(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗濯機は、洗濯水を加熱することにより、洗剤を活性化することで洗浄力を高めていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、特許文献1に記載された従来の洗濯機における水槽の斜視図である。
図13は、従来の洗濯機のヒータを取外した状態の水槽の背面斜視図である。
図14は、従来の洗濯機におけるヒータを水槽底部に装着された状態のヒータアセンブリの断面図である。
【0004】
図12において、洗濯機本体(図示せず)は、内部に水槽200をサスペンション(図示せず)により懸垂防振支持している。水槽200の内部には、洗濯機兼脱水槽(図示せず)が回転可能に配設されている。
【0005】
水槽200の内底部には、下方へ膨出する膨出部110を有し、膨出部110の内部にシーズヒータ等からなるヒータ120が収納されている。また、膨出部110の下方には、排水口113が取付けられている。
【0006】
以上の構成において、従来の洗濯機のつけおき工程の動作を説明する。
【0007】
洗濯物を洗濯兼脱水槽内に必要な洗剤と共に入れ、操作スイッチ(図示せず)を操作して運転を開始させる。運転が開始されると、水槽200内には、給水装置によって所定量の水が供給される。
【0008】
続いて、洗剤を溶解するために、洗濯兼脱水槽が低速回転する給水攪拌が行われる。
【0009】
その後、ヒータ120が発熱することにより洗濯水を長時間加熱するつけおき工程が行われる。
【0010】
上記のつけおき工程により、洗濯水の水温が上昇することで、洗剤が活性化するので洗濯を効果的に行うことができる。
【0011】
図14のように、従来の洗濯機の水槽200の底面には、ヒータ120の加熱部121を支持する支持部材140が構成されている。支持部材140は、多数の折り曲げられた加熱部121の形状に合わせて折り曲げられ、前記加熱部121が動かないように支持している。また、支持部材140の先端部141は、締結部材143によってボス150に締結される。
【0012】
以下、上述した従来の洗濯機のヒーターアセンブリのヒータと水槽の取付け方法、および分離方法を説明する。
【0013】
ヒータ120を水槽200に取り付ける場合、水槽200の外側から、ヒータ120の加熱部121を水槽200下部の開口部130から膨出部110の内部に挿入する。ヒータ120が膨出部110内の支持部材140に挿入されることにより、ヒータ120が動かずに安定的に支持される。
ヒータ120の挿入が完了したら、ヒータ120と洗濯兼脱水槽とを固定するナットを絞ることで、ヒータ120は膨出部110の内に強固に支持固定される。
【0014】
一方、ヒーターアセンブリをメンテナンスする際には、上述の取付操作と反対の方法により、水槽200からヒータ120を分離することができる。
即ち、ナットを緩め、ヒータ120を引っ張り、膨出部110から抜くことにより、ヒータ120は膨出部110から抜くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、洗濯機本体と、前記洗濯機本体の内部に支持され、底部に排水口を有する水槽と、
前記排水口
の下方で前記排水口と連結する排水コックユニットと、を備え、前記排水コックユニットは、
洗濯水を加熱するヒータユニットと接続し、前記ヒータユニットは、
略直方体形状に形成されたヒータ収容容器と、前記ヒータ収容容器に内蔵され、洗濯水を加熱するヒータ
と、を有し、
前記ヒータ収容容器は、側面に、前記排水コックユニットと連通する排水コック接続用開口部が形成され、上面に、前記水槽内底部と連通する
流出経路部が形成され
たことにより、ヒータユニットの内部の状態確認やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0024】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗濯機の
前記ヒータは、前記ヒータ収容容器の長手方向の端部の開口から挿入されて固定され、前記
排水コック接続用開口部は、前記ヒータの先端側の側面に形成され、前記
流出経路部は、前記ヒータの根元側の上面に形成されたことにより、ヒータ収容容器内に流入した洗濯水は、ヒータの輻射熱を有効利用しながら効率的に加熱することができる。
【0027】
(実施の形態1)
以下、
図1〜
図11を用いて、実施の形態1を説明する。
【0028】
[1−1.構成]
[1−1−1.洗濯機の構成]
図1は、実施の形態1における洗濯機の縦断面図である。
【0029】
図1において、洗濯機本体11は、内部に水槽13をサスペンション12により懸垂防振支持している。水槽13の内部には、洗濯槽と脱水槽を兼ねた洗濯兼脱水槽15が回転可能に設けられている。洗濯兼脱水槽15は、底部にパルセータ18が回転自在に配設されている。
【0030】
水槽13の外底部には、伝達機構部20が配設されている。伝達機構部20は、内部に洗濯時の減速ギア(図示せず)、洗濯・脱水軸14の切り換えクラッチ(図示せず)、及
び洗濯兼脱水槽15を停止するためのブレーキ(図示せず)を内蔵している。
【0031】
水槽13の外底部には、モータ21が取り付けられており、モータ21にはモータ側プーリ22が取り付けられている。洗濯・脱水軸14にはメカ側プーリ23が連結しており、モータ側プーリ22とメカ側プーリ23は、ベルト24により互いに連結している。上記構成により、モータ21の動力は、ベルト24を介して洗濯・脱水軸14に伝達する。また、切り替えクラッチを制御することで、モータ21を用いて、パルセータ18のみを回転させる状態と、パルセータ18及び洗濯兼脱水槽15を同時に回転させる状態とを実現することができる。
【0032】
洗濯機本体11の上部には、上部枠体25を配設している。上部枠体25の略中央部には、洗濯兼脱水槽15と外部とを連通するための洗濯物投入取出口26を形成し、洗濯物投入取出口26は扉体27にて開閉自在に覆われている。上部枠体25の後方側には、各種の入力設定を行ない、設定内容を表示する操作表示部29を配設している。上部枠体25の後方側の内部には、電磁力により開閉可能な給水弁30や注水ケース31等を配設している。
【0033】
洗濯機本体11の内部には、モータ21等を制御し、洗い、すすぎ、脱水の一連の工程を逐次制御したり、洗濯水の水温を制御する制御手段(図示せず)を有する制御装置(図示せず)を配している。
【0034】
洗濯兼脱水槽15の上部には、流体バランサ16が配設されている。洗濯機本体11の背面には、背面開口部(点検口)11aを覆うように裏板17が着脱可能に配設されている。
【0035】
図2は、実施の形態1における洗濯機の水槽底面斜視図、及びヒータユニットの分解斜視図である。
図2に示すように、水槽13の底部には、第1の排水口33aと第2の排水口33bを有している。
【0036】
[1−1−2.ヒータユニットの構成]
図3は、実施の形態1における洗濯機のヒータユニットの斜視図、
図4(a)は、同洗濯機のヒータユニットの上面図、
図4(b)は、
図4(a)におけるヒートユニットのA−A断面図、
図5は、同洗濯機のヒータユニットの断面図、
図6は、同洗濯機の水槽底面及びヒータユニットの断面図、
図7は、
図6のヒータユニットの要部拡大断面図、
図8は、同洗濯機の水槽底面、及び
図4(a)におけるヒータユニットのB−B断面図、
図9は、同洗濯機における
図8のヒータユニットの要部拡大断面図である。
【0037】
以下に、実施の形態1のヒータユニット32について説明する。
【0038】
図1に示すように、水槽13背面側の外底部の、裏板17を取り外してメンテナンスすることができる位置にヒータユニット32が固定されている。
【0039】
ヒータユニット32は、
図2に示すように、長手方向の両端が開口している略直方体形状のヒータ収容容器37と、ヒータ収容容器37の一方の開口から挿入されるヒータ38と、ヒータ収容容器37の他方の開口から挿入されヒータ38を覆う板金部材36と、板金部材36が挿入される他方の開口を覆う蓋体51から構成されている。
【0041】
[A.ヒータ収容容器37]
ヒータ収容容器37は、耐熱性の樹脂から成り、長手方向の両端が開口している略直方体形状となっている。ヒータ収容容器37の長手方向の開口のうち、一方の開口はヒータ38を挿入するヒータ挿入用開口部37bであり、他方の開口は板金部材36を挿入して蓋体51により覆われる板金部材挿入用開口部37cである。
【0042】
ヒータ収容容器37上面のヒータ挿入用開口部37b近傍には、水槽13底部の第2の排水口33bと連通する筒状の流出経路部37gが形成されている。
【0043】
流出経路部37gを有する面と隣接する側面の板金部材挿入用開口部37c近傍には、排水コックユニット34と連通する排水コック接続用開口部37aを有している。排水コックユニット34とヒータ収容容器37とは、螺子締結(図示せず)等により着脱可能に取り付けられている。
【0044】
図2に示すように、排水コックユニット34は、流入口34aと水槽13底部の第1の排水口33aとが連通する位置で、溶着ボス45により溶着固定されている。水槽13とヒータ収容容器37は、排水コックユニット34を介して連通接続されている。
図2、
図3、
図4(b)に示すように、排水コックユニット34は、排水経路側開口部34cを有している。排水経路側開口部34cは排水経路41と接続連通されている。排水コックユニット34の排水弁(図示せず)を開くことにより、水槽13及びヒータ収容容器37内の洗濯水は、排水経路41を通り洗濯機本体11の外部に排水される。
【0045】
なお、本実施の形態では、水槽13と排水コックユニット34とは溶着固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、螺子締結等により着脱可能に取り付けられてもよい。
【0046】
[B.板金部材36]
図2に示すように、ヒータ38を囲む板金部材36は、長手方向の両端が開口する略直方体形状となっている。板金部材36は、板金部材挿入用開口部37cから前方向に向けてヒータ収容容器37内に挿入される。
【0047】
ヒータ38から発生する輻射熱は、板金部材36を伝導し拡散されるので、ヒータ収容容器37の一部に熱が集中して溶融し孔あきが発生するリスクを低減できる。
【0048】
板金部材36は、2つの板金部品から構成されている。板金部材36の一端は、
図2、
図6に示すように、長手方向のスポット溶接部42に沿ってスポット溶接されている。板金部材36の他端は、
図6、
図7に示すように、溶接されず一定間隙を持つ離間部36aを有している。そのため、板金部材36は略U字形状となっている。板金部材36は曲げ加工により、内方に窪んだ支持片40が形成されている。支持片40により、ヒータ収容容器37内に収納されたヒータ38が動かないよう固定している。
【0049】
図5、
図6、
図7を用いて板金部材36とヒータ収容容器37の固定方法を説明する。
【0050】
図5に示すように、ヒータ収容容器37の内壁には、板金部材36がヒータ収容容器37内に挿入された状態での離間部36aの位置に対応して帯状リブ37dが延伸形成されている。板金部材36を板金部材挿入用開口部37cから前方向に向けてヒータ収容容器37内に挿入する際には、離間部36aに帯状リブ37dが位置する。
【0051】
図6、
図7に示すように、板金部材36がヒータ収容容器37内に挿入された状態で、板金部材36と当接する位置での帯状リブ37dの幅寸法Wは、後側から前側へ向かって広くなるよう形成されている。
【0052】
図7の帯状リブ37dの板金部材挿入用開口部37c側(後側)端の幅寸法W1は、板金部材36がヒータ収容容器37内に収納された状態での離間部36aの離間幅よりも狭く形成されている。
図7の帯状リブ37dのヒータ挿入用開口部37b側(前側)端の幅寸法W2は、板金部材36がヒータ収容容器37内部に収納された状態での離間部36aの離間幅よりも広くなるよう形成されている。また、
図8に示すように、板金部材挿入用開口部37c側(後側)からヒータ挿入用開口部37b側(前側)に向かうにつれて、ヒータ収容容器37の内壁下面39aは上方に、内壁上面39bは下方に漸次傾斜している。そのため、板金部材36が板金部材挿入用開口部37c側(後側)からヒータ挿入用開口部37b側(前側)に向けて挿入されるにつれて、離間部36aの離間幅は狭くなる。
【0053】
上記構成により、板金部材36がヒータ収容容器37内を板金部材挿入用開口部37c側(後側)からヒータ挿入用開口部37b側(前側)に向けて挿入されると、挿入途中から帯状リブ37dの幅Wが板金部材36の離間部36aの離間幅よりも広くなる。そこで、板金部材36をヒータ収容容器37内に押し込むよう圧入することにより、板金部材36の離間部36aの端部が帯状リブ37dにめり込む。このようにして、板金部材36をヒータ収容容器37内に支持固定でき、洗濯兼脱水槽15の脱水回転時に、板金部材36が、がたつくことを防止できる。
【0054】
実施の形態1では、板金部材36は2枚の板金をスポット溶接することで構成されているが、例えば1枚の板金を成形して構成されてもよい。
【0055】
[C.ヒータ38]
図2を用いてヒータ38について説明する。
【0056】
ヒータ38は、ヒータ収容容器37のヒータ挿入用開口部37bから挿入される。
【0057】
ヒータ38は、加熱部38aと端子部38bと接続部38cより構成されている。
【0058】
加熱部38aは、ヒータ収容容器37内部に位置し、ヒータ収容容器37内の洗濯水を加熱するための熱を発生させる。また、
図2のように、加熱部38aは同一平面上で多数回折り曲げられている。上記構成により、加熱部38aの表面積が大きくなるため、効率的に洗濯水を加熱することができる。
【0059】
端子部38bは加熱部38aと電気的に接続されている。また、端子部38bは、ヒータ収容容器37の外部に位置する外部電源(図示せず)、及び制御装置(図示せず)と電気的に接続されている。外部電源からの電力は、端子部38bを介して加熱部38aへ供給されている。
【0060】
接続部38cは、加熱部38aと端子部38bとの間に介在している。接続部38cには、ヒータ収容容器37のヒータ挿入用開口部37bに対応する大きさの可撓性部材38dが設けられている。
図8において、加熱部38aがヒータ挿入用開口部37b内に挿入された状態で、ナット43を締めることで、ヒータ38をヒータ収容容器37内に固定できる。すなわち、ナット43を締めることにより、ボルト44及びボルト44に溶接された圧接板47に前方向の力が加わり、可撓性部材38dが前後方向に圧縮されることで周方向に膨張するので、ヒータ挿入用開口部37bを密封できる。上記構成により、ヒータ収容容器37内の洗濯水が、ヒータ挿入用開口部37bから漏水することを防止できる。可撓性部材38dは、弾性変形する例えばゴム等のパッキンで形成されている。
【0061】
また、
図2に示すように、接続部38cには、ヒータ収容容器37内の水温を測定する
温度検知部56が配設されている。温度検知部56は、サーミスタ等から構成される。
【0062】
[D.蓋体51]
図8、
図9に示すように、蓋体51は、ヒータ収容容器37の板金部材挿入用開口部37cを、螺子締結(図示せず)により着脱可能に覆っている。
【0063】
蓋体51を取外してヒータ収容容器37内を確認し、ヒータユニット32のメンテナンスをするため、蓋体51により覆われる板金部材挿入用開口部37cは、洗濯機本体11の背面開口部11aがある背面側に設けられている。
【0064】
蓋体51により覆われる板金部材挿入用開口部37cは、ヒータ収容容器37内に挿入されたヒータ38を臨む位置に取り付けられている。上記構成とすることで、ヒータ収容容器37から蓋体51を取り外すことで、容易にヒータ38の状態を視認できる。
【0065】
蓋体51には、ヒータ収容容器37内に挿入された板金部材36をヒータ収容容器37の内壁面側に押し付ける傾斜リブ51aが形成されている。ヒータ収容容器37内に挿入された板金部材36の板金部材挿入用開口部37c側(後側)端部は、傾斜リブ51aによって内壁下面39a及び内壁上面39bに向けて広げられる。
【0066】
また、ヒータ収容容器37が水槽13底部に取り付けられた状態で、ヒータ収容容器37の内壁下面39aと内壁上面39bには、板金部材36を支持するリブ37eが延伸形成されている。リブ37eにより、ヒータ38により熱せられた板金部材36の熱が内壁下面39a、及び内壁上面39bに直接伝達することを抑制している。
【0067】
上記構成により、板金部材36をヒータ収容容器37内に挿入した状態で、蓋体51により板金部材挿入用開口部37cを覆うことで、傾斜リブ51aとリブ37eによって、板金部材36は支持固定される。そのため、板金部材36がヒータ収容容器37内で揺動することを抑制している。
【0068】
上記のようにして、ヒータユニット32が構成されている。
【0069】
[1−2.洗濯機の運転動作]
次に、本実施の形態の洗濯機の運転動作を説明する。
【0070】
使用者は、扉体27を開け、衣類を洗濯物投入取出口26から洗濯兼脱水槽15内に投入し、扉体27を閉め、操作表示部29を操作して温水洗濯コースを開始する。
【0071】
洗い工程が開始されると、給水弁30が開き、水が注水ケース31から水槽13内に注水される。注水された水は、水槽13底部の第1の排水口33a、及び第2の排水口33bからヒータ収容容器37内へ流入する。
【0072】
ここで温水洗濯コースでは、ヒータ38による加熱水での洗い工程の終了後、すすぎ、脱水の工程を実行する。
【0073】
温水洗濯コースでは、水槽13への注水により水槽13内の水が所定の水位に達すると、ヒータユニット32のヒータ38がONされる。制御装置は、水槽内の洗濯水の水温に応じて、ヒータ38をON、OFF制御して洗濯水の温度を制御する。水槽内の水温検知方法については、[1−5.水槽内の水温検知方法]で説明する。
【0074】
水槽13内の水温が所定温度M1(例えば、55℃)に達したときは、ヒータ38をO
FFにする。また、水槽内の測定水温が所定温度M2以下(例えば、53℃以下)に下がったときは、ヒータ38をONにする。上記方法により、水槽13内の洗濯水を所定の水温に調節できる。
【0075】
なお、所定温度M1、M2は各運転コース(例えば、除菌コースや泥汚れコース)毎に設定してもよい。所定温度M1、M2が運転コースによって変更されることにより、洗濯水を各運転コースの目的に適した水温に調節することができる。
【0076】
排水コックユニット34の排水コックを開くことで洗濯水は洗濯機本体11の外部へ排水される。ここで、水槽13内の洗濯水は排水コックユニット34、及び流出経路部37gとヒータ収容容器37を経由して洗濯機本体11の外部へ流出されるため、排水時のヒータ収容容器37内の洗濯水や異物が滞留することを抑制できる。
【0077】
また、温水洗濯終了後は、水槽13内の水温が所定温度以下(例えば50℃以下)になるまで、洗濯兼脱水槽15内に水を追加してパルセータ18により攪拌するという動作を繰り返してもよい。水槽13内の水温が50℃以下になると、排水コックユニット34の排水弁が開き、洗濯水は洗濯機本体11の外部に排水される。水槽13内の水温が所定温度以上(例えば50℃以上)で、水槽13内の水位が限界となったときには、所定時間、一時排水を実施する。
【0078】
上記構成により、排水を路面へ垂れ流す環境においても、水温を下げた状態で排水できる。
【0079】
一方で、衣類の糸くず等により、ヒータ収容容器37の流出経路37gが塞がれると、ヒータ収容容器37と水槽13との水の流れが阻害される虞がある。ヒータ収容容器37と水槽13との水の流れが阻害されると、水槽内の水温が所定温度M1以下にも関わらず、ヒータユニット32内が過熱状態となる場合が想定される。このような場合、ヒータ収容容器37内の水温を検知する温度検知部56の測定水温が、ヒータ過熱設定温度(例えば、95℃)に達した際に、ヒータ38をOFFするように制御することで、ヒータユニット32内の過熱を防止でき、スケールの発生やヒータ収容容器37の劣化を抑制できる。
【0080】
[1−3.ヒータユニット内の洗濯水の流れ]
図10は、実施の形態1における洗濯機のヒータユニット内の洗濯水の流れを示す部分断面斜視図である。
【0081】
図10を用いて、温水洗濯コースにおいてヒータ38がONされた場合のヒータユニット32内の洗濯水の流れを説明する。
【0082】
ヒータ収容容器37上面の加熱部38a根元側には、水槽13内底部と連通する流出経路部37gが形成され、ヒータ収容容器37側面の加熱部38a先端部側方側には、水槽13内底部と連通する排水コックユニット34が連結されている。
【0083】
ヒータ収容容器37内で加熱されて水温の高くなった洗濯水は、ヒータ収容容器37内を上昇する。
【0084】
ここで、ヒータ38からの距離は、
排水コック接続用開口部37aよりも
流出経路部37gの方が近いため、ヒータ38の電源が入った状態では、ヒータ収容容器37内の水温は、排水コック接続用開口部37aよりも流出経路部37gの方が高くなる。そのため、ヒータ収容容器37内を上昇し
た洗濯水は、
図10の矢印Dのように、流出経路部37gを通り水槽13に放出される。
【0085】
ヒータ収容容器37から水槽13へ放出された高温の洗濯水を補うため、水槽13内の低温で比重の重い洗濯水は、流入口34aから排水コックユニット34の排水コックより上流側の排水コック前経路34bを通り、ヒータ収容容器37内底部に流入する(
図10の矢印C)。ヒータ収容容器37内に流入した洗濯水は、ヒータ38の加熱部38aの先端付近から根元付近に向けて流れながらヒータ38の輻射熱を有効利用して加熱されるため、洗濯水を効率的に加熱させることができる。
【0086】
図10に示すように、流出経路部37gが排水コック接続用開口部37aよりも上方に位置することにより、水槽13からヒータ収容容器37内に流入する低温の洗濯水と、ヒータ収容容器37から水槽13へ流出する高温の洗濯水との比重の違いを利用して、効率的に温水の循環を行うことができる。
【0087】
図10に示すように、流出経路部37gの上端が排水コックユニット34の流入口34aよりも上方に位置している。上記構成により、流出経路部37gの上端部と下端部との圧力差の方が、排水コック前経路34bの上端部と下端部との圧力差のよりも大きくなるため、ヒータ収容容器37内の高温の洗濯水が流出経路部37gから水槽13へ流出し易くなる。このため、より効率的に温水の循環を行うことができる。
【0088】
上記のように、ヒータ38との距離が異なる位置に水槽13とヒータ収容容器37とを連結する2つの経路(流入口34a、流出経路部37)を設けることで、各経路内の洗濯水の水温の違いを利用して、自然対流により水槽13内の洗濯水とヒータ収容容器37内の洗濯水とを循環させることができる。このため、ポンプなどの外力を必要とせずに部品点数を減らし、コストを削減することができる。
【0089】
また、ヒータ収容容器37は水槽13よりも小容量のため、ヒータ収容容器37内の洗濯水の方が、水槽13内の洗濯水よりもヒータ38による昇温速度が速く水温が高くなる。そのため、ヒータ収容容器37内に流入する洗濯水に含まれる細菌等を効果的に滅菌できる。
【0090】
さらに、一定時間ごとにパルセータ18を回転させることにより、水槽13内の洗濯水が撹拌し、水槽13内の水温を均一にすることができる。
【0091】
実施の形態1では、第1の排水口33a、及び第2の排水口33bの開口面積は大きい方が、ヒータユニット32と水槽13との洗濯水の循環を活発にすることができる。しかし、第1の排水口33a、第2の排水口33bを真円形状で開口面積を大きくすると、第1の排水口33a、第2の排水口33b周辺の溶着ボス45や雌螺子46等と干渉してしまうため、水槽13底部を大きく改造する必要がある。
【0092】
そこで、
図2のように第1の排水口33aを略楕円形状で構成することにより、溶着ボス45、及び雌螺子46の位置を変更することなく、第1の排水口33aの開口面積を大きくできる。よって、多額の金型投資をすることも無く、低コストで水槽13とヒータ収容容器37内の洗濯水を効率的に循環することができる。
【0093】
また、流出経路部37gの断面積を排水コック前経路34bの断面積よりも大きくしてもよい。ヒータ収容容器37内の高温の洗濯水のほうが水槽13内の低温の洗濯水よりも体積が大きいため、高温の洗濯水が通る流出経路部37gの断面積を大きくすることにより、ヒータ収容容器37の洗濯水と水槽13の洗濯水とを効率的に循環できる。
【0094】
また、
図8に示すように、ヒータ収容容器37底側の内壁下面39aは、ヒータ挿入用開口部37bから排水コック接続用開口部37aに向けて下方に漸次傾斜している。上記構成により、排水時においては、ヒータ収容容器37内の洗濯水は、排水コック接続用開口部37aに向けて流れ、排水コックユニット34、排水経路41を通り洗濯機本体11の外部に流出する。よって、排水時のヒータ収容容器37内の洗濯水や異物が滞留することを防ぐことができる。
【0095】
[1−4.ヒータユニットの状態確認、及びメンテナンス方法]
衣類から発生する比較的大きな糸くず等の異物がヒータ38に付着したり、流出経路部37gを塞いだりすることにより、ヒータ収容容器37内の加熱水が、水槽13へ流出できなくなる虞がある。また、ヒータユニット32の部品に不具合が生じる場合がある。そのため、必要に応じてヒータユニット32内の状態の確認や、補修が必要となる。
【0096】
以下に、ヒータユニット32内の状態確認及びメンテナンス方法について説明する。
【0097】
ヒータユニット32の状態を確認するため、洗濯機本体11後方側の背面開口部11aを覆っている裏板17を取り外し、背面開口部11aから水槽13底面に取り付けられているヒータ収容容器37の蓋体51を取り外す。ヒータ収容容器37と蓋体51は螺子締結により固定されているので、螺子を外すことで蓋体51を取り外すことができる。
【0098】
上記方法により、洗濯機本体11の背面開口部11aからヒータ収容容器37内のヒータ38の状態を確認し、必要に応じてヒータ38表面に付着した糸くず等を取り除くことができる。そのため、ヒータ38に接続されるリード線コネクタを着脱する必要がないので、容易にヒータ38の確認、及びメンテナンスが可能となる。
【0099】
また、板金部材36を補修や交換したい場合には、ヒータ収容容器37から板金部材36を引き抜くことで取外すことができる。
【0100】
また、ヒータユニット32と水槽13、及びヒータユニット32と排水コックユニット34とは、螺子等(図示せず)により締結されて着脱可能に取り付けられている。上記構成により、ヒータユニット32内に侵入した異物を取り除く必要がある場合や、ヒータユニット32の交換が必要となった場合には、洗濯機本体11を横に倒し、洗濯機本体11の底部より、水槽13と排水コックユニット34からヒータユニット32を取り外すことで、ヒータユニット32単体でのメンテナンスが可能となる。また、ヒータユニット32の破損した部品のみをメンテナンスできるので、補修に要する時間や費用を削減できる。
【0101】
[1−5.水槽内の水温検知方法]
図11は、実施の形態1における洗濯機のヒータ収容容器内の水温と水槽内の水温のグラフである。
【0102】
ヒータ38がONされると、ヒータ収容容器37内の水はヒータ38により加熱される。ヒータ収容容器37は水槽よりも容積が小さいので、ヒータ収容容器37内の水温は、水槽13内の水温に比べて通常は10〜40℃高い状態となるが、ヒータ38をOFFして所定時間経過すると、水槽13内の水温とヒータ収容容器37内の水温とが徐々に均一化される。
【0103】
以下に、ヒータ38に配設された温度検知部56を用いた水槽13内の水温の推測方法について説明する。
【0104】
温水洗濯コースでは、水槽13への注水により所定の水位に達すると、ヒータユニット
32がONされる。このときの時刻をTa0とする。次に、ヒータ38がONされてから所定時間経過後(このときの時刻をTa1とする)に、ヒータ38をOFFする。ヒータ38をOFFしてから、ヒータ収容容器37内の水温と水槽13内の水温とが略均一となる所定時間経過後(このときの時刻をTa2とする)に、温度検知部56によりヒータ収容容器37の水温を測定することにより、水槽13内の水温を推測することができる。
【0105】
ヒータ38のON時間(Ta0〜Ta1)は、ヒータ38の出力や、水槽13内の水量、衣量などによって算出するのが望ましい。例えば、ヒータの出力が1500W、水槽13内の水量が66L、衣類の量が5kgで、初期の水温20℃から所定の温度55℃まで加熱する場合は、130分程度である。
【0106】
ヒータ38をOFFする所定時間(Ta1〜Ta2)は、例えば、1〜5分が望ましい。
【0107】
ヒータ38を所定時間OFFした後に、パルセータ18を所定時間回転させることで、水槽13内の洗濯水が撹拌され、水槽13とヒータ収容容器37の水温差の平衡を促進できる。そのため、ヒータ収容容器37と水槽13内との水温差が短時間で小さくなり、水槽13内の水温を精度よく検知できる。
【0108】
次に、温度検知部56を用いて、水槽13内の洗濯水を所定の目標設定水温(例えば、53℃)に調節する制御方法を説明する。
【0109】
水槽13内への給水完了後、水槽13内の給水量や水温等からヒータ38の第1の通電時間を算出し、ヒータ38を第1の通電時間ONする。ここで、ヒータ38は第1の通電時間の間ONし続けてもよいし、間欠運転してもよい。
【0110】
第1の通電時間内において、温度検知部56による水槽13内の洗濯水の推定水温から、水槽13内の洗濯水の昇温速度Vtを算出する。昇温速度Vtと第1の通電時間終了後(このときの時刻をTb1とする)の水槽13内の水温T1から、水槽内の洗濯水が目標設定水温に到達するまでのヒータ38の第2の通電時間を算出する。ここで、ヒータ38は、第2の通電時間の間ONし続けてもよいし、間欠運転してもよい。
【0111】
ヒータ38を第2の通電時間ONし続けた後、温度検知部56により水槽13内の水温T2を推定し、目標設定水温と比較する。水温T2が目標設定水温よりも低いときはヒータ38を所定時間ONして、再度温度検知部56により水槽13内を推定する。水温T2が目標設定水温よりも高いときはヒータ38を所定時間OFFして、再度、温度検知部56により水槽13内を推定する。
【0112】
上記方法により、ヒータ収容容器37内の水温を測定する温度検知部56を用いて、水槽13内の洗濯水の温度調整を行うことができる。そのため、水槽内に水温検知部を配設する必要がなく、低コストで信頼性の高い洗濯機が提供できる。
【0113】
本実施の形態では、排水コックユニット34とヒータ収容容器37に形成された流出経路部37gにより、水槽13とヒータ収容容器37間の連結経路が構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ヒータ収容容器37に流入経路部と流出経路部を形成し、排水コックユニット34を介することなく、水槽13とヒータ収容容器37とを直接連通してもよい。その際には、排水コックユニット34を、水槽13底部にヒータ収容容器37が取り付けられた状態でのヒータ収容容器37の底面又は側面に接続するとよい。
【0114】
本実施の形態では、ヒータ収容容器37内に配設された温度検知部56により水槽13内に水温を検知する構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば水槽13内や排水コックユニット34にサーミスタ等から構成される水槽内温度検知部を配設して水槽13内の水温を測定してもよい。
【0115】
本実施の形態では、水槽13とヒータ収容容器37との連結経路は、排水コックユニット34と流出経路部37gの2つ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、水槽13とヒータ収容容器37との連結経路は3つ以上設けられていてもよい。
【0116】
本実施の形態では、板金部材36は2枚の板金を成形することで構成されているが、例えば1枚の板金から構成されていてもよい。
【0117】
本実施の形態では、水槽13外底面にヒータユニット32が取り付けられた状態で、蓋体51は、ヒータ収容容器37の洗濯機本体11背面側の開口に設けられる構成を説明した。蓋体51は、ヒータ収容容器37における洗濯機本体11の開閉可能な開口がある方向に設けられていればよい。したがって、蓋体51により開閉されるヒータ収容容器37に開口は、洗濯機本体11の前面側に形成されていてもよいし、洗濯機本体11の側面側に形成されていてもよい。
【0118】
本実施の形態では、第1の排水口33aを略楕円形状に形成しているが、第2の排水口略を楕円形状に形成してもよいし、第1の排水口33aおよび第2の排水口33bを略楕円形状としてもよい。
【0119】
本実施の形態では、水槽13内底部とヒータ収容容器37とを連通して自然対流により温水を循環する構成を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、ヒータ収容容器37と洗濯兼脱水槽15とを循環ポンプを介して連通して、循環ポンプによりヒータ収容容器37内で温めた洗濯水を洗濯兼脱水槽15内へ流出させることで温水を循環する構成としてもよい。
【0120】
本実施の形態では、排水コックユニット34の流入口34aに水槽13内の洗濯水を流入するガイド体を設ける構成としてもよい。上記構成とすることで、パルセータ18の駆動による遠心力を利用して、効率的に水槽13からヒータ収容容器37内に洗濯水を流入させることができる。
【0121】
本実施の形態では、洗濯機の一例として縦型洗濯機を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドラム式洗濯機であってもよい。
【0122】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。