(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0011】
[実施例1]
図1は、実施例1にかかる淡水化装置1の系統図である。淡水化装置1は、逆浸透膜を備え、逆浸透圧をかけられることにより、原水(海水)を、第1透過水と、第1透過水より塩濃度が濃い第1濃縮水とに分離する第1モジュール11を備えている。第1流路(配管)12は、供給ポンプ13により原水を第1モジュール11に供給する。第2モジュール14は、基本構成は第1モジュール11と同様であり、逆浸透膜を備え、逆浸透圧をかけられることにより、第1モジュール11で分離後の第1透過水を、第2透過水と、第2透過水より塩濃度の濃い第2濃縮水とに分離する。第2流路(配管)15は、供給ポンプ27によって、第1モジュール11で分離後の第1透過水を第2モジュール14に供給する
【0012】
第1流路12における供給ポンプ13より下流側には、第1モジュール11、ひいては第2モジュール14に逆浸透圧をかける高圧ポンプ16が設けられている。
第3流路(配管)17は、第2モジュール14で分離後の第2濃縮水を第1流路12における高圧ポンプ16、供給ポンプ13より上流側に供給する。
【0013】
第1濃縮水流路(配管)18は、第1濃縮水をエネルギー回収装置(ERD)19に送る。また、第1流路12の供給ポンプ13より下流側で高圧ポンプ16より上流側から分岐した分岐流路(配管)21は、原水の一部をエネルギー回収装置19に送る。エネルギー回収装置19では、高圧の第1濃縮水の水圧エネルギーを、分岐流路21を流れる原水に回収させる。エネルギー回収装置19から排出された高圧の原水は昇圧ポンプ22により更に昇圧されて、合流流路(配管)23により高圧ポンプ16の下流側の第1流路12に合流する。
【0014】
エネルギー回収装置19から排出された第1濃縮水は排出流路24により系外に排出されるが、その一部は、排出流路24から分岐した第4流路(配管)25によって、第1流路12における高圧ポンプ16、供給ポンプ13よりも上流側に供給する。
第2モジュール14から排出された第1透過水は飲料水等の利用に供するために排出流路26を介して系外に排出される。
【0015】
ここで、第1モジュール11、第2モジュール14にかける逆浸透圧は高圧ポンプ16、27により発生するが、この高圧ポンプ16の吐出圧力は処理する原水の量により変動する。この原水の量を固定したときは、被処理水である原水の塩濃度、水温、水質が高圧ポンプ16の吐出圧力の変動因子となる。例えば原水の塩濃度が濃いときは、高圧ポンプ16の吐出圧力を高めて、高い逆浸透圧を第1モジュール11、ひいては第2モジュール14に与える必要がある。
【0016】
そして、高圧ポンプ16の効率は高圧ポンプ16の吐出圧力で変動する。処理水の塩濃度、水温は変動するので、これにより前記のとおり高圧ポンプ16の吐出圧力が変動し、高圧ポンプ16の効率が低下する場合がある。すなわち、例えば、処理水の塩濃度が高いときは、第1モジュール11、第2モジュール14での逆浸透圧を高めないと適切に第2透過水を得られないため、高圧ポンプ16の吐出圧力を高める制御を行っている。
そこで、高圧ポンプ16の吐出圧力を調整するために高圧ポンプ16にインバータを設ける場合がある。あるいは、高圧ポンプ16が固定速度のポンプである場合は、流量調整バルブで高圧ポンプ16への原水の流量を調整する場合もある。
【0017】
しかしながら、インバータを用いると高圧ポンプ16の効率を最適効率に調整できないという不具合がある。
一方、高圧ポンプ16が固定速度で流量調整バルブを用いるときは、流量調整バルブでエネルギーロスが発生してしまうという不具合がある。
そこで、これらの不具合を避けながら、高圧ポンプ16の吐出圧力は出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプを運転したい。
【0018】
そのため、本実施例では、第2濃縮水を第3流路17を介して第1流路12の高圧ポンプ16よりも上流側に戻す他に、第2濃縮水より塩濃度の濃い第1濃縮水の一部を第4流路25を介して高圧ポンプ16よりも上流側に戻すようにしている。
これにより、第1流路12を流れる原水の塩濃度の調整ができ、もって、高圧ポンプ16の吐出圧力が一定になるように調節しやすくすることが可能となる。
【0019】
[実施例2]
図2は、実施例2にかかる淡水化装置100の系統図である。
図2において、
図1と同一符号の部材等は実施例1と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
実施例2の淡水化装置100が実施例1の淡水化装置1と異なるのは、まず、高圧ポンプ16の吐出側で、合流流路23の第1流路12との合流側より下流側、かつ、第1モジュール11より上流側の位置に、水圧を検出する圧力検出部(圧力計)111が設けられていることである。この圧力検出部111は高圧ポンプ16の吐出圧力を判断することができる。
【0021】
また、
第4流路25には、当該
第4流路25を流れる第1濃縮水の流量を調整する流量調節部112が設けられている。流量調節部112は、具体的には、流量可変のポンプ、流量調整可能なバルブなどにより構成することができる。
さらに、淡水化装置100は制御部113を備え、制御部113には、圧力検出部111及び流量調節部112が接続されている。
なお、第2流路15、第3流路17、第4流路25、第5流路24、第6流路26には、それぞれ流量計114が設けられている。
【0022】
次に、本淡水化装置100の動作について説明する。圧力検出部111は高圧ポンプ16の吐出圧力(合流流路23から第1流路12に流れ込む原水の水圧も含む)を判断することができるので、制御部113は、この圧力検出部111の検出結果に基づいて流量調節部112を制御し、第4流路25を流れる第1濃縮水の量を調整する。具体的には、原水の塩濃度が高まると高圧ポンプ16の吐出圧力が高まり、原水の塩濃度が低くなると高圧ポンプ16の吐出圧力が低くなる。そこで、圧力検出部111で検出した水圧が目標値より低ければ、制御部113は、流量調節部112を制御して塩濃度の高い第1濃縮水の第1流路12への供給量を増やす。一方、圧力検出部111で検出した水圧が目標値より高ければ、制御部113は、流量調節部112を制御して塩濃度の高い第1濃縮水の第1流路12への供給量を減らす。これにより、原水の塩濃度が調節されるので、高圧ポンプ16の吐出圧力も調整される。
よって高圧ポンプ16の吐出圧力を出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプ16を運転することができる。
【0023】
[実施例3]
図3は、実施例3にかかる淡水化装置200の系統図である。
図3において、
図2と同一符号の部材等は実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
実施例3の淡水化装置200が実施例2の淡水化装置100と異なるのは、圧力検出部111に代えて、高圧ポンプ16の消費電力を検出する電力検出部(電力計)211が高圧ポンプ16に設けられていることである。また、制御部212が設けられ、制御部212には、電力検出部211と流量調節部112とが接続されている。
【0024】
次に、本淡水化装置200の動作について説明する。高圧ポンプ16の吐出圧力の高低により高圧ポンプ16の消費電力も高低するので、高圧ポンプ16の消費電力を測定することにより、高圧ポンプ16の吐出圧力を推定することができる。そこで、高圧ポンプ16の消費電力に目標値を設け、高圧ポンプ16の消費電力が目標値より低ければ、制御部212は、流量調節部112を制御して塩濃度の高い第1濃縮水の第1流路12への供給量を増やす。一方、高圧ポンプ16の消費電力が目標値より高ければ、制御部212は、流量調節部112を制御して塩濃度の高い第1濃縮水の第1流路12への供給量を減らす。これにより、原水の塩濃度が調節されるので、高圧ポンプ16の吐出圧力も調整される。
よって高圧ポンプ16の吐出圧力を出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプ16を運転することができる。
【0025】
[実施例4]
図4は、実施例4にかかる淡水化装置300の系統図である。
図4において、
図2と同一符号の部材等は実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
実施例4の淡水化装置300が実施例2の淡水化装置100と異なるのは、圧力検出部111に代えて、第1流路12か、第1モジュール11よりも上流側の他の流路に、水の塩濃度を検出する塩濃度検出部311が設けられている点である。
図4の例では、塩濃度検出部311は、第1流路12の供給ポンプ13より上流側に設けられた例を図示しているが、本発明はこれに限定されず、第1流路12の各位置、合流流路23の各位置に配置することが可能である。塩濃度検出部311としては、導電率計、塩濃度計、TDS((Total Dissolved Solids)計等を用いることができる。
また、制御部312が設けられ、制御部312には、塩濃度検出部311と流量調節部112とが接続されている。
【0026】
次に、本淡水化装置300の動作について説明する。塩濃度検出部311により原水の塩濃度を検出することができる。そして、この原水の塩濃度が低いときは、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より低くなるため、制御部312は、流量調節部112を制御して、塩濃度の高い第1濃縮水の第4流路25での流量を多くする。一方、原水の塩濃度が高いときは、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より高くなるため、制御部312は、流量調節部112を制御して、塩濃度の高い第1濃縮水の第4流路25での流量を少なくする。
よって高圧ポンプ16の吐出圧力を出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプ16を運転することができる。
【0027】
[実施例5]
図5は、実施例5にかかる淡水化装置400の系統図である。
図5において、
図2と同一符号の部材等は実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
まず、実施例5の淡水化装置400が実施例2の淡水化装置100と異なるのは、圧力検出部111に代えて、以下のようなセンサ類を備えていることにある。まず、第3流路17には、第2濃縮水の塩濃度WA1を検出する第1塩濃度検出部411が設けられている。また、第3流路17には、第3流路17の水の流量FT1を検出する第1流量検出部(流量計)412が設けられている。第5流路24(第4流路25でもよい)には、第1濃縮水の塩濃度WA2を検出する第2塩濃度検出部413が設けられている。第4流路25には、第4流路25の水の流量FT2を検出する第2流量検出部414が設けられている。第3流路17及び第4流路25と合流前の第1流路12には、塩濃度WA3を検出する第3塩濃度検出部415が設けられている。同様に、第3流路17及び第4流路25と合流前の第1流路12には、原水の流量FT3を検出する第3流量検出部416が設けられている。
【0028】
また、制御部417が設けられ、制御部417には、第1塩濃度検出部411、第1流量検出部412、第2塩濃度検出部413、第2流量検出部414、第3塩濃度検出部415、第3流量検出部416、及び流量調節部112が接続されている。
【0029】
次に、本淡水化装置400の動作について説明する。まず、制御部417は、第1塩濃度検出部411、第1流量検出部412、第2塩濃度検出部413、第2流量検出部414、第3塩濃度検出部415、第3流量検出部416による各値の検出結果に基づいて、“WA1×FT1+WA2×FT2+WA3×FT3”を演算する。これにより、高圧ポンプ16、第1モジュール11に流入する水に含まれる単位流量当たりの塩分量が求まる。次に、制御部417は、“FT1+FT2+FT3”は高圧ポンプ16、第1モジュール11に流入する水の単位時間当たりの流量が求まる。そして、制御部417は、“(WA1×FT1+WA2×FT2+WA3×FT3)/(FT1+FT2+FT3)”を演算することにより、高圧ポンプ16、第1モジュール11に流入する水の塩濃度を求めることができる。
【0030】
そして、制御部417は、このようにして求めた塩濃度を目標値と比較する。塩濃度が目標値より低い時は、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より低くなるので、流量調節部112を制御して、第4流路25を流れる第1濃縮水の流量を増やす。これにより、第1モジュール11に流入する水の塩濃度を高める。一方、塩濃度が目標値より高い時は、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より高くなるので、流量調節部112を制御して、第4流路25を流れる第1濃縮水の流量を減らす。これにより、第1モジュール11に流入する水の塩濃度を低くする。
よって高圧ポンプ16の吐出圧力を出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプ16を運転することができる。
【0031】
[実施例6]
図6は、
実施例6にかかる淡水化装置
500の系統図である。
図6において、
図2と同一符号の部材等は実施例2と同様であるため、詳細な説明は省略する。
まず、
実施例6の淡水化装置500が実施例2の淡水化装置100と異なるのは、第1流路12の水の流量を検出する第1流量検出部511を備えていることである。また、第5流路18の水の流量を検出する第2流量検出部518を備えている。さらに、第2流路15の水の流量を検出する第3流量検出部513を備えている。その上、第3流路17の水の流量FT1を検出する第4流量検出部514を備えている。また、第4流路25の水の流量FT2を検出する第6流量検出部515を備えている。
また、第2流路15の水の流量を検出する第7流量検出部512を備えている。
【0032】
さらに、第3流路17及び第4流路25と合流前の第1流路12の塩濃度WA1を検出する第3塩濃度検出部516と、第3流路17及び第4流路25と合流前の第1流路12の水の流量FT3を検出する第3流量検出部517も備えている。
また、制御部519が設けられ、制御部519には、第1流量検出部511、第2流量検出部518、第3流量検出部513、第4流量検出部514、第6流量検出部515、第3塩濃度検出部516、第3流量検出部517、流量調節部112がそれぞれ接続されている。
【0033】
次に、本淡水化装置500の動作について説明する。まず、第1モジュール11、第2モジュール14は選択した逆浸透膜により、水からの塩の除去率が定まる。そこで、制御部519は、第1流量検出部511で検出した水の流量の、第2流量検出部518で検出した第1透過水と、第3流量検出部513で検出した前記第1濃縮水との流量配分から、第1濃縮水の塩濃度N1を推定する。同様に、制御部519は、第3流量検出部513で検出した第1透過水の流量の、第5流量検出部515で検出した第2透過水と、第4流量検出部514で検出した第2濃縮水との流量配分から、第2濃縮水の塩濃度N2を推定する。
【0034】
そして、制御部519は、“(N1×FT2+N2×FT1+WA1×FT3)”を演算して、高圧ポンプ16、第1モジュール11に流入する水に含まれる単位流量当たりの塩分量が求まる。次に、制御部519は、“FT1+FT2+FT3”を演算して、高圧ポンプ16、第1モジュール11に流入する水の単位時間当たりの流量を求める。そして、制御部519は、“(N1×FT2+N2×FT1+WA1×FT3)/(FT2+FT1+FT3)”の演算から高圧ポンプ16の吸入側の水の塩濃度を求める。これにより、当該塩濃度が目標値となる所定の値となるように流量調節部112で第4流路25を介して第1流路12側に流す第1濃縮水の流量を制御する。すなわち、塩濃度が目標値より低い時は、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より低くなるので、流量調節部112を制御して、第4流路25を流れる第1濃縮水の流量を増やす。これにより、第1モジュール11に流入する水の塩濃度を高める。一方、塩濃度が目標値より高い時は、高圧ポンプ16の吐出圧力が目標値より高くなるので、流量調節部112を制御して、第4流路25を流れる第1濃縮水の流量を減らす。これにより、第1モジュール11に流入する水の塩濃度を低くする。
よって高圧ポンプ16の吐出圧力を出来るだけ平準化し、可能な限り効率の高い運転ポイントで高圧ポンプ16を運転することができる。
【0035】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0036】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれ機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又はICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。