(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、
図1〜7を用いて、実施の形態1を説明する。
【0013】
[1−1.構成]
図1は、実施の形態1における測位システムの概念図である。測位システム100は基地局110と測位局120を備えている。基地局110は、地球上の座標が既知である箇所に設置される。測位局120は、座標を求める対象である移動体(例えば車両など)に設置される。システム100は、測位局120の測位を行って、測位局120の地球上の座標を求める。座標は、例えば、緯度・経度・高度の三次元座標であるが、緯度・経度などの二次元座標であってもよい。
【0014】
基地局110および測位局120は、測位衛星(図示せず)からの測位信号を受信する。例えば、測位衛星はGPS衛星である。基地局110は、受信した測位信号に基づいて測位データを生成する。基地局110は、生成された測位データを測位局120に送る。測位局120は、受信した測位データ及び測位局120が生成した測位データなどを用いてRTK(Real Time Kinematic)法による干渉測位を行う。測位局120には測位用の専用端末や、専用ソフトをインストールしたコンピュータなどが含まれる。例えば、測位局120には、測位専用端末、測位機能を有するパーソナルコンピュータ、測位機能を有するスマートフォンまたはタブレット、測位サービスを行うサーバーなどが含まれる。
【0015】
図2は、実施の形態1における基地局110のブロック図である。基地局110は、プロセッサ201と記憶部202と入力部203と出力部204と通信部205と受信部206とバス210を備えている。
【0016】
プロセッサ201は、バス210を介して基地局110の他の要素を制御する。プロセッサ201は、一例として汎用CPU(Central Processing Unit)を用いて構成することができる。また、プロセッサ201は、所定のプログラムを実行することができる。基地局110において、プロセッサ201が所定のプログラムを実行することにより、測位信号に基づいて測位データが生成される。
【0017】
記憶部202は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的あるいは恒久的にその情報を保持する。記憶部202は、いわゆる一次記憶装置と二次記憶装置の総称である。記憶部202は、物理的に複数配置されても良い。記憶部202としては、例えば、DRAM(Direct Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)が用いられる。
【0018】
入力部203は、外部からの情報を受け付ける。入力部203が受け付ける外部からの情報には、基地局110の操作者からの入力に関する情報などが含まれる。入力部203は、一例としてキーボード等の入力インターフェースを用いて構成することができる。
【0019】
出力部204は、外部へ情報を提示する。出力部204が提示する情報には、測位に関する情報などが含まれる。出力部204は、一例としてディスプレイ等の既存の出力インターフェースを用いて構成することができる。
【0020】
通信部205は、通信路を介して外部の機器と通信を行う。通信部205が通信する対象(通信対象)の機器には、測位局120が含まれる。通信部205は、一例として無線LAN通信網、3G通信網など既存の通信網と通信可能な通信インターフェースを用いて構成することができる。
【0021】
受信部206は、測位衛星からの測位信号を受信する。本実施の形態では、測位衛星の一例としてGPS衛星が用いられる。GPS衛星は、測位信号としてL1信号(1575.42MHz)、L2信号(1227.60MHz)等を送信する。
【0022】
以上に挙げられた基地局110の構成は一例である。基地局110の各構成要素の一部を統合して構成することもできる。基地局110の各構成要素の一部を複数の要素に分割して構成することもできる。基地局110の各構成要素の一部を省略することもできる。基地局110に他の要素を付加して構成することもできる。また、本開示の基地局110は国等の自治体が設置した基準局を含む。
【0023】
図3は、実施の形態1における測位局120のブロック図である。測位局120は、プロセッサ301と記憶部302と入力部303と出力部304と通信部305と受信部306とバス310を備えている。
【0024】
プロセッサ301は、バス310を介して測位局120の他の要素を制御する。プロセッサ301は、一例として汎用CPUを用いて構成することができる。また、プロセッサ301は、所定のプログラムを実行することができる。測位局120において、プロセッサ301が所定のプログラムを実行することにより、測位信号に基づいて測位データが生成される。
【0025】
記憶部302は、他の要素から様々な情報を取得し、一時的あるいは恒久的にその情報を保持する。記憶部302は、いわゆる一次記憶装置と二次記憶装置の総称である。記憶部302は、物理的に複数配置されても良い。記憶部302としては、例えば、DRAMやHDDやSSDが用いられる。
【0026】
入力部303は、外部からの情報を受け付ける。入力部303が受け付ける外部からの情報には、測位局120の操作者からの入力に関する情報などが含まれる。入力部303は、一例としてキーボード等の入力インターフェースを用いて構成することができる。
【0027】
出力部304は、外部へ情報を提示する。出力部304が提示する情報には、測位に関する情報などが含まれる。出力部304は、一例としてディスプレイ等の既存の出力インターフェースを用いて構成することができる。
【0028】
通信部305は、通信路を介して外部の機器と通信を行う。通信部305が通信する対象(通信対象)の機器には、基地局110が含まれる。通信部305は、一例として無線LAN通信網、3G通信網など既存の通信網と通信可能な通信インターフェースを用いて構成することができる。
【0029】
受信部306は、測位衛星からの測位信号を受信する。本実施の形態では、測位衛星の一例としてGPS衛星が用いられる。GPS衛星は、測位信号としてL1信号(1575.42MHz)、L2信号(1227.60MHz)等を送信する。
【0030】
以上に挙げられた測位局120の構成は一例である。測位局120の各構成要素の一部を統合して構成することもできる。測位局120の各構成要素の一部を複数の要素に分割して構成することもできる。測位局120の各構成要素の一部を省略することもできる。測位局120に他の要素を付加して構成することもできる。
【0031】
本実施の形態では、測位局120のプロセッサ301が移動体の座標を出力する機能を備えている。ここで、測位局120のプロセッサ301の機能について、図面を参照しながら詳しく説明する。
【0032】
図4は、測位局120のプロセッサ301の機能ブロック図である。
図4に示すように、プロセッサ301は、座標推測部401と座標算出部402と座標出力部403と連続推測判定部404と閾値変更部405とフィックス解連続判定部406と信頼度決定部407を備えている。
【0033】
座標推測部401は、移動体の以前の座標と移動体の速度に関する情報とに基づいて、移動体の現在の座標を推測する機能を備えている。移動体の以前の座標とは、例えば、前回(すなわち、1エポック前に)出力された座標である。プロセッサ301は、1エポック毎に移動体の座標を出力する。なお本開示において移動体の以前の座標と対比する意味で「移動体の現在の座標」という語を用いるが、「移動体の現在の座標とは」「移動体の以前の座標」より後に移動体が存在すると推測される座標を意味し、「現在」は必ずしも座標出力装置が動作している時刻を意味するものではない。エポックは、データ取得の間隔(周期)を表す時間単位である。例えば、5Hzで動作する場合、1秒間に5つのデータが取得されるため、1エポックは0.2秒となる。移動体の速度に関する情報は、例えば、測位データ(後述する)に含まれるドップラー周波数から算出した移動体の速度、または、移動体に備えられた速度検出モジュール(図示せず)から出力される移動体の速度である。速度の情報は、例えば「南方向に秒速Xメートル、東方向に秒速Yメートル、高さ方向に秒速Zメートル」など所定の次元に対する単位時間当たりの移動量の対で定義される情報である。座標推測部401は、移動体の以前の座標(例えば、1エポック前の座標)に、移動体の速度から得られる1エポック分の移動量を加算して、移動体の現在の座標を推測する。このようにして推測された座標は、推測航法座標あるいはDR解(Dead Reckoning解)とも呼ばれる。
【0034】
座標算出部402は、所定地点に設置された基地局110の測位データと移動体に搭載された測位局120の測位データとに基づいて干渉波測位(例えば、RTK演算処理)を実行することにより、フィックス解またはフロート解として、移動体の現在の座標を算出する機能を備えている。
【0035】
ここで、測位データについて説明を行う。本実施の形態において、測位データには、擬似距離情報と搬送波位相情報とドップラー周波数情報が含まれる。
【0036】
擬似距離情報とは、衛星と自身(基地局110および測位局120)との距離に関する情報である。擬似距離情報は、プロセッサ(基地局110のプロセッサ201および測位局120のプロセッサ301)が測位信号を解析することで生成することができる。プロセッサは、(1)測位信号が搬送したコードのパターンと自身が生成したコードのパターンとの相違と、(2)測位信号に含まれるメッセージ(NAVDATA)に含まれる衛星の信号生成時刻と自身の信号受信時刻、の2つに基づいて測位信号の到達時間を求めることができる。プロセッサは、当該到達時間に光速を掛けることで衛星との擬似距離を求めることができる。この距離には衛星のクロックと自身のクロックとの相違等に起因する誤差が含まれる。通常、この誤差を軽減させるために少なくとも4つの衛星に対して擬似距離情報が生成される。
【0037】
搬送波位相情報とは、自身(基地局110および測位局120)が受信した測位信号の位相である。測位信号(L1信号、L2信号等)は所定の正弦波である。搬送波位相情報は、プロセッサ(基地局110のプロセッサ201および測位局120のプロセッサ301)が測位信号を解析することで生成することができる。
【0038】
ドップラー周波数情報とは、衛星と自身(基地局110および測位局120)との相対的な速度に関する情報である。ドップラー周波数情報は、プロセッサ(基地局110のプロセッサ201および測位局120のプロセッサ301)が測位信号を解析することで生成することができる。
【0039】
以上のようにして、基地局110のプロセッサ201および測位局120のプロセッサ301によって、それぞれ測位データが生成される。
【0040】
次に、RTK演算処理について説明する。RTK演算処理は干渉測位の一つであるRTK法を実行する演算処理である。
【0041】
RTK法は、測位衛星が送信する測位信号の搬送波位相積算値を用いて測位局120の測位を行う。搬送波位相積算値とは、衛星からある地点までの(1)測位信号の波の数と(2)位相との和である。搬送波位相積算値が求まれば、測位信号の周波数(および波長)が既知であるので、衛星からある地点までの距離を求めることができる。測位信号の波の数は未知数であるので整数値バイアスと呼ばれる。
【0042】
RTK法を実行するにあたって重要なことは、ノイズの除去と、整数値バイアスの推定である。
【0043】
RTK法においては、二重差と呼ばれる差を演算することでノイズの除去を行う。二重差とは、2つの衛星に対する1つの受信機の搬送波位相積算値の差(一重差)を2つの受信機(本実施の形態においては、基地局110と測位局120)の間でそれぞれ算出した値の差である。本実施の形態においては、RTK法を用いた測位のために少なくとも4つの衛星を使用する。よって、少なくとも4つの衛星の組み合わせ分だけ二重差を演算することになる。この演算においては、基地局110の測位データおよび測位局120の測位データが用いられる。
【0044】
RTK法においては、整数値バイアスの推定を様々な方法で行うことができる。一例として、本実施の形態では、(1)最小二乗法によるフロート(FLOAT)解の推定、および、(2)フロート解に基づくフィックス(FIX)解の検定という手順を実行することにより、整数値バイアスの推定を行う。
【0045】
最小二乗法によるフロート解の推定は、時間単位毎に生成した二重差の組み合わせを用いて連立方程式を作成し、作成した連立方程式を最小二乗法によって解くことで実行される。連立方程式は、エポックと呼ばれる時間単位毎に生成される。この演算においては、基地局110の測位データおよび測位局120の測位データおよび基地局110の既知の座標が用いられる。このようにして求められた整数値バイアスの推定値をフロート解と呼ぶ。
【0046】
以上のようにして求められたフロート解は実数であるのに対して、整数値バイアスの真の値は整数である。よって、フロート解を丸めることで整数値にする作業が必要になる。しかし、フロート解を丸める組み合わせには複数通りの候補が考えられる。よって、どの候補が正しい整数値であるかを検定する必要がある。検定によって整数値バイアスとしてある程度確からしいとされた解をフィックス解と呼ぶ。なおここでの検定は後述する信頼度決定部407での信頼度を用いて行われる。フィックス解が定まることを「整数アンビギュイティが決定された」とも呼ぶ。なお、整数値の候補の絞込みを効率化するために、基地局110の測位データが用いられる。
【0047】
図4に戻って、プロセッサ301の構成の説明を続ける。座標出力部403は、移動体の現在の座標がフィックス解として算出された場合には、移動体の現在の座標としてフィックス解を出力する。
【0048】
ここで、本実施の形態の座標出力の原理を図面を参照して説明する。
図5に示すように、RTK法による干渉測位を移動体の測位に単に適用すると、フロート解に測位誤差(飛び)が生じる場合がある。
図5の例では、時刻t0からt4にかけてはフィックス解が得られて出力されているが、時刻t5からt12にかけてはフィックス解が得られずフロート解が出力されている。時刻t13からt14にかけては再びフィックス解が得られて出力されている。なお、
図5〜7では、フィックス解は四角印、フロート解は三角印、DR解は丸印で図示される。また、出力される解は黒塗り、出力されない解は白塗りで図示される。
図5からわかるように、時刻t5からt12にかけて(特に時刻t5において)大きな測位誤差が生じている。
【0049】
そこで、本実施の形態では、
図6に示すように、所定の条件を満たした場合には、DR解を移動体の現在の座標として出力する。例えば、フィックス解が連続して所定時間(所定時間1)以上選択されている場合には、フィックス解が得られていなければ、DR解を移動体の現在の座標として出力する。
図6の例では、時刻t0からt3の間(所定時間1)連続してフィックス解が選択されており、時刻t4以降はDR解を選択できるようになる。時刻t4では、フィックス解が得られているためDR解は選択されないが、時刻t5からt10にかけては、フィックス解が得られていないためDR解が選択され、移動体の現在の座標として出力される。
【0050】
なお、この場合、DR解が連続して所定時間(所定時間2)以上選択されている場合には、DR解の誤差の累積を考慮して、フィックス解が得られていない場合でも、DR解を移動体の現在の座標として出力しない為、フロート解を出力する。
図6の例では、時刻t5からt10の間(所定時間2)連続してDR解が選択される。したがって、時刻t11では、DR解は選択されず、フロート解が選択される。
【0051】
また、DR解を選択できるようになっている場合でも、フィックス解が得られていれば、DR解を出力せずにフィックス解を出力する。
図7の例では、時刻t0からt3の間(所定時間1)連続してフィックス解が選択されており、時刻t4以降はDR解を選択できるようになる。そして、時刻t5からt8まで連続してDR解が選択されているが、時刻t9においてフィックス解が得られているため、この場合には、時刻t9の移動体の現在の座標としてフィックス解が出力される。
【0052】
連続推測判定部404は、速度に関する情報から推測した移動体の現在の座標が所定回数以上連続して出力されたか否かを判定する機能を備えている。本実施の形態では、連続推測判定部404は、DR解が所定回数以上連続して出力されたか否かを判定する。座標出力部403は、DR解が所定回数以上連続して出力したと判定された場合には、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。所定回数は、時間で(すなわち所定時間として)定めることも可能である。上述のように座標の出力は1エポック毎に行われる。1エポックが0.2秒である場合、例えば、所定回数は300回であり、所定時間(
図8における所定時間2)は60秒である。
【0053】
フィックス解連続判定部406は、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されなかった場合に、それ以前に移動体の現在の座標が所定回数以上連続してフィックス解として算出されていたか否かを判定する機能を備えている。本実施の形態では、フィックス解連続判定部406は、移動体の現在の座標が所定回数以上連続してフィックス解として算出されていたか否かを判定する。座標出力部403は、所定回数以上連続してフィックス解として出力されていたと判定された場合には、DR解を移動体の現在の座標として出力し、所定回数以上連続してフィックス解として出力されていたと判定されなかった場合には、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。この所定回数も、時間で(すなわち所定時間として)定めることも可能である。上述のように座標の出力は1エポック毎に行われる。1エポックが0.2秒である場合、例えば、所定回数は100回であり、所定時間(
図8における所定時間1)は20秒である。
【0054】
信頼度決定部407は、干渉波測位によるフィックス解の算出の信頼度を決定する機能を備えている。信頼度とは、RTK演算の解を用いることで算出される測位結果が真の値に近いか否かを統計的に示す度数である。本実施の形態では、信頼度としてAR(Ambiuity Ratio)値が用いられる。信頼度決定部407は、RTK測位演算を実行する毎にAR値を算出する。座標出力部403は、AR値が所定値(例えば3.0)より低い場合には、フロート解を移動体の現在の座標として出力し、AR値が所定値(例えば3.0)より高い場合には、フィックス解を移動体の現在の座標として出力する。
【0055】
[1−2.動作]
以上のように構成した測位システム100が行う測位処理を説明する。
図8は、実施の形態1における測位処理を示すフローチャートである。
【0056】
なお、本実施の形態では、測位局120のプロセッサ301が測位処理を行う例を説明する。ただし、本開示の測位処理は、測位局120そのものによって行われるものに限定されない。測位処理は、測位システム100の内部に追加された汎用コンピュータによって実行されても良い。
【0057】
図8に示すように、ステップS801において、プロセッサ301は測位処理を開始する。測位処理を開始するタイミングは、任意に決めることができる。例えば、測位局120の電源が投入された際に、プロセッサ301が測位処理を開始しても良い。また、測位局120の入力部303によって測位処理を開始するコマンドが入力された際に、プロセッサ301が測位処理を開始しても良い。
【0058】
ステップS802において、プロセッサ301は、基地局110および測位局120の測位データを取得する。プロセッサ301は、通信部305を介して基地局110の測位データを取得する。プロセッサ301は、受信した基地局110の測位データを逐次取得する。プロセッサ301は、取得した基地局110の測位データを記憶部302に記録する。基地局110の測位データは、基地局110のプロセッサ201が生成したものである。基地局110のプロセッサ201は受信部206が受信した測位信号に基づいて測位データを生成する。また、プロセッサ301は、受信部306が受信した測位信号に基づいて測位データを生成することにより、測位局120の測位データを取得する。プロセッサ301は、取得した測位局120の測位データを記憶部302に記録する。
【0059】
ステップS803において、測位局120の速度と1エポック前の測位結果(出力された座標)から、移動体の現在の座標としてDR解が算出(推測)される。また、ステップS804において、RTK演算処理が実行され、移動体の現在の座標としてフィックス解またはフロート解が算出される。そして、このステップS804では、搬送波位相の整数アンビギュイティが定まるか否か、すなわちフィックス解が求まるか否かが判定される。本実施の形態ではRTK演算処理で得られた解のAR値が例えば3.0以上であればアンビギュイティが決定した(フィックス解を算出した)とする。
【0060】
ステップS804で整数アンビギュイティが定まった場合、すなわち、移動体の現在の座標としてフィックス解が求められた場合には、ステップS805において、フィックス解が測位結果として出力され、ステップS806において、フィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が更新(インクリメント)される。そして、ステップS807において、フィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいか否かの判定が行われる。例えば、所定回数は100回であり、所定時間(
図8における所定時間1)は20秒である。
【0061】
ステップS807でフィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいと判定された場合には、ステップS808において、AR値が所定値(例えば、5.0)より大きいか否かの判定が行われる。ステップS808でAR値が所定値より大きいと判定された場合には、ステップS809において、DR選択フラグが有効に設定される。一方、ステップS807でフィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいと判定された場合、あるいは、ステップS808でAR値が所定値より小さいと判定された場合には、ステップS810において、DR選択フラグが無効に設定される。
【0062】
その後、ステップS811において、DR解の連続選択時間をクリアする。そして、ステップS812において、測位処理終了命令が割り込んだか否かを判定する。測位処理終了命令が割り込まなければ、ステップS802に戻って測位処理を繰り返す。測位処理終了命令が割り込んだら、ステップS813において、測位処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS804で整数アンビギュイティが定まらなかった場合、すなわち、移動体の現在の座標としてフィックス解が求められなかった場合には、ステップS814において、フィックス解の連続選択時間をクリアする。そして、ステップS815において、DR選択フラグが有効であるか否かの判定が行われる。
【0064】
ステップS815でDR選択フラグが有効でない(無効である)と判定された場合には、ステップS816において、フロート解が測位結果として出力される。その後、ステップS810へ進み、DR選択フラグを無効にする。
【0065】
ステップS815でDR選択フラグが有効であると判定された場合には、ステップS817において、DR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいか否かの判定が行われる。例えば、所定回数は300回であり、所定時間(
図8における所定時間2)は60秒である。
【0066】
ステップS817でDR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいと判定された場合には、ステップS816へ進み、フロート解が測位結果として出力される。一方、ステップS817でDR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいと判定された場合には、ステップS818において、DR解が測位結果として出力され、ステップS819において、DR解の連続選択時間が更新(インクリメント)される。
【0067】
なお、上記のステップS806からS810までの処理は、必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。ステップS806からS810までの処理を省略した場合には、ステップS814およびステップS815の処理も省略される。また、ステップS807の判定処理とステップS808の判定処理は、いずれか一方だけが行われてもよい。
【0068】
[1−3.効果等]
以上のように、本実施の形態では、移動体の以前の座標と移動体の速度に関する情報とに基づいて、移動体の現在の座標を推測し、所定地点に設置された基地局の測位データと移動体に搭載された測位局の測位データに基づいて干渉波測位を実行することにより、フィックス解またはフロート解のいずれかとして、移動体の現在の座標を算出し、移動体の現在の座標がフィックス解として算出された場合はフィックス解として算出された移動体の現在の座標を出力し、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されていた時間を判定し、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されていた時間が所定の値以上である場合で、かつ、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されなかった場合には、速度に関する情報から推測した移動体の現在の座標を出力する。これにより、フロート解の測位誤差(飛び)の影響を抑えることができる。
【0069】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。そこで以下、他の実施の形態を説明する。
【0070】
(実施の形態2)
以下、
図9〜13を用いて、実施の形態2を説明する。ここでは、実施の形態2における測位システムが、実施の形態1と相違する点を中心に説明する。ここで特に言及しない限り、本実施の形態の構成および動作は、実施の形態1と同様である。
【0071】
[2−1.構成]
図4は、本実施の形態の測位局120のプロセッサ301の機能ブロック図である。
図4に示すように、プロセッサ301は、座標推測部401と座標算出部402と座標出力部403と連続推測判定部404と閾値変更部405とフィックス解連続判定部406と信頼度決定部407を備えている。
【0072】
本実施の形態では、座標出力部403は、移動体の現在の座標がフィックス解として算出された場合には、移動体の現在の座標としてフィックス解を出力する。一方、座標出力部403は、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されなかった場合には、フロート解またはDR解のいずれかを、移動体の現在の座標として出力する。この場合、DR解とフロート解との乖離(DR解とフロート解の座標間の距離)が所定の閾値より大きければ、DR解を移動体の現在の座標として出力し、乖離が所定の閾値より小さければ、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。
【0073】
ここで、本実施の形態の座標出力の原理を図面を参照して説明する。
図9に示すように、RTK法による干渉測位を移動体の測位に単に適用すると、フロート解に測位誤差(飛び)が生じる場合がある。
図9の例では、時刻t0からt3にかけては実際の移動軌跡に近いフロート解が得られているが、時刻t4からt7にかけて(特に時刻t4において)大きな測位誤差が生じている。なお、
図9〜12でも、フロート解は三角印、DR解は丸印で図示される。また、出力される解は黒塗り、出力されない解は白塗りで図示される。
【0074】
そこで、本実施の形態では、
図10に示すように、DR解とフロート解との乖離(DR解とフロート解の座標間の距離)が所定の閾値より大きければ、DR解を移動体の現在の座標として出力し、乖離が所定の閾値より小さければ、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。
図10〜12では、閾値がDR解を中心とする破線円で図示される。
図10の例では、時刻t1からt3、t8およびt9において、DR解とフロート解との乖離が閾値より小さいため(フロート解が破線円の内部に位置しているため)、フロート解が移動体の現在の座標として出力されている。一方、時刻t4からt7にかけては、DR解とフロート解との乖離が閾値より大きいため(フロート解が破線円の外部に位置しているため)、DR解が移動体の現在の座標として出力されている。
【0075】
連続推測判定部404は、速度に関する情報から推測した移動体の現在の座標が所定回数以上連続して出力されたか否かを判定する機能を備えている。本実施の形態では、連続推測判定部404は、DR解が所定回数以上連続して出力されたか否かを判定する。座標出力部403は、DR解が所定回数以上連続して出力したと判定された場合には、乖離が所定の閾値より大きい場合であっても、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。所定回数は、時間で(すなわち所定時間として)定めることも可能である。上述のように座標の出力は1エポック毎に行われる。1エポックが0.2秒である場合、例えば、所定回数は300回であり、所定時間(
図13における所定時間2)は60秒である。
【0076】
閾値変更部405は、速度に関する情報から推測した移動体の現在の座標が連続して出力された回数に応じて、所定の閾値の大きさを変更する機能を備えている。例えば、
図11に示すように、閾値変更部405は、DR解が連側して出力される毎に、閾値を徐々に大きくするように変更してもよい。
図11の例では、時刻t5からt7にかけて、閾値が徐々に大きくなるように(破線円の半径が大きくなるように)変更されている。
【0077】
また、
図12に示すように、閾値変更部405は、移動体の進行方向に対して閾値が大きくなるように閾値に重み付けをしてもよい。また、閾値変更部405は、移動体の進行方向と交差する方向(例えば垂直方向)に対して閾値が小さくなるように閾値に重み付けをしてもよい。あるいは、閾値変更部405は、移動体の進行方向に対して閾値が大きくなるように閾値に重み付けをするとともに、移動体の進行方向と交差する方向(例えば垂直方向)に対して閾値が小さくなるように閾値に重み付けをしてもよい。
図12では、変更された閾値が、例えば楕円のような形状の破線で示されている。
【0078】
フィックス解連続判定部406は、移動体の現在の座標がフィックス解として算出されなかった場合に、それ以前に移動体の現在の座標が所定回数以上連続してフィックス解として算出されていたか否かを判定する機能を備えている。本実施の形態では、フィックス解連続判定部406は、移動体の現在の座標が所定回数以上連続してフィックス解として算出されていたか否かを判定する。座標出力部403は、所定回数以上連続してフィックス解として出力されていたと判定された場合には、DR解を移動体の現在の座標として出力し、所定回数以上連続してフィックス解として出力されていたと判定されなかった場合には、フロート解を移動体の現在の座標として出力する。この所定回数も、時間で(すなわち所定時間として)定めることも可能である。上述のように座標の出力は1エポック毎に行われる。1エポックが0.2秒である場合、例えば、所定回数は100回であり、所定時間(
図13における所定時間1)は20秒である。
【0079】
信頼度決定部407は、干渉波測位によるフィックス解の算出の信頼度を決定する機能を備えている。信頼度とは、RTK演算の解を用いることで算出される測位結果が真の値に近いか否かを統計的に示す度数である。本実施の形態では、信頼度としてAR(Ambiuity Ratio)値が用いられる。信頼度決定部407は、RTK測位演算を実行する毎にAR値を算出する。座標出力部403は、AR値が所定値(例えば3.0)より低い場合には、フロート解を移動体の現在の座標として出力し、AR値が所定値(例えば3.0)より高い場合には、フィックス解を移動体の現在の座標として出力する。
【0080】
[2−2.動作]
以上のように構成した測位システム100が行う測位処理を説明する。
図13は、実施の形態2における測位処理を示すフローチャートである。
【0081】
なお、本実施の形態では、測位局120のプロセッサ301が測位処理を行う例を説明する。ただし、本開示の測位処理は、測位局120そのものによって行われるものに限定されない。測位処理は、測位システム100の内部に追加された汎用コンピュータによって実行されても良い。また、下記のステップS1306からS1310までの処理は、必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。ステップS1306からS1310までの処理を省略した場合には、ステップS1314およびステップS1315の処理も省略される。また、ステップS1307の判定処理とステップS1308の判定処理は、いずれか一方だけが行われてもよい。
【0082】
図13に示すように、ステップS1301において、プロセッサ301は測位処理を開始する。測位処理を開始するタイミングは、任意に決めることができる。例えば、測位局120の電源が投入された際に、プロセッサ301が測位処理を開始しても良い。また、測位局120の入力部303によって測位処理を開始するコマンドが入力された際に、プロセッサ301が測位処理を開始しても良い。
【0083】
ステップS1302において、プロセッサ301は、基地局110および測位局120の測位データを取得する。プロセッサ301は、通信部305を介して基地局110の測位データを取得する。プロセッサ301は、受信した基地局110の測位データを逐次取得する。プロセッサ301は、取得した基地局110の測位データを記憶部302に記録する。基地局110の測位データは、基地局110のプロセッサ201が生成したものである。基地局110のプロセッサ201は受信部206が受信した測位信号に基づいて測位データを生成する。また、プロセッサ301は、受信部306が受信した測位信号に基づいて測位データを生成することにより、測位局120の測位データを取得する。プロセッサ301は、取得した測位局120の測位データを記憶部302に記録する。
【0084】
ステップS1303において、測位局120の速度と1エポック前の測位結果(出力された座標)から、移動体の現在の座標としてDR解が算出(推測)される。また、ステップS1304において、RTK演算処理が実行され、移動体の現在の座標としてフィックス解またはフロート解が算出される。そして、このステップS1304では、搬送波位相の整数アンビギュイティが定まるか否か、すなわちフィックス解が求まるか否かが判定される。本実施の形態ではRTK演算処理で得られた解のAR値が例えば3.0以上であればアンビギュイティが決定した(フィックス解を算出した)とする。
【0085】
ステップS1304で整数アンビギュイティが定まった場合、すなわち、移動体の現在の座標としてフィックス解が求められた場合には、ステップS1305において、フィックス解が測位結果として出力され、ステップS1306において、フィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が更新(インクリメント)される。そして、ステップS1307において、フィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいか否かの判定が行われる。例えば、所定回数は100回であり、所定時間(
図13における所定時間1)は20秒である。
【0086】
ステップS1307でフィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいと判定された場合には、ステップS1308において、AR値が所定値(例えば、5.0)より大きいか否かの判定が行われる。ステップS1308でAR値が所定値より大きいと判定された場合には、ステップS1309において、DR選択フラグが有効に設定される。一方、ステップS1307でフィックス解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいと判定された場合、あるいは、ステップS1308でAR値が所定値より小さいと判定された場合には、ステップS1310において、DR選択フラグが無効に設定される。
【0087】
その後、ステップS1311において、DR解の連続選択時間をクリアする。そして、ステップS1312において、測位処理終了命令が割り込んだか否かを判定する。測位処理終了命令が割り込まなければ、ステップS1302に戻って測位処理を繰り返す。測位処理終了命令が割り込んだら、ステップS1313において、測位処理を終了する。
【0088】
一方、ステップS1304で整数アンビギュイティが定まらなかった場合、すなわち、移動体の現在の座標としてフィックス解が求められなかった場合には、ステップS1314において、フィックス解の連続選択時間をクリアする。そして、ステップS1315において、DR選択フラグが有効であるか否かの判定が行われる。
【0089】
ステップS1315でDR選択フラグが有効でない(無効である)と判定された場合には、ステップS1316において、フロート解が測位結果として出力される。その後、ステップS1310へ進み、DR選択フラグを無効にする。
【0090】
ステップS1315でDR選択フラグが有効であると判定された場合には、ステップS1317において、DR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいか否かの判定が行われる。例えば、所定回数は300回であり、所定時間(
図13における所定時間2)は60秒である。
【0091】
ステップS1317でDR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より大きいと判定された場合には、ステップS1316へ進み、フロート解が測位結果として出力される。一方、ステップS1317でDR解の連続選択時間(連続選択回数)が所定時間(所定回数)より小さいと判定された場合には、ステップS1318において、DR解の連続選択時間に基づいて閾値(所定値)を更新し、ステップS1319において、フロート解とDR解との乖離が閾値(所定値)より小さいか否かを判定する。
【0092】
フロート解とDR解との乖離が閾値(所定値)より小さいと判定された場合には、ステップS1316へ進み、フロート解が測位結果として出力される。一方、フロート解とDR解との乖離が閾値(所定値)より大きいと判定された場合には、ステップS1320において、DR解が測位結果として出力され、ステップS1321において、DR解の連続選択時間が更新(インクリメント)される。
【0093】
[2−3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、移動体の以前の座標と移動体の速度に関する情報とに基づいて、移動体の現在の座標(推測値)が推測されるとともに、基地局110の測位データと測位局120の測位データとに基づいて干渉波測位が実行されてフィックス解またはフロート解として移動体の現在の座標が算出される。移動体の現在の座標がフィックス解として算出された場合には、フィックス解が移動体の現在の座標として算出される。フィックス解が最も信頼度が高いと考えられるためである。移動体の現在の座標がフィックス解として算出されなかった場合には、推測値とフロート解とが比べられ、推測値とフロート解との乖離が大きければ、移動体の現在の座標として推測値が出力される。この場合、フロート解の信頼度が低い(フロート解よりも推測値のほうが信頼度が高い)と考えられるためである。一方、推測値とフロート解との乖離が小さければ、移動体の現在の座標としてフロート解が出力される。この場合、フロート解の信頼度が高い(推測値よりもフロート解のほうが信頼度が高い)と考えられるためである。このように、フロート解の信頼度が低い場合には、フロート解が出力されずに推測値が出力される。これにより、フロート解の測位誤差(飛び)の影響を抑えることができる。
【0094】
また、上記実施の形態1および2で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0095】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。