペレータは設定値および補正値を容易に把握することができる。そのため、ローラ間隔の調整を容易に行うことができる。
【0026】
本発明の好ましい一態様によれば、前記ローラ間隔変更装置は、前記電線処理装置の運転中に前記オペレータによって操作可能に構成され、前記ローラ間隔の変更が入力される変更入力装置を備えている。
【0027】
上記態様によれば、オペレータは、電線の状態を見ながら変更入力装置を操作することにより、ローラ間隔を容易に調整することができる。
【0028】
本発明の好ましい一態様によれば、前記電線矯正装置は、前記電線処理装置の運転中に前記補正値の程度を表示する表示器を備えている。
【0029】
上記態様によれば、オペレータは、電線の状態および表示器を見ながら操作を行うことにより、ローラ間隔を容易に調整することができる。
【0030】
本発明の好ましい一態様によれば、前記ローラ間隔変更装置は、前記オペレータの手動操作により、前記第2矯正ローラが前記第1矯正ローラに近づく方および前記第1矯正ローラから遠ざかる方に前記第2支持部材を移動させる移動機構を備えている。
【0031】
上記態様によれば、オペレータの手動操作に基づいて、設定値を保持したままローラ間隔を調整することができる。
【0032】
本発明に係る電線処理装置は、電線を直線状の送出経路上に送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す送給装置と、前記送出経路上に送り出される電線の曲がり癖を矯正する電線矯正装置と、前記電線矯正装置により矯正された電線に対して、切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子の圧着の少なくとも一つの処理を行う処理機構と、を備えている。前記電線矯正装置は、前記送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、電線の種類が入力されると、前記ローラ間隔が前記電線の種類に応じた設定値となるように前記アクチュエータを駆動するローラ間隔自動設定装置と、前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま、オペレータの操作に基づいて前記ローラ間隔を変更するローラ間隔変更装置と、を備えている。
【0033】
本発明に係る電線矯正方法は、電線の送出経路に沿って並べられた複数の第1矯正ローラと、前記送出経路に対して前記第1矯正ローラ側と反対側に配置され、前記送出経路に沿って並べられた複数の第2矯正ローラと、前記第1矯正ローラを支持する第1支持部材と、前記第2矯正ローラを支持する第2支持部材と、前記第1矯正ローラが前記第2矯正ローラに近づく方および前記第2矯正ローラから遠ざかる方に前記第1支持部材を移動させるアクチュエータと、電線の種類ごとに予め設定された、前記第1矯正ローラと前記第2矯正ローラとの間隔であるローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、を備え、電線処理装置に備えられた電線矯正装置により電線を矯正する方法であって、前記電線処理装置の運転開始前に、電線の種類に応じて、前記ローラ間隔が前記設定値取得装置により取得された設定値となるように前記アクチュエータを駆動し、前記電線処理装置の運転中に、前記設定値を保持したまま前記ローラ間隔を変更する方法である。
【0034】
上記電線矯正方法によれば、電線処理装置の運転開始前にアクチュエータを駆動することにより、電線の種類に応じて予め設定された設定値となるように、ローラ間隔を自動的に設定することができる。加えて、オペレータは電線処理装置の運転中に、電線の状態を見ながらローラ間隔を調整する。そのため、電線の曲がり癖の程度や環境条件に応じて、ローラ間隔を微調整することができ、矯正の精度を向上させることができる。なお、ローラ間隔の設定値自体は変更されず、保持される。そのため、例えば電線処理装置の次回の運転開始時には、ローラ間隔を本来の設定値に自動的に設定することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、電線の種類に応じてローラ間隔を自動的に設定することができ、更に、運転中にローラ間隔を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】電線処理装置の構成を表す模式的な平面図である。
図2】第1実施形態に係る電線矯正装置の側面図である。
図3】変更入力装置の正面図である。
図4】表示器の正面図である。
図5】第1実施形態に係る電線矯正装置のコントローラ等のブロック図である。
図6】電線を矯正中の前記電線矯正装置の側面図である。
図7】電線矯正方法のフローチャートである。
図8】第2実施形態に係る電線矯正装置の側面図である。
図9】第2実施形態に係る電線矯正装置のコントローラ等のブロック図である。
図10】第3実施形態に係る電線矯正装置の側面図である。
図11】第4実施形態に係る電線矯正装置のコントローラ等のブロック図である。
図12】ローラ間隔表示画像を表す図である。
図13】第5実施形態に係る電線矯正装置のコントローラ等のブロック図である。
図14】他の実施形態に係る電線矯正装置のコントローラ等のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る電線矯正装置20を有する電線処理装置1の構成を示す模式的な平面図である。
【0038】
電線処理装置1は、電線2が巻かれたリール3と、電線2の曲がり癖を矯正する電線矯正装置20と、電線2の送り出し量(送り出し長さ)を測定する測長ユニット4と、電線2を送り出す送給装置5と、送給装置5により送り出された電線2の前端部を把持するクランプ6Fと、クランプ6Fに把持された電線2の前端部に端子8を圧着する端子圧着機9Fと、カッター装置7と、カッター装置7の下流側の電線2の後端部を把持するクランプ6Rと、クランプ6Rに把持された電線2の後端部に端子8を圧着する端子圧着機9Rと、を備えている。
【0039】
図示は省略するが、電線2はいわゆる被覆電線であり、心線と心線の周囲を囲む被覆材とを含んでいる。心線は金属などの導体からなり、被覆材は樹脂などの絶縁体からなっている。
【0040】
カッター装置7は、電線2を切断する切断刃7aと、クランプ6Fに把持された電線2の前端部の被覆材を剥ぎ取るストリップ刃7Fと、クランプ6Rに把持された電線2の後端部の被覆材を剥ぎ取るストリップ刃7Rと、を有している。
【0041】
送給装置5は、電線2の長手方向に電線2を送り出す装置である。送給装置5の構成は特に限定されない。本実施形態では、送給装置5は、電線2を挟み込む左右の搬送ベルト5Aと、それぞれの搬送ベルト5Aに巻かれた一対のプーリ5Bと、少なくとも一つのプーリ5Bに連結された搬送モータ5Cと、を備えている。搬送モータ5Cが駆動されると、当該搬送モータ5Cに連結されたプーリ5Bが回転し、左右の搬送ベルト5Aは図示の矢印に示すように循環する。これにより、左右の搬送ベルト5Aに挟まれた電線2は、前方(図1の右方)に送り出される。詳細は後述するが、電線処理装置1の運転中、送給装置5は電線2を送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す。なお、本実施形態では、送給装置5が電線2を前方に送り出すことにより、電線2はリール3から引き出される。ただし、電線2を送り出すようにリール3を回転させる他のモータ等を別途設けることも可能である。
【0042】
電線処理装置1は、送給装置5、電線矯正装置20、カッター装置7、および端子圧着機9F,9R等の動作を制御する制御装置10を備えている。制御装置10は、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータにより構成されている。制御装置10は、電線処理装置1用の専用のコンピュータであってもよく、汎用のコンピュータ(例えばパーソナルコンピュータ)であってもよい。
【0043】
次に、図2を参照しながら、電線矯正装置20について説明する。
【0044】
電線矯正装置20は、直線状の送出経路2A上に送り出される電線2の曲がり癖を矯正する装置である。電線2を送出経路2Aに導きやすいように、電線矯正装置20には、送出経路2Aに沿って配置された複数の円筒状のガイド部材42が設けられている。
【0045】
電線矯正装置20は、送出経路2Aに沿って並べられた複数の第1矯正ローラ25および複数の第2矯正ローラ23を備えている。第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23の一方または両方は、送出経路2Aと平行に並べられていてもよく、非平行に並べられていてもよい。例えば、第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23の一方または両方は、下流側(図2の右側)に行くほど送出経路2Aから離れるように並べられていてもよい。また、電線矯正装置20は、第1矯正ローラ25を支持する第1支持部材24と、第2矯正ローラ23を支持する第2支持部材22とを備えている。第2矯正ローラ23は、送出経路2Aに対して、第1矯正ローラ25側と反対側に配置されている。ここでは、第1矯正ローラ25は送出経路2Aの上側に配置され、第2矯正ローラ23は送出経路2Aの下側に配置されている。ただし、第1矯正ローラ25と第2矯正ローラ23とは、互いに送出経路2Aを挟んで反対側に配置されていればよく、上述の配置に限定されない。他の配置、例えば、第1矯正ローラ25が送出経路2Aの下側に配置され、第2矯正ローラ23が送出経路2Aの上側に配置されていてもよい。また、第1矯正ローラ25が送出経路2Aの左側に配置され、第2矯正ローラ23が送出経路2Aの右側に配置されていてもよい。
【0046】
電線矯正装置20は、第1支持部材24を昇降させる昇降機構26を備えている。昇降機構26は、モータ26aとボールネジ26bとを有している。ここでは、モータ26aはサーボモータにより構成されている。ボールネジ26bの上端部はモータ26aに連結され、ボールネジ26bの下端部は第1支持部材24の雌ネジ部(図示せず)に係合している。モータ26aが駆動するとボールネジ26bが回転し、第1支持部材24は上昇または下降する。第1支持部材24が下降すると、第1矯正ローラ25は第2矯正ローラ23に近づく。第1支持部材24が上昇すると、第1矯正ローラ25は第2矯正ローラ23から遠ざかる。モータ26aは、第1矯正ローラ25が第2矯正ローラ23に近づく方および第2矯正ローラ23から遠ざかる方に第1支持部材24を移動させるアクチュエータの一例である。ただし、このようなアクチュエータはモータ26aに限定されない。上記アクチュエータとして、エアシリンダなどの他の種類のアクチュエータを用いることも可能である。
【0047】
第1支持部材24を昇降させると、第1矯正ローラ25と第2矯正ローラ23との上下の間隔(以下、ローラ間隔という)が変化する。本実施形態では、ローラ間隔は、第1矯正ローラ25の中心と第2矯正ローラ23の中心との上下方向の距離rdにより定義することとする。ただし、ローラ間隔は、第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23の上下の位置関係を一義的に特定できるパラメータであればよく、その定義の仕方は特に限定されない。
【0048】
電線矯正装置20は、ローラ間隔を計測するローラ間隔計測部27を備えている。ローラ間隔計測部27は、センサ本体27bと、センサ本体27bから下方に突出する検知ピン27aとを有している。検知ピン27aはセンサ本体27bに対して変位可能であり、第1支持部材24に当接している。第1支持部材24が上昇すると、検知ピン27aは第1支持部材24により上向きに押され、検知ピン27aのセンサ本体27bからの突出長さは短くなる。逆に、第1支持部材24が下降すると、検知ピン27aのセンサ本体27bからの突出長さは長くなる。そこで、検知ピン27aの変位量を検出することにより、第1支持部材24の位置を特定することができ、ローラ間隔を計測することができる。本実施形態では、センサ本体27bの内部にホールIC直線変位センサ(図示せず)が設けられている。このホールIC直線変位センサが検知ピン27aの変位量を検出することにより、ローラ間隔が計測される。
【0049】
また、電線矯正装置20は、電線2の外径(図中の符号D参照)を計測する外径計測部40を備えている。外径計測部40は、固定ローラ43と、上下方向に移動可能な可動ローラ44と、可動ローラ44の上下方向の位置を検出する変位センサ46とを有している。電線2は、固定ローラ43と可動ローラ44とにより挟まれる。可動ローラ44は、長孔45の内部で上下方向に変位可能であり、図示しないバネにより、固定ローラ43側に付勢されている。可動ローラ44の上下方向の位置は、電線2の外径に応じて変位する。そのため、変位センサ46が可動ローラ44の上下方向の位置を検出することにより、電線2の外径が計測される。
【0050】
図3に示すように、電線矯正装置20は、オペレータにより操作される変更入力装置50を備えている。変更入力装置50は、電線処理装置1の運転中に、オペレータがローラ間隔を変更するときに操作される装置である。本実施形態では、変更入力装置50は、ローラ間隔を大きくするときに押される上ボタン51と、ローラ間隔を小さくするときに押される下ボタン52とを有している。ただし、ここで説明する変更入力装置50は一例に過ぎない。変更入力装置50は、ローラ間隔を大きくする指示および小さくする指示が入力可能な装置であればよく、その構成は何ら限定されない。変更入力装置50は、ボタン式の入力装置に限らず、ダイヤル式の入力装置であってもよく、タッチパネル式の入力装置であってもよく、その他の形式の入力装置であってもよい。
【0051】
図4に示すように、電線矯正装置20は、ローラ間隔の変更の程度を表示する表示器60を備えている。本実施形態では、表示器60は、縦に並んだ8つのランプ61〜68を有している。これら8つのランプ61〜68により、変更量は8段階に分けて表示される。ここでは、ローラ間隔が大きくなるほど、点灯されるランプの数が多くなる。変更量が零の場合、下半分のランプ61〜64が点灯し、上半分のランプ65〜68は消灯する。変更量が零よりも小さくなると(すなわち、マイナスの変更量の場合)、ランプ61〜64は、ランプ64、63、62、61の順に段階的に消灯する。逆に、変更量が零よりも大きくなると、ランプ65〜68は、ランプ65、66、67、68の順に段階的に点灯する。ただし、ここで説明する表示器60は一例に過ぎない。表示器60はローラ間隔の変更量の程度を表示できればよく、その構成は何ら限定されない。表示器60は、メータ式の表示器であってもよく、画像表示装置であってもよく、その他の形式の表示器であってもよい。
【0052】
図5は、コントローラ28およびコントローラ28に接続された機器のブロック図である。コントローラ28は、CPU、ROM、およびRAM等を備えたコンピュータにより構成されている。なお、電線矯正装置20のコントローラ28は、電線処理装置1の制御装置10とは別々に構成されていてもよいが、電線処理装置1の制御装置10が電線矯正装置20のコントローラ28を兼ねていてもよい。図5に示すように、コントローラ28は、外径計測部40(詳しくは外径計測部40の変位センサ46)に接続された入力ポート31Aと、外径計測部40から電線2の外径の情報を受け取る外径入力部31と、記憶部32と、ローラ間隔設定部33と、変更入力装置50に接続された入力ポート35Aと、変更入力装置50からローラ間隔の変更量の情報を受け取る補正値設定部35と、モータ駆動制御部36と、サーボアンプ37に接続された出力ポート36Aと、表示器60に接続された出力ポート35Bと、を有している。
【0053】
図6に示すように、電線矯正装置20は、第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23により電線2を挟み込み、電線2に適度な押圧力を付与することによって曲がり癖を矯正する。ここで、電線2に付与される押圧力は、ローラ間隔によって定められる。一方、ローラ間隔が同一であっても、電線2の外径が異なると、電線2に付与される押圧力は相違する。すなわち、ローラ間隔が同一であっても、電線2の外径が小さければ押圧力は小さくなり、電線2の外径が大きければ押圧力は大きくなる。そのため、押圧力が好適となるローラ間隔は、電線2の外径ごとに異なる。好適なローラ間隔は、予め試験等を行うことにより、または、過去の経験に基づいて、電線2の外径ごとに定めることができる。記憶部32は、予め定められた電線の外径と好適なローラ間隔との関係を記憶している。本実施形態では、記憶部32により、電線の種類ごとに予め設定されたローラ間隔の設定値を取得する「設定値取得装置」が構成されている。
【0054】
ローラ間隔設定部33は、電線2の外径に応じた好適なローラ間隔となるようにモータ26aを駆動する。外径計測部40が電線2の外径を計測すると、電線2の外径の情報は外径入力部31に入力される。ローラ間隔設定部33は、外径入力部31から電線2の外径の情報を得ると、その外径に応じた好適なローラ間隔の設定値を記憶部32から読み出す。そして、ローラ間隔設定部33は、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ駆動制御部36に指令を送る。すると、モータ駆動制御部36は、サーボアンプ37を通じて、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ26aを制御する。なお、電線処理装置1の運転中、上記設定値は上書きされることなく保持される。本実施形態では、記憶部32に保存された上記設定値は、消去および変更ができないようになっている。ただし、特に限定されない。記憶部32に保存された上記設定値は、消去可能または変更可能であってもよい。なお、本実施形態では、ローラ間隔設定部33およびモータ駆動制御部36により、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ26aを駆動する「ローラ間隔自動設定装置」が構成されている。
【0055】
補正値設定部35には、変更入力装置50に入力されたローラ間隔の変更量の情報が入力される。例えば、オペレータが変更入力装置50の上ボタン51を1回押すと、補正値設定部35には、ローラ間隔を1段階広げるような指令が入力される。逆に、オペレータが変更入力装置50の下ボタン52を1回押すと、補正値設定部35には、ローラ間隔を1段階狭めるような指令が入力される。なお、上ボタン51および下ボタン52が1回押されたときのローラ間隔の補正量は、予め設定されている。例えば、上ボタン51が1回押されると、ローラ間隔は0.05mm大きくなり、下ボタン52が1回押されると、ローラ間隔は0.05mm小さくなるように設定されている。補正値設定部35は、上ボタン51および下ボタン52が押された回数に基づいて、ローラ間隔の補正値を設定する。そして、補正値設定部35は、設定した補正値をモータ駆動制御部36に送信する。モータ駆動制御部36は、上記補正値を受けると、上記補正値に応じた量だけローラ間隔を変更するようモータ26aを制御する。なお、補正値設定部35が補正値を設定すると、補正値の情報が表示器60に送信され、表示器60はローラ間隔の変更量に応じてランプ61〜68を点灯または消灯させる。本実施形態では、補正値設定部35、モータ駆動制御部36、およびモータ26aにより、「ローラ間隔変更装置」が構成されている。
【0056】
ローラ間隔の設定値と補正値との大小の程度は特に限定されないが、例えば、補正値は設定値の−50%〜+50%であってもよく、−30%〜+30%であってもよく、−20%〜+20%であってもよく、−10%〜+10%であってもよく、−5%〜+5%であってもよい。
【0057】
以上が電線矯正装置20の構成である。次に、電線処理装置1の運転動作について説明する。電線処理装置1は、以下に説明する1サイクルの動作を繰り返すことにより、両端に端子8が圧着された所定長さの電線2を連続的に作製する。
【0058】
1サイクルの動作は、電線2の前端部に端子8が圧着され、電線2の前端部がカッター装置7の切断刃7aの後方(図1の左方)に位置する状態から始まる。この状態から、まず、送給装置5が電線2を所定長さだけ前方(図1の右方)に送り出す。これに伴い、電線2はリール3から引き出される。また、電線2は、電線矯正装置20の第1矯正ローラ25と第2矯正ローラ23との間を通り、これら第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23から押圧力を受けることにより、曲がり癖が矯正される(図6参照)。
【0059】
電線2が所定長さだけ前方に送り出されると、送給装置5は電線2の送り出しを停止する。電線2の送り出しが停止されると、クランプ6Fおよびクランプ6Rは電線2を把持し、カッター装置7の切断刃7aが電線2を切断する。これにより、電線2は、クランプ6Fに把持された後方の電線2と、クランプ6Rに把持された前方の電線2とに切断される。
【0060】
次に、クランプ6Fが左方(図1の上方)に旋回し、後方の電線2の前端部をストリップ刃7Fに導く。また、クランプ6Rが右方(図1の下方)に旋回し、前方の電線2の後端部をストリップ刃7Rに導く。そして、ストリップ刃7Fにより、クランプ6Fに把持された電線2の前端部の被覆材を剥ぎ取り、スリップ刃7Rにより、クランプ6Rに把持された電線2の後端部の被覆材を剥ぎ取る。
【0061】
クランプ6Fは更に左方に旋回し、後方の電線2の前端部を端子圧着機9Fに導く(図1の仮想線参照)。クランプ6Rは更に右方に旋回し、前方の電線2の後端部を端子圧着機9Rに導く(図1の仮想線参照)。そして、端子圧着機9Fにより、クランプ6Fに把持された電線2の前端部に端子8を圧着する。端子圧着機9Rにより、クランプ6Rに把持された電線2の後端部に端子8を圧着する。これにより、クランプ6Rに把持された電線2は、両端に端子8が圧着された所定長さの電線2となる。クランプ6Rが把持を解除すると、この電線2は図示しないトレイに回収される。一方、クランプ6Fは、右方(図1の下方)に旋回し、カッター装置7の切断刃7aの手前の位置に復帰する。そして、クランプ6Fは電線2の把持を解除する。このようにして、1サイクルの動作が終了する。
【0062】
電線処理装置1は、上述のサイクル動作を繰り返すことにより、両端に端子8が圧着された所定長さの電線2を連続的に作製する。電線処理装置1の運転中、送給装置5は電線2を送り出す動作と停止させる動作とを繰り返し、リール3から電線2を順次引き出す。
【0063】
電線処理装置1の運転中(すなわち、送給装置5が電線2を送り出す動作と停止させる動作とを繰り返している時)、電線2は、リール3の外側に巻かれていた部分から内側に巻かれていた部分の順に引き出される。ところが、リール3の内側に巻かれている部分の方が、リール3の外側に巻かれている部分よりも曲がり癖が大きい。そのため、電線処理装置1の運転中、電線矯正装置20に供給される電線2の曲がり癖の程度は一定ではなく、徐々に変化していく。
【0064】
また、電線2の硬さは、気温や湿度などの環境条件によって変化する。例えば、リール3を付け替えることなく、電線処理装置1の運転を2回に渡って行う場合に、1回目の運転から2回目の運転までの間にある程度の時間が経過する場合がある。そのような場合、1回目の運転と2回目の運転とで、環境条件が変わってしまい、電線2の硬さが変化してしまうことがある。また、リール3に巻かれた電線2の一部を使用した後、そのリール3を交換し、ある程度の時間が経過した後、上記リール3を再び取り付け、上記リール3に巻かれた残りの電線2を使用する場合がある。そのような場合、同一のリール3に巻かれた電線2であっても、環境条件が変わってしまい、電線2の硬さが変化してしまうことがある。また、同一種類の電線2であっても、使用前の保管の状態によって、硬さが相違する場合がある。ところが、電線2の硬さが変わると、好適な押圧力が変わってしまい、好適なローラ間隔が変化する。
【0065】
そのため、予め電線2の外径に応じて一律に設定されたローラ間隔(設定値)が、必ずしも常に好適なローラ間隔であるとは限らない。電線2の外径に応じて予め好適なローラ間隔を設定しておき、電線処理装置1の運転開始前にローラ間隔を設定値に設定することにより、運転開始後に電線2の曲がり癖を概ね良好に矯正することができる。しかし、電線処理装置1の運転中に電線2の状態に応じてローラ間隔を適宜に調整できれば、曲がり癖を更に高度に矯正することが可能である。
【0066】
そこで本実施形態では、電線処理装置1の運転中、オペレータが電線矯正装置20の下流側の電線2の状態(例えば、電線2の軌道など)を見ながら、変更入力装置50を操作することによって、ローラ間隔の調整を行う。
【0067】
オペレータは、例えば、電線2の状態から電線2に対する押圧力が小さいと推察される場合には、変更入力装置50の下ボタン52を押す。すると、補正値設定部35がマイナスの補正値を設定し、モータ駆動制御部36は、第1支持部材24を1段階下方に移動させるようにモータ26aを制御する。その結果、ローラ間隔が1段階小さくなり、電線2が第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23から受ける押圧力は1段階大きくなる。この際、表示器60のランプの点灯数が1つ減り、オペレータはローラ間隔が1段階小さくなったことを容易に確認することができる。
【0068】
逆に、電線2の状態から電線2に対する押圧力が大きいと推察される場合には、オペレータは変更入力装置50の上ボタン51を押す。すると、補正値設定部35がプラスの補正値を設定し、モータ駆動制御部36は、第1支持部材24を1段階上方に移動させるようにモータ26aを制御する。その結果、ローラ間隔が1段階大きくなり、電線2が第1矯正ローラ25および第2矯正ローラ23から受ける押圧力は1段階小さくなる。この際、表示器60のランプの点灯数が1つ増え、オペレータはローラ間隔が1段階大きくなったことを容易に確認することができる。
【0069】
図7は、電線矯正装置20を用いた電線矯正方法のフローチャートである。次に、図7を参照しながら、本実施形態に係る電線矯正方法について説明する。まず、ステップS1において、外径計測部40により電線2の外径を計測する。次に、ステップS2において、記憶部32から電線2の外径に応じたローラ間隔の設定値を読み出すことにより、ローラ間隔を設定する。続いてステップS3に進み、ローラ間隔が上記設定値となるようモータ26aを駆動する。これにより、ローラ間隔が上記設定値に自動的に設定される。
【0070】
ローラ間隔の自動設定が終了すると、電線処理装置1の運転が開始される(ステップS4)。すなわち、送給装置5、カッター装置7、および端子圧着機9F,9Rの運転が開始される。ステップS5では、予め定められた所定本数の電線2の処理が完了したか否かが判定される。本実施形態では、ステップS5の判定は、制御装置10により行われる。処理済みの電線2の本数が上記所定本数に満たない場合、ステップS6に進む。
【0071】
ステップS6では、オペレータが電線2の状態を目視し、電線2の矯正が良好か否かを判定する。矯正が良好な場合、ローラ間隔の変更は不要であり、ステップS5に戻る。一方、矯正が良好でないとオペレータが判断した場合、オペレータは変更入力装置50を操作し、補正入力を行う(ステップS7)。具体的には、変更入力装置50の上ボタン51または下ボタン52を押す。すると、オペレータの操作量に応じて補正値が設定され(ステップS8)、その補正値に見合った量だけローラ間隔が変更されるように、モータ26aが駆動される(ステップS9)。ローラ間隔が変更されると、ステップS5に戻り、再びステップS5以降の処理を繰り返す。
【0072】
ステップS5において、所定本数の処理が完了したと判定されると、電線処理装置1の運転を終了する(ステップS10)。すなわち、送給装置5、カッター装置7、および端子圧着機9F,9Rの運転を終了する。その後、補正値設定部35に設定されている補正値が消去され(ステップS11)、電線矯正装置20の運転が終了する。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、電線処理装置1の運転中に、オペレータの操作によりローラ間隔を変更することができる。そのため、電線2の外径に応じてローラ間隔を自動的に設定値に設定した後、電線2の矯正状態に応じて、ローラ間隔を微調整することができる。よって、環境条件の変化等によって好適なローラ間隔が変化した場合であっても、好適なローラ間隔で電線2を矯正することができる。したがって、本実施形態によれば、電線2の曲がり癖を高度に矯正することができる。
【0074】
ところで、電線処理装置1の運転中、送給装置5は電線2を送り出す動作と停止させる動作とを繰り返す。補正値設定部35の指令を受けたモータ駆動制御部36は、電線2が送り出されているときにモータ26aを駆動してもよいが、電線2が移動しているときには、第1矯正ローラ25、第1支持部材24、およびボールネジ26bを通じて、モータ26aに負荷が加わる。そのため、モータ26aの円滑な動作が阻害されるおそれがある。そこで、補正値設定部35およびモータ駆動制御部36は、電線2が送り出されているときにオペレータが変更入力装置50を操作した場合、電線2が停止するのを待ってモータ26aを駆動するようにしてもよい。すなわち、補正値設定部35およびモータ駆動制御部36は、送給装置5が電線2の送り出しを停止している間にローラ間隔を変更するように構成されていてもよい。これにより、モータ26aを円滑に駆動することができ、ローラ間隔を安定して調整することができる。
【0075】
本実施形態では、電線処理装置1の運転前にローラ間隔を自動的に設定するアクチュエータと、電線処理装置1の運転中にオペレータの操作に基づいてローラ間隔を変更するアクチュエータとは、同一のモータ26aである。それらアクチュエータを別々に設ける場合に比べてアクチュエータの個数を抑えることができ、電線矯正装置20を小型化および低コスト化することができる。
【0076】
本実施形態では、電線矯正装置20は、電線処理装置1の運転中にオペレータによって操作可能な変更入力装置50を備えている。この変更入力装置50を用いることにより、オペレータは、電線処理装置1の運転中に電線2の状態を見ながら、ローラ間隔を容易に調整することができる。
【0077】
また、本実施形態では、電線矯正装置20は、電線処理装置1の運転中にローラ間隔の補正値の程度を表示する表示器60を備えている。この表示器60を見ることにより、オペレータは、電線処理装置1の運転中にローラ間隔の変更量を容易に把握することができる。
【0078】
ところで、電線処理装置1の運転中に設定された補正値は、当該運転において一時的に最適となった値に過ぎず、その後の環境条件の変化等に応じて適宜変更すべきものである。本実施形態によれば、補正値設定部35は、電線処理装置1の運転が終了した後(ステップS10)、当該運転中に設定された補正値を消去する(ステップS11)。そのため、電線処理装置1の次回の運転開始前には、ローラ間隔は、記憶部32に記憶された設定値に自動的に設定される。よって、一般的に好適と見なされたローラ間隔(すなわち、上記設定値)で次回の運転を開始することができ、運転開始直後から電線2を比較的良好に矯正することができる。また、通常、上記設定値とローラ間隔の最適値とのずれは小さいので、その後のローラ間隔の調整を迅速かつ円滑に行うことができる。なお、補正値の消去は、必ずしも電線処理装置1の運転終了直後に行う必要はなく、次回の運転開始前に行ってもよい。例えば、図7のフローチャートにおいて、ステップS11をステップS1の前に実行するようにしてもよい。
【0079】
ただし、上記実施形態は一例に過ぎず、補正値は必ずしも消去しなくてもよい。コントローラ28は、電線処理装置1の運転が終了した後、設定された補正値を保持するように構成されていてもよい。例えば、コントローラ28は、電線処理装置1の運転が終了すると、補正値をメモリ(図示せず)に保存してもよい。保存された補正値は、例えば、次回の運転に際してオペレータが参照データとして参照してもよい。また、次回の運転開始前に、オペレータが設定値と、設定値に補正値を加えた値(すなわち、前回の運転終了時のローラ間隔)とを選択可能としてもよい。電線処理装置1の運転終了から次回の運転開始までの間に、環境条件があまり変化していない場合など、前回の運転終了時のローラ間隔で次回の運転を開始したい場合がある。そのような場合には、設定値に補正値を加えた値を選択することにより、ローラ間隔の調整時間を短縮することができる。
【0080】
また、電線処理装置1の運転中には設定値は保持されるが、運転終了後に設定値を更新することは可能である。例えば、電線処理装置1の運転が終了すると、コントローラ28は、記憶部32に記憶されている設定値を上書きし、設定値に補正値を加えた値に再設定してもよい。
【0081】
本実施形態では、表示器60は8つのランプ61〜68を有し、補正値の程度を8段階に分けて表示するように構成されている。しかし、表示器60の表示形態は何ら限定されない。表示器60は、補正値の程度を段階的に表示するものに限定されない。表示器60は、補正値自体(すなわち数値)を表示するように構成されていてもよい。
【0082】
(第2実施形態)
第1実施形態に係る電線矯正装置20は、ローラ間隔を自動的に設定するモータ26aを利用して、ローラ間隔の調整を行うように構成されている。しかし、ローラ間隔を自動的に設定するモータ26aと、ローラ間隔を調整するためのアクチュエータとは別々であってもよい。第2実施形態に係る電線矯正装置20は、ローラ間隔を設定するモータ26aとは別に、ローラ間隔を調整するためのアクチュエータを備えたものである。
【0083】
図8に示すように、第2実施形態に係る電線矯正装置20は、第2支持部材22を昇降させる昇降機構126を備えている。昇降機構126は、モータ126aと、ボールネジ126bとを有している。ボールネジ126bの下端部はモータ126aに連結され、ボールネジ126bの上端部は、第2支持部材22の雌ネジ部(図示せず)に係合している。モータ126aが駆動するとボールネジ126bが回転し、第2支持部材22は上昇または下降する。第2支持部材22が上昇すると、第2矯正ローラ23は第1矯正ローラ25に近づき、第1支持部材24が下降すると、第2矯正ローラ23は第1矯正ローラ25から遠ざかる。モータ26aは、第2矯正ローラ23が第1矯正ローラ25に近づく方および第1矯正ローラ25から遠ざかる方に第2支持部材22を移動させる他のアクチュエータの一例である。
【0084】
図9に示すように第2実施形態では、コントローラ28は、サーボアンプ37を介してモータ26aに接続されていると共に、サーボアンプ137を介してモータ126aに接続されている。コントローラ28は、サーボアンプ137に接続された出力ポート136Aを有している。また、コントローラ28は、モータ26aを制御するモータ駆動制御部36に加えて、モータ126aを制御するモータ駆動制御部136を有している。モータ駆動制御部136は、補正値設定部35によって設定された補正値に基づいて、モータ126aを制御する。本実施形態では、補正値設定部35、モータ駆動制御部136、およびモータ126aにより、「ローラ間隔変更装置」が構成されている。
【0085】
その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0086】
本実施形態においても、外径計測部40が電線2の外径を計測し、ローラ間隔設定部33は、記憶部32から電線2の外径に応じたローラ間隔の設定値を読み込み、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ26aを駆動する。これにより、電線処理装置1の運転開始前に、ローラ間隔は設定値に自動的に設定される。一方、本実施形態では、オペレータが変更入力装置50を操作すると、補正値設定部35が補正値を設定し、モータ駆動制御部136が上記補正値に基づいてモータ126aを制御し、ローラ間隔を変更する。
【0087】
本実施形態においても、オペレータは、電線処理装置1の運転中に、電線2の状態に応じてローラ間隔を変更することができる。そのため、電線2の外径に応じてローラ間隔を自動的に設定値に設定した後、電線処理装置1の運転中に、電線2がより適切に矯正されるようローラ間隔を調整することができる。よって、電線2の曲がり癖を高度に矯正することができる。
【0088】
なお、ローラ間隔を調整するためのアクチュエータは、モータ126aに限られない。図示は省略するが、ローラ間隔を調整するためのアクチュエータは、エアシリンダなどの流体圧シリンダであってもよく、その他の形式のアクチュエータであってもよい。
【0089】
(第3実施形態)
第1実施形態および第2実施形態に係る電線矯正装置20は、アクチュエータを用いてローラ間隔を変更するものであった。しかし、ローラ間隔の変更は、必ずしもアクチュエータを用いて行う必要はない。第3実施形態に係る電線矯正装置20は、ローラ間隔を手動操作により変更するものである。
【0090】
図10に示すように、第3実施形態は、第2実施形態に係る電線矯正装置20において、昇降機構126のモータ126aに代えて、ボールネジ126bに連結された回転つまみ126cを備えている。第3実施形態では、第2実施形態と異なり、変更入力装置50および表示器60は設けられていない。コントローラ28は、補正値設定部35を備えていない。本実施形態では、ローラ間隔を変更する「ローラ間隔変更装置」は、回転つまみ126cおよびボールネジ126bにより構成されている。
【0091】
回転つまみ126cを一方の方向(例えば、下方から見て時計回り方向)に回転させると、第2支持部材22が上昇し、第2矯正ローラ23は第1矯正ローラ25に近づく。これにより、ローラ間隔は小さくなる。回転つまみ126cを逆の方向(例えば、下方から見て反時計回り方向)に回転させると、第2支持部材22は下降し、第2矯正ローラ23は第1矯正ローラ25から遠ざかる。これにより、ローラ間隔は大きくなる。ボールネジ126bは、オペレータの回転つまみ126cに対する手動操作により、第1矯正ローラ25が第2矯正ローラ23に近づく方および第2矯正ローラ23から遠ざかる方に第2支持部材22を移動させる「移動機構」を構成している。
【0092】
その他の構成は第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
本実施形態においても、外径計測部40が電線2の外径を計測し、ローラ間隔設定部33は、記憶部32から電線2の外径に応じたローラ間隔の設定値を読み込み、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ26aを駆動する。電線処理装置1の運転開始前に、ローラ間隔は設定値に自動的に設定される。一方、本実施形態では、電線処理装置1の運転中に、オペレータが回転つまみ126cを操作することにより、ローラ間隔は手動で変更される。
【0094】
本実施形態においても、オペレータは、電線処理装置1の運転中にローラ間隔を変更することができる。そのため、電線2の外径に応じてローラ間隔を自動的に設定値に設定した後、電線2の状態に応じて、ローラ間隔を調整することができる。よって、電線2の曲がり癖を高度に矯正することができる。
【0095】
なお、回転つまみ126cは、昇降機構126を手動操作するための操作子の一例であるが、操作子は回転つまみ126cに限定されない。他の形式の操作子を用いることも可能である。
【0096】
本実施形態では表示器60は設けられていないが、表示器60を設けることは勿論可能である。例えば、回転つまみ126cに変位センサを設け、その変位センサと表示器60とを接続してもよい。この場合、変位センサが回転つまみの操作量を検出し、操作量に関する信号を表示器60に送信する。表示器60は、当該信号を受け、操作量の程度を表示する。また、回転つまみ126cの回転操作量に応じて表示値が変化するアナログダイヤル式の表示器(図示せず)を備えていてもよい。
【0097】
(第4実施形態)
第1実施形態および第2実施形態に係る電線矯正装置20は、変更入力装置50および表示器60を備えているが、変更入力装置50および表示器60に代えて、それぞれコンピュータ用の入力装置および表示装置を利用するようにしてもよい。図11に示すように、第4実施形態に係る電線矯正装置20は、第1実施形態の変更入力装置50および表示器60に代えて、コンピュータ用の入力装置28Aおよび表示装置28Bを利用するようにしたものである。なお、第2実施形態の変更入力装置50および表示器60に代えて、コンピュータ用の入力装置28Aおよび表示装置28Bを利用することも可能である。
【0098】
入力装置28Aの具体的構成は何ら限定されず、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを好適に用いることができる。表示装置28Bの具体的構成も何ら限定されず、例えば、液晶ディスプレイなどを好適に用いることができる。本実施形態では、表示装置28Bに表示される画像の一部分に、図12に示すようなローラ間隔表示画像29が含まれる。このローラ間隔表示画像29は、ローラ間隔の設定値を表示する設定値表示部分29aと、ローラ間隔の補正値を表示する補正値表示部分29bとが含まれる。また、補正値表示部分29bの右側には、上ボタンのアイコン(以下、単に上ボタンという)29uと、下ボタンのアイコン(以下、単に下ボタンという)29dとが表示されている。
【0099】
その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0100】
本実施形態においても、外径計測部40が電線2の外径を計測し、ローラ間隔設定部33は、記憶部32から電線2の外径に応じたローラ間隔の設定値を読み込み、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ26aを駆動する。電線処理装置1の運転開始前に、ローラ間隔は設定値に自動的に設定される。ローラ間隔の設定値は、設定値表示部分29aに表示される。図12に示す例では、ローラ間隔の設定値は、「2.01mm」と表示される。
【0101】
オペレータは、電線処理装置1の運転中に電線2の状態を見ながら、入力装置28Aを用いてローラ間隔を変更する。例えば、オペレータがマウスを用いてローラ間隔表示画像29の上ボタン29uをクリックすると、ローラ間隔の補正値が一単位(ここでは、0.01mm)ずつ大きくなり、下ボタン29dをクリックすると、ローラ間隔の補正値が一単位ずつ小さくなる。例えば、ローラ間隔を0.05mm大きくしたい場合、オペレータは上ボタン29uを5回クリックする。例えば、設定値が2.01mm、補正値が0.05mmの場合、ローラ間隔は2.01mm+0.05mm=2.06mmに調整される。なお、電線処理装置1の運転中、設定値は保持されるので、設定値表示部分29aに表示される数値は不変である。オペレータが上ボタン29uまたは下ボタン29dをクリックすると、補正値表示部分29bに表示される数値は変化するが、設定値表示部分29aに表示される数値は変わらない。
【0102】
本実施形態においても、オペレータは、電線処理装置1の運転中にローラ間隔を変更することができる。そのため、電線2の外径に応じてローラ間隔を自動的に設定値に設定した後、電線2の状態に応じて、ローラ間隔を調整することができる。よって、電線2の曲がり癖を高度に矯正することができる。
【0103】
なお、第1実施形態と同様、本実施形態においても、電線処理装置1の運転終了後または次回の運転開始前に、補正値は消去されてもよい。また、電線処理装置1の運転終了後、補正値は保持されてもよい。設定値に補正値を加えた値が更新後の設定値となるように、設定値が更新されてもよい。
【0104】
上記実施形態では、オペレータが補正値を入力するように構成されているが、補正値の入力に代えて、ローラ間隔を入力するように構成されていてもよい。例えば、上述の例において、オペレータが補正値「0.05mm」を入力する代わりに、ローラ間隔「2.06mm」を入力するように構成されていてもよい。なお、この場合であっても、電線処理装置1の運転中、設定値「2.01mm」は保持される。
【0105】
(第5実施形態)
前記実施形態に係る電線矯正装置20のコントローラ28は、予め定められた電線の外径と好適なローラ間隔との関係を記憶した記憶部32を有している。記憶部32は、電線の種類ごとに予め設定されたローラ間隔の設定値を取得する「設定値取得装置」の一例である。しかし、設定値取得装置は、コントローラ28に内蔵された記憶部32に限定されない。予め定められた電線の外径と好適なローラ間隔との関係を記憶した記憶部は、コントローラ28の外部に設けられ、コントローラ28は外部の記憶部と通信することによってローラ間隔を取得する取得部を備えていてもよい。
【0106】
図13に示すように、第5実施形態に係る電線矯正装置20は、第1実施形態の記憶部32に代えて、入力ポート132Aを介してインターネット70に接続された取得部132を有している。取得部132は、インターネット70を通じて、予め定められた電線の外径と好適なローラ間隔との関係を記憶したサーバ71と通信可能に接続されている。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。本実施形態では、取得部132が「設定値取得装置」を構成している。なお、サーバ71は単一のサーバであってもよく、複数のサーバがネットワークで繋がることにより構築されていてもよい。サーバ71は、いわゆるクラウドサーバであってもよい。
【0107】
本実施形態では、外径入力部31に電線2の外径が入力されると、取得部132はインターネット70を通じて、その電線2の外径に応じたローラ間隔の設定値をサーバ71から読み込む。そして、ローラ間隔設定部33は、取得部132からローラ間隔の設定値を取得し、ローラ間隔が上記設定値となるようにモータ駆動制御部36に指令を送る。モータ駆動制御部36がモータ26aを制御することにより、ローラ間隔は上記設定値に設定される。その後は、第1実施形態と同様にして、ローラ間隔が調整される。
【0108】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態によれば、サーバ71の情報を更新することにより、ローラ間隔の設定値を適宜変更することができる。また、新たな種類の電線を用いる場合であっても、その電線に応じたローラ間隔の情報をサーバ71に追加するだけで足りる。サーバ71に保存される情報を追加または更新するだけで、取得部132は、新たな種類の電線に好適なローラ間隔の設定値を取得することができる。
【0109】
(他の実施形態)
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、前述の実施形態は単なる例示に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。
【0110】
前記実施形態に係る電線矯正装置20は、電線2の外径を計測する外径計測部40を備えている。しかし、外径計測部40は必ずしも必要ではない。例えば、電線矯正装置20は、オペレータにより電線2の外径が入力されるように構成されていてもよい。例えば図14に示すように、コントローラ28の外径入力部31は、オペレータによって操作される入力装置55に接続されていてもよい。なお、入力装置55の形態は何ら限定されず、例えば、押しボタン、ダイヤル、タッチパネル、キーボードであってもよい。また、入力装置55および変更入力装置50の一方または両方は、オペレータ等が携帯する携帯端末(例えば、タブレットパソコン、スマートフォン)であってもよい。なお、携帯端末は、Bluetooth(登録商標)などによりコントローラ28と通信可能に接続されていてもよく、インターネットを通じてコントローラ28と通信可能に接続されていてもよい。また、コントローラ28は、電線2と電線2の外径との関係を記憶した他の記憶部(図示せず)を備えており、オペレータが入力装置55に電線2を特定する情報(例えば、品番)を入力すると、外径入力部31はその電線2に応じた外径を取得するように構成されていてもよい。
【0111】
前記実施形態では、ローラ間隔の設定値は電線2の外径に基づいて定められているが、外径と他の情報とに基づいて定められていてもよい。例えば、電線2の硬さは被覆材の材料によって相違するので、ローラ間隔の設定値は、電線2の外径と被覆材の材料とに基づいて定められていてもよい。ローラ間隔の設定値は電線の種類ごとに設定されていればよく、具体的な設定方法は何ら限定されない。
【0112】
電線処理装置1の運転中、ローラ間隔は電線2の状態に基づいて調整されるが、電線2の状態の確認方法は特に限定されない。電線2の状態は、オペレータが直接目で見て確認してもよい。また、電線2の状態をカメラで撮影し、カメラの撮影画像をディスプレイに表示してもよい。この場合、オペレータは、ディスプレイに表示された画像を見ることにより、電線2の状態を確認することができる。
【0113】
前記実施形態に係る電線矯正装置20は、センサ本体27bおよび検知ピン27aを有するローラ間隔計測部27を備えている(図2等参照)。しかし、ローラ間隔計測部は、ローラ間隔を計測できれば足り、その具体的構成は何ら限定されない。ローラ間隔計測部は、サーボモータであるモータ26aのエンコーダ値に基づいてモータ26aの回転位置を検出し、その回転位置に基づいてローラ間隔を取得するように構成されていてもよい。
【0114】
前記実施形態では、モータ26aは第1支持部材24および第2支持部材22のうち、第1支持部材24のみを移動させるように構成されている。しかし、モータ26aは、第1支持部材24および第2支持部材22の両方を移動させるように構成されていてもよい。
【0115】
前記実施形態は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態において、変更入力装置50に代えて、第4実施形態の入力装置28Aを利用するようにしてもよい。第2〜第4実施形態に対して、第5実施形態の取得部132を適用するようにしてもよい。
【0116】
電線処理装置1が行う処理は、電線2の切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子圧着に限られない。電線処理装置1は、他の処理を行ってもよい。電線処理装置1は、電線2の切断、被覆材の剥ぎ取り、および端子圧着の少なくとも一つの処理を行う装置であってもよく、それ以外の処理を行う装置であってもよい。電線処理装置1が行う処理は特に限定されない。
【符号の説明】
【0117】
1 電線処理装置
2 電線
2A 送出経路
20 電線矯正装置
22 第2支持部材
23 第2矯正ローラ
24 第1支持部材
25 第1矯正ローラ
26a モータ(アクチュエータ)
28 コントローラ(コンピュータ)
32 記憶部(設定値取得装置)
35 補正値設定部
36 モータ駆動制御部(駆動制御部)
【要約】
電線の種類に応じてローラ間隔を自動的に設定することができ、更に、運転中にローラ間隔を調整することができる電線矯正装置および電線矯正方法を提供することを目的とする。
電線矯正装置(20)は、電線(2)の種類ごとに予め設定されたローラ間隔の設定値を取得する設定値取得装置と、電線(2)の種類が入力されると、ローラ間隔が設定値となるようにアクチュエータ(26a)を駆動するローラ間隔自動設定装置と、電線処理装置(1)の運転中に、前記設定値を保持したまま、オペレータの操作に基づいてローラ間隔を変更するローラ間隔変更装置と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14