(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの小型化に伴い、多くの電子回路部品には表面実装部品(SMD:Surface Mount Device)が多用されている。SMDをプリント基板にはんだ付けする際には、リフロー方式が主流となっている。SMDが実装される基板は、銅箔で形成されるプリントパターンが表側に設けられ、そのプリントパターンの上にSMDが載置される。そして、SMDとプリントパターンの接触部分にクリームはんだが塗布された上で、リフロー炉で加熱される。短時間にハンダが溶ける温度にまで温度が上昇することによって、クリームはんだが溶けることで、はんだ付けが完了する。
【0003】
リフロー炉によるリフロー方式はんだ付けは、プリント基板の表面にSMDが平面的に載置されるので、はんだ付けされる箇所も平面的である。よって、はんだは加熱されるとはんだ付けされる箇所に対して平面的に広がる。しかし、部品やモジュール等の形状によっては、はんだ付けされる箇所が平面的でないために、リフロー方式が使えない場合がある。
【0004】
図14は、携帯電話やスマートフォン等に組み込まれる、CMOSイメージセンサ1401を概略的に示す外観斜視図である。
カメラモジュールとも呼ばれるCMOSイメージセンサ1401は、対物レンズ1402に図示しないボイスコイルモータが組み込まれており、ボイスコイルモータを駆動制御することで、フォーカス制御が行われる。ボイスコイルモータに印加される制御電流は、他の電子回路にとってノイズとなり、EMI(Electromagnetic Interference)等の悪影響を及ぼす。このため、ボイスコイルモータを含むレンズ等の部品を金属製のカバー1403で覆い、カバー1403を接地ノードに接続する必要がある。
【0005】
図14に示すように、金属製のカバー1403は、フレキシブルプリント基板1404の接地ノード端子1405にはんだ付けされる。しかし、この金属製のカバー1403とフレキシブルプリント基板1404との接触部分は、凡そ90°の角度が形成されており、立体的な位置関係を有する。また、カバー1403内部に形成される回路の信号端子1406とフレキシブルプリント基板1404の信号端子1407との間にも信号線を形成するためのはんだ付けが必要であり、このはんだ付けの箇所も凡そ90°の角度が形成されている。
このように、はんだ付けされる部材同士に急峻な角度が形成され、立体的な位置関係を有する場合、溶融したはんだがはんだ付けの箇所に均等に広がらないので、リフロー炉を用いたはんだ付けがほぼ不可能である。また、CMOSイメージセンサ1401のようにはんだ付けされる箇所が角度を有する場合でなくとも、はんだ付けしようとする部品やモジュール等の一部に、高温に弱い材料が使用されている場合、リフロー炉を用いるとその材料が高熱で破壊されてしまい、目的とする部品やモジュールを作成することができない。
こういった、リフロー方式を適用できない部品やモジュールのはんだ付けに、レーザはんだ付け装置が用いられる。
【0006】
なお、本発明に近いと思われる技術が開示されている先行技術文献を、特許文献1及び特許文献2に示す。
特許文献1には、レーザを用いたはんだボール接合装置(レーザはんだ付け装置)の技術が開示されている。このはんだボール接合装置は、ほぼ垂直関係の位置にある二つのはんだ付け対象部材をはんだボール接合によって接合するため、先ずはんだボールを正確に位置決めし、ほぼ互いに垂直関係に位置するはんだ付け対象部材に安定した状態ではんだボールを載置する。しかる後レーザ照射によりはんだボールを溶融して、はんだ付けする。
特許文献2には、レーザ照射型はんだ接合装置(レーザはんだ付け装置)の技術が開示されている。このレーザ照射型はんだ接合装置は、はんだ供給装置からレーザビームの光路に糸はんだを供給し、溶融したはんだボールを形成する。そしてコンプレッサからヘッド内に圧縮ガスを供給し、小孔から溶融したはんだボールを吹き付ける。接合箇所に吹き付けたはんだボールに対し、小孔から出射したレーザビームを照射する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[レーザはんだ付け装置の外観]
図1は、本発明の実施形態に係る、レーザはんだ付け装置101の概略的な正面図である。
図1に示すように、レーザはんだ付け装置101には、半導体レーザ光源102が取り付けられたレーザ鏡筒103を有する。レーザ鏡筒103の先端には第一反射鏡104がレーザ鏡筒103の長手方向に対して45°の傾きで内蔵されている。更に、本体部105には第二反射鏡106が第一反射鏡104と同じ傾きで内蔵されており、第一反射鏡104によって反射されたレーザ光を本体部105の先端にあるはんだホルダ107が保持するはんだボール201(
図2参照)に照射するように構成されている。レーザはんだ付け装置101は、はんだ付け対象物415(
図4参照)に均一な量のはんだを与えるために、粒径が均一なはんだボール201を採用する。
本発明の実施形態に係るレーザはんだ付け装置101は、従来技術の高出力な固体レーザに代えて、より出力が低くはんだ付けに適した、500nm以下の波長の可視光を発光する青色半導体レーザを採用している。
【0014】
レーザはんだ付け装置101の本体部105の先端には、略円錐形状のはんだホルダ107が設けられている。はんだホルダ107は中空形状であり、その先端は溶融したはんだボール201を吐出するための穴を有する。はんだホルダ107の詳細については
図3以降で詳述する。
はんだホルダ107はホルダ保持部108に取り付けられる。ホルダ保持部108もまた略円錐形状であり、はんだ供給装置109から延びる導管110が接続されている。また、圧縮された窒素ガス(圧力ガス)が供給されるガス導入口111が設けられ、図示しない圧縮ガス導入機構が窒素ガスバルブ(
図4参照)を通じて接続される。更に、はんだホルダ107には図示しない圧力センサ412(
図4参照)が封入されており、窒素ガスの気圧を計測して、窒素ガスの気圧を示すデジタルデータを出力する。
窒素ガスは、溶融したはんだボール201をはんだホルダ107から吐出するための圧力を与えると共に、溶融したはんだの酸化を防ぐために用いられる。
【0015】
なお、レーザはんだ付け装置101には、図示しない上下駆動機構が設けられている。上下駆動機構は、
図7以降で後述するはんだ付け工程において、図示しないベルトコンベア等の移送機構によってはんだ付け対象物415の、はんだ付け箇所415a(
図7参照)がはんだホルダ107の直下に到達したら、レーザはんだ付け装置101を下方向に駆動して、はんだホルダ107をはんだ付け対象物415のはんだ付け対象箇所に近接させる。そして、はんだ付けの処理が完遂したらレーザはんだ付け装置101を上方向に駆動して、はんだホルダ107をはんだ付け対象物415から離間させる。
【0016】
[はんだローラ113の構造]
はんだ供給装置109は、はんだボールタンク112と、はんだローラ113と、導管110を有する。また、導管110の途中には金属検出センサで構成されるはんだ通過センサ114が設置されており、はんだ通過センサ114ははんだボール201が導管110を通過したことを検出する。
図2は、はんだローラ113の拡大図である。なお、参考のためにはんだボール201も図示している。
はんだローラ113は、円盤の円周にはんだボール201の大きさより僅かに大きい窪み113aが、90°ずつ4箇所に設けられている。はんだローラ113は図示しないステッピングモータによって回転駆動される。すると、窪み113aにはんだボール201が1個嵌まり込み、窪み113aが真下に到達すると、はんだボール201が落ちて導管110へ導かれる。なお、はんだローラ113に設けられる窪み113aの数は必ずしも4箇所である必要はなく、任意である。
【0017】
[はんだホルダ107の構造]
図3は、はんだホルダ107の先端部分の構造を示す模式断面図である。はんだホルダ107はアルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、黄銅、真鍮、またはクロムメッキされた金属等、あるいはセラミック等、はんだ濡れ性が低く、はんだが付着しにくく、また溶融したはんだの高温にも耐えうる物質で形成される。
略円錐形状のはんだホルダ107の内部には、先端に向かって細くなるテーパ状空間107aが形成されている。この空間のテーパ状空間107aの内壁は、はんだボール201を確実にはんだホルダ107の先端へ導く。
テーパ状空間107aの先端は一定の太さになる円筒状空間107bが形成されている。更に円筒状空間107bの先端ははんだボール201に当接するはんだ係止部107cが形成される。はんだ係止部107cには円筒状の穴である吐出口107dが開けられており、この吐出口107dから溶融したはんだが吐出される。
【0018】
はんだボール201の直径をSR、吐出口107dの直径をD1、円筒状空間107bの直径をD2とすると、以下の不等式に示す関係を有する。
D1<SR<D2
このため、導管110を通じてはんだホルダ107に落とし込まれたはんだボール201は、はんだホルダ107内のテーパ状空間107aにおいて、その内壁に滑り込むように円筒状空間107bに嵌まり込み、はんだ係止部107cではんだホルダ107に留め置かれる。はんだボール201がはんだ係止部107cに到達すると、吐出口107dははんだボール201によって塞がれる。
【0019】
[はんだ付けシステム401の全体構成及び制御装置のハードウェア構成]
図4は、はんだ付けシステム401の全体構成と、レーザはんだ付け装置101を制御する制御装置402のハードウェアの構成を示すブロック図である。
はんだ付けシステム401は、レーザはんだ付け装置101と制御装置402で構成される。
周知のマイコンである制御装置402は、バス403に接続された、CPU404、ROM405、RAM406、電気的に書き換え可能なフラッシュメモリ等の不揮発性ストレージ407、入力ポート408、出力ポート409、そしてタイマ410を備える。不揮発性ストレージ407にはマイコンを制御装置402として稼働させるための制御プログラムが格納されている。なお、フラッシュメモリを用いてROM405と不揮発性ストレージ407を兼用してもよい。
また、制御装置402はマイコンに限らず、適切なインターフェースを設けたパソコンでもよい。
【0020】
入力ポート408には、レーザはんだ付け装置101の近傍に設けられ、フォトインタラプタ等で構成される対象物センサ411と、はんだボール201が導管110を通過したことを検出するはんだ通過センサ114と、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力を測定する圧力センサ412が接続される。
出力ポート409には、はんだローラ113を回転駆動するステッピングモータ413と、レーザはんだ付け装置101内部に窒素ガスの注入を制御する窒素ガスバルブ414(ガスバルブ)と、レーザ鏡筒103に組み込まれている半導体レーザ光源102が接続される。
すなわち制御装置402は、対象物センサ411ではんだ付け対象物415の存在を検出して、はんだ通過センサ114ではんだボール201の正常な供給を検出して、圧力センサ412で窒素ガスの圧力を測定する。
また制御装置402は、ステッピングモータ413を回転駆動してはんだボール201をはんだホルダ107へ供給し、窒素ガスバルブ414を制御して適切なタイミングでレーザはんだ付け装置101に窒素ガスを注入し、半導体レーザ光源102を制御して適切なタイミングではんだボール201を溶融させる。
【0021】
[制御装置402のソフトウェア機能]
図5は、制御装置402のソフトウェアの機能を示すブロック図である。
対象物センサ411が出力する論理信号は、Dフリップフロップ(以下「D−FF」と略、
図5の表記も同じ)501のCp入力端子に供給される。
はんだ通過センサ114が出力する論理信号は、D−FF501のR入力端子に供給される。
D−FF501のD入力端子は論理の真を示す論理信号ノードに接続されており、常に論理の真の状態である。
すなわち、D−FF501は対象物センサ411の出力信号のアップエッジを論理の真の論理信号に変換して出力し、はんだ通過センサ114が論理の真の論理信号を出力したことによって論理の偽の論理信号を出力する。対象物センサ411の出力信号のアップエッジとは、新たなはんだ付け対象物415の到着を対象物センサ411が検出したことを示す。
【0022】
D−FF501のQ出力端子から出力される論理信号は、タイマ410の論理信号と共にANDゲート502の入力に接続される。
タイマ410は後述するコンパレータ503の出力信号から計時を始め、所定時間を計時すると後述するレーザ制御部504をオフ制御する論理信号を出力する。したがって、ANDゲート502の出力信号は、半導体レーザ光源102がオフ制御されている状態において、新たなはんだ付け対象物415がはんだホルダ107の直下に到着したことを対象物センサ411が検出した時に、論理の真を示す信号を出力する。
ANDゲート502の出力信号は、はんだ通過センサ114が出力する論理信号と共にモータ制御部505に入力される。
【0023】
モータ制御部505は、ANDゲート502の出力信号が論理の真になったことを受けて、ステッピングモータ413を90°回転させるステッピングパルスを出力する。そして、モータ制御部505に内蔵されているタイマが規定する時間内にはんだ通過センサ114の出力信号が論理の真になったら、動作を停止する。
もし、モータ制御部505に内蔵されているタイマが規定する時間内にはんだ通過センサ114の出力信号が論理の真にならなかった場合、それははんだローラ113がはんだボール201の投入に失敗したことを示す。そこで、再度、ステッピングモータ413を90°回転させるステッピングパルスを出力する。
【0024】
圧力センサ412の圧力を示すデータは、圧力閾値を示すデータと共にデジタルのコンパレータ503に入力される。コンパレータ503は、圧力センサ412が検出する窒素ガスの圧力が圧力閾値506を越えた時に、論理の真を出力する。
タイマ410の出力信号は、コンパレータ503が出力する論理信号と共にバルブ制御部507に入力される。
バルブ制御部507は、タイマ410の出力信号が論理の真になったことを受けて、窒素ガスバルブ414を開ける制御信号を出力する。そして、コンパレータ503の出力信号が論理の真になったことを受けて、窒素ガスバルブ414を閉じる制御信号を出力する。
【0025】
コンパレータ503の出力信号は、タイマ410に供給される。タイマ410は、コンパレータ503の出力信号が論理の真になったことを受けて、所定の時間の計時を開始する。そして、所定の時間が経過したら、論理の真を示す出力信号を出力する。
また、はんだ通過センサ114の出力信号はタイマ410のリセット端子に供給されるので、タイマ410は所定時間を計時した後、はんだ通過センサ114の出力信号が論理の真になったら、リセットされる。
【0026】
コンパレータ503の出力信号は、タイマ410が出力する論理信号と共にレーザ制御部504に入力される。
レーザ制御部504は、コンパレータ503の出力信号が論理の真になったことを受けて、半導体レーザ光源102をオン制御する制御信号を出力する。そして、タイマ410の出力信号が論理の真になったことを受けて、半導体レーザ光源102をオフ制御する制御信号を出力する。
【0027】
バルブ制御部507は、タイマ410の出力信号が論理の真になると窒素ガスバルブ414を開けて、コンパレータ503の出力信号が論理の真になると窒素ガスバルブ414を閉じる。
レーザ制御部504は、コンパレータ503の出力信号が論理の真になると半導体レーザ光源102をオン制御し、タイマ410の出力信号が論理の真になると半導体レーザ光源102をオフ制御する。
すなわち、バルブ制御部507が窒素ガスバルブ414へ出力する制御信号と、レーザ制御部504が半導体レーザ光源102へ出力する制御信号とは、論理が逆の関係にある。
【0028】
なお、
図5に示すソフトウェア機能ブロック図は一例であり、例えばタイマ410のリセットをはんだボール201検出センサで行う代わりに、タイマ410自身の出力信号を用いて、ANDゲート502の入力やタイマ410の出力等にラッチ機能を用いる等の、様々なバリエーションが考えられる。
【0029】
図6は、制御装置402によって制御されるレーザはんだ付け装置101の、種々の状態を示すタイムチャートである。発明者らがレーザはんだ付け装置101で実験を行い、良好なはんだ付けが実現できた際の、タイムチャートを記録したものである。この実験において使用したはんだボール201の直径は0.5mm、青色半導体レーザの出力は6.8Wである。
図6の波形L601は、はんだローラ113の回転速度である。
波形L602は、はんだローラ113を回転させるステッピングモータ413の制御信号である。
波形L603は、はんだ通過センサ114の検出信号である。
波形L604は、窒素ガスの流量を示す波形である。
波形L605は、窒素ガスの圧力を示す圧力センサ412の出力信号である。
波形L606は、半導体レーザ光源102をオン・オフ制御する制御信号である。
波形L607は、窒素ガスの注入を開閉制御する、窒素ガスバルブ414の制御信号である。
【0030】
時刻T611において、窒素ガスバルブ414は開いており、半導体レーザ光源102はオフ制御されている。
時刻T612において、ANDゲート502が論理の真を出力したことに呼応して、ステッピングモータ413が回転駆動され、はんだローラ113が回転する。
時刻T613において、はんだ通過センサ114がはんだボール201が導管110を通過したことを検出する。
時刻T614において、はんだボール201がはんだホルダ107のはんだ係止部107cに嵌まり込み、窒素ガスは吐出口107dから漏れ出なくなる。すると、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力が上昇を始める。この時、窒素ガスの流量は吐出口107dがはんだボール201によって塞がれたために、時刻T614以前と比べると僅かに少なくなる。
【0031】
時刻T615において、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力が圧力閾値506を超えたことをコンパレータ503が検出すると、バルブ制御部507は窒素ガスバルブ414を閉じる制御を行う。すると、レーザはんだ付け装置101内部への窒素ガスの注入は停止される。また、これと同時に、レーザ制御部504は半導体レーザ光源102をオン制御する。この時刻T615において、タイマ410は起動し、所定時間を計時する。
時刻T616において、半導体レーザ光源102が照射するレーザ光によってはんだボール201は溶融する。すると、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力によって、溶融したはんだは吐出口107dから吐出される。その瞬間に、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力は急激に減少する。しかし、この時刻T616においても半導体レーザは照射し続けられる。
時刻T617において、タイマ410が所定時間の経過を検出すると、レーザ制御部504はタイマ410の出力信号に呼応して、半導体レーザ光源102をオフ制御する。そして、半導体レーザ光源102のオフ制御と同時にバルブ制御部507は窒素ガスバルブ414を開ける制御を行う。
【0032】
[はんだ付けの動作]
これより、本発明の実施形態に係るレーザはんだ付け装置101における、はんだ付けの動作の流れを説明する。
図7Aは、はんだボール201にレーザ光B701が照射された直後の状態を示す、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T615における、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の状態である。
はんだホルダ107は図示しない上下駆動機構によって、はんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aから所定の距離だけ僅かに離れた状態で近接しており、はんだホルダ107の先端ははんだ付け対象物415とは接触していない。はんだホルダ107とはんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aとの離間距離は例えば0.5mm〜3mm程度である。
【0033】
図7Bは、はんだボール201がレーザ光B701によって溶融し、吐出口107dから吐出された直後の状態を示す、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T616における、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の状態である。
はんだボール201は溶融して溶融はんだ702となり、はんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aに付着している。しかし、この状態では溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aの金属と接触しているだけであり、溶融はんだ702が金属の表面と合金を形成する(濡れる)状態には至っていない。
【0034】
図8は、溶融はんだ702に対してレーザ光B701の照射が継続され、溶融はんだ702がはんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aに対して充分に濡れた状態を示す、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T617における、はんだホルダ107とはんだ付け対象物415の状態である。
すなわち、本発明の実施形態に係るレーザはんだ付け装置101と制御装置402は、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aに付着した後も、なおレーザ光B701を照射し続ける。この動作は、はんだごてを用いてはんだ付けを行う際、はんだがはんだ付けをしたい箇所によく馴染む様に、はんだが溶けた後もなおはんだごてで加熱し続ける作業工程に等しい。
はんだボール201を溶融させるだけなら、
図6の時刻T615からT616の間だけでも可能である。しかし、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aに付着しても、はんだ付け箇所415aと溶融はんだ702との合金は形成されない。はんだ付け箇所415aと溶融はんだ702との合金が形成され、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aへ十分に濡れて、毛細管現象で溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aに流れることで電気的特性が安定するためには、溶融はんだ702とはんだ付け箇所415aを所定時間、所定の温度以上加熱し続ける必要がある。この加熱の継続が、時刻T616からT617の期間である。
【0035】
加熱を継続する時間は、半導体レーザの種類、半導体レーザの出力、はんだボール201の大きさ、はんだ付け箇所415aの大きさ等で変化するので、はんだ付け対象物415に応じて適宜調整される。一方、従来の固体レーザは加熱の出力が強すぎるため、本発明の実施形態に係るはんだ付けシステム401には適さない。特に、加熱の継続が困難である。
特に、半導体レーザの種類は青色半導体レーザが好適であることが、発明者らの実験によって判明した。青色半導体レーザは、赤色等の他の色の半導体レーザよりもはんだに対する熱吸収特性が高い。このため、良好なはんだ付けが実現できる。
【0036】
以上説明した実施形態には、以下に記す変形例が可能である。
(1)以上に説明した本発明の実施形態に係るレーザはんだ付け装置101では、はんだボール201を内部に保持するはんだホルダ107を使用していた。吐出口107dの直径ははんだボール201より小さいため、はんだボール201が溶融しない限りははんだボール201ははんだホルダ107から出られない。
上述のはんだホルダ107に対し、より簡素な構造のはんだホルダを用いても、半導体レーザを用いたはんだ付けは実現可能である。
図9Aは、本発明の第一の変形例に係るレーザはんだ付け装置101を用いて、はんだボール201にレーザ光B701が照射された直後の状態を示す、はんだホルダ901とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T615における、はんだホルダとはんだ付け対象物415の状態であり、
図7Aに対応する。
【0037】
第一の変形例に係るレーザはんだ付け装置101は、
図1から
図8にかけて説明した実施形態に係るレーザはんだ付け装置101と、はんだホルダ901の構造のみ異なり、それ以外の部品、機構部分、機能ブロック等は全て実質的に同一であるので、詳細な説明は省略する。
図9A、
図9B及び
図10に示すはんだホルダ901は、円筒状空間107bがそのまま吐出口107dとなっており、故にはんだボール201が係止される部位が存在しない。つまり、先端部分に何もあてがわなければ、導管110を通じてはんだホルダ901に導かれたはんだボール201は、先端部分の吐出口107dからそのまま外に飛び出てしまう。
そこで、
図9Aに示すように、はんだホルダ901をはんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aに当接させる。すると、はんだボール201ははんだホルダ901の吐出口107dとはんだ付け箇所415aに囲まれるように固定される。
【0038】
図9Bは、はんだボール201がレーザ光B701によって溶融して溶融はんだ702に変化した直後の状態を示す、はんだホルダ901とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T616における、はんだホルダ901とはんだ付け対象物415の状態であり、
図7Bに対応する。
図9Aにおいて、はんだボール201ははんだホルダ901の吐出口107dとはんだ付け箇所415aに囲まれるように固定されていた。その状態で、はんだボール201にレーザ光B701を照射すると、はんだボール201は溶融して溶融はんだ702に変化し、はんだ付け箇所415aに付着する。この時、溶融したはんだは自重によってはんだ付け箇所415aに付着するので、窒素ガスで圧力を与える必要はない。
【0039】
図10は、溶融はんだ702に対してレーザ光B701の照射が継続され、溶融はんだ702がはんだ付け対象物415のはんだ付け箇所415aに対して充分に濡れた状態を示す、はんだホルダ901とはんだ付け対象物415の一部を拡大した模式断面図である。
図6の時刻T616から時刻T617に至る途中における、はんだホルダ901とはんだ付け対象物415の状態である。
図9Bにおいて、はんだボール201にレーザ光B701を照射したことによってはんだボール201は溶融して溶融はんだ702に変化し、はんだ付け箇所415aに付着した。はんだボール201が溶融したらすぐにレーザはんだ付け装置101を引き上げ、はんだホルダ901をはんだ付け箇所415aから離間させる。その間、レーザ光B701ははんだ付け箇所415aに付着した溶融はんだ702に照射し続ける。
以上説明したように、はんだホルダ901をはんだ付け箇所415aに当接する構成であっても、本発明に掛かるレーザはんだ付け装置101を実現することが可能である。
【0040】
(2)前述のはんだホルダ901がはんだボール201を素通しする構成のレーザはんだ付け装置101では、はんだボール201に代えて、糸はんだを細かく切断したはんだチップを用いてもよい。はんだボール201を素通しする構成のはんだホルダ901を使用する場合、はんだホルダ901がはんだボール201によって吐出口107dが塞がれないので、必ずしもはんだボール201のように均一な形状のはんだを使用しなくてもよい。
【0041】
(3)理想的には、はんだボール201を溶融させる工程(
図6の時刻T615から時刻T616の間)と、溶融したはんだボール201がはんだ付け箇所415aに付着した後に加熱する工程(
図6の時刻T616から時刻T617の間)とで、はんだボール201及びはんだ付け箇所415aに対する加熱の熱量は異なっていることが望ましい。はんだごてではそのような制御は不可能だが、レーザはんだ付け装置101なら、半導体レーザ光源102に投入する電力を制御することで、容易にはんだボール201及びはんだ付け箇所415aに対する加熱の制御を実現できる。
【0042】
図11は、本発明の第二の変形例に係るレーザはんだ付け装置101の、制御装置402に追加される機能ブロックを示すブロック図である。
図5では、レーザ制御部504が半導体レーザ光源102へ出力する制御信号は、単純なレーザ光B701のオン・オフ制御であった。
図11では、レーザ制御部504が出力する制御信号に対し、ゲート制御部1101とレーザ駆動部1102が追加されている。
ゲート制御部1101は、レーザ制御部504の制御信号と、圧力センサ412の出力信号を受けて、レーザ駆動部1102を制御する。
レーザ駆動部1102は、半導体レーザ光源102に対し、定電流制御による駆動制御を行う。
【0043】
図12は、本発明の第二の変形例に係るレーザはんだ付け装置101の、ゲート制御部1101及びレーザ駆動部1102のブロック図及び回路図である。
ゲート制御部1101は一般的なマイコンである制御装置402のソフトウェア機能として実現されるので、ハードウェア構成については記載を省略する。
圧力センサ412の出力信号は微分演算部1201に入力される。微分演算部1201は圧力センサ412の出力信号に微分演算を行うことで、
図6の時刻T616に生じる、信号の急峻な減少をパルス信号に変換して出力する。
レーザ制御部504の制御信号はシーケンサ1202に入力される。シーケンサ1202は微分演算部1201から出力されるパルス信号も受けて、後述するレーザ駆動部1102に含まれるPchMOSFET1203のゲート制御信号を生成する。
レーザ制御部504の制御信号はラッチ1204にも入力される。ラッチ1204は微分演算部1201から出力されるパルス信号も受けて、後述するレーザ駆動部1102に含まれる切替スイッチ1205の制御信号を生成する。
【0044】
レーザ駆動部1102は、半導体レーザ光源102に電力を供給する直流電源V1206に、定電流制御を行う周知のバックコンバータで構成される。
PNPのトランジスタ1207はバックコンバータのハイサイドスイッチである。トランジスタ1207とダイオードD1208とチョークコイルL1209は、バックコンバータを構成する。
チョークコイルL1209の出力端子側と半導体レーザ光源102との間にはPchMOSFET1203のハイサイドスイッチが接続されている。なお、PchMOSFET1203のゲートドライブ回路については記載を省略している。
半導体レーザ光源102のカソードと接地ノードとの間には半導体レーザ光源102に流れる電流を検出するためのシャント抵抗R1210が接続されている。
半導体レーザ光源102のカソードとシャント抵抗R1210との接続点はコンパレータ1211のプラス側端子に接続される。一方、コンパレータ1211のマイナス側端子には、切替スイッチ1205を介して第一参照電圧源V1212と第二参照電圧源V1213が選択的に接続される。第一参照電圧源V1212は第二参照電圧源V1213より高い電圧を出力する。コンパレータ1211の出力はオープンコレクタであり、ベース抵抗R1214を介してトランジスタ1207のベースに接続されている。なお、抵抗R1215はトランジスタ1207のスイッチングを確実にするための抵抗である。すなわち、コンパレータ1211のオープンコレクタがオフ状態になるとトランジスタ1207はオフになり、コンパレータ1211のオープンコレクタがオン状態になるとトランジスタ1207はオンになる。
【0045】
シャント抵抗R1210の端子間電圧は、半導体レーザ光源102に流れる電流に比例する。
シャント抵抗R1210の電圧が、第一参照電圧源V1212の電圧より低くなると、コンパレータ1211のオープンコレクタはオン状態になり、トランジスタ1207はオンになる。
シャント抵抗R1210の電圧が、第一参照電圧源V1212の電圧より高くなると、コンパレータ1211のオープンコレクタはオフ状態になり、トランジスタ1207はオフになる。
この、ハイサイドスイッチのオンオフによる電流の間欠的な流れは、チョークコイルL1209とダイオードD1208によって平滑(制限)される。したがって、半導体レーザ光源102は定電流制御される。
参照電圧を大きくすれば、半導体レーザ光源102に流れる電流を大きくすることができる。このため、参照電圧源を2個設け、切替スイッチ1205によって選択的にコンパレータ1211に供給している。
チョークコイルL1209の出力側にスイッチを設ければ、半導体レーザ光源102に流す電流のオン・オフ制御を実現できる。このため、PchMOSFET1203のハイサイドスイッチが設けられている。
【0046】
図13は、レーザ制御部504が出力する制御信号と、ゲート制御部1101が出力する参照電圧切替信号のタイムチャートと、ゲート制御信号の電圧波形と、半導体レーザ光源102に流れる電流の波形を示す図である。横軸は時間であり、縦軸は(a)及び(b)が論理値、(c)がゲート電圧、(d)が電流である。
図13の(a)は、レーザ制御部504が出力する制御信号である。時刻T615で論理の真になり、時刻T617で論理の偽に戻る。
図13の(b)は、ゲート制御部1101のラッチ1204が出力する参照電圧切替信号である。微分演算部1201が圧力センサ412の出力信号の変化をパルス信号に変換することで、ラッチ1204からは時刻T615で論理の真になり、時刻T616で論理の偽に戻る制御信号が切替スイッチ1205へ出力される。
図13の(c)は、ゲート制御部1101のシーケンサ1202が出力するゲート制御信号である。PchMOSFET1203はゲート電圧が下がるとソース−ドレイン間がオンになるので、このような波形になる。なお、PchMOSFET1203のゲート−ソース間電圧の制約により、ゲート電圧が低い時の電圧は必ずしも0Vではない。時刻T615から微分演算部1201が出力するパルス信号が入力される時刻T616までは、オン時間(照射時間T1302)の短いゲート制御信号をPchMOSFET1203へ繰り返し出力する。時刻T616から、レーザ制御部504が出力する制御信号が論理の偽に戻る時刻T617までは、レーザ光休止間隔T1304を経て、連続したゲート制御信号(照射時間T1305)をPchMOSFET1203へ出力する。
【0047】
図13の(d)は、半導体レーザ光源102に流れる電流の波形図である。また、この波形図は半導体レーザ光源102に投入される電力の波形図でもある。
参照電圧の切替とPchMOSFET1203のゲート制御信号を生成することで、
図13の(d)に示すように、半導体レーザ光源102には時刻T615から時刻T616までは、半導体レーザ光源102には電流I1301が流れ、強いレーザ光がパルス状にはんだボール201に照射される。
はんだボール201が溶融すると、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力によって、溶融したはんだは吐出口107dから吐出される。その瞬間、すなわち時刻T616に、レーザはんだ付け装置101内部の窒素ガスの圧力は急激に減少する。
【0048】
ゲート制御部1101は、窒素ガスの圧力の変化を圧力センサ412の信号から微分演算部1201で検出すると、切替スイッチ1205を制御して、コンパレータ1211のマイナス側端子に接続する参照電圧源を、第一参照電圧源V1212から第二参照電圧源V1213に切り替える。シーケンサ1202は、時刻T616において微分演算部1201から入力されるパルス信号を受けて、断続的なゲート制御信号から連続的なゲート制御信号に、ゲート制御信号を切り替える。このため、PchMOSFET1203には連続的なゲート制御信号が与えられる。この結果、時刻T616以降になると、半導体レーザ光源102には時刻T615から時刻T616までに流れた電流I1301よりも少ない電流I1306が流れ、溶融したはんだとはんだ付け箇所415aが加熱される。
【0049】
はんだボール201を溶融させる工程(時刻T615から時刻T616の間)では、室温に冷えたはんだボール201が液状になるまでに必要な熱量をはんだボール201に与える必要がある。しかし、強いレーザ光を連続的にはんだボール201へ照射すると、熱の伝達にムラが生じてしまい、はんだボール201の一部は溶融しているが一部は溶融していない、という状態が生じうる。そこで、はんだボール201の全体にレーザ光の熱が万遍なく伝達するように、パルス状の強いレーザ光を断続的(間欠的)にはんだボール201へ照射する。例えば、パルス状レーザ光の照射時間T1302は10−50mmsec、パルスとパルスの時間間隔T1303は10−20mmsec、パルス状レーザ光の強度は15−25Wに設定する。
なお、上記のパルス間隔、パルスの数、パルス状レーザ光の強度は一例であって、使用するはんだの物質的特性や溶融したはんだの飛ぶ距離、使用するレーザ等様々の条件によって変更し得る。例えば照射時間T1302を狭くしてパルス数を増加させることや、あるいはパルス数を減らして照射時間T1302を広くすること、またそれに応じてあるいは独立してパルスの時間間隔T1303を変更することも可能である。
【0050】
溶融したはんだがはんだ付け箇所415aに付着した後に加熱する工程(時刻T616から時刻T617の間)では、はんだ付け箇所415aと溶融したはんだとの合金が形成され、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aへ十分に濡れて、毛細管現象で溶融したはんだがはんだ付け箇所415aに流れることで電気的特性が安定するために、溶融はんだ702とはんだ付け箇所415aを所定時間、所定の温度以上加熱し続ける必要がある。しかし、溶融したはんだは既に相応の熱量を有している。このため、はんだボール201を溶融させる工程で用いた、強力なレーザ光のままで溶融したはんだとはんだ付け箇所415aを熱すると、加熱し過ぎてしまい、プリント基板のプリントパターンを損傷する虞がある。はんだ付け箇所415aと溶融したはんだとの合金を形成するのであるならば、はんだボール201を溶融させる工程の時よりも弱くしたレーザ光を連続的に照射することが望ましい。
【0051】
本実施形態では、レーザはんだ付け装置101と制御装置402からなるはんだ付けシステム401を開示した。
本発明の実施形態に係るはんだ付けシステム401は、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aに付着した後も、なおレーザ光B701を溶融はんだ702に照射し続けることで、溶融はんだ702に対する加熱を継続する。この処理により、はんだ付け箇所415aと溶融はんだ702との合金が形成され、溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aへ十分に濡れて、毛細管現象で溶融はんだ702がはんだ付け箇所415aに流れる。そして強固かつ安定したなはんだ付けが完遂する。
【0052】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。