(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可動部材は、挿入過程の平型導体に圧せられて一時的に原位置に対して移動して姿勢を変えて挿入の続行を許容し、所定位置までの挿入完了時に原位置での姿勢へ戻るように付勢されていることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
可動部材は、該可動部材を抜出阻止位置から平型導体の抜出を可能とする位置へ移動操作するための操作部を有し、平型導体の挿入過程にて上記抜出阻止位置で平型導体と干渉して該可動部材を上記挿入許容位置へ移動させるための干渉部と、平型導体の挿入完了状態にて該平型導体に形成された被係止部に対して上記抜出阻止位置で後方に係止可能な係止部とを、上記端子配列方向で端子配列範囲外に位置していることとする請求項1または請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る平型導体用電気コネクタ1(以下、「コネクタ1」という)の斜視図である。
図2は、
図1のコネクタ1の各部材を分離して示した斜視図である。
図3は、
図1のコネクタ1の端子配列方向に対して直角な面での断面を示す断面図であり、(A)は信号端子の位置での断面、(B)はグランド端子の位置での断面、(C)は固定金具の位置での断面を示している。
【0025】
コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に配され、平型導体C(
図5,6参照)が上方から接続されることにより、上記回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。ここで、「回路基板」とは、コネクタの端子に接続される回路部が形成された板状の実装部材を意味し、剛性が高い板状の部材だけでなく、平型導体Cと同様に剛性が低い柔軟なシート状の部材も含まれる。
【0026】
また、本実施形態において、「端子配列範囲」とは、複数の端子が間隔をもって連続的に配列された範囲をいう。本実施形態に係るコネクタ1では、
図2によく見られるように、後述の信号端子20及びグランド端子30が間隔をもって配列されており、一つの端子配列範囲が形成されている。以下、信号端子20及びグランド端子30について、両者を特に区別する必要がないときには、説明の便宜上、これらを「端子20,30」と総称する。
【0027】
コネクタ1に接続される平型導体Cは、帯状をなし、
図5及び
図6に見られるように、回路基板の実装面に対して直角をなす上下方向に延びた姿勢でコネクタ1に対して上方から挿抜される。つまり、本実施形態では、下方へ向かう方向が平型導体の挿入方向前方であり、上方へ向かう方向が平型導体の挿入方向後方となる。以下、「前方」及び「後方」という場合には、平型導体の挿入方向での「前方」及び「後方」、すなわち「下方」及び「上方」を意味するものとする。
【0028】
平型導体Cは、前後方向(上下方向)に延びる複数の回路部(図示せず)が幅方向(前後方向に対して直角な方向)に配列され形成されている。該回路部は、平型導体Cの絶縁層内で埋設されており、平型導体Cの前端位置(下端位置)にまで達している。また、上記複数の回路部は、信号回路部とグランド回路部とが混在している。信号回路部は、その前端側部分が平型導体Cの一方の面(
図5,6での左面)に露呈しており、信号端子20と接触可能となっている。グランド回路部は、その前端側部分が平型導体Cの他方の面(
図5,6での右面)に露呈しており、グランド端子30と接触可能となっている。また、平型導体Cは、上記前端側部分の両側縁に切欠部C1が形成されており(
図5,6参照)、該切欠部C1の前方(下方)に位置する耳部C2の後端縁(上端縁)は、後述するコネクタ1の可動部材50の係止部55Cと係止する被係止部C2Aとして機能する(
図5(C)参照)。
【0029】
コネクタ1は、
図1,2に見られるように、略直方体外形をなす電気絶縁材製のハウジング10と、該ハウジング10の長手方向を端子配列方向として該ハウジング10に配列保持される金属製の複数の信号端子20及びグランド端子30と、端子20,30の配列範囲の両外側位置でハウジング10に保持される固定金具40と、後述する閉位置と開位置との間で切換移動(回動)可能にハウジング10に支持される電気絶縁材製の可動部材50とを備えている。
【0030】
コネクタ1の詳細な構成の説明に先立って、まず、コネクタ1に対する平型導体Cの挿入および抜出の動作の概要について説明しておく。コネクタ1への平型導体Cの挿入前においては、コネクタ1の可動部材50は、
図1に示される姿勢をなす閉位置で、平型導体Cの挿入を許容する。また、平型導体Cが挿入接続された後においても、コネクタ1の使用状態では、可動部材50は閉位置(抜出阻止位置)に維持されており、後述するように、可動部材50の係止部55Cと平型導体Cの被係止部C2Aとが係止可能に位置することにより、平型導体Cの後方(上方)への抜出が阻止される(
図5(C)参照)。
【0031】
また、コネクタ1の不使用時となる平型導体Cの抜出時には、可動部材50が回動して開位置に切り換えられることにより、平型導体Cの被係止部C2Aに対する可動部材50の係止部55Cの係止状態が解除される(
図6(A)参照)。そして、平型導体Cが後方(上方)へ引かれると、可動部材50が平型導体Cの被係止部C2Aからの当接力を後述の受圧部55Dで受けることにより、閉位置へ向けて回動し、その回動過程にて可動部材50の後述の貫通溝部55Aが上記被係止部C2Aの通過経路上に位置したときに、平型導体Cの後方への抜出が許容される。平型導体Cの抜出後も可動部材50は引き続き回動し自動的に閉位置へ至る。このように、平型導体Cの抜出と、可動部材50の閉位置へ回動は一連の動作としてなされる。
【0032】
コネクタ1の構成の説明に戻る。ハウジング10は、
図1に見られるように、回路基板(図示せず)の実装面に対して平行な一方向を長手方向として延びており、平型導体Cを受け入れるための受入部11が、上方へ向けて開放された空間として形成されている。該ハウジング10は、上記実装面に対向して平行に延びる底壁12と、該底壁12から上方に起立して上記長手方向、すなわち端子配列方向で端子配列範囲を含む範囲にわたって延びコネクタ幅方向(端子配列方向に対して直角をなすハウジング10の短手方向)で対向する第一側壁13及び第二側壁14(必要に応じて「側壁13,14」と総称する)と、端子配列方向での底壁12の両端位置から上方に起立するとともにコネクタ幅方向に延び二つの側壁13,14の端部同士を連結する端壁15とを有している。
【0033】
既述した受入部11は、
図1に見られるように、底壁12、側壁13,14及び端壁15で囲まれて端子配列方向に延びるとともに上方に開口する開口部を有し、上下方向で該開口部から底壁12の上面にまでわたる空間で、平型導体Cの前端部(
図5,6での下端部)を受け入れるようになっている(
図3(A),(B)をも参照)。
【0034】
第一側壁13は、
図1,2にて手前側そして
図3(A),(B)にて右側に位置する側壁である。ハウジング10は、端子配列範囲の両外側にて第一側壁13の端部そして端壁15を含む部分が、
図1,2によく見られるように、上下方向でのほぼ全域が切り欠かれて空間が形成されている。該空間は、閉位置にある可動部材50を受け入れて収容するための第一収容部10Aをなしている。一方、第二側壁14は、
図1,2にて奥側そして
図3(A),(B)にて左側に位置する側壁である。該第二側壁14は、端子配列方向での端子配列範囲の両外側で第一収容部10Aの範囲内の位置にて、
図5,6に見られるように、該第二側壁14の上端寄りの範囲で壁厚方向(コネクタ幅方向)に貫通する孔部が形成されている。該孔部は、閉位置にある可動部材50の後述する端板部55を受け入れて収容するための第二収容部14Aをなしている。
【0035】
端壁15は、
図2に見られるように、該端壁15の下部でのコネクタ幅方向中間位置に、第一収容部10Aへ向けて開口するように凹湾曲した回動支持部15Aを有している。該回動支持部15Aは、
図3(C)に見られるように、端子配列方向に対して直角な面での断面形状が右方へ向けて開口した半円形状をなしており、可動部材50の後述する回動軸部53を回動可能に支持している。
【0036】
また、ハウジング10には、複数の信号端子20をそれぞれ収容して保持するための信号端子収容溝17(
図3(A)参照)及び複数のグランド端子30をそれぞれ収容して保持するためのグランド端子収容溝18(
図3(B)参照)がそれぞれ所定間隔をもって端子配列方向で配列形成されている。本実施形態では、グランド端子収容溝18は、信号端子収容溝17の配列範囲内に形成されている。端壁15には、固定金具40を収容して保持するための固定金具収容溝19(
図3(C)参照)が端子配列範囲外に形成されている。
【0037】
信号端子収容溝17、グランド端子収容溝18及び固定金具収容溝19の説明に先立って、まず、信号端子収容溝17、グランド端子収容溝18及び固定金具収容溝19に収容される信号端子20、グランド端子30及び固定金具40の形状を説明する。
【0038】
信号端子20は、
図2に見られるように、金属板部材の平坦な板面を維持して打ち抜いて作られており、
図3(A)に見られるように、ハウジング10の信号端子収容溝17にそれぞれ収容されることにより、全ての信号端子20の板面が端子配列方向に対して直角をなすようにしてハウジング10に配列保持されている。
【0039】
図3(A)に見られるように、信号端子20は、左右方向(コネクタ幅方向)に延びる基部21と、該基部21の右端部から上方へ直状に延びる被保持腕部22と、該基部21の左端部から上方へ向けて互いに並行して直状に延びコネクタ幅方向で弾性変位可能な長弾性腕部23及び短弾性腕部24と、基部21の右端部から下方へ向けて延びハウジング10外へ延出する接続部25とを有している。以下、必要に応じて、被保持腕部22、長弾性腕部23及び短弾性腕部24を「腕部22,23,24」と総称する。
【0040】
被保持腕部22は、後述するハウジング10の保持溝部17Bへの圧入のための圧入突部22Aが該被保持腕部22の上部の右縁に形成されている。長弾性腕部23は、平型導体Cの信号回路部(図示せず)と接触するための上側接触部23Aが上端部で右方へ向けて突出して形成されている。短弾性腕部24は、長弾性腕部23よりも右方に位置しており、該長弾性腕部23よりも短く、かつ該長弾性腕部23とほぼ同じ幅寸法(左右方向寸法)の腕状をなしている。該短弾性腕部24の上端部は、上記長弾性腕部23の上側接触部23Aの直下に位置しており、平型導体Cの上記信号回路部(図示せず)と接触するための下側接触部24Aが右方へ向けて突出して形成されている。
図3(A)に見られるように、上側接触部23Aは下側接触部24Aよりも突出量が大きくなっており、その突出頂部がコネクタ幅方向で下側接触部24Aの突出頂部とほぼ同位置にある。上側接触部23Aの突出頂部及び下側接触部24Aの突出頂部は、ハウジング10の後述の弾性変位許容溝部17Cから受入部11内へ突出している。接続部25は、基部21の右端部から下方へ延びてからハウジング10外で右方へ延びており、その右方へ延びる部分の下縁で回路基板の対応信号回路部(図示せず)に半田接続されるようになっている。
【0041】
グランド端子30は、既述の信号端子20と同様に、金属板部材の平坦な板面を維持して打ち抜いて作られており、
図3(B)に見られるように、ハウジング10のグランド端子収容溝18にそれぞれ収容されることにより、全てのグランド端子30の板面が端子配列方向に対して直角をなすようにしてハウジング10に配列保持されている。
【0042】
図3(B)に見られるように、グランド端子30は、左右方向(コネクタ幅方向)に延びる基部31と、該基部31の左端部から上方へ直状に延びる被保持腕部32と、該基部31の右端部から上方へ直状に延びコネクタ幅方向で弾性変位可能な弾性腕部33と、基部31の左端部から下方へ向けて延びハウジング10外へ延出する接続部35とを有している。以下、必要に応じて、被保持腕部32及び弾性腕部33を「腕部32,33」と総称する。
【0043】
被保持腕部32は、後述するハウジング10の保持溝部18Bへの圧入のための圧入突部32Aが該被保持腕部32の上部の左縁に形成されている。弾性腕部33は、平型導体Cのグランド回路部(図示せず)と接触するためのグランド接触部33Aが上端部で左方へ向けて突出して形成されている。
図3(B)に見られるように、グランド接触部33Aの突出頂部は、ハウジング10の後述の弾性変位許容溝部18Cから受入部11内へ突出している。接続部35は、基部31の左端部から下方へ延びてからハウジング10外で左方へ延びており、その左方へ延びる部分の下縁で回路基板の対応グランド回路部(図示せず)に半田接続されるようになっている。
【0044】
固定金具40は、既述の信号端子20及びグランド端子30と同様に、金属板部材の平坦な板面を維持して打ち抜いて作られており、
図3(C)に見られるように、ハウジング10の固定金具収容溝19にそれぞれ収容されることにより、固定金具40の板面が端子配列方向に対して直角をなすようにしてハウジング10に保持されている。したがって、固定金具40は、端子配列方向では板厚のみの寸法しか有していないので、端子配列方向でのコネクタ1の大幅な小型化が可能となる。
【0045】
図3(C)に見られるように、固定金具40は、コネクタ幅方向に延びる基部41と、該基部41から下方へ向けて互いに並行して延びる四つの脚部、すなわち後述する第一固定脚部42、第二固定脚部43、規制脚部44及び係合脚部45(以下、必要に応じて「脚部42,43,44,45」と総称する)とを有している。換言すると、脚部42,43,44,45はそれぞれの上端で基部41によって連結されている。
【0046】
第一固定脚部42は、上記四つの脚部のうちの最も左側に位置する脚部であり、基部41の左端部からハウジング10の下面よりも下方にまで延びている。ハウジング10の下面から延出している該第一固定脚部42の下端部は、左方へ向けて延びており、その下縁で回路基板の対応部(図示せず)に半田接続により固定される第一固定部42Aとして形成されている。
【0047】
第二固定脚部43は、上記四つの脚部のうちの最も右側に位置する脚部であり、基部41の右端部からハウジング10の下面よりも下方にまで直状に延びている。ハウジング10の下面から延出している該第二固定脚部43の下端部は、左右両方向に延びており、その下縁で回路基板の対応部(図示せず)に半田接続により固定される第二固定部43Aとして形成されている。
【0048】
規制脚部44は、上記四つの脚部のうちの左から二つ目に位置する脚部であり、基部41の左端寄り位置からハウジング10の底壁12を貫通して直状に延びている。該規制脚部44の下半部は、上半部よりも細くなっており、該下半部の上部の左縁で可動部材50の後述する回動軸部53の位置を規制する規制部44Aとして形成されている。また、規制脚部44は、後述するハウジング10の保持溝部19C−1への圧入のための圧入突部44Bが該規制脚部44の上部の右縁に形成されている。
【0049】
係合脚部45は、上記四つの脚部のうちの右から二つ目に位置する脚部であり、基部41の右端寄り位置からハウジング10の下面よりも若干上方の位置にまで直状に延びており、コネクタ幅方向で弾性変位可能となっている。該係合脚部45は、上端から下方へ向かうにつれて徐々に細くなりつつ若干右方へ傾斜するように延びており、該係合脚部の下部では左縁が山状に突出して係合部45Aが形成されている。該係合部45Aは、突出頂部より上方の縁部(上方に向かうにつれて右方へ傾斜する縁部)が、可動部材50の後述する被係合部54の第一被付勢面54Aに係合して該第一被付勢面54Aを閉位置へ向けて付勢するための第一付勢部45−1として形成されている(
図4(A)参照)。また、突出頂部より下方の縁部(下方に向かうにつれて右方へ傾斜する縁部)が、可動部材50の後述する被係合部54の第二被付勢面54Bに係合して該第二被付勢面54Bを開位置へ向けて付勢するための第二付勢部45−2として形成されている(
図4(B)参照)。
【0050】
このように、本実施形態では、一部材として形成された固定金具40に第一固定部42A、第二固定部43A、規制部44A、係合部45Aが具備されているので、その分、部材の点数を最小限に留めることができる。また、固定金具40の四つの脚部42,43,44,45は全て同じ方向(下方)に延びているので、後述するように、固定金具40をハウジング10の固定金具収容溝19への一方向の挿入で組込むことができ、コネクタ1の製造が容易となる。
【0051】
また、本実施形態では、四つの脚部のうちの両外側に位置する脚部を回路基板への固定のための第一固定脚部42及び第二固定脚部43としたので、固定金具40を二箇所で固定できることに加え、両固定位置の間隔がコネクタ幅方向で大きくなり、さらに固定が強固となる。なお、固定金具に固定脚部を二つ設けることは必須ではなく、十分な固定強度を確保できるのであれば一つでもよい。
【0052】
ハウジング10の説明に戻る。信号端子収容溝17は、
図3(A)に見られるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなしており、ハウジング10を上下方向に貫通して形成されている。該信号端子収容溝17は、ハウジング10の下部でコネクタ幅方向に延びる底溝部17Aと、該底溝部17Aの右端から上方へ向けて延びる保持溝部17Bと、底溝部17Aの左端から上方へ向けて延びる弾性変位許容溝部17Cとを有している。該信号端子収容溝17には信号端子20が下方から圧入される。
【0053】
底溝部17Aは、信号端子20の基部21及び腕部22,23,24のそれぞれの下端部を収容する。保持溝部17Bは、受入部11へ向けて左方に開放された下部を除き、第一側壁13を上下方向に貫通して形成されており、信号端子20の被保持腕部22を収容して圧入保持するようになっている。弾性変位許容溝部17Cは、上下方向全域にわたって第二側壁14の内面から没入して形成されており、信号端子20の長弾性腕部23及び短弾性腕部24を収容するとともにこれらの弾性腕部23,24のコネクタ幅方向(
図3(A)にて左右方向)での弾性変位を許容するようになっている。
【0054】
また、グランド端子収容溝18は、
図3(B)に見られるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし、ハウジング10を上下方向に貫通して形成されている。該グランド端子収容溝18は、ハウジング10の下部でコネクタ幅方向に延びる底溝部18Aと、該底溝部18Aの左端から上方へ向けて延びる保持溝部18Bと、底溝部18Aの右端から上方へ向けて延びる弾性変位許容溝部18Cとを有している。該グランド端子収容溝18にはグランド端子30が下方から圧入される。
【0055】
底溝部18Aは、グランド端子30の基部31を収容する。保持溝部18Bは、受入部11へ向けて右方に開放された下部を除き、第二側壁14を上下方向に貫通して形成されており、グランド端子30の被保持腕部32を収容して圧入保持するようになっている。弾性変位許容溝部18Cは、上下方向全域にわたって第一側壁13の内面から没入して形成されており、グランド端子30の弾性腕部33を収容するとともに該弾性腕部33のコネクタ幅方向(
図3(B)にて左右方向)での弾性変位を許容するようになっている。
【0056】
固定金具収容溝19は、端子配列方向での端壁15の範囲内にて、
図3(C)に見られるように、端子配列方向に対して直角に拡がるスリット状をなし、ハウジング10を上下方向に貫通して形成されている。該固定金具収容溝19は、ハウジング10の上部でコネクタ幅方向(
図3(C)での左右方向)に延びる上溝部19Aと、該上溝部19Aの左端から下方へ向けて延びる外溝部19Bと、上溝部19Aの右半部から下方へ向けて延びる斜溝部19Cとを有している。該固定金具収容溝19には固定金具40が上方から圧入される。
【0057】
上溝部19Aは、固定金具40の基部41を収容する。外溝部19Bは、上下方向全域にわたって端壁15及び底壁12の外面(
図3(C)での左面)から没入して形成されており、固定金具40の第一固定脚部42の固定部42A以外の部分を収容する。
図3(C)に見られるように、該外溝部19Bは、端壁15の上下方向に延びる隔壁15Bによってコネクタ幅方向で斜溝部19Cと隔てられているとともに、隔壁15Bの下部、具体的には回動支持部15Aと対応する位置で貫通形成された孔部15B−1を介して第一収容部10Aと連通している。該孔部15B−1は可動部材50の後述する回動軸部53を収容している。
【0058】
斜溝部19Cは、下方及び右方に開放しており、該斜溝部19Cの下方に位置する第一収容部10Aと連通している。
図3(C)に見られるように、斜溝部19Cは、その下縁が下方に向かうにつれて左方へ傾斜しており、端子配列方向に見て、回動支持部15Aの直上にまで延びている(
図2をも参照)。該斜溝部19Cの下部には、コネクタ幅方向での中間位置に、該斜溝部19Cを形成する対向内壁面(
図3(C)の紙面に対して直角な方向)同士を連結し上下方向に延びる島状部15Cが形成されている。該斜溝部19Cのうち、隔壁15Bと島状部15Cとの間に形成された溝部は、規制脚部44の上部を収容するとともに該規制脚部44を保持するための保持溝部19C−1として形成されている。また、斜溝部19Cのうち、上記島状部15Cよりも右方に位置する部分は、第二固定脚部43及び係合脚部45のそれぞれの上端部を収容するようになっている。また、第二固定脚部43及び係合脚部45のそれぞれの上端部以外の部分は、斜溝部19Cから下方へ延出して、第一収容部10A内に位置している。
【0059】
次に、可動部材50の構成を、主に、閉位置にあるときについて説明する。また、可動部材50の回動する方向について、説明の便宜上、必要に応じて、開位置から閉位置へ向かう方向(
図3(C)での反時計回り方向)を「閉方向」、閉位置から開位置へ向かう方向(
図3(C)での時計回り方向)を「開方向」という。
【0060】
可動部材50は、
図2に見られるように、端子配列方向を長手方向として延びる板状をなす操作部としての本体部51と、端子配列方向で本体部51の両端に位置する連繋部52、回動軸部53及び被係合部54と、端子配列方向での本体部51の両端寄りに位置する端板部55とを有している。本実施形態では、可動部材50は、
図3(A),(B)に見られるように、該可動部材50が閉位置にあるとき、本体部51の内面(コネクタ幅方向に対して直角をなし
図3(A),(B)にて左面)がハウジング10の第一側壁13の外面と当接しており、閉方向への回動が阻止されている。
【0061】
本体部51は、閉位置(
図3(C)及び
図4(A)参照)と開位置(
図4(B)参照)との間での可動部材50の回動操作を受ける。該本体部51は、閉位置における本体部51の上端部が、閉位置にある可動部材50を開位置へ回動させる際の操作を受ける解除操作部51Aとして形成されている。
図3(A),(B)に見られるように、ハウジング10の第一側壁13の外面との間に形成された隙間の存在により、解除操作部51Aに指を引っ掛けて可動部材50を開方向に回動させて、後述する係止部55Cと平型導体Cの被係止部C2Aとの係止状態を解除できるようになっている。
【0062】
連繋部52は、
図2に見られるように、端子配列方向での本体部51の各端部に二つずつ設けられており、該端子配列方向に対して直角な板面同士が間隔をもって対面している。該連繋部52は、
図2に見られるように、
図2の手前側から奥側へ向かうにつれて下方へ傾斜するように延びている。
【0063】
回動軸部53は、端子配列方向でハウジング10の回動支持部15Aに対応する位置にて、端子配列方向に延びており、
図3(C)に見られるように、二つの連繋部52の下部の左端同士を連結している。このようにして、回動軸部53は二つの連繋部52によって本体部51に連繋されている。
図3(C)に見られるように、該回動軸部53は、端子配列方向に対して直角な断面が円形をなしており、その周面でハウジング10の回動支持部15Aによって回動可能に支持される被支持部として機能する(
図4(A),(B)をも参照)。
図3(C)及び
図4(A),(B)では、回動軸部53の回動中心53Aが十字印で示されている。また、回動軸部53は、固定金具40の第一固定脚部42と規制脚部44の規制部44Aとの間に位置しており、該規制部44Aによって、回動支持部15Aからの抜けが防止されている。
【0064】
被係合部54は、
図3(C)に見られるように、連繋部52の下部の右端位置にて、二つの連繋部52の対向板面同士を連結している。被係合部54は、固定金具40の規制脚部44と係合脚部45との間に位置しているとともに、固定金具40の係合脚部45の係合部45Aと係合して該係合部45Aから閉位置または開位置へ向けた付勢力を受けるようになっている。該被係合部54は、
図3(C)に見られるように、端子配列方向に見たときに、上面と右半部の下面とが右方へ向かうにつれて互いに近づくような傾斜面をなしており、右方に突出する角部をもった形状をなしている。
【0065】
図3(C)及び
図4(A)に見られるように、被係合部54の上記角部を形成する面は、固定金具40の係合部45Aの第一付勢部45A−1からの閉位置へ向けた付勢力を受ける第一被付勢面54Aとして形成されている。また、
図4(B)に見られるように、被係合部54の上面のうち上記角部寄り位置の面は、固定金具40の係合部45Aの第二付勢部45A−2からの開位置へ向けた付勢力を受ける第二被付勢面54Bとして形成されている。
【0066】
端板部55は、
図2に見られるように、既述の連繋部52、回動軸部53及び被係合部54よりも端子配列方向での内側で該端子配列方向に対して直角な板面をもって設けられている。該端板部55は、
図5(A),(C)に見られるように、可動部材50が閉位置にあるときに、コネクタ幅方向(
図5(A),(C)における左右方向)での中間位置で、上下方向に延びて貫通する貫通溝部55Aが、端子配列方向での該端板部55の内側面(板面)から没して形成されている。後述するように、該貫通溝部55Aは、可動部材50が所定の角度位置(通過許容位置)にもたらされたときに、平型導体Cの被係止部C2Aの通過を許容する通過許容空間を形成する(
図5(B),
図6(B)参照)。該貫通溝部55Aは、
図5(A),(C)に見られるように、可動部材50が閉位置にある状態にて、下方へ向かうにつれて左方へ若干傾斜するような溝部として形成されている。
【0067】
図5(A),(C)に見られるように、可動部材50は、貫通溝部55Aの右方位置にてコネクタ幅方向でのハウジング10の受入部11の範囲内に位置する部分が、後述の干渉部55Bとして形成されている。該干渉部55Bの左端面(貫通溝部55Aを形成する面)は、下方へ向かうにつれて徐々に左方に傾斜する干渉面55B−1として形成されている。平型導体Cの挿入過程にて、該干渉面55B−1には、貫通溝部55A内へ上方から進入した平型導体Cの耳部C2が当接することにより干渉して、その当接力によって、可動部材50が開方向に回動するようになっている(
図5(B)参照)。
【0068】
また、
図5(A),(C)における干渉部55Bの下部は、平型導体Cの挿入が完了した状態にて可動部材50が閉位置にあるときに、上方への抜出力を受けた平型導体Cの被係止部C2Aに対して係止可能な係止部55Cとして形成されている。該係止部55Cは、
図5(A),(C)を
図3(C)と比べると判るように、可動部材50が閉位置にあるときに回動軸部53よりも右方に位置しており、係止部55Cが被係止部C2Aから上方へ向けた抜出力を受けたときに、可動部材50を回動軸部53の回動中心53Aまわりで閉方向に回動させるモーメントを生ずるようになっている。
【0069】
係止部55Cの下面、すなわち、被係止部C2Aと係止可能な係止面55C−1は、可動部材50が閉位置にあるとき、
図5(A),(C)に見られるように、下方に向かうにつれて左方へ傾斜するような傾斜面として形成されているとともに、上記係止面55C−1の左端と受入部11の左側の内壁面11Aとのコネクタ幅方向での間隔が平型導体Cの厚み寸法よりも小さくなっている。この結果、平型導体Cが係止面55C−1に係止可能な状態がより確実に維持されるようになっている。
【0070】
また、端板部55の貫通溝部55Aの左方位置には、可動部材50が開位置にあるときに上方への抜出力を受けた平型導体Cの被係止部C2Aに対して当接可能な受圧部55Dが形成されている(
図6(B)をも参照)。可動部材50が閉位置にあるときの受圧部55Dの右面は、下方に向かうにつれて左方へ傾斜し被係止部C2Aと当接可能な受圧面55D−1として形成されている。該受圧面55D−1は、開位置のみならず、いかなる角度位置においても、下方に向かうにつれて左方へ傾斜する。したがって、該受圧面55D−1が被係止部C2Aからの上方へ向けた当接力を受けたときには、該受圧面55D−1には、回動軸部53の回動中心53Aまわりで可動部材50を閉方向に回動させるモーメントを生じるような分力が作用する。
【0071】
また、
図5(A),(C)に見られるように、可動部材50が閉位置にあるとき、端板部55の左端部は、ハウジング10の第二側壁14の左面(外面)から突出しており、該左端部が平型導体Cの挿入状態を検知するための表示部55Eとして機能する。後述するように、本実施形態では、平型導体Cが完全に挿入されている状態(完全挿入状態)にあるときには、表示部55Eが第二側壁14の外面から突出し、平型導体Cが完全に挿入されていない状態(半挿入状態)にあるときには、表示部55Eが第二側壁14の外面に対して没入するようになっている。なお、本実施形態において、表示部55Eについての「没入」とは、第二側壁14の外面に対して突出していない状態を意味し、該表示部55Eの外面が第二側壁14の外面よりも没して位置する場合のみならず、該表示部55Eの外面が第二側壁14の外面と同一レベルに位置する場合も含むものする。
【0072】
このような構成のコネクタ1は、以下の要領で組み立てられる。まず、ハウジング10の信号端子収容溝17へ信号端子20をそしてグランド端子収容溝18へグランド端子30を下方から圧入して取り付ける(
図3(A),(B)参照)。また、ハウジング10の第一収容部10A内に可動部材50を側方から収容し、該可動部材50をハウジング10に取り付ける。この結果、回動軸部53が回動支持部15Aにて回動可能に支持される(
図3(C)参照)。また、
図5(A),(C)に見られるように、端板部55は、干渉部55Bそして係止部55Cがハウジング10の受入部11内に位置し、受圧部55Dがハウジング10の第二収容部14Aに位置し、表示部55Eがハウジング10の第二側壁14から突出して位置する。上述した信号端子20の取付工程、グランド端子30の取付工程及び可動部材50の取付工程は、いずれが先に行われてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0073】
次に、固定金具収容溝19へ固定金具40を上方から圧入して取り付ける。固定金具40がハウジング10に取り付けられる結果、
図3(C)に見られるように、固定脚部42,43のそれぞれの固定部42A,43Aはハウジング10の底面から突出する。また、規制脚部44の下半部が可動部材50の回動軸部53の右方に近接して位置することにより、回動軸部53の位置が規制され、回動軸部53が回動支持部15Aで支持された状態が維持される。また、係合脚部45の係合部45Aが可動部材50の被係合部54の右方に近接して位置し、該係合部45Aの第一付勢部45A−1が被係合部54の第一被付勢面54Aを閉位置へ向けて不勢して、可動部材50が閉位置に維持される。
【0074】
次に、コネクタ1と平型導体Cとの接続動作を
図3〜5に基づいて説明する。まず、コネクタ1の信号端子20の接続部25及びグランド端子30の接続部35を回路基板の対応回路部に半田接続するとともに、固定金具40の固定部42A,43Aを回路基板の対応部に半田接続して固定する。
【0075】
次に、
図5(A)に見られるように、可動部材50を閉位置としたコネクタ1の上方で平型導体Cを回路基板(図示せず)の実装面に対して直角な方向(上下方向)に延びるように位置させる。次に、平型導体Cを下方へ向けてコネクタ1の受入部11に挿入する。受入部11への平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cは、端子配列方向に見て、グランド端子30の弾性腕部33のグランド接触部33A(
図3(B)参照)と信号端子20の長弾性腕部23の上側接触部23A及び短弾性腕部24の下側接触部24A(
図3(A)参照)との間を押し広げるようにして下方へ進行する。この結果、グランド端子30の弾性腕部33が右方へそして信号端子20の長弾性腕部23及び短弾性腕部24が左方へ弾性変位する。
【0076】
また、平型導体Cの両側端寄りに位置する耳部C2が、可動部材50の貫通溝部55A内へ進入した後、該耳部C2の前端が干渉部55Bの干渉面55B−1と当接して、その当接力によって、可動部材50を開方向へ回動させる。その結果、
図5(B)に見られるように、耳部C2が干渉面55B−1を下方から支持することにより、可動部材50は、平型導体Cの挿入過程における回動角度が最大となり、耳部C2ひいては平型導体Cの前方への進行を許容する挿入許容位置(通過許容位置)にもたらされる。
【0077】
可動部材50の上述の回動により、該可動部材50の被係合部54(
図3(C)参照)も開方向へ回動することとなり、該被係合部54がその第一被付勢面54Aで固定金具40の第一付勢部45−1を押圧して、係合脚部45を
図3(C)での右方へ弾性変位させる。この結果、係合脚部45の復元力により、第一付勢部45−1が被係合部54の第一被付勢面54Aを閉方向に付勢する。また、平型導体の挿入過程においては、可動部材50の回動角度が最大となるのは、
図5(B)に示されている挿入許容位置であり、被係合部54の角部(
図3(C)での右端部)が係合脚部45の係合部45Aの突出頂部を乗り越えることはない。したがって、平型導体Cの挿入過程において、被係合部54が開位置へ向けた付勢力を受けることはない。
【0078】
平型導体Cがさらに下方へ挿入されると、
図5(C)に見られるように、該平型導体Cの耳部C2が可動部材50の係止部55Cの位置を通過して、挿入完了位置にもたらされる。平型導体Cの挿入完了状態では、信号端子20の長弾性腕部23及び短弾性腕部24の弾性変位状態が維持されており、平型導体Cの左面の信号回路部(図示せず)と上側接触部23Aと下側接触部24Aとが接圧をもって接触し電気的に導通した状態が維持される。また、グランド端子30の弾性腕部33の弾性変位状態が維持されており、平型導体Cの上面のグランド回路部(図示せず)とグランド接触部33Aとが接圧をもって接触し電気的に導通した状態が維持される。このようにして平型導体Cの接続動作が完了する。
【0079】
また、平型導体Cが挿入完了位置にもたらされると、平型導体Cの耳部C2が係止部55Cの位置を通過して該係止部55Cよりも下方にもたらされる。この結果、可動部材50が固定金具40の係合脚部45からの付勢力を受けて閉位置へ復帰し、
図5(C)に見られるように、係止部55Cが、平型導体Cの切欠部C1内に上方から突入する。そして、平型導体Cの被係止部C2Aが係止部55Cの係止面55C−1に対して係止可能に位置することとなり、平型導体Cの上方への抜出が阻止される。このように、本実施形態では、平型導体Cの挿入完了時に可動部材50が閉位置へ自動的に戻るので、挿入完了後に可動部材50を閉位置へ回動させる操作を行う必要がなく、コネクタ1に対して簡単な動作で平型導体Cを接続させることできる。
【0080】
可動部材50が閉位置に戻されることにより、可動部材50の表示部55Eは、
図5(C)に見られるように、第二側壁14の外面(左面)から突出した正規位置に戻る。作業者は、表示部55Eが上記外面から突出した状態を目視することにより、平型導体Cがハウジング10の受入部11に完全に挿入されたことを容易に確認できる。
【0081】
可動部材50が閉位置へ戻されると、
図4(A)に見られるように、係合脚部45の係合部45Aの第一付勢部45−1が被係合部54の第一被付勢面54Aに付勢力をもって係合するので、可動部材50は常に閉位置に維持される。したがって、仮に、コネクタ1と平型導体Cとの接続状態において、可動部材50が不用意な外力を受けて開方向へ若干移動しても、該可動部材50は第一付勢部45A−1からの付勢力により閉位置へ押し戻されるので、可動部材50が不用意に開位置に回動することはない。
【0082】
コネクタ1との接続状態にある平型導体Cに対して、上方へ向けた抜出力が不用意に作用した場合、平型導体Cの被係止部C2Aが可動部材50の係止部55Cの係止面55C−1に下方から係止する。可動部材50の回動軸部53の位置と係止面55C−1とは可動部材50を閉方向の力を生じさせるような位置関係となっているので確実に係止状態を維持する。また、本実施形態では、閉位置にある可動部材50はハウジング10の第一側壁13と干渉しており、閉方向への回動が阻止されているので、係止面55C−1が被係止部C2Aから上述の力を受けても、可動部材50が閉方向へ回動することはない。
【0083】
さらに本実施形態では、既述したように、閉位置における係止部55Cの係止面55C−1は、下方に向かうにつれて左方へ傾斜するような傾斜面として形成されている。したがって、被係止部C2Aには、係止面55C−1に沿って右方、すなわち貫通溝部55Aから離れる方向の力が作用する。つまり、被係止部C2Aは、係止部55Cから外れる方向とは逆方向に向けた力を受けることとなり、係止部55Cに対してより強固に係止する。
【0084】
既述したように、本実施形態では、平型導体Cがハウジング10の受入部11に完全に挿入されたときには可動部材50の表示部55Eがハウジング10の外面から突出して位置する。一方、仮に平型導体Cが完全に挿入されていない、いわゆる半挿入状態にあるときには、平型導体Cの耳部C2が可動部材50の係止部55Cの位置を通過しておらず、干渉部55Bの干渉面55B−1に当接した状態となっているので、
図5(B)に見られるように、可動部材50が開方向へ向けて若干回動した位置にある。したがって、該可動部材50の表示部55Eは、ハウジング10の第二側壁14の外面に対して没入して第二収容部14A内に位置している。作業者は、表示部55Eが第二側壁14の外面に対して没入している状態を目視することにより、平型導体Cが半挿入状態にあることを容易に確認できる。平型導体Cの半挿入状態が確認された場合には、作業者は、例えば平型導体Cを再度挿入し直すことにより、該平型導体Cを完全に挿入することができる。
【0085】
本実施形態において、仮にハウジング10の側壁14が作業者の位置とは反対側に位置している等、表示部55Eを目視するのが困難な場合には、作業者は、第二側壁14の外面における第二収容部14Aの部分に指で触って、上記表示部55Eが上記外面に対して突出しているかあるいは没入しているかを認識することにより、平型導体Cが完全に挿入されたことを容易に確認できる。
【0086】
次に、コネクタ1からの平型導体Cの抜出動作を
図4ないし
図6に基づいて説明する。まず、
図5(C)に見られるような平型導体Cとの接続状態にて、コネクタ1の可動部材50の解除操作部51Aに指を引っ掛けて、固定金具40の係合脚部45の係合部45Aからの閉位置へ向けた付勢力に抗して、可動部材50を、
図4(B)及び
図6(A)に示される開位置へ向けて回動させる。このとき、係止部55Cは、
図6(A)に見られるように、右方へ、すなわち平型導体Cの切欠部C1から脱出する方向へ移動する。
【0087】
可動部材50が開位置へ向けて回動する過程にて、可動部材50の被係合部54の角部は固定金具40の係合脚部45を右方へ向けて弾性変位させる。上記角部が係合脚部45の係合部45Aの突出頂部の位置に達するまでの間は、該係合部45Aの第一付勢部45A−1が可動部材50を閉位置へ向けて付勢している。さらに可動部材50を回動させて、被係合部54の上記角部が係合部45Aの突出頂部の位置を乗り越えて第二付勢部45A−2の領域に達すると、係合脚部45が弾性変位量を減ずる方向(左方)に戻るとともに、被係合部54を開位置へ向けて付勢する。このようにして可動部材50が開位置に切り換えられると、
図4(B)に見られるように、係合部45Aの第二付勢部45A−2が被係合部54の第二被付勢面54Bに付勢力をもって係合する。したがって、可動部材50は多少の外力を受けても上記付勢力により開位置に戻って安定して開位置を維持する。
【0088】
また、可動部材50が開位置に切り換えられると、
図6(A)に見られるように、係止部55Cは、平型導体Cの切欠部C1から完全に脱出し、該平型導体Cの被係止部C2Aとの係止状態が解除される。そして、
図6(A)に見られるように、可動部材50の受圧部55Dが切欠部C1内に下方から進入し、該受圧部55Dの受圧面55D−1が被係止部C2Aに対して平型導体Cの抜出方向で当接可能に位置する。
【0089】
次に、平型導体Cが後方へ引かれると、
図6(B)に見られるように、該平型導体Cの被係止部C2Aが可動部材50の受圧部55Dの受圧面55D−1に当接する。この時点において、可動部材50は、開位置にあるので、閉位置にあるときとは異なり、閉方向への回動がハウジング10の第一側壁13によって阻止されることはない。したがって、可動部材50は受圧面55D−1で被係止部C2Aから受けた当接力により、固定金具40の係合脚部45の係合部45Aからの開位置へ向けた付勢力に抗して、すなわち、被係合部54が係合脚部45を
図4(B)での右方へ弾性変位させることにより、
図6(B)に見られるように閉方向に回動する。そして、閉方向に回動する過程にて貫通溝部55Aが通過許容位置にもたらされると、平型導体Cの被係止部C2Aが貫通溝部55Aを上記抜出方向へ向けて通過し、この結果、
図6(C)に見られるように、平型導体Cが容易に抜出される。
【0090】
既述の実施形態では、可動部材50の角度位置に応じて、該可動部材50の表示部55Eがハウジング10の第二側壁14の外側面(コネクタ幅方向に対して直角な方向)に対して出没するようになっていたが、表示部が出没する外面はこれに限られず、例えば、後述する変形例のように、ハウジングの上面であってもよい。
【0091】
図7(A)は、変形例に係るコネクタ101を可動部材150が閉位置にある状態で示す側面図であり、
図7(B)は
図7(A)のコネクタ101を可動部材150が開方向に若干回動した状態で示す側面図である。この変形例に係るコネクタ101の可動部材150は、可動部材150が回動したときに、ハウジング110の上面に対して表示部155Eが出没するようになっている点で、ハウジング10の側面に対して表示部55Eが出没するようになっている既述の実施形態の可動部材50と異なっている。
【0092】
コネクタ101の信号端子(図示せず)、グランド端子(図示せず)及び固定金具40については既述の実施形態と同じ構成であるので説明を省略する。また、コネクタ101のハウジング110及び可動部材150は、既述の実施形態のハウジング10及び可動部材50と一部のみが相違している。以下、変形例におけるハウジング110及び可動部材150について、既述の実施形態と相違する部分を中心に説明し、同じ部分については、既述の実施形態での符号に「100」を加えた符号を付して説明を省略する。
【0093】
ハウジング110は、可動部材150の端板部を収容する収容空間(図示せず)が内部に形成されており、該収容空間がハウジング110の少なくとも上面で開口している。可動部材150は、該可動部材150が閉位置にあるときに本体部151の上端よりも上方に位置する表示部155Eを上記端板部の先端に有している。
【0094】
このような構成のコネクタ101では、平型導体(図示せず)が完全挿入状態にある場合には、可動部材150が閉位置にあるので、該可動部材150の表示部155Eはハウジング110の上記収容空間内に収容されており、
図7(A)に見られるように、ハウジング110の上面から突出していない。一方、平型導体が半挿入状態にある場合には、
図7(B)に見られるように、可動部材150が閉位置から開方向へ向けて若干回動した角度位置(例えば
図5(B)に対応する角度位置)にあり、表示部155Eがハウジング110の上面から突出して目視可能な状態となる。
【0095】
この変形例によれば、作業者から目視しやすいハウジング110の上面に対して表示部155Eが没するので、平型導体が完全挿入状態あるいは半挿入状態のいずれの状態にあるかを容易に確認することができる。