(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるエレベーターの乗場出入口を示す水平断面図である。各階の乗場1と昇降路2とを仕切る壁3には、乗場1と昇降路2とを互いに連通する乗場出入口4が設けられている。また、壁3には、乗場出入口4の一対の側部にそれぞれ配置されている一対の縦柱5と、乗場出入口4の上部に配置されている図示しない上枠とが設けられている。
【0011】
一対の縦柱5よりも昇降路2側には、乗場出入口4を開閉する一対の引き戸である乗場ドア6が設けられている。一対の乗場ドア6は、乗場出入口4の間口方向について互いに逆方向へ移動することにより乗場出入口4を開閉する。従って、この例では、一対の乗場ドア6が両開き式のドアになっている。
【0012】
乗場出入口4の上部には、一対の乗場ドア6を互いに連動させる図示しない連動機構が設けられている。これにより、一方の乗場ドア6が移動すると、他方の乗場ドア6が一方の乗場ドア6の移動に連動して移動する。
【0013】
一対の乗場ドア6は、乗場出入口4を全閉する戸閉位置と、戸閉位置よりも乗場出入口4の間口方向外側に位置し乗場出入口4を全開する戸開位置との間で移動可能になっている。また、一対の乗場ドア6は、ばね又はおもり等の図示しないドア付勢装置により、戸閉位置に向かう方向、即ち戸閉方向へ常に付勢されている。
【0014】
各乗場ドア6は、乗場ドア6の幅方向を乗場出入口4の間口方向と一致させ、乗場ドア6の厚さ方向を乗場出入口4の奥行き方向と一致させた状態で配置されている。また、各乗場ドア6は、乗場出入口4の奥行き方向について隙間9を介して縦柱5に対向している。各乗場ドア6は、縦柱5との間の隙間9を保ちながら、縦柱5に対して乗場出入口4の間口方向に沿って移動する。
【0015】
乗場出入口4の下部には、乗場敷居7が配置されている。乗場敷居7は、乗場1の床に固定されている。乗場敷居7には、敷居溝8が乗場出入口4の間口方向に沿って設けられている。敷居溝8には、各乗場ドア6の下端部が挿入されている。各乗場ドア6は、乗場ドア6の下端部を敷居溝8に挿入した状態で敷居溝8に沿って移動する。
【0016】
昇降路2内には、図示しないかごが上下方向へ移動可能に設けられている。エレベーターでは、保守員がかごの上面に乗った状態で昇降路2内の機器の保守点検作業を行うことがある。この場合、保守員は、乗場1の床の高さ位置にかごの上面の高さ位置を合わせてかごを停止させた状態で、乗場1から乗場出入口4を通ってかごの上面に乗る。保守員が乗場1から乗場出入口4を通ってかごの上面に乗るときには、保守員がドア付勢装置の付勢力に逆らって一対の乗場ドア6を戸開位置へ移動させ、エレベーター用ドアストッパ10(以下、単に「ドアストッパ10」という)を用いて一対の乗場ドア6を戸開位置に保持する。これにより、乗場出入口4が開いた状態が保たれる。
【0017】
ドアストッパ10は、ストッパ設置用ドアである一方の乗場ドア6と、一方の乗場ドア6に対向するドア対向部材である一方の縦柱5との間の隙間9に挿入されることにより、一方の乗場ドア6を戸開位置に保持する。また、他方の乗場ドア6が連動機構によって一方の乗場ドア6と連動することから、一方の乗場ドア6が戸開位置に保持されることにより、他方の乗場ドア6も戸開位置に保持される。
【0018】
図2は、
図1のドアストッパ10によって乗場ドア6が戸開位置に保持されている状態を示す拡大図である。乗場ドア6のドアパネルは、表板部61と、乗場ドア6の戸閉側端部に位置し乗場ドア6の厚さ方向について表板部61に対向する裏板部62と、表板部61と裏板部62とを連結し乗場ドア6の端面を形成する端板部63とを有している。乗場ドア6は、表板部61を乗場1に向け、裏板部62を昇降路2に向けた状態で、配置されている。乗場ドア6が戸開位置にあるときには、乗場ドア6の戸閉側端部における表板部61が縦柱5に隙間9を介して対向する。
【0019】
ドアストッパ10は、弾性材料であるゴムによって構成されている。これにより、ドアストッパ10は、弾性変形可能になっている。ドアストッパ10は、楔状のストッパ本体11と、ストッパ本体11に設けられている保持部12とを有している。ストッパ本体11及び保持部12は、一体成形されている。
【0020】
ストッパ本体11には、第1の接触面110及び第2の接触面111が形成されている。第1の接触面110及び第2の接触面111は、ストッパ本体11の幅方向について互いに対向している。
【0021】
第1の接触面110は、ストッパ本体11の長手方向の根元部に形成されている第1の平行面部110aと、第1の平行面部110aからストッパ本体11の長手方向の先端部に向かって形成されている第1の傾斜面部110bとを有している。第2の接触面111は、ストッパ本体11の長手方向の根元部に形成されている第2の平行面部111aと、第2の平行面部111aからストッパ本体11の長手方向の先端部に向かって形成されている第2の傾斜面部111bとを有している。
【0022】
第1の平行面部110aは、第2の平行面部111aと平行になっている。第1の傾斜面部110bは、第2の傾斜面部111bに対して傾斜している。これにより、第1の平行面部110aと第2の平行面部111aとの間の距離はストッパ本体11の長手方向のどの位置でも一定であり、第1の傾斜面部110bと第2の傾斜面部111bとの間の距離はストッパ本体11の長手方向の根元部から先端部に向かって連続的に小さくなっている。
【0023】
ストッパ本体11は、ストッパ設置用ドアである乗場ドア6に第1の接触面110を接触させ、ドア対向部材である縦柱5に第2の接触面111を接触させた状態で、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9に挿入可能になっている。ストッパ本体11が隙間9に挿入された状態では、第1の接触面110が乗場ドア6の表板部61に接触する。また、ストッパ本体11が隙間9に押し込まれた状態では、隙間9を拡げる方向へストッパ本体11が弾性復元力を発生し、第1の接触面110と乗場ドア6との間、及び第2の接触面111と縦柱5との間に摩擦力が発生する。これにより、乗場ドア6の戸閉方向への移動が阻止され、乗場ドア6が戸開位置に保持される。この例では、ストッパ本体11が隙間9に押し込まれると、第1の平行面部110aが乗場ドア6に接触し、第2の平行面部111aが縦柱5に接触した状態で、ストッパ本体11が弾性復元力を発生する。
【0024】
保持部12は、第1の接触面110に対向する対向部13と、対向部13をストッパ本体11の根元部に連結する連結部14と、対向部13からストッパ本体11に向けて突出する掛かり部15とを有している。ドアストッパ10には、ストッパ本体11、対向部13及び連結部14によって溝21が形成されている。
【0025】
第1の接触面110が乗場ドア6に接触している状態では、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入可能になっている。ドアストッパ10は、乗場ドア6の戸閉側端部が第1の接触面110と対向部13との間に挿入されることにより乗場ドア6に保持される。この例では、保持部12の弾性復元力によって乗場ドア6の戸閉側端部がストッパ本体11と対向部13との間で把持されることにより、ドアストッパ10が乗場ドア6に保持される。従って、ドアストッパ10は、乗場ドア6の戸閉側端部に溝21が嵌まることにより乗場ドア6に保持される。
【0026】
対向部13の長さは、裏板部62よりも長くなっている。掛かり部15は、対向部13の連結部14側とは反対側の端部から突出している。これにより、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入されている状態では、掛かり部15が裏板部62の戸開側端部に掛かる。即ち、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入されている状態では、掛かり部15が乗場ドア6の幅方向内側から裏板部62に掛かる。
【0027】
次に、ストッパ設置用ドアである乗場ドア6にドアストッパ10を設置して一対の乗場ドア6を戸開位置に保持するときの手順について説明する。まず、保守員は、乗場1において一対の乗場ドア6を戸開位置へ移動させることにより乗場出入口4を全開する。一対の乗場ドア6を戸開位置へ移動させるときには、保守員がドア付勢装置の付勢力に逆らって一対の乗場ドア6を互いに反対方向へ手で移動させる(ドア全開工程)。
【0028】
この後、ストッパ本体11を隙間9に挿入しながら、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入する。このとき、掛かり部15が乗場ドア6の戸閉側端部に干渉しないように、掛かり部15と第1の接触面110との間の距離が広がる方向へ保持部12を弾性変形させながら、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入する。また、このとき、第1の接触面110と乗場ドア6との間、及び第2の接触面111と縦柱5との間のそれぞれに摩擦力が発生するように、ストッパ本体11を隙間9に押し込んで、ストッパ本体11を弾性変形させる。この例では、第1の平行面部110aを乗場ドア6に接触させ、第2の平行面部111aを縦柱5に接触させながら、ストッパ本体11を隙間9に押し込んで、ストッパ本体11を弾性変形させる。これにより、掛かり部15が裏板部62よりも戸開側へ移動し、保持部12の弾性変形の復元により掛かり部15が裏板部62の戸開側端部に掛かる。また、保持部12の弾性復元力により乗場ドア6の戸閉側端部が第1の接触面110と対向部13との間で把持される。これにより、ドアストッパ10によって乗場ドア6が戸開位置に保持されるとともに、ドアストッパ10が乗場ドア6に保持される。このようにして、ドアストッパ10を乗場ドア6に設置する(ストッパ設置工程)。
【0029】
このようなドアストッパ10では、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9に挿入されるストッパ本体11の第1の接触面110に対向部13が対向しており、第1の接触面110が乗場ドア6に接触している状態では、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入されてドアストッパ10が乗場ドア6に保持されるので、何らかの原因で乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9からストッパ本体11が外れた場合でも、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができる。これにより、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をより確実に防止することができ、昇降路2内に落下したドアストッパ10の回収作業の手間をなくすことができる。
【0030】
また、ドアストッパ10の保持部12は、対向部13からストッパ本体11に向けて突出する掛かり部15を有しているので、ドアストッパ10が乗場ドア6に保持されている状態で、乗場ドア6の裏板部62の戸開側端部に掛かり部15を掛けることができる。これにより、第1の接触面110と対向部13との間から乗場ドア6の戸閉側端部が外れる方向への力がドアストッパ10に加わった場合でも、掛かり部15が裏板部62に掛かることによりドアストッパ10を乗場ドア6から外れにくくすることができる。これにより、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をさらに確実に防止することができる。
【0031】
また、このようなドアストッパ10の設置方法では、乗場ドア6が戸開位置にあるときに、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9にストッパ本体11を挿入しながら、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入するので、乗場ドア6にドアストッパ10を容易に設置することができる。また、何らかの原因で乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9からストッパ本体11が外れた場合でも、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができ、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をより確実に防止することができる。
【0032】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2によるドアストッパによって乗場ドアが戸開位置に保持されている状態を示す拡大水平断面図である。ドアストッパ10の保持部12は、対向部13、連結部14及び掛かり部15に加えて、第1の接触面110と対向部13との間へ掛かり部15から突出する返し部16をさらに有している。
【0033】
第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入されている状態では、返し部16と対向部13との間に裏板部62が挿入される。返し部16は、乗場ドア6の厚さ方向について裏板部62に掛かることにより、第1の接触面110と対向部13との間の距離が広がる方向へ保持部12が弾性変形することを抑制する。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0034】
ドアストッパ10を乗場ドア6に設置するときには、一対の乗場ドア6を戸開位置へ移動させて乗場出入口4を全開した後、即ちドア全開工程の後、実施の形態1と同様に、ストッパ本体11を隙間9に挿入しながら、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入する。このとき、連結部14と返し部16との間の距離が広がる方向へ保持部12を弾性変形させて、返し部16と対向部13との間の隙間に裏板部62を挿入する(ストッパ設置工程)。他の手順は実施の形態1と同様である。
【0035】
このようなドアストッパ10では、第1の接触面110と対向部13との間へ返し部16が掛かり部15から突出しているので、返し部16と対向部13との間に乗場ドア6の裏板部62を挿入した状態でドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができる。これにより、ドアストッパ10が乗場ドア6からさらに外れにくくすることができ、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をさらに確実に防止することができる。
【0036】
実施の形態3.
図4は、この発明の実施の形態3によるドアストッパによって乗場ドアが戸開位置に保持されている状態を示す拡大水平断面図である。ドアストッパ10の保持部12は、対向部13及び連結部14を有している。この例では、掛かり部15が対向部13から突出していない。ドアストッパ10は、実施の形態1と同様に、保持部12の弾性復元力によって乗場ドア6の戸閉側端部がストッパ本体11と対向部13との間で把持されることにより、乗場ドア6に保持される。他の構成及びドアストッパ10の設置方法は実施の形態1と同様である。
【0037】
このように、ドアストッパ10に掛かり部15が存在しなくても、乗場ドア6の戸閉側端部がストッパ本体11と対向部13との間で把持されることにより、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができる。これにより、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9からストッパ本体11が外れた場合でも、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をより確実に防止することができる。
【0038】
実施の形態4.
図5は、この発明の実施の形態4によるドアストッパによって乗場ドアが戸開位置に保持されている状態を示す拡大水平断面図である。ドアストッパ10は、ストッパ本体11及び保持部12に加えて、保持部12に設けられた永久磁石22をさらに有している。
【0039】
乗場ドア6は、磁性体である鋼板で構成されている。これにより、永久磁石22は、乗場ドア6に吸着される。この例では、永久磁石22が対向部13に設けられている。第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部が挿入されている状態では、永久磁石22が乗場ドア6の裏板部62に吸着されることにより、ドアストッパ10が乗場ドア6に保持される。他の構成及びドアストッパ10の設置方法は実施の形態3と同様である。
【0040】
このようなドアストッパ10では、永久磁石22が保持部12に設けられているので、永久磁石22が乗場ドア6に吸着されることにより、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができる。これにより、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9からストッパ本体11が外れた場合でも、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をより確実に防止することができる。
【0041】
なお、上記の例では、永久磁石22が対向部13に設けられているが、連結部14に永久磁石22を設けてもよい。この場合、永久磁石22は、乗場ドア6の端板部63に吸着される。
【0042】
実施の形態5.
実施の形態1では、乗場ドア6を戸開位置へ移動させた後に、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持しているが、乗場ドア6を戸開位置へ移動させる前に、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持してもよい。
【0043】
本実施の形態では、ドアストッパの設置方法のみが実施の形態1と異なっている。従って、本実施の形態では、実施の形態1によるドアストッパ10を用いたときのドアストッパの設置方法について説明する。
【0044】
ドアストッパ10によって一対の乗場ドア6を戸開位置に保持するときには、まず、乗場出入口4を全閉する戸閉位置と、乗場出入口4を全開する戸開位置との間の位置である半開位置に乗場ドア6を移動させる(ドア半開工程)。
【0045】
この後、乗場ドア6が半開位置にあるときに、第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入して、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持する。この例では、第1の平行面部110aを乗場ドア6に接触させた状態でドアストッパ10を乗場ドア6に保持する。第1の接触面110と対向部13との間に乗場ドア6の戸閉側端部を挿入するときの手順は、実施の形態1と同様である(ストッパ保持工程)。
【0046】
この後、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持したまま乗場ドア6を半開位置から戸開位置へ移動させる。これにより、乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9にストッパ本体11が挿入される。このとき、ドアストッパ10を戸開方向へ押すことにより、ストッパ本体11が隙間9に押し込まれながら乗場ドア6が戸開位置に達する。これにより、ストッパ本体11が弾性変形されて、第1の接触面110と乗場ドア6との間、及び第2の接触面111と縦柱5との間のそれぞれに摩擦力が発生し、ドアストッパ10によって乗場ドア6が戸開位置に保持される(ストッパ挿入工程)。このようにして、ドアストッパ10を乗場ドア6に設置する。
【0047】
このようなドアストッパ10の設置方法では、乗場ドア6を半開位置に移動させた後に、ドアストッパ10を乗場ドア6に保持し、この後、乗場ドア6を戸開位置へ移動させて乗場ドア6と縦柱5との間の隙間9にストッパ本体11を挿入するので、保守員が作業しやすい場所でドアストッパ10を乗場ドア6に保持することができる。これにより、乗場ドア6に対するドアストッパ10の保持作業を容易にすることができる。また、ストッパ本体11を隙間9に挿入するときには、ドアストッパ10が乗場ドア6にすでに保持されているので、隙間9へのストッパ本体11の挿入作業も容易にすることができる。
【0048】
なお、上記の例では、実施の形態1によるドアストッパ10が用いられているが、実施の形態2〜4によるドアストッパ10を用いてもよい。
【0049】
実施の形態6.
図6は、この発明の実施の形態6によるエレベーターの乗場出入口を示す水平断面図である。一対の縦柱5よりも昇降路2側には、乗場出入口4を開閉する高速ドア31及び低速ドア32が2つの引き戸として設けられている。即ち、乗場出入口4を開閉する2つの引き戸のうち、一方の引き戸が高速ドア31であり、他方の引き戸が低速ドア32である。高速ドア31及び低速ドア32は、乗場出入口4の間口方向について同じ方向へ移動することにより乗場出入口4を開閉する。これにより、この例では、高速ドア31及び低速ドア32が片開き式のドアになっている。
【0050】
高速ドア31及び低速ドア32は、乗場出入口4の奥行き方向について互いにずらして設定された経路上をそれぞれ移動する。これにより、低速ドア32は、乗場出入口4の奥行き方向について隙間を介して縦柱5に対向している。また、高速ドア31は、乗場出入口4の奥行き方向について隙間33を介して低速ドア32に対向している。低速ドア32は、縦柱5との間の隙間を保ちながら、縦柱5に対して乗場出入口4の間口方向に沿って移動する。高速ドア31は、低速ドア32との間の隙間33を保ちながら、低速ドア32に対して乗場出入口4の間口方向に沿って移動する。
【0051】
高速ドア31は、乗場出入口4の開閉時に低速ドア32よりも高速で移動する。乗場出入口4を全閉する戸閉位置に高速ドア31及び低速ドア32があるときには、高速ドア31と低速ドア32とが乗場出入口4の間口方向について互いにずれて配置される。乗場出入口4を全開する戸開位置に高速ドア31及び低速ドア32があるときには、高速ドア31と低速ドア32とが乗場出入口4の奥行き方向について互いに並んで配置される。
【0052】
乗場出入口4の上部には、高速ドア31及び低速ドア32を互いに連動させる図示しない連動機構が設けられている。これにより、高速ドア31が移動すると、低速ドア32が高速ドア31の移動に連動して移動する。高速ドア31及び低速ドア32は、ばね又はおもり等の図示しないドア付勢装置により、戸閉位置に向かう方向、即ち戸閉方向へ常に付勢されている。
【0053】
高速ドア31及び低速ドア32のそれぞれの構成は、実施の形態1の乗場ドア6の構成と同様になっている。高速ドア31及び低速ドア32は、高速ドア31及び低速ドア32の幅方向を乗場出入口4の間口方向と一致させ、高速ドア31及び低速ドア32の厚さ方向を乗場出入口4の奥行き方向と一致させた状態で配置されている。
【0054】
乗場敷居7には、高速ドア用敷居溝81及び低速ドア用敷居溝82が乗場出入口4の間口方向に沿って設けられている。高速ドア用敷居溝81及び低速ドア用敷居溝82は、乗場出入口4の奥行き方向について互いにずらして配置されている。高速ドア用敷居溝81の長さは、低速ドア用敷居溝82の長さよりも長くなっている。
【0055】
高速ドア用敷居溝81には高速ドア31の下端部が挿入され、低速ドア用敷居溝82には低速ドア32の下端部が挿入されている。高速ドア31は、高速ドア31の下端部を高速ドア用敷居溝81に挿入した状態で高速ドア用敷居溝81に沿って移動する。低速ドア32は、低速ドア32の下端部を低速ドア用敷居溝82に挿入した状態で、高速ドア31の移動に連動しながら低速ドア用敷居溝82に沿って移動する。他の構成は実施の形態1と同様である。
【0056】
高速ドア31及び低速ドア32は、ドアストッパ10によって戸開位置に保持される。ドアストッパ10は、ストッパ設置用ドアである高速ドア31と、高速ドア31に対向するドア対向部材である低速ドア32との間の隙間33に挿入されることにより、高速ドア31及び低速ドア32を戸開位置に保持する。ドアストッパ10の構成は、実施の形態1によるドアストッパ10の構成と同様である。
【0057】
ドアストッパ10のストッパ本体11は、高速ドア31に第1の接触面110を接触させ、低速ドア32に第2の接触面111を接触させた状態で、高速ドア31と低速ドア32との間の隙間33に挿入可能になっている。ストッパ本体11が隙間33に挿入された状態では、第1の接触面110が高速ドア31の表板部61に接触する。また、ストッパ本体11が隙間33に押し込まれた状態では、隙間33を拡げる方向へストッパ本体11が弾性復元力を発生し、第1の接触面110と高速ドア31との間、及び第2の接触面111と低速ドア32との間に摩擦力が発生する。これにより、低速ドア32に対する高速ドア31の戸閉方向への移動が阻止され、高速ドア31及び低速ドア32が戸開位置に保持される。この例では、ストッパ本体11が隙間33に押し込まれると、第1の平行面部110aが高速ドア31に接触し、第2の平行面部111aが低速ドア32に接触した状態で、ストッパ本体11が弾性復元力を発生する。高速ドア31に対するドアストッパ10の構成の関係は、実施の形態1による乗場ドア6に対するドアストッパ10の構成の関係と同様である。
【0058】
次に、実施の形態1によるドアストッパ10を用いたときのドアストッパの設置方法について説明する。まず、保守員は、乗場1において高速ドア31及び低速ドア32を戸開位置へ移動させて乗場出入口4を全開する。高速ドア31及び低速ドア32を戸開位置へ移動させるときには、保守員が付勢装置の付勢力に逆らって高速ドア31及び低速ドア32を同じ方向へ手で移動させる(ドア全開工程)。
【0059】
この後、高速ドア31と低速ドア32との間の隙間33にストッパ本体11を挿入しながら、第1の接触面110と対向部13との間に高速ドア31の戸閉側端部を挿入する。このときの操作は、実施の形態1のストッパ設置工程における乗場ドア6に対するドアストッパ10の操作と同様である。これにより、低速ドア32に対する高速ドア31の移動が阻止され、高速ドア31及び低速ドア32が戸開位置に保持される。また、これにより、高速ドア31の戸閉側端部が第1の接触面110と対向部13との間で把持され、ドアストッパ10が高速ドア31に保持される。このようにして、ドアストッパ10を高速ドア31に設置する(ストッパ設置工程)。
【0060】
このように、両開き式のドアだけでなく、片開き式のドアである高速ドア31及び低速ドア32に対しても、ドアストッパ10を適用することができる。これにより、何らかの原因で高速ドア31と低速ドア32との間の隙間33からストッパ本体11が外れた場合でも、ドアストッパ10を高速ドア31に保持することができる。これにより、昇降路2内へのドアストッパ10の落下をより確実に防止することができる。
【0061】
なお、上記の例では、実施の形態1によるドアストッパ10が用いられているが、実施の形態2〜4によるドアストッパ10を用いてもよい。
【0062】
また、上記の例では、ドアストッパ10を設置するときの方法として、実施の形態1によるドアストッパの設置方法が用いられているが、ドアストッパ10を設置するときの方法として、実施の形態5によるドアストッパの設置方法を用いてもよい。