特許第6785551号(P6785551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6785551
(24)【登録日】2020年10月29日
(45)【発行日】2020年11月18日
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20201109BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20201109BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20201109BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20201109BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20201109BHJP
【FI】
   G03F7/027 515
   G03F7/004 501
   G03F7/40 521
   G03F7/20 521
   H01L21/30 564Z
   C03C15/00 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-251083(P2015-251083)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-197226(P2016-197226A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-76433(P2015-76433)
(32)【優先日】2015年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
(72)【発明者】
【氏名】後閑 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 邦人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】中川 邦弘
【審査官】 川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−209175(JP,A)
【文献】 特開2009−265389(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/057385(WO,A1)
【文献】 特開2013−117682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
C03C 15/00
G03F 7/004
G03F 7/20
G03F 7/40
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液によってエッチング処理するエッチング方法であって、
基材の少なくとも片面に、感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を露光後現像し、感光性樹脂層を加熱した後、フッ酸又はフッ化アンモニウムの濃度が15質量%以上の、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液によってエッチング処理し、
感光性樹脂組成物が、少なくとも(A)酸変性エポキシアクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、(D)フィラー、を含有してなるエッチング方法。
【請求項2】
(A)酸変性エポキシアクリレートが、エポキシ樹脂(a)と、アクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボン酸含有化合物及びカルボン酸含有化合物の無水物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)とを、少なくとも反応させてなる化合物であり、エポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型である請求項1記載のエッチング方法。
【請求項3】
(A)酸変性エポキシアクリレートが、エポキシ樹脂(a)と、アクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボン酸含有化合物及びカルボン酸含有化合物の無水物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)とを、少なくとも反応させてなる化合物であり、化合物(b)がコハク酸及び無水コハク酸の群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のエッチング方法。
【請求項4】
(C)ブロック化イソシアネート化合物が、メチルエチルケトキシムによってブロック化された1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項1〜3のいずれか記載のエッチング方法。
【請求項5】
(D)フィラーがタルクである請求項1〜4のいずれか記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液への耐性が優れた感光性樹脂組成物及び該感光性樹脂組成物を利用するエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基材、シリコン基板、チタン基板等の基材をエッチングする際には、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液を使用する場合がある。例えば、ガラス基材にパターンを形成する方法としては、ガラス基材上に感光性樹脂組成物を形成し、次に、所望のパターンのフォトマスクを介して露光を実施し、感光性樹脂組成物を硬化させる。次いで、非露光部(非硬化部)を現像によって除去し、ガラス基材上に感光性樹脂組成物からなるレジストパターンを形成する。続いて、露出したガラス基材部にフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液を吹き付けてガラスを溶解して、パターンを形成することができる。
【0003】
このようなフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液によるエッチング処理に使用する感光性樹脂組成物としては、従来からネガ型の感光性樹脂組成物が使用されている。例えば、ガラス基材から剥がれにくい光硬化性レジスト材料として、エチレン性不飽和二重結合を側鎖に有するアクリル樹脂とポリシランと光増感剤とを含有するレジスト材料が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、ガラス基材との密着性に優れた感光性樹脂組成物として、特定のカルボキシル基含有バインダー樹脂と、光重合性モノマーと開始剤と特定のオルガノシラン化合物を含有してなる感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、ガラスエッチング用の紫外線硬化型レジスト組成物として、酸基含有樹脂、不飽和化合物、光開始剤、アルコキシシラン化合物、無機微粉末を含有するレジスト組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらの成分だけでは、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐久性が充分ではなく、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に浸すと、レジストパターンがガラス基材上から剥がれてしまう問題があった。
【0004】
また、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、ブロック化イソシアネート化合物、フィラーを含有する感光性樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、これらの成分の組み合わせでは、フッ酸又はフッ化アンモニウムの濃度が15質量%以上のような高濃度のエッチング液に対する耐性が充分ではなく、高濃度のエッチング液に浸すと、レジストパターンがガラス基材上から剥がれてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−164877号公報
【特許文献2】特開2007−316247号公報
【特許文献3】特開2007−128052号公報
【特許文献4】特開2013−117682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有した、高濃度のエッチング液への耐性が優れた感光性樹脂組成物と該感光性樹脂組成物を利用するエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段によって解決できた。
【0008】
(1)フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液によってエッチング処理するエッチング方法であって、
基材の少なくとも片面に、感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を露光後現像し、感光性樹脂層を加熱した後、フッ酸又はフッ化アンモニウムの濃度が15質量%以上の、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液によってエッチング処理し、
感光性樹脂組成物が、少なくとも(A)酸変性エポキシアクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、(D)フィラー、を含有してなるエッチング方法。
【0009】
(2)(A)酸変性エポキシアクリレートが、エポキシ樹脂(a)と、アクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボン酸含有化合物及びカルボン酸含有化合物の無水物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)とを、少なくとも反応させてなる化合物であり、エポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型である上記(1)記載のエッチング方法
【0010】
(3)(A)酸変性エポキシアクリレートが、エポキシ樹脂(a)と、アクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボン酸含有化合物及びカルボン酸含有化合物の無水物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)とを、少なくとも反応させてなる化合物であり、化合物(b)がコハク酸及び無水コハク酸の群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)又は(2)記載のエッチング方法
【0011】
(4)(C)ブロック化イソシアネート化合物が、メチルエチルケトキシムによってブロック化された1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである上記(1)〜(3)のいずれか記載のエッチング方法
【0012】
(5)(D)フィラーがタルクである上記(1)〜(4)のいずれか記載のエッチング方法
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)酸変性エポキシアクリレート(以下、「成分(A)と表記する場合がある)及び(B)光重合開始剤(以下、「成分(B)」と表記する場合がある)を含有しているため、露光によりパターン状に硬化膜が形成される。アルカリ現像を実施し、レジストパターンを形成したのちに、加熱処理を行うことで、(C)ブロック化イソシアネート化合物(以下、「成分(C)」と表記する場合がある)中のブロック化イソシアネート基から発生したイソシアネート基と成分(A)中のカルボキシル基及び水酸基との熱架橋による強固な結合が形成され、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が大幅に向上する。(D)フィラー(以下、「成分(D)」と表記する場合がある)は、膜を強固にし、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液の浸透を抑制する。
【0015】
そして、本発明の感光性樹脂組成物は、成分(A)〜(D)を含有していることによって、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が優れていて、フッ酸又はフッ化アンモニウムの濃度が15質量%以上のような高濃度のエッチング液によってエッチングした場合でも、基材上から剥がれにくいという効果が達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物は、少なくとも(A)酸変性エポキシアクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、(D)フィラーを含有してなる。
【0018】
成分(A)としては、エポキシ樹脂(a)と、アクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、カルボン酸含有化合物及びカルボン酸含有化合物の無水物の群から選ばれる少なくとも1種の化合物(b)とを、少なくとも反応させてなる化合物が挙げられる。この化合物は、例えば、エポキシ樹脂(a)にアクリル酸及びメタクリル酸の群から選ばれる少なくとも1種の化合物を付与し、さらに化合物(b)を付与することによって、合成することができる。
【0019】
エポキシ樹脂(a)としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール−キシリレン型、グリシジルエーテル型あるいはそれらのハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0020】
カルボン酸含有化合物としては、マレイン酸(Maleic Acid)、コハク酸(Succinic Acid)、イタコン酸(Itaconic Acid)、フタル酸(Phthalic Acid)、テトラヒドロフタル酸(Tetrahydrophthalic Acid)、ヘキサヒドロフタル酸(Hexahydrophthalic Acid)、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸(Endomethylenetetrahydrophthalic Acid)、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸(Methylendomethylenetetrahydrophthalic Acid)、クロレンド酸(Chlorendic Acid)、メチルテトラヒドロフタル酸(Methyltetrahydrophthalic Acid)、トリメリット酸(Trimellitic Acid)、ピロメリット酸(Pyromellitic Acid)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(Benzophenonetetracarboxylic Acid)などが使用できる。カルボン酸含有化合物の酸無水物としては、上述のカルボン酸含有化合物の無水物が挙げられる。
【0021】
成分(A)において、エポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型である場合や、化合物(b)がコハク酸及び無水コハク酸の群から選ばれる少なくとも1種である場合には、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性がより向上する。
【0022】
成分(A)の酸価は、アルカリ現像速度、レジスト剥離速度、感光性樹脂層の柔らかさなどに影響する。酸価は、40〜120mgKOH/gであることが好ましい。この酸価が40mgKOH/g未満では、アルカリ現像時間が長くなる傾向があり、一方、120mgKOH/gを超えると、被処理体である基材への貼り付きが悪くなる場合がある。
【0023】
また、成分(A)の質量平均分子量は、3,000〜15,000であることが好ましい。質量平均分子量が3,000未満では、硬化前の感光性樹脂組成物を被膜状態に形成するのが困難になることがある。一方、15,000を超えると、アルカリ現像液に対する溶解性が悪化する傾向がある。
【0024】
成分(B)としては、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0025】
成分(C)とは、イソシアネート基がブロック剤で保護されている化合物であり、イソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を反応させることで得られる。ブロック化イソシアネート化合物は、常温では安定であるが、ある一定条件下で加熱すると、ブロック剤が開裂してイソシアネート基が発生する化合物である。
【0026】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p−エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のフェノール系;エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系;アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系;その他イミド系;アミン系;イミダゾール系;ピラゾール系;尿素系;カルバミン酸系;イミン系;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系メルカプタン系重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系;ラクタム系等がある。常温保存性、架橋性から、ブロック剤としては、メチルエチルケトキシム(Methyl Ethyl Ketoxime)が好ましい。
【0027】
イソシアネート化合物としては、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、及びこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等のプレポリマーが挙げられる。感光性樹脂組成物層と基材との密着性及び現像性の点から、イソシアネート化合物としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0028】
成分(D)としては、シリカ、タルク、石英、アルミナ、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、雲母等が挙げられる。これらのレーザー回折法による平均粒子径D50は、0.01μm〜20μmが好ましく、0.1μm〜10μmがより好ましい。0.01μm未満の粒子径では、フィラーの粉砕が難しく、価格が高くなる。また、20μmを超える粒子径では、レジストパターンのガタツキが発生しやすくなる。フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液への耐性の点から、成分(D)としては、タルクが好ましい。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、上記成分(A)〜(D)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、架橋性モノマー、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、光発色剤、熱発色防止剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤及び撥油剤等が挙げられ、各々0.01〜20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−n−アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤を含有させてもよい。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物において、成分(A)の配合量は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して35〜55質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。成分(A)の配合量が35質量%未満では、被膜性が悪くなることがある。成分(A)の配合量が55質量%を超えると、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が低下することがある。
【0032】
成分(B)の配合量は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましい。成分(B)の配合量が0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる傾向がある。一方、10質量%を超えると、露光の際に感光性樹脂層の表面で吸収が増大して、感光性樹脂層内部の光架橋が不十分となる傾向がある。
【0033】
成分(C)の配合量は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して5〜25質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。成分(C)の配合量が5質量%未満では、加熱後のフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が不十分となることがある。一方、25質量%を超えると、光硬化が不十分となり、解像性が不十分となる傾向がある。
【0034】
成分(D)の配合量は、成分(A)、(B)、(C)及び(D)の総量に対して20〜45質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることがより好ましい。成分(D)の配合量が20質量%未満では、感光性樹脂組成物をドライフィルムにした際に、エッジヒュージョンが発生しやすくなる場合がある。一方、45質量%を超えると、レジスト剥離後に(D)成分が基材に残存し、残渣欠陥となる場合がある。
【0035】
本発明のエッチング方法では、まず、基材に感光性樹脂組成物を塗工し、乾燥して、感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を形成する。あらかじめキャリアーフィルムに感光性樹脂層を形成した感光性フィルム(ドライフィルム)を基材に貼り合わせてもよい。次に、パターンの露光を実施し、露光部を硬化させる。次いで、アルカリ現像を実施し、レジストパターンとして不要な部分(非露光部)を除去し、硬化した感光性樹脂層のみからなるレジストパターンを形成する。アルカリ現像液としては、例えば炭酸アルカリ金属塩の水溶液を用いることができる。アルカリ現像後のレジストパターンに加熱(ベーク)処理を実施する。次に、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液でエッチング処理を実施する。その後レジスト剥離を実施することができる。
【0036】
基材としては、ガラス、セラミック、酸化銀、シリコン、ゲルマニウム、タンタル、半導体基板、石英、チタン等が挙げられる。
【0037】
レジストパターンの加熱(ベーク)処理は、感光性樹脂層と基材の密着を向上させること、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性を向上させること等の目的で実施する。加熱温度は、使用するブロック剤の開裂する温度以上が好ましい。90〜250℃であるのが好ましく、110〜200℃であるのがさらに好ましい。90℃未満であると、架橋反応の進みが遅く、250℃を超えると、他の成分の分解が発生する可能性がある。加熱時間は10〜90分間であるのが好ましい。
【0038】
キャリアーフィルムとしては、紫外線を透過させる透明フィルムが好ましい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が使用できる。その中でも、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適性、剥離適性、光透過性、屈折率に対して有利であり、また、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。キャリアーフィルムの厚みは、1〜100μmであることが好ましい。
【0039】
基材又はキャリアーフィルム上に感光性樹脂組成物を塗工し、乾燥して感光性樹脂層を形成する方法としては、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等の方法で行うことができる。感光性樹脂層の厚みは、3〜150μmが好ましい。3μm未満であると、感光性樹脂層の基材への塗工やキャリアーフィルムから基材への転写がしにくくなる場合があり、150μmを超えると、レジストパターンの解像性が悪くなる場合がある。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜13、比較例1〜3)
表1〜3に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物を得た。なお、表1〜3における各成分配合量の単位は、質量部を表す。得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名:R310、25μm厚、三菱樹脂社製)上に塗工し、100℃で8分間乾燥し、溶剤成分をとばし、PETフィルムの片面上に実施例1〜13、比較例1〜3の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層(乾燥膜厚:60μm)を得た。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
表1〜3において、各成分は以下の通りである。
【0046】
<成分(A)>
(A−1)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)UXE−3024(商品名、日本化薬社製、濃度65質量%、エポキシ樹脂(a):複合型)
(A−2)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)CCR−1235(商品名、日本化薬社製、濃度62質量%、エポキシ樹脂(a):クレゾールノボラック型)
(A−3)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)ZAR−1035(商品名、日本化薬社製、濃度65質量%、エポキシ樹脂(a):ビスフェノールA型)
(A−4)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)ZFR−1401H(商品名、日本化薬社製、濃度62質量%、エポキシ樹脂(a):ビスフェノールF型)
(A−5)エポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER828、三菱化学社製)であり、化合物(b)がコハク酸であり、エポキシ樹脂(a):化合物(b):アクリル酸のモル比が1:2:2で反応させて得られた酸変性エポキシアクリレート
(A−6)エポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名:JER828、三菱化学社製)であり、化合物(b)がフタル酸であり、エポキシ樹脂(a):化合物(b):アクリル酸のモル比が1:2:2で反応させて得られた酸変性エポキシアクリレート
【0047】
<成分(B)>
(B−1)2−(2′−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体
(B−2)4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0048】
<成分(C)>
(C−1)スミジュール(SUMIDUR、登録商標)BL3175(商品名、住化コベストロウレタン社製、ベース:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ブロック剤:メチルエチルケトキシム、濃度75質量%)
(C−2)デスモジュール(DESMODUR、登録商標)BL1100(商品名、住化コベストロウレタン社製、ベース:2,6−トリレンジイソシアネート、ブロック剤:ε−カプロラクタム)
(C−3)ディスモサーム(DESMOTHERM、登録商標)2170(商品名、住化コベストロウレタン社製、ベース:4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ブロック剤:活性メチレン、濃度70質量%)
【0049】
<成分(D)>
(D−1)沈降性硫酸バリウム #100(堺化学工業社製)
(D−2)タルク(商品名:LMS−200、富士タルク工業社製、平均粒子径5μm)
(D−3)シリカ(商品名:FB−3SDC、電気化学工業社製)
(D−4)タルク(商品名:SG95、日本タルク社製、平均粒子径2.5μm)
【0050】
<(E)アルカリ可溶性樹脂>
(E−1)成分;メチルメタクリレート/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸を質量比58/15/27で共重合させた共重合樹脂(質量平均分子量70000)
【0051】
<(F)エチレン性不飽和基を有する光重合性化合物>
(F−1)2,2′−ビス−(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン(商品名:BPE−500、新中村化学工業社製)
(F−2)トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:TMP−A、共栄社化学社製)
【0052】
次に、厚さ2mmのガラス基材に、上記で得られた実施例1〜13及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を含有してなる感光性樹脂層を100℃で熱圧着した。次に、フォトマスク(ライン/スペース=500μm/500μm)を介して、超高圧水銀灯にて露光した。露光後、室温で10分間放置し、次いでPETフィルムを剥がし取り、感光性樹脂層の表面に、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて、スプレー圧0.1MPaでスプレーし、非露光部を除去して、現像を行った。その後、20℃で、スプレー圧0.1MPaにて水洗を行い、乾かした。その後、150℃、30分のベーク処理を実施した。
【0053】
次に、上記で作製したレジストパターン形成後のガラス基材を、高濃度の20質量%フッ酸水溶液(25℃)に40分間浸漬した。実施例1〜13の感光性樹脂組成物では、感光性樹脂層の剥がれが発生せず、50μm以上の深さのエッチングが完了できた。一方、比較例1〜3の感光性樹脂組成物では、感光性樹脂層の剥がれが発生し、良好なエッチングが達成できなかった。
【0054】
実施例1〜4を比較すると、成分(A)におけるエポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型であり、成分(C)が、メチルエチルケトキシムによってブロック化された1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートであり、成分(D)がタルクである実施例2及び4では、さらに浸漬時間を長くして、100μm以上の深さまでエッチングしても、感光性樹脂層の剥がれが発生しなかった。
【0055】
実施例2、4、5及び6を比較すると、成分(A)におけるエポキシ樹脂(a)がビスフェノールA型である実施例2及び4では、さらに浸漬時間を長くして、100μm以上の深さまでエッチングしても、感光性樹脂層の剥がれが発生しなかった。
【0056】
実施例7、8及び9を比較すると、成分(C)が、メチルエチルケトキシムによってブロック化された1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートである実施例7では、さらに浸漬時間を長くして、100μm以上の深さまでエッチングしても、感光性樹脂層の剥がれが発生しなかった。
【0057】
実施例7及び10を比較すると、成分(A)における化合物(b)がコハク酸である実施例7では、さらに浸漬時間を長くして、100μm以上の深さまでエッチングしても、感光性樹脂層の剥がれが発生しなかった。
【0058】
実施例7、11、12及び13を比較すると、成分(D)がタルクである実施例7及び12では、さらに浸漬時間を長くして、100μm以上の深さまでエッチングしても、感光性樹脂層の剥がれが発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の感光性樹脂組成物は、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液を使用して加工する際のレジストとして使用可能である。